JP4627109B2 - 鏡筒装置および鏡筒装置の組み立て方法 - Google Patents

鏡筒装置および鏡筒装置の組み立て方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相対移動する少なくとも二つのレンズ群を有する鏡筒装置、および、上記鏡筒装置の組み立て方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レンズ保持枠の製作が容易でかつ製作コストの低減も可能なレンズ鏡筒として提案された特開平5−257049号公報に開示のものは、レンズ保持枠が円周方向に分割して形成され、その分割片をレンズに固着する構造を有している。なお、上記各分割片には進退駆動用のカム溝に嵌入する嵌合部が設けられている。このレンズ鏡筒の組み付けを行う場合、固定枠内に固定枠を基準にして治具を挿入し、上記治具で複数のレンズ群を保持し、それぞれのレンズ群の外周部に上記分割片が接着固定される。接着後に上記治具は、固定枠から抜脱される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特開平5−257049号公報に開示のレンズ鏡筒を相対移動する異なるレンズ保持枠に保持される複数のレンズ群を有するレンズ鏡筒に適用した場合、各レンズ群を複数のレンズ保持枠を固着するときそれぞれのレンズ群に対して異なる治具を用いて接着固定する必要がある。したがって、上記異なる複数の治具間でレンズの芯ずれが生じる可能性があり、高精度のレンズ鏡筒を得ることが困難であった。
【0004】
本発明は、上述の不具合を解決するためになされたものであり、複数のレンズ群を有する鏡筒装置において、高精度の組み付けが可能な鏡筒装置を提供することを1つの目的とし、さらに、上記鏡筒装置を組み立てる組み立て方法を提供することを他の1つの目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の鏡筒装置は、相対移動する少なくとも二つのレンズ群を有する鏡筒装置において、単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群のそれぞれを保持するための二つの保持枠を組み付けて、さらに、上記単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群を組み込み、上記二つのレンズ群のそれぞれを上記二つの保持枠に固定したことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2記載の鏡筒装置の組み立て方は、相対移動する少なくとも二つのレンズ群を有する鏡筒装置の組立方法において、単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群のそれぞれを保持するための二つの保持枠を上記組み立て治具に組み付けて、さらに上記単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群を組み込み、上記二つのレンズ群のそれぞれを上記二つの保持枠に固定したことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1〜3は、本発明の一実施形態の鏡筒装置であるズームレンズ鏡筒の分解斜視図である。図4は、上記ズームレンズ鏡筒の鏡枠繰り出し状態における縦断面図である。図5は、上記ズームレンズ鏡筒の第1群枠と第2群枠の嵌合状態を示す光軸直交断面図であり、図6は、上記第1群枠と第2群枠の収納状態での舌片部解放状態を示す部分拡大図である。図7は、ガイド枠連結環の嵌合状態を示す拡大部分断面図であり、図8は、保持枠連結環周りの嵌合状態を示す拡大部分断面図である。なお、ズームレンズ鏡筒の説明において、被写体側を前方、結像面側を後方とし、回転方向は、被写体側から見たときの回転方向で示すものとする。
【0010】
上記実施形態のズームレンズ鏡筒1は、図1〜3に示すように主にカメラ本体等に固定支持される固定枠2と、固定枠2に回転可能に支持される駆動環3と、駆動環3とともに回転しながら進退駆動される回転環4と、回転環4とともに回転しながら進退駆動されるカム環5と、カム環5を介して回転することなく進退駆動される保持枠部材の第1群枠6および第2群ガイド枠9および保持枠部材の第3群枠8と、図示しないフォーカス機構を介して進退駆動される保持枠部材の第2群枠7と、固定枠2により直進ガイドされる直進リング13と、直進ガイドされる直進キーリング14と、上記第2群ガイド枠9に連結される第2群ガイド枠連結環10と、上記第3群枠8に連結される第3群枠連結環11と、第1群枠6に保持される第1群レンズ41と、第2群枠7に保持される第2群レンズ42と、第3群枠8に保持される第3群レンズ43とを有してなる。
【0011】
上記固定枠2は、円環状の部材であって、その内周面に直進溝2aと、光軸Oに対して斜行するカム溝2bと、前方端部に径方向に弾性変形可能な駆動環保持用爪2cとが設けられている。
【0012】
上記駆動環3は、円環状の部材であって、その外周に駆動ギヤ3aと、円環部に光軸Oと平行な直進溝3bが設けられている。
【0013】
この駆動環3は、上記保持用爪2cを変形させながら固定枠2の外周に嵌入され、上記保持用爪2cにより軸方向の移動が規制された状態で固定枠2に回転可能な状態で保持される。
【0014】
上記回転環4は、円環状の部材であって、後方部外周にカムフォロア4aが固着され、後方開口側に内周縁部4cと、内周面4fに光軸Oと平行な直進溝4dおよび光軸Oに対して斜行するカム溝4eとが設けられている。
【0015】
この回転環4は、カムフォロア4aを固定枠2のカム溝2bおよび駆動環3の直進溝3bに嵌入した状態で固定枠2の内周面2dに嵌合しており、駆動環3の回転により回転、かつ、光軸O方向に進退駆動される。
【0016】
上記直進リング13は、円板状部材であって、外周部13bと、段部13aと、ビス穴13cと、このリングを切り欠いた切り欠き部13dとを有する。また、上記直進キー12は、突起部12bを有する起立部と真直な直進キー部とを持つL字形状の板部材である。
【0017】
この直進キー12は、直進リング13に対してビス穴13cに挿通したビス15をねじ穴12aに螺着して固着される。その固着時に直進リング13の外周13bを回転環4の内周後端部の内面4fに設けた溝4cにその直径を弾性変化させて挿入し、回転摺動自在に取り付ける。
【0018】
上記取り付け状態で直進リング13は、回転環4に対して光軸O方向に一体であり、回転可能状態で支持される。また、直進キー12は、光軸Oと平行に前方に向けて延出した状態に保持される。そして、上記直進リング13における直進キー12の突起部12bが固定枠2の直進溝2aに摺動自在に嵌入しているので、直進キー12は、回転が規制された状態で光軸O方向に進退駆動されることになる。
【0019】
上記カム環5は、円環状の部材であって、後方部外周にカムフォロア5aが固着され、後方開口側に内周溝5bと、内周面5g上に光軸Oに対して斜行するカム溝5d,5e,5fとが設けられている。なお、カム溝5d,5e,5fは、それぞれの溝端部がカム環外方に通じる単一の挿通溝(図示せず)に連結されており、上記各カム溝に嵌入される各カムフォロアは、上記挿通溝を介して対応するカム溝に挿入可能である。
【0020】
上記直進キーリング14は、リング外周面14fと、外周面に固着されるカムフォロア14aと、リング突起部14dと、前方に延出する2つの直進キー部14bと、直進キー12が円周方向で精密嵌合するリング内周のガイド溝14cとを有している。
【0021】
上記カム環5を組み込むには、回転環4の内周面4fに嵌入し、カムフォロア5aを回転環4の直進溝4dに係合させた状態とする。そこで、直進キーリング14のリング突部14dを図示せぬカム環5の端部に設けた切り欠きからカム環5の内周溝5bに回転可能に嵌入させ、リング外周面14fを回転環4の内周面4fに嵌合た状態で直進キーリング14が取り付けられる。その取り付け状態で直進キー14のカムフォロア14aは、カム溝4eに摺動自在に嵌入し、さらに、ガイド溝14cには直進キー12が摺動自在に嵌入する。したがって、上記カム環5は、回転環4とともに回転し、かつ、光軸O方向回転が規制される直進キーリング14とともに進退可能となり、回転環4の回転に伴ってカム溝4eにより直進キーリング14を介して進退駆動される。
【0022】
なお、リング突起部14dの外周面と回転環5の内周溝5bの谷径との間、および、内周溝14eの谷径とのカム環5の内周溝5bの外側の内径面(内周面5gと等しい)との間には、直進キーリング14とカム環5の嵌合時の逃げとなる隙間が設けられている。
【0023】
上記第1群枠6は、円環部材であって、後方部外周にカムフォロア6aが固着され、内周面6gに直進ガイド溝6b,6dが設けられ、前面部に3つの治具挿通開口部6cと、上記開口部6cを避けた部分に3分割されたレンズ保持内周部6e,6fとが設けられている。上記レンズ保持内周部6e,6fには第1群レンズ41であるレンズ20,21が径方向,光軸方向ともに遊びのある遊合状態で挿入され、後述するレンズ組み立て治具30により位置決めされて接着固定される。上記遊びの寸法は、各構成部材の部品精度を吸収するに十分な寸法とする。
【0024】
この第1群枠6は、その外周面6hがカム環5の内周面5gに相対回転,進退自在に嵌入され、カムフォロア6aがカム環5のカム溝5dに、また、直進ガイド溝6dに直進キーリング14の直進キー部14bがそれぞれ円周方向で精密嵌合状態で光軸O方向に摺動自在に嵌入した状態で組み込まれる。したがって、第1群枠6は、カム環5の回転に伴って回転することなく光軸O方向に進退駆動される。
【0025】
上記第2群枠7は、円環部材であって、外周部に光軸O方向後方に延出する3等分位置に突状の2つの直進ガイド部7a1および1つの直進ガイド部7a2と、左右2つの切り欠き部7fが設けられ、前面部に3つの治具挿通開口部7cと、上記開口部7cを避けた部分に3分割されたレンズ保持内周部7h,7i,7j(図4参照)と、上記直進ガイド部間の外周面7kと、後方部分に円筒状に設けられた外周面7mと、その外周面7mに設けられたピン7rとが設けられている。
【0026】
上記第2群枠7の3つの直進ガイド部7a1,7a2のうち、上方に位置する2つのガイド部7a1の前方端部に切り込みが入った弾性手段としての舌片部7bが上記2つの直進ガイド部7 a1 設けられている。その舌片部7bは、径方向に弾性変形が可能であり、外周側に小突起部7gを有する。
【0027】
上記レンズ保持内周部7h,7i,7jには第2群レンズ42であるレンズ22,23,24,25,26が径方向,光軸方向ともに遊びのある遊合状態で挿入可能であり、後述するレンズ組み立て治具30により位置決めされ、正しい位置に接着固定される。上記遊びの寸法は、後述するガタ取り機構による片寄せ量、および、各構成部材の部品精度を吸収するに十分な寸法とする。
【0028】
この第2群枠7は、外周面7kが第1群枠6の内周面6gに進退自在に嵌入され、直進ガイド部7a1,7a2が第1群枠6の直進ガイド溝6bに摺動自在に嵌入した状態で組み込まれる。なお、上記切り欠き7fには直進キーリング14の直進キー部14bがガタのある状態で挿通した状態で組み込まれる。直進キー部14bは、第1群枠6に設けられた別の溝である直進ガイド溝6dに光軸O方向に摺動可能に嵌入する。したがって、第2群枠7は、第1群枠6に対して直進ガイド溝6bにより回転規制された状態で進退移動可能に支持される。
【0029】
上記第1群枠6と第2群枠7とは、上述のように内周面6gと外周面7kとの嵌合により光軸O上の位置決めがなされるが、その嵌合は、精密嵌合(隙間が極めて少ない嵌合状態)である。しかし、わずかな嵌合ガタは避けられない。その嵌合ガタをなくすために上記直進ガイド部7a1の舌片部7bの弾性変形による付勢力を利用して第1群枠6に対して第2群枠7を下方のS方向(図5参照)に片寄せして上記の嵌合ガタを取り除くガタ取り機構が採用されている。このガタ取り機構の詳細については、図5を参照して後で説明する。
【0030】
上記第2群ガイド枠9は、円環部材であって、外周部に光軸O方向に沿って直進ガイド溝9cと、直進キー部14b、および、直進キー12がそれぞれガタ状態で挿通する切り欠き部9f、および挿通穴9eと、中央部に貫通する開口部9gと、後方外周に沿って外周溝9aと、上記外周溝上に突起挿通用切り欠き部9bとが設けられている。
【0031】
この第2群ガイド枠9は、第2群枠7に対して上記直進ガイド部内周7nに嵌合して取り付けられる。その取り付け状態では、直進ガイド溝9cに第2群枠7の直進ガイド部7a1と7a2を嵌入させて光軸O回りが規制され、進退移動可能となる。
【0032】
上記第2群ガイド枠連結環(以下、G枠連結環と記載する)10は、リング状部材であって、外周10fに固着されるカムフォロア10aと、内周10e上に突起10b、直進キー12がガタ状態で挿通する切り欠き10c、直進キー部14bが円周方向に精密嵌合状態で挿通する直進ガイド溝10dとが設けられている。
【0033】
このG枠連結環10は、その外周10fをカム環5の内周5gに嵌入させ、カムフォロア10aをカム溝5eに摺動自在に嵌入させて取り付けられる。このとき、直進ガイド溝10dに直進キー部14bが挿通する。
【0034】
さらに、上記G枠連結環10は、上記第2群ガイド枠9の外周溝9aに突起10bを切り欠き9bを介して嵌入させて第2群ガイド枠9と連結され光軸O方向に一体化される。そして、上記第2群ガイド枠9には第2群枠7がその直進ガイド部7a1,7a2を直進ガイド溝9cに嵌入させた状態で嵌合する。
【0035】
但し、上記G枠連結環10と第2群ガイド枠9との組み立て順は、鏡枠構造によっては先に上記連結環10を上記第2群ガイド枠9に取り付け、その後、カム環5に装着することも可能である。
【0036】
上記の組み付け状態では直進キー12がガタのある状態で挿通穴9eと切り欠き10cを挿通し、直進キー部14bがG枠連結環10の直進ガイド溝10dに精密嵌合状態で挿通し、切り欠き9fをガタのある状態で挿通している。したがって、G枠連結環10は直進キー部14bにより、第2群ガイド枠9は、第2群枠7の直進ガイド部7aとその内周7nを介して第2群枠7に摺動自在に保持されており、第2群ガイド枠9とG枠連結環10は、一体の状態でカム環5の回転に伴ってカムフォロア10aを介して回転することなく光軸O方向に進退駆動される。
【0037】
なお、上記第2群ガイド枠9と上記第2群枠7との間には、図示しないフォーカシング駆動機構が配設されており、そのフォーカシング駆動機構により第2群枠7を第2群ガイド枠9に対して相対的に光軸O方向に進退駆動し、フォーカシングが実行される。
【0038】
上述したように上記G枠連結環10と上記第2群ガイド枠9とは、外周溝9aにて連結されるが、その連結嵌合状態において、図7の拡大断面図に示すように光軸O方向に関しては、上記外周溝9aと突起10bが精密嵌合して連結される。光軸O方向と直交する径方向に関しては、G枠連結環10の外周10fがカム環5の内周5gに精密嵌合し、一方、第2群ガイド枠9は、その直進ガイド溝9cの底部が第2群枠7の内周7nに精密嵌合して保持されている。つまり、G枠連結環10の光軸中心と第2群ガイド枠9の光軸中心とは、光学的な意味での精密さでいえば、種々の部品誤差によってずれている。したがって、径方向に関してG枠連結環10と第2群ガイド枠9の連結嵌合部間で径方向の移動手段となる逃げ部を設ける必要がある。
【0039】
そこで、図7の拡大断面図に示すように第2群ガイド枠9の外周9dとG枠連結環10の内周10eの間に若干の隙間(移動手段)を設け、同様に第2群ガイド枠9の外周溝9aの底面と上記連結環10の突起10bの先端10baの間に若干の隙間(移動手段)を設け、上記連結環10の径方向の詰まりを防止している。同時にこの詰まりから生じる部品変形によるレンズ光軸Oのずれ発生を防止している。
【0040】
上記第3群枠8は、円環部材であって、後方外周に沿って外周溝8aと、突起挿通用切り欠き8bと、上述するレンズ組み立て治具30が挿通される3つの治具挿通開口部8cと、上記開口部8cを避けた部分に3分割されたレンズ保持内周部8g,8h,8i(図4参照)と、上記第2群枠7の外周部7mに精密嵌合する内周部8dと、上記内周部8d上の上方部に一体的に設けられ、径方向に弾性変形可能な2つの弾性手段としての舌片部8eと、第2群枠7に対して回転防止のため、内周部8dに設けられ、上記ピン7rと係合摺動する直進溝8jとが設けられている。
【0041】
上記第3群枠8のレンズ保持内周部8g,8h,8iには第3群レンズ43であるレンズ27,28,29が径方向,光軸方向ともに遊びのある遊合状態で挿入され、後述するレンズ組み立て治具30により位置決めされて接着固定される。上記遊びの寸法は、各構成部材の部品精度を吸収するに十分な寸法とする。
【0042】
上記第3群枠連結環(以下、L枠連結環と記載する)11は、リング状部材であって、外周11fに固着されるカムフォロア11aと、内周11e上に突起11b、直進キー部14bが円周方向において精密嵌合状態で挿通する直進ガイド穴11cと、直進キー12がガタ状態で挿通する切り欠き11dとが設けられている。
【0043】
上記L枠連結環11は、その外周11fをカム環5の内周5gに嵌入させ、カムフォロア11aをカム溝5fに摺動自在に嵌入させてカム環5に取り付ける。
このとき、直進ガイド穴11cに直進キー部14bが挿通する。
【0044】
さらに、上記L枠連結環11の突起11bを第3群枠8の外周溝8aに設けられた切り欠き8bに挿通させて嵌入し、上記連結環11を第3群枠8に連結する。さらに、上記第3群枠8は、その内周部8dを第2群枠7の外周部7mに嵌合させて組み付けられる。
【0045】
但し、上記L枠連結環11と第3群枠8の組み立て順は、鏡枠構造によっては先に上記連結環11を第3枠8に装着した後でカム環5に挿入することも可能である。
【0046】
上記組み付け状態ではL枠連結環11は、直進キー部14bにより回転が規制され、また、第2群枠8は、直進溝8jとピン7rとの係合により回転が規制され、第2群枠7に対して光軸O方向にのみ摺動自在に保持される。そして、第3群保持枠8とL枠連結環11は、一体の状態でカム環5の回転に伴ってカムフォロア11aを介して光軸O方向に進退駆動される。
【0047】
上記L枠連結環11と上記第3群枠8とは、上述したように外周溝8aにて連結されるが、その連結嵌合状態において、図8の拡大断面図にも示すように光軸O方向に関しては、上記外周溝8aと突起11bが精密嵌合して連結される。また、光軸O方向と直交する径方向に関しては、上記連結環11の外周11fがカム環5の内周5gに精密嵌合し、一方、第3群枠8の内周8dが第2群枠7の外周面7mに精密嵌合して保持されている。つまり、L枠連結環11の光軸中心と第3群ガイド枠8の光軸中心とは、光学的な意味での精密さでいえば、種々の部品誤差によってずれている。
【0048】
したがって、径方向に関してL枠連結環11と第3群枠8の連結嵌合部間で径方向の移動手段として逃げ部を設ける必要がある。そこで、図8の拡大断面図に示すように第3群枠8の外周8gとL枠連結環11の内周11eの間に若干の隙間(移動手段)を設け、また、第3群枠8の外周溝8aでL枠連結環11の突起11bが嵌入する部分の周溝は、底部のない溝(移動手段)として上記突起11bの先端を貫通させ、径方向の詰まりを防止している。同時にこの詰まりから生じる部品変形によるレンズ光軸Oのずれ発生を防止している。
【0049】
上記第3群枠8と第2群枠7とは、内周面8dと外周面7mとの嵌合により光軸Oと直交する方向の位置決めがなされるが、その嵌合は、精密嵌合(隙間が極めて少ない嵌合状態)であるがわずかな嵌合ガタは避けられない。その嵌合ガタをなくすために、第2群枠7と第1群枠6の場合と同様なガタ取り機構を採用している。但し、上記第3群枠8と第2群枠7とのガタ取り機構においては、後述する舌片部8eが第2群枠7の外周面7mに当接するような構造とし、舌片部の付勢状態が異なる。
【0050】
すなわち、上記内周面8dを形成する筒部にその内径側に少しばかり突出するように舌片部8eを配設し、その舌片部8eを第2群枠7の外周面7mに当接させる。上記舌片部8eの弾性変形による付勢力により第2群枠7に対して第3群枠8を相対的に上方に片寄せして嵌合ガタを取り除いている。なお、上記ガタ取り機構によりガタ取りを行った場合、枠に装着されるレンズの芯ずれが生じる可能性があるが、そのずれは、枠に装着されるレンズの外径とレンズ保持内周部8g,8h,8iの隙間を所定量に取り、後述するレンズ組み立て治具を用いて位置決めし、固着することでレンズ芯ずれが補正される。
【0051】
ここで、前述した第1群枠6と第2群枠7の嵌合部のガタ取り機構の詳細について図5の断面図を用いて説明する。
図5の断面図に示すように第1群枠6と第2群枠7の嵌合部において、上記第2群枠7の直進ガイド部7a1が第1群枠6の直進ガイド溝6bに嵌入すると、舌片部7bの小突起7gが直進ガイド溝6bの底面に当接するのでその付勢力により第2群枠7が第1群枠6に対してS方向に片寄せされ、嵌合ガタのない状態が得られる。
【0052】
但し、第1群枠6の直進ガイド溝6bと第2枠7の下方位置の直進ガイド部7a2との回転方向(円周方向)の隙間はほとんどない精密嵌合状態とする。他の直進ガイド溝6bと第2枠7の上方両側の直進ガイド部7a1とは、わずかな嵌合隙間のある状態とする。
【0053】
上記ガタ取り機構によりガタ取りを行った場合、保持枠部材に装着されるレンズの芯ずれが生じる可能性がある。しかし、そのずれは、保持枠部材に装着されるレンズの外径とレンズ保持内周部7h,7i,7jとに必要なギャップを取っておき、レンズ組み立て治具30(後述)を用いて正しい位置にレンズを保持した状態で接着固定することでレンズ芯ずれは補正される。
【0054】
上記レンズの外径とレンズ保持内周部のガタ取りにより必要となるギャップgについて説明すると、図5に示すように上記第1群枠6と第2群枠7との枠間のギャップGは、それぞれの枠の内周面6gの直径をD1 と、外周面7kの直径をD2 とすると、
G=D1 −D2 ……(1)
である。
【0055】
一方、第2群枠7のレンズ保持内周部7h,7i,7jのいずれか、例えば、7hの直径をD4 とし、それに対応して装着される第2群レンズ42のうちのレンズ22の直径をD3 とすると、その間のギャップgは、
g=D4 −D3 ……(2)
である。
【0056】
いま、第1群枠6の中心を一致させるべき光軸O1 (前述の光軸Oと等しい)とすると、その基準となる光軸O1 からレンズ22の光軸O2 が最大に偏心する量Eは、上記ギャップにより
E=G/2+g/2……(3)
となる。上記最大に偏心した位置から上記基準となる光軸O1 までレンズを移動して戻すためのギャップgは、上記偏心する量Eに相当するので、(3)式より、g=G/2+g/2となり、したがって、g=Gとなる。
【0057】
上述したようにギャップgは、ギャップGと等しく、第2群レンズと第2群枠7のレンズ保持内周部と隙間としては、少なくとも上記(1)式のギャップG以上を確保する必要がある。
【0058】
なお、上記第2群枠7の片寄せによりレンズの芯精度を確実に維持するには、例えば、舌片部7bの小突起7gの光軸O方向の位置をレンズ群の位置に合致させるとよい。さらに、上記小突起7gの位置を内周面6gと外周面7kとの嵌合長の中央位置の近傍に位置させるとその効果が向上する。
【0059】
また、上記第2群枠7の舌片部7bは、レンズ鏡筒1が繰り出し状態にて第1群枠6の直進ガイド溝6bに常時当接し、弾性変形しているので、そのためのへたり(永久変形)が生じる可能性がある。それを防止するために図6に示すようにレンズ鏡筒収納状態においては、第2群枠7の舌片部7bの小突起7gを、直進ガイド溝6bの底部がさらに深くなった凹部6h内に位置させて、舌片部7bの変形状態を解放させる。
【0060】
次に、レンズ組み立て治具30を用いて第1群枠6,第2群枠7,第3群枠8にそれぞれ第1群レンズ41,第2群レンズ42,第3群レンズ43を位置決めして接着固定する方法について、図9〜11を用いて説明する。
なお、図9,10は、レンズ組み立て治具と各レンズ保持枠と各レンズ群の分解斜視図である。図11は、上記レンズ組み立て治具により各レンズ群と各保持枠部材を保持した状態での縦断面図である。
【0061】
上記レンズ組み立て治具(以下、治具と記載する)30には、第1群枠6の内周6gにガタなく嵌合可能な外周30dと、前方側端面30mと、後方側端面30nと、前方側に突出し、第1群レンズ41を保持可能な3本の脚部30aと、後方側に突出し、第2群レンズ42を保持可能な3本の脚部30bと、上記脚部30bの外方で同様に後方側に突出し、第3群レンズ43を保持可能な3本の脚部30cとが設けられている。
【0062】
上記脚部30aにはその突出内周部にレンズ20と21とを保持可能な段状のレンズ保持面30e,30fが設けられている。また、上記脚部30bにはその突出内周部にレンズ22,23と、24と、25,26とを保持可能な段状のレンズ保持面30g,30h,30iが設けられている。さらに、上記脚部30cにはその突出内周部にレンズ27と、28と、29とを保持可能な段状のレンズ保持面30j,30k,30lが設けられている。
【0063】
上記各レンズ群を保持枠部材に固着するに際して、治具30に各保持枠部材である第1群枠6,第2群枠7,第3群枠8を取り付けるが、まず、治具30の前方側から外周30dに第1群枠6の内周6gを精密嵌合させ、治具30の前方端面30mを第1群枠6の底面6iに当接させて光軸O方向の位置決めをする。そのとき、上記脚部30aは、第1群枠6の開口部6cを挿通させて取り付ける。
【0064】
また、治具30の後方側から第2群枠7を第1群枠6の内周6gに嵌入し、治具30の後方端面30nに前端面7pを当接させて光軸O方向の位置決めをする。そのとき、上記脚部30bと脚部30cは、第2群枠7の開口部7cを挿通させて取り付ける。また、上記嵌入状態では前述したように第2群枠7は、第1群枠6に対して下方に嵌合ガタ分の片寄せがなされた状態に保持される。
【0065】
さらに、治具30の後方側から第3群枠8を第2群枠7の外周面7mに嵌入し、第2群枠7の光軸O方向にリング状に窪んだ面7qに第3群枠端面8kを当接させて光軸O方向の位置決めをする。そのとき、上記脚部30cは、第3群枠8の開口部8cを挿通させて取り付ける。また、上記嵌入状態では前述したように第3群枠8は、第2群枠7に対して上方に嵌合ガタ分の片寄せがなされた状態に保持される。
【0066】
上述したように治具30に上記各保持枠部材を装着した状態で第1,2,3群レンズ41,42,43の各レンズの外周部を上述した各脚部の各レンズ保持部で保持させて周方向位置決めを、さらに、各レンズの光軸O方向端面を対応するレンズ保持部の光軸O方向段部、例えば、レンズ保持部30eの段部30e0やレンズ保持部30iの段部30i0に当接させて光軸方向の位置決めをする。そのレンズ位置決め状態では、レンズ外周と保持枠部材のレンズ保持内周部、例えば、レンズ20の外周と第1群枠6のレンズ保持内周部6eやレンズ22の外周と第2群枠7のレンズ保持内周部7h等には少なくとも部品寸法のばらつき、あるいは、枠部材の片寄せを吸収するだけの隙間があり、レンズと保持枠部材のレンズ保持部とは直接当接しない。
【0067】
さらに、各レンズのすべては、光軸O方向において各保持枠部材と隙間のある状態、すなわち、浮いた状態で治具30に保持される。例えば、レンズ20に一面(図11のレンズ20の右面)は、光軸O方向におけるレンズ保持部の段部6jと浮いた状態である。もちろん、この隙間は、上述したようにレンズ外周隙間寸法を設けるのと同様に部品寸法のばらつき等を考慮して設ければよい。
【0068】
上記レンズ支持状態にて各レンズとそれに対応する各保持枠部材のレンズ保持内周部、および/または、光軸O方向におけるレンズ受け面段部の上記隙間に接着剤を注入して接着する。接着固定後、各保持枠部材を治具30から取り出す。
【0069】
上述のようにして組み込まれた本実施形態のズームレンズ鏡筒1において、鏡枠の進退を行う場合、図示しない鏡筒駆動機構を介して駆動環3が反時計回りに回転駆動され、各鏡枠が収納位置から繰り出され、それぞれ撮影可能なズームワイド位置、ズームテレ位置に移動する。すなわち、駆動環3の回転に伴って回転環4、および、カム環5が回転しながら繰り出される。回転環4とカム環5の回転により直進リング13,直進キー12が回転することなく回転環4とともに前方に繰り出される。また、さらに、直進キー12により回転が規制された状態で直進キーリング14もカム環5とともに前方に移動する。
【0070】
第1群レンズ41を保持する第1群枠6は、直進キーリング14の直進キー部14bにより回転が規制された状態でカム環5のカム溝5dにより光軸O方向前方に繰り出される。
【0071】
G枠連結環10とL枠連結環11は、直進キーリング14の直進キー部14bにより回転が規制された状態でそれぞれカム環5のカム溝5e,5fにより光軸O方向前方に繰り出される。
【0072】
そして、第2群ガイド枠9は、第1群枠6および第2群枠7で回転が規制された状態でG枠連結環10を介して第2群枠7とともに光軸O方向に繰り出される。また、第3群レンズ43を保持する第3群枠8も第2群枠7によって回転が規制された状態でL枠連結環11を介して光軸O方向に繰り出される。
【0073】
上述した複数の保持枠、すなわち、第1群枠6,第2群枠7,第3群枠8の相対移動の繰り出しによりレンズ鏡筒1は、撮影可能なワイド状態、あるいは、テレ状態にそれぞれズーミングされる。
【0074】
なお、上記ズーミング状態において第2群レンズ42を保持する第2群枠7は、第1群枠6に回転規制された状態で第2群ガイド枠9に内蔵されるフォーカシング駆動機構(図示せず)により第1群枠6,第3群枠8に対する光軸O方向の合焦位置に駆動され、レンズ鏡筒1のフォーカシングが行われる。
【0075】
以上、説明したように本実施形態のレンズ鏡筒1によれば、各レンズ群を各レンズ群枠に接着剤で固着する場合、まず、単一のレンズ組み立て治具30を適用し、各レンズ群枠6,7,8を保持する。その状態で第1,2,3群レンズ41,42,43を上記レンズ組み立て治具30にて光軸O方向位置および径方向位置をそれぞれ位置決めし、少なくともレンズの一部を枠部材に対して浮かし、上記各レンズ群枠に接着固定する。このように単一のレンズ組み立て治具を適用して同時に複数のレンズ群を接着するので、異なる治具を用いた従来の方法の場合と比較して治具間のばらつきが無く、レンズ群間の確実な芯出しが行え、高精度の光学性能を有するレンズ鏡筒が得られる。また、単一のレンズ組み立て治具30を適用することから作業性も向上する。
【0076】
なお、上述の実施形態におけるレンズの保持枠部材への固定方法は、接着剤による接着としたが、これに限らず、例えば、溶着や機械的固定方法を適用してレンズを保持枠部材に固着する場合にも本発明の要旨は適用可能である。
【0077】
また、上述の実施形態におけるレンズ組み立て治具を用いてレンズを保持枠部材に接着する場合、上記治具に保持枠部材を先に取り付けたが、鏡枠の構造によっては、上記治具にレンズ群を先に装着し、そこで保持枠部材を治具に取り付けて接着を行うようにすることも可能である。
【0078】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、複数のレンズ群を有する鏡筒装置において、単一の組み立て治具を適用して組み立てられ、レンズ群間の芯精度がよく、高精度の鏡筒装置を提供することができる。また、上記単一の組み立て治具を用いて上記高精度の鏡筒装置を組み立てる組み立て方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の鏡筒装置であるズームレンズ鏡筒の一部の分解斜視図。
【図2】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒の他の一部の分解斜視図。
【図3】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒のさらに他の一部の分解斜視図。
【図4】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒の鏡枠繰り出し状態における縦断面図。
【図5】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒の第1群枠と第2群枠の嵌合状態を示す光軸直交断面図。
【図6】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒の第1群枠と第2群枠の収納状態での舌片部解放状態を示す部分拡大図である。
【図7】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒のG枠連結環周りの嵌合状態を示す拡大部分断面図。
【図8】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒のL枠連結環周りの嵌合状態を示す拡大部分断面図。
【図9】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒のレンズ組み立て治具と各保持枠部材と各レンズ群の分解斜視図の一部。
【図10】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒のレンズ組み立て治具と各保持枠部材と各レンズ群の分解斜視図の他の一部。
【図11】上記一実施形態のズームレンズ鏡筒のレンズ組み立て治具で各保持枠部材およびレンズを保持した状態での縦断面図。
【符号の説明】
6 ……第1群枠(保持枠)
7 ……第2群枠(保持枠)
8 ……第3群枠(保持枠)
30 ……レンズ組み立て治具
41 ……第1レンズ群(レンズ群)
42 ……第2レンズ群(レンズ群)
43 ……第2レンズ群(レンズ群)

Claims (2)

  1. 相対移動する少なくとも二つのレンズ群を有する鏡筒装置において、
    単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群のそれぞれを保持するための二つの保持枠を組み付けて、さらに、上記単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群を組み込み、上記二つのレンズ群のそれぞれを上記二つの保持枠に固定したことを特徴とする鏡筒装置。
  2. 相対移動する少なくとも二つのレンズ群を有する鏡筒装置の組立方法において、
    単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群のそれぞれを保持するための二つの保持枠を上記組み立て治具に組み付けて、さらに上記単一のレンズ組み立て治具に上記二つのレンズ群を組み込み、上記二つのレンズ群のそれぞれを上記二つの保持枠に固定したことを特徴とする鏡筒装置の組み立て方法。
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