JP4619590B2 - 電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法 - Google Patents

電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気アーク溶射を実施している過程でアーク不良が生じたことを検出する、電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属の表面に金属皮膜を形成する方法として、電気アーク溶射法が知られている。電気アーク溶射法では、溶射皮膜の成分を構成する金属材料からなる複数の溶射用線材を溶射ガンに設けられた送給装置により該溶射ガンの先端に向けて送給して、溶射ガン内でコンタクトチップと溶射用線材とを接触させ、溶射用電源からコンタクトチップを通して溶射用線材に給電する。これにより、溶射用線材の先端部間でアークを発生させ、このアークにより生じさせた溶融金属をガス流に乗せて被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射皮膜を形成する。
【0003】
電気アーク溶射装置においては、溶射用線材の送給経路の磨耗による送給摩擦抵抗の増大、溶射用線材を供給するリールからの線材供給の不具合、溶射用線材の送給装置の不具合、溶射用線材に給電するコンタクトチップの磨耗、溶射用線材とコンタクトチップとの瞬時溶着等に起因して、溶射用線材の送給速度が変動することがある。溶射用線材の送給速度が変動すると、アーク発生部への線材の供給の過不足が生じ、アークが乱れることがある。例えば線材の送給速度が低下すると、アーク発生部への線材の供給が不足するため、アーク熱で溶融した線材が吹き出された際に線材の先端部間に隙間が生じ、アークが断たれることがある。このとき溶射用線材の供給は継続しているため、若干の間をおいて線材どうしが接触し、アークが再生される。このような動作が繰り返されると、アーク断の状態と、アークが発生している状態とが繰り返されることになり、溶射電流は断続的な波形になる。
【0004】
アーク溶射を実施している際に、アークが不安定になって、アークが途切れる時間が長くなると、溶射皮膜の厚みが局部的に変化したり、被溶射面に未溶融の金属片が付着したりして、溶射皮膜に欠陥を生じ、溶射皮膜の品質を低下させることになる。
【0005】
本明細書では、溶射皮膜に欠陥を生じるおそれがある程度までアークが途切れている状態、及びアークが消滅したままになった状態を「アーク不良」と呼んでいる。
【0006】
溶射皮膜の品質を維持するため、従来は、溶射を完了した後に溶射皮膜の外観を目視検査するようにしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来は、溶射施工完了後に溶射皮膜の外観を目視検査することにより、溶射欠陥の有無を検査するようにしていたが、溶射欠陥は正常な部分と見分けがつきにくいことが多く、特に皮膜の厚さが局部的に薄くなっている状態は、正常な箇所との見分けがつかないことが多いため、目視検査では、溶射欠陥の有無を正確に判定することが困難であった。
【0008】
なお溶射施工中にアークの発生状況等を、検査員(自動溶射装置の場合)または作業者(半自動溶射装置の場合)が目視により監視して、アーク不良が生じたときに溶射を一時中断し、アーク不良の原因を除去した後に、溶射を再開させることも考えられるが、この方法は、アークの発生状況からアーク不良を見出すために、相当に熟練した検査員または作業者を必要とする。
【0009】
また、溶射施工の途中でアーク不良が発生したときにそれを検出して施工を中断させる必要があるが、アーク不良が生じたことを適確に検出する方法はなかった。
【0010】
本発明の目的は、電気アーク溶射を行う際に、検査員または作業者を必要とすることなく、アーク不良を適確に検出することができるようにした電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法である。
【0012】
通常、直流溶射用電源を用いて電気アーク溶射を施行する際に、溶射用線材の送給速度が変動すると、アークが断続的に発生するようになる。このとき溶射用電源の出力電流(溶射電流という。)の波形は、アークの断続に同期して通電期間と通電遮断期間とが繰り返される断続波形となり、線材の送給速度の変動に伴って溶射電流の平均値と、アーク断状態の継続時間とが変化する。アーク断状態が生じる時間が長くなると、アークエネルギが不足し、溶融金属の量が不足するため、溶射被膜の膜厚の不足などの溶射欠陥が生じる。
【0013】
そこで、溶射電流の平均値の変化からアーク不良が発生したことを検出することが考えられるが、溶射電流の平均値は正常時にも変動する上、アーク不良が生じたときに溶射電流の平均値が顕著な変化を示すとは限らないため、溶射電流の平均値を検出することによってアーク不良の有無を適確に判定することは困難である。
【0014】
これに対し、アーク断状態の継続時間は、正常時には零か、またはほとんど一定であり、アーク不良が発生したときにのみ顕著な変化を示す。
【0015】
そこで、本発明においては、溶射用電源の出力電流の値(大きさ)が設定されたしきい値未満になっている状態、または溶射用電源の出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値(大きさ)が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出し、このアーク断状態の継続時間を計測して、アーク断状態の継続時間や、継続時間が長いアーク断状態の発生頻度等からアーク不良の発生を検出する。
【0016】
直流溶射用電源から溶射用線材に電圧を印加して線材の先端部間でアークを発生させる電気アーク溶射において、線材の先端部間でアークが発生している状態では、溶射用電源の出力電流の値が所定のしきい値以上になっており、アークが消滅している状態では、溶射用電源の出力電流の値がしきい値未満に低下する。したがって、溶射用電源の出力電流の値が所定のしきい値よりも低くなったことからアーク断状態が発生したことを検出することができる。
【0017】
この場合、アーク断状態及びその継続時間を計測するには、例えば、溶射用電源の出力電流の値をアーク断状態判定のためのしきい値と比較して2値化することにより、該出力電流の値がしきい値未満になっているとき及びしきい値以上になっているときにそれぞれ第1の値及び第2の値をとるアーク状態検出信号を発生させ、このアーク状態検出信号が第1の値を示している時間をタイマにより計測するようにすればよい。
【0018】
また直流溶射用電源から溶射用線材に電圧を印加して行う電気アーク溶射において、線材の先端部間でアークが発生している状態では、溶射用電源の出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値が所定のしきい値以下の状態にあり、アークが消滅した時に溶射用電源の出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値がしきい値を超える状態になるので、溶射用電源の出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値がしきい値を超えたことによりアーク断状態を検出することができる。この場合、アーク断状態及びその継続時間を計測するには、例えば、溶射用電源の出力電圧または溶射用線材間の電圧の値をアーク断状態判定のためのしきい値と比較して、該出力電圧または溶射用線材間の電圧の値がしきい値を超えているとき及び該しきい値以下になっているときにそれぞれ第1の値及び第2の値をとるアーク状態検出信号を発生させ、このアーク状態検出信号が第1の値を示している時間をアーク断時間としてして計測するようにすればよい。
【0019】
現在直流溶射用電源としては、単相全波整流式直流電源、3相全波整流式直流電源、インバータ式直流電源の3種類があるが、本発明の方法を適用する場合に推奨される溶射用電源は、3相全波整流式直流電源、インバータ式直流電源である。
【0020】
上記のようにして計測されたアーク断状態、及びその継続時間を用いてアーク不良を判定する方法は種々考えられるが、本願明細書に開示された方法を要約して示すと以下の通りである。
【0021】
本願に開示された第1の発明では、アーク断状態の継続時間が設定された判定値に達したときにアーク不良が発生したと判定する。
【0022】
前述のように、溶射用線財の先端で発生しているアークは断続を繰り返しているが、アーク断状態の継続時間が長くなる状態はいかなる場合でも異常な状態であり、アーク不良と判定すべき状態である。
【0023】
本願に開示された第2の発明では、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときにアーク不良が発生したと判定する。
【0024】
継続時間が比較的長いアーク断状態が連続して発生する状態は明らかな異常状態であるので、継続時間が判定値以下のアーク断状態を間に挟むことなく、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が連続して判定回数検出されたときには、アーク不良が発生したと判定する。
【0025】
本願に開示された第3の発明では、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を、溶射用電源の出力電流または出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値がサンプリングされる毎に上記判定期間の計測を開始させて繰り返し行い、各アーク断回数計測過程で、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときにアーク不良が発生したと判定する。
【0026】
また本願に開示された第4の発明では、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される毎に上記判定期間の計測を開始させて繰り返し行い、各アーク断回数計測過程で、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときにアーク不良が発生したと判定する。
【0027】
継続時間が比較的長いアーク断状態が一定の時間内に頻繁に生じると、アークエネルギが不足して溶融金属の生成量が減少するため、溶射不良を生じる確率が高くなる。したがって、本願第3の発明及び第4の発明では、判定期間内に継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したとき(継続時間がある程度長いアーク断状態の発生の頻度が判定値に達したとき)にアーク不良が発生したと判定するようにしている。
【0028】
第3の発明では、溶射用電源の出力電流または出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値がサンプリングされる毎に上記判定期間の計測を開始させ、第4の発明では、アーク断状態が検出される毎に判定期間の計測を開始させるようにしているが、いずれの方法によっても同じようにアーク不良の発生を検出することができる。
【0029】
本願に開示された第5の発明では、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を、溶射用電源の出力電流または出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧の値がサンプリングされる毎に判定期間の計測を開始させて繰り返し行い、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときにアーク不良が発生したと判定する。
【0030】
一定時間内に発生したアーク断時間の積算値が大きくなると、アーク断状態の発生頻度が高くなった場合と同様に、アークエネルギが不足し、溶射異常が生じる確率が高くなる。したがって、上記のように、判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算した結果、その積算値が判定値に達している場合には、アーク不良が発生していると判定する。
【0031】
アーク断状態の継続時間が判定値に達したときにアーク不良が発生したと判定する前記第1の発明の方法では、溶射用線材の送給が停止してアークの発生が停止したままの状態になるようなアーク不良は確実に検出することができるが、継続時間が判定値には達しないが比較的長いアーク断状態が頻繁に発生するアーク不良状態を検出することができない。
【0032】
またアーク断状態の発生頻度からアーク不良を検出する第2ないし第4の発明では、継続時間が長いアーク断状態をアーク不良として検出できないおそれがある。
【0033】
したがって、高品質の溶射被膜を得るために、あらゆるアーク不良を適確に検出し得るようにするためには、前記第1ないし第5の発明を適宜に組合せて実施するのが好ましい。
【0034】
そこで、本発明の好ましい態様では、アーク断状態の継続時間が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を繰り返し行って、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときに異常判定を行う判定過程とを並行して行い、これらのうちのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定する。
【0035】
また本発明の他の好ましい態様では、アーク断状態の継続時間が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程とを並行して行い、これらのうちのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定する。
【0036】
更に本発明の他の好ましい態様では、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を繰り返し行って、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程とを並行して行い、これらのうちのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定する。
【0037】
なお判定方法の組合せ方は上記の例に限られるものではなく、例えば、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程との2つの判定過程を並行して行い、これらのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよい。
【0038】
また継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を繰り返し行って、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程との2つの判定過程を並行して行い、これらのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のアーク不良検出方法を実施する装置の構成例を示したもので、同図において1は第1の溶射用線材W1 を巻回した溶射用線材供給源としての第1のリール、2は第2の溶射用線材W2 を巻回した溶射用線材供給源としての第2のリールである。3は溶射ガンである。図示の溶射ガン3は、第1及び第2の線材W1 及びW2 をそれぞれ送給ローラと押えローラとの間に挟んで送給するワイヤ送給装置301及び302と、ワイヤ送給装置301及び302により所定の送り速度で被溶射面(溶射被膜を形成する面)4側に送給される溶射用線材W1 及びW2 を溶射方向(溶融金属微粒子を吹き付ける方向)に沿う軸線O−O上の一点に向けてガイドする第1及び第2のワイヤガイド管303及び304とを備えている。ワイヤガイド管303及び304の先端部はノズルとなっていて、これらのノズルは、溶射用線材W1 及びW2 のそれぞれの先端を溶射軸線[溶融金属の噴射方向(溶射方向)に沿う軸線]O−O上の一点(アーク発生点)Aに指向させるように設けられている。ワイヤガイド管303,304は導電材料からなっていて、それぞれの先端部には、線材と電気的に接触するコンタクトチップが設けられ、該コンタクトチップを通して溶射用線材W1 ,W2 間に電圧が印加される。
【0040】
また305は溶射軸線に沿ってアーク発生部に吹き付けるガス流Gを生じさせるガス供給管である。なおアーク発生点Aよりも前方の溶射軸線上の一点で集束する円錐状のガス流を噴出するノズルが設けられる場合もある。
【0041】
5は溶射装置本体で、この本体5内には、線材W1 ,W2 間に印加する直流電圧を出力する直流溶射用電源と、ガス供給管305にガス(通常は空気)を供給するガス供給源とが設けられている。本体5内に設けられたガス供給源は配管6を通してガス供給管305に接続され、溶射用電源の出力端子は給電線7,8を通してワイヤガイド管303,304の先端のコンタクトチップに接続されている。
【0042】
給電線8には溶射用電源の出力電流を検出する電流検出器9が取り付けられ、この電流検出器9の出力信号(電圧信号)は、しきい値が設定される設定器10の出力とともに比較器11に入力されている。12はCPU,RAM,ROM,タイマ等を有するコンピュータで、比較器11の出力がコンピュータ12のポートBに入力されている。
【0043】
コンピュータ12は、ROMに記憶された所定のプログラムを実行することにより、アーク不良の判定に必要な一連の処理を行う。
【0044】
即ち、アーク溶射が開始されると、コンピュータ12は、一定の周期で電流検出器9にサンプリング指令を与えて、溶射用電源の出力電流のサンプリングを行わせる。
【0045】
電流検出器9は、コンピュータ12からサンプリング指令が与えられる毎に溶射用電源5の出力電流(溶射電流)Iの大きさを検出してその検出値(サンプリング値)を比較器11に与える。比較器11は、電流検出器9から与えられる出力電流のサンプリング値をしきい値と比較して、出力電流のサンプリング値がしきい値未満になっているとき及びしきい値以上になっているときにそれぞれ第1の値及び第2の値をとるアーク状態検出信号Sarc を発生する。この例では、比較器11と基準信号発生源10とによりアーク状態検出信号発生回路13が構成されている。
【0046】
ここでは、溶射用電源の出力電流の値がしきい値未満になっているとき(アークが消滅しているとき)に比較器11の出力が高レベル(Hレベル)になり、溶射用電源の出力電流の値がしきい値以上になっているときに比較器11の出力が低レベル(Lレベル)になるものとする。
【0047】
この場合コンピュータ12は、比較器11の出力端子が接続されたポートBの電位がHレベルになったことを認識したときにアーク断状態が生じたことを検出するとともに、ポートBの電位がHレベルになる毎に(アーク状態検出信号Sarc の値が第1の値になる毎に)タイマを起動させて、該タイマに計時動作を行わせ、ポートBの電位がLレベルに変化したときにタイマの計時動作を停止させてその計測値をアーク断状態の継続時間としてRAMに記憶させる。
【0048】
コンピュータ12は、上記のようにしてアーク断状態の検出と、アーク断状態の継続時間の計測とを行い、これらの結果を用いて、アーク断状態の継続時間によるアーク異常判定過程と、連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程と、アーク断状態発生頻度によるアーク異常判定過程と、アーク断状態継続時間積算値によるアーク異常判定過程との4つの判定過程を並行して行って、これらのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときに、溶射異常を招来するアーク不良が発生したとの判定を行う。
【0049】
各アーク異常判定過程では、以下のようにしてアーク異常の判定を行う。
【0050】
(1)アーク断状態継続時間によるアーク異常判定過程
この判定過程では、アーク断状態の継続時間が設定された判定値を超えたことが検出されたときに異常判定を行う。この判定過程における溶射電流波形、アーク状態検出信号Sarc の波形、タイマの計時動作、及びアーク不良判定信号を示すタイミングチャートの一例を図2(A)ないし(D)に示した。
【0051】
図2(A)は、電流検出器9により検出される溶射電流Iの波形を示し、同図(B)は比較器11から出力されるアーク状態検出信号Sarc を示している。アーク断状態のときにはアーク状態検出信号Sarc がHレベル(第1の値)を示し、アークが発生しているときにはアーク状態検出信号Sarc がLレベル(第2の値)を示す。図2(C)はコンピュータ内のタイマの計時動作を示したもので、該タイマはアーク状態検出信号Sarc がHレベルになっている間計時動作を行って、アーク断状態の継続時間を計測する。コンピュータは、このアーク断状態の継続時間が判定値T1 (図示の例ではT1 =0.05sec )に達したときに、異常判定を行って、図2(D)に示すようなアーク不良判定信号So を発生する。図示の例では、時刻t1 でアーク断状態の継続時間が判定値T1 を超えたために、アーク不良判定信号So が発生している。図示のアーク不良判定信号So は、アーク不良が発生した時にHレベル(高レベル)を示し、アーク不良が発生していないときにLレベル(低レベル)を示す信号である。
【0052】
図示の例では、時刻t2 でアーク断状態が解消してタイマがリセットされるまで、アーク不良判定信号So がHレベルの状態(アーク不良が発生したことを示す状態)を保持するようにしているが、必ずしもこのようにする必要はなく、時刻t1 でアーク断状態の継続時間が判定値T1 を超えたときに短時間だけアーク不良判定信号So をHレベルにするようにしてもよく、時刻t2 でアーク断状態が解消してもアーク不良判定信号So がHレベルの状態を保持するようにしてもよい。
【0053】
また図2に示した例では、アーク不良が発生したときにアーク不良判定信号So をHレベルにするようにしたが、アーク不良が発生していないときにアーク不良判定信号をHレベルに保ち、アーク不良が発生したときにアーク不良判定信号をLベルにするようにしてもよい。
【0054】
上記アーク判定不良信号So は、アラームを動作させるための信号として用いたり、アーク溶射を自動的に施工している過程で溶射を中断する指令として用いたりすることができる。
【0055】
(2)連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程
この判定過程では、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行う。この判定過程を説明するためのタイミングチャートの一例を図3(A)ないし(F)に示した。
【0056】
図3(A)は電流検出器9により検出される溶射電流Iの波形を示し、同図(B)は比較器11から出力されるアーク状態検出信号Sarc を示している。また図3(C)はコンピュータ内のタイマの計時動作を示し、図3(D)はアーク断状態の継続時間が判定値T2 を超えたときに発生するアーク断検出信号Scut を示している。図3(E)は、連続アーク断発生回数の計数値Nixを示し、同図(F)はアーク不良判定信号を示している。図3(E)の連続アーク断発生回数Nixは、継続時間が基準値以下のアーク断状態を間に挟むことなく、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が連続して発生した回数で、図3(D)に示したアーク断検出信号Scut が連続して発生する回数である。
【0057】
この判定過程では、一連のアーク断状態のうちから、アーク不良判定に用いる顕著な(継続時間が判定値T2 よりも長い)アーク断状態を選別して、選別したアーク断状態が連続して発生する回数が設定された判定回数に達したときにアーク不良であると判定する。そのため、コンピュータ12は、比較器11から与えられるアーク状態検出信号Sarc がHレベルになっている時間を計測して、この時間が判定値T2 を超えたときにアーク断検出信号Scut を発生させ、継続時間が判定値T2 以下のアーク断状態が消滅したときにリセットされるカウンタにより、アーク断検出信号Scut の発生回数を計数することにより、継続時間が判定値T2 を超える顕著なアーク断状態が連続して発生する回数(連続アーク断発生回数)を計数する。
【0058】
そのためコンピュータ12は、内蔵されているカウンタをアーク断カウンタとして用いて、図3(D)に示すアーク断検出信号Scut を該アーク断カウンタの計数入力端子に与え、継続時間が判定値T2 未満のアーク断状態が解消する際に生じるアーク状態検出信号Sarc のHレベルからLレベルへの立下がりのエッジで上記アーク断カウンタのリセット端子にリセット信号を与える。
【0059】
したがって、アーク断カウンタは、図3(D)に示すアーク断検出信号Scut が発生する毎に計数値を「1」増加させ、継続時間が判定値T2 未満のアーク断状態が解消してアーク状態検出信号Sarc がHレベルからLレベルに低下する際にリセットされてその計数値を「0」に戻す。
【0060】
図示の例では、時刻t1 でアーク断検出信号Scut が立上がったときに図3(E)に示すように、カウンタの計数値(連続アーク断発生回数)が「1」となったが、時刻t2 で発生したアーク断状態の継続時間が判定値に達することなく、時刻t3 でアークが再発生してアーク状態検出信号Sarc がHレベルからLレベルに立ち下がったため、アーク断カウンタがリセットされて、連続アーク断発生回数Nixが「0」に戻されている。
【0061】
次いで時刻t4 において発生したアーク断状態の継続時間が時刻t5 において判定値に達して再びアーク断検出信号が発生したため、連続アーク断発生回数Nixが「1」となり、次いで時刻t6 及びt7 においてアーク断検出信号Scut が連続して発生したため、時刻t6 及びt7 においてそれぞれ連続アーク断発生回数が「2」及び「3」となっている。その後時刻t8 において継続時間が判定値未満のアーク断状態が解消して、アークが再発生したため、アーク断カウンタがリセットされて、連続アーク断発生回数Nixが「0」に戻されている。
【0062】
そしてこの例では、連続アーク断発生回数Nixの判定回数が「2」に設定されているため、時刻t6 において連続アーク断発生回数Nixが「2」となったときに図3(F)に示すようにアーク不良判定信号So がHレベルとなっている。
【0063】
(3)アーク断状態発生頻度による判定過程
この判定過程では、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行う。
【0064】
この判定過程の動作を示すタイミングチャートを図4に示した。同図(A)ないし(D)はそれぞれ、直流溶射用電源の出力電流(溶射電流)I、アーク状態検出信号Sarc 、タイマ動作、アーク断検出信号Scut である。また図4(E)は、アーク断検出信号Scut の発生回数の計数値、同図(F)はアーク不良判定信号So である。
【0065】
この判定過程では、継続時間が判定値T3 を超える顕著なアーク断状態を計数の対象とするアーク断状態として検出して、判定期間Ta内にこのアーク断状態が発生する回数を計数する。そのため、コンピュータ12は、図4(B)に示すアーク状態検出信号Sarc がHレベル(第1の値)を示している時間(アーク断状態の継続時間)が判定値T3 に達したときに図4(D)に示すようにアーク断検出信号を発生させる。
【0066】
コンピュータ12は、図4(D)に示すアーク断検出信号Scut の立ち上がりt11,t12,t13,…でカウンタに計数動作を行わせ(計数値を「1」ずつ増加させ)る。コンピュータはまた、アーク断検出信号Scut の立下がりt21,t22,t23,…で判定期間Taを計測するタイマの計時動作をスタートさせ、時刻t31,t32,…で判定期間Taの計測を完了したときに該計時動作を停止させる。 このように、判定期間Taの計測を行っている間に発生するアーク断検出信号Scut をカウントする過程をアーク断回数計測過程とする。そして、アーク断検出信号Scut が発生する毎に判定期間Taの計測を開始させて、上記アーク断回数計測過程を繰り返し行い、各アーク断回数計測過程でアーク断検出信号Scut の発生回数が判定回数に達したときにアーク不良判定信号So を発生させる。
【0067】
図4に示した例では、アーク断検出信号Scut の発生回数(継続時間が判定値T3 を超えるアーク断状態の発生回数)の判定回数が「2」に設定されている。時刻t21からt31までの判定期間Taにおいては、アーク断検出信号が1回しか発生しなかったため、アーク不良判定信号So は発生していないが、時刻t22から時刻t32までの判定期間Taにおいて、アーク断検出信号Scut が2回発生したため、2回目のアーク断検出信号が発生した時刻t13においてアーク不良判定信号So が発生している。
【0068】
図4に示した例では、継続時間が判定値T3 を超えるアーク断状態が検出される毎に(アーク断検出信号Scut が発生する毎に)判定期間Taの計測を開始させて、アーク断回数計測過程を繰り返すことにより、常時アーク不良の有無を監視するようにしているが、溶射用電源の出力電流または出力電圧若しくは溶射用線材間の電圧(上記の例では溶射用電源の出力電流)をサンプリングする毎に、上記判定期間Taの計測を開始させることにより、アーク断回数計測過程を繰り返すようにしてもよい。
【0069】
(4)アーク断状態継続時間積算値による判定過程
この判定過程では、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を繰り返し行って、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときに異常判定を行う。
【0070】
この判定過程の動作を示すタイムチャートを図5に示した。図5(A)及び(B)はそれぞれ溶射電流I、及びアーク状態検出信号Sarc を示し、図5(C)及び(D)はそれぞれアーク断状態の継続時間の積算値及びアーク不良判定信号So を示している。
【0071】
この判定過程では、サンプリングされた溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態をアーク断状態として、図5(B)に示すようにアーク状態検出信号Sarc を発生させることにより、アーク断状態を検出し、該アーク断状態の継続時間を計測する。
【0072】
そして、設定された判定期間Tb内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値Nm を演算する積算値演算過程を、出力電流(溶射電流)Iがサンプリングされる毎に判定期間Tbの計測を開始させて繰り返し行い、各積算値演算過程で演算された積算値が判定値に達したときにアーク不良が発生したと判定する。
【0073】
図5に示した例では、同図(C)に示した時刻t1 で開始されて時刻t2 で終了する判定期間Tbにおいては、アーク断状態の継続時間の積算値Na が判定値Nasに達しないため、アーク不良判定信号は発生していない。これに対し、時刻t3 で開始されて時刻t4 で終了する判定期間Tbにおいては、時刻t4 において積算値Na が判定値Nasに達したため、この時刻t4 から1つのサンプリング間隔の間でアーク不良判定信号So が発生している。
【0074】
なお図5(C)においては、図面が複雑になるのを避けるため、ある判定期間Tbが終了した後に次の判定期間が開始されるように図示されているが、実際には、溶射電流がサンプリングされる毎に判定期間が開始するため、一連の判定期間がオーバラップした状態で積算値演算過程が繰り返し行われ、アーク不良の有無が常時監視される。
【0075】
上記の説明では、溶射用電源の出力電流の値(大きさ)をしきい値と比較することにより2値化して、アークが発生している状態とアーク断状態とで異なるレベルを示すアーク状態検出信号を発生させているが、溶射用電源の出力電圧または溶射用線材間の電圧の値(大きさ)が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出することもできる。この場合は、出力電圧または溶射用線材間の電圧の値がしきい値を超えているときに第1の値をとり、出力電圧または溶射用線材間の電圧の値がしきい値以下になっているときに第2の値をとる2値化信号をアーク状態検出信号として発生させればよい。
【0076】
また上記の説明ではディジタル的に判定処理を行っているが、アナログ的に判定処理を行ってもよい。
【0077】
上記の説明では、アーク断状態の継続時間によるアーク異常判定過程と、連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程と、アーク断状態発生頻度によるアーク異常判定過程と、アーク断状態継続時間積算値によるアーク異常判定過程との4つの判定過程を並行して行って、これらのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときに、溶射異常を招来するアーク不良が発生したとの判定を行うとしたが、「課題を解決するための手段」の項でも述べたように、アーク断状態の継続時間によるアーク異常判定過程と、連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程と、アーク断状態発生頻度によるアーク異常判定過程との3つのアーク異常判定過程を並行して行って、これらのうちのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよい。
【0078】
また連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程と、アーク断状態発生頻度によるアーク異常判定過程と、アーク断状態継続時間積算値によるアーク異常判定過程との3つのアーク異常判定過程を並行して行って、これらのうちのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよい。
【0079】
更に、アーク断状態発生頻度によるアーク異常判定過程と、アーク断状態継続時間積算値によるアーク異常判定過程との2つのアーク異常判定過程を行って、これらのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよく、連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程と、アーク断状態継続時間積算値によるアーク異常判定過程との2つのアーク異常判定過程を行って、これらのいずれかの判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよい。
【0080】
また、溶射異常の検出をそれ程厳密に行う必要がない場合には、アーク断状態の継続時間によるアーク異常判定過程、連続アーク断発生回数によるアーク異常判定過程、アーク断状態発生頻度によるアーク異常判定過程及びアーク断状態継続時間積算値によるアーク異常判定過程のうちのいずれか一つのアーク異常判定過程を単独で行って、その判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定するようにしてもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、溶射用電源の出力からアーク断状態を検出して、アーク断状態の継続時間を計測し、アーク断状態の継続時間が判定値を超えたとき、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が連続的に判定回数発生したとき、判定期間内に継続時間が判定値を超えるアーク断状態が判定回数発生したとき、または判定期間の間に検出されたアーク断状態の継続時間の積算値が判定値に達したときにアーク不良が発生したと判定するようにしたので、溶射被膜に影響を与えるアーク不良を自動的に検出することができる利点がある。
【0082】
本発明の判定方法を自動溶射に適用することにより、アーク不良に起因する溶射異常を自動的にかつ確実に検出することができるため、溶射異常が生じたままで溶射が施工されて不良品が出荷されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のアーク不良検出方法を実施する装置の構成例を示した構成図である。
【図2】 本発明の一実施形態の異常判定動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】 本発明の他の実施形態の異常判定動作を説明するためのタイムチャートである。
【図4】 本発明の更に他の実施形態の異常判定動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】 本発明の更に他の実施形態の異常判定動作を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
1,2…溶射用線材を巻いたリール、3…溶射ガン、4…被溶射面、5…溶射装置本体、9…電流検出器、10…基準信号源、11…比較器、12…コンピュータ、13…アーク状態検出信号発生回路。

Claims (9)

  1. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときにアーク不良が発生したと判定する、
    電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  2. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    所定のサンプリング周期で前記溶射用電源の出力電流または出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値をサンプリングし、
    サンプリングされた前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を、前記出力電流または出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値がサンプリングされる毎に前記判定期間の計測を開始させて繰り返し行い、
    各アーク断回数計測過程で、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときにアーク不良が発生したと判定する、 電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  3. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を、前記継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される毎に前記判定期間の計測を開始させて繰り返し行い、
    各アーク断回数計測過程で、継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときにアーク不良が発生したと判定する、 電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  4. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    所定のサンプリング周期で前記溶射用電源の出力電流の値または出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値をサンプリングし、
    サンプリングされた前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を、前記出力電流または出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値がサンプリングされる毎に前記判定期間の計測を開始させて繰り返し行い、 各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときにアーク不良が発生したと判定する、
    電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  5. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    前記アーク断状態の継続時間が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を繰り返し行って、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程とを並行して行い、
    いずれかのアーク異常判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定する、
    電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  6. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    前記アーク断状態の継続時間が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程とを並行して行い、
    いずれかのアーク異常判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定する、
    電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  7. 直流溶射用電源から複数の溶射用線材の間に電圧を印加して該複数の溶射用線材の先端部間でアークを発生させることにより生じさせた溶融金属を被溶射面に向けて噴射することにより該被溶射面に溶射被膜を形成するアーク溶射を実施する過程でアーク不良が生じたことを検出するアーク不良検出方法であって、
    前記溶射用電源の出力電流の値が設定されたしきい値未満になっている状態、または前記溶射用電源の出力電圧若しくは前記溶射用線材間の電圧の値が設定されたしきい値以上になっている状態をアーク断状態として検出して、該アーク断状態の継続時間を計測し、
    設定された判定回数だけ連続して検出されたアーク断状態のそれぞれの継続時間がいずれも設定された判定値を超えているときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、継続時間が設定された判定値を超えるアーク断状態が設定された判定期間の間に検出される回数をカウントするアーク断回数計測過程を繰り返し行って、各アーク断回数計測過程で継続時間が判定値を超えるアーク断状態が検出される回数が設定された判定回数に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程と、設定された判定期間内に発生したアーク断状態の継続時間の積算値を演算する積算値演算過程を繰り返し行って、各積算値演算過程で演算された積算値が設定された判定値に達したときに異常判定を行うアーク異常判定過程とを並行して行い、
    いずれかのアーク異常判定過程で異常判定が行われたときにアーク不良が発生したと判定する、
    電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  8. 前記溶射用電源の出力電流の値をアーク断状態判定のためのしきい値と比較して、前記出力電流の値が前記しきい値未満になっているとき及び前記しきい値以上になっているときにそれぞれ第1の値及び第2の値をとるアーク状態検出信号を発生させ、
    前記アーク状態検出信号が第1の値を示している時間を前記アーク断時間として検出する請求項1ないし7のいずれか一つに記載の電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
  9. 前記溶射用電源の出力電圧の値または前記溶射用線材間の電圧の値をアーク断状態の判定のためのしきい値と比較して、該出力電圧の値または溶射用線材間の電圧の値が前記しきい値を超えているとき及び前記しきい値以下になっているときにそれぞれ第1の値及び第2の値をとるアーク状態検出信号を発生させ、
    前記アーク状態検出信号が第1の値を示している時間を前記アーク断時間として検出する請求項1ないし7のいずれか一つに記載の電気アーク溶射におけるアーク不良検出方法。
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