JP4625230B2 - 薄膜形成装置および薄膜形成方法 - Google Patents

薄膜形成装置および薄膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧または大気圧近傍の圧力下において放電することにより反応性ガスをプラズマ状態とし、電極間に配置された基材に反応性ガス由来の薄膜を形成する際に用いる薄膜形成装置および薄膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より薄膜形成方法の一例として、真空下で放電し、反応性ガスをプラズマ状態とし、電極間に配置した基材等の表面に反応性ガス由来の薄膜を形成する方法が知られている(以下、真空プラズマ法という)。しかし、真空プラズマ法では、密閉漕や真空ポンプが必要となり処理装置が大がかりなものとなるため、大面積の基材上へ製膜したり、基材上への製膜処理を連続的に行うことが困難であった。また、放電により生じる反応性ガスのプラズマ密度が低いため処理効率が低く、生産性も低いものとなっていた。
これらの課題を解決するために、近年においては、大気圧または大気圧近傍の圧力下において反応性ガスをプラズマ状態とし基材の表面に薄膜を形成する方法(以下、大気圧プラズマ法という)が提案されている。大気圧プラズマ法においては真空装置が不要になることから装置を簡素化することができる。また、処理を行う毎に真空にしなくてもよいことから基材への製膜処理を連続的に行うことができ、処理効率を高め、生産性を高めることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、大気圧プラズマ法において基材上に良質な膜を形成させるには、対向する電極間に印加する電圧や供給する電力を大きなものとし、電極間に導入される反応性ガスのプラズマ密度を高くする必要がある。しかし、両極間に印加する電圧や供給する電力を大きなものとすると、電極の角の部分において放電が集中するなど電極間において放電が偏在する恐れがあった。このため、電極間における反応性ガスに由来するプラズマ密度にムラが生じ、その結果、基材上に形成される膜にもムラや筋が発生する恐れがあった。したがって、特に大面積の基材に均一でムラや筋のない膜を形成させるのが困難となっていた。
本発明の課題は、大面積の基材であっても、基材上に均一でムラや筋のない薄膜を形成することのできる薄膜形成装置と、この薄膜形成装置を用いた薄膜形成方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
大気圧または大気圧の近傍の圧力の下で、対向する電極間に電圧を印加し両極間に放電させることにより反応性ガスをプラズマ状態とし、電極間に基材を搬送しながら前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材の表面に薄膜を形成させる装置であって、
前記対向する電極のうち一方の電極は複数設けられ、
互いに対向して配置される電極と、前記電極間に薄膜形成の原料となる反応性ガスを導入可能に構成された導入系と、該反応性ガスを排気する排気系とを備え、
前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、電極の角が断面円弧状であり、
前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、対向する電極が電極間の電界強度を反応性ガスの導入系側から排気系側に向けて増大させるように構成することを特徴とする。
【0005】
請求項に記載の発明は、
大気圧または大気圧の近傍の圧力の下で、対向する電極間に電圧を印加し両極間に放電させて反応性ガスをプラズマ状態とし、前記電極間に基材を搬送しながら前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材の表面に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
前記対向する電極のうち一方の電極は複数設けられ、
前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、電極の角が断面円弧状であり、
対向する電極間に反応性ガスを導入および排気し、
前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、対向する電極間の電界強度を反応性ガスの導入側から反応性ガスの排気側へ向けて増大させることを特徴とする。
【0006】
請求項1または記載の発明によれば、対向する電極が電極間の電界強度を反応性ガスの導入側から排気側に向けて増大させるように構成しているため、反応性ガスが電極間に導入される際に、導入側においては弱く放電され、排気側においては強く放電される。したがって、反応性ガスが導入される側において放電が集中することにより反応性ガス由来のプラズマ密度にムラが生じ、その結果として基材上に形成される膜にムラや筋などが生じることを防ぎ、均一な膜を形成することができる。すなわち、大面積の基材に膜を形成する際にも均一な膜を形成することができる。
また、以上の様に筋やムラの発生を抑えることができるので、電極間に印加する電圧を高い周波数のものとし、それぞれの電極に供給する電力を大きなものとしてプラズマ密度を高くすることができるので、基材上に高品質の膜を効率よく形成させることができる。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項記載の薄膜形成装置において、
前記対向する電極のうち、少なくとも一方の電極の他方の電極と対向する対向面には誘電体が被覆されており、
前記誘電体の厚みは、前記反応性ガスの導入系側から排気系側に向かうにつれて薄く構成されていることを特徴とする
【0010】
請求項記載の発明は、請求項に記載の薄膜形成方法において、
前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、互いに対向する電極間にはそれぞれ略同一の電圧を印加する事を特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項またはに記載の薄膜形成方法において、
前記電極間に印加する電圧の周波数は100kHz以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項のいずれかに記載の薄膜形成方法において、
前記電極間に電圧を印加する際に各々の電極に供給する電力は、1W/cm2以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項のいずれかに記載の薄膜形成方法において、
前記反応性ガスは、有機フッ素化合物、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機錫化合物、有機亜鉛化合物、有機インジウム化合物、有機アルミ化合物、有軌道化合物、有機銀化合物の何れかを含有することを特徴とする。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項のいずれかに記載の薄膜形成方法において、
対向する電極間に前記反応性ガスと不活性ガスとを含有する混合ガスを導入し、前記混合ガスは、不活性ガスを体積比で90.0〜99.9%含有していることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の薄膜形成装置および薄膜形成方法にかかる実施の形態について詳細に説明する。
〔第一の実施の形態〕
図1〜図3に基づいて第一の実施の形態について説明する。図1に示すように薄膜形成装置100は、電極20、30等を備えるプラズマ放電処理容器10と、このプラズマ放電処理容器10に薄膜形成の材料となる反応性ガスを導入するガス発生装置51と、電極20、30に電圧を印加し、電力を供給する電源53と、電極20、30を冷却する電極冷却手段55等とを備えている。
【0015】
薄膜形成装置100における主要部であるプラズマ放電処理容器10について図2に基づき説明する。プラズマ放電処理容器10は、対向して配置される電極20、30と、ガス発生装置51に接続される給気口12(導入系)と、プラズマ放電処理容器10内に導入されたガスを排出する排気口13a、13b(排気系)等を備えている。また、プラズマ処理容器10の両端部は開口されており、それぞれ電極20、30間に配置される基材Fをプラズマ処理容器10内に搬入するための搬入口10aとこれを搬出する搬出口10bとなっている。そして、プラズマ処理容器10には基材Fをプラズマ処理容器10内に搬送するためのローラ類を備えている。
【0016】
このプラズマ放電処理容器10内に基材Fが搬入されて電極20、30間に配置され、プラズマ放電処理が行われることにより基材F上に薄膜が形成される。なお、以下において、対向する電極20、30間に電圧を印加し、反応性ガスをプラズマ状態とする一連の処理をプラズマ放電処理といい、大気圧または大気圧近傍の圧力下においてプラズマ放電処理を行い基材上に薄膜を形成させる方法を大気圧プラズマ法という。
【0017】
プラズマ放電処理容器10はパイレックス(R)ガラス製からなるものが好適に用いることができるが、電極20、30との絶縁がとれれば金属製のものを用いることもできる。例えば、アルミニウムまたはステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0018】
給気口12は上述したようにガス発生装置51と接続され、所定量の反応性ガスがこの給気口12から電極20、30間に導入される。また、排気口13a、13bからは電極20、30間に導入された反応性ガスが排気される。
プラズマ放電処理容器10内の圧力は特に調節せず、反応性ガスが給気口12から導入された後も含めて大気圧又は大気圧近傍の圧力に保たれる。ここで、大気圧近傍の圧力とは、20kPa〜110kPaの圧力を示し、さらに好ましくは93kPa〜104kPaを指す。
【0019】
プラズマ放電処理容器10内に備えられる電極20、30のうち、一方の電極20は印加電極として機能し、他方の電極30はアースに接地されるアース電極として機能する。
一方の電極20は、中空の角柱形状を呈し、他方の電極30に対向するように複数設けられている。また、それぞれの電極20は図3に示すように電気的に接続されており、電源53により一括して同じ周波数の電圧が印加されるようになっている。
他方の電極30は、中空の円筒形状を呈しプラズマ放電処理容器10内に図示しない駆動機構により前記給気口12側から排気口13b側に向けて回転可能に取り付けられている。基材Fは、この他方の電極30に片面が接触された状態で搬送される。
【0020】
これらの電極20、30は、導電性の金属母材上に誘電体が被覆された構成となっている。金属母材としては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等を用いることができるが、加工の観点からステンレスが好ましい。
【0021】
誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、金属母材の表面に誘電体を被覆するには、ライニング材としての無機物質を金属母材にライニング処理すること、あるいはセラミックスを金属母材に溶射後、無機質物質により封孔処理することにより、達成することができる。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等を用いることができる。この中でもホウ酸塩系ガラスが加工しやすい。
【0022】
また、溶射に用いるセラミックス材としては、例えばアルミナ系、ジルコニア系、窒化珪素系、炭化珪素系のものをあげることができるが、アルミナが加工しやすいので好ましく用いられる。また、例えば金属母材にアルミナセラミックス溶射後、ゾルゲル反応を利用して珪素化合物により封孔処理を行うとより好ましい。ゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すとより一層無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0023】
なお、互いに対向する電極20、30の表面を被覆する誘電体の厚みは、電極20、30間に印加する電圧や供給する電力、反応性ガスの供給量等を考慮して決定すればよい。
【0024】
また、図3に示すように、一方の電極20の他方の電極30に対向する対向面20aは、他方の電極30の一方の電極20に対向する対向面30aに対して給気口12側から排気口13a、13b側へ向かうにつれて近接するように配置されている。この様に一方の電極20を他方の電極30に対して配置することにより、対向する電極20、30間に電圧を印加すると、電極20、30間の反応性ガスが導入される給気口12側においては排気口13a、13b側と比較すると弱く放電され、電極20、30の対向面20a、30aが近接するにつれて強く放電されるようになる。すなわち、電極20、30は、その電極20、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向かうにつれて増大するように構成されている。
なお、給気口12と排気口13aとの間に位置する一方の電極25(図2参照)については、給気口12と排気口13bとの間に位置する一方の電極20とは逆方向に電界強度が増大するように構成されている。
【0025】
ここで、対向する電極20、30のうち一方の電極20の対向面20aを他方の電極30の対向面30aに対して反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へと近接させる時の傾斜の度合い(傾斜角θ)は、電極間20、30間に印加する電圧や供給する電力、反応性ガスの供給量等を考慮して決定すればよい。
また、電極20、30間の最短距離Lは、0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。この電極20、30間の最短距離Lは、電極20、30を被覆する誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、反応性ガスの供給量等を考慮して決定すればよい。
【0026】
電源53は複数の一方の電極20と他方の電極30に一括して略同一の電圧を印加し、個々の電極20、30に所定の電力を供給するものである。
また、高いプラズマ密度を得て基材F上への製膜速度を大きくするため、電源53により、前記電極20、30間に、高周波電圧で、ある程度大きな電力を供給することが好ましい。
【0027】
具体的には、100kHz以上150MHz以下の高周波数の電圧を電極20、30間に印加することが好ましく、200kHz以上であればより一層好ましい。また、電極20、30間に供給する電力の下限値は、1W/cm2以上50W/cm2以下であることであることが好ましく、2W/cm2以上であればより一層好ましい。なお、電極20、30における電圧の印加面積(/cm2)は放電が起こる範囲の面積を指す。
また、電極20、30間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であってもよいが、製膜速度が大きくなることから、サイン波であることが好ましい。
【0028】
電極冷却手段55は、冷却剤の入ったタンク56とポンプ57と、他方の電極30と一方の電極20とのそれぞれに接続された水路58、59から構成されている。水路58、59は、対向する電極20、30のそれぞれに形成された中空部に導入されている。
冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料を用いることができる。ポンプ57を適宜作動させタンク56内の冷却剤を電極20、30の中空部に水路58、59を介して循環させることにより、これらの電極20、30を冷却することができる。
【0029】
ガス発生装置51は、不活性ガスと反応性ガスとを含む混合ガスをプラズマ放電処理容器10内に所定量ずつ供給する手段である。プラズマ放電処理容器10には、反応性ガスとともに不活性ガスが所定の組成により混合されて給気口12より導入される。
【0030】
不活性ガスとしては、周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられるが、コストの点や本発明の効果を得るために、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。特に、緻密で高精度の薄膜を形成するためにはアルゴンを用いることが最も好ましい。アルゴンを用いると、高密度プラズマが発生しやすいと推定されている。
また、これらの不活性ガスは単独で用いられてもよいし、2種類以上併用されてもよい。また、不活性ガスは混合ガス全体に対し、体積比で90.0%〜99.9%含有させることが好ましい。
【0031】
反応性ガスとしては、有機フッ素化合物、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機錫化合物、有機亜鉛化合物、有機インジウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機銅化合物、及び有機銀化合物の何れかを含有することが好ましい。これらの内、有機フッ素化合物以外の有機金属化合物は、金属水素化合物、金属ハロゲン化合物、金属アルコキシドであってもよい。反応性ガスは、混合ガス全体に対し、体積比で0.01%〜10%含有させることが好ましい。
【0032】
これらの化合物は、特にプラズマ放電処理容器10内にガス状またはミスト状で供給可能な化合物が好ましい。「ガス状またはミスト状で供給可能」とは、常温・常圧でそのまま供給可能でもよいし、常温・常圧で液体又は固体である場合には、加熱、減圧、超音波照射等の方法で気化したり、適切な溶剤に溶解してもよい。希釈時の溶剤はプラズマ中で分子レベル、原子レベルで分解されるため、基材上への薄膜形成への影響はほとんど無視することができる。
【0033】
具体的には反応性ガスとして、ジンクアセチルアセテナート、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジーnーブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫等から選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、基材F上に金属酸化膜を形成し、導電膜あるいは帯電防止膜、あるいは反射防止膜などとすることができる。
【0034】
また、撥水膜を形成する目的で、有機フッ素化合物として6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタンを使用することができる。
さらに、有機フッ素化合物から反射防止膜を形成する場合、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましく用いられる。フッ化炭素ガスとしては、4フッ化炭素、6フッ化炭素、具体的には、4フッ化メタン、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン等が挙げられる。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、2フッ化メタン、4フッ化エタン、4フッ化プロピレン、3フッ化プロピレン等が挙げられる。
【0035】
また、有機フッ素化合物として1塩化3フッ化メタン、1塩化2フッ化メタン、2塩化4フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るが、これらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。前記の化合物は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。混合ガス中に上記記載の有機フッ素化合物を用いる場合、プラズマ放電処理により基材F上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の有機フッ素化合物の含有量は、0.1〜10vol%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5vol%である。
【0036】
この他に、反応性ガスに含有する物質や組成を適宜選択することにより、電極膜、誘電体保護膜、半導体膜、透明導電膜、エレクトロクロミック膜、蛍光膜、超伝導膜、誘電体膜、太陽電池膜、耐摩耗性膜、光学干渉膜、反射膜、帯電防止膜、防汚膜、ハードコート膜、下引き膜、バリア膜、電磁波遮蔽膜、赤外線遮蔽膜、紫外線吸収膜、潤滑膜、形状記憶膜、磁気記録膜、発光素子膜、生体適合膜、耐食性膜、触媒膜、ガスセンサ膜、装飾膜などの各種薄膜を形成することができる。
【0037】
プラズマ放電処理容器10に搬入される基材Fは、長尺なフィルム状の基材Fであり、フィルム巻体FFに引出し可能に巻回されるとともに、プラズマ放電処理容器10内で他方の電極30の左右近傍に備えられたニップローラ14によって押圧された状態で他方の電極30の周面に巻き付けられている。
【0038】
プラズマ放電処理容器10の外部には、回転自在なガイドローラ15が取り付けられており、基材Fは、他方の電極30の回転に伴って、フィルム巻体FFから巻き解かれ、ガイドローラ15、ニップローラ14を経てプラズマ放電処理容器10内に搬入口10aから搬入され、一方の電極20と対向した状態のまま他方の電極30の周面に沿って搬送される。そして、処理後の基材Fはさらにニップローラ14、ガイドローラ15にガイドされて矢印Pの方向に搬出口10b搬出されるようになっている。
この基材Fの搬送方向Pは、反応性ガスの給気口12側から排気口13b側へ向かう方向と略等しくなっている。
【0039】
なお、基材Fとしては、図1および図2には、巻体FFに巻回されたフィルム状の基材Fを示したが、基材Fの形状はフィルム状に限定されるものではなく、ファイバー状、バルク状など、薄膜をその表面に形成することができる形状であればよい。また、その材質についても全く限定されないが、本発明の薄膜形成装置100および薄膜形成方法は大気圧プラズマ法であって、低温のグロー放電下での製膜であることから、特に樹脂を好ましく用いることができる。
【0040】
上記樹脂としては、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアクリレート類を挙げることができる。
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。さらに、これらの素材からなるフィルムを支持体としてその表面保護層や帯電防止層などの機能性膜を塗設したものを基材Fとして用いることにもできる。
【0041】
また、プラズマ放電処理容器10の基材Fの搬入口10a及び搬出口10bには、仕切り板16が前記ニップローラ14に近接して配置されている。この仕切り板16は、基材Fがプラズマ放電処理容器10内に搬送される際に同伴する空気がプラズマ放電処理容器10内に進入するのを抑制するためのものである。仕切り板16により基材Fに同伴される空気は、プラズマ放電処理容器10内の気体の全体積に対し、体積比で1%以下に抑えることが好ましく、0.1%以下に抑えることがより好ましい。
【0042】
次に、上記した薄膜形成装置100により、薄膜を基材F上に形成する際の手順について説明する。まず、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口12より供給し、電極間20、30に混合ガスが導入されるようにする。この時、不要分については排気口13a、13bより排気する。
【0043】
次に、フィルム巻体FFから基材Fを巻き解き、基材Fをガイドローラ15を介して、プラズマ放電処理容器10内に電極20、30間であって、他方の電極30に片面接触した状態で搬送する。なお、基材Fは薄膜形成処理を受ける前に、帯電防止のための除電処理や、ゴミ除去処理が施されることが好ましい。
【0044】
そして、電源53により一方の電極20に電圧を印加し、プラズマ放電処理を行い、基材上に薄膜を形成させる。この時、他方の電極30はアースに接地しておく。また、放電時の高温による悪影響を抑制するため、基材Fの温度を常温(15度〜25度)〜200度未満、更に好ましくは常温〜100度内で抑えられるように、必要に応じて電極冷却手段55により冷却する。
【0045】
基材Fは他方の電極30の回転とともに所定の速度で電極20、30間を搬送され、基材Fの他方の電極30に接触していない面に薄膜が連続的に形成される。一方の電極20は複数備えられているので、基材Fがそれぞれの電極20の下方を搬送される際に、薄膜が基材F上に積層されていく。
その後に基材Fはガイドローラ15を介して、次工程に搬送される。なお、基材Fは他方の電極30に接触していない面のみ反応性ガス由来の薄膜が形成される。
【0046】
第一の実施の形態によれば、互いに対向して配置される電極20、30のうち、一方の電極20の対向面20aを他の電極30の対向面30aに対して反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向かうにつれて近接するように構成されている。そして、この様に電極20、30を構成することにより、電極20、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側に向けて増大させている。したがって、反応性ガスが電極20、30間に導入される際に、電極20、30間の反応性ガスが導入される側においては廃棄される側と比較すると弱く放電され、反応性ガスが電極20、30間から排気される側においては強く放電される。すなわち、反応性ガスが導入される側において放電が集中することに起因するプラズマ密度のムラを防ぎ、製膜面へのムラや筋の発生を防ぐことができる。
【0047】
また、一方の電極20の角20bの部分が断面円弧状に形成されているので、電極20、30間に高周波の電圧を印加しても、電極20の角20bに放電が集中することを防ぎ、電極20、30間に配置される基材F上において反応性ガスに由来するプラズマ密度にムラが生じることを防ぐことができる。
【0048】
また、一方の電極20を他方の電極30に対して複数設けており、それぞれの電極20、30間に反応性ガスが導入されるとともに基材Fが搬送される。このため、基材Fは電極20、30間を移動する間に一方の電極20の下を通過する毎に繰り返し薄膜が形成される。このように基材F上に膜を何層も積層することにより、より緻密でムラのない均一な膜を形成することができる。
【0049】
以上の様に筋やムラの発生を抑えることができるので、電極20、30間に印加する電圧を高い周波数のものとし、それぞれの電極20、30に供給する電力を大きなものとしてプラズマ密度を高くすることができるので、基材F上に高品質の膜を効率よく形成させることができる。また、ムラや筋が発生しないので、大面積の基材F上にも均一な膜を形成することができる。
また、基材Fにプラズマ放電処理を行う際に、プラズマ放電処理容器10を真空にする必要がないので基材F上に薄膜を連続して形成させることができる。
【0050】
また、一方の電極20は互いに電気的に接続され、一括して同じ周波数の電圧が印加されるため、薄膜形成装置100にはそれぞれの電極20に電圧を印加するための電源を複数設けたり配線したりする必要がない。よって、薄膜形成装置100の構成を簡素にすることができる。
【0051】
また、薄膜形成装置100によれば、プラズマ放電処理容器10内を真空にする必要はなく、反応性ガスを導入した後にも特に圧力の調整をする必要がない。このため、プラズマ放電処理容器10内を真空にしたり圧力を調整するために、真空装置を備える必要がなく薄膜形成装置の構成を簡素にすることができる。
【0052】
なお、本発明は上記第一の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。例えば、対向する電極20、30のうち一方の電極20の対向面20aを他方の電極30の対向面30aに対して給気口12側から排気口13a、13b側に向けて近接させるように構成することにより、対向する電極20、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へと増大させることとしたがこれに限定されるものではない。
一方の電極20の対向面20aに対して他方の電極30の対向面30aを反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向けて近接させるように構成してもよいし、一方の電極20の対向面20aと他方の電極30の対向面30aを反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向けて互いに近接するように構成してもよい。
【0053】
また、一方の電極20は角柱形状を呈するものとし、他方の電極30は円筒形状を呈しプラズマ放電処理容器10に回転可能に取り付けられるものとしたがこれに限定されるものではない。それぞれの電極20、30の形状は平行平板型、同軸円筒型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対向型であってもよく、電極が対向して配置され、電極間における電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へと増大するように構成できるものであればどのような形状をしていてもよい。
【0054】
また、一方の電極20および他方の電極30の表面を誘電体で被覆するものとしたがこれに限定されるものではなく、どちらかの電極のみを誘電体で被覆するものとしてもよく、両方の電極20、30の表面を必ずしも誘電体で被覆しなければならないものではない。しかし、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電を行うことから、放電が局在するアーク放電が発生するのを避けるために電極20、30の金属母材同士が直接対向しないことが望ましく、少なくとも一方の電極20の他方の電極30に対向する対向面20aが誘電体で被覆されていると好ましい。また、本実施の形態の様に双方の電極20、30の表面に誘電体を被覆するとさらに好ましい。
【0055】
〔第二の実施の形態〕
次に、本発明にかかる薄膜形成装置および薄膜形成方法にかかる第二の実施の形態について、図4を参照して説明する。なお、第一の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
プラズマ放電処理容器10内に対向して配置される電極21、30うち、一方の電極21の対向面21aを反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側に向かうにつれて他方の電極30の対向面30aに対して徐々に近接するようにされている。
そして、一方の電極21の対向面21aが誘電体61で被覆され、この対向面21aを被覆する誘電体61の厚みWは反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向かうにつれて薄くするように構成されている。
このように対向する電極21、30を構成することにより、対向する電極21、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へと増大させることができる。
【0056】
なお、第二の実施の形態において、一方の電極21の対向面21aの他方の電極30の対向面30aに近接させるときの傾斜の度合い(傾斜角θ)は、第一の実施の形態と同様に電極21、30間に印加する電圧や供給する電力、反応性ガスの供給量、一方の電極21の対向面21aを被覆する誘電体61の厚み等を考慮して決定すればよい。
また、第二の実施の形態においても、第一の実施の形態と同様に、他方の電極30の表面を誘電体で被覆すると好ましい。他方の電極30の表面を被覆する誘電体の厚みは、電極21、30間に印加する電圧や供給する電力、反応性ガスの供給量、一方の電極21の対向面21aを被覆する誘電体61の厚み等に応じて適宜決定すればよい。
【0057】
なお、第二の実施の形態において、互いに対向する電極21、30を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向かうにつれて互いに近接するように配置し、さらに電極21の対向面21aを被覆する誘電体61の厚みWを反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向かうにつれて薄く構成するものとしたが、誘電体61の厚みWを調整することによってのみ電極21、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へと増大させるようにしてもよい。すなわち、電極21の対向面21aを他方の電極30に対して平行に配置し、電極21の対向面21aを被覆する誘電体61の厚みWを反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側に向かうにつれて薄くするようにすることのみによって、互いに対向する電極21、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ増大させるようにしてもよい。この時、誘導体61の厚みWを適宜調節して、電極21、30間の距離Lを適切なものとすることが望ましい。
【0058】
〔第三の実施の形態〕
次に、図5を参照して本発明の薄膜形成装置および薄膜形成方法にかかる第三の実施の形態を説明する。なお、第一の実施の形態および第二の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
プラズマ放電処理容器10内に備えられるアース電極31に対して、電極23と電極24とがそれぞれ対向して配置されている。電極23の両角23a、23bおよび電極24の両角24a、24bはそれぞれ断面円弧状に形成されている。この時の角23a、23bおよび角24aおよび24bの曲率Rは、電極23、24の大きさや電極23、31間および電極24、31間に印加する電圧や供給する電流の大きさに合わせて適宜決定すればよい。
【0059】
反応性ガスの給気口(図示略)は電極23と電極24とによって形成される間隙dから図中に示す矢印Qの方向に反応性ガスが導入されるように構成されている。そして、反応性ガスの排気口(図示略)は、電極23と電極24とによって形成される間隙dから導入された反応性ガスが分流して、電極23の角23a側から角23b側へ向かう方向P2に電極23、31間を通過するとともに電極24の角24a側から角24b側へ向かう方向P1に電極24、31間を通過し、電極23の角23b側および電極24の角24b側から排気されるように構成されている。
【0060】
そして、電極23のアース電極31に対向する対向面23cと、電極24のアース電極31に対向する対向面24cは断面視においてハの字状となるように配置されている。すなわち、電極23の対向面23cは、反応性ガスが導入される側23aから反応性ガスが排気される側23bに向かうに連れてアース電極31に近接するように配置され、電極24の対向面24cは、反応性ガスが導入される側24aから反応性ガスが排気される側24bに向かうに連れてアース電極31に近接するように配置されている。
【0061】
基材Fはアース電極31に片面が接触された状態で載置され、図示しない駆動機構により所定の速度で電極23、31間および電極24、31間を通過するように搬送される。この時、基材Fは電極23から電極24へ向かう方向P1にのみ搬送されるものとしてもよいし、その逆方向、すなわち電極24から電極23に向かう方向P2にのみ搬送されてもよい。あるいは、基材Fを電極23から電極24に向かう方向P1に所定の距離だけ搬送し、その後、逆方向P2とに所定の距離搬送することを複数回繰り返して、基材Fを往復運動をさせるようにしてもよい。基材Fをこのように往復運動させると、基材Fは電極23、31間および電極24、31間を何度も通過することになり、その度に基材Fの上面により緻密でムラのない薄膜を形成することができる。
【0062】
なお、第三の実施の形態において、電極23の対向面23cをアース電極31に近接させるときの傾斜の度合い(傾斜角θ2)、および、電極24の対向面24cをアース電極31に近接させる時の傾斜の度合い(傾斜角θ1)は等しくするものとし、傾斜角θ1および傾斜角θ2の値は、電極23、31間および電極24、31間に印加する電圧や供給する電力、反応性ガスの供給量、電極23および電極24を被覆する誘電体の厚み等を考慮して決定すればよい。
【0063】
また、第三の実施の形態においても、第一の実施の形態と同様に電極23および電極24の金属簿材とアース電極31の金属母材とが直接対向しないことが望ましく、少なくとも電極23および電極24のアース電極31に対向する対向面23cおよび24cが誘電体で被覆されていると好ましく、アース電極31についてもその表面が誘電体で被覆されていると更に好ましい。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0065】
本実施例では、基材Fとしてポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にFSnO2膜を第一の実施の形態において説明した薄膜形成装置100(図1〜図3参照)を用いて製膜し、後述する比較例と膜面上に形成される筋の本数を目視において比較を行った。
【0066】
対向する一方の電極と他方の電極との間の電界強度を混合ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へと増大するようにした。具体的には、各々の一方の電極20は図3に示したように、他方の電極30に対して反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側へ向けて徐々に近接するように設け、一方の電極20の対向面20aと他方の電極30の対向面30aとの最短距離Lを1mmとした。また、一方の電極20は他方の電極30に対して5度の傾斜角θを設けた。
【0067】
他方の電極30とこの他方の電極30に対向するように設けた電極20、30間には、ガス発生装置51から後述する組成の反応性ガスと不活性ガスからなる混合ガスを給気口12を介して所定量供給し、この混合ガスは電極20、30間を通過させた上で排気口13a、13bから排出されるようにした。
【0068】
また、プラズマ放電処理に用いる使用電源53は、パール工業(株)製高周波電源53CF−50000−13Mとし、電極20、30間に周波数13.56MHzの電圧を印加し、放電単位面積当たりに供給する電力は、30W/cm2とした。
さらに、基材F上に薄膜を形成する速度は10m/minとし、10m/minの速度で他方の電極30を駆動機構により回転させ、基材Fを搬送させて基材Fに連続的に薄膜を形成させた。
【0069】
給気口12からプラズマ放電処理容器10内に導入される混合ガスの組成は以下の通りである。
不活性ガス:アルゴン
反応性ガス1:酸素ガス(混合ガスに対して体積比で0.5%)
反応性ガス2:ジブチル錫ジアセテート(混合ガスに対して体積比で0.1%蒸気)(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合)
反応性ガス3:フッ化メタン(反応ガスに対し100ppm)
【0070】
上記実施例の比較例として、対向する電極間の電界強度を一律なものとし、一方の電極を他方の電極の周面に対向するように配置し、他の条件は上記実施例と同じ条件として製膜を行った。
【0071】
表1に実施例と比較例における膜面上への筋の発生本数を示す。表1から明らかなように、実施例においては膜状への筋の発生本数はゼロ本であったのに対し、比較例においては膜状に54本の筋が目視にて確認された。
すなわち、実施例のように対向する電極20、30間に周波数13.56MHzという高周波数の電圧を印加し、さらに電極20、30に30W/cm2という大きな電力を供給しても、対向する電極20、30間の電界強度を反応性ガスの給気口12側から排気口13a、13b側に向けて増大するように構成し、さらに一方の電極20を複数設けることによって、基材F上に形成される膜を均一でムラや筋のないものとすることができることが明らかになった。
【表1】
Figure 0004625230
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、対向して配置される電極間の電界強度を反応性ガスの導入系側から排気系側へ増大させているため、反応性ガスが電極間に導入される際に、導入系側においては弱く放電され、排気系側においては強く放電される。したがって、反応性ガスが導入される側において放電が集中することにより反応性ガス由来のプラズマ密度にムラが生じ、その結果として基材上に形成される膜にムラや筋などが生じることを防ぎ、均一な膜を形成することができる。すなわち、大面積の基材に膜を形成する際にも均一な膜を形成することができる。
また、以上の様に筋やムラの発生を抑えることができるので、電極間に印加する電圧を高い周波数のものとし、それぞれの電極に供給する電力を大きなものとしてプラズマ密度を高くすることができるので、基材上に高品質の膜を効率よく形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示した薄膜形成装置の主要部構成である放電プラズマ処理容器を示した概略図である。
【図3】本発明の薄膜形成装置に対向して設けられる電極の一例を示した概略図である。
【図4】本発明の薄膜形成装置に対向して設けられる電極の他の例を示した概略図である。
【図5】本発明の薄膜形成装置に対向して設けられる電極のさらに他の例を示した概略図である。
【符号の説明】
12 導入系(給気口)
13a、13b 排気系(排気口)
20、21、23、24 電極(一方の電極)
20b、23a、23b、24a、24b (電極の)角
30、31 電極(他方の電極)
50 薄膜形成装置
61 誘電体
F 基材

Claims (9)

  1. 大気圧または大気圧の近傍の圧力の下で、対向する電極間に電圧を印加し両極間に放電させることにより反応性ガスをプラズマ状態とし、電極間に基材を搬送しながら前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材の表面に薄膜を形成させる装置であって、
    前記対向する電極のうち一方の電極は複数設けられ、
    互いに対向して配置される電極と、前記電極間に薄膜形成の原料となる反応性ガスを導入可能に構成された導入系と、該反応性ガスを排気する排気系とを備え、
    前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、電極の角が断面円弧状であり、
    前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、対向する電極が電極間の電界強度を反応性ガスの導入系側から排気系側に向けて増大させるように構成ることを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 請求項記載の薄膜形成装置において、
    前記対向する電極の対向面は反応性ガスの導入系側から排気系側に向かうにつれて互いに近接するように一方の電極の対向面を他方の電極の対向面に対して傾斜させて構成され、その傾斜角度は電極の対向面全体で略同一となるように構成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
  3. 請求項記載の薄膜形成装置において、
    前記対向する電極のうち、少なくとも一方の電極の他方の電極と対向する対向面には誘電体が被覆されており、
    前記誘電体の厚みは、前記反応性ガスの導入系側から排気系側に向かうにつれて薄く構成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
  4. 大気圧または大気圧の近傍の圧力の下で、対向する電極間に電圧を印加し両極間に放電させて反応性ガスをプラズマ状態とし、前記電極間に基材を搬送しながら前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材の表面に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
    前記対向する電極のうち一方の電極は複数設けられ、
    前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、電極の角が断面円弧状であり、
    対向する電極間に反応性ガスを導入および排気し、
    前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、対向する電極間の電界強度を反応性ガスの導入側から反応性ガスの排気側へ向けて増大させることを特徴とする薄膜形成方法。
  5. 請求項に記載の薄膜形成方法において、
    前記複数設けられた電極のそれぞれにおいて、互いに対向する電極間にはそれぞれ略同一の電圧を印加する事を特徴とする薄膜形成方法。
  6. 請求項4または5に記載の薄膜形成方法において、
    前記電極間に印加する電圧の周波数は100kHz以上であることを特徴とする薄膜形成方法。
  7. 請求項のいずれかに記載の薄膜形成方法において、
    前記電極間に電圧を印加する際に各々の電極に供給する電力は、1W/cm2以上であることを特徴とする薄膜形成方法。
  8. 請求項のいずれかに記載の薄膜形成方法において、
    前記反応性ガスは、有機フッ素化合物、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機錫化合物、有機亜鉛化合物、有機インジウム化合物、有機アルミ化合物、有軌道化合物、有機銀化合物の何れかを含有することを特徴とする薄膜形成方法。
  9. 請求項のいずれかに記載の薄膜形成方法において、
    対向する電極間に前記反応性ガスと不活性ガスとを含有する混合ガスを導入し、前記混合ガスは、不活性ガスを体積比で90.0〜99.9%含有していることを特徴とする薄膜形成方法。
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