JP4620200B2 - 化粧シートおよび化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁等の建築物内装材や扉等の建具、箪笥等の家具の表面材等に用いられる、表面硬度性に優れた化粧シートおよび化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材として紙質基材を用い、耐擦傷性、耐汚染性を付与するために、該紙質基材表面に印刷等で絵柄層を形成した後、更に電離放射線硬化性樹脂の架橋物からなる表面保護層を形成してなる化粧材が知られている。
【0003】
例えば、
1)特公昭49−31033号公報には、紙質基材上に絵柄層を形成し、その最表面に、不飽和ポリエステルプレポリマーの塗料を塗工して塗膜を形成し、その塗膜を電子線或いは紫外線で架橋、硬化させて表面保護層とした化粧材が記載されている。
【0004】
2)また、特許第2856862号公報には、紙質基材上に絵柄層を形成し、その最表面に、(メタ)アクリレートプレポリマー、(メタ)アクリレートモノマーおよびシリコーンアクリレート系滑剤を含有する塗料を塗工して塗膜を形成し、その塗膜を電子線或いは紫外線で架橋、硬化させて表面保護層とした化粧材が記載されている。
【0005】
3)さらに、特開平8−183147号公報には、耐磨耗性の表面保護層を有する化粧シートが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの化粧材は表面に表面保護層を有するものの、耐引っかき硬度が不十分であったり、化粧材表面から鉛筆等により押圧された場合に、凹みが生じ易いという問題があった。
【0007】
そこで本発明はかかる問題点を解決すべく、高い表面硬度を有する基材層を有する化粧シートあって、表面から鉛筆等により押圧された場合であっても凹みが生じにくい化粧シート、および該化粧シートの裏面側に直接またはその他の層を介して基板を貼着してなる化粧材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70〜200N/mm2である、乳化させたアクリル酸エステル系樹脂と水溶性メラミン樹脂との混合樹脂を含浸させた樹脂含浸紙からなる基材層を有し、前記基材層上に、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が100〜200N/mm2であり、かつ1官能アクリレートモノマーまたは2官能アクリレートモノマーと3官能以上のアクリレートモノマーを混合してなる架橋性樹脂からなる表面樹脂層を有する化粧シートを提供する。
【0009】
また、本発明は、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70〜200N/mm2である、乳化させたアクリル酸エステル系樹脂と水溶性メラミン樹脂との混合樹脂を含浸させた樹脂含浸紙からなる基材層を有し、前記基材層上に、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が100〜200N/mm2であり、かつウレタンアクリレートモノマーと2官能アクリレートモノマーと3官能アクリレートモノマーを混合してなる架橋性樹脂からなる表面樹脂層を有する化粧シートを提供する。
【0010】
上記の本発明の化粧シートは、前記表面樹脂層を形成する架橋性樹脂の平均架橋間分子量が100〜2000の範囲内であるのが好ましい。また、前記基材層と前記表面樹脂層との間に絵柄層を有しているのが好ましい。
【0011】
本発明の化粧シートは、優れた表面硬度、即ち表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70〜200N/mm 2 の基材層を有しているので、化粧シート表面から鉛筆等により押圧された場合であっても凹みが生じにくいものであり、かつ優れた耐引っかき硬度を有している。さらに、本発明の化粧シートは、基材層上に表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が100〜200N/mm 2 の表面樹脂層を有し、極めて優れた耐引っかき硬度を有する。
【0012】
また、本発明は、本発明の前記化粧シートの裏面側に、直接またはその他の層を介して基板を貼着してなる化粧材を提供する。
【0013】
また、上記本発明の化粧材は、基板上に、直接または他の層(接着剤層等)を介して本発明の前記化粧シートを積層してなるので、本発明の前記化粧シートと同様に化粧材表面から鉛筆等により押圧された場合であっても凹みが生じにくいものとなっており、優れた耐引っかき硬度を有している。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧シートおよび化粧材を詳細に説明する。
本発明の化粧シートは、基本的には図1(a)に示す化粧シート10Aのように、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70〜500、好ましくは70〜200の基材層1からなる。
【0015】
本発明の化粧シートの基材層1の表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70未満の場合には、鉛筆等による凹みの発生に対し良好な結果が得られない。一方、ユニバーサル硬さの値が200を越えるものを使用すると、化粧シートの製造時におけるロール巻き取り工程で化粧シートの巻き取りを行うことが出来なくなる等、連続生産が不可能となり生産性が著しく低下する。
【0016】
基材層1のユニバーサル硬さの値は、フィッシャースコープH100V(H.Fisher社製)を使用し、ビッカース角錐圧子によって測定して求めることができる。
【0017】
即ち、圧子としてビッカース角錐圧子を用い、基材層1が不可逆的な弾性変形を生じるまで、該基材層1表面から6秒毎に20mN(ニュートン)の荷重をかけ続け、そのときの荷重値および圧子の侵入深さを測定することにより行う。
【0018】
得られた最大荷重値(Fmax )および最大侵入深さ(hmax )から、HU=F(N)/26.43h2 [mm2](式中、F(N)は荷重の最大値、h(mm)は侵入深さの最大値を表す。)で、ユニバーサル硬さ(HU)を算出することができる。
【0019】
ユニバーサル硬さの測定試験については、暫定規格DIN HU−1、さらにはVDI/VDE基準2626のシート(”材料試験技術”,Vol.43,No.2,1998年4月号別冊、およびこの文献に引用する参考文献を参照。)に詳述されている。
【0020】
なお、ユニバーサル硬さの値(HU)は、ビッカース圧子の測定塗膜(表面樹脂層)への進入深さが、測定塗膜の1/10未満になるような条件で測定し、決定するのが好ましい。測定塗膜に対して進入深さが1/10を越える場合には、測定塗膜の下地の影響を受けるため良好な測定結果が得られない。
【0021】
前記基材層1の基材材料としては、樹脂含浸紙質基材、プラスチックス基材、金属箔基材等を用いることができる。
【0022】
前記樹脂含浸紙質基材に用いられる紙質基材としては、例えば、
(1)薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾル塗工またはドライラミネートしたいわゆるボール壁紙原反、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等の紙類、
(2)硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維、或いはポリエステル樹脂、ビニロン繊維等の有機繊維からなる不織布、
(3)上記(1)の紙類に、ガラス繊維等の無機繊維、或いはポリエステル樹脂、ビニロン繊維等の有機繊維を混抄した混抄紙、等がある。
【0023】
これら(1)〜(3)の紙類に、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、珪素樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸紙として用いることができる。
【0024】
上記ウレタン樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液硬化型(湿気硬化型)ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0025】
2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とし、ポリオールの水酸基とイソシアネート基の当量比が0.7〜1.5程度になるように配合してなるウレタン樹脂である。ポリオールは分子中に2個以上の水酸基を有するものであり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等を用いることができる。
【0026】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート等が挙げられる。また、上記各種イソシアネートの付加体またはトリレンジイソシアネートの3量体(trimer)等も用いることができる。
【0027】
1液硬化型ウレタン樹脂は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物から形成される高分子である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端にそれぞれイソシアネート基を1個以上有するプレポリマーであり、具体的には、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、ポリブタジエン骨格、ポリエステル骨格等を主骨格とするポリイソシアネートプレポリマーである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応物を生じて鎖延長反応を起こして、その結果、イソシアネート基が反応してビウレット結合を形成して分岐し、架橋反応により空間網目状構造が形成される。
【0028】
アクリル樹脂は、主成分がアクリル酸(メタクリル酸を含む)およびその誘導体であるアクリルアミド、アクリロニトリルを重合することにより得られるアクリル樹脂、他のアクリル酸エステル、エチレン、スチレン等の他のモノマーとの共重合体樹脂である。
【0029】
かかるアクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独または共重合体からなるものが挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの意味で用いる。
【0030】
メラミン樹脂は、メラミンおよびホルムアルデヒドから得られるメチロールメラミンを縮重合を行わせることにより得られる樹脂である。また、アクリルメラミン樹脂、ユリアメラミン樹脂、フェノールメラミン樹脂等のメラミン系樹脂を用いることもできる。
【0031】
フェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類とを重縮合させて得られる樹脂であり、例えば、ノボラック形フェノール−ホルマリン重合体、レゾール形フェノール−ホルマリン重合体、ラバーフェノール樹脂等が挙げられる。
【0032】
ユリア樹脂は、ユリア(尿素)とホルムアルデヒドとを中性または塩基性下で反応させてメチロールユリアを得たのち、酸により脱水または加熱脱水、縮重合を行わせることにより得られる樹脂である。
【0033】
キシレン樹脂は、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンまたはこれらの混合物とホルマリンとを強酸性で縮重合させることによりメチロールキシレンを得たのち、さらにこのものに、フェノール、クレゾール、有機酸、アミン類等を添加し、メタキシレンスルホン酸触媒を加えて縮重合させることにより得られる樹脂である。
【0034】
ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートまたはイソフタル酸アリルエステルに過酸化物触媒を加えて重合させることにより得られる樹脂である。
【0035】
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸と多価アルコールの縮重合体を得たのち、スチレンモノマー、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のような架橋剤を加え、さらに触媒を加えてビニル重合を行わせることにより得られる樹脂である。
【0036】
上記不飽和二塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリット等をそれぞれ用いることができる。
【0037】
飽和アルキッド樹脂は、飽和有機酸と多価アルコールとの縮合により得られるポリエステルであり、グリプタル樹脂、グリプタル系変成樹脂、イソフタル酸系樹脂、脂肪酸ポリエステル、テレフタル酸ポリエチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。その他、アミノアルキッド樹脂も用いることができる。
【0038】
エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2個以上有する初期縮合物を、アミン類、ポリアミド類、ポリサルファイド類、有機酸無水物等の硬化剤の存在下に、エポキシ基とアミンの活性水素の当量比が0.7〜1.5程度となるように加えて反応させることにより得られる樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA縮重合型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
珪素樹脂は珪素(Si)を主鎖にもつ高分子であり、シラン鎖(−Si−Si−Si−)を分子内に有するタイプと、シロキサン鎖(−Si−O−Si−O−)を分子内に有するタイプがある。例えば、ポリジメチルシロキサンやポリモノメチルシロキサン等が挙げられる。
【0040】
これらの樹脂を適宜選択し、紙質基材への含浸量等を適宜調整することによって、所望の表面硬度(ユニバーサル硬度の値)を有する樹脂含浸紙を得ることができる。
【0041】
またこれらの紙質基材には、水酸化アルミニウム粉末等の難燃剤を添加することもできる。さらに、上記した紙質基材の同種若しくは2種類以上のものの積層体を紙質基材として用いることもできる。前記紙質基材の米坪量は、通常20〜120g/m2 程度である。
【0042】
プラスチックス基材としては、表面硬度(ユニバーサル硬度の値)が70〜200のものであれば特にその種類等に制限はない。例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリオレフィン系樹脂、
【0043】
ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(SAN樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)等のポリスチレンまたはポリスチレンの共重合体、
【0044】
ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂(ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルの意味で用いる。)、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、
【0045】
ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、
酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、
【0046】
アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースエーテル、メチルセルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、
ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミドビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂、
【0047】
ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン等のフッ素系樹脂、
シリコーン樹脂、
【0048】
その他、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル、グリプタル樹脂、不飽和アルコール変成フタル酸樹脂、イソフタル酸樹脂、テレフタル酸樹脂、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリブタジエン、フラン樹脂、ポリウレタン、アルキルベンゼン樹脂、グアナミン樹脂等の熱硬化性樹脂等の単独或いはこれらの混合物のシート状の単層体または積層体を用いることができる。これら熱硬化性樹脂の具体例としては、前述した紙質基材に含浸させる樹脂として例示したものと同様なものを用いることができる。
【0049】
金属箔基材としては、上記紙質基材或いはプラスチック基材表面に金属箔層を形成し、所定の表面硬度(ユニバーサル硬さの値)を有するものとしたものが用いられる。金属箔として用いられる金属としては、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、銅等が挙げられる。
【0050】
前記基材1は、化粧シートに装飾性を付与するために着色剤を用いてそれ自体着色することもできるが、例えば図1(b)に示す化粧シート10Bの如く、前記基材1上に絵柄層2を形成するのが好ましい。絵柄層2は化粧材の装飾性(意匠的効果の付与)を向上させる為に形成する。
【0051】
絵柄層3は、例えば前記基材1上に絵柄をグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の公知の印刷法を用いて印刷して形成することができる。インキ(塗料)の塗布量としては、通常1〜10g/m2 (乾燥時)程度である。
【0052】
絵柄としては、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、幾何学模様、文字記号、或いは全面ベタ等、或いはこれらの絵柄の組み合わせ(例えば、全面ベタ/木目模様の積層)等がある。
【0053】
インキ或いは塗料としては、バインダー樹脂等からなるビヒクル、顔料や染料などの着色剤、更に必要に応じて、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものを用いることができる。
【0054】
バインダーとしては、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂等の単体またはこれらの2種以上の混合物を用いることができる。
【0055】
着色剤としては、例えば、チタン白、黄鉛、カーボンブラック、ニッケルチタンイエロー、弁柄、群青等の無機顔料、キナクリドン、イソインドリノン、フタロシアニン、ビスアゾ染料、モノアゾ染料等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、アルミニウム等の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等を用いることができる。
【0056】
本発明の化粧シートは、例えば図1(c)に示す化粧シート10Cの如く、前記基材層1上に表面樹脂層2が積層されていてもよい。表面樹脂層3を形成する場合には、耐引っ掻き硬度にも優れた化粧シートを得ることができる。
【0057】
上記表面樹脂層3を構成する樹脂としては、フィッシャー硬度計(H.Fisher社製)による塗膜硬度測定において算出されるユニバーサル硬さの値(HU)が、100〜200になるものを使用するのがより好ましい。このようなユニバーサル硬さの値を有する表面樹脂層2を形成することにより、より優れた耐引っ掻き強度を付与し、かつ、鉛筆等の突起状物による押圧によって表面に凹み等が生じにくい化粧シートを得ることができる。
【0058】
なお、表面樹脂層3のユニバーサル硬さは、基材層1のユニバーサル硬さの値を求めるのと同様に、フィッシャースコープH100V(H.Fisher社製)を使用し、ビッカース角錐圧子によって測定して求めることができる。
【0059】
かかる表面樹脂層3に用いられる樹脂としては架橋性樹脂が好ましい。かかる架橋性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂(常温硬化型樹脂、二液反応型樹脂を含む。)等の従来公知である架橋性樹脂として用いられる樹脂を使用することができる。これらのうち、電離放射線硬化性樹脂は、官能基の数を変更することにより硬化後のユニバーサル硬度を所定の値に設定するのが容易であり、また高速生産性等の点から特に好ましい。
【0060】
架橋性樹脂の架橋密度は例えば下記式(A)に示す平均架橋間分子量で表すことができる。
【0061】
【数1】
平均架橋間分子量=全体の分子量/架橋点の数 (A)
【0062】
上記式(A)中、全体の分子量は、Σ(各成分の配合モル数×各成分の分子量)で、架橋点の数は、Σ〔{(各成分の官能基数−1)×2}×各成分のモル数〕でそれぞれ表される値を用いる。平均架橋間分子量は、通常100〜2000の範囲内である。一般的に平均架橋間分子量が大きいほど可撓性に優れたものとなる。
【0063】
架橋性樹脂として用いる電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマーおよび/またはモノマーを所定割合で混合した電離放射線により硬化可能な組成物を用いることができる。ここで電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合或いは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。
【0064】
前記電離放射線硬化性樹脂を用いる場合の硬化させるための電離放射線源としては、紫外線源として、超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク燈、ブラックライト、メタルハライドタンプ等が用いられる。また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。
【0065】
電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
【0066】
上記プレポリマーおよびオリゴマーの例としては、不飽和ポリカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のカチオン重合型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0067】
ウレタンアクリレートしては、例えばポリエーテルジオールとジイソシアネートを反応させて得られる下記化1で表されるポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
【化1】
CH2 =C(R1 )−COOCH2 CH2 O−CONH−X−NHCOO−〔−CH(R2 )−(CH2 )n −O−〕m −CONH−X−NHCOO−CH2 CH2 OCOC(R1 )=CH2
【0069】
(上記式中、R1 ,R2 はそれぞれ水素原子またはメチル基を表し、Xはジイソシアネート残基を表し、nは1〜3の整数、mは6〜60の整数をそれぞれ表す。)
【0070】
前記ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートに使用されるジイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。上記のポリエーテルジオールとしては、分子量が500〜3,000のポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0071】
また、電離放射線硬化性樹脂に用いるモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、
アクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、
【0072】
アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、
【0073】
アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、
エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、
ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、プロピレングリコールメタクリレート、トリメチールプロパントリメタクリレート)、ジペンタエリスリトールメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多官能性化合物、
【0074】
および、例えばトリメチロールプロパンチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等の分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物が挙げられる。
【0075】
電離放射線硬化性樹脂に用いるモノマーの選定に際しては、硬化物の可撓性が要求される場合は塗工適性上支障のない範囲でモノマーの量を少なめにしたり、1官能または2官能アクリレートモノマーを用い、比較的低架橋度の構造とする。また、硬化物の耐磨耗性、耐熱性、耐溶剤性等が要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲でモノマーの量を多めにしたり、3官能以上のアクリレートモノマーを用いることで高架橋密度の構造とすることができる。なお、1または2官能モノマーと3官能以上のモノマーを混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。
【0076】
かかる1官能性アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、2官能アクリレートとしては、エチレングリコルジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート等が、3官能以上のアクリレートしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0077】
更に前記電離放射線硬化性樹脂には、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調整するために、電離放射線非硬化性樹脂を添加することができる。かかる電離放射線非硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル等の熱硬化性樹脂が用いられ、特に、繊維素系樹脂、ウレタン系樹脂およびブチラール系樹脂の使用が可撓性の点から好ましい。
【0078】
また、以上の如き組成の電離放射線硬化性樹脂を硬化させるために紫外線を照射する場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノル類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイト、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン等が電離放射線硬化性樹脂組成物中に添加される。これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。また、光重合促進剤(増感剤)としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等をさらに混合して用いることができる。
【0079】
電離放射線樹脂からなる表面樹脂層2は、電離放射線樹脂のプレポリマーまたはモノマー、および所望に応じ、上述した添加剤を添加して得られる混合物の有機溶液或いは水系エマルジョン(水溶化)とした樹脂組成物を基材1上に塗工し、該塗工面を電離放射線を照射して硬化せしめることにより形成することができる。樹脂組成物の塗工量としては、5〜35g/m2 (固形分基準)程度が好ましい。
【0080】
溶剤としては、塗料やインキ等に通常使用されるものが使用でき、例えば水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等の酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類およびこれらの2種以上が挙げられる。
【0081】
架橋性樹脂として用いられる熱硬化性樹脂は、一般的には低分子単量体の混合物で適当な粘性をもつ液体を原料とし、加熱することによって不溶不融の状態に硬化する合成樹脂をいう。いずれも硬化樹脂は空間網状構造をもつ。
【0082】
かかる熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、珪素樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂の具体例としては、前記した紙質基材に含浸させる樹脂として例示したものと同様なものを用いることができる。
【0083】
かかる熱硬化性樹脂の低分子単量体、オリゴマー或いはプレポリマーに、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、重合促進剤、溶剤、粘度調節剤、改質顔料等を添加した熱硬化性樹脂組成物(熱硬化性樹脂液)を原料として用いる。
【0084】
かかる重合開始剤としては、通常イソシアネートまたは有機スルホン酸塩が不飽和ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂に、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やジアゾイソブチロニトリル等のラジカル反応開始剤が不飽和ポリエステル等にそれぞれ使用される。
【0085】
架橋剤としては、有機スルホン酸塩、イソシアネート、アミン類、有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等を用いることができる。
【0086】
さらに前記表面樹脂層2には耐磨耗性を付与するために、必要に応じ、硬質の無機質粒子を添加することができる。かかる無機質粒子としては、アルミナ(α−アルミナ等)、シリカ、ガラス、炭化珪素、ダイヤモンド等の粒子が挙げられる。
【0087】
上記バインダーとしての架橋性樹脂を含有する塗工組成物には、その他必要に応じて各種添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の微粉末からなる体質顔料、シリコーン樹脂ワックス等の滑剤、染料、顔料、分散剤、反応性シリコーン等の着色剤、その他の炭酸カルシウム硫酸バリウム、ナイロンビーズ等の公知の艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー付与剤等の塗料やインキに通常添加される添加剤等が挙げられる。
【0088】
前記無機質粒子の形状としては、球、多角形、鱗片状、不定形等がある、無機質粒子の平均粒径としては3〜30μm程度が好ましい。平均粒径が小さすぎると耐磨耗性向上の効果に乏しく、大きすぎる場合には表面の平滑性が低下する。前記無機質粒子の添加量は、樹脂分全量に対して、5〜40重量%程度である。
【0089】
上記塗工組成物を用いて、基材1上に表面樹脂層3を形成する方法としては、例えば▲1▼基材1表面に塗工組成物を直接塗工する直接コーティング法、▲2▼剥離性の基材表面に表面樹脂層を予め形成した後、該層を基材1表面に転写する、転写コーティング法が挙げられる。一般に基材1の材質として、塗工組成物が浸透しないものを使用した場合や、表面に凹凸のある基材、並びに塗膜厚みに均一性が要求される場合には、上記▲2▼の転写コーティング法を用いるのが好ましい。
【0090】
上記▲1▼の直接コーティング法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等を用いることができる。これらのうちグラビアコートが好ましい。
【0091】
▲2▼の転写コーティング法は、一旦、薄いシート(フィルム)基材に塗膜を形成し、架橋硬化せしめ、しかる後に基材の表面に被覆する方法である。例えば、塗工組成物の塗膜を基材と共に立体物に接着するラミネート法、一旦離型性支持体シート上に塗膜と必要に応じて接着剤層を形成し、塗膜を架橋硬化させてなる転写シートを、その塗膜側を立体物に接着後、支持体シートのみを剥離する転写法等の手段を用いることができる。なお、薄いシート基材上に表面樹脂層を形成する方法としては、上記▲1▼の直接コーティングする方法と同じ各種コーティング手段を用いることができる。
【0092】
これらの方法は、より具体的には、例えば下記(a)〜(d)の文献に記載されているものである。即ち、
(a)特公平2−42080号公報、特公平4−19924号公報に開示されるような射出成形同時転写法、或いは特公昭50−19132号公報に開示されるような射出成形同時ラミネート法、
(b)特開平4−288214号公報、特開平5−57786号公報に開示されるような真空成形同時転写法、或いは特公昭56−45768号公報に開示されるような真空成形同時ラミネート法、
(c)特公昭59−51900号公報、特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に開示されるようなラッピング同時転写法、またはラッピング同時ラミネート法、
(d)実公大15−31122号公報等に開示されているようなVカット加工同時ラミネート法、或いは特公昭56−7866号公報等に開示されているVカット同時転写法等である。
【0093】
また、上記▲2▼の転写コーティング法の一つとして、例えば架橋性樹脂として電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、下記の(A)〜(D)の工程を順次行う方法を用いることもできる(例えば特開平2−26673号公報等参照)。
【0094】
(A)非吸収性且つ離型性の合成樹脂シートに、未硬化液状の電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工する工程、
(B)前記電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布面が基材と接するようにラミネートする工程、
(C)前記電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜に電離放射線を照射して架橋、硬化させる工程、
(D)合成樹脂シートを剥離除去する工程。
【0095】
上記の工程において、電離放射線硬化性樹脂として溶剤で希釈されたものを使用する場合には、工程(A)と(B)との間に溶剤を乾燥する工程を行う。上記の方法によれば、基材として紙のような浸透性の高い材質の場合であっても、樹脂が基材の裏側に抜ける、いわゆる「うらぬけ」を確実に防止して、基材表面に所定のユニバーサル硬さの値を有する表面樹脂層を形成することができる。
【0096】
また、架橋性樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合には、熱硬化を促進するために、熱硬化性樹脂組成物を塗工後に塗工面を加熱して表面樹脂層を形成することもできる。この場合の加熱時間は、例えば、イソシアネート硬化型不飽和ポリエステル系樹脂或いはポリウレタン樹脂の場合は、通常40〜60℃で1〜5日間程度、またポリシロキサン樹脂の場合には、通常80〜150℃で1〜300分程度である。
【0097】
本発明の化粧材は、例えば図2(a)に示す如く、本発明の化粧シート10bの裏面側(即ち、絵柄層2が形成された面とは反対側の面側)に基板4を接着剤層5を介して(または直接に)貼着されてなる化粧材11Aや、例えば図2(b)に示す如く、本発明の化粧シート10cの裏面側(即ち、表面樹脂層3が形成された面とは反対側の面側)に基板5を接着剤層4を介して(または直接に)貼着されてなる化粧材11B等のタイプがある。
【0098】
前記基板5としては、基材1と貼着できるものであれば、その材質、形状等に特に制限はない。基板の形状として、例えば平板状、曲面板状、多角柱状等が挙げられる。
【0099】
基板材料としては、例えば、杉、檜、欅、樫、ラワン、チーク、メラピー等各種樹種からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質繊維板等の木質板、
石膏板、石膏スラグ板等の石膏系コンクリート板、
石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、
中空押出セント板等のセメント板、パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板、
陶器、磁気、せっ器、土器、硝子、ほうろう等のセラミックス板、
鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗工鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板、
【0100】
ポリオレフィン系樹脂板、アクリル樹脂板、ABS樹脂板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板、フェノール樹脂板、ユリア樹脂板、不飽和ポリエステル板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化性樹脂板、
フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、ガラス繊維不織布、布帛、紙、その他の繊維質基材に含浸硬化したゆわゆるFRP板等が挙げられる。また、基材は、これらの積層体からなっていてもよく、着色剤により着色されていてもよい。
【0101】
本発明の化粧シートと基板5とを接着せしめる接着剤としては、例えば酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、1液または2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂等からなるものを用いることができる。
【0102】
以上のように構成される本発明の化粧シートおよび化粧材は種々の用途に好ましく用いられる。例えば建築物、車両船舶、家具、楽器、キャビネット等の表面の装飾、包装材料の装飾用として有用である。特に好適には、本発明の化粧シートおよび化粧材は、引っかき傷や突起物による凹み等が生じやすい場所或いは部位に設置されて用いられる。例えば壁、天井等の建築物の内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具類の表面材として用いることができる。
【0103】
【実施例】
次に、実施例により本発明の化粧材を更に詳細に説明する。なお、以下に示すのは本発明の化粧材の一実施例であり、本発明の化粧材は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、基材、基板、表面樹脂層を構成する樹脂等の種類、各層の形成方法、層構成等を適宜設計変更することができる。
【0104】
なお、各基材のユニバーサル硬度の値は、前述したのと同様にフィッシャースコープH100V(H.Fisher社製)を使用して、ビッカーズ角錐圧子によって測定して求めた。
【0105】
実施例1
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのガラス転移温度(以下、「Tg」という。)が30℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸させて米坪量60g/m2 の含浸紙(基材)を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は70であった。次いで、この含浸紙の表面にグラビア印刷法により絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに該含浸紙の絵柄層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(a)と同様の層構成を有する実施例1の化粧材を作製した。
【0106】
実施例2
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが40℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙(基材)を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は100であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該含浸紙の絵柄層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(a)と同様の層構成を有する実施例2の化粧材を作製した。
【0107】
実施例3
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが60℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙(基材)を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は150であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該含浸紙の絵柄層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(a)と同様の層構成を有する実施例3の化粧材を作製した。
【0108】
実施例4
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが60℃であるアクリル酸エステル系樹脂と、水溶性メラミン樹脂との1:1混合樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙(基材)を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は200であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該含浸紙の絵柄層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(a)と同様の層構成を有する実施例4の化粧材を作製した。
【0109】
実施例5
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが30℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は70であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該絵柄層が形成されている面上に、アクリレートモノマーを含有する電離放射線硬化樹脂組成物(ウレタンアクリレートモノマー50重量部、2官能アクリレートモノマー40重量部、3官能アクリレートモノマー10重量部の混合物)を25g/m2 塗工し、電子線を5Mrad(175kV)照射して、化粧紙の表面に表面樹脂層を形成した化粧シートを得た。
【0110】
次いで、該化粧シートの表面樹脂層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(b)と同様の層構成を有する実施例5の化粧材を作製した。
【0111】
実施例6
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが40℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は100であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該絵柄層が形成されている面上に、アクリレートモノマーを含有する電離放射線硬化樹脂組成物(ウレタンアクリレートモノマー50重量部、2官能アクリレートモノマー40重量部、3官能アクリレートモノマー10重量部の混合物)を25g/m2 塗工し、電子線を5Mrad(175kV)照射して、化粧紙の表面に表面樹脂層を形成した化粧シートを得た。
【0112】
次いで、該化粧シートの表面樹脂層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(b)と同様の層構成を有する実施例6の化粧材を作製した。
【0113】
実施例7
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが60℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は150であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該絵柄層が形成されている面上に、アクリレートモノマーを含有する電離放射線硬化樹脂組成物(ウレタンアクリレートモノマー50重量部、2官能アクリレートモノマー40重量部、3官能アクリレートモノマー10重量部の混合物)を25g/m2 塗工し、電子線を5Mrad(175kV)照射して、化粧紙の表面に表面樹脂層を形成した化粧シートを得た。
【0114】
次いで、該化粧シートの表面樹脂層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(b)と同様の層構成を有する実施例7の化粧材を作製した。
【0115】
実施例8
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが60℃であるアクリル酸エステル系樹脂と、水溶性メラミン樹脂との1:1混合樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は200であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。
さらに、該絵柄層が形成されている面上に、アクリレートモノマーを含有する電離放射線硬化樹脂組成物(ウレタンアクリレートモノマー50重量部、2官能アクリレートモノマー40重量部、3官能アクリレートモノマー10重量部の混合物)を25g/m2 塗工し、電子線を5Mrad(175kV)照射して、化粧紙の表面に表面樹脂層を形成した化粧シートを得た。
【0116】
次いで、該化粧シートの表面樹脂層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(b)と同様の層構成を有する実施例8の化粧材を作製した。
【0117】
比較例1
先ず、紙間強化材としてアクリルアミド樹脂を用い、ユニバーサル硬さの値が17である米坪量60g/m2 の紙間強化紙表面に、絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。該絵柄層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(a)と同様の層構成を有する比較例1の化粧材を作製した。
【0118】
比較例2
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが0℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は39であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該含浸紙の絵柄層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(a)と同様の層構成を有する比較例2の化粧材を作製した。
【0119】
比較例3
先ず、紙間強化材としてアクリルアミド樹脂を用い、ユニバーサル硬さの値が17である米坪量60g/m2 の紙間強化紙表面に、絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。さらに、該絵柄層が形成されている表面上に、アクリレートモノマーを含有する電離放射線硬化樹脂組成物(ウレタンアクリレートモノマー50重量部、2官能アクリレートモノマー40重量部、3官能アクリレートモノマー10重量部の混合物)を25g/m2 (乾燥時)塗工し、電子線を5Mrad(175kV)照射して、表面樹脂層を形成した化粧シートを得た。
【0120】
次いで、該化粧シートの表面樹脂層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、比較例3の化粧材を作製した。
【0121】
比較例4
先ず、アニオン系乳化剤を使用し、粒径90nmのTgが0℃であるアクリル酸エステル系樹脂を含浸した米坪量60g/m2 の含浸紙を得た。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は39であった。次いで、この含浸紙の表面に絵柄印刷を施して絵柄層を形成した。次いで、該絵柄層が形成されている表面上に、アクリレートモノマーを含有する電離放射線硬化樹脂組成物(ウレタンアクリレートモノマー50重量部、2官能アクリレートモノマー40重量部、3官能アクリレートモノマー10重量部の混合物)を25g/m2 (乾燥時)塗工し、電子線を5Mrad(175kV)照射して、表面樹脂層を形成した化粧シートを得た。
【0122】
次いで、該化粧シートの表面樹脂層が形成されている面とは反対側の面を酢酸ビニル系接着剤BA−20を使用してパーティクルボード(厚さ9mm)に貼り合わせることにより、図2(b)と同様の層構成を有する比較例4の化粧材を作製した。
【0123】
比較例5
水溶性メラミン樹脂を含浸して米坪量60g/m2 の含浸紙を作製した。得られた含浸紙のユニバーサル硬さの値は220であった。この含浸紙をロール状に巻き取りを行ったところ、シート表面に割れが発生し、巻き取ることができなかった。
【0124】
引き掻き硬度試験および鉛筆による凹み測定試験
上記実施例および比較例(比較例5を除く)で得られた各化粧材を用いて、以下の引っ掻き硬度試験および鉛筆による凹み測定試験を行った。
【0125】
(1)鉛筆硬度試験
JISK5400に準拠した鉛筆凹み試験を行った。即ち、500gの荷重をかけながら硬さ9Hの鉛筆芯を化粧材表面に立てて、化粧材表面の凹みを表面粗さ計により測定した。試験結果を下記第1表に示す。
【0126】
(2)引っ掻き硬度試験
JAS特殊合板引っ掻き硬度B試験に準拠した引っ掻き硬度試験を行った。即ち、200gの荷重をかけながらダイヤモンド針にて化粧材表面を引っ掻いた後、二次元の表面粗さ計((株)小坂研究所製)を用いて、化粧材表面の引っ掻き傷の深さを測定した。試験結果を下記第1表に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
第1表から、実施例1〜8の化粧材は、比較例1〜4の化粧材に比べて、優れた引っ掻き硬度および耐鉛筆凹み硬度を有していることがわかる。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように本願の第1発明の化粧シートは、優れた表面硬度(ユニバーサル硬度の値)を有する基材層を有しているので、化粧シート表面から鉛筆等により押圧された場合であっても凹みが生じにくいものとなっている。
【0130】
さらに、表面に表面樹脂層、好ましくは表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が100〜200の表面樹脂層を有している場合には、上記効果に加えて極めて優れた耐引っかき硬度性を有する化粧シートとなっている。
【0131】
また、第2発明の化粧材は、基板上に直接または他の層(接着剤層等)を介して前記第1の発明の化粧シートを積層してなるものであるので、第1の発明の化粧シートと同様に優れた耐引っかき硬度を有し、かつ、化粧材表面から鉛筆等により押圧された場合であっても凹みが生じにくいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の化粧シートの断面図である。
【図2】図2は本発明の化粧材の断面図である。
【符号の説明】
1…基材層、2…絵柄層、3…表面樹脂層、4…接着層、5…基板
Claims (5)
- 表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70〜200N/mm2である、乳化させたアクリル酸エステル系樹脂と水溶性メラミン樹脂との混合樹脂を含浸させた樹脂含浸紙からなる基材層を有し、前記基材層上に、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が100〜200N/mm2であり、かつ1官能アクリレートモノマーまたは2官能アクリレートモノマーと3官能以上のアクリレートモノマーを混合してなる架橋性樹脂からなる表面樹脂層を有する、化粧シート。
- 表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が70〜200N/mm2である、乳化させたアクリル酸エステル系樹脂と水溶性メラミン樹脂との混合樹脂を含浸させた樹脂含浸紙からなる基材層を有し、前記基材層上に、表面硬度(ユニバーサル硬さの値)が100〜200N/mm2であり、かつウレタンアクリレートモノマーと2官能アクリレートモノマーと3官能アクリレートモノマーを混合してなる架橋性樹脂からなる表面樹脂層を有する、化粧シート。
- 前記表面樹脂層を形成する架橋性樹脂の平均架橋間分子量が1000〜2000の範囲内である、請求項1、2のいずれかに記載の化粧シート。
- 前記基材層と前記表面樹脂層との間に絵柄層を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
- 前記請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シートの裏面側に、直接またはその他の層を介して基板を貼着してなる化粧材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32018399A JP4620200B2 (ja) | 1999-11-10 | 1999-11-10 | 化粧シートおよび化粧材 |
Applications Claiming Priority (1)
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