JP5324283B2 - 感染防御剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規乳酸菌株及びこれを用いた感染防御剤等に関する。
病原性ウイルスによる感染症は、発展途上国においても、先進国においても、毎年数多くの患者が発生しており、特に、乳児、小児においても主な死亡原因になっている。例えば、ロタウイルス下痢症は6ヶ月から2歳の乳幼児に多発する疾病で、それが原因で発展途上国では毎年60万人が死亡する。また、この疾病はヒトのみならず豚等の家畜でも発症し、経済的な打撃が大きい。
免疫応答には、抗原提示を受けたリンパ球が抗原特異的IgA抗体を作り、該抗体をミサイルのように抗原に打ち込むことで該病原性を不活化(中和)する液性免疫と、マクロファージやリンパ球キラー細胞に代表されるように、外来の微生物、身体の中にできる腫瘍細胞、及びウイルス感染細胞に自ら出向いて殺菌する細胞性免疫の、大まかに2つの方法が存在する。
また近年、粘膜免疫機構を介した感染防御効果を狙った研究開発が盛んに行われている。粘膜免疫とは、粘膜上に病原体が付着した際の最初に行われる感染防御機構である(非特許文献1参照)。粘液中の分泌型IgA(S−IgA)は、バクテリア、ウイルス等の病原体に対する防御作用を示す(非特許文献2参照)とともに、微生物の産生する毒素を中和する役割も担っている(非特許文献3参照)。
従来、感染症に対する治療方法として、ウイルス抗原を用いたワクチンが開発されている。この治療には腸管のIgA抗体が関与する。弱毒化したウイルスをワクチンとして免疫し、そのことでウイルス特異的IgA抗体が産生される。IgA抗体は病原微生物の粘膜からの侵入阻止、ウイルス・毒素の中和、食物アレルゲンの侵入阻止等の働きをしており、このようなIgA抗体を高めておくことは生体防御の上で重要である。
IgA抗体の産生を促進するものをアジュバントというが、乳酸菌を用いたアジュバントが報告されている。例えば、Yasuiらは乳幼児下痢症の主要起因ウイルスであるロタウイルスのマウス感染実験を実施し、母親マウスにビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobakuterium breve)YIT4064菌株を摂取させ、次いで母親マウスの母乳を仔マウスに摂取させた結果、ロタウイルスを感染させた仔マウスにおいて下痢の発症が抑制されたことを報告している(非特許文献4、特許文献1参照)。またその他にも、IgA産生促進能が高い菌株についての報告例がいくつかある(特許文献2、3参照)。しかしながら、ラクトバシルス・ペントーサスに、IgA抗体産生促進作用やウイルス感染防御作用があることは知られていない。
特許第3269890号公報 特許第3818319号公報 特開2007−308419号公報
Brandtzaeg,P.Curr.Top.Microbiol. Immunol.146:13 1989. Czinn,S,J,.et al Vaccine 11:637 1993;Renegar,K.et al J.Immunol.146:1972 1991. Brandtzaeg,P APMIS 103:1 1995;Kilian,M.et al Microbiol.Rev.52:296 1988. H.Yasui et al J.Infect.Dis.172:403.1995.
ウイルスの種類によっては、適当なワクチンの開発がいまだ成功していないのが現状である。また、ワクチンは、ワクチンによって産生される抗体が抗原特異的であるため、変異し易いウイルスに対しては効果が期待されないという課題がある。さらに、IgA産生促進剤はアジュバントとしての用途はあるものの、細胞性免疫を介した免疫賦活までを保証するものではないという課題がある。このように、抗原非特異的な感染防御剤が強く渇望されている。
本発明は、液性免疫を介してワクチンの効果を増強すると同時に細胞性免疫を介してウイルス感染を防御する能力を有する微生物及びその用途を提供することに関する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、食品由来の微生物を鋭意検索したところ、阿波晩茶から分離した新規乳酸菌ラクトバシルス・ペントーサスYM2−2菌株(Lactobacillus pentosus strain YM2-2)(FERM AP-21778)の菌体が、ワクチンと併用することでアジュバント効果があり、かつ、単独の投与でもワクチンと同程度にロタウイルス感染を防御することを見出した(実施例2参照)。
すなわち、本発明は、以下の1)〜6)に係るものである。
1)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM AP-21778として寄託されたラクトバシルス・ペントーサスYM2−2菌株。
2)上記1)の菌株の菌体又はその培養物を有効成分とする粘膜免疫賦活剤。
3)上記1)の菌株の菌体又はその培養物を有効成分とするIgA産生促進剤。
4)上記1)の菌株の菌体又はその培養物を有効成分とするウイルス感染防御剤。
5)ウイルスがロタウイルスである上記4)のウイルス感染防御剤。
6)上記1)の菌株の菌体又はその培養物を含有する、飲食品、医薬品、外用剤及び飼料から選ばれる組成物。
本発明の乳酸菌は、IgA産生促進効果を有することからワクチンと共に投与することにより、ワクチンを含む抗原に対する抗体の産生を増強し、防御免疫の誘導を良好にしてワクチンの効果を増強する。そして同時に、細胞性免疫をも賦活し得るため、ワクチンによる免疫増長に頼らずとも、乳酸菌の投与だけで、ワクチンと同程度にウイルス感染を予防することができるようになる。従って、ワクチンが作用し難い変異し易いウイルスに対しても効力を発揮し得、非常に有用性が高い。また、乳酸菌本来の効果、例えば整腸作用、腸内細菌叢改善作用等も奏し得ることから、飲食品及び医薬品として特に有用である。
阿波番茶から分離した乳酸菌株のIgA産生促進能を示した図である。 実験スケジュールを示した図である。
〔本発明乳酸菌〕
本発明の乳酸菌ラクトバシルス・ペントーサスYM2−2株(Lactobacillus pentosus strain YM2-2)は、本発明者らが、阿波晩茶からマウスパイエル板細胞培養系を用いて、IgA産生誘導能を指標として分離・採取(スクリーニング)した新規乳酸菌株であり(後記実施例1参照)、平成21年3月4日に、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(AIST、日本国茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に、FERM AP-21778として寄託されているものである。以下に、YM2−2株の主な菌学的性質を示す。
(a)肉眼的特徴
(a−1)MRS寒天培地
円形からやや不規則、半球形、平滑、乳白色
(a−2)BL寒天培地
円形からやや不規則、半球形、平滑、白褐色
(b)顕微鏡的特徴
桿菌で運動性を持たない。芽胞は形成しない。
(c)生育温度
30〜37℃で良好に発育する。
(d)微生物分類学的位置
本菌株の16SリボゾームDNAの塩基配列(GenBank/EMB/DDBJ登録番号AB488810)は、ラクトバシルス ペントーサス菌株と100.0%の相同性を示し、さらに、recA遺伝子を標的としたPCR判定から、ラクトバシルス ペントーサスに属する菌株と同定した。
〔粘膜免疫的作用・ロタウイルス感染防御作用〕
本発明の乳酸菌は、後記実施例1及び2に示すとおり、液性免疫を介してワクチンの効果を増強すると同時に、細胞性免疫を介して、単独の投与でもワクチンと同程度にロタウイルス感染を防御する能力を有する。ここで「ロタウイルス感染を防御する」とは、具体的にはウイルス感染で引き起こされる下痢の発症を抑制することを意味する。
本発明の乳酸菌は、IgA抗体産生促進作用を有し、ロタウイルス感染による下痢発症率を、ワクチン単独よりも低減する作用を有する。すなわち、ワクチンと併用することでアジュバント効果を発揮する。
この液性免疫に寄与する作用機序は、次のように考えられる。即ち、まず腸管免疫系を構成するパイエル板のM細胞が管腔にある抗原を取り込む。該抗原は樹状細胞等の抗原提示細胞によってTh細胞に提示される。抗原特異的なTh2細胞の作用により、未熟なB細胞が成熟しつつ粘膜固有層に移動して最終的にIgA抗体産生細胞に分化する。このIgA産生促進機構に本発明乳酸菌がどのように関与するかについては現在なお明確ではないが、少なくとも本発明乳酸菌の存在によって液性免疫(IgA産生)が促進されるためにはパイエル板のM細胞が抗原を取り込む必要があることから、本発明乳酸菌はこの抗原としての機能を果たすものと考えられる。
また、本発明の乳酸菌は、細胞性免疫の賦活作用によって、ロタウイルス感染による下痢発症率を、ワクチンと同程度にまで低減することができる。すなわち、単独の投与でもワクチンと同程度にロタウイルス感染を防御する作用を有する。
この細胞性免疫に寄与する作用機序は、次のように考えられる。すなわち、M細胞に取り込まれた抗原が、抗原提示細胞を介して、ヘルパーT(Th)細胞をI型ヘルパーT(Th1)細胞に分化することによって、T細胞をキラーT細胞に活性化する。本発明乳酸菌の存在によって、Th1細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞からのインターロイキン12及びインターフェロンγの産生が促進されることから、本発明乳酸菌は細胞性免疫を賦活する抗原としての機能を果たすものと考えられる。
上記の液性免疫と細胞性免疫の制御には、抗原提示細胞に発現する受容体(Toll-like receptor)の乳酸菌に対する認識の違いが関わっているものと推察される。
すなわち、本発明乳酸菌はワクチン存在下では液性免疫を賦活し、ワクチン非存在下では細胞性免疫を賦活するという、粘膜免疫賦活作用を有すると考えられる。
従って、本発明の乳酸菌の菌体又はその培養物は、ヒトを含めた動物に投与又は摂取するための、粘膜免疫賦活剤、IgA産生促進剤、ウイルス感染防御剤となり得、ウイルス感染により引き起こされる疾患、特にロタウイルス感染により引き起こされる下痢の発症に対して、ワクチンと併用することでアジュバント効果を発揮し、且つ単独投与で当該ウイルス感染を防御可能な、飲食品、医薬品、飼料、外用剤等の各種組成物として使用可能である。
ここで、感染防御の対象となる感染疾患としては、本発明の乳酸菌により産生したIgAが全身的に機能を発揮すると考えられるから、必ずしも腸管に限定して考えられるものではないが、分泌型IgAの産生前駆細胞はパイエル板に存在し、感作されると体内を循環し、IgA産生細胞に分化し、粘膜組織に帰巣することから、口腔粘膜、呼吸器粘膜、消化器粘膜等の粘膜から侵入する粘膜感染性の感染疾患に特に有効であり、優れたワクチン増強作用を示すと考えられる。当該感染疾患としては、具体的には、ロタウイルス、ポリオウイルス、インフルエンザウイルス、エイズウイルス、A型,B型肝炎ウイルス等が挙げられる。
また、感染疾患に対するワクチンには、経皮接種剤、皮下注射剤、経口投与剤等のものがあるが、パイエル板の直接的な刺激、投与の簡便性等を考慮すれば、本発明の乳酸菌は、経口投与型のワクチンと一緒に投与することが好ましい。尚、当該ワクチンとしては、死菌を用いたワクチン(不活性化ワクチン)、弱毒化した株を使ったワクチン(生ワクチン)、菌の一部構造を利用したもの(コンポーネントワクチン)の何れも利用可能である。
〔各種組成物〕
本発明の乳酸菌を飲食品、医薬品、外用剤(外用医薬品、化粧品等)、飼料等の各種組成物の形態で用いる場合、当該乳酸菌の菌体を、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることのみならず、当該培養・発酵液(培養上清)、その培養物の粗精製品あるいは精製品、それらの凍結乾燥品、或いは菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
また、菌体は生菌体のみならず、通常の一般的加熱滅菌操作によって滅菌されたものであってもよい。滅菌された菌体であっても、整腸作用、腸内細菌叢改善作用等による健康維持、長寿等に効果が期待できるだけでなく、生菌の場合、製品製造以降の配送時や陳列時に形態変化を起こす可能性があるため、それ以上形態変化を起こさない死菌体は好適に使用できる。
上記培養液は、例えば実施例3に示すように、本発明乳酸菌に適した培地、例えばMRS培地等を用いて、30から37℃で16から28時間程度培養することにより得ることができる。培養菌体は培養後に、例えば培養液を3,000回転/分、4℃、10分間遠心分離して集菌することによって得ることができる。これらは常法に従い精製することができる。更に、該菌体は凍結乾燥あるいは噴霧乾燥することもできる。かくして得られる菌体は本発明組成物の有効成分として利用することができる。
本発明組成物において、本発明乳酸菌をそのまま用いることもできるが、適当な可食性担体(食品素材)、製薬上許容される担体を適宜配合して、後述するような飲食品、医薬品、外用剤、飼料等の形態に調製されるのが好ましい。
また、本発明組成物中には、必要に応じて更に、本発明乳酸菌の維持、増殖等に適した栄養成分の適量を含有させることができる。
該栄養成分の具体例としては、微生物の培養のための培養培地に利用される、例えばグルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フラクトース等の炭素源、例えば酵母エキス、ペプトン等の窒素源、ビタミン類、ミネラル類、微量金属元素、その他の栄養成分等の各成分を挙げることができる。ビタミン類としては、例えばビタ ミンB、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等を例示できる。微量金属元素としては、例えば亜鉛、セレン等を例示できる。その他の栄養成分としては、例えば乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等の各種オリゴ糖を例示できる。これらのオリゴ糖の配合量は、特に限定されるものではないが、通常本発明組成物中に1−30重量%程度となる量範囲から選ばれるのが好ましい。
尚、本発明組成物は、乳酸菌を死菌体で含有させる場合、該組成物の製品化に当たっては、加熱、加圧等の条件を採用してもよい。
本発明組成物中への乳酸菌の配合量は、一般には、本発明組成物100g中に、菌数が108〜1011個前後(生菌数である必要はない。但し、死菌数を含む場合は、殺菌前の生菌数として計数するものとする。以下、同じ)となる量から適宜選択することができる。生菌数の測定は、菌培養用の寒天培地に希釈した試料を塗布して37℃下で培養を行い、生育したコロニー数を計測することにより算出する。この生菌数と濁度とは相関するため、予め生菌数と濁度との相関を求めておくと、生菌数の測定に代えて濁度を測定することによって上記生菌数を計数できる。上記乳酸菌の配合量は、上記量を目安として、調製される本発明組成物の形態、利用する乳酸菌の種類等に応じて適宜変更することができる。
本発明組成物は、ワクチンと共に、或いは組成物単独で使用される。ワクチンと共に用いる場合、本発明組成物はワクチン投与の前後に投与し、効果を高めるワクチンの効果増強剤として利用することもできる。
当該組成物の使用量は、使用したワクチンの種類及び品質、あるいは年齢、症状等によって異なるが、例えば、予防のために用いるには、成人1回につき固形分換算で0.01〜10g程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、固形分換算で0.1〜100g程度の範囲で用いることが適当である。
以下に、各組成物の形態について具体的に説明する
1)飲食品
本発明組成物を飲食品とする場合は、例えば発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料、発酵豆乳飲料等を挙げることができる。本明細書において、「発酵乳」及び「乳酸菌飲料」なる用語は、旧厚生省「乳及び乳製品の成分等に関する省令」第二条37「はっ酵乳」及び38「乳酸菌飲料」の定義に従うものとする。即ち、「発酵乳」とは、乳又は乳製品を乳酸菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものをいう。従って該発酵乳には飲料形態と共にヨーグルト形態が包含される。また「乳酸菌飲料」とは、乳又は乳製品を乳酸菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものを主原料としてこれを水に薄めた飲料をいう。
他の飲食品形態の例としては、漬物、味噌、発酵茶、バン等の発酵食品、離乳食、粉ミルク、ベビーフード等の乳児用食品、発泡製剤、ガム、グミ、プディング等の菓子類、麺類、カプセル、顆粒、粉末、錠剤等の栄養補助食品等、前記発酵乳及び乳酸菌飲料以外の乳製品等を挙げることができる。
また、本発明の飲食品には、感染防御、下痢の予防等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した、特定保健用食品、健康食品等の機能性食品が包含される。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等の目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられる。
斯かる飲食品の製造においては、風味を上げたり、必要な形状とする等のために種々の成分を添加、配合し、更にフレーバーを添加して最終製品とすることができる。
斯かる添加、混合成分としては、各種糖質や乳化剤、甘味料、酸味料、果汁等が挙げられる。より具体的には、グルコース、シュークロース、フラクトース、蜂蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン類やハーブエキス、穀物成分、野菜成分、乳成分等を配合しても、優れた風味の本発明組成物を得ることができる。
また、フレーバーとしては、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバーが挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。フレーバーの添加量は特に限定されないが、風味面から0.05〜0.5質量%、特に0.1〜0.3質量%程度が好ましい。
以下、発酵野菜飲料、発酵果実飲料及び発酵豆乳飲料の調製について詳述する。
これら各形態への調製は、乳酸菌の栄養源を含む適当な発酵用原料物質、例えば野菜類、果実類、豆乳(大豆乳化液)等の液中で、乳酸菌を培養して該原料物質を発酵させることによって行うことができる。
発酵用原料物質としての野菜類及び果実類には、各種野菜及び果実の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁、酵素処理物、それらの希釈物及び濃縮物が含まれる。野菜類には、カボチャ、ニン ジン、トマト、ピーマン、セロリ、ホウレンソウ、有色サツマイモ、コーン、ビート、ケール、パセリ、キャベツ、ブロッコリー等が含まれる。果実類にはリンゴ、モモ、バナナ、イチゴ、ブドウ、スイカ、オレンジ、ミカン等が含まれる。なお、発酵用原料物質は、野菜類及び果実類の非可食部残渣、おから、焼酎粕等の食品残渣であってもよい。
野菜及び果実の切断物、破砕物及び磨砕類は、例えば上記野菜類又は果実類を洗浄後、必要に応じて熱湯に入れる等のブランチング処理した後、クラッシャー、ミキサー、フードプロセッサー、パルパーフィッシャー、マイコロイダー(MycolloiderTM,特殊機化工業社製)等を用いて切断、破砕、磨砕することによって得ることができる。
搾汁は、例えばフィルタープレス、ジューサーミキサー等を用いて調製することができる。また上記磨砕物を、濾布等を用いて濾過することによっても搾汁を調製することができる。酵素処理物は、上記切断物、破砕物、磨砕物、搾汁等にセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチン分解酵素等を作用させることによって調製できる。希釈物には水で1−50倍に希釈したものが含まれる。濃縮物には、例えば凍結濃縮、減圧濃縮等の手段によって1−100倍に濃縮したものが含まれる。
発酵用原料物質の他の具体例である豆乳は、常法に従い、大豆原料から調製することができる。該豆乳には、例えば、脱皮大豆を水に浸漬後、コロイドミル等の適当な粉砕機を用いて湿式粉砕処理後、常法に従いホモジナイズ処理した均質化液、水溶性大豆蛋白質を水中に溶解した溶解液等も包含される。
乳酸菌を利用した発酵は、予めスターターを用意し、これを発酵用原料物質に接種して発酵させる方法が好ましい。ここでスターターとしては、例えば代表的には予め90−121℃、5−20分間通常の殺菌処理を行った発酵用原料物質、酵母エキスを添加した10%脱脂粉乳等に、本発明乳酸菌を接種して培養したものを挙げることができる。このようにして得られるスターターは、通常、本発明乳酸菌を107−109個/g培養物程度含んでいる。
スターターに用いる発酵用原料物質には、必要に応じて本発明乳酸菌の良好な生育のための発酵促進物質、例えばグルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フラクトース等の炭素源、酵母エキス、ペプトン等の窒素源、ビタミン類、ミネラル類等を加えることができる。
乳酸菌の接種量は、一般には発酵用原料物質含有液1mL中に菌体が約1×106個以上、好ましくは1×107個前後含まれるものとなる量から選ばれるのが適当である。培養条件は、一般に、発酵温度20−42℃程度、好ましくは25−37℃程度、発酵時間5−72時間程度から選ばれる。
尚、上記の如くして得られる乳酸発酵物は、カード状形態(ヨーグルト様あるいはプディング用形態)を有している場合があり、このものはそのまま固形食品として 摂取することもできる。該カード状形態の乳酸発酵物は、これを更に均質化することにより、所望の飲料形態とすることができる。この均質化は、一般的な乳化機(ホモジナイザー)を用いて実施することができる。具体的には、該均質化は、例えばガウリン(GAULIN)社製高圧ホモジナイザー(LAB40)を用いて、約200−1000kgf/cm2、好ましくは約300−800kgf/cm2の条件で、或いは三和機械工業社製ホモジナイザー(品番:HA×4571,H20−A2等)を用いて、150kg/cm2又はそれ以上の条件で実施することができる。この均質化によって、優れた食感、とくに滑らかさを有する飲料を得ることができる。尚、この均質化にあたっては、必要に応じて適当に希釈したり、pH調整のための有機酸類を添加したり、また、糖類、果汁、増粘剤、界面活性剤、香料等の飲料の製造に通常用いられる各種の添加剤を適宜添加することもできる。
好ましい添加剤とその添加量(カード状発酵物重量に対する重量%)の一具体例としては、例えばグルコース8%(重量%、以下同じ)、砂糖8%、デキストリン8%、クエン酸0.1%、グリセリン脂肪酸エステル0.2%及び香料0.1%を挙げることができる。
かくして得られる本発明飲料は、適当な容器に無菌的に充填して最終製品とすることができる。該製品は、滑らかな喉ごしの食感及び風味を有している。
その投与(摂取)量は、これを摂取する生体の年齢、性別、体重、疾患の程度等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではない。一般には乳酸菌量が約106−109個/mLとなる範囲から選ばれるのがよい。該製品は一般にその約50−1,000mLを1日ヒト1人あたりに摂取、服用させればよい。
2)医薬品
本発明組成物を医薬品とする場合は、本発明乳酸菌と共に製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な医薬組成物の形態に調製されて実用される。該製剤担体としては、通常、この分野で使用されることの知られている充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
医薬組成物の投与単位形態としては、各種の形態が選択できるが、好適には経口投与用製剤、外用投与製剤が挙げられる。
経口投与製剤の代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセル ロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭 酸カルシウム等の崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールな どの滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
更に、医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させることもできる。
医薬組成物中に含有されるべき本発明乳酸菌の量は、特に限定されず広範囲より適宜選択される。通常、組成物中に約107−1012個/投与単位形態程度含有されるものとするのがよい。
上記医薬組成物の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じて決定される。また、その投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常有効成分である本発明乳酸菌の量が1日当り体重1kg当り約0.5−20mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1−4回に分けてヒトに投与することができる。
3)外用剤
本発明組成物を化粧品、外用医薬品、医薬部外品等の外用剤組成物とする場合は、本発明乳酸菌と共に、製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な外用剤組成物の形態に調製されて実用される。
斯かる製剤担体としては、例えば、グリセリン、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、ヘパリン等の保湿剤;PABA誘導体(パラアミノ安息香酸、エスカロール507等)、桂皮酸誘導体(ネオヘリオパン、パルソールMCX、サンガードB等)、サリチル酸誘導体(オクチルサリチレート等)、ベンゾフェノン誘導体(ASL−24、ASL−24S等)、ジベンゾイルメタン誘導体(パルソールA、パルソールDAM等)、複素環誘導体(チヌビン系等)、酸化チタン等の紫外線吸収剤・散乱剤;エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤;サリチル酸、イオウ、カフェイン、タンニン等の皮脂抑制剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等の殺菌・消毒剤;塩酸ジフェンヒドラミン、トラネキサム酸、グアイアズレン、アズレン、アラントイン、ヒノキチオール、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸等の抗炎症剤;ビタミンA、ビタミンB群(B1,B2,B6,B12,B15)、葉酸、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD群(D2,D3)、ビタミンE、ユビキノン類、ビタミンK(K1,K2,K3,K4)等のビタミン類;アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジン、グリシン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、アルギニン、ピロリドンカルボン酸等のアミノ酸及びその誘導体;レチノール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、胎盤抽出液等の美白剤;ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等の抗酸化剤;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、石炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム等の収斂剤;グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、トレハロース、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール等の糖類;甘草、カミツレ、マロニエ、ユキノシタ、芍薬、カリン、オウゴン、オウバク、オウレン、ジュウヤク、イチョウ葉等の各種植物エキス等の他、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色素等が挙げられる。
外用剤組成物の具体例としては、化粧用クリーム類、乳液、化粧水、パック剤、スキンミルク(乳剤)、ジェル剤、パウダー、リップクリーム、口紅、アンダーメークアップ、ファンデーション、サンケア、浴用剤、ボディシャンプー、ボディリンス、石鹸、クレンジングフォーム、軟膏、貼付剤、ゼリー剤、エアゾール剤等を挙げることができる。
4)飼料
本発明組成物を飼料とする場合は、例えば、鶏の非抗生剤投与時期、豚、牛等の離乳期における感染症予防用として、経口投与用製剤形態(水溶液、乳化液、顆粒、粉末、カプセル、錠剤等)を挙げることができる。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
実施例1
本例は、本発明乳酸菌のIgA産生誘導能を、Yasuiらが記載の方法(Yasui,H.,et al.,Microbial Ecology in Health and Disease,5,155,1992.)に従ってパイエル板細胞培養系を用いてin vitroで試験した例であり、次の通り実施された。
(1)供試動物
近交系雌性マウスSPF/VAF BALB/c AnNCrjを使用した。
試験マウスを入荷後、1週間検疫した。検疫期間中はMF固形飼料(オリエンタル酵母社製)及び水道水を自由摂取させた。
(2)パイエル板細胞培養法
検疫終了後、各群の体重が均等になるように80匹のマウスを10匹ずつ群分けした。群分け後、毎日10匹のマウスを屠殺し、小腸を取り出し、小腸外側表面にあるパイエル板を切り出し、MEM培地[Eagle's MEM(NISSUI社製)、2mM glutamine(GIBCO社製)、1mM sodium pyruvate(GIBCO社製)、MEM nonessential amino acids(GIBCO社製)]を添加した遠沈管中で氷冷した。メッシュを用いて単一細胞懸濁液を調製し、5mLのMEM培地でよく洗い込んだ。細胞懸濁 液を濾過し、4℃下、1,000回転/分、10分間遠心処理を行った。遠心後、培養上清を吸引除去し、沈殿を5mLのMEM培地に懸濁させた。同様の操作 を2回繰り返した後、沈殿を10mLの10%FBS(GIBCO社製)含有MEM培地に懸濁させ、パイエル板細胞の生細胞数を計数し、細胞浮遊液を96ウエ ル細胞培養用プレートに播いて細胞培養用プレートを調製した。
(3)供試菌体の調製
阿波晩茶から分離された乳酸菌25菌株を利用した。各菌は、MRS(GIBCO社製)培地にて定常期まで培養後、遠心して菌体を集菌した(2,000rpm×20分間、4℃)。PBS(−)にて3回洗浄後、凍結乾燥した。使用時に各種凍結乾燥菌体をPBS(−)で1mg/mLになるよう懸濁し、オートクレーブにて121℃で15分間加熱滅菌処理した。その後RPMI1640培地(Sigma社)で200μg/mLに希釈した。
(4)培養上清中のIgA濃度の測定
上記(1)で調製したパイエル板細胞を10%FBS含有MEM培地に懸濁させて、5×106細胞/mLに調整し、その100μLを96ウエル細胞培養用プレートに入れた。このプレートの各ウエルに、200μg/mLに調製した供試菌体懸濁液(前記(3)で調製したもの)を100μL添加し、37℃、5%CO2下で7日間培養した。
次いで、得られた各培養物上清の総IgA濃度を、市販キットを用いたELISA法により測定した。
(5)本発明乳酸菌のIgA産生促進活性
前記(4)に従って測定された乳酸菌における総IgA量を、対照としての菌体を含まないRPMI1640培地100μLを添加し(菌体無添加)、7日間培養して得た培養物上清の同測定値を基準(1.0)とし、その相対比(Stimulation Index;SI)にて図1に示す。
(6)結果
IgA産生誘導能は、図1に示すように、本発明乳酸菌(YM2−2株)のSI値が25.8と、供試25菌株のなかで最も高いIgA産生誘導能を有することが判った。
さらに、同種のラクトバシルス ペントーサス菌株及びその近縁種ラクトバシルス プランタラム菌株と比較しても、特許文献2の明細書によれば、ラクトバシルス ペントーサス菌株の場合、NRIC0391(1.0)、NRIC0392(1.0)、NRIC0393(1.2)、NRIC0394(1.2)、及びその近縁種ラクトバシルス プランタラム菌株の場合でも、NRIC1919(1.3)、NRIC1920(1.1)、NRIC1921(1.1)、NRIC1923(1.0)、NRIC1957(1.0)、NRIC1958(1.3)と顕著に低く、IgA抗体産生量における菌株差が著しいことが明らかとなった。
そこで、
実施例2
本試験は、本発明乳酸菌の摂取がロタウイルス下痢症の防御に有効であることを明らかにするものである。
〔抗ロタウイルス感染効果〕
試験方法は特許文献1記載の方法に準じた。試験モデルとして、ロタウイルスによる下痢症は、免疫が確立しない生後数日間にしか起こらないため、生後間もない仔マウスにまず免疫してから感染試験に供するというモデルは確立し得ない。そこで、まずロタウイルスを母マウスにワクチンとして免疫し、該母親が生んだ仔マウスへ母乳を通して免疫物質を仔マウスに伝えるということで、仔マウスへのワクチン免疫と同等の効果があったものとみなした。すなわち、母マウスの免疫機構を本発明乳酸菌により活性化することにより、乳飲み仔マウスのロタウイルス感染を防御する系を採用した。
具体的には、本発明乳酸菌の摂取による感染防御試験は、仔マウスのロタウイルス感染後の下痢発症率を指標として検討した。本試験は以下の通り実施された。
(1)供試動物
SLC社より入荷した近交系雌性SPF/VA/VAFマウス(系統名:BALB/c AnNCrj)(7週齢)を4日間、以下の条件で検疫後、体重による群分けを行った。また、交配には11週齢雄マウスを、仔マウスは5日齢を試験に供した。
餌/給餌法:MM-3固形飼料(船橋ファーム社)/自由摂取
水/給水法:水道水/給水瓶による自由摂取
環境:温度:23±2°C、湿度:60±10%
照明時間:明期7:00〜19:00、暗期19:00〜7:00
(2)供試ロタウイルス(RV)
サル由来SA−11株(group A,type III;ウイルス価 108.6TCID50/mL)を生ワクチンとして供試した。
(3)供試本発明乳酸菌
本発明乳酸菌YM2−2菌株の熱死菌体を餌(MM−3)に0.1%添加した。
(4)試験方法
図2は本実施例の試験スケジュールを示す説明図である。図に示す通り、給餌、交配、免疫、分娩、乳飲み仔マウスへのRV感染、下痢観察の具体的なスケジュールを示している。具体的には、7週齢雌マウスをYM2−2添加餌群(YM2−2投与群)と無添加餌群(対照群)に分け、実験終了時まで自由に摂取させた。実験開始4週間後(11週齢)に雄を同居させ、交配させた。さらに1週間後に雌マウスをロタウイルス(RV)で経口免疫(RV免疫群)した。非免疫群にはPBSを経口投与した。最終的に表1に示すように4群に分けた。母マウスへの経口免疫にはPBSで10倍に希釈したウイルス液を各マウスに0.5mLずつ経口投与した。また、仔マウスには生後5日齢にロタウイルス原液を20μL経口投与した。その後7日間毎日各仔マウスの腹を押して下痢が発症しているかを観察した。水状の便が出ていれば下痢、水状ではないが柔らかい形状の便が出れば軟便、硬い糸状もしくは腹を押しても便が出ない場合は無症状とし、軟便以上を下痢発症と判定した。各群の仔マウスの下痢発症率の差は、フィッシャーの直接確率計算法を用いて比較した。いずれもp<0.05の場合、有意差ありと判定した。その結果を表1に示す。
Figure 0005324283
(5)結果及び考察
表1に示す通り、YM2−2不含餌群のなかで、非免疫群(対照群)とRV免疫群を比較すると、非免疫群(対照群)の下痢発症率は92%、RV免疫群のそれは53%と、統計学的に有意(p<0.05)な減少が認められた。これは、RVの免疫により母乳中の抗IgA抗体が増加した結果と推察される。
また、RV免疫群のなかで、YM2−2不含餌群(RV免疫群)とYM2−2含有餌群(M2−2投与RV免疫群)を比較すると、YM2−2不含餌群(RV免疫群)の下痢発症率は53%、YM2−2含有餌群のそれは4%と、統計学的に有意(p<0.001)な減少が認められた。これは、YM2−2の投与により母乳中の抗IgA抗体が増加した結果と推察される。
さらに、非RV免疫群のなかで、YM2−2不含餌群(対照群)とYM2−2含有餌群(M2−2投与群)を比較すると、YM2−2不含餌群(対照群)の下痢発症率は92%、YM2−2含有餌群のそれは50%と、統計学的に有意(p<0.05)な減少が認められた。これは、YM2−2の投与により母マウスの細胞性免疫が増強され、これらが産生するサイトカインが母乳中に移行し、それを飲んだ仔マウスの腸管免疫が活性化した結果と推察される。
RV免疫群とYM2−2投与群を比較すると、下痢発症率は53%と50%で、抗ロタウイルス感染作用の効力がほぼ同等であることが明らかとなった。
このYM2−2の単独投与による細胞性免疫を介した抗ロタウイルス感染作用に関しては、表2に示すように、特許文献1に記載のビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)YIT4064株に比べ、統計学的に有意(p<0.01)な下痢発症率の減少が認められた。
Figure 0005324283
以上のように、本発明乳酸菌YM2−2を摂食した母マウスの乳を哺乳した仔マウスはそれを摂食しない母マウスの乳を哺乳した仔マウスに比べ、ロタウイルス感染に対して抵抗性を示すことが、RV免疫、非RV免疫の両群において明らかとなった。
このワクチン免疫に拠らない細胞免疫を介した下痢発症抑制効果は、ウイルスは変異しやすく、ワクチンが効かなくなることを考慮すれば、その臨床的意義は計り知れないほど大きいものといえる。
実施例3
次に、本発明乳酸菌YM2−2の菌株を有効成分とする飲食品について実施例を挙げる。
〔ラクトバシルス・ペントーサスYM2−2菌株の培養及び集菌、死菌体の製造法〕
乳糖(5.5%)、酵母エキス(1.0%)、脱脂粉乳(1.0%)を主成分とする培地に、本発明乳酸菌YM2-2菌株を接種し、pH5.5〜6.0に調製しつつ、37℃で、18時間培養し、遠心分離にて洗浄・集菌した。集菌した菌体を洗浄後、100℃、30分間加熱し、凍結乾燥しYM2-2死菌体粉末を得た。
〔1:食パン〕
小麦粉300g,食塩4.5g,砂糖3g,ラード3g,パン酵母9g,前記YM2-2死菌体粉末10g,水180gをよく混合し、型に入れて焼成することによりYM2-2菌体入り食パンを製造した。
〔2:ビスケット〕
小麦粉100g,砂糖10g,ショートニング18g,食塩1g,ベーキングパウダー1.2g,転化糖5g,YM2-2死菌体粉末5gをよく混合し、型抜きし、オーブンで焼成することにより、YM2-2菌体入りビスケットを製造した。
〔3:チョコレート〕
チョコレートブロック180g,カカオバター165g,粉糖430g,全脂粉乳220g,レンチン5g,香料少々,YM2-2死菌体粉末15gを湯煎しながらよく混合した後、冷却固化させることにより、YM2-2菌体入りチョコレートを製造した。
〔4:ドロップ〕
砂糖180g,水飴120g,有機酸3g,YM2-2死菌体粉末10g,香料少々,色素少々を150℃程度で煮詰めながら混合し、次いで型に流し込み、冷却固化させることにより、YM2-2菌体入りドロップを製造した。
〔5:調製粉乳〕
原料乳に脱脂乳を加え、標準化した後、糖類、ミネラル類、ビタミン類を適宜添加し、殺菌、濾過した後、噴霧乾燥機で粉乳とする。これに、YM2-2死菌体粉末を5%量添加し、YM2-2菌体入り調製粉乳を製造した。
〔6:発酵乳〕
加熱したミルク培地(脱脂粉乳15%,酵母エキス0.1%)に、YM2-2菌株を接種し、培地pHが4.6になるまで35℃で培養し、冷却後、ホモゲナイザーで均質化した。一方、加熱殺菌したミルク培地(脱脂粉乳12%)に、ストレプトコッカス・サーモフィルスを接種し、培地pHが4.3になるまで37℃で培養し、氷冷後、ホモゲナイザーで均質化した。両者とショ糖シロップを順に1:3:1の割合で混合し、ドリンク ヨーグルトを製造した。
本発明のラクトバシルス・ペントーサスYM2−2菌株はIgA産生促進効果を有するため、ワクチンと共に投与することにより、ワクチンが含む抗原に対する抗体の産生を増強し、防御免疫の誘導を良好にしてワクチンの効果を増強する。また同時に、細胞性免疫をも賦活し得るため、ワクチンによる免疫増長を頼らずとも、本発明乳酸菌の投与だけで、ワクチンと同程度にウイルス感染を予防することができる。
このようにラクトバシルス・ペントーサスYM2−2菌株は、変異し易く、ワクチンが作用し難いウイルスに対しても感染防御の効力を発揮する上で非常に有用といえる。

Claims (6)

  1. 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM AP-21778として寄託されたラクトバシルス・ペントーサスYM2−2菌株。
  2. 請求項1記載の菌株の菌体又はその培養物を有効成分とする粘膜免疫賦活剤。
  3. 請求項1記載の菌株の菌体又はその培養物を有効成分とするIgA産生促進剤。
  4. 請求項1記載の菌株の菌体又はその培養物を有効成分とするウイルス感染防御剤。
  5. ウイルスがロタウイルスである請求項4記載のウイルス感染防御剤。
  6. 請求項1記載の菌株の菌体又はその培養物を含有する、飲食品、医薬品、外用剤及び飼料から選ばれる組成物。
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