JP6870873B2 - インキュベータ - Google Patents

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Description

本発明は、インキュベータに関するものであり、特に培養に適した温度及び高湿度状態を適正に制御し、且つ、培養室の内部の無菌環境を高度に維持できるインキュベータに関するものである。
近年の再生医療分野の発展に伴い、インキュベータを使用して細胞を培養することが広く行われている。細胞の培養には、それぞれの細胞に適した培養環境を整備する必要があり、インキュベータ内部の温度条件、湿度条件、或いは必要によりCOガス濃度、Nガス濃度などを調整することが行われている。
インキュベータ内部の温度条件を調整するには、一般にインキュベータの室内、扉、棚板などの壁部に温水ヒータ或いは電気ヒータなどを内蔵して、壁面からの輻射熱による室内温度調整が行われている。また、インキュベータ内部の湿度条件を調整するには、一般にインキュベータの内部に加湿皿を設けて水を貯留し、この貯留水の自然蒸発によって室内湿度調整が行われている。一方、インキュベータ内部のCOガス濃度やNガス濃度を調整するには、一般にCOガス濃度センサやNガス濃度センサ、及び、COガスボンベやNガスボンベからの供給経路を備えてCOガス濃度やNガス濃度の調整が行われている。また、これらに加え室内ファンによる空気の撹拌を併用して均一化を図る場合もある。
しかし、壁面からの輻射熱や空気の撹拌による室内温度調整と室内湿度調整では室内の温度・湿度が不均一になりやすい。特に、インキュベータの内部は湿度が高いので、温度・湿度が不均一な場合には部分的な結露が生じやすいという問題があった。また、輻射熱と室内空気の撹拌だけでは培養液の入ったシャーレの内部を所定の温度に昇温するのに長い時間がかかるという問題があった。
一方、これまでのインキュベータでは、GMP(Good Manufacturing Practice)に即したグレードA(厚生労働省・無菌医薬品製造指針)を保証することができなかった。また、内部をグレードAに滅菌しても、これを維持するために空気圧を外部環境よりも高く維持することができなかった。更に、インキュベータの内部の貯留水の蒸発に伴い外部から水を供給するが、その場合に外部から供給された水により内部の無菌環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
そこで、下記特許文献1のインキュベータにおいては、室内ヒータ、扉ヒータ、ステージヒータのオンオフによる一般的な温度調整を行い、内部の湿度が上昇し結露が生じやすくなった場合に加湿皿の露出される水面の面積を微調整して湿度調整の精度を向上することが提案されている。
また、本発明者らは、先に下記特許文献2に示すインキュベータを提案した。このインキュベータは、培養室の内部の温度・湿度を均一に維持することができ、筐体の内部に結露が生じることがなく、また、被培養物の入ったシャーレの内部を短時間で所定の温度に昇温できるものである。
特開2008−005759号公報 特願2015−206854号公報 特開第3809176号公報
ところで、近年の細胞培養の条件においては、高湿度、特に関係湿度(相対湿度に同じ)が95%RH〜100%RHの範囲内に精度よく制御することが要求される。このような高湿度の環境においては、室内に結露がより発生し易く、結露が発生した場合には細胞の培養に深刻な打撃を与えることになる。そこで、このような高湿度の環境においては、室内の湿度を正確に把握すると共に、その湿度状態に対応して室内の温度・湿度を安定に維持して室内における結露の発生を防止しなければならない。
これに対して、上記特許文献1のインキュベータにおいては、通常の湿度状態、即ち関係湿度が90%RH〜95%RH程度の制御範囲において部分的な結露の発生は軽減できるが、依然室内の温度・湿度が不均一になりやすいという問題があった。従って、細胞の培養により好ましいとして要求される関係湿度が95%RH〜100%RHの範囲内においては、室内の温度・湿度を安定に維持することができず結露の発生を防止することができない。
また、上記特許文献2のインキュベータにおいても、室内の温度・湿度を安定に維持する精度は高いが、関係湿度が95%RH〜100%RHの範囲内において、室内の湿度を更に精度よく安定に維持することが要求される。その理由として、関係湿度が95%RH〜100%RHの範囲内において、関係湿度を精度よく検知できる湿度センサが存在しないという問題があった。
一方、本発明者らは、以前に無菌作業室の除染条件をモニターするために上記特許文献3の凝縮センサ及び凝縮膜管理方法を提案した。この凝縮センサは、除染剤である過酸化水素水の凝縮状態を検知するものであり湿度の検知を目的とする湿度センサではない。しかし、関係湿度が95%RH〜100%RHの範囲内という凝縮の生じうる環境において、その状態を精度よく検知することができるのではないかと考えた。
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、培養室の内部の乾燥を防ぎ、且つ、高湿度状態を検知すると共に、検知した湿度状態が設定条件よりも低下した際に正確な少量の加湿を行うことにより、温度・湿度を均一に維持することができ、筐体の内部に結露が生じることのないインキュベータを提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、本発明者らが先に開発した凝縮センサを利用すると共に、少量の加湿を正確に行うことのできる加湿手段を検討することにより、関係湿度が95%RH〜100%RHの範囲内で正確に制御できることを見出して本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係るインキュベータ(100)は、請求項1の記載によれば、
断熱扉(10a)と断熱壁(10b〜10f)からなる筐体(10)と、
前記筐体の内部に区画された培養室(20)と、
前記培養室の内部に前記筐体の内部の空気を循環させる循環手段(30)と、
前記筐体の内部の温度を検知する温度センサ(15a)を具備して前記筐体の内部の空気を加温するための加温手段(40)と、
前記筐体の内部の湿度を検知する湿度センサ(15b)と当該筐体の内部の水蒸気が結露した状態を検知する凝縮検知手段(60)とを具備して前記筐体の内部の空気を加湿するための加湿手段(50)とを有し、
前記筐体の内部の水蒸気が結露しない状態においては、前記湿度センサの出力により前記加湿手段を制御し、
前記筐体の内部の水蒸気が結露する状態においては、前記凝縮検知手段の出力により前記加湿手段を制御することを特徴とする。
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載のインキュベータであって、
前記循環手段は、前記筐体の内部の空気を前記培養室に供給する循環ファン(31)と、当該循環ファンから供給される空気を濾過するフィルタ(32)と、当該フィルタを通過した空気を整流する整流部材(33)とを備え、
前記循環ファン、フィルタ及び整流部材を介して前記培養室に供給される空気は、当該培養室の内部を略水平に流れる一方向流(AF1)の空気を形成することを特徴とする。
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載のインキュベータであって、
前記凝縮検知手段は、投光装置(62)と、受光装置(63)と、凝縮形成部(61)とを備え、
前記投光装置から前記受光装置に至る光路には、これに垂直な方向に前記凝縮形成部が具備する光透過性の凝縮形成板(65)の板面を配置し、
当該凝縮形成板の表面に凝縮した凝縮膜の膜厚でもって、前記筐体の内部の水蒸気が結露した状態を検知することを特徴とする。
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のインキュベータであって、
前記加湿手段は、蒸発皿と、当該蒸発皿に水を供給する給水手段と、前記蒸発皿及びこれに供給された水の重量を検知する秤量手段とを備え、
制御手段を有し、当該制御手段は、前記凝縮検知手段による前記凝縮膜の膜厚が所定の下限値において、前記給水手段を作動して前記蒸発皿の内部に所定量の水を供給するように作動し、
前記凝縮検知手段による前記凝縮膜の膜厚が所定の上限値において、前記給水手段から前記蒸発皿の内部への給水を停止するように作動して、
前記筐体の内部の関係湿度を95%RH〜100%RHの範囲内で維持するように制御することを特徴とする。
上記請求項1の構成によれば、本発明に係るインキュベータは、筐体と培養室と循環手段と加温手段と加湿手段と凝縮検知手段とを有している。筐体は、断熱扉と断熱壁からなる。培養室は、筐体の内部に区画されている。循環手段は、培養室の内部に筐体の内部の空気を循環させる。加温手段は、筐体の内部の温度を検知する温度センサを具備して筐体の内部の空気を加温する。加湿手段は、筐体の内部の湿度を検知する湿度センサと当該筐体の内部の水蒸気が結露した状態を検知する凝縮検知手段とを具備して筐体の内部の空気を加湿する。
これらのことから、筐体の内部の空気は、循環手段により筐体の内部とその内部に区画された培養室の内部を循環する。この循環の際に、筐体の内部の空気は加温手段によって所定温度に加熱され、また、加湿手段によって加湿される。また、培養室の内部の高湿度状態を凝縮検知手段により検知することができる。更に、検知した湿度状態が設定条件よりも低下した際には、加湿手段により正確な少量の加湿を行うことができる。よって、上記請求項1の構成によれば、培養室の内部の温度・湿度を均一に維持することができ、筐体の内部の乾燥を防ぎ、且つ、結露が生じることがない。
また、上記請求項4の構成によれば、循環手段は、循環ファンとフィルタと整流部材とを備えている。循環ファンは、筐体の内部の空気を培養室に供給する。フィルタは、循環ファンから供給される空気を濾過する。整流部材は、フィルタを通過した空気を整流する。このようにして、循環ファン、フィルタ及び整流部材を介して培養室に供給される空気は、当該培養室の内部を略水平に流れる一方向流(いわゆる層流)の空気を形成する。このことにより、培養室に載置された培養物を充填したシャーレに設定温度・設定湿度の空気が常時供給される。よって、上記請求項4の構成によれば、被培養物の入ったシャーレの内部を短時間で所定の温度及び湿度に維持することができ、上記請求項1〜3と同様の効果をより一層発揮することができる。
また、上記請求項3の構成によれば、凝縮検知手段は、投光装置と受光装置と凝縮形成部とを備えている。また、投光装置から受光装置に至る光路には、これに垂直な方向に凝縮形成部が具備する光透過性の凝縮形成板の板面が配置されている。このことにより、これらの凝縮形成板の表面に凝縮した凝縮膜の膜厚でもって、筐体の内部の水蒸気が結露した状態を検知して高湿度状態を把握することができる。よって、上記請求項3の構成によれば、上記請求項1又は2と同様の効果をより一層発揮することができる。
また、上記請求項2の構成によれば、本発明に係るインキュベータは、加湿手段は、蒸発皿と、当該蒸発皿に水を供給する給水手段と、蒸発皿及びこれに供給された水の重量を検知する秤量手段とを備えている。更に、本発明に係るインキュベータは、制御手段を有している。この制御手段は、凝縮検知手段による凝縮膜の膜厚が所定の下限値においては、給水手段を作動して蒸発皿の内部に所定量の水を供給するように作動する。また、凝縮検知手段による凝縮膜の膜厚が所定の上限値においては、給水手段から蒸発皿の内部への給水を停止するように作動する。このことにより、筐体の内部の関係湿度は、95%RH〜100%RHの範囲内で維持される。よって、上記請求項2の構成によれば、上記請求項1と同様の効果をより一層発揮することができる。
このように、本発明においては、培養室の内部の乾燥を防ぎ、且つ、高湿度状態を検知すると共に、検知した湿度状態が設定条件よりも低下した際に正確な少量の加湿を行うことにより、温度・湿度を均一に維持することができ、筐体の内部に結露が生じることのないインキュベータを提供することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
本実施形態に係るインキュベータの内部を側面から見た断面図である。 図1に示すインキュベータの内部を上面から見た断面図である。 図1に示すインキュベータの内部を正面から見た断面図である。 図1に示すインキュベータにおいて、整流板の他の構成を示す部分断面図である。 図3に示すインキュベータが有する凝縮センサを示す概略図である。 図5の凝縮センサが有する凝縮形成板の正面図である。 本実施形態に係るインキュベータにおける温度、湿度、凝縮センサの出力を示すグラフである。
以下、本発明に係るインキュベータの一実施形態を図面に従って説明する。図1は、本発明に係るインキュベータの一実施形態の内部を側面から見た断面図である。また、図2は、このインキュベータの内部を上面から見た断面図であり、図3は、このインキュベータの内部を正面から見た断面図である。図1〜3において、インキュベータ100は、外壁を形成する筐体10、その内部に区画された培養室20、空気を循環する循環手段30、空気を加熱する加温手段40、空気を加湿する加湿手段50、及び、凝縮検知手段としての凝縮センサ60から構成されている。
筐体10は、その外壁と内壁をステンレス製金属板で覆われ、外壁と内壁の間には断熱材が充填されて断熱壁となっている。また、筐体10の正面壁部は、開閉可能な断熱扉10aとなっているが、閉鎖時には外部環境とは気密的に遮蔽され内部の無菌環境を維持することができる。また、筐体10の上面壁部10bには、筐体10の内部の熱を放熱する2つのヒートシンク11a、11bが設置されている。
筐体10の上面壁部10b及び底面壁部10cには、筐体10の内部の空気圧を調整するための給気手段12及び排気手段13が設けられている。筐体10の上面壁部10bに設けられた給気手段12は、給気管12aとその管路に設けられた電磁弁12b、ディスクフィルタ12c及び給気ファン12dとからなり、必要により筐体10の外部の空気を筐体10の内部に供給する。
一方、筐体10の底面壁部10cに設けられた排気手段13は、排気管13aとその管路に設けられた電磁弁13b及びディスクフィルタ13cとからなり、必要により筐体10の内部の空気を筐体10の外部に排気する。なお、本実施形態においては、給気手段12及び排気手段13を通じて、筐体10の内部を除染する際の除染ガスの給排気及びエアレーションを行うことができる。なお、筐体10の底面壁部10cの上部側(後述の下部空間17)には、加湿手段50及び凝縮センサ60が設けられているが、これらについては後述する。
筐体10の背面壁部10dには、筐体10の内部に細胞の培養に必要なCOガスを供給するためのCOガス供給手段14が設けられている。COガス供給手段14は、供給管14aとその管路に設けられた電磁弁14b及びCOガスボンベ(図示せず)とからなり、必要により筐体10の内部にCOガスを供給する。また、筐体10の右側面壁部10eには、筐体10の内部の温度、湿度、COガス濃度を検知する温度センサ15a、湿度センサ15b及びCOガス濃度センサ15cが設けられている。これらのセンサの作用については後述する。
培養室20は、筐体10の内部空間の一部を区画して構成されており、筐体10の内部空間のうち培養室20以外の部分は、上部空間16、下部空間17及び正面空間18及び背面空間19を構成する(図1参照)。具体的には、培養室20は、筐体10の右側面壁部10eと左側面壁部10fの間に設けられた上部隔壁21と下部隔壁22により、筐体10の内部空間の上下方向中央部に区画されている(図3参照)。
このことにより、筐体10の内部空間のうち培養室20の上部側(上部隔壁21と上面壁部10bとの間)が上部空間16を構成する。また、筐体10の内部空間のうち培養室20の下部側(下部隔壁22と底面壁部10cとの間)が下部空間17を構成する。また、筐体10の内部空間のうち培養室20の正面側(上下部隔壁21、22の正面側端部21a、22aと断熱扉10aとの間)が正面空間18を構成する。また、筐体10の内部空間のうち培養室20の背面側(上下部隔壁21、22の背面側端部21b、22bと背面壁部10dとの間)が背面空間19を構成する。
このような内部空間の構成において、培養室20と筐体10の上部空間16とは、上部隔壁21によって隔てられている。また、培養室20と筐体10の下部空間17とは、下部隔壁22によって隔てられている。また、培養室20と筐体10の正面空間18とは、隔壁がなく解放されている。一方、培養室20と筐体10の背面空間19とは、循環手段30(後述する)によって隔てられている。なお、これらの空間を流れる空気の流れについては後述する。
また、培養室20の内部空間には、水平に設置された3枚の棚板23、24、25によって上下3段の空間に隔てられている(図1及び図3参照)。これらの棚板23、24、25の上面には、それぞれ、細胞を培養する培養液を充填したシャーレSが各段に9個ずつ載置されている。
循環手段30は、上述のように、培養室20と筐体10の背面空間19とを隔てるように、培養室20の背面側に設けられている(図1及び図2参照)。この循環手段30は、筐体10と培養室20との間で空気を循環するものであって、循環ファン31とHEPAフィルタ32と整流部材33とを備えている。
循環ファン31は、筐体10の背面空間19のHEPAフィルタ32の後方(背面空間19側)にHEPAフィルタ32と平行に設けられ、この循環ファン31の作用により筐体10の背面空間19の空気がHEPAフィルタ32を介して培養室20の内部に水平方向に流れるように構成されている。なお、循環ファン31の種類については特に限定するものではなく、均一な風力を有するものであればよい。
HEPAフィルタ32は、循環ファン31の前方(培養室20側)にあって、培養室20の背面部と筐体10の背面空間19とを隔てるようにフィルタ面を略垂直方向に向けて設けられ、このHEPAフィルタ32を通過した空気が培養室20の内部に水平方向に流れるように構成されている。本実施形態においては、HEPAフィルタ32は、筐体10の内部の空気を更に清浄にするだけでなく、培養室20の内部に流れる空気を均一化する。なお、このHEPAフィルタ30に代えてULPAフィルタなど他種のフィルタを採用するようにしてもよい。
整流板33は、多孔性シートからなり培養室20の背面部にあるHEPAフィルタ32の前方(培養室20側)にHEPAフィルタ32と平行に全面に亘って設けられている。このことにより、HEPAフィルタ32から培養室20の内部に供給される空気は、整流板33の整流作用により培養室20の内部空間を水平方向に流れる一方向流(いわゆる層流)の空気を形成する。なお、本実施形態においては、この整流板33は、ステンレス製金属からなる矩形状の枠体33aと、この枠体の左右両面を覆うように枠体に貼付された2枚のスクリーン紗33bから構成されている。
2枚のスクリーン紗33bは、一般に合成繊維長繊維からなる織物であって、この織物の経糸と緯糸の間隙によって表裏を連通する無数の細孔が形成されている。このことにより、整流板33を通過する空気は、これらの無数の細孔によってその流れを整えられ、培養室20の内部空間を水平方向に向かう安定した一方向流の空気を形成する。
このスクリーン紗33bを形成する合成繊維長繊維は、線径が30〜200μmであることが好ましく、目開きが30〜200μmであることが好ましい。また、スクリーン紗33bの素材は、どのようなものであってもよいが、本実施形態においては、ポリエチレン紗を使用した。
ここで、本実施形態とは異なる整流板33の他の構成について説明する。図4は、図1に示すインキュベータにおいて、整流板33の他の構成を示す部分断面図である。図4において、整流板33は、図1と同様に培養室20の背面部にあるHEPAフィルタ32の前方(培養室20側)にHEPAフィルタ32と平行に全面に亘って設けられている。なお、この整流板33は、ステンレス製金属からなる矩形状の枠体33aと、この枠体の一方の面(HEPAフィルタ32側の面)を覆う1枚のスクリーン紗33bと、枠体の他方の面(培養室20側の面)を覆う1枚のスリット板33cとから構成されている。
スリット板33cには、表裏を連通する複数の細溝が並行に設けられている。図4において、HEPAフィルタ32から培養室20の内部に供給される空気は、整流板33の整流作用により培養室20の内部空間を水平方向に流れる一方向流(いわゆる層流)の空気を形成する。具体的には、HEPAフィルタ32を通過した空気は、まず、スクリーン紗33bを介して整流される。この整流された空気は、更にスリット板33cを介して整流され、各スリットから培養室20の内部空間に一方向流として流出する。
加温手段40は、2本のヒータ41a、41b、上述の温度センサ15a、及び、制御装置(図示せず)により構成されている。2本のヒータ41a、41bは、温度センサ15aによる検知信号により制御装置内のマイクロコンピュータ(図示せず)による制御で設定温度を維持するように作動する。
2本のヒータ41a、41bは、筐体10の背面空間19に設けられている。ヒータ41aは、筐体10の背面空間19の上方で上部空間16と交差する部分に設けられている。一方、ヒータ41bは、筐体10の背面空間19の下方で下部空間17と交差する部分に設けられている。これらのヒータ41a、41bは、筐体10の内部の空気を加熱するものであって、その種類は特に限定するものではない。本実施形態においては、電気ヒータを採用し、中でもロッド状のシーズヒータを採用した。
加湿手段50は、蒸発皿51、ロードセル52、給水手段53、上述の湿度センサ15b、及び、制御装置(図示せず)により構成され、後述の凝縮センサ60とも連動する。蒸発皿51は、筐体10の下部空間17の後方(背面空間19側)に設けられ、筐体10の底面壁部10cに載置されたロードセル52の上面に載置されている(図1及び図3参照)。ロードセル52は、蒸発皿51の重量(空の重量)及び蒸発皿51に供給される水の重量を検知する。
給水手段53は、筐体10の外部に設けられた給水タンク53a、給水タンク53aから筐体10の内部の蒸発皿51に向けて設けられた給水配管53b、給水配管53bの管路の上流に設けられた給水ポンプ53c、及び、給水ポンプ53cより下流の管路に設けられたフィルタ53dにより構成されている。なお、給水配管53bの管路のうちフィルタ53dから蒸発皿51に至る管路には、管路を滅菌するための加熱ヒータ53eが設けられている。
本実施形態においては、給水手段53による蒸発皿51への水の供給は、少量ずつ行うように制御される。すなわち、湿度センサ15b又は凝縮センサ60による検知で筐体10の内部の湿度が設定値以下(本実施形態においては、これを「乾燥状態」という)であり、且つ、ロードセル52が検知した重量が蒸発皿51の重量と同じ(蒸発皿51が空の状態)になった時、蒸発皿51に少量の水が供給され速やかに蒸発する。このように、蒸発皿51に常に水が貯留されている状態を避け、バクテリア等の微生物が生存できないようにして筐体10及び培養室20の汚染のリスクを回避する。
また、筐体10の外部にある給水タンク53aから蒸発皿51への給水配管53bの管路には、上述のように、フィルタ53d及び加熱ヒータ53eが設けられている。これらにより、蒸発皿51に供給される水からの汚染は、更に軽減される。このことにより、仮に給水タンク53a内に貯留された水がバクテリア等の微生物によって汚染された場合であっても、これらの微生物は、フィルタ53d及び加熱ヒータの作用により蒸発皿51に混入することがない。よって、筐体10や培養室20の無菌環境に悪影響を及ぼすことが防止できる。
湿度センサ15bは、筐体10の内部の湿度を検知して検知信号を制御装置に出力すると共に、モニター(図示せず)に表示する。なお、この湿度センサ15bが正確に検知できるのは、関係湿度が95%RHまでの領域である。従って、関係湿度が95%RH以下の湿度領域(乾燥状態)の制御は、湿度センサ15bの検知信号により行う。すなわち、筐体10の内部の関係湿度が95%RH以下であることを検知した湿度センサ15bによる検知信号により、制御装置内のマイクロコンピュータ(図示せず)による制御で給水ポンプ53cを作動して蒸発皿51に水を供給する。一方、関係湿度が95%RHを越える高湿度領域(95%RH〜100%RH)の制御は、凝縮センサ60の検知信号により行う。
ここで、凝縮センサ60について説明する。凝縮センサ60は、筐体10の下部空間17の前方(正面空間18側)に設けられている(図1及び図3参照)。なお、図1及び図3においては、底面壁部10c上に凝縮センサ60を支持する支柱等については記述を省略している。図5は、本実施形態に係るインキュベータ100が有する凝縮センサ60を示す概略図である。図5において、凝縮センサ60は、投光装置62、受光装置63、及び、投光装置62と受光装置63との間に配設された凝縮形成部61とを備えている。
本実施形態においては、投光装置62としてレーザー光66を照射するものを採用した。図5において、投光装置62は、配線ケーブル62aを介して電源供給装置62bと接続され、制御装置(図示せず)による当該電源供給装置62bの駆動制御により所定のタイミングでレーザー光66が一方向に照射される。本実施形態においては、投光装置62から照射されるレーザー光66は、半導体レーザー光であり近赤外領域の波長を採用している。一方、受光装置63は、配線ケーブル63aを介して出力装置63bと接続され、投光装置62の照射面と対向する位置に受光面が位置するように設置されている。この受光装置63は、受光したレーザー光66の受光量に対応する検知信号を制御装置に出力すると共に、出力装置63bのモニター(図示せず)に表示する。
図5において、凝縮形成部61は、光透過性の凝縮形成板として方形状のガラス板65を8枚備えている。これらのガラス板65は、支持部64により各ガラス板65の面方向とレーザー光66の照射方向とが略垂直となるように、それぞれ間隔を置いて互いに平行に配設されている。このことにより、各ガラス板65の間には筐体10の内部の空気が通過する連通開口部61aが設けられている。なお、この連通開口部61aは、筐体10の下部空間17を正面空間18から背面空間19の方向に流れる気流AF2に向かって開口している。このことにより、気流AF2は、各ガラス板65の面に沿って流れ、その表面に凝縮膜を形成する。
図6は、凝縮センサ60が有するガラス板65(凝縮形成板)の正面図である。図6において、ガラス板65は、筐体10の内部の空気が接触して凝縮を生じる凝縮部65aと、支持部64により支持される被支持部65bとからなり、凝縮部65aの中央部65cの部分をレーザー光66が透過する。
本実施形態においては、このように構成した凝縮センサ60により関係湿度が95%RHを越える高湿度領域(95%RH〜100%RH)の制御を正確に行うことができる。特に、関係湿度が100%RH付近の凝縮が生じる環境における制御を精密に行い培養室20の内部の培養環境を良好に維持することができる。なお、この凝縮センサ60は、上述のように、本来は無菌作業室の除染条件をモニターするための装置である。従って、この凝縮センサ60を配設することにより、培養を行う前に筐体10の内部の除染を過酸化水素水により行う際にも除染強度の確認に使用することができる。
なお、本実施形態においては、上述のように、筐体10の内部にCOガスを供給するCOガス供給手段14を有している。このCOガス供給手段14は、細胞培養の条件として必要な場合にインキュベータに組込むようにすればよい。このCOガス供給手段14は、筐体10の内部のCOガスの濃度が設定値より低下したことを検知したCOガス濃度センサ15cによる検知信号により、制御装置(図示せず)内のマイクロコンピュータ(図示せず)による制御で電磁弁14bを作動する。このことにより、培養室20の内部のCOガス濃度を一定に維持することができ、細胞の培養が順調に進行する。
ここで、上述のように構成した本実施形態に係るインキュベータ100において、作動中における空気の流れ、湿度の制御、及び、インキュベータ100の作用を説明する。図1において、筐体10の内部及びその内部に区画された培養室20の内部は、無菌・無塵状態に維持されている。また、給気手段12及び排気手段13を作動させて筐体10の内部の空気圧を外部環境よりも高く維持している。このことにより、筐体10の内部は、GMPに即したグレードAを維持している。
また、培養室20の内部の温度は、37℃±0.5℃に維持されている。培養室20の内部の湿度は、培養液の蒸発による浸透圧の変化をさけるために95%RH〜100%RHの範囲に維持されている。そのために、蒸発皿51においては極少量の水の供給が断続的に行われている。また、培養室20の内部のCOガス濃度は、培養に最適な条件を確保するために必要な濃度に維持されている。
この状態において、循環ファン31が作動すると、筐体10の背面空間19の空気が循環ファン31から放出される。この循環ファン31から放出された空気は、HEPAフィルタ32の前室空間32aで圧力が均一化されHEPAフィルタ32に供給される(図1参照)。次に、HEPAフィルタ32を通過した空気は、整流板33を介して培養室20の内部空間を水平方向(図1の左から右)に向かう一方向流AF1(層流)の空気を形成する。なお、整流板33を介して流れる一方向流AF1の空気の温度、湿度及びCOガス濃度は、正確に設定条件に維持されている。これら各条件の調節については後述する。
ここで、上述のように、筐体10の内部は無菌・無塵状態に維持されている。更に、HEPAフィルタ32によって空気を正常化することにより、培養室20の内部の無菌・無塵状態をより完全に確保することができる。例えば、何らかの事故により筐体10の内部に微生物などの異物が混入した場合であっても、HEPAフィルタ32の作用により培養室20の内部の無菌・無塵状態は確保される。
図1に筐体10の内部及び培養室20の内部を流れる空気の流れを矢印にて記述する。図1において、整流板33を介して放出された空気は、2枚の上下隔壁21、22、及び、3枚の棚板23、24、25によって区画された3つの室をそれぞれ水平方向(図1の左から右)に流れる。この空気の温度、湿度及び流速は一定に維持されている。また、区画された3つの室には、それぞれ、棚板の上に培養液を充填したシャーレSが載置されている(本実施形態においては、各棚板に9個ずつ)。従って、各シャーレSの表面には一定の温度、湿度及びCOガス濃度に調整された一方向流AF1の空気が一定の流速で流れている。更に、培養室20の内部においては、一方向流AF1の空気の温度、湿度及びCOガス濃度を上述の温度センサ15a、湿度センサ15b、凝縮センサ60、及び、COガス濃度センサ15cにより検知する。
ここで、シャーレSは一般にガラス製であり、その熱還流率(K値)は小さくはない。しかし、従来のインキュベータで行われる輻射或いは撹拌による加熱では、シャーレSの内部の培養液の温度を培養条件に昇温するのに非常に長い時間を要していた。これに対して、本実施形態においては、一定温度の一方向流AF1の空気が常時供給されており、シャーレSへの熱量の供給が多くなる。従って、本実施形態においては、シャーレSの見かけの熱還流率(K値)が更に大きくなり、シャーレSの内部の培養液の温度を短時間で培養条件に昇温することができる。
次に、培養室20の内部を流れた一方向流AF1の空気は、筐体10の正面空間18において、その流れる方向を変化させる。図1において、一方向流AF1の空気は、筐体10の断熱扉10aによって進路を変更し、筐体10の正面空間18から上部空間16及び下部空間17の2方向に分かれて流れる。この場合には、層流状態から通常の流れに変化しているものと思われる。
次に、筐体10の上部空間16に流入した空気は、培養室20の上部隔壁21と筐体10の上面壁部10bとの間を培養室20の内部とは逆向きの水平方向(図1の右から左)に流れる。これらの空気は、培養室20の内部を流れる一方向流AF1の空気とは別の一方向に流れる他の気流AF2(必ずしも層流ではない)を形成する。この状態において、培養室20の内部の温度が設定温度より高い場合(上述の温度センサ15aによる検知)には、上面壁部10bに設けられた2つのヒートシンク11a、11bから外部に放熱する。
一方、筐体10の下部空間17に流入した空気は、培養室20の下部隔壁22と筐体10の底面壁部10cとの間を培養室20の内部とは逆向きの水平方向(図1の右から左)に流れる。これらの空気は、培養室20の内部を流れる一方向流AF1の空気とは別の一方向に流れる他の気流AF2(必ずしも層流ではない)を形成する。この状態において、他の気流AF2は、凝縮センサ60のガラス板65の表面を流れ高湿度状態が検知される。また、他の気流AF2は、加湿手段50の蒸発皿51の上面を流れ加湿される。なお、凝縮センサ60の作動態様と筐体10の内部の高湿度状態の制御については後述する。
次に、筐体10の上部空間16及び下部空間17を他の気流AF2となって流れた空気は、筐体10の背面空間19において、再度その流れる方向を変化させ合流する。図1において、筐体10の上部空間16を流れた他の気流AF2の空気は、筐体10の背面壁部10dによって進路を変更し、筐体10の上部空間16から背面空間19に向けて流れる。この状態において、培養室20の内部の温度が設定温度より低い場合(上述の温度センサ15aによる検知)には、筐体10の背面空間19の上方で上部空間16と交差する部分に設けられたヒータ41aで空気を加熱する。具体的には、上述のように、ヒータ41aは、温度センサ15aによる検知信号により制御装置内のマイクロコンピュータによる制御で設定温度を維持するように作動する。
一方、筐体10の下部空間17を流れた他の気流AF2の空気は、筐体10の背面壁部10dによって進路を変更し、筐体10の下部空間17から背面空間19に向けて流れる。この状態において、培養室20の内部の温度が設定温度より低い場合(上述の温度センサ15aによる検知)には、筐体10の背面空間19の下方で下部空間17と交差する部分に設けられたヒータ41bで空気を加熱する。具体的には、上述のように、ヒータ41bは、温度センサ15aによる検知信号により制御装置内のマイクロコンピュータによる制御で設定温度を維持するように作動する。
また、培養室20の内部のCOガス濃度が設定値より低い場合(上述のCOガス濃度センサ15cによる検知)には、筐体10の背面壁部10dに設けられたCOガス供給手段14によりCOガスを筐体10の内部に供給する。具体的には、上述のように、COガス供給手段14は、COガス濃度センサ15cによる検知信号により制御装置内のマイクロコンピュータによる制御で電磁弁14bを作動し、培養室20の内部のCOガス濃度を維持する。
このようにして、筐体10の背面空間19においては、空気の温度、湿度及びCOガス濃度が調整される。この調整され合流した空気は、上述のように、循環ファン31の作動により、HEPAフィルタ32及び整流板33を介して培養室20の内部に供給され、培養室20の内部空間を水平方向(図示左から右)に向かう一方向流AF1(層流)の空気を形成する。このように、本実施形態においては、筐体10の内部及び培養室20の内部の全ての空間に、一方向流AF1或いは他の気流AF2の空気が常に一定の流速で流れており滞留することがない。
ここで、凝縮センサ60の作動態様を説明すると共に、この凝縮センサ60を用いた筐体10の内部の高湿度状態の制御について説明する。上述のように、本実施形態に係るインキュベータ100は、筐体10の内部の温度・湿度を均一に維持するための構造を有している。従って、筐体10の内部が100%RH前後になるまでは、筐体10の内部に凝縮が生じることがない。従って、凝縮形成部61のガラス板65にも凝縮が生じない。この状態における受光装置63のレーザー光66の受光量を基準受光量とする。
図7は、本実施形態に係るインキュベータ100における温度、湿度、凝縮センサの出力を示すグラフである。図7において、運転時間の経過を横軸で示し、温度(図7グラフa)を右縦軸、湿度(図7グラフb)を左縦軸で示している。なお、凝縮センサの出力(図7グラフc)は、特に縦軸を指定していないが、この値は、凝縮センサの基準受光量と透過光出力(凝縮膜により低下する)との差の絶対値を示しており、凝縮膜の膜厚に比例する。
筐体10の内部の温度(図7グラフa)は、運転時間の経過(図7横軸)と共に上昇してポイントa1において制御温度(37.0℃)に到達し均一に維持されている(図7右縦軸)。一方、筐体10の内部の湿度(図7グラフb)は、95%RHに至るまでは湿度センサ15bによる検知信号により、制御装置による制御で給水ポンプ53cを作動して蒸発皿51に水を供給し続ける。よって、湿度(図7グラフb)は、運転時間の経過と共に上昇してポイントb1において95%RHとなる。その後、ポイントb1以降は、凝縮センサ60による検知が行われる。
なお、湿度(図7グラフb)において、ポイントb1〜ポイントb2の間で凝縮センサ60による検知が基準受光量を示す場合は、ガラス板65に凝縮が生じておらず、制御装置による制御で給水ポンプ53cを作動して蒸発皿51に水を供給する。このことにより、湿度(図7グラフb)は、ポイントb2(略100%RH)まで上昇していく。この間を破線で示しているのは、湿度センサ15bによる正確な検知ができないことにより、湿度を数値で表すことができないからである。
図7において、筐体10の内部の湿度(図7グラフb)がポイントb2(略100%RH)に達すると、凝縮形成部61のガラス板65に極微細な凝縮膜が生じ始める。この状態における受光量は、ガラス板65の表面に形成された凝縮膜が原因となってレーザー光66が散乱・吸収されて、基準受光量よりも減少する。すなわち、受光装置63が検知する透過光出力が減少する。この状態からさらに蒸発皿51に水が供給されると、ガラス板65の表面に形成された凝縮膜の膜厚が増大し、これに伴って透過光出力は更に減少する。
図7において、凝縮センサの出力(図7グラフc)がポイントc1からポイントc2まで徐々に上昇している(略100%RH)。この間は、制御装置による制御により凝縮センサの出力に対して所定量(極少量)の水が蒸発皿51に供給されるように制御されている。このポイントc2は、凝縮形成部61のガラス板65に極薄い凝縮膜が生じる状態であり、ガラス板65の表面で凝縮と蒸発とが相平衡になっているものと考えられる。この状態は、過度の凝縮が生じることなく、且つ、略100%RHに近い湿度状態を維持して培養に好適な環境である。
なお、このポイントc2の凝縮センサの出力(凝縮膜の膜厚に比例)は、所定の値に予め設定しておくようにする。この所定の値は、1つの値としてもよく、或いは上限値と下限値をもつ一定の範囲としてもよい。すなわち、凝縮センサの出力(凝縮膜の膜厚)が所定の下限値においては、制御装置内のマイクロコンピュータ(図示せず)による制御で給水ポンプ53cが作動して、蒸発皿51に所定量(少量)の水が供給されて蒸発し湿度が上昇する。一方、凝縮センサの出力(凝縮膜の膜厚)が所定の上限値においては、制御装置内のマイクロコンピュータ(図示せず)による制御で給水ポンプ53cが作動せず、蒸発皿51に水がなく湿度が上昇することがない。
なお、凝縮センサの出力(凝縮膜の膜厚)が異常な値(過度な膜厚)を示した場合には、排気手段13の電磁弁13bを開放して高湿度の空気を排出し、給気手段12から低湿度の空気を導入して調整するようにすればよい。筐体10の内部は、空気圧を外部環境よりも高く維持しており、排気手段13による排気は速やかに行うことができる。
このように、本実施形態においては、湿度センサ15bが正確に検知できない関係湿度が95%RH〜100%RHの範囲内において、高湿度状態を正確に制御することができる。すなわち、凝縮センサ60による検知を利用すると共に、蒸発皿51を空の状態とし必要により極少量の水を供給して過度の加湿を避ける。このことにより、筐体10の内部の乾燥状態(95%RH以下)を避けると共に、過度の凝縮状態(100%RH以上)を回避することができる。
よって、本発明においては、培養室の内部の乾燥を防ぎ、且つ、高湿度状態を検知すると共に、検知した湿度状態が設定条件よりも低下した際に正確な少量の加湿を行うことにより、温度・湿度を均一に維持することができ、筐体の内部に結露が生じることのないインキュベータを提供することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態においては、給気手段、排気手段、COガス供給手段、及び、給水手段の位置をそれぞれ所定の位置に特定するものであるが、これに限るものではなく、筐体内の他の位置に設けるようにしてもよい。
(2)上記実施形態においては、温度センサ、湿度センサ、及び、COガス濃度センサの位置を培養室の中段に設けるものであるが、これに限るものではなく、培養室の他の位置或いは筐体内の他の位置に設けるようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、凝縮センサ、及び、蒸発皿の位置を筐体の下部に設けるものであるが、これに限るものではなく、筐体内の他の位置に設けるようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、凝縮センサのガラス板を8枚設けるものであるが、これに限るものではなく、凝縮膜の検知が可能であれば1枚或いはその他の枚数であってもよい。
(5)上記実施形態においては、給水配管の管路のうちフィルタから蒸発皿に至る管路に加熱ヒータを設けるものであるが、これに限るものではなく、給水配管の管路全体或いは管路が滅菌できるのであればフィルタから蒸発皿に至る管路の一部に設けるようにしてもよい。
(6)上記実施形態においては、空気を加熱するヒータを筐体の背面空間に上下2本設けるものであるが、これに限るものではなく、1本或いは3本以上としてもよく、或いは、筐体内の他の位置に設けるようにしてもよい。
(7)上記実施形態においては、培養室の棚段を3段設けるものであるが、これに限るものではなく、2段以下或いは4段以上設けるようにしてもよい。
(8)上記実施形態においては、COガス供給手段を設けて培養室の内部のCOガス濃度を調整するものであるが、これに限るものではなく、培養条件によってはCOガス供給手段を設けなくてもよい。
(9)上記実施形態においては、COガス供給手段を設けて培養室の内部のCOガス濃度を調整するものであるが、これに限るものではなく、培養条件によってはCOガス供給手段に加えて、或いは、COガス供給手段に代えてNガス供給手段を設けて培養室の内部のNガス濃度を調整するものであってもよい。
(10)上記実施形態においては、整流板の多孔性シートとして2枚のスクリーン紗を使用するが、これに限るものではなく、スクリーン紗を1枚としてもよく、或いは、スクリーン紗に代えて連通孔を有する多孔性セラミック板などを使用するようにしてもよい。
100…インキュベータ、
10…筐体、10a…断熱扉、10b〜10f…壁部、11a、11b…ヒートシンク、
12…給気手段、13…排気手段、14…COガス供給手段、
12a、13a、14a…配管、12b、13b、14b…電磁弁、
12c、13c…ディスクフィルタ、12d…給気ファン、
15a…温度センサ、15b…湿度センサ、15c…COガス濃度センサ、
16…上部空間、17…下部空間、18…正面空間、19…背面空間、
20…培養室、21…上部隔壁、22…下部隔壁、23、24、25…棚板、
30…循環手段、31…循環ファン、32…HEPAフィルタ、33…整流部材、
33a…枠体、33b…スクリーン紗、33c…スリット板、
40…加温手段、41a、41b…ヒータ、
50…加湿手段、51…蒸発皿、52…ロードセル、53…給水手段、
53a…給水タンク、53b…給水配管、53c…給水ポンプ、
53d…フィルタ、53e…加熱ヒータ、
60…凝縮センサ、61…凝縮形成部、62…投光装置、63…受光装置、
62a、63a…配線ケーブル、62b…電源供給装置、63b…出力装置、
64…支持部、65…ガラス板、
AF1…一方向流、AF2…他の気流、S…シャーレ。

Claims (4)

  1. 断熱扉と断熱壁からなる筐体と、
    前記筐体の内部に区画された培養室と、
    前記培養室の内部に前記筐体の内部の空気を循環させる循環手段と、
    前記筐体の内部の温度を検知する温度センサを具備して前記筐体の内部の空気を加温するための加温手段と、
    前記筐体の内部の湿度を検知する湿度センサと当該筐体の内部の水蒸気が結露した状態を検知する凝縮検知手段とを具備して前記筐体の内部の空気を加湿するための加湿手段とを有し、
    前記筐体の内部の水蒸気が結露しない状態においては、前記湿度センサの出力により前記加湿手段を制御し、
    前記筐体の内部の水蒸気が結露する状態においては、前記凝縮検知手段の出力により前記加湿手段を制御することを特徴とするインキュベータ。
  2. 前記加湿手段は、蒸発皿と、当該蒸発皿に水を供給する給水手段と、前記蒸発皿及びこれに供給された水の重量を検知する秤量手段とを備え、
    制御手段を有し、当該制御手段は、前記凝縮検知手段による前記凝縮膜の膜厚が所定の下限値において、前記給水手段を作動して前記蒸発皿の内部に所定量の水を供給するように作動し、
    前記凝縮検知手段による前記凝縮膜の膜厚が所定の上限値において、前記給水手段から前記蒸発皿の内部への給水を停止するように作動して、
    前記筐体の内部の関係湿度を95%RH〜100%RHの範囲内で維持するように制御することを特徴とする請求項1に記載のインキュベータ。
  3. 前記凝縮検知手段は、投光装置と、受光装置と、凝縮形成部とを備え、
    前記投光装置から前記受光装置に至る光路には、これに垂直な方向に前記凝縮形成部が具備する光透過性の凝縮形成板の板面を配置し、
    当該凝縮形成板の表面に凝縮した凝縮膜の膜厚でもって、前記筐体の内部の水蒸気が結露した状態を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載のインキュベータ。
  4. 前記循環手段は、前記筐体の内部の空気を前記培養室に供給する循環ファンと、当該循環ファンから供給される空気を濾過するフィルタと、当該フィルタを通過した空気を整流する整流部材とを備え、
    前記循環ファン、フィルタ及び整流部材を介して前記培養室に供給される空気は、当該培養室の内部を略水平に流れる一方向流の空気を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のインキュベータ。
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