JP2009298833A - エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)を維持しつつ耐衝撃性を向上することである。
【解決手段】 ポリビニルアセタ−ル樹脂と酸無水物の反応物をエポキシ化合物にブレンドしたエポキシ樹脂組成物及び、そのエポキシ樹脂組成物に、硬化剤、を添加して生成したエポキシ樹脂硬化物により課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物に関し、特にエポキシ樹脂に均一に相溶したエポキシ樹脂組成物、および該エポキシ樹脂に硬化剤を添加して得られる耐熱性(ガラス転移温度)を維持しつつ耐衝撃性を向上したエポキシ樹脂硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、優れた接着性、強度、耐熱性及び機械的性質、電気的性質を有するため接着剤、塗料、土木建築材料、電気・電子絶縁、封止材料および複合材料のマトリックス樹脂などの分野で広く使用されている。
エポキシ樹脂の強靱化には、古くからエラストマ−の添加が有効とされている(例えば特許文献1、2参照)。代表的な例に、エラストマ−であるカルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)をエポキシ樹脂に添加したエポキシ樹脂/CTBN系が知られている。このエポキシ樹脂/CTBN系では、硬化に伴いエポキシ樹脂がマトリックス、CTBNが球状ドメインである海島構造を形成する。この相構造は、破断時においてドメインであるエラストマ−への応力集中によるキャビテ−ションとその周辺のマトリックス樹脂の塑性変形によりドメイン付近で塑性変形領域を形成し、亀裂の進行を鈍化させるため、系の靭性が向上する。しかしながら、エラストマーを添加することによる弾性率やガラス転移温度の低下が問題となっており、さらなる改良が求められている。
特開昭58−49719号公報 特公昭63−17285号公報
本発明の課題は、上記の問題を解決したエポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物を提供することである。すなわち、エポキシ樹脂に均一に相溶したエポキシ樹脂組成物及び耐熱性(ガラス転移温度)を維持しつつ耐衝撃性が向上したエポキシ樹脂硬化物を提供することである。
本発明者は、ポリビニルアセタ−ル樹脂にジカルボン酸無水物を反応させたジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタール樹脂がエポキシ樹脂に均一に相溶することを見出し、そして、均一相構造を有するエポキシ樹脂組成物の硬化物が耐熱性、耐衝撃性に優れていることを見出した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
[1]ポリビニルアセタ−ル樹脂にジカルボン酸無水物を付加したジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂とエポキシ化合物とを含むエポキシ樹脂組成物。
[2]前記ポリビニルアセタ−ル樹脂が下記式で示される構成単位A、BおよびCを含み、構成単位AにおけるRが水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基であることを特徴とする[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]前記ポリビニルアセタール樹脂の構成単位Aの含有率が50〜80mol%であって、構成単位Bの含有率が0.1〜49.9mol%であって、構成単位Cの含有率が0.1〜49.9mol%である、[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]前記ジカルボン酸無水物が5員環で構成されるジカルボン酸無水物であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物に硬化剤を添加して得られるエポキシ樹脂硬化物。
[6]ポリビニルアセタ−ル樹脂にジカルボン酸無水物を予め付加したジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂とエポキシ化合物とを混合させ生成することを特徴とする、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
[7][6]の方法で製造したエポキシ樹脂組成物に硬化剤を添加して生成することを特徴とする、エポキシ樹脂硬化物の製造方法。
本発明により、均一相構造を有したエポキシ樹脂組成物及び、耐熱性(ガラス転移温度)を維持しつつ耐衝撃性、強靭性に優れたエポキシ樹脂硬化物が提供される。
本発明の第一の形態は、エポキシ樹脂組成物である。
本発明のエポキシ樹脂組成物(5)は、ポリビニルアセタ−ル樹脂(1)にジカルボン酸無水物(2)を付加したジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタール樹脂(3)とエポキシ化合物(4)とを含むことを特徴としている。
本発明におけるポリビニルアセタール樹脂(1)は、以下の構成単位A、構成単位B、構成単位Cを含むことを特徴とする。
ポリビニルアセタ−ル樹脂における構成単位A〜Cの総含有率は、全構成単位に対して80〜100%であることが好ましい。ポリビニルアセタ−ル樹脂に含まれ得るその他の構成単位の例には、下記式で示される分子間アセタ−ル単位や、ヘミアセタ−ル単位が含まれる。構成単位A以外のビニルアセタ−ル鎖単位(R≠水素原子、炭素数1〜5のアルキル)の含有率は、5mol%未満であることが好ましい。
ポリビニルアセタ−ル樹脂において構成単位A〜Cは、規則性をもって配列(ブロック共重合体、交互共重合体など)していても、ランダムに配列(ランダム共重合体)していてもよいが、好ましくはランダムに配列している。
構成単位Aは、アセタ−ル部位を有する構成単位であって、例えば、連続するポリビニルアルコ−ル鎖単位とアルデヒド(R−CHO)との反応により形成され得る。構成単位AにおけるRは任意の基または原子であって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリ−ル基などであり得る。しかしながら、構成単位AにおけるRがバルキ−な基(例えば炭素数が多い炭化水素基)であると、ポリビニルアセタ−ル樹脂の軟化点が低下する傾向がある。軟化点の低いポリビニルアセタ−ル樹脂を含むエポキシ樹脂組成物は、高温において粘度が大きく低下して樹脂が流れすぎてしまうことがある。また、Rがバルキ−な基であるポリビニルアセタ−ル樹脂は、溶媒への溶解性は高いが、一方で耐薬品性に劣ることがある。そのため構成単位AにおけるRは、水素原子(H)または炭素数1〜5のアル
キルであることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキルであることがより好ましい。
構成単位Bおよび構成単位Cは、それぞれビニルアセテ−ト鎖およびビニルアルコ−ル鎖を含む構成単位である。
ポリビニルアセタ−ル樹脂における各構成単位は、構成単位Aの含有率を50〜80[mol%]として、構成単位Bの含有率を0.1〜49.9[mol%]として、かつ構成単位Cの含有率を0.1〜49.9[mol%]であることが好ましく、構成単位Aの含有率を50〜80[mol%]として、構成単位Bの含有率を1〜30[mol%]として、かつ構成単位Cの含有率を1〜30[mol%]であることがより好ましい。
ポリビニルアセタ−ル樹脂の耐薬品性、可撓性、耐摩耗性、機械的強度を充分に得るために、構成単位Aの含有率を50[mol%]以上にすることが好ましい。また、構成単位を80[mol%]よりも高くすることは、ポリビニルアセタ−ル樹脂の製造上、困難なことがある。すなわち、ポリビニルアセタ−ル樹脂における構成単位Aは、分子鎖中に連続して存在しているビニルアルコ−ル鎖分をアセタ−ル化することによって形成され得るので、連続していないビニルアルコ−ル鎖分をアセタ−ル化することはできず、構成単位Aを80[mol%]よりも高くすることは難しい場合がある。
構成単位Bの含有率が0.1[mol%]以上であれば、ポリビニルアセタ−ル樹脂の溶媒への溶解性やエポキシ樹脂への溶解性が良くなる。しかしながら、構成単位Bの含有率が多すぎると相対的に構成単位Aの含有率が低下するため、ポリビニルアセタ−ル樹脂の耐薬品性、可撓性、耐摩耗性、機械的強度が低下して、期待する性能が発揮しにくくなる。よって構成単位Bは含有率を49.9[mol%]までとすることが好ましい。
また、構成単位Cは、溶媒への溶解性やエポキシ樹脂への溶解性を考慮して含有率が49.9[mol%]までとすることが好ましい。構成単位Cの含有率が0.1[mol%]未満であっても構わないが、ポリビニルアセタ−ル樹脂の製造において、ポリビニルアルコ−ル鎖をアセタ−ル化する際、構成単位Bと構成単位Cが平衡関係となるため、構成単位Cの含有率を0.1[mol%]未満とすることは困難である。
ポリビニルアセタ−ル樹脂における構成単位A〜Cのそれぞれの含有率は、JIS K
6729 に準じて測定することができる。
低重量平均分子量のポリビニルアセタ−ル樹脂は、エポキシ化合物への溶解性は高いものの、エポキシ樹脂組成物の成型加工性の向上や曲げ強度、引張り強度の向上など本発明の特徴を十分に発揮しないことがある。一方、高重量平均分子量のポリビニルアセタ−ル樹脂は、エポキシ樹脂組成物の粘度を過剰に増大させ、作業性を低下させることがある。
これらを踏まえれば、ポリビニルアセタ−ル樹脂の重量平均分子量は、5000〜300000であることが好ましく、10000〜150000であることがより好ましい。
ポリビニルアセタ−ル樹脂の重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。具体的な測定条件は以下の通りにすればよい。
検出器:830−RI (日本分光社製)
オ−ブン: 西尾社製 NFL−700M
分離カラム:Shoudex KF−805L×2本
ポンプ: PU−980(日本分光社製)
温度:30℃
キャリア:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
ポリビニルアセタ−ル樹脂のオストワルド粘度は、1〜100[mPa・s]であることが好ましい。なお、粘度は重量平均分子量と比例関係にあり、粘度が1[mPa・s]未満であるポリビニルアセタ−ル樹脂は、エポキシ化合物への溶解性は高いものの、重量平均分子量が低いため、エポキシ樹脂組成物の成形加工性の向上や耐衝撃性の向上など本発明の特徴を十分に発揮しないことがある。一方、粘度が100[mPa・s]をこえるポリビニルアセタ−ル樹脂は、エポキシ樹脂組成物の粘度を過剰に増大させ、作業性を低下させることがある。
オストワルド粘度は、ポリビニルアセタ−ル樹脂5gをジクロロエタン100mlに溶解し、20℃で Ostwald−Cannon Fenske Viscometer を用いて測定することができる。
ポリビニルアセタ−ル樹脂は、任意の方法で製造することができるが、その一般的な製造方法の例には沈殿法と溶解法が含まれる。
沈殿法は、酢酸ビニルモノマ−をラジカル重合開始剤で重合して得たポリビニルアセテ−トを鹸化してポリビニルアルコ−ル鎖を得る。得られたポリビニルアルコ−ル鎖の水溶液に酸触媒を添加し、さらにアルデヒド化合物を加えて反応させ、ポリビニルアセタ−ル樹脂を得る。反応の進行とともに水系に難溶なポリビニルアセタ−ル樹脂が析出する。この析出したポリビニルアセタ−ル樹脂を、水洗、濾過、乾燥させる。
溶解法には、ポリビニルアルコ−ルから合成する方法と、酢酸ビニルモノマ−をラジカル重合開始剤で重合して得たポリビニルアセテ−トから合成する方法とがある。いずれの場合も、ポリビニルアルコ−ルまたはポリビニルアセテ−トをポリビニルアセタ−ルの良溶媒に溶解し、さらに酸触媒、アルデヒド化合物を添加してポリビニルアセタ−ル樹脂を得る。反応終了後、溶媒中に溶解しているポリビニルアセタ−ル樹脂を、ポリビニルアセタ−ル難溶性溶媒中に分散し、ポリビニルアセタ−ル樹脂を析出させる。この析出したポリビニルアセタ−ル樹脂を、水洗、濾過、乾燥させる。
本発明におけるジカルボン酸無水物(2)は、ポリビニルアセタ−ル樹脂の側鎖と反応し、ポリビニルアセタ−ル樹脂を変性させる。変性させたポリビニルアセタール樹脂をエポキシ樹脂と混合することにより、ポリビニルアセタール樹脂側鎖に導入されたカルボキシル基が架橋点となり、エポキシ樹脂と直接、または硬化剤を介して架橋し、架橋と共に、架橋点を基点とした密な両高分子の分子鎖の物理的な絡まりあいが生じると考えられる。これにより、柔軟なポリビニルアセタール樹脂がエポキシネットワ−ク中に組み込まれる。
従来は、後述する比較例のように、ポリビニルアセタール樹脂とエポキシ樹脂をそのまま混合し、その後硬化剤により硬化させることが行われていたが、本発明では、エポキシ樹脂と混合する前にポリビニルアセタール樹脂をジカルボン酸無水物により変性させることにより、ポリビニルアセタール樹脂がエポキシ樹脂に均一に相溶する。その結果、耐熱性を維持しつつ耐衝撃性を向上することが可能となったものである。
本発明におけるジカルボン酸無水物(2)としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコ−ルビスアンヒドロトリメリテ−ト、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテ−ト)モノアセテ−ト、ドデセニル
無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
この中でも、5員環で構成されるジカルボン酸の酸無水物が好ましく、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物が特に好ましい。
本発明におけるエポキシ化合物(4)は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、ビスフェノ−ル型エポキシ、フェノ−ルノボラック型エポキシ、クレゾ−ルノボラック型エポキシ、グリシジルアミン型エポキシ、脂環式エポキシ、グリシジルエステル型エポキシなど種々のエポキシ化合物が含まれる。
ビスフェノ−ル型エポキシとしては、ビスフェノ−ルAから得られるビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルFから得られるビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルSから得られるビスフェノ−ルS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノ−ルAから得られるテトラブロモビスフェノ−ルA型などが含まれる。
ビスフェノ−ルA型エポキシの好適な例には、"jER" 825、828、834、1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、"アラルダイト" GY250、 "アラルダイト" 6071、6072、6097、6099(チバ・ガイギ−社製)、"エポト−ト"YD−128、YD−011、YD−014、YD−017、YD−019、YD−022(東都化成社製)、"ダウエポキシ" DER331、661、664、669(ダウケミカル社製)"エピクロン"840、850、1050、3050、HM−101(大日本インキ化学工業社製)などが含まれる。
ビスフェノ−ルF型エポキシの好適な例には、"エピクロン"830(大日本インキ化学工業社製)、"エポト−ト"YDF−2001、YDF−2004(東都化成社製)などが含まれ、ビスフェノ−ルS型エポキシの好適な例には、“デナコ−ル”EX−251(ナガセ化成工業社製)などが含まれる。
テトラブロモビスフェノ−ルA型エポキシの好適な例には、"jER"5050(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、“エピクロン”152(大日本インキ化学工業社製)、“スミエポキシ”ESB−400T(住友化学工業社製)、“エポト−ト”YBD−360(東都化成社製)などが含まれる。
フェノ−ルノボラックエポキシの好適な例には、"jER" 152、154(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、"アラルダイト" EPN1138、1139(チバ・ガイギ−社製)、"ダウエポキシ" DEN431、438、485(ダウケミカル社製)、“エポト−ト”YCPN−702(東都化成社製)、BREN−105(日本化薬社製)などが含まれる。
グレゾ−ルノボラックの好適な例には、"アラルダイト" ECN1235、1273、1299(チバ・ガイギ−社製)、"EOCN" 102(日本化薬社製)などが含まれる。
グリシジルアミン型エポキシの好適な例には、"アラルダイト" MY720(チバ・ガイギ−社製)、"スミエポキシ" ELM100、120、434(住友化学社製)などが含まれる。
脂環式エポキシの好適な例には、"アラルダイト" CY175、177、179(チバ・ガイギ−社製)などが含まれる。
グリシジルエステル型エポキシの好適な例には、 "jER" 190P、191P(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、 "アラルダイト" CY184、192(チバ・ガイギ−社製)などが含まれる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(5)に含まれるエポキシ化合物(4)は、一種単独のエポキシ化合物でもよく、二種以上のエポキシ化合物の組み合わせでもよい。エポキシ化合
物の種類は、組成物の用途に応じて適宜選択される。
本発明の別の形態は、エポキシ樹脂硬化物である。
本発明のエポキシ樹脂硬化物(7)は、上記のエポキシ樹脂組成物(5)に硬化剤(6)を添加して得られる。
本発明における硬化剤(6)は、エポキシ化合物を架橋させる化合物であり、アミン類;ジシアンジアミド;テトラメチルグアニジン;酸無水物;ポリカルボン酸ヒドラジド;ポリメルカプタン;ポリフェノ−ル化合物;BF3 ・アミン錯体;芳香族スルホニウム塩などの通常のエポキシ硬化剤を含む。硬化剤(5)の好ましい例には、ジシアンジアミドや芳香族ジアミンが含まれる。
アミン類の例には、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミンのような活性水素を有する芳香族ポリアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリエチレンイミンのダイマ−酸エステルのような活性水素を有する脂肪族ポリアミン;これらの活性水素を有するポリアミン類にエポキシ化合物、アクリロニトリル、フェノ−ルとホルムアルデヒド、チオ尿素などの化合物を反応させて得られる変性アミンが含まれる。
酸無水物の例には、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物のようなカルボン酸無水物が含まれる。
ポリカルボン酸ヒドラジドの例には、アジピン酸ヒドラジドやナフタレンジカルボン酸ヒドラジドなどが含まれ、ポリフェノ−ル化合物の例にはノボラック樹脂などが含まれ、ポリメルカプタンの例には、チオグリコ−ル酸とポリオ−ルのエステルなどが含まれ、BF3 ・アミン錯体の例には、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体などが含まれる。また、芳香族スルホニウム塩の例には、ジフェニルヨ−ドニウムヘキサフルオロホスフェ−ト、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェ−トなどが含まれる。
本発明においては、硬化剤に硬化反応を調節する目的で、さらに硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤の例には、特定の構造の尿素化合物、第三アミンなどが含まれる。
例えば、硬化剤としてジシアンジアミドを用いた場合には、硬化促進剤として3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンなどの尿素誘導体とを組み合わせることができ;硬化剤としてカルボン酸無水物やノボラック樹脂を用いた場合には、硬化促進剤として第三アミンを組み合わせることができる。第三アミンの例には、ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ルや1−置換イミダゾ−ルのような活性水素を持たない第三アミンが含まれる。
本発明の別の形態は、エポキシ樹脂組成物(5)の製造方法である。
ポリビニルアセタ−ル樹脂(1)にジカルボン酸無水物(2)を付加したジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂(3)とエポキシ化合物(4)とを混合させ生成することを特徴とする。
ポリビニルアセタ−ル樹脂(1)とジカルボン酸無水物(2)の反応は、ポリビニルア
セタ−ル樹脂を溶媒に溶解し、その後、ジカルボン酸を添加して反応できる。また、液状のジカルボン酸無水物中にポリビニルアセタ−ル樹脂を溶解して反応してもよい。この反応は50〜180℃で0.5〜48時間行われるのが好ましく、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
上記の反応におけるジカルボン酸無水物(2)の含有量は、ポリビニルアセタ−ル樹脂(1)100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、10〜120質量部であることがより好ましい。
溶媒中でポリビニルアセタ−ル樹脂とジカルボン酸無水物を反応させた後は、反応後のジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂(3)を貧溶媒中に分散させ、樹脂分を析出させる。その後濾過、乾燥し粉体として回収出来る。上記貧溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を用いることができる。得られた粉体をエポキシ化合物(4)に溶解させ、エポキシ樹脂組成物とすることができる。
あるいは、ジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂を溶解した溶媒中にエポキシ樹脂を加えて、溶媒を蒸留操作することにより溶媒を除外し、ジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂を含むエポキシ樹脂組成物とすることもできる。
また、液状のジカルボン酸無水物中にポリビニルアセタ−ル樹脂を溶解して反応させた場合は、これをエポキシ樹脂に直接溶解し、エポキシ樹脂組成物とすることもできる。
さらに、ポリビニルアセタール樹脂とジカルボン酸無水物をブレンダー、ニーダ等で混合し、押出機(ペレタイザー)に投入し、混合、溶融、反応し、その後、冷却してペレット化してもよい。この場合、溶媒等を用いずにジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂を含むエポキシ樹脂組成物とすることができる。
反応後のジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂(3)の含有量は、エポキシ化合物(4)100質量部に対して0.5〜50質量部とすることが好ましく、1〜30質量部とすることが更に好ましい。
本発明の別の形態は、エポキシ樹脂硬化物(7)の製造方法である。
上記のエポキシ樹脂組成物(5)に、硬化剤(6)を添加することでエポキシ樹脂硬化物(7)を得ることが出来る。また、硬化剤に硬化反応を調節する目的で、さらに硬化促進剤(8)を添加することもできる。
本発明における上記添加剤の添加量は特に限定されないが、目安としてはエポキシ樹脂組成物100質量部に対して10〜200質量部とすることが好ましい。また、添加促進剤の添加量は、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。
以下、実施例により本願発明の実施形態を説明するが、実施形態の一例を示しているものであり、本願発明は実施例のみに限定されるものではない。
実施例に使用した材料、試薬は次のとおりである。
ポリビニルアセタ−ル樹脂(1)として、ポリビニルホルマ−ル樹脂 (ビニレックPVF−K,チッソ株式会社製,重量平均分子量44,000〜54,000)使用。
構成単位Aの含有率:74[mol%]
構成単位Bの含有率:13[mol%]
構成単位Cの含有率:13[mol%]
ジカルボン酸無水物(2)及び硬化剤(6)として、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物
(MeHHPA,日立化成工業株式会社製,重量平均分子量168)を使用。
エポキシ化合物(4)として、ジャパンエポキレジン株式会社製 jER828(登録商標)を使用。
硬化促進剤(7)として2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル (2E4MZ,和光純薬工業株式会社製,重量平均分子量 110)を使用。
調製の際の溶媒としてクロロホルム (和光純薬工業株式会社製,重量平均分子量 119.4)及びジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製,重量平均分子量78.13を使用。)
実施例で使用した測定方法は以下のとおりである。
<透過型電子顕微鏡(TEM)観察>
試料内部の構造を観察するために、調整した硬化物を鉛筆状に加工し、ウルトラミクロト−ム(REICHRTULTRA−CUTE株式会社ライカ製)を用いて厚み50nmの超薄片状に切り出した。この超薄膜試料を銅メッシュに載せ、透過型電子顕微鏡(JEM−1210、日本電子株式会社製)を用いて加速電圧120kVで試料構造を観察した。
<動的粘弾性測定>
動的粘弾性測定は、非共振強制型粘弾性測定解析装置(DVE−V4、レオロジ−株式会社製)を用いて、温度依存性、引っ張りモ−ドで行った。測定周波数10HZ、変位幅5.0μm、温度範囲−150〜250℃、上昇速度2[℃/min]、歪み波形は正弦波とした。なお、試料の形状は、厚み0.4mm、幅4.0mm、長さ30mmの帯状の直方体とした。
*=(980.7×DF×CD)/(DD×W×T) [dyne/cm2
E'=E*cosδ [dyne/cm2
E"=E*sinδ [dyne/cm2
ここで、
W[cm]:試料片の幅、T[cm]:試験片の厚さ、CD[cm]:試験片の長さ、DF[gram]:動的応力、DD[cm]:動的変化、δ[degree]:位相差、980.7[cm/s2]:重力加速度
<引っ張り試験>
硬化物の引っ張り試験は,インストロン型万能試験機 (AGS−J、島津製作所株式会社製)を用いて測定した。測定条件は、モ−ド:引っ張り、最大荷重:50kg、試験速度:5[mm/min]とした。試験片の大きさ及び形状はJIS−K−7113に準拠し、1(1/5)号形 (全長:30mm、幅:4.0mm、厚み:2.0mm、標線間距離:10mm、平行部の長さ:12mm、平行部の幅:2.0mm、丸みの半径:12mm)を用いた。破断応力及び破断歪みは次式により算出した。また、破壊エネルギ−は応力−歪み曲線の下降面積から求めた。
σ=(F×9.8)/A
ここで、σ:引っ張り応力[MPa]、F:荷重[kgf]、A:断面積[m2]、9.8:重力加速度[m/s2]、
ε=ΔL/L0×100
ここで、ε:歪み[%]、ΔL:破断時の伸び[mm]、L0:標線間距離[mm]。
<コンパクトテンション(CT)試験>
硬化物のコンパクトテンション試験は、インストロン型万能試験機(AGS−J、島津製作所株式会社製)を用いて測定した。測定条件は試験速度:0.5[mm/min]、最大強度:20kgfとした。試験片の大きさ形状は、ASTM E399−93に準拠し、35.0mm×33.6mm×4.0mmとした。また、破壊強靭性値KIC(MN/m3/2)は次式から求めた。
IC=P/(BW1/2)×f(α)
ここで、
f(α)={(2+α)(0.886+4.64α−13.32α2+14.72α3−5.6α4)}/(1−α)3/2
α=a0/W
とし、P:荷重[kN]、B:試験片厚さ[mm]、W:試験片幅[mm]、a0:亀裂長さ[mm]である。
さらに弾塑性破壊靭性値JIC(kN/m)は、次式より求めた。
IC=A/Bb0×f(a0/W)
f(a0/W)=2×(1+β)/(1+β2
β=[(2a0/b02+2×(a0/b0)+2]1/2−(2a0/b0+1)
とし、b0=W−a0:リガメント幅[mm]である。
<実施例1>
エポキシ樹脂(jER828、以下本実施例においてエポキシ樹脂とはjER828を指す。)に対して10[重量%]に相当するポリビニルホルマ−ル樹脂(2.0[g])と、エポキシ樹脂に対して 1/10当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を、セパラブルフラスコに量り、そこに高沸点溶媒であるジメチルスルホキシド(20[ml])を加え溶解させ、窒素雰囲気下、130[℃]で1時間攪拌した。その後、室温付近まで冷却し、ポリビニルホルマ−ル樹脂に対して貧溶媒であるメタノ−ル200[ml]を加え、樹脂中から溶媒として用いたジメチルスルホキシド及び未反応のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を抽出除去した。さらに、その樹脂を減圧下、60[℃]でメタノ−ルを取り除き、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物付加ポリビニルホルマ−ル樹脂を得た。
得られたメチルヘキサヒドロフタル酸無水物付加ポリビニルホルマ−ル樹脂をクロロホルムに溶解し、そこにエポキシ樹脂を加えて1時間攪拌した。その後、減圧下でクロロホルムを取り除き、エポキシ樹脂に対して当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を加え15分攪拌した。これをアルミカップに移し,エポキシ樹脂100[質量部]に対して1[質量部]の硬化促進剤2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを加え攪拌した。
攪拌後、あらかじめ製作し、80[℃]に加熱したガラス板に注型した。このガラス板を恒温槽に入れ、80[℃]で2時間保持し、さらに130[℃]で2時間保持し硬化させて硬化物を得た。
<実施例2>
エポキシ樹脂に対して20[重量%]に相当するポリビニルホルマ−ル樹脂(4.0[g])と、エポキシ樹脂に対して1/10当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を、セパラブルフラスコに量り、そこに高沸点溶媒であるジメチルスルホキシド(20[ml])を加え溶解させ、窒素雰囲気下、130[℃]で1時間攪拌した。その後、室温付近まで冷却し、ポリビニルホルマ−ル樹脂に対して貧溶媒であるメタノ−ル200[ml]を加え、樹脂中から溶媒として用いたジメチルスルホキシド及び未反応のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を抽出除去した。さらにその樹脂を減圧下、60[℃]でメタノ−ルを取り除き、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物付加ポリビニルホルマ−ル樹脂を得た。
得られたメチルヘキサヒドロフタル酸無水物付加ポリビニルホルマ−ル樹脂をクロロホルムに溶解し、そこにエポキシ樹脂を加えて1時間攪拌した。その後、減圧下でクロロホルムを取り除き、エポキシ樹脂に対して当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を加え15分攪拌した。これをアルミカップに移し,エポキシ樹脂100[質量部]に対して1[質量部]の促進剤2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを加え攪拌した。
攪拌後、あらかじめ製作し、80[℃]に加熱したガラス板に注型した。このガラス板を恒温槽に入れ、80[℃]で2時間保持し、さらに130[℃]で2時間保持し硬化させて
硬化物を得た。
<比較例1>
ポリビニルホルマ−ル樹脂をステンレス板の間に挟み,ホツトプレス(テクノサプライ株式会社製)を用いて圧力20[MPa]、温度150[℃]で圧縮成型した。
<比較例2>
エポキシ樹脂をアルミカップに量り取り、当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物とエポキシ樹脂100[質量部]に対して、1[質量部]の硬化促進剤2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを加え、均一になるまで攪拌した。攪拌後、あらかじめ製作し、80[℃]に加熱したガラス板に注型した。このガラス板を恒温槽に入れ、80[℃]で2時間保持し、さらに130[℃]で2時間保持し硬化させて硬化物を得た。
<比較例3,4,5,6>
セパラブルフラスコの中に、エポキシ樹脂(19[g]、18[g]、17[g]、16[g])に、5[重量%]、10[重量%]、15[重量%]、20[重量%]に相当するポリビニルホルマ−ル樹脂(1.0[g]、2.0[g]、3.0[g]、4.0[g])およびクロロホルム(20[ml])を加え混合し、室温で溶解させた。その後減圧下でクロロホルムを取り除いた。そこにエポキシ樹脂に対して当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を加え1時間攪拌した。その後ホットプレ−ト上で80[℃]に加熱したアルミカップに移し,エポキシ樹脂100[質量部]に対して1[質量部]の硬化促進剤2−エチル−4−メチルイミダゾ−ルを加え、均一になるまで攪拌した。
攪拌後、あらかじめ製作し,80[℃]に加熱したガラス板に注型した。このガラス板を恒温槽に入れ、80[℃]に2時間保持し、さらに130[℃]で2時間保持し硬化させて硬化物を得た。
<試験例1>硬化物の透明性
エポキシ樹脂/ポリビニルホルマ−ル樹脂硬化物の透明性を確認するため硬化物の光学写真を撮影した。
その結果、実施例1、実施例2、比較例2、比較例3、比較例4、比較例5、比較例6について透明性が観察された。なお、比較例1についても茶色の発色があるものの透明性を確認できた。
<試験例2>樹脂硬化物の耐熱性
非共振強制型粘弾性測定解析装置(DVE−V4、レオロジ−株式会社製)を用いて、温度依存性、引っ張りモ−ドにて動的粘弾性評価を実施した。tanδの変化より各硬化のガラス転移温度を算出した。
その結果は、次の表1のとおりであった。
最も低いガラス転移温度を示したのは、(比較例1)ポリビニルホルマ−ル樹脂硬化物の113[℃]であった。また、(比較例3,4,5,6)エポキシ樹脂とポリビニルホルマ−ル樹脂硬化物については、ポリビニルホルマ−ル樹脂添加量が増すにつれてガラス転移温度が低下している(5[重量%],10[重量%],15[重量%],20[重量%]→136[℃],122[℃],126[℃],115[℃])。
これは、硬化物中のポリビニルホルマ−ル樹脂の濃度が増すにつれて、硬化物中でポリビニルホルマ−ル樹脂のムラ、偏りが生じ、硬化物のガラス転移温度を引き下げていると考えられる。
その一方、(実施例1、実施例2)ポリビニルホルマ−ル樹脂へのメチルヘキサヒドロフタル酸無水物の付加物を含む硬化物については、(比較例2)酸無水物硬化エポキシ樹脂硬化物と同程度のガラス転移温度150[℃]を示しており、ガラス転移温度が低下して
いないことが確認できた。
これは、ポリビニルホルマ−ル樹脂の側鎖にメチルヘキサヒドロフタル酸無水物により導入された側鎖カルボン酸とエポキシ樹脂との反応により、ポリビニルホルマ−ル樹脂とエポキシ樹脂の分子的な絡まりあいと、網目構造が形成され、ポリビニルホルマ−ル樹脂のブラウン運動が規制されたためと考えられる。
<試験例3>破壊エネルギ−の測定結果と考察
破壊エネルギ−は、インストロン型万能試験機 (AGS−J、島津製作所株式会社製)の引っ張り試験の結果より、応力−歪み曲線の下降面積から求めた。
その結果、(比較例2)酸無水物硬化エポキシ樹脂硬化物に比べ、(実施例1,2)では倍以上の強度を示した。(比較例3〜6)においても(実施例1,2)程ではないが高い強度を示した。
比較例3においては、エポキシ樹脂中にポリビニルホルマ−ルが分散し、塑性変形を生じることで強度が向上したと考える。また、ポリビニルホルマ−ル樹脂の割合が増すにつれ破壊エネルギ−が低下しているのは、エポキシ樹脂中でポリビニルホルマ−ル樹脂が相分離、析出して この部分に応力集中が生じ、破断歪みの値が低下し、そのために破壊靭性が低下したと考えられる。その一方、(実施例1,2)については、エポキシ樹脂との間に、側鎖のカルボキシル基とエポキシ樹脂の架橋、または、硬化剤を介してのポリビニルホルマ−ル樹脂側鎖のカルボキシル基とエポキシ樹脂の架橋により、網目構造をとっていると思われる。さらに架橋点間のポリビニルホルマ−ル樹脂鎖がネットワ−クに絡まりあい破壊靭性が向上したと考えられる
<試験例4>コンパクトテンション試験
さらに、強靭性の評価として、コンパクトテンション試験を行った。
荷重−開口変位曲線より破壊靭性値 KIC[MN/m2/3]、弾塑性破壊靭性 JIC[kN/m]の値を算出した。その結果を表2に示す。
その結果、両系共にポリビニルホルマ−ル樹脂含有量の増加に伴い高い値を示した。エポキシ樹脂にポリビニルホルマ−ル樹脂による延性が付与されることで、マトリックス自体が強靭化したためと考えられる。特に実施例1,2の、エポキシ硬化物は、高い値を示した。これは、ネットワ−ク構造の違いによるものであると考えられる。そのままブレンドした系、即ち比較例は相分離構造を形成し、一部の柔軟なポリビニルホルマ−ル樹脂がエポキシマトリックスに相溶し、マトリックスを強靭化すると考えられる。しかし、相分離したポリビニルホルマ−ル樹脂ドメインがネットワ−クの変形を阻害するため、含有量を増加させても強靭性は向上しなかったと考えられる。一方、実施例1,2のエポキシ硬
化物では、均一な相構造を形成した。これは、ポリビニルホルマ−ル樹脂側鎖にメチルヘキサヒドロフタル酸により導入されたカルボキシル基が、エポキシ樹脂との架橋、または、硬化剤を介してのポリビニルホルマ−ル樹脂側鎖のカルボキシル基とエポキシ樹脂の架橋により、ネットワ−クにポリビニルホルマ−ル樹脂が組み込まれ、そして、架橋点間が柔軟なポリビニルホルマ−ル鎖で延長され、延性が付与されたことにより、荷重がかかった際のネットワ−クの変形が大きくなり、強靭化したものと考えられる。
生成した樹脂のTEM画像を示す(写真)。(a)比較例2、(b)比較例4、(c)比較例6、(d)実施例1、(e)、実施例2をそれぞれ表す。

Claims (7)

  1. ポリビニルアセタ−ル樹脂にジカルボン酸無水物を付加したジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂とエポキシ化合物とを含むエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記ポリビニルアセタ−ル樹脂が下記式で示される構成単位A、BおよびCを含み、構成単位AにおけるRが水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記ポリビニルアセタール樹脂の構成単位Aの含有率が50〜80mol%であって、構成単位Bの含有率が0.1〜49.9mol%であって、構成単位Cの含有率が0.1〜49.9mol%である、請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記ジカルボン酸無水物が5員環で構成されるジカルボン酸無水物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物に硬化剤を添加して得られるエポキシ樹脂硬化物。
  6. ポリビニルアセタ−ル樹脂にジカルボン酸無水物を予め付加したジカルボン酸無水物付加ポリビニルアセタ−ル樹脂とエポキシ化合物とを混合させ生成することを特徴とする、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項6の方法で製造したエポキシ樹脂組成物に硬化剤を添加して生成することを特徴とする、エポキシ樹脂硬化物の製造方法。
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