JP4619402B2 - スペクトル解析方法、歪検出装置、歪補償増幅装置 - Google Patents

スペクトル解析方法、歪検出装置、歪補償増幅装置 Download PDF

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Description

本発明は、増幅時の歪を検出し、補償するためのスペクトル解析方法、歪検出装置、歪補償増幅装置に関するものである。
無線通信において、送信信号の増幅のために増幅器が必要である。増幅器は、入力レベルに対して非線形な出力レベル、出力位相となる非線形歪を発生する。非線形歪を表す入力対出力特性は、入力レベルに対する出力レベルを示すAM−AM特性と、入力レベルに対する出力位相を示すAM−PM特性を持つ。しかし、電力効率の向上のために、敢えて非線形歪が発生する領域で増幅器が使用されている。非線形歪は一般に、送信信号の帯域幅の3倍から5倍(悪いときには7倍)の帯域にわたって不要な電力放出を起こす。図11は、歪を含む送信信号の一例を示すスペクトルである。横軸はキャリア周波数に対する相対周波数を表し、縦軸は希望波に対する相対レベルを表す。希望波のほかに、−IM7(負側の7次高調波),−IM5(負側の5次高調波),−IM3(負側の5次高調波帯域),+IM3(正側の3次高調波),+IM5(正側の5次高調波),+IM7(正側の7次高調波)を示す。
従って、非線形歪を補償する歪補償増幅装置が必要となる。非線形歪を補償する信号処理の方式として、FF(Feed Forward)方式や、APD(Adaptive Pre-Distortion)方式があり、いずれも商用レベルや試作レベルで実施され、有効とされている。FF方式は、増幅器出力の歪だけを抜き出し、増幅器出力から差し引くものである。APD方式は、増幅器入力前に予め歪特性を与え、増幅器と相殺するものである。APD方式は、デジタル信号処理で全てを実現可能であるため、小型化、低コスト化において有望である。また、APD方式においては、温度特性や経年変化等、増幅器の特性変化に追随するための適応アルゴリズムが使用されている。
図12は、従来の歪補償増幅装置の構成の一例を示すブロック図である。この歪補償増幅装置は、増幅部1、分配部2、歪検出装置103、補償係数演算部104、包絡線検出部11、逆特性記憶部12、遅延部13、PD(予歪)部14を備える。
適応アルゴリズムには複数の種類があるが、例えば歪信号をモニタしながら、歪補償係数を変更する方法がある(例えば特許文献1参照)。逆特性記憶部12は、増幅部1が持つAM−AM特性とAM−PM特性の逆特性を予め格納している。包絡線検出部11は、送信信号のエンベロープを逆特性記憶部12のアドレスとして出力する。逆特性記憶部12は、このアドレスに格納された逆特性をPD部14に出力する。PD部14は、遅延部13で遅延された送信信号に対して逆特性を与える。増幅部1は、PD部14の出力を増幅する。分配部2は、増幅部2の出力を分配し、一方を外部へ出力し、もう一方を歪検出装置103へ出力する。補償係数演算部104は、歪検出装置103により検出される歪が最小となるように、適応アルゴリズムを用いて逆特性記憶部12の内容を更新する。
なお、本発明の関連ある従来技術として、例えば、下記に示す特許文献2が知られている。この脈波検出装置は、計算能力が低い演算手段を用いた場合でも、正確な脈拍数の測定を可能にするものである。
特開2004−128921号公報 特開2004−121625号公報 (第4−7頁、第1図) 特開平9−138251号公報
しかしながら、上述した歪補償装置は、ハードウェアのコストが掛かる、または適応アルゴリズムの収束時間があまりにも遅くなる、といった問題がある。
ハードウェアのコストが掛かる方法の例として、同時に複数の歪帯域をモニタする方法がある。図11のような周波数特性においては、少なくとも−IM5,−IM3,+IM3,+IM5の4箇所の歪帯域をモニタする必要がある。また、このように4箇所の歪帯域をアナログ信号においてモニタするには、4系統のアナログ受信系が必要となる。しかも、4系統のアナログ受信系の間にレベル偏差があってはならないため、コスト面で困難となる。
一方、ハードウェアのコストを抑えた方法の例として、FFT(Fast Fourier Transform)を用いた周波数領域での歪検出の方法がある。この方法において、受信系は1系統で良い。高速A/D変換器で増幅器出力をデジタル信号に変換し、FFTで時間/周波数変換することにより、スペクトルが得られる。
しかし、近年の送信信号は、20MHz程度の帯域が必要となっている。これは、例えばW−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)において、1キャリアあたり5MHzの帯域で4キャリアを想定した場合である。図11における送信信号はW−CDMAの2キャリアのものであるが、この図から想像されるように、4キャリアで非線形歪が発生すると、100MHzの帯域幅が必要となる。サンプリング定理により、200MHz以上のサンプリング動作を行わなければ、正確な歪検出を行うことができない。
このような条件において、FFTをハードウェアで実現しようとすると回路規模が膨大であることから、コスト面で困難となる。また、ソフトウェアで実現しようとすると、処理に時間が掛かる。例えば、300MHzで動作するDSP(Digital Signal Processor)を用いて、1024ポイント(サンプル)のFFTを実施すると、約4msec必要となる。また、この場合、FFTを用いて歪検出できるのは約4msecの時間領域信号のうち1024サンプルとわずかな時間だけであり、平均的なスペクトルを得るためには長時間の平均が必要となる。また、この歪補償増幅装置は、補償係数が1度更新される度に、その結果が正しいか否かを判断するために長時間平均を行うため、収束時間が20分程度必要となることもある。一般に、収束時間は10秒程度とすることが要求されていることから、120倍以上の高速化を図る必要がある。このように、ソフトウェアで実現する場合、時間/周波数変換処理中にリアルタイムで入力される信号は時間/周波数変換処理できないため、補償係数の収束時間が多大となってしまう。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、時間/周波数変換処理を高速化し、収束時間を低減するスペクトル解析方法、歪検出装置、歪補償増幅装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は、スペクトルの時間平均を計算するスペクトル解析方法であって、入力信号にFFTポイント数の整数倍の周期の窓関数を乗算する第1ステップと、前記第1ステップの出力信号をFFTポイント数間隔で平均して、FFTポイント数の信号を出力する第2ステップと、前記第2ステップの出力信号をFFTする第3ステップとを有するものである。
また、本発明は、入力信号について周波数領域で歪を検出する歪検出装置であって、前記入力信号を平均化する平均化処理部と、前記平均化処理部の出力を時間領域から周波数領域に変換する時間/周波数変換処理部と、前記時間/周波数変換処理部の出力から歪成分を抽出する歪抽出部とを備えたものである。
また、本発明に係る歪検出装置において、さらに、前記時間領域信号に時間窓を乗算し、前記平均化処理部へ出力する時間窓処理部を備えることを特徴とするものである。
また、本発明は、入力信号について周波数領域で歪を検出する歪検出装置であって、前記入力信号に時間窓を乗算する時間窓処理部と、前記時間窓処理部の出力を平均化する平均化処理部と、前記平均化処理部の出力を時間領域から周波数領域に変換する時間/周波数変換処理部と、前記時間/周波数変換処理部の出力から複数の歪成分を抽出する歪抽出部と、を備え、前記平均化処理部は、前記時間/周波数変換処理部が変換を行う単位毎に、平均を行い、前記時間窓の幅は、前記単位の整数倍であることを特徴とするものである。
また、本発明に係る歪検出装置において、前記時間/周波数変換処理部はFFTを用いることを特徴とするものである。
また、本発明に係る歪検出装置において、前記平均化処理部は前記FFTの長さ毎に前記時間領域信号の加算を行うことを特徴とするものである。
また、本発明は、外部から入力された信号を増幅し、歪を補償する歪補償増幅装置であって、第1の信号の増幅を行う増幅部と、前記増幅部の出力を分配する分配部と、前記分配部の一方の出力を平均化する平均化処理部と、前記平均化処理部の出力を時間領域から周波数領域に変換する時間/周波数変換処理部と、前記時間/周波数変換処理部の出力から歪成分を抽出する歪抽出部と、前記外部から入力された信号に対して、前記歪抽出部の出力に基づく予歪を与えたものを前記第1の信号とする歪補償部とを備えたものである。
本発明によれば、ハードウェアによる平均化処理を行った後に、ソフトウェアによる時間/周波数変換処理を行うことにより、収束時間を大幅に低減することができる。従って、広帯域信号であっても低コストで歪検出を行うことができる。
本発明に係る歪補償増幅装置の構成の一例を示すブロック図である。 本発明に係る歪検出装置の構成の一例を示すブロック図である。 本発明に係る時間/周波数変換を表す式1の一例を示す式である。 本発明に係る時間/周波数変換を表す式2の一例を示す式である。 本発明に係る時間/周波数変換を表す式3の一例を示す式である。 本発明に係るローゼンフィールド窓を表す式4の一例を示す式である。 本発明に係る第1の時間窓の一例を示す波形である。 本発明に係る第2の時間窓の一例を示す波形である。 本発明に係る第3の時間窓の一例を示す波形である。 本発明に係る時間窓の周波数特性の一例を示すスペクトルである。 歪を含む送信信号の一例を示すスペクトルである。 従来の歪補償増幅装置の構成の一例を示すブロック図である。
符号の説明
1 増幅部
2 分配部
3 歪検出装置
4 補償係数演算部
11 包絡線検出部
12 逆特性記憶部
13 遅延部
14 PD部
21 周波数変換部
22 BPF
23 A/D
31 アドレス生成部
32 時間窓生成部
33 乗算部
34 加算部
41 カウンタ
42 切り替え部
51 デュアルポートメモリ
52 FFT処理部
53 歪抽出部
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明に係る歪補償増幅装置の構成について説明する。図1は、本発明に係る歪補償増幅装置の構成の一例を示すブロック図である。図1において、図12と同一符号は図12に示された対象と同一又は相当物を示しており、ここでの説明を省略する。また、図12の歪補償増幅装置と比較すると図1の歪補償増幅装置は、歪検出装置103の代わりに歪検出装置3を備える。
次に、本発明に係る歪検出装置3の構成について説明する。図2は、本発明に係る歪検出装置の構成の一例を示すブロック図である。この歪検出装置は、周波数変換部21、BPF(Band-Pass Filter)22、A/D変換部(A/D)23、アドレス生成部31、時間窓生成部32、乗算部33、加算部34、カウンタ41、切り替え部42、デュアルポートメモリ51、FFT処理部52、歪抽出部53を備える。本実施の形態では、歪検出装置3が、1024ポイントFFTを用いて、4倍の時間である4096ポイントの時間領域信号から1度に歪検出を行う例について説明する。
分配部2の出力は、周波数変換部21でダウンコンバートされ、BPF22で帯域制限され、A/D変換部23でアナログからデジタルの時間領域信号に変換され、A/D変換後にデジタル直交検波やフィルタリング等、必要な処理が適宜施される。アドレス生成部31は、FFTのポイント数(時間/周波数変換を行う単位)の整数倍(例えば4倍)に対応するアドレスを出力する。時間窓生成部32は、アドレス生成部31からのアドレスに従って時間窓を出力する。乗算部33は、A/D変換部23の出力と時間窓生成部32の出力を乗算することにより、時間領域信号に対して時間窓処理を行う。
加算部34は、乗算部33の出力とデュアルポートメモリ51のDATA OUTの出力を加算する。カウンタ41は、FFTポイント数毎に平均化回数をカウントし、平均化回数に1回切り替え部42を下側に接続する。本実施の形態ではFFTポイント数を1024、平均化回数を4とする。切り替え部42は、カウンタ41に従って、乗算部33または加算部34の出力をデュアルポートメモリ51のDATA INへ入力する。デュアルポートメモリ51は、アドレス生成部31からのアドレスに従って時間領域信号を読み出し、DATA OUTから出力すると共に、DATA INに入力された時間領域信号をアドレス生成部31からADDRESSへ入力されたアドレスに従って書き込む。結果として、1024ポイントの時間領域信号が4つ加算されたことにより平均化処理された平均化時間領域信号がデュアルポートメモリ51に格納される。このように、時間窓処理、平均化処理はハードウェアで実現される。
さらに、デュアルポートメモリ51は、FFT処理部52からADDRESS2へ入力されたアドレスに従って平均化時間領域信号を読み出し、DATA OUT2から出力する。FFT処理部52は、平均化時間領域信号の時間/周波数変換処理を行い、得られた周波数領域信号を歪抽出部53へ出力する。FFT処理部52による時間/周波数変換処理は、複素FFTであり、DSPを用いたバタフライ演算で実現される。歪抽出部53は、周波数領域信号から−IM5,−IM3,+IM3,+IM5について対キャリア相対レベルを補償係数演算部4へ出力する。
補償係数演算部4は、歪検出装置3により検出される歪が最小となるように、適応アルゴリズムを用いて逆特性記憶部12の内容を更新する。具体的な構成は例えば特許文献1と同じでよい。また、メモリ効果を補償するための制御量をPD部14が有しているときは、−IM3と+IM3のアンバランス等に基づき、その制御量を更新しても良い。
次に、本発明に係る歪検出装置3の動作原理として、平均化処理、時間/周波数変換処理、時間窓処理について説明する。
まず、加算部34における4096ポイントから1024ポイントへの平均化処理と、FFT処理部52における1024ポイントの時間/周波数変換処理について説明する。FFT処理部52は、等価的には周波数に応じた回転因子を乗算し、積分することにより周波数領域信号を算出する。ここでは、規格化周波数が4Hzの周波数領域信号A4の例について示す。周波数領域信号A4は、図3の式1で表される。ここで、s(t)は時間領域信号、tは時間、jは虚数単位である。式1における回転因子は、4096ポイントを4周期とする正弦波と余弦波であり、1024ポイントで1周期となる。
次に、A4を展開し、簡単のためにA4の第1項であるA4cだけを表した式を、図4の式2に示す。回転因子の周期は1024ポイントであり、1024ポイント離れた時間領域信号に乗算される回転因子は等しくなることから、式2における等しい回転因子の項をまとめた式を、図5の式3に示す。式3は、回転因子の周期だけ離れた時間領域信号を加算してから、回転因子を乗算し、積分しても式1と同じ結果が得られることを表している。従って本実施例の1024ポイントFFTの結果は、通常の4096ポイントFFTの結果を4ポイントおきに取り出したものと等しい。
実際には、まず時間領域信号の平均化処理を加算部34やデュアルポートメモリ51等のハードウェアで行い、次に平均化時間領域信号の時間/周波数変換処理をFFT処理部52のソフトウェアで行うことにより、時間/周波数変換処理に掛かる時間が低減され、適応アルゴリズムの更新周期を短くできる。また、リアルタイム信号の取りこぼしが減り、より長い時間信号に対して平均化処理を行うことができる。従って、送信信号の電力の変動の影響が軽減された、より平均的な歪を補償係数演算部4にフィードバックすることができ、適応アルゴリズムの収束が高速化する。この相乗効果により、従来のソフトウェアによるFFTでは10分程度掛かっていた収束時間が、本実施の形態によれば10秒程度まで低減できる。また、本実施の形態では4096ポイントの時間領域信号毎に処理を行うが、周波数分解能は1024ポイントのFFTに対応する。ただし、各周波数間の直交度は改善されている。
なお、本実施の形態における平均化処理は、平均化回数だけ加算を行ってリセットするようにしたが、移動平均や、忘却係数を使った重み付き平均を行っても良い。
次に、時間窓処理について説明する。FFTは周期信号を前提とする変換なので、リアルタイム信号を処理する際は、FFT長(FFTポイント数)分の信号の始めと終わりを0に減衰させる窓関数を用いるのが通常である。ここでは、時間窓の例を挙げる。第1の時間窓は、平均化長の窓関数である。平均化長は、FFT長×平均化回数である。窓関数であるローゼンフィールド窓w(t)は、図6の式4で表される。ここで、Mは窓関数長である。図7は、本発明に係る第1の時間窓の一例を示す波形である。横軸は時間をポイント数で表し、縦軸は振幅を表す。本実施の形態において第1の時間窓に用いるローゼンフィールド窓は、M=4096とする。
第2の時間窓は、FFT長の窓関数を平均化回数だけ繰り返した時間窓である。図8は、本発明に係る第2の時間窓の一例を示す波形である。本実施の形態において第2の時間窓に用いるローゼンフィールド窓は、M=1024とする。
第3の時間窓は、立ち上がりにFFT長の窓関数の前半を用い、立ち下がりにFFT長の窓関数の後半を用い、途中が最大値1でホールドされた時間窓である。図9は、本発明に係る第3の時間窓の一例を示す波形である。本実施の形態において第3の時間窓の一部に用いるローゼンフィールド窓は、M=1024とする。
上述した3種類の時間窓の周波数特性は異なるため、信号のスペクトルに応じて選択する。図10は、本発明に係る時間窓の周波数特性の一例を示すスペクトルである。また、時間窓生成部32は、窓関数の波形を記憶させたメモリで実現することができ、窓関数は左右対称であることからメモリ容量は窓関数長の半分にすることもできる。特に、第2の時間窓、第3の時間窓は、512ポイント分のメモリ容量で済む。なお、本実施の形態においては、窓関数としてローゼンフィールド窓を用いたが、ブラックマン窓等、他の窓関数を用いても良い。
窓関数は、帯域が広く平坦であるほど良いとは限らない。W−CDMAのスペクトルは、ある時間で平均すれば図11のようになるが、瞬時スペクトルはキャリア数のトーンに近いものであり、キャリアトーンの離調間隔とFFTの周波致分解能との関係によっては、検出レベルが均一でなくなったり、特定のキャリアや歪が検出できなくなる可能性がある。従って、W−CDMAのスペクトル測定には30kHz程度の分解能が推奨されている。一方、図11のIM3とIM5の一部を取得するためにサンプルレートを123MHzとしても、1024ポイントFFTでは周波数分解能は120kHzとなる。しかし、変調された実際のキャリアは少なからず帯域を持つことや、周波数成分を持つ窓関数と乗算されスペクトルが適度に拡散されることで、分解できなかった周波数成分に対しても問題にならない感度で検出はできる。従って4096ポイント未満のFFTが使用できる。
最適な窓関数はシステム構成に依存するが、複数の窓関数を切り替えて使う、或いは複数の窓関数を合成した窓関数を使う、などが有効な場合がある。例えば、元の窓関数(4096ポイント)に対し窓幅正規化周波数1Hz,2Hz,…(実周波数30kHz,60kHz…)などをそれぞれ乗算し、連結、或いは合成しても良い。また、FFTで得られる周波数領域信号は、該当する周波数を中心に、ナイキスト周波数の範囲でsinc関数状に感度を持つので、(特に位相の)周波数特性の異なる複数の窓関数を用いると、所望の分解周波数以外の周波数に対する感度を打ち消すことができる。これは窓関数にランダムなノイズを重畳することでも容易に達成でき、これによりスペクトル検出のダイナミックレンジが増大するので、本実施の形態のようにキャリアに比べ−60dB以下のIM5を精度良く検出する用途では極めて有効である。
またどうしても分解能が不足するのであれば、回転因子を異ならせたFFT処理部53、或いは予め1,2,3Hzといった回転因子を乗算させて入カするFFT処理部53を並列に設ければ良い。FFTの一般的な演算量のオーダ(n×log(n))に比べ少ない演算量で処理できる可能性がある。
次に歪抽出部53について説明する。歪抽出部53には、ポイント数に対応するスペクトル強度情報が入カされる。それらを、−IM5、−IM3、キャリア、+IM3、+IM5の領域に区分する。各領域は4キャリアを全て使っている時とそうでない時とでは異なるので、必要に応じてキャリアの使用状況を上位装置から取得するものとする。区分されたスペクトル強度情報は、2乗により電カ化し、各領域内で加算し、それぞれの領域の総電力となる。その後、各歪成分の総電力をキャリアの総電力で除算し、対キャリア相対レベルを出カする。各総電力或いは対キャリア相対レベルは複数のFFT回数分、更に平均化しても良い。
或いは歪抽出部53は、以下の方法で独自にキャリアの使用状況を把握して各IMを求めても良い。即ち、キャリアは一定の周波数間隔Δfで配置されるとして、予めキャリアとして使用可能な複数の周波数fCN(N=1…n)、及びキャリアの帯域幅fBWを記憶しているものとする。
ステップ1として、スペクトル強度情報をスキャンし、最大の強度を検索する。ステップ2として、最大強度に予め定める1以下の数を乗じた値を闘値とする。ステップ3として、スペクトル強度情報をスキャンし、闘値を超えたスペクトルの周波数を含むキャリアを特定する。含むか否かは、スペクトルの周波数fに対し、f<fCN+fBW/2且つf>fCN−fBW/2を満たすfCNが存在するか否かを判断して行う。これにより各キャリアの使用情況がわかる。
ステップ4として、使用キャリアから、目的の各IMの帯域を決定する。例えば使用キャリア数が2以上であれば、各使用キャリアの周波数にΔfを加算もしくは減算した周波数が別のキャリアに使用されていなければ、その周波数が1つのIM3の中心周波数である。IMの帯域幅は例えばΔfとする。複数のIM3の内、周波数の(最も)高いものを+IM3、低いものを−IM3とする。同様に2Δfを加算もしくは減算した周波数がIM5となり得る。使用キャリア数が1のとき、当該キャリアの中心周波数を基準として、予め記憶する周波数範囲のものを各IMとする。
なお、本実施の形態においては、時間窓処理、平均化処理をハードウェアで行い、時間/周波数変換処理をソフトウェアで行うとしたが、全てをソフトウェアで行っても良いし、全てをハードウェアで行っても良い。またFFTのみならず同様のたたみこみを行う各種変換(ウェーブレット変換等)に応用してもよい。
また、本発明に係る歪補償増幅装置は、無線通信装置に容易に適用することができ、無線通信装置の性能をより高めることができる。ここで、無線通信装置には、例えば携帯電話等の無線通信システムにおける基地局、端末、中継局、また無線LAN(Local Area Network)等が含まれ得る。
なお、時間窓処理部とは、実施の形態における時間窓生成部32、乗算部33に対応する。また、平均化処理部とは、実施の形態における加算部34、カウンタ41、切り替え部42、デュアルポートメモリ51に対応する。また、時間/周波数変換処理部とは、実施の形態におけるFFT処理部52に対応する。

Claims (7)

  1. 時間領域信号である入力信号を周波数領域信号に変換して周波数領域で歪を検出する歪検出装置であって、
    所定の時間長のn(nは2以上の整数)倍の周期を有する時間窓の少なくとも一部の波形を記憶する窓関数メモリを有し、前記記憶された波形を有する前記時間窓を生成し、前記所定の時間長を一単位とした前記入力信号に前記時間窓を乗算して、前記所定の時間長のn倍の時間長を有する時間領域信号を出力する時間窓処理部と、
    前記時間窓処理部の出力信号に含まれるn個の前記所定の時間長を有する時間領域信号を前記一単位毎に全て加算して、前記所定の時間長を有する平均化された一単位の時間領域信号を出力する平均化処理部と、
    前記平均化処理部から出力される前記一単位の時間領域信号を、所定数のポイントにおいて1度に時間領域信号から周波数領域信号に変換する時間/周波数変換処理部と、
    前記時間/周波数変換処理部の出力から歪成分を抽出する歪抽出部と、
    を備える歪検出装置。
  2. 前記窓関数メモリは、複数の時間窓の少なくとも一部の波形を記憶し、前記時間窓処理部は、前記複数の時間窓を切り替えて前記乗算する時間窓に用いることを特徴とする
    請求項1記載の歪検出装置。
  3. 前記窓関数メモリは、複数の時間窓の少なくとも一部の波形を記憶し、前記時間窓処理部は、前記複数の時間窓を合成した時間窓を前記乗算する時間窓に用いることを特徴とする
    請求項1記載の歪検出装置。
  4. 前記窓関数メモリは、前記時間窓の一部の波形を記憶し、前記時間窓処理部は、前記時間窓の一部の波形に基づいて、所定時刻に対して対称な波形を有する前記時間窓を生成することを特徴とする
    請求項1記載の歪検出装置。
  5. 前記時間/周波数変換処理部は、FFT(Fast Fourier Transform)演算により前記平均化処理部の出力を時間領域から周波数領域に変換し、
    前記所定の時間長は、前記時間/周波数変換処理部におけるFFT演算で変換処理を行う単位である前記所定数のポイントに対応する時間長であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歪検出装置。
  6. 前記平均化処理部は、前記所定の時間長の時間領域信号を記憶するメモリを有し、前記時間窓が乗算された前記所定の時間長のn倍の長さを有する時間領域信号について、前記所定の長さの最初の一単位の時間領域信号を前記メモリに記憶し、さらに前記メモリに記憶された時間領域信号に、次の一単位の時間領域信号を加算して前記メモリに記憶することをn−1回繰り返し、前記メモリから前記所定の時間長を有する一単位の時間領域信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歪検出装置。
  7. 外部から入力された信号を増幅し、歪を補償する歪補償増幅装置であって、
    第1の信号の増幅を行う増幅部と、
    前記増幅部の出力を分配する分配部と、
    前記分配部の一方の出力に含まれる歪成分を抽出して出力する歪検出装置と、
    前記外部から入力された信号に対して、前記歪検出装置の出力を用いて適応アルゴリズムにより更新された逆特性に基づいて予歪を与えたものを前記第1の信号とする歪補償部とを備え、
    前記歪検出装置は請求項1乃至6のいずれかに記載の歪検出装置であることを特徴とする歪補償増幅装置。
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