JP2023086592A - 新規な乳酸菌株及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】野菜黒糖発酵液の発酵過程で出現する乳酸菌の微生物学的、生物化学的特徴を明らかにし、IgA産生促進剤、免疫賦活剤及びこれを含む健康食品および医薬品等を提供する。【解決手段】受託番号NITE P-03559として寄託されているレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株の単離された菌株、及び、この単離された菌株又はその培養物を含む組成物が提供される。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年9月29日にオンライン学会である国際ワークショップIWMST(International Workshop on Modern Science and Technology)2021にてポスター発表 令和3年11月15日に論文雑誌であるInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiologyに掲載(掲載アドレス:https://doi.org/10.1099/ijsem.0.005128) 令和3年11月17日にオンライン学会であるThe 26th Symposium of Young Asian Biological Engineers’ Community(YABEC2021)のオンライン予稿集に掲載(掲載アドレス http://yabec-jp.org/download/yabec2021proceedings/) 令和3年11月19日にオンライン学会であるThe 26th Symposium of Young Asian Biological Engineers’ Community(YABEC2021)にて口頭で発表
本発明は、新規な乳酸菌株であるレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株及びその用途(IgA産生促進剤、免疫賦活剤等)に関する。
野菜や果物、海藻類などの原料を発酵、熟成させて作った酵素液を主原料とした健康飲料は、免疫力を高め、体調を整える効果があることが知られている。野菜黒糖発酵エキス(例えば、商品名「ジオリナ(登録商標)酵素」)は、含蜜糖、葉菜類、根菜類、黒糖、ガラクトオリゴ糖、茎菜類、イモ類、キノコ類、花菜類、コンブおよびワカメなどを原料として、複雑な微生物の集団により自然発酵することにより得られる酵素飲料である。この野菜黒糖発酵液の発酵過程で出現、消失する微生物叢は、自然発酵により乳酸菌が短期間で優勢になること、バッチごとの菌叢パターンが安定していること、乳酸菌の中でも菌種の入れ替わりがあることなどが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
ところで、乳酸菌の免疫調節機能については、これまで様々な研究が行われてきた。例えば、植物由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌等が、腸管免疫活性化作用やパイエル板細胞のIgA産生促進作用を有すること(特許文献1)、ロイコノストック属に属する乳酸菌が、免疫(特に腸管免疫)賦活作用を有すること(特許文献2)、あじなれずしより分離したラクトバチルス ブレビス及びラクトバチルス カゼイの乳酸菌が、抗炎症・抗アレルギー作用を有すること(特許文献3)等が知られている。
上述したように、ある種の乳酸菌は、宿主の獲得免疫システムを活性化して腸管内へのIgAの分泌を促進するが、その一方で、これらの免疫賦活活性は、菌種が同一であっても菌株が違えばその効果も大きく異なる。その活性化メカニズムは、完全には明らかではないが、GALTと称される腸管関連リンパ組織、特に、パイエル板で産生されたIgAが腸管内に分泌され、有害な細菌やウイルスと結合してその運動を妨げ、小腸上皮細胞への付着を阻害すると考えられている。また、腸内細菌叢が小腸上皮細胞に存在するトル様受容体(TLR)や樹状細胞(DC)を介して様々なサイトカインを分泌し、粘膜固有層に存在するIgA産生B細胞を分化誘導するメカニズムも提案されている(例えば、非特許文献2、FIG1参照)。
Chiou T-Y, Suda W, Oshima K, Hattori M, Takahashi T (2017) Changes in the bacterial community in the fermentation process of koso, a Japanese sugar-vegetable fermented beverage. Biosci Biotechnol Biochem 81(2):403-410 Kamada N. et al., Role of the gut microbiota in immunity and inflammatory disease. Nat Rev Immunol. 2013 May;13(5):321-35.
特開2007-308419号公報 国際公開第2014/129599号 特開2013-193996号公報
野菜黒糖発酵液は、健康食品として摂取することにより健康増進機能を有することが知られているが、その有効成分については必ずしも明らかではない。本発明はこのような状況下においてなされたものであって、その目的とするところは、野菜黒糖発酵液の発酵過程で出現する乳酸菌の微生物学的、生物化学的特徴を明らかにし、より良い免疫賦活剤、並びにこれを含む健康食品及び医薬品等を提供することである。
本発明の発明者らは、発酵7日後の野菜黒糖発酵液から、MRS寒天培地を用いて30℃、好気性条件で培養を行うことにより、新規乳酸菌のコロニーが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一実施形態において、受託番号NITE P-03559として寄託されているレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株の単離された菌株が提供される。
本発明の他の実施形態はこの単離された菌株又はその培養物を含む組成物である。
さらに他の実施形態では、上記の単離された菌株又は組成物を有効成分として含むIgA産生促進剤又は免疫賦活剤である。これらの組成物は、飲食品、医薬品、外用剤又は飼料の形態で利用され、これらを投与された対象者の粘膜免疫を賦活するために用いることが好ましい。
本発明の他の側面において、豆乳に上記の単離された菌株を添加して発酵させる工程を含む豆乳ヨーグルトの製造方法が提供される。
本発明の新規な乳酸菌株は、IgA産生促進効果を有し、腸管等の粘膜免疫を賦活化するために有用である。また、本発明の新規な乳酸菌株は、豆乳ヨーグルトの製造のために有用である。
レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株の走査型電子顕微鏡画像である。 C06_No.73株の生育温度及び生育pHに関するグラフである。 16S rRNA遺伝子配列に基づく系統樹である。 2次元高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によりC06_No.73株における極性脂質を評価した結果の写真である。 菌体用量が異なる場合におけるC06_No.73株のIgA産生誘導活性を示すグラフである。 加熱による死菌処理を実施した場合と実施しない場合とにおけるC06_No.73株のIgA産生誘導活性を示すグラフである。 豆乳ヨーグルトの発酵時間と粘度及びpHとの関係を示すグラフである。 豆乳ヨーグルトの発酵時間と乳酸濃度及び酢酸濃度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について次の順序により説明する。
(I)新規乳酸菌
(II)IgA産生促進作用及び免疫賦活作用
(III)各種組成物およびその用途
(IV)豆乳ヨーグルトの製造方法
(I)新規乳酸菌
本発明の好ましい実施形態によれば、野菜黒糖発酵液から単離された新規な乳酸菌株およびその変異株が提供される。より好ましくは、商品名「ジオリナ(登録商標)酵素」の培養液から得られるレンチラクトバチルス属に属する菌であり、さらに好ましくは、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株(受託番号NITE P-03559)又はその変異株である。「変異株」とは、特定の菌株に対し、当業者に周知の方法により当業者がその主要な性質に変化を及ぼさない範囲で変異させたもの、あるいは、それと同等であると当業者が確認できるものを包含する意味である。なお、「野菜黒糖発酵液から単離された」というのは本発明に係る新規乳酸菌の具体的な発見経路を示す表現であり、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、野菜黒糖発酵液以外のものから単離されたもの(例えば、自然界の植物から単離されたもの)であってもよい。
レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、令和3年(2021年)11月16日(原寄託日)付で独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センター(〒292-0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、122号室)に寄託されている。受託番号は、NITE P-03559である(以下、本菌株を「C06_No.73株」と称する)。
(C06_No.73株の単離)
レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、日本国長野県佐久市のアルソア佐久ファクトリィで製造された野菜黒糖発酵液から得られた。具体的な単離方法は、後述する[実施例1]で説明するとおりである。
(C06_No.73株の表現型の特徴)
C06_No.73株は、グラム陽性、カタラーゼ陰性であった。また、走査型電子顕微鏡(JSM―6010LA、日本電子株式会社)による観察によれば、図1に示すように、C06_No.73株は桿状の形状を有し、サイズはおおよそ0.7~0.8×1.3~3.0μmであった。また、内生胞子は見られなかった。
C06_No.73株の生育条件は、pHについてはpH3.0~10.0の範囲(pH0.5刻み)で、温度については18~39℃(3℃刻み)で、塩分濃度については0~10%(w/v)(2%(w/v)刻み)で、それぞれ試験を行い、波長600nmでの吸光度(OD600)により生育状況を観察した。MRSブロスのpHの調整には、HCl水溶液(6N)及びNaOH水溶液(6N)を用いた。プレ培養は30℃、48時間とした。pHについての試験では、それぞれのpHについて27℃、24時間の条件で培養を実施した。温度についての試験では、MRSブロスのpHを調整しなかった(おおよそpH6.50)。OD600は24時間及び48時間で測定した。以上の試験により判明した菌学的特性は以下のとおりである(生育pHについては図2(a)を、生育温度については図2(b)をそれぞれ参照。)。
生育pH:4.0~8.0(至適pHは6.5)
生育温度:18~39℃(至適温度は24時間培養で33℃、48時間培養で27℃)
NaCl耐性:6%(w/v)以上で増殖抑制
C06_No.73株のコロニーの観察は、好気的条件下でのMRS寒天培地による培養により実施した。C06_No.73株のコロニーは、直径約1~3mm、白色、不透明、円形で、全体的に隆起し湿っていた。
酵素活性:
酵素活性は、ビオメリュー・ジャパン株式会社の酵素活性研究用システム「アピザイム(API ZYM)」を用いて調べた。C06_No.73株は、エステラーゼ、エステラーゼリパーゼ、酸性ホスファターゼ、ナフトールAS-BI-ホスホヒドロラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルコシダーゼ、α-フコシダーゼ、ロイシンアリルアミダーゼ、バリンアリルアミダーゼ及びシスチンアリルアミダーゼについて活性を示した(表1参照。)。
Figure 2023086592000002
(系統解析)
C06_No.73株の培養菌体から常法によりゲノムDNAを抽出し、PCR増幅シーケンシングにより、アプライドバイオシステムズ社の3130ジェネティックアナライザを用いて、16S rRNA遺伝子の配列を決定した。C06_No.73株の16S rRNA遺伝子配列は、GenBankの受入番号LC604908として登録されている。この16S rRNA遺伝子配列の相同性をBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)により解析した結果、C06_No.73株と最もよく似た菌株はレンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株であり、配列同一性は98.1%であった。次点以降で16S rRNA遺伝子配列の配列同一性が高いものとしては、レンチラクトバチルス ラオルティー(L.raoultii)Marseille-P4006株(配列同一性96.8%)、レンチラクトバチルス ラピ(L.rapi)DSM 19907株(配列同一性96.4%)、レンチラクトバチルス キソネンシス(L.kisonensis)DSM 19906株(配列同一性96.3%)、レンチラクトバチルス オウタキエンシス(L.otakiensis)DSM 19908株(配列同一性96.3%)、レンチラクトバチルス スンキー(L.sunkii)DSM 19904株(配列同一性96.3%)、及び、レンチラクトバチルス ディオリボランス(L.diolivorans)DSM 14421株(配列同一性96.3%)が挙げられる。これらの配列同一性は、原核生物の種の異同を判別する閾値として推奨されている98.65%より低く、C06_No.73株は既知の乳酸菌とは別種であると判断できる。
次に、BLASTで16S rRNA遺伝子の塩基配列が近いとされた上位30種から、最尤法(maximum likelihood method)及び最大節約法(maximum parsimony method)を用いて、MEGA Xにより16S rRNA遺伝子配列に基づく系統樹を構築した。構築した系統樹によれば、レンチラクトバチルス(Lentilactobacillus)、フルクチラクトバチルス(Fructilactobacillus)、レヴィラクトバチルス(Levilactobacillus)、セカンディラクトバチルス(Secundilactobacillus)、及びペディオコッカス(Pediococcus)の5つの属のクラスターが形成された。C06_No.73株はレンチラクトバチルス属に属するクラスターを形成する(図3参照)。なお、図3においては、系統樹の分岐点にブートストラップ値を示している。
糖代謝:
C06_No.73株の炭素源の利用可能性について、ビオメリュー・ジャパン株式会社のAPI 50CHLキットを用いて調べた。また、系統発生分析においてC06_No.73株との16S rRNA遺伝子配列の配列同一性が最も高かったレンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株の炭素源の利用可能性についても、C06_No.73株の場合と同様に調べ、比較をおこなった。その結果、上記キットで調査可能な49種類の炭素源のうち、18種類について違いがあることが判明した(表2参照。なお、表2においては、49種類の炭素源のうち違いがある18種類を含む29種類の主な炭素源のみ表示する。)。
Figure 2023086592000003
C06_No.73株はグリセロールを利用できたが、レンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株はグリセロールを利用できなかった。一方、レンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株はL-アラビノース、D-キシロース、L-ラムノース、D-マンニトール、D-ソルビトール、メチル-α-D-マンノピラノシド、N-アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、サリシン、D-セロビオース、D-ラクトース、D-スクロース、D-トレハロース、D-メレジトース、D-ラフィノース及びゲンチオビオースを利用できたが、C06_No.73株はこれらを利用できなかった。
また、BacDiveデータベースを用い、炭素源の利用可能性について、C06_No.73株と、レンチラクトバチルス ブフネリ(L.buchneri)DSM 20057株、レンチラクトバチルス パラファラジニス(L.parafarraginis)JCM 14109株、レンチラクトバチルス ディオリボランス(L.diolivorans)JCM 12183株及びレンチラクトバチルス シニオリス(L.senioris)JCM 17472株とを比較した。その結果、比較した中ではグリセロールを利用できるのはC06_No.73株だけであった。一方、比較した5種類のレンチラクトバチルス属の菌種はすべてL-アラビノース及びD-キシロースを利用できたが、C06_No.73株はこれらを利用できなかった。
(化学分類学的特性)
化学的な分析のためのC06_No.73株のバイオマスは、MRSブロスを用いて30℃、2~3日の好気性条件での静的培養により得た。ガスクロマトグラフィー(GC)を用いた細胞の脂肪酸の分析には、バージョン6.0のMIDI(Microbial Identification System)を使用した。C06_No.73株から検出された主な脂肪酸は、C16:0(32.7%)、C18:1,ω7c(28.3%)、C18:1,ω9c(19.3%)、及び、C19:0シクロプロパン11,12(7.5%)であった(表3参照。)。
Figure 2023086592000004
細胞壁のアミノ酸の組成は、ACQUITY UPLC BEH C18 カラム(2.1mm×150mm,1.7μm)を備えたACQUITY UPLC H-Class PLUS システム及びACQUITY UPLCフォトダイオードアレイ(PDA)eλ検出器(いずれも米国のウォーターズ社製)により評価した。C06_No.73株の細胞壁のアミノ酸組成は、主に、リシン(Lys)、アラニン(Ala)、グルタミン酸(Glu)及びアスパラギン酸(Asp)で構成されていた。上記アミノ酸のモル比は、Lys/Ala/Glu/Asp=5.6/4.9/2.6/1.0であった。メソ-ジアミノピメリン酸及びオルニチンは検出されなかった。これは、C06_No.73株の細胞壁ペプチドグリカンが、ラクトバチルス属の細胞壁として最も一般的なA4α L-Lys-D-Asp型であることを示唆する。
また、2次元高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)によりC06_No.73株における極性脂質を評価したところ、多くのラクトバチルス属の種と同様に、ホスファチジルグリセロール(PG)が主な成分として検出された(図3参照。)。また、比較的少量のリゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)も検出された。また、4種類の詳細不明の極性脂質(UL1,UL2,UL3,UL4)及び詳細不明のリン脂質(PL)も検出された。なお、Eclipse Plus C18 カラム(2.1mm×150mm)(米国のアジレント・テクノロジー社製)を加えた他はアミノ酸の組成を評価したときと同様の方法によりC06_No.73株からのイソプレノイドキノンの検出を試みたが、イソプレノイドキノンは検出されなかった。この結果は、多くのラクトバチルス属の種と一致する。
C06_No.73株のゲノムDNAの抽出及びドラフト全ゲノム配列の分析は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のIon Torrent PGMシステムを用いて実施した。C06_No.73株のドラフトゲノム配列のサイズは1,971,719bpであり、平均GC含量は37.9%であった(表4参照。)。また、21のコンティグを整列して2592個の候補オープンリーディングフレーム、3個のrRNA遺伝子、53個のtRNA遺伝子を注釈づけた。レンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株のゲノムにおけるGC含量は39.8%であり、C06_No.73株よりも高い。
Figure 2023086592000005
また、C06_No.73株と既知のレンチラクトバチルス属の種との間のANI値(相同値)を、OrthoANIuを用いて推定した。その結果、C06_No.73株との間のANI値が最も高かったのは、レンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株の76.81%であった(表5参照。)。この値は、種の境界として設定されたANI値の閾値(95~96%)よりもはるかに低い。
Figure 2023086592000006
また、コンピューターシミュレーションによるDNA-DNAハイブリダイゼ-ション法(DDH)によるC06_No.73株とレンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株との相同性の算出も試みた。その結果、同一の塩基対と高スコアのセグメントペアとの比率を使用する推奨される計算式に基づいて算出されたDDH値は20%であった。この値は、一般的に同種かどうかの判断に用いられる70%よりもはるかに低い。
また、ラクトバチルス属の異なる種を同定するために、recA、rpoA及びpheSの遺伝子の部分配列が16S rRNA遺伝子配列の代替手段として用いられている。そこで、レンチラクトバチルス属のうちレンチラクトバチルス ブフネリ(L.buchneri)LMG 6892株、レンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株、レンチラクトバチルス ディオリボランス(L.diolivorans)DSM 14421株、レンチラクトバチルス ヒルガルディー(L.hilgardii)ATCC 8290株、レンチラクトバチルス クリビアヌス(L.kribbianus)JCM 33997株、レンチラクトバチルス パラファラジニス(L.parafarraginis)DSM 18390株、レンチラクトバチルス ラピ(L.rapi)DSM 19907株及びレンチラクトバチルス シニオリス(L.senioris)DSM 24302株(いずれも基準株)について、C06_No.73株との間のrecA、rpoA及びpheSの遺伝子配列の相同性を比較した。その結果、rpoA及びpheSについてはレンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株の相同性が最も高く、それぞれ92.0%及び84.0%であった。また、recAについてはレンチラクトバチルス クリビアヌス(L.kribbianus)JCM 33997株の相同性が最も高く、82.38%であった(表6参照。)。
Figure 2023086592000007
さらに、recA、rpoA及びpheSの遺伝子配列の相同性に基づき、C06_No.73株及び既知のレンチラクトバチルス属の基準株について、最尤法(maximum likelihood method)及び最大節約法(maximum parsimony method)を用いて系統樹を構築した(図示せず。)。その結果、C06_No.73株は、単一のクレードにグループ付けられ、最も関連性が高いのはレンチラクトバチルス キューリエ(L.curieae)CCTCC M 2011381株であり、レンチラクトバチルス属に属することが明らかになった。
以上のような特性解析および分類学的解析に基づき、C06_No.73株は新規な種であると結論付けられ、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株として、独立行政法人製品評価技術基盤機構のバイオテクノロジーセンターの行う生物遺伝資源寄託制度のもとで寄託されている(受託番号:NBRC111893)。その後、本菌株NBRC111893は、特許生物寄託センターに移管され、受託番号NITE P-03559として寄託された。また、本明細書に記載した新規乳酸菌の分類学的性質は、本発明者らにより公表された論文(Chiou et al., Lentilactobacillus kosonis sp.nov.,isolated from koso,a Japanese sugar-vegetable fermented beverage,Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 2021;71:005128)に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
(II)IgA産生促進作用及び免疫賦活作用
本明細書において、「IgA産生促進剤」とは、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株(受託番号NITE P-03559)の菌体又はその培養物を含む組成物を有効成分として含有するものであって、IgA産生細胞を多量に含むパイエル板細胞の培養液に添加して所定期間培養し、培養後の培養液中に分泌された分泌型IgA量が、添加しなかった場合より増加するような、IgA産生誘導能を有するものをいう。IgA産生促進剤は、ワクチンと共に投与することにより、ワクチン中に含まれる抗原に対応する抗体の産生を増強し、ワクチンの効果を増強することができ、またワクチンの副作用を抑える可能性が高い。すなわち、ワクチンが含む抗原に対する抗体の産生を増強し、防御免疫の誘導を良好にしてワクチンの効果を増強する。
また、「免疫賦活剤」とは、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株(受託番号NITE P-03559)の菌体又はその培養物を含む組成物を有効成分として含有するものであって、口腔、鼻腔、呼吸器官、消化管などの粘膜上皮におけるIgAの分泌を促進し、宿主の免疫機構を賦活するために有効なものを意味する。本発明の免疫賦活剤は、以下に詳述するように、飲食品、医薬品、外用剤または飼料の形態等を含む。また、これらの中でも健康食品が好ましく、特に、免疫力が低下した対象者の健康を維持増進するための食品組成物が好ましい。
(III)各種組成物およびその用途
〔各種組成物〕
本実施形態の新規乳酸菌を飲食品、医薬品、外用剤(外用医薬品、化粧品等)、飼料等の各種組成物の形態で用いる場合、当該乳酸菌の菌体を、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることのみならず、当該培養・発酵液(培養上清)、その培養物の粗精製品あるいは精製品、それらの凍結乾燥品、或いは菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
また、菌体は生菌体のみならず、通常の一般的加熱滅菌操作によって滅菌されたものであってもよい。熱変性を受けやすいタンパク性成分や核酸などの乳酸菌に由来する免疫誘導活性は、70℃、30分の加熱処理によって低下するが、後述する実施例2の結果からも明らかなように、C06_No.73株のIgA産生誘導活性は加熱処理によっても減衰しないことから、C06_No.73株の産生する免疫増強成分は加熱耐性を有している。加熱処理は好ましくは75℃で1分以上であり、より好ましくは85℃、1分以上である。加熱処理された菌体であっても、IgA産生誘導作用等による免疫賦活作用が期待できるだけでなく、生菌の場合、製品製造以降の配送時や陳列時に形態変化を起こす可能性があるため、それ以上形態変化を起こさない加熱滅菌菌体は好適に使用できる。なお、本実施形態の組成物は、C06_No.73株を加熱滅菌菌体で含有させる場合、該組成物の製品化に当たっては、加熱、加圧等の条件を採用してもよい。
上記培養液は、例えば実施例1に示すように、本発明乳酸菌に適した培地、例えば、MRS培地等を用いて、18~39℃で16~48時間程度培養することにより得ることができる。培養菌体は培養後に、例えば培養液を3,000回転/分、4℃、10分間遠心分離して集菌することによって得ることができる。これらは常法に従い精製することができる。更に、該菌体は凍結乾燥あるいは噴霧乾燥することもできる。かくして得られる菌体は本発明組成物の有効成分として利用することができる。
本実施形態の組成物において、C06_No.73株の菌体をそのまま用いることもできるが、適当な可食性担体(食品素材)、製薬上許容される担体を適宜配合して、後述するような飲食品、医薬品、外用剤、飼料等の形態に調製されるのが好ましい。
また、本実施形態の組成物中には、必要に応じて更に、C06_No.73株の維持、増殖等に適した栄養成分の適量を含有させることができる。該栄養成分の具体例としては、微生物の培養のための培養培地に利用される、例えばグルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フルクトース等の炭素源、例えば酵母エキス、ペプトン等の窒素源、ビタミン類、ミネラル類、微量金属元素、その他の栄養成分等の各成分を挙げることができる。ビタミン類としては、例えばビタミンB、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等を例示できる。微量金属元素としては、例えば亜鉛、セレン等を例示できる。その他の栄養成分としては、例えば乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等の各種オリゴ糖を例示できる。これらのオリゴ糖の配合量は、特に限定されるものではないが、通常本発明組成物中に1~30重量%程度となる量範囲から選ばれるのが好ましい。
本実施形態の組成物中へのC06_No.73株の配合量は、一般には、組成物100g中に、菌数が10~1011個前後(生菌数である必要はない。)となる量から適宜選択することができる。生菌数の測定は、菌培養用の寒天培地に希釈した試料を塗布して30℃で培養を行い、生育したコロニー数を計測することにより算出する。この生菌数と濁度とは相関するため、予め生菌数と濁度との相関を求めておくと、生菌数の測定に代えて濁度を測定することによって上記生菌数を計数できる。上記C06_No.73株の配合量は、上記量を目安として、調製される本実施形態の組成物の形態に応じて適宜変更することができる。
本実施形態の組成物は、ワクチンと共に、或いは組成物単独で使用される。ワクチンと共に用いる場合、当該組成物はワクチン投与の前後に投与し、効果を高めるワクチンの効果増強剤として利用することもできる。当該組成物の使用量は、使用したワクチンの種類及び品質、あるいは年齢、症状等によって異なるが、例えば、予防のために用いるには、成人1回につき固形分換算で0.01~10g程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、固形分換算で0.1~100g程度の範囲で用いることが適当である。
以下に、各組成物の形態について具体的に説明する
(飲食品)
本実施形態の組成物を飲食品とする場合は、例えば発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料、発酵豆乳飲料等を挙げることができる。「発酵乳」とは、乳又は乳製品を乳酸菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものをいう。従って該発酵乳には飲料形態と共にヨーグルト形態が包含される。また「乳酸菌飲料」とは、乳又は乳製品を乳酸菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものを主原料としてこれを水に薄めた飲料をいう。
他の飲食品形態の例としては、漬物、味噌、発酵茶、パン等の発酵食品、離乳食、粉ミルク、ベビーフード等の乳児用食品、発泡製剤、ガム、グミ、プディング等の菓子類、麺類、カプセル、顆粒、粉末、錠剤等の栄養補助食品等、前記発酵乳及び乳酸菌飲料以外の乳製品等を挙げることができる。とりわけ、加熱によっても機能性が保持される免疫増強成分を含むことから、加熱工程が必要とされる加工食品の形態が好ましい。特に好ましい形態としては、衛生管理上、加熱調理が必要な加工食品であり、例えば、介護食品などが挙げられる。本実施形態の飲食品は、食中毒予防に有効な75℃の加熱によっても安定な免疫増強剤、特に、IgA産生促進剤および免疫賦活剤を提供することができる。
また、本発明の飲食品には、感染防御、下痢の予防等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した、特定保健用食品、健康食品等の機能性食品が包含される。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等の目的とした食品を意味し、例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられる。
(医薬品)
本実施形態の組成物を医薬品とする場合は、C06_No.73株と共に製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な医薬組成物の形態に調製されて実用される。該製剤担体としては、通常、この分野で使用されることの知られている充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
医薬組成物の投与単位形態としては、各種の形態が選択できるが、好適には経口投与用製剤、外用投与製剤が挙げられる。経口投与製剤の代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
更に、医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させることもできる。
上記医薬組成物の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じて決定される。また、その投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常有効成分であるC06_No.73株の菌体量が1日当り体重1kg当り約0.5~20mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1~4回に分けてヒトに投与することができる。
(外用剤)
本実施形態の組成物を化粧品、外用医薬品、医薬部外品等の外用剤組成物とする場合は、C06_No.73株と共に、製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な外用剤組成物の形態に調製されて実用される。
かかる製剤担体としては、例えば、グリセリン、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、ヘパリン等の保湿剤;PABA誘導体(パラアミノ安息香酸、エスカロール507等)、桂皮酸誘導体(ネオヘリオパン、パルソールMCX、サンガードB等)、サリチル酸誘導体(オクチルサリチレート等)、ベンゾフェノン誘導体(ASL-24、ASL-24S等)、ジベンゾイルメタン誘導体(パルソールA、パルソールDAM等)、複素環誘導体(チヌビン系等)、酸化チタン等の紫外線吸収剤・散乱剤;エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤;サリチル酸、イオウ、カフェイン、タンニン等の皮脂抑制剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等の殺菌・消毒剤;塩酸ジフェンヒドラミン、トラネキサム酸、グアイアズレン、アズレン、アラントイン、ヒノキチオール、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸等の抗炎症剤;ビタミンA、ビタミンB群(B1,B2,B6,B12,B15)、葉酸、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD群(D2,D3)、ビタミンE、ユビキノン類、ビタミンK(K1,K2,K3,K4)等のビタミン類;アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジン、グリシン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、アルギニン、ピロリドンカルボン酸等のアミノ酸及びその誘導体;レチノール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、胎盤抽出液等の美白剤;ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等の抗酸化剤;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、石炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム等の収斂剤;グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、トレハロース、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール等の糖類;甘草、カミツレ、マロニエ、ユキノシタ、芍薬、カリン、オウゴン、オウバク、オウレン、ジュウヤク、イチョウ葉等の各種植物エキス等の他、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色素等が挙げられる。
外用剤組成物の具体例としては、化粧用クリーム類、乳液、化粧水、パック剤、スキンミルク(乳剤)、ジェル剤、パウダー、リップクリーム、口紅、アンダーメークアップ、ファンデーション、サンケア、浴用剤、ボディシャンプー、ボディリンス、石鹸、クレンジングフォーム、軟膏、貼付剤、ゼリー剤、エアゾール剤等を挙げることができる。
(飼料)
本実施形態の組成物を飼料とする場合は、例えば、鶏の非抗生剤投与時期、豚、牛等の離乳期における感染症予防用として、経口投与用製剤形態(水溶液、乳化液、顆粒、粉末、カプセル、錠剤等)を挙げることができる。
(IV)豆乳ヨーグルトの製造方法
本発明の他の実施形態では、豆乳にNITE P-03559として寄託されているレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株を添加して発酵させる工程を含む豆乳ヨーグルトの製造方法が提供される。
ヨーグルトは牛乳から製造される、世界中でポピュラーな発酵食品である。しかしながら、ヨーグルトは乳製品であるため、ラクトースを適切に代謝できない体質の人々や菜食主義等の食習慣を有する人々には不適である。一方、豆乳はラクトースを含んでいない植物由来の食品であるため、豆乳から製造される豆乳ヨーグルトは乳製品を接取できない人々にも受け入れられるものであり、需要の増加が見込まれる。
豆乳としては、加熱等により殺菌したものを用いることができる。また、豆乳には、必要に応じて配合剤を加えてもよい。配合剤としては従来の豆乳ヨーグルト原料の配合剤として知られているものを用いることができ、例えば、公知の糖類、安定剤、乳化剤、酸味料、pH調整剤、着香料、着色料、風味調整剤、酸化防止剤等を用いることができる。
豆乳の発酵は、豆乳にスターターのレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株を添加して、発酵物中に十分な量のC06_No.73株が含まれるようになるまで発酵を続けることで実施することができる。発酵は、通常25~45℃で2~72時間行うことができる。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
[実施例1]C06_No.73株の単離と培養条件
レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、日本国長野県佐久市のアルソア佐久ファクトリィで製造された野菜黒糖発酵液から得られた。C06_No.73株は、発酵7日後の野菜黒糖発酵液から、ペトリ皿中に形成したMRS寒天培地(ディフコラボラトリ社)を用い、30℃、好気性条件で培養することにより単離された。純粋な菌株を得るために、形成されたコロニーのうち1つを取り出し、MRSブロス及び寒天を用いて継代培養した。得られた純粋な菌株は、10%(v/v)グリセロール及び10%(v/v)スキムミルク中に懸濁し、-80℃で保存した。
[実施例2]供試菌サンプルのIgA産生誘導活性の測定
(パイエル板細胞の調製)
6週齢オスBALB/cA マウス(CREA Japanより購入)をAIN-76A DIET(Research Dietsより購入)にて1週間飼育した後、炭酸ガスにて安楽死させ、パイエル板を摘出した。RPMI10培地[RPMI1640培地(Gibco BRL)に、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、55μmol/lの2-メルカプトエタノール及び10%牛胎児血清(FBS;GibcoBRL)]にてパイエル板を洗浄後、25mmol/lのHEPES、5mmol/lのEDTA(pH8.0)及び1mmol/lのジチオスレイトールを加えたRPMI10培地にて45分、37℃、5%CO条件下で培養した。再度RPMI10培地で洗浄した後、400U/mlのタイプIコラゲナーゼ(Sigma)と、30U/mlのDNaseI(Takara)とを加えたRPMI10培地にて50分、37℃、5%CO条件下で培養した。反応液を45μmフィルターにて濾過し、RPMI10培地に置換後、2.5×10cells/mlに細胞数を調製した。
(供試菌液の調製)
MRS培地(Difco Laboratories)にて供試菌を一晩30℃で静置培養し、生理食塩水に置換した。菌体用量依存性(生菌)の検討においては、吸光度(OD600)を0.002および0.02に調製した。生菌・死菌の差の検討においては、吸光度(OD600)を0.02に調製し、70℃、30分間の加熱による死菌処理を実施した場合と実施しない場合とを比較した。レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、石川県立大学松▲崎▼研究室保管株を用いた。なお、実験においては、5μg/mlのLPSをポジティブコントロールとして使用した。
(IgAの測定)
調製したパイエル板細胞100μlと供試菌液100μlを96-well T-cell activation plate(Becton Dickinson)中で5日間、37℃、5%CO条件下で共培養した。なお、パイエル板細胞と供試菌液とを等量混ぜて培養を実施したため、この時の吸光度(OD600)は供試菌液の調製時の半分(0.001又は0.01)となる。遠心後、得られた培養上清中のIgA量を、mouse IgA ELISA kit (Bethyl Laboratories)で測定した。
その結果を図5及び図6に示す。図5及び図6におけるC06_No.73株の吸光度(OD600)の数値は、パイエル板細胞との共培養時のものを記載している。レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株には、菌体用量0.01より、無処理(生理食塩水)と比較して明確なIgA産生誘導活性が認められた(図5参照。)。また、その活性は、加熱による死菌処理によっても維持されていた(図6参照。)。なお、有意差検定は、生理食塩水を対照群とし、対照群との群間比較をDunnettの多重比較検定によりおこなった。危険率5%未満を*、1%未満を**、0.1%未満を***と表し有意とした。図5及び図6におけるLPSの項目は、陽性コントロールである。
これらの結果より、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、耐熱性の高い免疫賦活剤として期待できる。
[実施例3]豆乳ヨーグルトの製造
(豆乳の準備)
まず、市販の豆乳を常法により加熱殺菌した。次に、豆乳にフルクトースを10%(W/W)添加した。
(乳酸菌の添加及び発酵)
次に、豆乳にレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株を添加した。豆乳ヨーグルトの製造のためのC06_No.73株としては、北見工業大学保管株を用いた。C06_No.73株は、MRS培地によりプレ培養し、生理食塩水での洗浄後に遠心分離してから豆乳に懸濁させ、吸光度(OD600)が0.25となるように植菌した。発酵は静置状態で27℃、48時間実施した。なお、発酵開始から6時間ごとにサンプルを採取し、pH、粘度、乳酸の濃度及び酢酸の濃度を測定した。
pHを測定するためのpHメーターとしては、株式会社堀場製作所のD-51型を用いた。また、粘度を測定するための粘度計としては、株式会社 アタゴのVISCO-895(パッケージB)を用いた。粘度計は25℃の恒温水槽に設置して測定を実施した。サンプルは-80℃で保存しておいたものを60℃の恒温水槽中に15分置き、その後25℃の恒温水槽に移してから粘度を測定した。
また、乳酸濃度及び酢酸濃度の測定には、示差屈折率(RI)検出器付きHPLCを用いた。具体的には、カラム(Aminex HPX-87H,300mm×7.8mm)を取り付けた株式会社 島津製作所のProminence HPLC system(送液ポンプ LC-20AD、カラムオーブン CTO-20AC、システムコントローラ CBM-20A、オートサンプラ SIL-20AC、デガッサ DGU-20A)及び、株式会社 島津製作所の示差屈折率(RI)検出器RID-10Aを用いた。測定においては硫酸水溶液(0.005M)を移動相として用い、アイソクラティック分析を実施した。流量は0.5ml/minとし、カラムオーブンは25℃に設定した。
また、比較のために、ヨーグルトの製造に一般的に用いられるラクチプランチバチルス プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)NBRC3070株を用い、C06_No.73株の場合と同様の条件で豆乳ヨーグルトの製造を実施した。
その結果、C06_No.73株による48時間の発酵により豆乳は固化し、風味が豊かで深いコクのある豆乳ヨーグルトが得られた。また、採取したサンプルの分析により、発酵時間に応じた粘度の増加及びpHの減少が確認された(図7参照。)。また、発酵時間に応じて乳酸濃度及び酢酸濃度が増加することも確認できた(図8参照。)。C06_No.73株を用いて製造した豆乳ヨーグルトは、ラクチプランチバチルス プランタルムを用いて製造した豆乳ヨーグルトと比較して乳酸濃度が低く、酢酸を含有していた。また、C06_No.73株を用いて製造した豆乳ヨーグルトには、発酵時に発生した二酸化炭素によるものと思われる気泡が見られた。これは、C06_No.73株による発酵がいわゆるヘテロ型であることを示すものである。
これらの結果より、レンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株は、豆乳ヨーグルトを製造するための乳酸菌として期待できる。

Claims (7)

  1. 受託番号NITE P-03559として寄託されているレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株の単離された菌株。
  2. 請求項1に記載の単離された菌株又はその培養物を含む組成物。
  3. 請求項1に記載の単離された菌株又は請求項2に記載の組成物を有効成分として含むIgA産生促進剤。
  4. 請求項1に記載の単離された菌株又は請求項2に記載の組成物を有効成分として含む免疫賦活剤。
  5. 飲食品、医薬品、外用剤又は飼料の形態である請求項2に記載の組成物。
  6. 投与された対象者の粘膜免疫を賦活するための請求項2又は5に記載の組成物。
  7. 豆乳にNITE P-03559として寄託されているレンチラクトバチルス コウソニス(Lentilactobacillus kosonis)C06_No.73株を添加して発酵させる工程を含む豆乳ヨーグルトの製造方法。
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