JP4627339B2 - 生分解性樹脂水系分散体及び生分解性複合材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は生分解性樹脂水系分散体及び生分解性複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
布製品や紙製品等の植物性繊維を原料とした製品は、微生物等によって分解され易く、埋没による廃棄処分が容易であるが、植物性繊維等の天然素材は耐水性、耐溶剤性、気密性、強度等の物性が充分でない場合が多く、従来より各種の合成樹脂と複合化することにより、これらの改善が図られてきた。
【0003】
しかしながら、従来より植物性繊維等の天然素材と複合化するために用いられていた合成樹脂は、微生物等による分解が極めて遅いため、埋没による廃棄処分が困難であり、また燃焼カロリーが高いため焼却処分した場合、焼却炉を傷める等の問題があり、更に一部の合成樹脂は焼却時に有害ガスを発生して環境汚染を生じる虞れがあった。従って、このような合成樹脂と天然素材とを複合化した素材も当然、合成樹脂の有する上記問題を生じる虞れがあり、このため近年は、従来の合成樹脂にかわる生分解性樹脂の応用開発が進められている。
【0004】
例えば、特開平4−334448号公報、特開平5−311600号公報、特開平8−244836号公報等には、パルプ、繊維等と生分解性樹脂からなる生分解性複合材料が提案されている。しかしながら、これらの生分解性複合材料を得るには生分解性樹脂を有機溶媒で希釈して使用する必要があり、しかも使用できる有機溶媒は、塩素系溶媒や芳香族系溶媒に限定されるため、安全面、環境面で好ましいものではなかった。
【0005】
一方、生分解性樹脂の水系分散体を用いた生分解性複合材料として、特開平2−222421号公報には、ポリヒドロキシ酪酸・ポリヒドロキシ吉草酸共重合体の水系分散体をコーティングした生分解性複合材料が提案されている。しかしながら生分解性樹脂の水分散体を得るためには多量の水溶性高分子を用いる必要があり、この結果、生分解性複合材料の耐水性が不十分となるという問題があった。また特開平9−78494号公報には、ポリ乳酸及び/又は他のヒドロキシカルボン酸との共重合物の粒子及び充填剤を、水溶性高分子を用いて水分散させてなる水系塗料組成物が提案されている。しかしながら、この水系塗料組成物は、晶析等の湿式微粒子化によって水系分散体とする等、製造が煩雑であり、また充填剤を必須成分として含有するため透明性を要求される用途への利用ができないという問題があった。しかも、この水系塗料組成物も、生分解性樹脂を分散させるために多量の水溶性高分子を用いているため、紙等にコーティングして生分解性複合材料を得た場合、得られる生分解性複合材料の耐水性が不十分となるという問題もあった。更に上記の生分解性複合材料はいずれも、近年検討が進められている生ゴミコンポスト用の回収袋等のように、生分解性を積極的に利用する用途への応用に際しては、生分解性が必ずしも充分とは言えなかった。このため、生分解性に優れとともに、充分な耐水性、強度等の物性を発現し得る生分解性複合体及び、このような複合体に用いることのできる生分解性樹脂水系分散体の出現が望まれていた。
【0006】
上記の要望に応えるものとして、特開平2−77920号公報には、変性澱粉系生分解性樹脂の水系分散体を用いて生分解性複合材料を得ることが記載されている。しかしながら、特開平2−77920号公報に記載されている水系分散体を得るには、生分解性樹脂を予め湿式粉砕した後に水に分散させる等の煩雑な作業を要したり、直接分散させようとすると多量の分散安定化剤を必要とする等の改善すべき問題があった。
【0007】
本発明は上記の現状に鑑みなされたもので、繊維製品や紙製品等の天然素材を原料とする製品への塗工、含浸、噴霧、内部添加用等としての利用が可能で、生分解性に優れ、製造が容易な生分解性樹脂水系分散体及び、この生分解性樹脂水系分散体を用いた耐水性の良好な生分解性複合材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂が水に分散された水系分散体であって、該分散体中には、生分解性樹脂としてエステル化ビニルエステルグラフト重合澱粉、エステル化ポリエステルグラフト重合澱粉より選ばれた少なくとも1種の化学変性澱粉系生分解性樹脂を含有するとともに、分散安定化剤として平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物と、鹸化度70〜90%のポリビニルアルコールとを重量比で、平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物:鹸化度70〜90%のポリビニルアルコール=8:2〜1:9の割合で含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の生分解性複合材料は、上記生分解性樹脂水系分散体を、シート基材と複合化してなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の生分解性樹脂水系分散体において、生分解性樹脂として用いる化学変性澱粉系生分解性樹脂としては、エステル化ビニルエステルグラフト重合澱粉、エステル化ポリエステルグラフト重合澱粉が挙げられる。これらエステル化ビニルエステルグラフト重合澱粉、エステル化ポリエステルグラフト重合澱粉に用いられるエステル化試薬としては、アシル基の炭素数2〜18のビニルエステル、又は酸無水物、酸塩化物が好ましく、グラフト試薬としては、アシル基の炭素数2〜18のビニルエステル、環員数2〜12のラクトンが好ましい。これら化学変性澱粉系生分解性樹脂は、2種以上を併用することができる。
【0011】
本発明において用いる生分解性樹脂として、上記化学変性澱粉系生分解性樹脂とともに他の生分解性樹脂を併用することができる。他の生分解性樹脂としては、例えば澱粉エステル、澱粉セルロース等の澱粉誘導体、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル、アセチルセルロース等のセルロース誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。化学変性澱粉系生分解性樹脂と上記他の生分解性樹脂とは、ポリマーアロイ或いはポリマーブレンドとして用いることができるが、化学変性澱粉系生分解性樹脂の配合比は、優れた生分解性を維持するために、50重量%以上であることが好ましい。また更に、樹脂の物性を改善するために必要に応じてオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の汎用樹脂を併用しても良いが、優れた生分解性を維持する上で、これらの配合比は20重量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明において、上記生分解性樹脂を水に安定に分散させた安定な水分散体を形成するために、分散安定化剤として、平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物を用いる。
【0013】
上記分散安定化剤として用いる平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のカチオン性アクリル系モノマーや、これらカチオン性アクリル系モノマーにハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸、モノクロル酢酸等を反応して得られる、例えばメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチルジメチル硫酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノプロピルクロル酢酸塩等の4級アンモニウム塩等の単独重合体や共重合体が挙げられる。更には上記カチオン性アクリル系モノマーと、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸ポリオキシエチレンエステル、アクリル酸アルコキシポリオキシエチレンエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ポリオキシエチレンエステル、メタクリル酸アルコキシポリオキシエチレンエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、モルホリルアクリルアミド等のアクリルモノマー、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、テトラエチレングリコールアリルエーテル、メトキシエチレングリコールアリルエーテル等のアリルエーテル類、酢酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、メチルビニルイミダゾール等のビニルアミン類、ジアリルアンモニウムクロライド、或いは上記カチオン性アクリル系モノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体等のアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0014】
更にアクリル系ポリマー以外のカチオン性高分子化合物として、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン等の環状イミンの重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の不飽和アミンの重合体等や、これらの4級アンモニウム塩等のカチオン系ポリマーが挙げられる。またこれらのカチオン系ポリマーに、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシアルキル基等を付加したものでも良い。アルキル基はアルキルハライドを、ヒドロキシアルキル基は1,2−エポキシアルカンを、アシル基はアシルハライドを、ポリオキシアルキレン基は酸化エチレンを、カルボキシアルキル基はモノクロル酢酸やアクリル酸等を、それぞれカチオン系ポリマーと反応させることにより付加させることができる。
【0015】
カチオン性高分子化合物は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の二塩基酸類や、これら二塩基酸類のアルキルエステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエーテル等のジエポキシ類、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、尿素、グアニジン類、二塩基酸ジハライド、ジアルデヒド等で架橋したものでも良い。
【0016】
本発明において、カチオン性高分子化合物としてカチオン性アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体を用いる場合、カチオン性高分子化合物中におけるカチオン性アクリル系モノマーの含有率は30モル%以上であることが好ましい。カチオン性高分子化合物は、通常、適当な酸性化合物の塩として用いるのが好ましく、このような酸性化合物としては、塩酸、硫酸、蟻酸、リン酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、乳酸等の有機酸のいずれでも良いが、中でも酢酸、リン酸、乳酸が安全性、価格、熱安定性、着色性等の面で好ましい。本発明においてカチオン性高分子化合物としては、上記した化合物のなかから、平均分子量30万以上の化合物を選択して用いる。
【0017】
本発明において上記したカチオン性高分子化合物うち、アクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルやその中和物等のモノマー、或いはこれらモノマーの4級塩の少なくとも一種を主成分とする重合体が好ましい。
【0018】
一方、分散安定化剤として用いる平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物としては、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体の単独重合体やこれら単量体相互の共重合体、これら不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体と、共重合可能な他の単量体(以下、単に他の単量体と呼ぶ。)との共重合体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸やこれらの酸の中和物、部分中和物等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸やこれらの酸の中和物、部分中和物等が挙げられ、不飽和スルホン酸系単量体としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸やこれらの中和物、部分中和物等が挙げられる。
【0019】
アニオン性高分子化合物として、上記不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体と他の単量体との共重合体を用いる場合、他の単量体としては特に制限はないが、例えば(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、ポリエチレングリコールモノプレノールエステル、ポリプロピレングリコールモノプレノールエステル、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、ポリエチレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノアリルエーテル、ビニルアルコール等の水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等のリン含有単量体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0020】
アニオン性高分子化合物は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の二塩基酸類や、これら二塩基酸類のアルキルエステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエーテル等のジエポキシ類、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、尿素、グアニジン類、二塩基酸ジハライド、ジアルデヒド等で架橋したものでも良い。
【0021】
アニオン性高分子化合物は、通常、適当な塩基性化合物の塩として用いるのが好ましく、このような塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン化合物、アンモニア等が用いられる。
【0022】
アニオン性高分子化合物としては、上記したものの中から平均分子量30万以上のものを選択して用いる。上記アニオン性高分子化合物のうち、メタクリル酸やその中和物の少なくとも一種を主成分とする重合体が好ましい。
【0023】
本発明において、分散安定化剤として上記した平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物とともに、鹸化度70〜90%のポリビニルアルコールを併用する。ポリビニルアルコールとしては、平均分子量が5〜30万のものが好ましい。
【0024】
尚、上記カチオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコールの平均分子量は、数平均分子量を意味する。またポリビニルアルコールの鹸化度は、ポリビニルアルコールの水酸基価から算出することができる。
【0025】
本発明において、生分解性樹脂水系分散体における生分解性樹脂の分散安定性をより高めるとともに、生分解性水系分散体を用いて得た複合材料の耐水性を高める上で、平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物と、ポリビニルアルコールとを、重量比で、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物:ポリビニルアルコール=8:2〜1:9の割合で使用するが、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物:ポリビニルアルコール=5:5〜2:8が好ましい。
【0026】
本発明の生分解性樹脂水系エマルジョンには、必要に応じて上記成分以外に更に、増粘剤、表面平滑剤、離型剤、撥水剤(疎水性向上剤)、防錆剤、流動性調製剤等を含有せしめることができ、増粘剤としては、ポリエチレングリコール等のポリアルコキシド系高分子、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉誘導体、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム等の植物ガム、カゼイン、キトサン、キチン等の動物性高分子等が挙げられる。一方、表面平滑性、離型性、撥水性等を改善するために、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類を含有させることができる。天然ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ固体ろう等の植物系天然ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系天然ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系天然ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス等の石油系天然ワックス等が挙げられる。また合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素類、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等が挙げられる。
【0027】
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、紙、パルプ、動植物繊維の不織布、織布、編布、皮革製品等の動植物素材からなる製品に複合化することで、これらの製品の撥水・撥油性、耐水性、気密性、表面光沢等を向上させることができる。複合化方法としては、本発明の水系分散体を、動植物素材からなるシート状物、板状物、不織布、織布、編布、成形品等の製品の表面に塗布したり噴霧したり、これらの製品に含浸させた後、加熱ロール、プレス、金型等によって加熱、加圧処理する方法等が挙げられる。また、これらの製品の製造原料として用いる動植物素材の粉末、粒状体、スラリー、ペースト等に添加して複合化したり、他の天然素材、例えば粘土、砂等の無機系鉱物質等の粉末、粒状体相互を結合するためのバインダーとして用いて粉末、粒状体等と複合化しても良い。例えば、シート基材が紙の場合、生分解性樹脂水系分散体をパルプスラリー中に添加して抄紙することにより、パルプとアセチルセルロース系生分解性樹脂とを複合化させることができる。
【0028】
本発明の生分解性樹脂水系分散体を、動植物素材からなる製品の耐水性、耐溶剤性等を高めるために用いる場合、離型性・疎水性向上剤として天然ワックス及び/又は合成ワックスを含有していることが好ましい。天然ワックス及び/又は合成ワックスを含有する場合、製品の撥水・撥油性、耐水性、耐油性、気密性等のより向上を図ることができるとともに、加工時の熱処理工程における加熱ロール、プレス、金型等からの離型性が向上するため好ましい。
【0029】
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、例えば攪拌装置を有する密閉槽内に、化学変性澱粉系生分解性樹脂、平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、及び水を同時に仕込み、加熱攪拌しながら加圧して生分解性樹脂を分散させる加圧分散法、常圧または加圧下に保持されている熱水中に、生分解性樹脂、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコールとを含む溶融物を添加攪拌して分散させる直接分散法、生分解性樹脂の有機溶媒溶液を、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコールを含む水溶液中に添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法、生分解性樹脂を加熱溶融させ、これにカチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物と、ポリビニルアルコールとを含む水溶液を添加攪拌して生分解性樹脂を水に分散させる転相法等により得ることができる。
【0030】
上記以外の方法でも、生分解性樹脂の水系分散体を得ることができる方法であれば適宜採用することができるが、生分解性樹脂の幅広い種類に適応が可能な点で、上記した生分解性樹脂の有機溶媒溶液を、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物と、ポリビニルアルコールとを含む水溶液中に添加攪拌して分散させる方法が好ましい。また水系分散体を調製するに際し、必要により高圧ホモゲナイザー等の分散装置を併用しても良い。
【0031】
上記生分解性水系分散体をシート基材と複合化してなる本発明の生分解性複合材料は、上記生分解性樹脂水系分散体を、紙、不織布、織布、編布、合成樹脂のシート、フィルム等のシート基材に、含浸させたり、塗布したり、噴霧して硬化させる等により複合化して得ることができる。またシート基材の製造工程において、シート基材製造原料中に添加することにより、シート基材と複合化することもできる。例えば、シート基材が紙の場合、生分解性樹脂水系分散体をパルプスラリー中に添加して抄紙すればよい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0033】
実施例1〜4、比較例1〜5
表1に示す生分解性樹脂、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール、脱イオン水、酢酸エチルを同表に示す割合でホモミキサーを装着したオートクレーブ中に仕込み、120℃に加熱して10,000r.p.mで3分間撹拌した後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去して生分解性樹脂水系分散体を得た。尚、カチオン性高分子化合物を用いた場合、pHが6以上のときには酢酸でpHを6に調整し、アニオン性高分子化合物を用いた場合、pHが8以下のときには水酸化ナトリウムでpHを8に調整してから加熱、撹拌した。得られた各水系分散体中に分散している生分解性樹脂の粒子径を比較するために、水系分散体の製造直後に粒度分布測定装置(堀場製作所株式会社製:LA−910型粒度分布測定装置)にて分散している生分解性樹脂の粒子径を測定した。またこの水系分散体を、20℃と40℃の雰囲気下で保持し、それぞれの温度における水系分散体の経時安定性を評価した。これらの結果を表1にあわせて示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示した水系分散体の安定性は、100mlのスクリュー管に水系分散体50mlを入れ、20℃と40℃の恒温槽中で静置した後、1カ月後及び2カ月後の分散状態を目視観察し、
○・・・分離が認められない。
△・・・分離が認められるが、スクリュー管の横倒し、立て直し操作を10回繰り返すと、再分散して均一となる。
×・・・分離が認められると共に沈降物がハードケーキ状となり、スクリュー管の横倒し、立て直し操作を10回繰り返しても再分散しない。
として評価した。
【0036】
尚、上記表1に示す生分解性樹脂、カチオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物等は以下の通りである。
【0037】
(1)生分解性樹脂
▲1▼生分解性樹脂A:日本コーンスターチ株式会社製:コーンポールCPR−D2
▲2▼生分解性樹脂B:日本コーンスターチ株式会社製:コーンポールCPR−F3C
▲3▼生分解性樹脂C:日本コーンスターチ株式会社製:コーンポールCPR−F3D
【0038】
(3)カチオン性高分子化合物
▲1▼カチオン−A:メタクリル酸ジメチルアミノエチル/アクリルアミド(重量比で80:20)共重合体(カチオン化度64%、平均分子量600万)
▲2▼カチオン−B:メタクリル酸ジエチルアミノエチル/アクリルアミド/メタクリルアミド(重量比で93:5:2)共重合体(カチオン化度84%、平均分子量500万)
▲3▼カチオン−C:アクリル酸ジメチルアミノエチル/アクリルアミド/メタクリルアミド(重量比で33:39:28)共重合体(カチオン化度20%、平均分子量20万)
【0039】
(4)アニオン性高分子化合物
▲1▼アニオン−A:アクリルアミド/メタクリル酸(重量比で90:10)共重合体(平均分子量2100万)
▲2▼アニオン−B:アクリルアミド/メタクリルアミド/メタクリル酸(重量比で55:10:35)共重合体(平均分子量1600万)
▲3▼アニオン−C:アクリルアミド/メタクリル酸/アクリル酸(重量比で70:10:20)共重合体(平均分子量20万)
【0040】
(5)ポリビニルアルコール
▲1▼PVA−A:鹸化度81.1%、平均分子量22万
▲2▼PVA−B:鹸化度87.5%、平均分子量15万
▲3▼PVA−C:鹸化度75.3%、平均分子量8万
【0041】
上記実施例1〜4、及び比較例1、2、4、5について、各水系分散体を、中性上質紙(坪量70g/m2)にバーコーターNo.20で塗工し、40℃の熱風乾燥機中で30分間乾燥した後、フェロ板に挟み、株式会社羽島製全自動転写プレス:HP−84にて130℃、200g/cm2の条件にて1分間プレスして処理した。次いで処理紙をJIS−P−8111に準拠し、20℃、60%RHで前処理した後、撥水性、撥油性、表面光沢、生分解性を測定した。これらの評価結果を表2に示す。また実施例1で用いた生分解性樹脂Aの代わりに、市販のポリ乳酸系生分解性樹脂に置き換えた他は実施例1と同様にして調製した水系分散体を、上記と同様の中性上質紙に同様にして塗工したもの(参考例1)、実施例1で用いた生分解性樹脂Aの代わりに、市販の脂肪族二塩基酸ポリエステル系生分解性樹脂に置き換えた他は実施例1と同様にして調製した水系分散体を、上記と同様の中性上質紙に同様にして塗工したもの(参考例2)、及び未処理中性上質紙の結果をあわせて表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
※1:撥水性は、JIS−P−8140に準拠して5分後の吸水度で示した。
※2:撥油性は、TAPPI紙パルプ試験法No.40に準じて測定した。
※3:表面光沢は、JIS−8142に準拠して測定した。
※4:生分解性は、処理紙を運転中の家庭用生ゴミ処理機に投入し、処理機の内容物を毎日、生ゴミ投入前に3メッシュの金網でふるい、処理紙が分解して金網上に残らなくなるまでの日数で評価した。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の生分解性水系分散体、化学変性澱粉系生分解性樹脂を、分散安定剤として平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物を用いて分散化していることにより分散安定性に優れ、特に平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物と、ポリビニルアルコールとを、重量比で、カチオン性高分子化合物又はアニオン性高分子化合物:ポリビニルアルコール=8:2〜1:9の割合で使用すると、生分解性水系分散体を用いて得た複合材料の耐水性を高めることができる。また本発明の生分解性樹脂水系分散体は、自然界において微生物により容易に分解されるため、本発明の分散体を布製品、紙製品に塗布することにより、布製品、紙製品の耐水性、耐油性、気密性等を向上することができるとともに、これらの布製品や紙製品を埋設廃棄した場合でも、容易に微生物によって分解されるため、環境を汚染する虞れがなく、本発明の生分解性水系分散体をシート基材と複合化してなる本発明の生分解性複合材料は、優れた生分解性とともに、優れた耐水性、耐油性等を発現する等の効果を有する。
Claims (2)
- 生分解性樹脂が水に分散された水系分散体であって、該分散体中には、生分解性樹脂としてエステル化ビニルエステルグラフト重合澱粉、エステル化ポリエステルグラフト重合澱粉より選ばれた少なくとも1種の化学変性澱粉系生分解性樹脂を含有するとともに、分散安定化剤として平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物と、鹸化度70〜90%のポリビニルアルコールとを重量比で、平均分子量30万以上のカチオン性高分子化合物又は平均分子量30万以上のアニオン性高分子化合物:鹸化度70〜90%のポリビニルアルコール=8:2〜1:9の割合で含有することを特徴とする生分解性樹脂水系分散体。
- 請求項1記載の生分解性水系分散体を、シート基材と複合化してなることを特徴とする生分解性複合材料。
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