JP4617480B2 - 微小なラインを備えた基板 - Google Patents

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本発明は、大気中で発生させた小直径の誘導結合型マイクロプラズマを利用して、低融点の基板にダメージを与えることなく、比較的簡単な工程で直接形成された、小さな径又は幅の金属等の微小なラインを備えた基板に関する。
現在の基板微細加工技術は、転写法と直接法の二つに大別され、それぞれの代表的な方法として、前者ではフォトリソグラフィー法、後者ではプラズマプロセシング法が上げられる。
しかしながら、フォトリソグラフィー法の工程は、“基板洗浄→レジスト塗布→露光→蒸着・エッチング→レジスト除去”といった時間を要する多段階プロセスであり、コストも大であるなどの問題点があげられる。
これに対して、プラズマプロセシング法では、“微細パタンマスク作製→基板上に被覆→CVDまたはPVD”といった工程であり、フォトリソグラフィー法と比較して格段に簡素な工程かつ小コストである。
しかし、プラズマからの熱伝導による加工基板の経時劣化が避けられないことから、加工基板種が高融点(約800°C以上)基板に限られていた。
近年Biochip、BioMEMS(Bio-related micro-electromechanical system)や、μTASなどの微小な分析システムの開発が進んでいる。これらは主に、ポリイミドなどの低融点基板上にリソグラフィー技術を駆使して作製した微小電極、微細回路や微細流路など(どれも直径、幅=1〜100μm)で構成されている。
このように、今後ますますこれら分析システムの需要が高まる中で、より簡単に、かつ低コストで低融点基板上に微小電極や微細回路を形成する技術の開発が望まれている。
従来技術として、例えば先端に広孔部を有しプラズマ炎の通路をなすノズル孔とそのノズル孔の狭孔部に開口する金属粉末管と、ノズル孔の広狭部にプラズマの進行方向に向かって開口するプラスチックス粉末挿入管を備えたプラズマトーチ(特許文献1参照)、ツイン(2組)のワイヤー、すなわち具体的にはスチールと銅のワイヤーをアーク溶射して、それらの交差方向の軌跡と分散状況から堆積物の分布やラメラ構造を分析した例が記載されている(特許文献2参照)。
また、TiカソードとAlアノードを用いてアークスプレーし、Ti−Alの金属間化合物を形成する技術が記載されている(特許文献3参照)。
しかし、いずれもマイクロプラズマによって、微小なドット又はラインを形成するものではなく、本願で説明する従来技術の問題を解決するものではない。したがって、上記の問題点を解決できるものではなかった。
特開昭47−34132号公報 Y.L.Zhu外3名著「Characterization Via image analysis of cross-over trajectories and inhomogeneity in twin wire arc spraying」、Surface and coating Technology 162(2003) 301-308 Takayuki 外2名著「Electrode phenomena investigation of wire arc spraying for preparation of Ti-Al intermetallic compounds」, Thin Solid Films 407 (2002) 98-103
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、マイクロプラズマの径を可能な限り小さくし、その熱容量を低減させることでプラズマジェット照射時の低融点基板のダメージを防ぐと共に、マイクロプラズマ中に挿入した金属等のワイヤーを溶融、蒸発又は気化させ、プラズマジェットと共に噴出させることにより、金属等の微小なラインを備えた基板を得ることを目的とする。
上記知見に基づいて、1)100μm以下の内径を有する石英管のキャピラリー先端から基板に向かって噴射されたマイクロプラズマにより、溶融、蒸発又は気化した材料が、基板上に再凝固し、ライン状に堆積した幅1〜100μmの前記材料のラインを備えていることを特徴とする微小なラインを備えた基板を提供する。
また、本発明は、2)幅5〜50μmのラインであることを特徴とする1)記載の基板、3)基板の融点が500°C以下であることを特徴とする1又は2記載の基板を提供する。
さらに本発明は、4)基板の融点が300°C以下であることを特徴とする3)記載の基板、5)堆積させる材料が、金属、金属を主成分とする材料又はその他のマイクロプラズマにより溶融、蒸発及び又は気化する材料であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の基板を提供する。
マイクロプラズマの径を可能な限り小さくし、その熱容量を低減させることにより、プラズマジェット照射時の低融点基板のダメージを防ぐと共に、マイクロプラズマ中に挿入した金属等のワイヤーを溶融、蒸発又は気化させ、プラズマジェットと共に噴出させることにより、低融点基板上に微小なサイズの金属等のラインを形成することができるという優れた効果を有する。
本発明は、マイクロプラズマにより堆積する材料である金属等のワイヤーを、マイクロプラズマ発生用キャピラリー内に予め挿入しておき、誘導コイルに高周波を高出力で印加することで、金属ワイヤーを溶融あるいは気化させるものであり、このように溶融、蒸発あるいは気化した金属等の材料を、キャピラリー内に供給したプラズマガス(Ar)の流れと共にキャピラリー先端から噴出させ、低融点基板の微小領域に析出させるものである。
上記のように、外周のコイルと挿入したワイヤーとの間でマイクロプラズマが発生することが条件となるので、堆積させる材料としては主に金属である。しかし、金属に他の微量非金属が存在していてもマイクロプラズマが発生するので、金属を主成分とする材料又はその他マイクロプラズマが発生し、これにより溶融、蒸発又は気化する材料が全て本発明の対象となる。
この具体例を図に基づいて説明する。なお、この例は本発明の理解を容易にするために作成したものであり、この実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく、他の実施例、変形、態様は全て本発明に含まれるものとする。
図1に本発明で使用したマイクロプラズマ発生装置の概略図を示した。誘導結合型マイクロプラズマを発生させるキャピラリー1には、先端部が細くなった形状のものを使用した。このキャピラリー1は、内径300μm-外形1000μm(壁厚350μm)の石英管を、加熱引張加工することで作製した。
誘導結合型プラズマを発生させるために、上記キャピラリー1を高周波印加用コイル内に装填する必要がある。プラズマ発生用石英ガラスキャピラリー1の内径を100μmより小さくした場合、プラズマ発生用石英ガラスキャピラリー1をコイル内へ直接装填する際に、キャピラリー1先端部を容易に破損してしまう。
そこで、キャピラリー1上に内径1100μm−外径1500μmの石英管保護ジャケット2を被せることが望ましい。この石英管の先端部から約10mmの部分に、銅製コイル3を設置した。
原料金属のワイヤー4(直径50〜100μm)を、キャピラリー1の根元から挿入した。このキャピラリー1中に、ガス供給口5からプラズマガス(Ar)を供給し、高周波電源6から高周波を10〜20Wの出力で高周波コイル3に印加した。
このことにより、コイル3を巻いた部分のキャピラリー1内部に誘導電磁界が発生し、それに伴いコイル3内に届いているタングステンワイヤーが高周波誘導加熱を受け加熱される。この状態で、イグナイター7を一瞬作動させ、挿入ワイヤー4先端とコイル間に高電圧を印加して放電を起こさせ、誘導結合型マイクロプラズマを点灯させた。
以上のような方法で、最小直径20μmのマイクロプラズマの安定発生が可能となった。発生したマイクロプラズマはキャピラリー1の先端から噴き出し、先端部から約100μmの距離をおいて設置した基板表面(図示せず)へも到達する。
次に、ガラスエポキシ基板(融点約300°C)への高融点金属のタングステン(融点約3400°C)蒸着の具体例を示す。
先端部内径50μmの石英キャピラリー1内に、直径50μmのタングステンワイヤー4を挿入した。このキャピラリー1内に、プラズマガス(Ar)を供給し、高周波を20Wの出力で高周波コイル3に印加して、誘導結合型マイクロプラズマを発生させた。
挿入されたタングステンワイヤーは、印加された高周波による誘導加熱および発生したマイクロプラズマの熱により、その表面が溶融あるいは気化し、プラズマガスの流れにのってキャピラリーから噴出した。その結果、キャピラリー先端から100〜400μmの距離をおいて配置した基板上に堆積した。
キャピラリー先端から100μmの距離をおいて配置したガラスエポキシ基板上に、上記条件下、大気中でマイクロプラズマを1分間発生させて作製した堆積物の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す(図2−1:横方向からの観察写真、図2−2:真上方向からの観察写真)。
底面の直径が約80μm、高さが約35μmの山状の物質が堆積していた(ドット状の堆積物)。この堆積物の高分解能走査型電子顕微鏡観察では、この堆積物は直径20〜50μm程度のサイズであった。
また、その堆積物(ドット状の堆積物)を詳細に観察すると、さらに100nm程度の微粒子で構成されていることが分かった(図2−3)。また、図2−1、2−2で明らかなように、タングステンが堆積された領域の周囲はダメージを受けていなかった。
キャピラリー1先端とガラスエポキシ基板との距離を100〜400μmで変化させた場合にも、タングステンは山状に堆積した。その底面の直径や高さなどのサイズは、この距離にはそれほど依存しない。
本方法では、タングステンに限らず様々な材料を低融点基板の微小領域に堆積させることが可能である。鉄などの磁性金属や、電極素子に用いられる白金をはじめ高融点金属も堆積させることが可能である。
また、発生させるマイクロプラズマのサイズや発生時間を変化させることで、堆積物の直径、高さを制御することも可能である。
キャピラリー1内に直径100μmの鉄ワイヤーを挿入、プラズマガス(Ar)を供給して、高周波を15Wの出力でコイルに印加し、10秒間発生させた直径約20μmの誘導結合型マイクロプラズマによって作製した堆積物の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
キャピラリー先端から100μmの距離をおいて配置したガラスエポキシ基板上に、直径約10μmの堆積物が生成した(図3−1:真上からの観察写真)。
堆積物の高さはプラズマ発生時間に依存し、10秒間の発生では、高さ約1μmの鉄の堆積物が得られた(図3−2:横方向からの観察写真)。この鉄堆積物も、直径20〜100μmの球状鉄微粒子で構成されていた(図3−3:高分解能走査型電子顕微鏡写真)。
上記のドット形成技術を応用して、基板上に鉄のドットパターンを形成した実施例を示す。ガラスエポキシ基板を、3軸マニピュレーターに接続された基板支持部に固定した。基板とプラズマトーチ先端部との距離を100μmに固定し、上記の鉄ドット作製例と同じ条件で、径20μmのマイクロプラズマを10秒間発生させた。
発生終了後、基板支持部を横または縦方向に100μmの距離移動させ、前記と同じ条件でマイクロプラズマを発生させた。その結果、ガラスエポキシ基板上に、100μmのピッチ幅で形成された直径約10μmの鉄ドットのパターンが形成された(図4−1)。
次に、基板上に鉄のラインパターンを形成した例を示す。基板とプラズマトーチ先端部との距離を100μmに固定し、上記と同じ条件でマイクロプラズマを発生させた。発生直後、基板を横方向に10μm/秒の速度で1000μmの距離移動させた。基板上には、長さ1000μm、幅約10μmのラインパターンが形成された。
以上のように、直径が50μm以下のマイクロプラズマを利用することにより、融点が約300°Cの基板にダメージを与えることなく容易に金属材料を堆積させることができる。また、マイクロプラズマ中に挿入した金属ワイヤーを意図的に溶出させることで、基板上に金属ドットおよびラインを形成することが可能である。したがって、本発明は基板微細加工技術として極めて有用である。
石英保護ジャケット付マイクロプラズマ発生器模式図である。 山状(ドット状)タングステン堆積物の横方向からの走査型電子顕微鏡観察像を示す図である。(図2−1はタングステン堆積物の横方向からの走査型電子顕微鏡観察像、図2−2はタングステン堆積物の真上方向からの走査型電子顕微鏡観察像、図2−3はタングステン堆積物の高分解走査型電子顕微鏡写真である。) 鉄ドット走査型電子顕微鏡観察像を示す図である。(図3−1は鉄ドットの真上方向からの走査型電子顕微鏡観察像、図3−2は鉄ドットの横方向からの走査型電子顕微鏡観察像、図3−3は鉄ドットの高分解走査型電子顕微鏡写真である。) 鉄のドットパターン及び鉄のラインパターンを示す図である。(図4−1はドットパターン、図4−2はラインパターンである。)
符号の説明
1 マイクロプラズマ発生用石英キャピラリー
2 キャピラリー保護ジャケット用石英管
3 銅製コイル
4 金属ワイヤー
5 ガス供給口
6 高周波電源
7 イグナイター

Claims (4)

  1. 100μm以下の内径を有する石英管の中でマイクロプラズマにより堆積物となるワイヤーを溶融、蒸発又は気化させた後、前記石英管のキャピラリー先端から基板に向かってマイクロプラズマジェットと共に噴射することにより形成された、前記溶融、蒸発又は気化した材料の再凝固したラインを備え、該ラインの幅が1〜100μmであることを特徴とする微小なラインを備えた基板。
  2. 幅5〜50μmのラインであることを特徴とする請求項1記載の基板。
  3. 基板の融点が500°C以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の基板。
  4. 基板の融点が300°C以下であることを特徴とする請求項3記載の基板。
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