しかしながら、上述の従来構成にあっては、凝縮センサーが凝縮を検知しても、実際にはアイソレーターに内在させた除染対象物の表面では除染ガスが十分に凝縮していない場合があった。これは、凝縮センサーの検知結果に基づいて除染終了の判断をしたときに、実は除染対象物表面は十分に除染されていなかった、という問題を招来する。
ここで、本特許出願に係る発明者は、かかる問題は、除染対象物の表面温度に比べて、凝縮センサーの透明板表面が低温であることが原因であると考えた。さらに検討すると、アイソレーターの壁面温度は、当該アイソレーターの室内温度に比べて低いことがわかった。これは、以下の理由によるものである。
1)クリーンルーム内は、気密化された空間を維持すべく、備え付けの送風ファンにより常時一方向流が形成されている。このため、アイソレーターの外面には、この一方向流が常時当たり続けている。したがって、アイソレーターの壁面は、熱が奪われやすく低温になりやすい。
2)一方、アイソレーター内には、周囲雰囲気より高温のキャリアガスを投入している。これは、除染ガス投入時に除染ガスが配管内で凝縮することを防止するためである。したがって、アイソレーターの室内は、高温となりやすい環境にある。
このように、アイソレーターの壁面温度と、アイソレーターの室内温度とには、温度差が生じている。
さらに、アイソレーターの壁面と凝縮センサーの透明板とは、凝縮センサーの付設状態にあって、透明板がアイソレーターの室壁に接触した状態となる関係にある。このため、アイソレーターの壁面の温度は、凝縮センサーの透明板に伝わり、アイソレーターの壁面と凝縮センサーの透明板の表面温度はほぼ同じになる。したがって、上述した温度差も考慮すると、凝縮センサーに係る透明板の表面温度は、アイソレーターの室内温度に比べて低温となってしまう。
また、除染対象物の除染対象となる表面は、アイソレーターの壁面に直接接触しているわけではないので、凝縮センサーの透明板に比べてアイソレーターの壁面温度の影響を受けにくい。逆に、この除染対象物の表面は、室内雰囲気と接触しているため、室内雰囲気の影響を受けやすい。このため、除染対象物の表面は、室内温度に近似することとなり、アイソレーターの壁面よりも高温になりやすい。そうすると、結果的に、凝縮センサーの透明板表面は、除染対象物表面よりも低温となりやすいこととなる。さらに言えば、凝縮センサーの透明板は、除染対象物の表面に比して低温であるため、除染対象物の表面よりも除染ガスが凝縮しやすい環境にある。すなわち、凝縮センサーが除染に十分な凝縮を検知しても、実際にはアイソレーターに内在させた除染対象物の表面では除染ガスが十分に凝縮していない、という状況が起こる。
そこで本発明は、これらの問題に鑑み、凝縮センサーによる検知結果に基づいて、除染対象物表面の除染状態を正確に把握できる除染方法、及び該除染方法に用いられる凝縮センサーを提供することを目的とする。
本発明は、外界から気密的に遮断された除染室内に除染対象物を配置し、当該除染室内に除染ガスを投入し、該除染ガスを前記除染対象物の表面で凝縮させて、当該除染対象物の表面を除染する除染方法において、その表面に除染ガスが凝縮することとなる凝縮形成部と、前記凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知する凝縮検知手段とを備えた凝縮センサーの前記凝縮形成部を、除染室の内面に対して非接触状に配置し、該凝縮センサーの凝縮検知手段が当該凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知すると、除染対象物の表面で除染ガスが凝縮したこととすることを特徴とする除染方法である。ここで、除染とは、化学T期除染、無菌、殺菌、滅菌等が含まれる。また、除染室内とは、除染室の内面、及び除染室の内面と非接触な位置を含む概念である。
上述のように、除染室の室内空間と除染室の内面との間には温度差があり、室内空間の方が、除染室の内面よりも除染ガスの凝縮が起こりにくい環境にある。したがって、本発明に係る位置に設けられた凝縮形成部で凝縮が検知された場合、少なくとも除染対象物でも凝縮が生じていると推定ができる。したがって、本発明に係る凝縮センサーに基づいて除染の終了タイミングを決定すれば、除染対象物の表面でも十分に凝縮膜が形成されていることとなる。これにより、従来構成で問題となっていた、除染対象物表面の除染が完了していないのに除染を終了してしまう、という問題を確実に解消することができる。
また、除染対象物を、除染室の内面に対して非接触状に配置する構成が提案される。
かかる構成にあっては、凝縮センサーの凝縮形成部と除染対象物とが、ほぼ同じ温度環境に内在することとなる。したがって、凝縮形成部の表面温度と除染対象物の表面温度との差が縮まり、各位置における凝縮環境が近似する。これにより、凝縮形成部表面と除染対象物表面の凝縮環境がほぼ等しくなるため、凝縮センサーの検知結果の精度が向上し、除染の確実性がさらに高まることとなる。
また、本発明は、外界から気密的に遮断された密閉室内に除染対象物を配置し、当該密閉室内に除染ガスを投入し、該除染ガスを前記除染対処物の表面で凝縮させて、当該除染対象物の表面を除染する除染方法において、密閉室内に設置され、その表面に除染ガスが凝縮することとなる凝縮形成部と、該凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知する凝縮検知手段とを具備した管理用凝縮センサーを当該密閉室に配置し、かつ、当該密閉室内で、凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、及び凝縮の持続時間のうち少なくとも一つに基づいて除染管理用基準位置を特定すると共に、該除染管理用基準位置における凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、及び凝縮の持続時間のうち少なくとも一つに基づいて、前記管理用凝縮センサーを、所定の凝縮形成態様変更手段により、特定の除染管理用基準位置測定態様に設定する除染管理前工程と、前記密閉室内に除染ガスを投入開始し、前記除染管理前工程に係る管理用凝縮センサーに基づいて除染状況を管理して除染対象物の表面を除染する除染工程とを備えたことを特徴とする除染方法である。なお、密閉室とは、除染室を含む概念であり、例えばクリーンルーム、病室等が例示され得る。また、密閉室内とは、密閉室の内面、及び密閉室の内面と非接触な位置を共に含む概念である。例えば、本発明に係る除染対象物、及び管理用凝縮センサーの凝縮形成部は、密閉室の内面上に配置される場合もあるし、密閉室の内面に対して非接触状に配置される場合もある。これに対し、管理用凝縮センサーの凝縮検知手段は、配置場所が限定されるものではない。
ここで、一般的に、密閉室に除染ガスを投入する際にあっては、室内形状や除染対象物の形状等が要因となって、同じ室内であっても除染ガスの行き渡り方に差が生じる。すなわち、密閉室内には、他の場所に比して除染ガスの凝縮が起こりにくい、いわゆるコールドスポットが存在する。そして、当該密閉室内の単数又は複数の位置に係る凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間等を考慮した上で、いくつかあるコールドスポットのうち、最も除染ガスが行き渡りにくいコールドスポットを、本発明に係る除染管理用基準位置とする構成が好適である。ここで、従来までの考えによれば、密閉室を確実に除染するためには、最も除染ガスが行き渡りにくいコールドスポットに凝縮センサーを設置し、このコールドスポットで凝縮が検知され、なおかつ十分な凝縮量が所定時間だけ保持された場合に除染が完了したと判断する必要があった。これに対し、本発明は、最も除染ガスが行き渡りにくいコールドスポットに設置されない凝縮センサーで凝縮を管理しても、密閉室を確実に除染することができる除染方法である。さらに詳述すると、最も除染ガスが行き渡りにくいコールドスポットでない箇所にある凝縮センサーの設置位置に、擬似的にコールドスポットを形成し、当該センサーに基づいて除染管理することを特徴としている。換言すれば、本発明に係る管理用凝縮センサーは、密閉室の除染が完了したことを判断するためのセンサーであるにも関わらず、コールドスポット(除染管理用基準位置)に位置していなくても良い。これは、管理用凝縮センサーを除染管理用基準位置測定態様に設定し、管理用凝縮センサーで把握される凝縮状態(例えば、凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間)を、除染管理用基準位置における凝縮状態とほぼ等しくするようにしたためである。なお、過去に得られた種々の実験データがあり、また密閉室内が常時安定した除染環境にある場合は、過去に特定された除染管理用基準位置を採用することもできる。したがって、除染管理前工程実行時に、除染管理用基準位置があらかじめ特定されている場合もある。なお、除染状況を管理することには、凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間等を計測して、その計測値により除染ガスを制御、室内湿度を変更、又は室内温度を変更等することが含まれるものであり、従来から良く知られた周知技術が好適に採用される。なお、除染ガスを制御するとは、例えば除染ガスの投入量を調節することであり、勿論、除染ガスの投入を中止することも含まれる。
上記構成にあって、除染管理前工程が、密閉室内に設置される凝縮形成部と、該凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知する凝縮検知手段とを具備した選定用凝縮センサーを当該密閉室にあらかじめ複数配置しておき、各選定用凝縮センサーにより特定される各センサー設置位置の凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、及び凝縮の持続時間のうち少なくとも一つに基づいて除染管理用基準位置を特定するものである構成が提案される。
かかる構成にあって、選定用凝縮センサーに係る凝縮形成部は、例えば、密閉室の内面、密閉室の内面と非接触な位置、除染対象物の在る位置、又は除染対象物の表面形状が特に複雑な位置等に配置することができる。ここで、除染対象物の表面形状が特に複雑な位置は、除染ガスが当該部分に進入しにくいため、凝縮が生じにくい環境である。そうすると、除染対象物の表面形状が特に複雑な位置に配置された選定用凝縮センサーに係る凝縮形成部では、他の位置に配置された同センサーに係る凝縮形成部に比べて、凝縮開始タイミングが遅かったり、所定時間内での凝縮量が少なかったり、又は凝縮の持続時間が短かったりする。したがって、かかる構成によれば、客観的な方策によって除染管理用基準位置が特定されることとなる。例えば、所定時間内での凝縮量(例えば凝縮膜の膜厚)が最も少なかった選定用凝縮センサーの設置位置を除染管理用基準位置とする構成が提案されうる。
また、除染管理前工程に係る除染管理用基準位置測定態様は、管理用凝縮センサーにより測定される凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、及び凝縮の持続時間のうち少なくとも一つが、除染管理用基準位置における凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間とほぼ等しい態様である構成が提案される。ここで、ほぼ等しい態様とは、例えば管理用凝縮センサーが検知した凝縮開始タイミングと、除染対象物表面での凝縮開始タイミングとが乖離することによって生ずる問題が、除染管理上、顕在化しない程度に等しくすれば良く、厳密に等しくすることを要求するものではない。
例えば、管理用凝縮センサーにより測定される所定時間内での凝縮量を、除染管理用基準位置における所定時間内での凝縮量にほぼ等しくする構成が例示される。これにより、当該管理用凝縮センサーで、除染管理用基準位置における所定時間内での凝縮量を把握することが可能となる。なお、管理用凝縮センサーは、除染管理用基準位置における凝縮開始タイミングを測定可能とすることもできるし、除染管理用基準位置における凝縮の持続時間を測定可能とすることもできる。
ここで、管理用凝縮センサーの凝縮検知手段が、当該管理用凝縮センサーに係る凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知する管理用凝縮検知装置により構成されると共に、除染管理前工程が、管理用凝縮センサーの凝縮形成部及び/又は管理用凝縮検知装置を密閉室の室壁に接触状に付設するようにしてなる構成が提案される。
かかる構成とすることにより、密閉室外にいながら、作業者が管理用凝縮センサーを取扱うことが可能となるため、管理用凝縮センサーのメンテナンスを密閉室外から容易に行うことができる。ここで、管理用凝縮センサーは、除染管理前工程で特定の除染管理用基準位置測定態様に設定する必要がある。このため、本発明は、当該センサーの設定が容易となるという点で大きな意義がある。なお、この管理用凝縮センサーは、除染管理前工程により、除染管理用基準位置の凝縮状態に近似した除染管理用基準位置測定態様にあらかじめ設定されたものであるため、室壁は低温化しやすいという問題は解消されて、密閉室内のあらゆる位置に配置されようとも(仮に凝縮形成部が室壁に接触しようとも)、室壁の温度低下に影響されることなく適切に除染対象物の表面を除染することができる。
また、凝縮形成態様変更手段が、その表面に除染ガスが凝縮することとなる複数の透明板により構成され、該透明板間の間隙が密閉室内雰囲気と連通するように列設されてなり、かつ該透明板の間隔幅が変更可能な管理用凝縮センサーの凝縮形成部と、投光部から前記透明板の板面に光を照射する投光装置と、受光部が前記透明板を透過した透過光と対向する位置に配設され、該透過光の受光量とほぼ比例した電圧出力を発生する受光装置とを具備した管理用凝縮検知装置により構成される管理用凝縮センサーの凝縮検知手段とからなるものである構成が提案される。
かかる構成にあって、密閉室内に除染ガスが投入されると、透明板間の間隙は密閉室内雰囲気と連通しているため、除染ガスがこの透明板間に進入する。そして、密閉室内に除染ガスが投入され続けると、除染ガスが凝縮開始し、当該透明板上に凝縮膜が形成され始める。かかる状態で投光装置から照射光を照射すると、照射光は凝縮膜を透過し、そして、この透過光が受光装置で検出される。ここで、かかる場合に受光装置で検出された受光量は、非凝縮時に測定した受光量に比べてその量が減少する。これは、照射光が、凝縮膜を通過する際に散乱・吸収されるためである。すなわち、この凝縮センサーは、受光量の変化をモニタリングすることにより、凝縮開始タイミングを検知することができる。さらに、凝縮が進行して透明板上に形成された凝縮膜の膜厚が増大すると、測定される受光量はそれに対応して減少することとなる。したがって、刻々と変化する所定時間内での凝縮量や、凝縮の持続時間等を検知することもできる。ここで、透明板の間隔を適宜変更することは、当該凝縮形成部に、除染ガスが行き渡りやすい部分、あるいはそうでない部分を擬似的に形成することとなる。例えば、透明板の間隔を狭くすると、透明板間に除染ガスが進入しにくくなり、透明板上に凝縮膜が形成されにくくなって、当該凝縮センサーの凝縮開始タイミングを遅らせたり、所定時間内での凝縮量を少なくしたり、凝縮の持続時間を短くしたりすることができる。一方、透明板の間隔を広くすると、透明板間に除染ガスが進入しやすくなり、透明板上に凝縮膜が形成されやすくなって当該凝縮センサーの凝縮開始タイミングを早めたり、所定時間内での凝縮量を多くしたり、凝縮の持続時間を長くしたりすることができる。
また、本発明者は、上記構成のほか、検知される凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間等を調整することができる凝縮センサーを創案した。なお、これらの凝縮センサーは、これまでに述べた除染方法に好適に用いることができるが、用途はこれに限定されず、あらゆる除染方法に用いることができる。
本発明は、外界から気密的に遮断され、かつ除染対象物が内在する密閉室の、その室内に設置され、表面に除染ガスが凝縮することとなる凝縮形成部と、前記凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知する凝縮検知手段とを備えた凝縮センサーにおいて、凝縮形成部の表面温度を測定する凝縮形成部用温度測定手段と、凝縮形成部用温度測定手段が測定した凝縮形成部の表面温度を変更する表面温度変更手段とを備えたことを特徴とする凝縮センサーである。なお、本発明にあっては、少なくとも凝縮形成部が室内に設置されていれば良く、凝縮検知手段は、設置場所が限定されるものではない。
かかる構成にあっては、凝縮形成部の表面温度を高くするほど、当該凝縮形成部での除染ガスの凝縮は起こりにくくなり、当該凝縮センサーの凝縮開始タイミングを遅らせたり、所定時間内での凝縮量を少なくしたり、凝縮の持続時間を短くしたりすることができる。一方、凝縮形成部の表面温度を低くするほど、当該凝縮形成部での除染ガスの凝縮は生じやすくなり、当該凝縮センサーの凝縮開始タイミングを早めたり、所定時間内での凝縮量を多くしたり、凝縮の持続時間を長くしたりすることができる。
また、上記構成にあって、除染対象物の表面温度を測定する除染対象物用温度測定手段と、表面温度変更手段に、凝縮形成部用温度測定手段が測定した凝縮形成部の表面温度を、除染対象物用温度測定手段が測定した除染対象物の表面温度以上とするように指令する温度変更指令制御手段とを備えた構成が提案される。
かかる構成にあって、凝縮形成部の表面温度が、除染対象物の表面温度以上となると、例えば、凝縮形成部の表面と除染対象物表面とがほぼ同じ凝縮量の凝縮膜が生成されるか、又は、凝縮形成部表面の方が少ない凝縮量の凝縮膜が生成されることとなる。すなわち、本発明に係る凝縮センサーに基づいて除染終了タイミングを判断することにより、従来構成で問題となっていた、除染対象物の表面は除染が完了していないのに除染を終了してしまう、ということを防ぐことができる。
また、本発明は、外界から気密的に遮断され、かつ除染対象物が内在する密閉室の、その室内に設置され、表面に除染ガスが凝縮することとなる凝縮形成部と、前記凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知する凝縮検知手段とを備えた凝縮センサーにおいて、凝縮形成部の周囲にある空気を流動させて、当該凝縮形成部の表面上に一方向流を形成する送風手段と、送風手段が形成した一方向流の流速を測定する流速測定手段と、送風手段が形成した一方向流の流速を変更する流速変更手段と、流速測定手段が測定した流速に基づいて、流速変更手段に流速を変更させるように指令する流速変更指令制御手段とを備えたことを特徴とする凝縮センサーである。なお、本発明にあっては、少なくとも凝縮形成部が室内に設置されていれば良く、凝縮検知手段は、設置場所が限定されるものではない。
かかる構成にあっては、前記一方向流の流速を大きくするほど、凝縮形成部表面に凝縮膜が吸着し難くなるため、当該凝縮形成部で除染ガスは凝縮しにくくなり、当該凝縮センサーの凝縮開始タイミングを遅らせたり、所定時間内での凝縮量を少なくしたり、凝縮の持続時間を短くしたりすることができる。一方、一方向流の流速を小さくするほど、凝縮形成部表面に凝縮膜が吸着しやすくなるため、当該凝縮形成部で除染ガスは凝縮しやすくなり、当該凝縮センサーの凝縮開始タイミングを早めたり、所定時間内での凝縮量を多くしたり、凝縮の持続時間を長くしたりすることができる。
本発明に係る除染方法は、凝縮センサーの凝縮形成部を、除染室の内面に対して非接触状に配置し、該凝縮センサーの凝縮検知手段が当該凝縮形成部に除染ガスが凝縮したことを検知すると、除染対象物の表面で除染ガスが凝縮したこととする構成としたため、本発明に係る凝縮センサーが凝縮を検知した場合は、少なくとも除染対象物の表面で凝縮が生じていると推定ができ、除染対象物表面の除染が完了していないのに除染を終了してしまう、という問題を解消することができる効果がある。
また、除染対象物を、除染室の内面に対して非接触状に配置する構成とした場合は、凝縮センサーの凝縮形成部と除染対象物とが、ほぼ同じ温度環境に内在することとなるため、凝縮センサーの検知結果の精度が向上し、除染の確実性をさらに高めることができる効果がある。
また、本発明の除染方法は、管理用凝縮センサーを密閉室に配置し、管理用凝縮センサーを特定の除染管理用基準位置測定態様に設定し、この管理用凝縮センサーに基づいて除染状況を管理して除染対象物の表面を除染する構成としたため、除染管理用基準位置でない凝縮センサーの設置位置で、除染管理用基準位置での凝縮状態を把握することが可能となり、除染対象物表面上の除染を管理するためのセンサーの設置場所が、広範となる効果がある。
また、選定用凝縮センサーを当該密閉室にあらかじめ複数配置しておき、各選定用凝縮センサーにより特定される各センサー設置位置の凝縮開始タイミング等に基づいて除染管理用基準位置を特定する構成とした場合は、客観的な方策により除染管理用基準位置を特定することが可能となり、除染管理の精度を向上させることができる効果がある。
また、除染管理前工程に係る除染管理用基準位置測定態様は、管理用凝縮センサーにより測定される凝縮開始タイミング等が、除染管理用基準位置における凝縮開始タイミング等とほぼ等しい態様である構成とした場合は、例えば、管理用凝縮センサーで、除染管理用基準位置における凝縮開始タイミングを測定することが可能となる利点がある。
また、ここで、除染管理前工程が、管理用凝縮センサーの凝縮形成部及び/又は管理用凝縮検知装置を密閉室の室壁に接触状に付設するようにしてなる構成とした場合は、作業者が、管理用凝縮センサーのメンテナンス等を密閉室外から容易に行うことができることとなり、特に、管理用凝縮センサーを特定の除染管理用基準位置測定態様に設定する作業を迅速かつ簡易に行うことができる効果がある。
また、凝縮形成態様変更手段が、複数の透明板により構成された管理用凝縮センサーに係る凝縮形成部と、投光装置及び受光装置により構成された管理用凝縮センサーに係る凝縮検知手段とからなる構成とした場合は、透明板の間隔を変更するという簡易作業により、管理用凝縮センサーを好適に除染管理用基準位置測定態様に設定することができる利点がある。
また、本発明に係る凝縮センサーは、凝縮形成部の表面温度を変更する表面温度変更手段を備えた構成としたため、凝縮形成部の表面温度を高くして例えば凝縮開始タイミングを遅らせたり、凝縮形成部の表面温度を低くして例えば凝縮開始タイミングを早めたりすることができ、除染対象物表面の除染を行うにあたって精度良く対応できる利点がある。
また、上記構成にあって、表面温度変更手段により、凝縮形成部の表面温度を、除染対象物の表面温度以上とするようにした構成とした場合は、除染対象物表面よりも凝縮形成部の表面の方が凝縮しにくい環境、又はほぼ凝縮のしやすさが等しい環境となり、本発明に係る凝縮センサーに基づいて除染終了タイミングを判断することにより、除染対象物の表面は除染が完了していないのに除染を終了してしまう、ということを防ぐことができる効果が生まれる。
また、本発明に係る凝縮センサーは、一方向流の流速を変更する流速変更手段を備えた構成としたため、一方向流の流速を大きくして例えば凝縮開始タイミングを遅らせたり、一方向流の流速を小さくして例えば凝縮開始タイミングを早くしたりすることができ、除染対象物表面の除染を行うにあたって精度良く対応できる利点がある。
本発明に係る除染方法、及び当該除染方法に好適に用いられる凝縮センサー1,1a,1b,1c,1d,1eの実施例を、添付図面に従って説明する。
<第一実施例>
図1に示すように、アイソレーター50は、一方向流が形成されたクリーンルーム(図示省略)等に設置され、その室内空間51を無菌・無塵状態を維持して遮閉化することにより、局所清浄空間を実現しているものである。さらに詳述すると、アイソレーター50は、室内空間51を室外から気密的に遮断する装置筐体52を備えている。また、この装置筐体52は、室内空間51を外部から視認できるガラス窓54を備えている。また、装置筐体52には作業孔55が形成され、この作業孔55に手作業を可能とする作業グローブ56の基端部が密閉状に取り付けられている。かかる構成により、作業者が外から作業グローブ56に手を挿入して、ガラス窓54を介して室内空間51を確認しながら、作業グローブ56で室内空間51にあるワークWを扱う作業を行うことができる。なお、このワークWにより、本発明に係る除染対象物が構成される。
また、アイソレーター50の室内空間51には、装置筐体52との間で隙間を形成する内壁60が設けられ、装置筐体52と内壁60との隙間を周回路61としている。また、アイソレーター50内の上部には、送風機62が設けられ、この送風機62より送り出されたエアーが、フィルター63を介して清浄化されて室内空間51を上方から下方に流通している。そして、室内空間51を通過したエアーは、内壁60の下方に設けられた開口部64を通じで周回路61に進入し、周回路61内を上昇する。このように、アイソレーター50内の気流が一方向流となるようにして、気流の適正化が図られている。なお、このアイソレーター50により、本発明(請求項1)に係る除染室が構成される。
また、このアイソレーター50には、除染ガスとしての過酸化水素ガスを発生させ、この過酸化水素ガスを室内空間51に投入するガス投入装置53が接続されている。なお、本発明に係る除染方法は、アイソレーター50内に過酸化水素ガスを投入し、ワークW表面に当該過酸化水素ガスを凝縮させて、ワークW表面を除染するものである。
さらに、このアイソレーター50には、過酸化水素ガスの凝縮状態を把握することができる凝縮センサー1が取り付けられている。以下に、この凝縮センサー1を、図2等に従って説明する。
図2に示すように、凝縮センサー1は、投光装置4、受光装置7、及びこの投光装置4と受光装置7との間に間隔を置いて列設された複数のガラス板5(透明板)を備えている。そして、この投光装置4、受光装置7、及びガラス板5が室内空間51に配置されている。
前記投光装置4の一側面には、投光部9が配設されている。そして、この投光部9からは、近赤外領域のレーザ光Lが一方向に照射される。また、この投光装置4には、配線ケーブル17aを介して電源供給装置15が接続され、この電源供給装置15に設けられた操作盤(図示省略)を操作することにより、所望のタイミングでレーザ光Lが発振するようになっている。なお、レーザ光Lは、半導体レーザ光が好適であるが、他の構成であっても勿論良い。また、光源や波長も適宜選定することができる。
前記受光装置7の一側面には、受光部8が配設されている。この受光部8は、前記投光部9から照射されるレーザ光Lと対向する位置に配置されている。この受光装置7は、受光部8で受光したレーザ光の受光量に対応する電圧出力を発生し、配線ケーブル17bを介して接続された出力装置16の測定値表示部(図示省略)に測定値を表示する。本実施例では、測定値として透過光出力が測定される。なお、投光装置4、電源供給装置15、受光装置7、及び出力装置16は、公知品が好適に用いられる。
前記複数のガラス板5は、その表面に過酸化水素ガスが凝縮することとなるものであって、後述する保持ケース6に保持されながら、投光部9から発振されたレーザ光Lを板面のほぼ中央5a(図4参照)で受光できるよう間隔を置いて列設されている。さらに詳述すると、前記保持ケース6は、合成樹脂材料からなり、図3,4に示すように、上方のみが開口している。また、保持ケース6の内壁面のうち、対向する内壁面6b,6bには、鉛直方向に、保持溝6aがそれぞれ複数間隔を置いて設けられている。かかる構成にあって、複数のガラス板5が保持溝6aに沿って前記開口を介して挿入され、この保持溝6aによってガラス板5の両端縁が嵌着されることにより、ガラス板5が並列状に保持される。なお、保持ケース6は、床部6cを具備し、上方から挿入されたガラス板5の下縁は、この床部6cの上面と当接することにより、ガラス板5が担持されている。なお、ガラス板5とガラス板5との間隙は、開放されたガラス板5の辺部で構成される連通開口部14を介して、アイソレーター50の室内空間51と連通している。このような列設状態でレーザ光Lがガラス板5に照射されると、該レーザ光Lがガラス板5の板面に対してほぼ垂直に入射することとなる。
次に、かかる凝縮センサー1を用いた除染方法について説明する。
図5に示すように、投光装置4、受光装置7、及び保持ケース6を、アイソレーター50の床面に載置する。ここで、保持ケース6は、アイソレーター50の側壁に対して非接触状に配置する。なお、上述のように、保持ケース6は、ガラス板5を担持する床部6cを備えているため、保持ケース6に収容されるガラス板5は、アイソレーター50の内面50aと非接触な状態となる。
ここで、アイソレーター50の内面50aは、室内空間51の室内温度と比較して低温であることがわかっている。かかる状況にあって、上述のように、本発明に係る凝縮センサー1のガラス板5を、アイソレーター50の内面50aと非接触な状態とし、該内面50aとガラス板5との間に温度影響を低減させる役割を果たす温度不導間隙10を形成するようにしたため、当該内面50aの表面温度がガラス板5に伝わりにくい構成となる。さらに述べれば、ガラス板5と接触する室内雰囲気は、アイソレーター50の内面50aよりも温度が高いことがわかっているため、ガラス板5の表面は、アイソレーター50の内面50aよりも高温となる。換言すれば、ガラス板5の表面の方が、アイソレーター50の内面50aよりも過酸化水素ガスの凝縮が起こりにくい環境にある。
このようなセンサー設置条件の下、まず、過酸化水素ガスを室内空間51に投入する前に、非凝縮状態でのレーザ光Lの受光量を測定しておく。これは、後述する凝縮状態で測定した受光量と比較するためである。
そして次に、室内空間51に過酸化水素ガスを投入開始し、ワークWの除染を開始する。これと共に、連続的に又は間欠的に、投光装置4からレーザ光Lを照射して、出力装置16で表示される測定値に基づいて受光量をモニタリングする。
さらに過酸化水素ガスを投入し続けると、室内空間51が過酸化水素ガスにより飽和状態となり、凝縮センサー1の各ガラス板5上に過酸化水素ガスが凝縮し始める。ここで、ガラス板5上に形成された凝縮膜が原因となってレーザ光Lが散乱・吸収し、凝縮状態での受光量は、非凝縮状態での受光量よりも減少することとなる。すなわち、この受光量の経時変化に基づいて、ガラス板5表面における過酸化水素ガスの凝縮膜の有無を検出することが可能となる。
ここで、室内空間51に内在するワークWの表面(除染対象面)は、室内雰囲気と接触する一方、アイソレーター50の内面50aとは非接触であり、凝縮センサー1のガラス板5とほぼ同じ温度環境にある。したがって、凝縮センサー1のガラス板5上での凝縮開始タイミング等と、ワークW表面での凝縮開始タイミング等とが、ほぼ等しくなる。
これにより、凝縮センサー1が凝縮を検知すると、同様にワークWの表面でも凝縮が生じていると推定することができる。したがって、本発明に係る凝縮センサー1の検知結果に基づいて除染の終了タイミングを決定すれば、ワークWの表面でも十分に凝縮膜が形成されていることとなって、ワークW表面の除染が完了していないのに除染を終了してしまう、という問題を確実に解消することができる。
なお、アイソレーター50の床面の温度が所定の基準値より高い場合は、ワークWを、合成樹脂材料等からなる台の上に載置し、ワークWとアイソレーター50の内面50a(床面)とが接触しないようにしても良い。換言すれば、ワークWと該内面50aとの間に、温度不導間隙10を形成した構成としても良い。このように、ワークWを、アイソレーター50の内面50aに対して非接触状に配置することにより、当該内面50aの温度の影響をさらに低減することができる。
なお、本実施例に係るガラス板5により、本発明に適用される凝縮センサーの凝縮形成部が構成される。また、投光装置4、及び受光装置7により、凝縮検知手段が構成される。
<第二実施例>
次に、第二実施例に係る除染方法を、図6等に従って説明する。本除染方法も、アイソレーター50にワークWを内在させ、当該アイソレーター50内に過酸化水素ガスを投入し、該過酸化水素ガスを前記ワークWの表面で凝縮させて、当該ワークWの表面を除染する構成である。なお、第一実施例と同じ構成については、同じ符号を付すと共に、その説明を簡略する。なお、本実施例に係るアイソレーター50により、本発明に係る密閉室が構成される。
本除染方法は、まず、過酸化水素ガスを室内空間51に投入する前に、図6に示すように、選定用凝縮センサー1aを室内空間51に複数設置しておく。ここで、選定用凝縮センサー1aは、第一実施例に係る凝縮センサー1と同様の構成である。すなわち、図6に示すように、選定用凝縮センサー1aは、投光装置4、電源供給装置15、ガラス板5、ガラス板5が収容される保持ケース6、受光装置7、及び出力装置16を備えている。そして、投光装置4、ガラス板5、及び受光装置7が室内空間51内に配置される。本実施例にあっては、全部で五つの選定用凝縮センサー1aが室内空間51に配置されている。
なお、選定用凝縮センサー1aのガラス板5により、本発明に係る選定用凝縮センサーの凝縮形成部が構成される。また、選定用凝縮センサー1aの投光装置4及び受光装置7により、本発明に係る選定用凝縮センサーの凝縮検知手段が構成される。
ここで、各選定用凝縮センサー1aの保持ケース6は、室内空間51の様々な位置に配置することができる。特に、ワークWの周囲や、あらかじめ予想できる過酸化水素ガスが行き渡り難い位置に配置することが好ましい。
選定用凝縮センサー1aを配置した後は、それぞれ非凝縮状態でのレーザ光Lの受光量を測定しておく。これは、後述する凝縮状態で測定した受光量と比較するためである。
そして、過酸化水素ガスの投入を開始する。この過酸化水素ガスの投入は、ワークWの除染を目的とするものではなく、室内空間51で凝縮し難い位置を特定するためのものである。そして、このガス投入と共に、各投光装置4からレーザ光Lを照射して、受光装置7が受光するレーザ光Lの受光量を、同時に、モニタリングし始める。
そして、過酸化水素ガスの投入を継続すると、各選定用凝縮センサー1aで過酸化水素ガスの凝縮が検知され始める。ここで、各選定用凝縮センサー1aにあっては、ガラス板5を具備する保持ケース6の配置が異なるため、その周囲の温度環境等もそれぞれ異なってくる。したがって、これに伴い、選定用凝縮センサー1aごとに、凝縮が実際に形成される凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間等が異なってくる。例えば、過酸化水素ガスが最も行き渡りにくい位置に配置された選定用凝縮センサー1aは、検知される所定時間内での凝縮量は他のセンサー1aに比べて最も少なくなる。
そして、すべての選定用凝縮センサー1aで凝縮が検知されたところで、所定時間での凝縮量が最も少なかった選定用凝縮センサー1aを一つ選定する。そして、この選定用凝縮センサー1aが配置されていた位置を、除染管理用基準位置とする。なお、除染管理用基準位置を選定する際にあっては、各センサー設置位置の凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間等を考慮することができる。
次に、図7に示すように、選定用凝縮センサー1aと同じ構成の管理用凝縮センサー1bを、アイソレーター50に配置する。具体的には、投光装置4、電源供給装置15、受光装置7、出力装置16、ガラス板5、及びガラス板5を保持する保持ケース6を備え、この投光装置4、受光装置7、及び保持ケース6が、センサー収納用筐体20の内部空間に載置される。さらに詳述すると、このセンサー収納用筐体20は、一側面に、内外を連通させる接続口24を備えている。そして、装置筐体52の所定位置に開口した連通口19に、該接続口24を対向させて、センサー収納用筐体20を装置筐体52に側方から気密状に外接するようにしている。これにより、装置筐体52とセンサー収納用筐体20とが一体化し、室内空間51とセンサー収納用筐体20内とが連通した状態となり、当該センサー収納用筐体20内が室内空間51に含まれることとなる。すなわち、管理用凝縮センサー1bは、本発明に係る密閉室内に設置されることとなる。
また、センサー収納用筐体20には、内外を連通させる作業開口21も設けられている。また、この作業開口21には、支軸23を中心に開閉する、室内側にシール部材22aが配設された開閉扉22が設けられている。
なお、上述の管理用凝縮センサー1bのガラス板5により、本発明に係る管理用凝縮センサーの凝縮形成部が構成される。また、管理用凝縮センサー1bの投光装置4及び受光装置7により、本発明に係る管理用凝縮センサーの凝縮検知手段が構成される。また、この管理用凝縮センサー1bの投光装置4及び受光装置7により、本発明に係る管理用凝縮検知装置が構成される。
次に、管理用凝縮センサー1bが検知した所定時間内での凝縮量を、選定した選定用凝縮センサー1aが検知した所定時間内での凝縮量とほぼ等しくする。例えば、当該選定用凝縮センサー1aが検知した、過酸化水素ガス投入時から所定時間までの凝縮量が、凝縮膜の膜厚Tmmとして検知されると、管理用凝縮センサー1bが上記(図7参照)の設置環境で、過酸化水素ガス投入時から所定時間までの凝縮量が膜厚Tmmとして検知されるようにする。
具体的には、上記構成の管理用凝縮センサー1bのガラス板5間隔を、適宜変更することにより、所定時間内での凝縮量を多くしたり少なくしたりすることができる。さらに詳述すると、各ガラス板5は、図3に示すように、保持ケース6の保持溝6aに沿って挿入されて保持されているところ、当該保持ケース6に収容されるガラス板5の数を、その抜き差しにより、増やしたり減らしたりすることができる。換言すれば、使用する保持溝6aを適宜選択して、ガラス板5の挿入位置を変更することにより、保持されるガラス板5の間隔幅を変更することができる。ここで、例えば、ガラス板5の間隔が広がるように、間隔を置いてガラス板5を挿入・保持させると、ガラス板5間に過酸化水素ガスが進入しやすくなって、ガラス板5上で過酸化水素ガスが凝縮しやすくなり、所定時間内での凝縮量を多くすることができる。これに対し、ガラス板5の間隔を狭めると、ガラス板5間に過酸化水素ガスが進入しにくくなって、ガラス板5上で過酸化水素ガスが凝縮しにくくなり、所定時間内での凝縮量を少なくすることができる。すなわち、適宜の実験により、管理用凝縮センサー1bが検知する凝縮量を、除染管理用基準位置における所定時間内での凝縮量に一致させることができる。そして、各凝縮量が一致した管理用凝縮センサー1bの態様を本発明に係る除染管理用基準位置測定態様とする。なお、これまでに述べた管理用凝縮センサー1bを除染管理用基準位置測定態様とする調整は、センサー収納用筐体20の開閉扉22を開放し、作業開口21を介して効率良く行うことができる。ここで、この複数の透明板5からなる凝縮形成部と、投光装置4及び受光装置7を具備する凝縮検知手段により、本発明に係る凝縮形成態様変更手段が構成される。
次に、管理用凝縮センサー1bを除染管理用基準位置測定態様に設定した後、アイソレーター50内を気密化し、ワークWの除染を目的とする過酸化水素ガスの投入を開始する。そして、アイソレーター50内で過酸化水素水が飽和し、上記態様に設定済みの管理用凝縮センサー1bが所定の凝縮量を検知すると、ワークWの表面にも所定の凝縮量以上の凝縮膜が形成したと判断する。これは、管理用凝縮センサー1bが検知する所定時間内での凝縮量は、除染管理用基準位置における所定時間内での凝縮量とほぼ等しく調整されているため、当該凝縮量は、アイソレーター50内で最も少ない凝縮量となる。すなわち、管理用凝縮センサー1bが所定量の凝縮量を検知したときには、当該アイソレーター50のワークW表面にあっては、既に少なくともそれ以上の凝縮量の凝縮膜が形成されていると推定できる。そして、この計測された凝縮量に基づいて除染状況を管理する。ここで、除染状況を管理することは、凝縮開始タイミング、所定時間内での凝縮量、又は凝縮の持続時間等を計測して、その計測値により過酸化水素ガスを制御することが例示される。また、管理用凝縮センサー1bによる計測値に従ってアイソレーター50内の湿度を変更、又はアイソレーター50内の温度を変更しても良い。なお、過酸化水素ガスを制御する構成は、例えば、過酸化水素ガスの投入量を調整することが挙げられる。
なお、管理用凝縮センサー1bの計測値に基づいて除染状況を管理する工程により、本発明に係る除染工程が構成される。また、第二実施例に係る、複数の選定用凝縮センサー1aを室内空間51に配置してから、除染管理用基準位置を特定するまでの工程により、本発明に係る除染管理前工程が構成される。
ところで、管理用凝縮センサー1bの配置時期は、除染管理前工程のなかで特に限定されない。例えば、複数の選定用凝縮センサー1aを配置する際に、管理用凝縮センサー1bを配置しても良い。また、作業効率を向上すべく、センサー収納用筐体20を備えた構成を説明したが、かかる構成に代えて、室内空間51に管理用凝縮センサー1bを配置し、別途設けた開口部から管理用凝縮センサー1bを設定するようにしても良い。すなわち、管理用凝縮センサー1bの設置位置としては、室内空間51と連通した空間であれば良く、アイソレーター50やセンサー収納用筐体20の形状等に限定されるものではない。
また、上記構成は、選定用凝縮センサー1aが測定した所定時間内での凝縮量に基づいて除染管理用基準位置を特定するものであるが、種々の実験により蓄積された実験データにより、除染管理前工程実行時に、あらかじめ除染管理用基準位置が定められている場合もある。
また、上記管理用凝縮センサー1bの構成に代えて、以下のような管理用凝縮センサーとしても良い。この管理用凝縮センサーは、公知の凝縮センサー(特表2003−528310号公報)に係るガラス板に、ガラス板表面の温度を測定する温度センサーと、ガラス板の表面温度を調整する温度変更装置を接続したものである。さらに詳述すると、ガラス板面上に、シリコンラバヒーターとペルチェ素子を内蔵する冷熱部とが装着されている。また、シリコンラバヒーターには、シリコンラバヒーター用電源部が接続されている。また、冷熱部にも、冷熱部用電源部が接続されている。なお、温度変更装置は、シリコンラバヒーター、冷熱部、シリコンラバヒーター用電源部、及び冷熱部用電源部により構成される。また、ガラス板面上には、温度測定部が装着されている。また、温度測定部には、電源部が接続されている。なお、温度センサーは、熱電対を用いた接触式の市販品が好適に用いられ、温度測定部、及び電源部により構成される。
かかる構成により、ガラス板の表面温度を測定すると共に、その表面温度を確認しながら適宜温度調整することができるようになっている。そして、ガラス板の表面温度を高くするほど、当該ガラス板での過酸化水素ガスの凝縮は起こりにくくなり、所定時間内での凝縮量を少なくすることができる。一方、ガラス板の表面温度を低くするほど、当該ガラス板での過酸化水素ガスの凝縮は生じやすくなり、所定時間内での凝縮量を多くすることができる。したがって、かかる構成により、本発明の凝縮形成態様変更手段を構成することができる。
ここで、この従来構成にかかる凝縮センサーを用いた管理用凝縮センサーのガラス板は、外気と接触するセンサー収納用筐体の壁部に当接することとなる。したがって、室内空間に比べて低温化しやすい前記センサー収納用筐体の壁部に係る表面温度の影響を受けて低温化してしまうことが考えられる。しかし、本構成のガラス板は、温度変更装置により、適正な凝縮量を測定することができる表面温度に設定されるため、低温化による問題は招来しない。なお、変形例として、投光装置及び受光装置が前記センサー収納用筐体の壁部に接触状に付設される構成としても良い。かかる構成により、作業開口を介して装置のメンテナンスが容易となる利点がある。
なお、本実施例に係る管理用凝縮センサーのガラス板により、本発明に係る管理用凝縮センサーの凝縮形成部が構成される。また、本実施例に係る投光装置、及び受光装置により、本発明に係る管理用凝縮検知装置が構成される。また、上述した、ガラス板及び/又は投光装置等をセンサー収納用筐体に接触状に付設する構成により、本発明に係る除染管理前工程が構成される。
<第三実施例>
また、図8に示す凝縮センサー1cが提案される。この凝縮センサー1cは、投光装置4と、受光装置7と、投光装置4と受光装置7の間に配置された複数のガラス板5等を備えると共に、前記ガラス板5に、温度センサー31と温度変更装置30とが接続された構成である。具体的には、図9に示すように、間隔を置いて列設されるガラス板5間に、シリコンラバヒーター30aと、冷熱部30bとが挟持されている。この図9にあっては、図中上側にシリコンラバヒーター30aが、下側に冷熱部30bがそれぞれ配設されている。この配設態様は、適宜変更可能である。例えば、シリコンラバヒーター30aを、床部6cとガラス板5との間に敷設する構成としても良い。
また、複数のガラス板5のうち、最外位置にあるガラス板5面上に、温度測定部31aが装着されている。
この凝縮センサー1cにあっては、ガラス板5の間隔を変更して、所定時間内での凝縮量を調整しても良いし、ガラス板5の表面温度を変更して、所定時間内での凝縮量を調整しても良く、適宜選択できる。
なお、かかる凝縮センサー1cを用いた除染方法としては、上述のように管理用凝縮センサーとして用いる構成のほか、以下のような除染方法のなかで好適に用いることができる。
本実施例に係る除染方法は、アイソレーター50に内在するワークW表面における所定時間内での凝縮量が種々の実験等から明らかとなっており、これら既知の資料データに基づいて、凝縮センサー1cが検知する所定時間内での凝縮量を、センサー配置前にあらかじめ設定しておく構成である。したがって、かかる除染方法は、上述の選定用凝縮センサーを用いない構成であって、凝縮センサー1cを、あらかじめ所望の凝縮量を検知する態様に設定しておいてから、アイソレーター50内に、単独で配置する構成である。なお、本実施例に係る構成も、本発明の凝縮形成態様変更手段を構成することができる。
かかる構成にあって、凝縮量について設定済みの凝縮センサー1cを配置した後、ワークWを除染する目的で過酸化水素ガスを投入し、当該凝縮センサー1cが所定量の凝縮量を検知すると、ワークW表面で過酸化水素ガスがそれとほぼ等しい凝縮量の凝縮膜が形成したと判断することができる。
なお、本実施例に係る凝縮センサー1cのガラス板5により、本発明に係る凝縮形成部が構成される。また、本実施例に係る投光装置4、及び受光装置7により、本発明に係る凝縮検知手段が構成される。また、本実施例に係る温度センサー31により、本発明に係る凝縮形成部用温度測定手段が構成される。また、本実施例に係る温度変更装置30により、本発明に係る表面温度変更手段が構成される。
また、凝縮センサー1cに代えて、図10に示すように、ワークWの表面温度を測定するワーク用温度センサー32を備えた凝縮センサー1dが提案される。さらに詳述すると、この凝縮センサー1dは、ガラス板5に接続される温度センサー31、ガラス板5に接続される温度変更装置30を備えると共に、ワークWに接続されて、ワークWの表面温度を測定するワーク用温度センサー32を別途備えている。そして、これら温度センサー31、温度変更装置30、及びワーク用温度センサー32が、制御装置33と電気的に接続されている。
ここで、制御装置33は、図11に示すように、CPU34を備えている。そして、このCPU34には、記憶装置ROM35と記憶装置RAM36とが接続されている。さらに詳述すると、記憶装置ROM35は、アドレスを指定する情報を一方的に伝えるアドレスバス(図示省略)を介してCPU34に接続している。また、記憶装置RAM36は、データのやり取りを行うデータバス(図示省略)を介してCPU34に接続している。ここで、記憶装置ROM35には、演算処理に用いる制御プログラム等の固定データが記憶保持されている。一方、記憶装置RAM36には、記憶エリア、ソフトタイマを構成するレジスタ領域、及びワークエリア等が設けられている。
そして、かかる構成にあって、温度センサー31、及びワーク用温度センサー32は、それぞれ測定した温度のデータを制御装置33に随時送信する。そして、当該データを受信した制御装置33は、記憶装置RAMに一旦記憶保持する。また、制御装置33は、温度変更装置30に、ガラス板5を所定温度にする制御指令信号を所定タイミングで送信する。そして、かかる信号を受信した温度変更装置30は、当該信号に従ってガラス板5を所定温度とする。
具体的には、制御装置33は、温度センサー31により送信された温度データと、ワーク用温度センサー32により送信された温度データとを比較し、ガラス板5の表面温度が、ワークWの表面温度よりも低いと判定した場合に、温度変更装置30に、ガラス板5の表面温度をワークWの表面温度とする制御指令信号を送信する制御内容を具備している。
かかる構成にあって、ガラス板5の表面温度がワークWの表面温度と等しくなると、ガラス板5表面とワークW表面の凝縮環境がほぼ等しくなる。すなわち、ガラス板5上における所定時間での凝縮量と、ワークWの表面における所定時間での凝縮量とがほぼ一致することとなる。したがって、本発明に係る凝縮センサー1dで凝縮を検知した場合に、その凝縮量にほぼ等しい凝縮膜がワークWの表面で形成されたと判断することができる。
なお、制御装置33の制御内容を、温度変更装置30に、ガラス板5の表面温度をワークWの表面温度以上とするような制御指令信号を送信する構成としても良い。かかる構成とすることにより、ワークW表面よりも、ガラス板5表面の方が凝縮が起こりにくくなるため、凝縮センサー1dで凝縮を検知した場合に、そのときには既にワークWの表面で凝縮膜が形成されていると判断することができると共に、制御技術が前記構成に比して簡易なものとなる。
なお、前記ワーク用温度センサー32により、本発明に係る除染対象物用温度測定手段が構成される。また、制御装置33により、本発明に係る温度変更指令制御手段が構成される。
凝縮センサー1eは、図12,13に示すように、投光装置4、電源供給装置15、受光装置7、出力装置16、複数のガラス板5、該ガラス板5を保持する保持ケース6、及び多数の空気導入孔47が設けられた通気性筐体45を備えている。そして、投光装置4、ガラス板5、保持ケース6、及び受光装置7が通気性筐体45内に収納され、さらにこの通気性筐体45が、アイソレーター50内に配置されている。なお、当該アイソレーター50には、ワークWも内在している。
次に、通気性筐体45について詳述する。
この通気性筐体45は、図13,14に示すように、底部40を備え、この底部40上に、投光装置4、受光装置7、及びガラス板5が収容された保持ケース6が載置されている。なお、この保持ケース6の床部6cには、上下方向に貫通する貫通孔66がガラス板5の間にそれぞれ位置するように設けられている。
また、通気性筐体45は、図14に示すように、下面から下方に突出する脚部48,48を備え、該脚部48により、アイソレーター50の床面に載置されている。また、通気性筐体45の側面には、配線ケーブル17a,17bが挿通されるケーブル孔46,46が開口している。
なお、本実施例にあっては、通気性筐体45は、いわゆるSUSパンチング板を筐体状に成形加工して構成されている。したがって、通気性筐体45の筐壁45aには、アイソレーター50の室内空間51と当該通気性筐体45内を連通させる空気導入孔47がほぼ全域に形成されることとなる。
さらに、図14に示すように、通気性筐体45の筐壁45aのうち、天井部39には、内外を連通させる連通口41aが開口している。この連通口41aは、前記空気導入孔47よりも径大としている。そして、この連通口41aに、外筒43の下端が固着されている。この外筒43の内径は、連通口41aの内径にほぼ等しくしている。そして、この外筒43の上端により、排気孔41が構成されるようにしている。
また、前記外筒43内には、送風ファン44が配設されている。具体的には、送風ファン44は、外筒43内に配設されたファン42と、該ファン42を回動させるための駆動源となるモーター49とで構成されている。
かかる構成にあって、モーター49を駆動させると、外筒43内でファン42が回動し、過酸化水素ガスを含む室内空間51の空気が、空気導入孔47を介して通気性筐体45内に導入される。さらに、通気性筐体45内に導入された空気は、外筒43内に吸引されて、排気孔41を介して、アイソレーター50内に放出されることとなる。これにより、通気性筐体45内に、過酸化水素ガスを含む一方向流が形成されることとなる。さらに言えば、ガラス板5周囲の空気が、保持ケース6の貫通孔66から連通開口部14方向へ流動して、当該ガラス板5上に一方向流が形成されることとなる。
また、通気性筐体45内には、前記一方向流の流速(m/s)を測定する流速センサー38が設けられている。この流速センサーは、市販品が好適に用いられる。そして、この流速センサー38は、制御装置33aに電気的に接続されている。なお、この制御装置33aには、前記モーター49も電気的に接続されている。
かかる構成にあって、制御装置33aは、CPU(図示省略)、記憶装置ROM(図示省略)、及び記憶装置RAM(図示省略)が接続されている。そして、かかる構成にあって、流速センサー38は、測定した流速のデータを制御装置33aに随時送信する。そして、当該データを受信した制御装置33aは、記憶装置RAMに一旦記憶保持する。また、制御装置33aは、モーター49に、所定回転速度でファン42を回転させる制御指令信号を所定タイミングで送信する。そして、かかる信号を受信したモーター49は、当該信号に従ってファン42を所定回転速度で回転させる。
かかる構成にあっては、ファン42の回転速度を大きくして、一方向流の流速を大きくするほど、ガラス板5で過酸化水素ガスが凝縮しにくくなり、当該センサー1dが検知する所定時間内での凝縮量を少なくすることができる。一方、ファン42の回転速度を小さくして、一方向流の流速を小さくするほど、ガラス板5で過酸化水素ガスは凝縮しやすくなり、当該センサー1dが検知する所定時間内での凝縮量を多くすることができる。
したがって、凝縮センサー1dは、上述の管理用凝縮センサーとして用いることができると共に、アイソレーター50に内在するワークW表面における凝縮の詳細な態様が明らかとなっている場合に、あらかじめその態様に基づいて設定してから単独で配置する凝縮センサーとして用いることができる。なお、かかる構成も、本発明に係る凝縮形成態様変更手段を構成することができる。
なお、本実施例に係る送風ファン44により、本発明に係る送風手段が構成される。また、本実施例に係るモーター49により、本発明に係る流速変更手段が構成される。また、本実施例に係る流速センサー38により、本発明に係る流速測定手段が構成される。また、本実施例に係る制御装置33aにより、本発明に係る流速変更指令制御手段が構成される。また、本実施例にあって、流速センサー38を用いずに、モーター49の回転数を制御して流速を管理する構成としても良い。