JP4626768B2 - 培養状態を顕微鏡観察する方法 - Google Patents

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本発明は、培養過程を顕微鏡観察する方法に係り、透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部とその雰囲気を制御するガス濃度調節剤とを有し、顕微鏡ステージに載せた状態で試料を培養しながら観察することが出来る顕微鏡観察用の培養容器を用いた方法に関するものである。
生物、生殖又はバイオテクノロジーの分野において実施される細胞の培養には往々にして大気下と異なるガス環境を形成することが要求される。
生細胞観察を長時間連続して行う場合、培養液中の生細胞を通常生活温度で一定に保持するとともに培養液のpHも一定に保持する必要がある。
その際、例えば、培養液のpHを血液の通常状態と同じpH7.4に保持するための条件は雰囲気二酸化炭素濃度を5%にすることである。
また、多くの研究分野で細胞の低酸素培養が注目されている。具体的には低酸素雰囲気下で細胞培養を行うことにより、生体内で生じていることと同様の生化学反応や遺伝子の生成を誘導したり、細胞の増殖・分化を促進する効果があることが明らかになっている。(特許文献1)。また、無酸素下での細胞培養により、血流の停止による臓器不全を再現する虚血再灌流実験でも無酸素下での細胞内での機序が詳細に研究されている(特許文献2)。具体的には、ガン治療研究における血管新生等が低酸素誘導因子(HIF)の遺伝子の転写により、引き起こされることが分かっている。また、ヒト細胞を用いた薬剤感受性試験において、還元雰囲気下での薬剤代謝試験が実施されている。
このような細胞培養においては、COインキュベーターやマルチガスインキュベーターを用いて大気と異なる所定のガス環境を作成し、このガス環境下に細胞と液体培地を入れた通気性のある通常の培養容器を入れ、加温しながら、培養を行う。培養容器としては、マルチウェルプレートやT型フラスコ、シャーレ、チャンバースライド、培養バッグ等を使用する。
大気と異なるガス環境下で細胞培養状況の観察又は写真撮影等の記録を行う場合、一時的に所定のガス環境を形成しているガスインキュベーターから培養容器を取り出して顕微鏡にセットし、観察又は、写真撮影を行うことになるが、大気下に設置した顕微鏡では細胞観察中に培地のガス濃度が変化し、所定のガス環境が維持できない。よって、培養細胞は、移送および観察中に培養中と異なるガス環境となり、培養細胞の状態が変化して、目的とする環境で観察できない問題点がある。
これを解決する手段として、実験室にマルチガスコントロールチャンバーを設置して、その中で培養や顕微鏡観察を行うことも出来る。具体的にはIn vivo環境実験装置ViVox−TCバイオ(ViVox社製)等が市販されている。しかしながら、これらのマルチガスコントロールチャンバーは、大変高価であるとともに、大量の置換ガスを使用するため、実験者の安全を考慮すると、設置場所に制限がある等の問題点がある。さらに、ガスコントロールインキュベーターやマルチガスコントロールチャンバーの中に顕微鏡等の観察機器を収納する方法では、系内が高湿度(ほぼ100%)のため、機器への結露により、機器が正常に機能しないため、長期に安定した試料観察はできなかった。
そこで、多くの実験者は、顕微鏡のステージ上を透明プラスチックで囲い、ガスボンベと連結したガス調節器などでガス濃度をコントロールして観察する方法を用いている。しかし、この方法は、ガス置換スペースが大きく、常にガスをリークさせながら観察するため、消費ガス量が多く、所定のガス濃度に到達するのに時間がかかる。
一方、細胞を用いた薬剤感受性試験のために、マルチウェル等の培養容器内の多数の生物標本を観察する培養顕微鏡装置として、温度、湿度、ガス濃度をコントロールしたチャンバーに試料室と顕微鏡を入れた装置(特許文献3)や、温度、湿度、ガス濃度をコントロールした培養室とその下にこれと隔離した顕微鏡観察室を設けた培養顕微鏡(特許文献4)などが開発されている。
この場合も当然、ガスボンベとガスコントローラーとを必要とする。
また、培養室の設置された培養顕微鏡装置の場合は、培養試料室を高湿度に、顕微鏡室を乾燥下に維持する必要がある。培養試料室と顕微鏡室それぞれの気密性を確保するため、装置構造が複雑になる問題があった。また、試料室のガス濃度を一度に1種類しか設定できないので、それぞれの試料で異なるガス濃度の設定が必要な場合、試料ごとに試料室全体のガス置換を行う必要があり、ガス置換に時間がかかるとともに待機時間中はガス濃度がコントロールされない問題が生じる。
顕微鏡ステージ上に顕微鏡観察専用の小型培養室を設け、その温度、湿度およびガス濃度をコントロールして、1種類の培養細胞を連続、長期的に顕微鏡観察または写真撮影を行う方法(特許文献5)がある。この方法も、上記と同様にガスボンベとガスコントローラーとを必要とする。また、ガスの流通を前提としており、流通ガスを飽和水蒸気ガスとしない場合には、培地からの水分蒸発により組成が変化しやすく、培養結果に悪影響を与えることがある。また、飽和水蒸気ガスとする場合、細菌やウイルスのコンタミネーションをなくす取り扱いが必須である。
特表2002−530068 特開平9−252766号公報 特開2005−326495 特開2005−10258 特開2004−329099
本発明は、培養過程を顕微鏡観察する方法に係り、顕微鏡ステージに載せた状態で試料を培養しながら観察することが出来る簡便な細胞培養観察システムを提供することにある。
本発明者らは、顕微鏡観察におけるガスコントロールの方法について鋭意研究を重ねた結果、ガス濃度調整剤を用いることにより、気密性容器内を所定のガス濃度と湿度環境とに維持して細胞試料を培養しつつ、顕微鏡観察し得ることを見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明は、顕微鏡観察可能としてなる透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部と該培養部を所定のガス雰囲気に制御するガス濃度調節剤を収納する収納部とを有し、顕微鏡観察ステージに搭載可能である気密性容器の所定部に、培養細胞と液体培地を入れた非気密性の培養容器とガス濃度調節剤とを収納し、顕微鏡の観察ステージに配置し、培養を行いつつ、その培養状態を顕微鏡観察する方法である。
本発明の好ましい実施態様においては、該顕微鏡観察に用いる顕微鏡が電子撮像装置を用いたものであること、該培養中の顕微鏡を恒温槽内に設置することにより温度調節するものである培養状態を顕微鏡観察する方法である。
また、本発明は、顕微鏡観察可能としてなる透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部と該培養部を所定のガス雰囲気に制御するガス濃度調節剤を収納する収納部とを有し、かつ、顕微鏡観察ステージに搭載可能としてなる顕微鏡観察用の気密性容器である。
本発明により、ガスボンベとそのガスコントローラーを使用することなく、簡便に、所定ガス雰囲気下で細胞を培養しつつ顕微鏡観察ができ、また、ガス濃度調節剤を適宜選択することにより気密性容器毎の異なるガス環境での培養・観察、さらに、その密閉状態を継続的に維持しての移動なども容易である。
本発明の気密性容器は、通常の細胞培養容器を収納することが出来る空間を有し、かつ、該部分が顕微鏡観察可能としてなる部分(以下、培養部と記す)と、該培養部のガス雰囲気を調節するガス調整剤を収納する部分(以下、収納部と記す)とを有するものであれば良く、2つの部分間に隔壁などない一体の容器、一体の容器の中に適宜、隔離用の溝、リブ、壁、フィルムなどを設けたものなどが簡便であり通常使用される。
しかし、培養部と収納部とを明白に別部分とし、この間を柔軟性のあるフィルムやシートで結合した構造、パイプなどで結合した構造なども使用可能である。この構造を取る場合には培養部と収納部とが隔離可能であることから、特に培養部のガス雰囲気を計測し、所定雰囲気となったところで隔離するとの操作をすることにより、より精密なガス雰囲気の制御ができる。
なお、ガス濃度の測定あるいはモニターは、本発明の気密性容器内に小型ガスモニターを設置しても良いし、ガス濃度測定器で随時、測定してもよい。また、非接触式で連続ガス濃度モニターが可能になるLED光を当てることで励起して蛍光を発するプローブやセンサーパッド、あるいはこれをウェルプレートに複合化したOxoPlate(Presens社製)等を用いても良い。
本発明の気密性容器は、顕微鏡で観察するものであり、顕微鏡のステージに設置できる高さとする。倒立型顕微鏡においては、通常、高さ6cm以下とすることが好ましい。また、マルチウェルプレートを収納する場合にも、高さ4cm以下とすることが好ましい。
また、顕微鏡観察は、通常、培養部の底面側から観察することから、本発明の気密性容器の培養部の底面は、通常倍率の顕微鏡で観察可能な材質でかつ厚さを2mm以下、好ましくは1mm以下とすることが好ましい。
本発明の気密性容器は、製造の容易さからは透明角型気密性容器が好ましい。この容器は角形の底材と4つの周辺材とを互いに接着などしてなる箱型の本体と、角形の蓋材とからなり、蓋を開閉自在とし、かつ、4つの周辺材との接触部分をシールした構造とされる。気密性の面から、蓋と本体とをシール材を介して止め具を用いて固定することが好ましい。本発明の気密性容器は、少なくとも5日間、好ましくは2週間、ガス環境を維持できる気密性が求められる。この場合、外気侵入量で1日当たり容器内容積の1%以下、好ましくは0.5%以下のものが用いられる。
本発明の気密性容器の顕微鏡観察部の材質は、上記にも一部記載しているが、上下面は光学的に透明な材質からなる。また、実質的にガスバリア性である。
容器の材質は、例えば、ガラスのほかに、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などガスバリア性樹脂に限らず、目的に応じて実質的にガスバリア性であれば、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルスチレン樹脂、ポリフルオロエチレン樹脂などの樹脂を選ぶことも出来る。特に全光線透過率が高い材質としては、ガラスやポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、脂環式アクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、蛍光顕微鏡で観察するに当たっては、その励起光として、通常、波長350〜750nmの光を使用し、これより長波長の蛍光を観察するので、広い波長領域にわたって透過率が高いガラスあるいは波長350nm以上で全光線透過率が80%以上であるシクロオレフィンポリマー(ZENOX,ZEONOR 日本ゼオン製)が特に好ましい。
また、上記の蛍光観察には不適当であるが、可視光線による観察に使用する容器材料としては、ポリカーボネートが強度的に優れ、繰り返し利用可能な容器として好適に使用できる。
本発明の気密性容器として、上記の成型容器以外にも、この目的に適合したガスバリア製透明フレキシブルフィルムからなるバッグを用いることも可能である。
また、成型容器とガスバリア製透明フレキシブルフィルムからなる複合容器でも良い。
フレキシブルフィルムからなるバッグの場合、気密性とする方法は、ヒートシールによる方法、クリップ止めする方法、これらを併用する方法、または2重のチャック付きの袋とし、チャックにてシールすること等のいずれでも可能である。気密性能としては、成型容器と同様に、少なくとも5日間、好ましくは2週間、ガス環境を維持できる気密性が求められる。この場合、外気侵入量で1日当たり容器内容積の1%以下、好ましくは0.5%以下のものが用いられる。
本発明の気密性容器内は高湿度状態なので、結露を防止して光透過性を確保するために、光透過面の内側に防曇加工を施しても良く、防曇フィルムを貼っても良い。
本発明で用いる培養容器は、一般に用いられる気密性の無い細胞培養容器である。具体的には、マルチウェルプレート、ディッシュ、チャンバースライド、ガス透過性素材からなる培養バッグ、ガスフィルター付きフラスコ等が挙げられる。
本発明で用いるガス濃度調節剤は、所定容積の密閉容器内(本発明の気密性容器内)のガス雰囲気を所定の濃度範囲で、一定の時間維持することを目的とする。そして、これらのガス濃度調節剤は、外気との空気交換を遮断しているバリア性(アルミバリア性)外袋を破って取り出し、本気密性容器に入れて、放置しておくだけで、一定時間後から所定の時間、容器内のガス濃度を所定の濃度に調節するようにしたものである。
ここに、本発明の用途において濃度調節するガス成分は、主に、酸素と炭酸ガスであり、通常、飽和水蒸気濃度とされるものである。
一定量の炭酸ガス濃度雰囲気とする場合、酸素吸収能ならびに炭酸ガス発生能を併せ持ったアスコルビン酸類が主剤として有効であり、適宜、金属塩を触媒として用いられる。そして、炭酸ガス濃度の低下には、炭酸ガス吸収剤としてアルカリ土類金属水酸化物が有効である。また、活性炭、ゼオライト、珪藻土、モレキュラーシーブ等の多孔質担体やこれに化学処理を施したものは、上記したアスコルビン酸類の担体としても有効であるが、ガス吸着剤として補助的に用いて、吸着平衡濃度からガス濃度を一定に維持することに使用できる。ガス濃度調節剤として、アスコルビン酸類、金属塩、多孔質担体、アルカリ土類金属水酸化物および水からなる組成物がある(特許文献2)。
ガス濃度調節剤の形状は、前記組成物を通気性包材で包装した包装体、通気性部分をもつキャニスター形状、シート状やその他の形状に成型加工されたものなどである。また、透明脱酸素フィルムで構成される透明バッグと炭酸ガス発生剤を組み合わせて使用しても良い。これらガス濃度調節剤は、通常、ガスバリア袋(アルミ外袋)に収納されている。
これらを具体化した商品には、細胞培養用ガス調整剤カルチャーパル(商品名、三菱ガス化学(株)製)などがある。具体的には、指定の容積の容器内を、カルチャーパル・COは酸素濃度15%、炭酸ガス濃度5%に、カルチャーパル・ファイブは酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%に、カルチャーパル・ゼロは酸素濃度0%、炭酸ガス濃度5%にそれぞれ調節する機能に設計されたものである。
本発明に使用される顕微鏡は、構造としては、倒立型顕微鏡あるいは落射型顕微鏡であることが好ましい。観察方法に特に制限は無く、光学顕微鏡、実体顕微鏡、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡など、いずれのタイプの顕微鏡も適用可能である。
電子撮像装置付き小型顕微鏡ユニットとこの培養容器キットを通常の恒温槽に設置することにより、細胞培養の連続モニターが実現できる。この方法で設置できる機器は、顕微鏡に限らず、細胞観察カメラ、細胞計測装置等の37℃条件で動作可能な機器ならいかなるものでも構わない。この電子撮像装置付き位相差顕微鏡としては倒立型細胞観測マイクロスコープ セルウォッチャー(コアフロント株式会社製)などが適用可能である。
本発明においては、所定の温度範囲での培養が通常、必須であり、この温度制御には、通常、恒温槽を用いる。恒温槽は、細胞培養に適用できる温度範囲を精度良く温度コントロール出来る恒温槽であれば、いかなるものでも良い。
以上に説明したものを使用して、本発明の細胞培養などを行いつつ、顕微鏡観察を行う。
下記に実施例などで具体的に説明するが、好ましい方法の一例を示せば、下記となる。
本発明の気密性容器に、培養細胞と液体培地を入れた非気密性の培養容器と必要なガス雰囲気を制御するガス調整剤とを入れ、密封する。これを所定の培養温度に制御した恒温槽内に設置した電子撮像式装置付き顕微鏡の顕微鏡ステージ上に置き、培養状態を連続的にモニターする。
上記した本発明の顕微鏡観察する方法並びにそれに使用する気密性容器によれば、気密性容器内にセットしたガス濃度調節剤により、所定のガス濃度に調節され、また、精密な温度制御は、恒温槽にて行える。ゆえに、培養部のガス濃度や湿度をコントロールする必要が無くなり装置構造が極めて簡単になる。異なるガス組成を実現するガス濃度調節剤をそれぞれこの培養容器に入れることにより、培養容器ごとに異なる最適ガス濃度の設定が可能となる。
実施例1
5%炭酸ガス濃度下で、細胞を培養し、顕微鏡観察を実施した。
光学的に透明なポリカーボネートで、気密シール部にシリコンガスケットを使用し、容器の開閉が可能で、寸法が縦10cm×横20cm×高さ2.5cm(内容積0.5L)の気密性容器を作成した(以下、0.5L透明気密性容器と呼ぶ)。
ガス濃度調節剤として、0.5L用のカルチャーパル・CO(酸素濃度15%、炭酸ガス濃度5%に調節用、三菱ガス化学(株)製)を準備した。
チャイニーズハムスター卵細胞CHO−K1(大日本製薬株式会社製)を細胞濃度(2.7×106cell/ml)の細胞溶液100μLをディッシュ(CORNING, Cell culture dish 430196, 60mmφ×15mm高さ)に撒く。これに液体培地Hamm's F12K(10%FBS、大日本製薬株式会社製)4mLを加えた。
このディッシュ3枚、上記のカルチャーパル・CO 1袋と水を染み込ませた脱脂綿を上記の0.5L透明気密性容器に入れ密封した。
この0.5L透明気密性容器を、恒温槽内に設置した電子撮像装置付き位相差顕微鏡(倒立型細胞観測マイクロスコープ セルウォッチャー、コアフロント(株)製)の顕微鏡ステージに置き、37℃で3日間保管し、毎日細胞の増殖状態をこの倒立型位相差顕微鏡で連続的に観察するとともにこの0.5L透明気密性容器内のガス濃度をガス濃度測定器(CheckPoint O2/CO2, PBI-Dansensor A/S社製)で測定した。結果を表1に示した。
参考例1
炭酸ガスコントロールチャンバーを用いて、酸素濃度20%、炭酸ガス濃度5%にガス雰囲気を調節して同じ細胞を同じ温度条件下、シャーレで培養して、チャンバー内に設置した顕微鏡で3日後の細胞の生育状況を確認した。結果を表1に示した。
[表1] ガス濃度(%)および細胞の生育結果
濃度測定ガス 濃度(%) 細胞の生育状況
種類 1日後 3日後 3日後
実施例1 酸素 14.3 13.8 良好
二酸化炭素 4.8 5.1
比較例1 酸素 19.8 19.6 良好
二酸化炭素 5.0 5.2
実施例2
低酸素コントロール条件下(酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%)で、細胞を培養し顕微鏡観察を実施した。
気密性容器は、実施例1と同様の0.5L透明気密性容器を用いた。
また、ガス濃度調節剤として、0.5L用のカルチャーパル・ファイブ(酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%に調節用、三菱ガス化学(株)製)を準備した。
ヒト肝臓ガン由来培養細胞Hep−G2(大日本製薬(株)製)を細胞濃度(2.7×106cell/ml)の細胞溶液100μLをディッシュ(CORNING, Cell culture dish 430196, 60mmφ×15mm高さ)に撒く。これに液体培地Dulbeco's Modifide Eagle's-MEM(GIBCO社)4mlを加えた。
このディッシュ3枚、上記のカルチャーパル・ファイブ 1袋と水を染み込ませた脱脂綿を0.5L透明気密性容器に入れ、密封した。
この0.5L透明気密性容器を、恒温槽内に設置した実施例1と同じ位相差顕微鏡の顕微鏡ステージに置き、37℃で3日間保管し、毎日細胞の増殖状態を倒立型位相差顕微鏡で連続的に観察するとともにこの0.5L透明気密性容器内のガス濃度をガス濃度測定器(CheckPoint O2/CO2, PBI-Dansensor A/S社製)で測定した。結果を表2に示した。
参考例2
マルチガスコントロールチャンバーを用いて、酸素濃度5%、炭酸ガス濃度5%にガス雰囲気を調節して同じ細胞を同じ温度条件下、ディッシュで培養して、チャンバー内に設置した顕微鏡で3日後の細胞の生育状況を確認した。
[表2] ガス濃度(%)および細胞の生育結果
濃度測定ガス 濃度(%) 細胞の生育状況
種類 1日後 3日後 3日後
実施例2 酸素 5.2 4.8 良好
二酸化炭素 4.8 5.1
参考例2 酸素 4.0 5.3 良好
二酸化炭素 5.0 5.2
実施例1,2において、この0.5L透明気密性容器にカルチャーパル・COやカルチャーパル・ファイブを用いて、ガス環境を一定で細胞を顕微鏡観察できた。また、酸素と二酸化炭素濃度は3日間維持されており、細胞も十分に生育していた。
従来から実験室にある安価な恒温槽とガス濃度調整システムを用いることで、高価なガス濃度コントローラーやレギュレーターやガスボンベ交換が必要無くなり、
顕微鏡観察作業の低コスト化、高効率化が図れる。また、培養顕微鏡装置などで装置構造が極めて簡略になり、装置コストの低下が図れる。

Claims (1)

  1. 顕微鏡観察可能としてなる透明部に設けたガス雰囲気を制御した培養部と該培養部を所定のガス雰囲気に制御するガス濃度調節剤を収納する収納部とを有し、顕微鏡観察ステージに搭載可能である気密性容器の所定部に、培養細胞と液体培地を入れた非気密性の培養容器とガス濃度調節剤とを収納し、顕微鏡の観察ステージに配置し、気密性容器内が高湿度状態で細胞培養を行いつつ、その培養状態を電子撮像装置を用いた顕微鏡により観察する方法であって、顕微鏡ユニット及び気密性容器を恒温槽内に設置することにより温度調節する事を特徴とする、培養状態の観察方法
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