JP4621218B2 - Th1誘導剤及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体であって、粒度1ミクロン未満にまで微粒子化された微粒子状菌体を有効成分とするTh1誘導剤、及びその製造方法に関するものである。
ヘルパーT細胞(以下、Thと略す)は、機能的にI型ヘルパーT細胞(以下、Th1と略す)とII型ヘルパーT細胞(以下、Th2と略す)に分けられる。
Th1は、IFN-γ、IL−12(インターロイキン−12)等のTh1型サイトカインを産出し、細菌やウイルスなどの異物を攻撃、破壊して感染を防御し、さらにマクロファージも活性化する。なお、IL−12は、樹状細胞およびマクロファージのような抗原提示細胞からも分泌されるサイトカインで、ガン細胞を直接攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)や、ラック細胞(LAK細胞)、キラーT細胞(CTL細胞)を活性化したり、インターフェロンγ(IFN−γ)の産生を増強したりする、非常に強力な免疫活性物質として知られている。
一方、Th2は、IL−4、IL−5、IL−10等などのTh2型サイトカインを産出し、カビやダニなどに反応してB細胞にIgE抗体を作らせる液性免疫に関与することが知られている。
なお、Th1型サイトカインはTh2を抑制し、逆にTh2型サイトカインはTh1を抑制し、この2つは免疫全体のバランスを保つために互いに関係し合っている。
近年、免疫研究が進むにつれて、Th1とTh2のバランスが病気の発症や進展に重要な働きを持つと推測されている。最近では、生活環境からTh2の亢進する傾向が強く、例えば、癌、免疫不全、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患、腎炎、感染症等が、そのTh2の機能亢進が関与し発症すると考えられている(非特許文献1参照)。
Springer Seminars in Immunopathology Vol.21(3),1999及び最新医学「自己免疫疾患の臨床1998」,32,1998
このような疾患を治療あるいは予防するためにはTh2の活性化の制御、ひいては、Th産生サイトカインの調節が非常に重要であると考えられている。
その方法のひとつに、抗原提示細胞に対する免疫抗原刺激によってTh産生サイトカインを調節する方法が開示されている(特許文献1―3参照)。
特開平成11-228425号公報 特開2006-016336号公報 特開2006-131623号公報
たとえば、乳酸菌を免疫抗原物質として用いた場合、マクロファージによる乳酸菌貪食率と、IL−12産生誘導能との間には、正の相関関係が存在することが開示されている(非特許文献2参照)。
若林英行ら,マウス細胞およびヒト末梢血単核球を用いたL.paracasei KW3110株の抗アレルギー効果の解析,日本農芸化学会2006年3月26日発表
さらに、抗原提示細胞による粒子の貪食とその粒子径との関係については、ラテックスビーズを用いた研究によって、パイエル板に取り込まれる抗原総重量は、その粒子径が11ミクロンまでは増加し、それ以上になると減少して粒子径が21ミクロン以上になると全く取り込まれなくなることが開示されている(非特許文献3参照)。
しかし、抗原粒子総数の場合には、小さい粒子径の方が多くなり、粒子径が0.6ミクロン程度の場合に最も取込量が多くなることが開示されている(非特許文献3参照)。
さらに、7ミクロン程度の粒子径がTh2型サイトカインによって誘導されるIgG、IgAといった抗体を効率よく産生する上で最も好ましいことが開示されている(非特許文献3参照)
Tabata Y,Inoue Y,Ikada Y.Vaccine.1996;14:1677-1685
Th産生サイトカインを調節する方法には、抗ヒスタミン薬や、ステロイド剤、抗アレルギー剤などが用いられているが、患者の負担や薬の過剰投与による腸内細菌叢の破壊による下痢などの副作用などの問題があり、予防及び治療のいずれの面においても、未だ完全な方法が開発されていないのが現状である。
また、抗原提示細胞に対する免疫抗原刺激によってTh産生サイトカインを調節する方法においても、抗原提示細胞におけるIL−12の産生は、抗原物質の貪食が阻害されると抑制されてしまうという課題があった(非特許文献参照)。
田野智之ら,癌と化学療法31巻11号,p.1767−1789.
しかし、抗原提示細胞によるIL−12産生能が何に依存するかについては全く情報が開示されていないのが現状である。
このように、抗原提示細胞によるIL−12産生能を効率よく増強する方法とTh1誘導剤の提供が強く渇望されている。
そこで、本発明の目的は、従来の問題を解決し、抗原提示細胞によるIL−12産生能を効率よく増強する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、抗原提示細胞によるIL−12産生能が何に依存するかを鋭意検索した。
その過程で、抗原提示細胞からのIL−12産生が免疫抗原粒子の抗原提示細胞への取込総数に依存することを発見し、免疫抗原物質の粒度を1ミクロン未満にまで微粒子化し、当該粒子に再凝集を防止する加工を施すことで、抗原提示細胞に効率よく取り込ませられるようになり、その結果IL−12産生能が増強されることを見出した。
これは、Th2型サイトカインによって誘導されるIgG,IgAといった抗体産生が免疫抗原粒子の抗原提示細胞への取込総重量に相関することとは異なるメカニズムによるものであり、これに関する知見は当業者のあいだには未だ知られていないことであった。
かくして本発明者は、抗原提示細胞からのIL−12産生能を増強する方法を完成し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の一つは、IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体であって、前記菌体が粒度1ミクロン未満に微粒子化され、かつ、分散剤又は賦形剤によって再凝集を防止されているものを有効成分とすることを特徴とするTh1誘導剤を提供するものである。
本発明のもう一つは、IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体に分散剤又は賦形剤を添加し、これを湿式分散処理して前記菌体の粒度を1ミクロン未満に粉砕・分散することで、前記菌体を前記分散剤又は賦形剤によって再凝集防止し、その状態で粉末化することを特徴とする、上記Th1誘導剤の製造方法を提供するものである
本発明の更にもう一つは、IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体を湿式分散処理して、前記菌体の粒度を1ミクロン未満に粉砕・分散し、これに分散剤又は賦形剤を添加して再分散処理することで、前記菌体を前記分散剤又は賦形剤によって再凝集防止し、その状態で粉末化することを特徴とする、上記Th1誘導剤の製造方法を提供するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。先ず、本発明は、免疫抗原物質の粒度を1ミクロン未満にまで微粒子化し、当該粒子に再凝集防止処理を施すことで、抗原提示細胞に効率よく取り込ませられるようになり、その結果IL−12産生能を増強し得る方法を提供するものである。その方法のフローを図1に示し、以下詳細に説明する。
本発明の「免疫抗原物質」とは、具体的には免疫抗原となり得る物質であれば、既知、未知を問わず、動物、植物、微生物等の起源や、生体、死体、乾燥体等の形態を限定するものではない。
たとえば、細菌、酵母、糸状菌等の微生物、茸類、植物、動物等が挙げられ、それらから公知の方法で抽出された蛋白質及びグルカン等の構成物質、あるいはそれらが分泌する物質等も含まれる。また、それらの組み合わせであってもよい。
本発明の免疫抗原物質に使用できる細菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L.mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)等のビフィドバクテリウム属細菌、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・コアグランス(B.coagulans)等のバチルス属細菌、クロストリジウム・ブチリカム(Clostoridium butilicum)等のクロストリジウム属細菌が例示される。
本発明の免疫抗原物質に使用できる酵母としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、トルラスポラ・デルブルエッキー(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィア等のサッカロマイセス属、トルラスポラ属、キャンジダ属等が例示される。
本発明の免疫抗原物質に使用できる糸状菌としては、Aspergillius属あるいはMonascus属、好ましくはA.awamori、A.oryzae、A.niger、A.sojae、A.usami、A.kawachii、A.saitoi等の麹菌が例示される。また、これらの菌株から製造した麹であってもよい。
本発明の免疫抗原物質に使用できる茸類としては、ハナビラタケ、マイタケ、アガリクス、シイタケ、エノキダケ、マツタケ等の菌糸体及び子実体が例示される。
本発明の免疫抗原物質に使用できる動物の分泌物質としては、哺乳動物の母乳に含まれるラクトフェリン、アナツバメが自らの唾液を糸状にして作る巣(燕窩)等が例示される。
本発明の免疫抗原物質に使用できる細菌による分泌物質としては、Lactococcus lactis subsp.cremoris乳酸菌及びアウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物等が細胞外に産生する粘性物質等が例示される。
さらに本発明における免疫抗原物質は、上述の素材にデンプン、カラギーナン、寒天、ゼラチン、蛋白質等の基材を加えて人工的に粒子したものであってもよい。
本発明の「免疫抗原物質の粒度を1ミクロン未満にまで微粒子化」するとは、免疫抗原物質の平均粒子径が1ミクロン(マイクロメータ)未満のナノメータ(nm)サイズ、好ましくは0.6ミクロン程度になるまで粉砕あるいは分散することを指す。この粉砕処理と分散処理を別々に行うこともできれば、同時に行うこともできる。なお、当該粒子径が1ミクロン未満であるかどうかは、粒度分布計あるいは電子顕微鏡等で測定することができる。
本発明の「免疫抗原物質の粒度を1ミクロン未満にまで微粒子化」する方式としては、湿式・乾式を問わず、攪拌、ミキサー、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ホモゲナイザー、ジェネレーター等の公知の手法が挙げられる。
たとえば、細菌のような場合には、細菌培養液を湿式で150kgf/cm程度の高圧ホモゲナイザー等で微粒子化できる。一方、高分子ポリマー性の免疫刺激物質の場合には、当該物質を乾式で微粒子化した場合、それに水を添加すると水分を吸収して数倍に体積が膨張して粒子径がナノメータサイズではなくなることがあるので、湿式で1,000〜2,500kgf/cm程度の高圧ジェネレーターで微粒子化することが好ましい。
本発明の「当該粒子に再凝集防止処理を施す」とは、1ミクロン未満に粉砕・分散した微粒子の再凝集を防止するために、粉砕・分散した粒子に、公知の分散剤あるいは賦形剤を添加し、再びミキサー、ホモゲナイザー等で分散処理を施すことを指す。この場合、粉砕・分散処理するときに分散剤あるいは賦形剤をあらかじめ添加しておいてもよい。
この場合、使用する分散剤・賦形剤の添加量は、免疫抗原物質の性状によって変化するが、重量換算で1〜100倍量、好ましくは4〜10倍量が例示できる。
なお、本発明のTh1誘導剤を最終的に粉末として得る場合には、公知の分散剤・賦形剤等で粒子が再凝着しないような処理を施してから凍結乾燥あるいは減圧噴霧乾燥すると分散性に優れた粉末を得ることができる。
つぎに、本発明はTh1誘導剤をも提供するものである。
本発明における「Th1誘導」とは、抗原提示細胞からIL−12を効率よく産生させることで、Th0細胞(ナイーブTh細胞)のTh1への分化を促進し、生体内でTh1優位の状態をつくり出すことを指す。
本発明の「Th1誘導剤」は、1ミクロン未満にまで微粒子化し、当該粒子に再凝集防止処理を施した免疫抗原物質を有効成分とすることを特徴とする。
本発明の「Th1誘導剤」は、そのままでも製品とすることもできるが、一般には、風味を上げたり、必要な形状とする等のために種々の成分を添加、配合し、更にフレーバーを添加して最終製品とすることができる。
本発明の「Th1誘導剤」に添加、混合される成分としては、各種糖質や乳化剤、甘味料、酸味料、果汁等が挙げられる。より具体的には、グルコース、シュークロース、フラクトース、蜂蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン類やハーブエキス、穀物成分、野菜成分、乳成分等を配合しても、優れた風味のTh1誘導剤を得ることができる。
また、本発明の「Th1誘導剤」に添加することのできるフレーバーとしては、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバーが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。フレーバーの添加量は特に限定されないが、風味面から0.05〜0.5質量%、特に0.1〜0.3質量%程度が好ましい。
以上説明した「Th1誘導剤」は、固形状、液状等いずれの形態の製品とすることも可能である。
本発明の「Th1誘導剤」は、医薬的に受容な塩、賦形剤、保存剤、着色剤、矯味剤等とともに、医薬品あるいは食品の製造分野において公知の方法によって、飲料、顆粒、錠剤、カプセル剤等の種々の形態で使用することができる。
また、本発明における「Th1誘導剤」は、健康食品に利用することができる。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等の目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられる。
本発明におけるTh1誘導剤の使用量は、使用した免疫抗原物質の種類及び品質、あるいは年齢、症状等によって異なる。例えば、予防のために用いるには、成人1回につき固形分換算で0.01〜10g程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、固形分換算で0.1〜100g程度の範囲で用いることが適当である。
さらに、本発明におけるTh1誘導剤は、ローション(化粧水)、化粧用クリーム類、乳液、化粧水、パック剤、スキンミルク(乳剤)、ジェル剤、パウダー、リップクリーム、口紅、アンダーメークアップ、ファンデーション、サンケア、浴用剤、ボディシャンプー、ボディリンス、石鹸、クレンジングフォーム、軟膏、貼付剤、ゼリー剤、エアゾール剤等種々の製品形態で皮膚外用剤に利用することもできる。
また、本発明のTh1誘導剤には、下記に示されるような化粧品、医薬部外品、医薬品において通常用いられる各種成分や添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
即ち、グリセリン、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、ヘパリン等の保湿剤;PABA誘導体(パラアミノ安息香酸、エスカロール507等)、桂皮酸誘導体(ネオヘリオパン、パルソールMCX、サンガードB等)、サリチル酸誘導体(オクチルサリチレート等)、ベンゾフェノン誘導体(ASL−24、ASL−24S等)、ジベンゾイルメタン誘導体(パルソールA、パルソールDAM等)、複素環誘導体(チヌビン系等)、酸化チタン等の紫外線吸収剤・散乱剤;エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤;サリチル酸、イオウ、カフェイン、タンニン等の皮脂抑制剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等の殺菌・消毒剤;塩酸ジフェンヒドラミン、トラネキサム酸、グアイアズレン、アズレン、アラントイン、ヒノキチオール、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸等の抗炎症剤;ビタミンA、ビタミンB群(B1,B2,B6,B12,B15)、葉酸、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD群(D2,D3)、ビタミンE、ユビキノン類、ビタミンK(K1,K2,K3,K4)等のビタミン類;アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジン、グリシン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、アルギニン、ピロリドンカルボン酸等のアミノ酸及びその誘導体;レチノール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、胎盤抽出液等の美白剤;ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等の抗酸化剤;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、石炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム等の収斂剤;グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、トレハロース、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール等の糖類;甘草、カミツレ、マロニエ、ユキノシタ、芍薬、カリン、オウゴン、オウバク、オウレン、ジュウヤク、イチョウ葉等の各種植物エキス等の他、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色素等を適宜配合することができる。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
〔Th1誘導剤の調製〕
乳酸菌Lactobacillus brevis菌株FERM BP−4693を公知の方法で培養した。当該培養液から加熱処理菌体を調製し、菌体に対して重量換算で0倍量(無添加),0.5倍量,1倍量,2倍量,4倍量,9倍量のデキストリンを賦形剤として添加し、そのまま凍結乾燥する試料(番号AからF)と、ミキサーで分散してから凍結乾燥する試料(番号GからL)を調製した。これらの凍結乾燥試料をそれぞれ乾燥菌体換算で10mg/mlになるように精製水を加えて菌体分散液を調製した。手でよく振って攪拌し、18時間冷蔵庫内に安置した。その結果を図2―Iに示す。
また、各試料の液面下15mmの上清0.1mlを取り、精製水0.9mlに加え、よく攪拌してからOD660nmにおける吸光度を測定した。その結果を図2―IIに示す。
乳酸菌体の浮遊率は、菌体に対して重量換算でデキストリンを賦形剤として4倍量加え、さらにミキサーで分散してから凍結乾燥した試料Kにおいて、沈殿物が最も少なく(図2―I)、浮遊率が88.9%と最も高くなり(図2―II)、粉砕・分散処理と再凝集防止処理の相乗効果が現われていることがわかった。
なお、粒度が小さい粒子の占める割合が高いほど浮遊率が高くなる関係があるので、試料Kにおいて粒度が小さい粒子の占める割合が最も高くなったことを示している。そこで、試料A及びKの全液における菌体粒子の粒度分布を測定した。その結果を図3に示す。
図3に示すように、試料Aにおいては、粒度重量換算分布の平均値が1,036.3±73.7nmと2,607.4±126.5nmの2つの粒度ピークが存在し、全体としての平均値は1,728.2±786.3nmであった。一方、試料Kにおいては、粒度重量換算分布の平均値は555.8±40.6nmと、0.6ミクロン付近のごく狭い範囲にしか粒子が分布していなかったことがわかった。これは恐らく試料Kにおける0.6ミクロン付近の粒子が乳酸菌体の一次粒子に相当し、それが試料Aにおいては2倍体と4倍体になって混在しているものと推察される。
〔IL−12産生能の比較〕
IL−12誘導活性の測定は以下の方法で行った。
(1)試薬の調製
PBS:NaCl 80g、NaHPO・12HO 29g、KCl 2g、KHPO 2gを蒸留水に溶解し1Lとした。
FCS(Fetal Calf Serum):冷凍保存してあるFCSを56℃ウォーターバスに40分処理により非働化し、氷冷する。70μmセルストレーナーを通し、滅菌容器に入れ冷蔵保存し、1〜2ヵ月程度で使用した。
ET(−)RPMI1640Medium:RPMI1640 31.2g、NaHCO3.75g、ペニシリンG−K(萬有製薬100万単位)0.18g、カナマイシン0.18gを注射用水3Lに溶解後COガスを吹き込んだ後0.45μmのフィルターでろ過した。
Turc染色後:0.01%ゲンチアナバイオレット水溶液:酢酸:水=1:1:98に混合し、冷蔵保存した。
(2)マクロファージの調製
雄のICRマウス(4〜8W)の腹腔内に1g/100ml濃度のグリセリン溶液を0.4ml注射し1晩飼育した。マウスを頚椎脱臼で屠殺した後、冷却したPBSを5ml腹腔内に注射し腹をよくもんだ後、腹腔内液を約4ml注射器で取り出した。シリコンコートしたスピッツ管に腹腔内液を入れ、冷却遠心機で1200rpm、5分遠心し、上清及び壁面の赤血球を除去した。冷PBSを加えピペッティングで分散し、800rpm、5分遠心した。上清及び壁面の赤血球を除去した。この操作を更に1回繰り返し最後に1%FCS加ET−RPMI1640Medium(インビトロジェイン社製)を1ml/マウス加えた。この液を50μlとチェルク染色液50μlを混合し、血球計算板にて生細胞数を数えた。この数値から1%FCS加ET−RPMI1640Mediumを用いて細胞数を1×10/mlに調整した(マクロファージ液)。96穴平底プレートにマクロファージ液を200μlずつ入れ、1.5〜5時間COインキュベーターで培養した。
(3)IL−12の誘導
試料を菌末換算で1mg/mlになるよう5%FCS加ET−RPMI1640Mediumで調整した後、超音波で菌体を分散させた。この液を5%FCS加ET−RPMI1640Mediumで100倍に希釈し、96穴U型プレートに250μlに入れてCOインキュベーターで1時間保温した。
上記(2)で得たマクロファージ液の上清を抜き、37℃に保温したPBSで2回洗浄する。これに上記の希釈した菌末液を200μl加え、COインキュベーターで22時間培養してIL−12を誘導した。
(4)IL−12の測定
BIO SOURCE INTERNATIONAL社製マウスIL−12測定キット「Cytoscreen」を用いて行った。なお、マクロファージのロット差を調整するためにサンプルと同濃度のOK432を測定し、その測定値との比活性として表した。なお、OK432とは、「ピシバニール」(商品名、中外製薬株式会社製)として市販されている抗悪性腫瘍剤であり、ストレプトコッカス・ピオゲネス(A群3型)Su株をペニシリンGの存在下、一定条件で処理し、凍結乾燥して得られる菌体製剤である。OK432は、免疫活性測定の際の指標となる物質として当業界で広く使用されているものである。
本発明者は、実施例1で調製した試料A及びKについてIL−12誘導能を比較した。その結果を図4に示す。
図4から、試料Kには試料Aの3.5倍強のIL−12誘導能があることがわかった。このことは、菌体の粒度が小さくなることによって、マクロファージへの抗原取込率が3.5倍に増えたことを意味する。
これらの結果より、乳酸菌の菌体に重量換算で4倍量程度の賦形剤を添加してから分散処理を施し、凍結乾燥することによって分散性に優れた粉末を得ることができ、この粉体をもってマクロファージから効率的にIL−12を産生させることができるようになることが確認できた。
このように1ミクロン未満にまで微粒子化し、当該粒子に再凝集防止処理を施した免疫抗原物質を有効成分とするTh1誘導剤は、生体内でTh1優位の状態をつくり出す上で非常に有用といえる。
Th1誘導剤の製造法を示した図である。 微粒子化・再凝集防止処理が粒子浮遊率に及ぼす影響を示した図である。 試料A及びKの粒度重量換算分布を比較した図である。 試料A及びKのIL−12誘導能を比較した図である。
符号の説明
図1―Iにおいて、図中の試料瓶に記載した番号は、デキストリンを賦形剤として添加し、そのまま凍結乾燥した試料(番号AからF)と、ミキサーで粉砕してから凍結乾燥した試料(番号GからL)とを示す。なお、デキストリンの添加量については、菌体に対して重量換算で、番号AとGは0倍量(無添加)、番号BとHは0.5倍量、番号CとIは1倍量、番号DとJは2倍量、番号EとKは4倍量、番号FとLは9倍量である。

Claims (4)

  1. IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体であって、前記菌体が粒度1ミクロン未満に微粒子化され、かつ、分散剤又は賦形剤によって再凝集を防止されているものを有効成分とすることを特徴とするTh1誘導剤。
  2. IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体に分散剤又は賦形剤を添加し、これを湿式分散処理して前記菌体の粒度を1ミクロン未満に粉砕・分散することで、前記菌体を前記分散剤又は賦形剤によって再凝集防止し、その状態で粉末化することを特徴とする、請求項1記載のTh1誘導剤の製造方法
  3. IL−12産生誘導能を有する乳酸菌の菌体を湿式分散処理して、前記菌体の粒度を1ミクロン未満に粉砕・分散し、これに分散剤又は賦形剤を添加して再分散処理することで、前記菌体を前記分散剤又は賦形剤によって再凝集防止し、その状態で粉末化することを特徴とする、請求項1記載のTh1誘導剤の製造方法
  4. 前記湿式分散処理をミキサー又は高圧ホモゲナイザーを用いて行う請求項2又は3記載のTh1誘導剤の製造方法。
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