JP4626768B2 - 培養状態を顕微鏡観察する方法 - Google Patents
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Description
生細胞観察を長時間連続して行う場合、培養液中の生細胞を通常生活温度で一定に保持するとともに培養液のpHも一定に保持する必要がある。
その際、例えば、培養液のpHを血液の通常状態と同じpH7.4に保持するための条件は雰囲気二酸化炭素濃度を5%にすることである。
この場合も当然、ガスボンベとガスコントローラーとを必要とする。
また、培養室の設置された培養顕微鏡装置の場合は、培養試料室を高湿度に、顕微鏡室を乾燥下に維持する必要がある。培養試料室と顕微鏡室それぞれの気密性を確保するため、装置構造が複雑になる問題があった。また、試料室のガス濃度を一度に1種類しか設定できないので、それぞれの試料で異なるガス濃度の設定が必要な場合、試料ごとに試料室全体のガス置換を行う必要があり、ガス置換に時間がかかるとともに待機時間中はガス濃度がコントロールされない問題が生じる。
すなわち、本発明は、顕微鏡観察可能としてなる透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部と該培養部を所定のガス雰囲気に制御するガス濃度調節剤を収納する収納部とを有し、顕微鏡観察ステージに搭載可能である気密性容器の所定部に、培養細胞と液体培地を入れた非気密性の培養容器とガス濃度調節剤とを収納し、顕微鏡の観察ステージに配置し、培養を行いつつ、その培養状態を顕微鏡観察する方法である。
本発明の好ましい実施態様においては、該顕微鏡観察に用いる顕微鏡が電子撮像装置を用いたものであること、該培養中の顕微鏡を恒温槽内に設置することにより温度調節するものである培養状態を顕微鏡観察する方法である。
また、本発明は、顕微鏡観察可能としてなる透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部と該培養部を所定のガス雰囲気に制御するガス濃度調節剤を収納する収納部とを有し、かつ、顕微鏡観察ステージに搭載可能としてなる顕微鏡観察用の気密性容器である。
しかし、培養部と収納部とを明白に別部分とし、この間を柔軟性のあるフィルムやシートで結合した構造、パイプなどで結合した構造なども使用可能である。この構造を取る場合には培養部と収納部とが隔離可能であることから、特に培養部のガス雰囲気を計測し、所定雰囲気となったところで隔離するとの操作をすることにより、より精密なガス雰囲気の制御ができる。
また、顕微鏡観察は、通常、培養部の底面側から観察することから、本発明の気密性容器の培養部の底面は、通常倍率の顕微鏡で観察可能な材質でかつ厚さを2mm以下、好ましくは1mm以下とすることが好ましい。
容器の材質は、例えば、ガラスのほかに、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などガスバリア性樹脂に限らず、目的に応じて実質的にガスバリア性であれば、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルスチレン樹脂、ポリフルオロエチレン樹脂などの樹脂を選ぶことも出来る。特に全光線透過率が高い材質としては、ガラスやポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、脂環式アクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、上記の蛍光観察には不適当であるが、可視光線による観察に使用する容器材料としては、ポリカーボネートが強度的に優れ、繰り返し利用可能な容器として好適に使用できる。
また、成型容器とガスバリア製透明フレキシブルフィルムからなる複合容器でも良い。
フレキシブルフィルムからなるバッグの場合、気密性とする方法は、ヒートシールによる方法、クリップ止めする方法、これらを併用する方法、または2重のチャック付きの袋とし、チャックにてシールすること等のいずれでも可能である。気密性能としては、成型容器と同様に、少なくとも5日間、好ましくは2週間、ガス環境を維持できる気密性が求められる。この場合、外気侵入量で1日当たり容器内容積の1%以下、好ましくは0.5%以下のものが用いられる。
ここに、本発明の用途において濃度調節するガス成分は、主に、酸素と炭酸ガスであり、通常、飽和水蒸気濃度とされるものである。
これらを具体化した商品には、細胞培養用ガス調整剤カルチャーパル(商品名、三菱ガス化学(株)製)などがある。具体的には、指定の容積の容器内を、カルチャーパル・CO2は酸素濃度15%、炭酸ガス濃度5%に、カルチャーパル・ファイブは酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%に、カルチャーパル・ゼロは酸素濃度0%、炭酸ガス濃度5%にそれぞれ調節する機能に設計されたものである。
下記に実施例などで具体的に説明するが、好ましい方法の一例を示せば、下記となる。
本発明の気密性容器に、培養細胞と液体培地を入れた非気密性の培養容器と必要なガス雰囲気を制御するガス調整剤とを入れ、密封する。これを所定の培養温度に制御した恒温槽内に設置した電子撮像式装置付き顕微鏡の顕微鏡ステージ上に置き、培養状態を連続的にモニターする。
5%炭酸ガス濃度下で、細胞を培養し、顕微鏡観察を実施した。
光学的に透明なポリカーボネートで、気密シール部にシリコンガスケットを使用し、容器の開閉が可能で、寸法が縦10cm×横20cm×高さ2.5cm(内容積0.5L)の気密性容器を作成した(以下、0.5L透明気密性容器と呼ぶ)。
ガス濃度調節剤として、0.5L用のカルチャーパル・CO2(酸素濃度15%、炭酸ガス濃度5%に調節用、三菱ガス化学(株)製)を準備した。
このディッシュ3枚、上記のカルチャーパル・CO2 1袋と水を染み込ませた脱脂綿を上記の0.5L透明気密性容器に入れ密封した。
この0.5L透明気密性容器を、恒温槽内に設置した電子撮像装置付き位相差顕微鏡(倒立型細胞観測マイクロスコープ セルウォッチャー、コアフロント(株)製)の顕微鏡ステージに置き、37℃で3日間保管し、毎日細胞の増殖状態をこの倒立型位相差顕微鏡で連続的に観察するとともにこの0.5L透明気密性容器内のガス濃度をガス濃度測定器(CheckPoint O2/CO2, PBI-Dansensor A/S社製)で測定した。結果を表1に示した。
炭酸ガスコントロールチャンバーを用いて、酸素濃度20%、炭酸ガス濃度5%にガス雰囲気を調節して同じ細胞を同じ温度条件下、シャーレで培養して、チャンバー内に設置した顕微鏡で3日後の細胞の生育状況を確認した。結果を表1に示した。
濃度測定ガス 濃度(%) 細胞の生育状況
種類 1日後 3日後 3日後
実施例1 酸素 14.3 13.8 良好
二酸化炭素 4.8 5.1
比較例1 酸素 19.8 19.6 良好
二酸化炭素 5.0 5.2
低酸素コントロール条件下(酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%)で、細胞を培養し顕微鏡観察を実施した。
気密性容器は、実施例1と同様の0.5L透明気密性容器を用いた。
また、ガス濃度調節剤として、0.5L用のカルチャーパル・ファイブ(酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%に調節用、三菱ガス化学(株)製)を準備した。
このディッシュ3枚、上記のカルチャーパル・ファイブ 1袋と水を染み込ませた脱脂綿を0.5L透明気密性容器に入れ、密封した。
この0.5L透明気密性容器を、恒温槽内に設置した実施例1と同じ位相差顕微鏡の顕微鏡ステージに置き、37℃で3日間保管し、毎日細胞の増殖状態を倒立型位相差顕微鏡で連続的に観察するとともにこの0.5L透明気密性容器内のガス濃度をガス濃度測定器(CheckPoint O2/CO2, PBI-Dansensor A/S社製)で測定した。結果を表2に示した。
マルチガスコントロールチャンバーを用いて、酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%にガス雰囲気を調節して同じ細胞を同じ温度条件下、ディッシュで培養して、チャンバー内に設置した顕微鏡で3日後の細胞の生育状況を確認した。
濃度測定ガス 濃度(%) 細胞の生育状況
種類 1日後 3日後 3日後
実施例2 酸素 5.2 4.8 良好
二酸化炭素 4.8 5.1
参考例2 酸素 4.0 5.3 良好
二酸化炭素 5.0 5.2
顕微鏡観察作業の低コスト化、高効率化が図れる。また、培養顕微鏡装置などで装置構造が極めて簡略になり、装置コストの低下が図れる。
Claims (1)
- 顕微鏡観察可能としてなる透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部と該培養部を所定のガス雰囲気に制御するガス濃度調節剤を収納する収納部とを有し、顕微鏡観察ステージに搭載可能である気密性容器の所定部に、培養細胞と液体培地を入れた非気密性の培養容器とガス濃度調節剤とを収納し、顕微鏡の観察ステージに配置し、気密性容器内が高湿度状態で細胞培養を行いつつ、その培養状態を電子撮像装置を用いた顕微鏡により観察する方法であって、顕微鏡ユニット及び気密性容器を恒温槽内に設置することにより温度調節する事を特徴とする、培養状態の観察方法。
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