JP4615834B2 - レーザ変調装置および方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光の光量制御を可能にしたレーザ変調装置および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、生物用のレーザ走査顕微鏡は、長時間にわたって標本変化を測定するような場合に用いられることがある。
【0003】
このような長時間にわたって標本変化の測定を行う場合、光源であるレーザ光の光量が多少でも変動すると、測定データにばらつきが生じ、正確な測定結果が得られなくなる。このため、常にレーザ光の光量を安定化するような制御が必要である。
【0004】
そこで、従来、例えば特許文献1に開示されるように光源からの照明光の光量を調光手段により調整するとともに、この光量を検知手段で検知し、この検知出力と目標値とを比較し、この比較結果に基づいて調光手段を制御して照明光の光量を目標値に近づけるようなフィードバック制御を行うものが考えられている。
【0005】
このようなフィードバック制御系は、光源単体で有するものがあるが、現実には、調光手段を保持する光学台の振動や光源から発する照明光を導光するための光ファイバの振動などの外乱要素が存在し、これら外乱要素によって標本に照射される部分でも光量の変動が生じることもあめため、システム全体を対象として組み込まれることもある。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−19432号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このようなフィードバック制御系は、制御対象の応答速度が、入力変化に対して十分速い場合は、何ら問題ないが、反対に、応答速度が、入力変化に対して遅いような場合は、いわゆる発振状態となってしまい制御不能に陥る。このため、フィードバック制御系の応答速度を十分に遅くすることで発振は免れるが、この結果として、速い入力変化に追従できなくなる。
【0008】
ところで、レーザ走査顕微鏡における1画素当たりの走査速度は、速いもので数μsから数10μsである。このため、1画素単位でレーザ光の変調を行うには、μs単位の応答速度が必要である。
【0009】
このような要求を満足するものとして、例えば、AOTFやAOMなどの音響光学素子が知られている。ここで、音響光学素子は、光学結晶に超音波を印加し、結晶を粗密波で振動させ屈折率の変化を誘起し、この屈折率の粗密を回折格子とすることで、光線の回折を起こして回折量を制御し、レーザ光量を制御できるようにしたものである。
【0010】
音響光学素子は、駆動原理が音波のため、オンオフの切り替え応答時間が早い。しかし、結晶を振動させるための振動子から光線位置までの距離が音波の伝達する時間差となることから、入力変化から光量を変化するまでの所要時間が約10μsほどになっている。
【0011】
一方、フィードバック制御を行う場合、実際に標本に照射するレーザ光の何%かを分岐して検知手段(センサ)で測定し、この測定値を用いている。ここで標本に照射されるレーザ光は、強度100%に設定された場合、数百μW〜数mW程度であるので、仮に、0.1%程度の強度に設定した場合は、数百nW〜数μWとなってしまい、この場合は、検知手段で測定される光量は、さらに少ない数10nWオーダーの光量となる。
【0012】
このような微小な光量を検知手段で測定しようとすると、上述した外乱要素の影響をさらに受け易くなり、安定して光量を測定することができない。
【0013】
このことから、音響光学素子を使用してμsオーダーの応答速度を維持しながらフィードバック制御を行うには、例えば仮想モデルを組んでの予測制御を行うなどの高度な制御技術を必要とするなど、フィードバック制御の実行をますます難しいものにしている。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、所定の応答速度を維持したレーザ変調を可能とし、レーザ光量の安定化を図ることができるレーザ変調装置および方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、レーザ光源と、前記レーザ光源から発せられるレーザ光を変調するレーザ変調手段と、前記レーザ変調手段で変調されるレーザ光の光量を測定するレーザ光測定手段と、入力指示値として測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ変調手段から出力される前記レーザ光の光量の変動前の光量を基準光量として与えられ、前記基準光量と、前記測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ光測定手段により測定された前記レーザ光の光量の変動後の前記レーザ光量の比を算出し、前記レーザ変調手段への入力信号を前記レーザ光の光量の比で補正し、設定したいレーザ光の光量を得るための補正入力指示値を決定する入力値決定手段とを備えることを特徴としている。
【0017】
請求項記載の発明は、請求項1に記載の発明において、音響光学素子からなることを特徴としている。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、走査装置を有するレーザ走査顕微鏡に適用され、前記レーザ光測定手段は、前記走査装置でのレーザ走査の帰線期間に前記レーザ光の光量を測定することを特徴としている。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、インターバル時間をおいた長時間の連続測定に用いられるレーザ走査顕微鏡に適用され、前記レーザ光測定手段は、前記インターバルごとに前記レーザ光の光量を測定することを特徴としている。
【0022】
請求項記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、さらに遮光手段を有し、少なくとも前記レーザ光測定手段による前記レーザ光の光量測定の間、前記レーザ光の標本側への照射を阻止可能としたことを特徴としている。
【0023】
請求項6記載の発明は、レーザ光源と、前記レーザ光源から発せられるレーザ光を変調するレーザ変調手段と、前記レーザ変調手段で変調されるレーザ光の光量を測定するレーザ光測定手段と、入力指示値として測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ変調手段から出力される前記レーザ光の光量の変動前の光量を基準光量として与えられ、前記基準光量と、前記測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ光測定手段により測定された前記レーザ光の光量の変動後の前記レーザ光量の比を算出し、前記レーザ変調手段への入力信号を前記レーザ光の光量の比で補正し、設定したいレーザ光の光量を得るための補正入力指示値を決定する入力値決定手段とを備え、前記補正入力指示値を前記レーザ変調手段に入力して、設定したいレーザ光の光量を得ることを特徴としている。
【0024】
この結果、本発明によれば、補正処理のためのフィードバック要求により、基準光量とレーザ光測定手段により測定されたレーザ光量より補正係数を求めるとともに、この補正係数により入力指示値を補正して補正入力指示値を求め、この補正入力指示値に基づいてレーザ変調手段への入力値を決定するような制御系を構成したので、所定の応答速度を維持しながら、レーザ光の光量を強度0〜100%まですべての光量を安定して補正することができる。
【0025】
また、本発明によれば、レーザ走査の帰線期間やインターバル時間を使用して補正処理を行うことができるので、外乱要素の影響を受けない十分な強度の光量を測定できるので、安定したフィードバック制御を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の考え方を簡単に説明する。
【0027】
レーザ走査顕微鏡において、レーザ光の光量を安定化するためフィードバック制御を行う場合、光量の変動要素として、レーザ光源の出力光量の変動の他に、光路に用いられる光ファイバの振動による減衰量の変化、音響光学素子の周囲温度変化による特性変動などが挙げられる。
【0028】
図1は、レーザ光源101の照射光量P、音響光学素子(AOTF)102の入出力特性関数F(x)、光ファイバ103の減衰率Aおよび出力光量Poutの関係を図示したもので、これらの関係は、
Pout=A・P・F(x)
で得られる。
【0029】
この場合、上述した変動要素のうち、レーザ光源101の出力Pと光ファイバ103の出力光量Poutは、ほぼ比例して変化するが、音響光学素子102については、特性関数自体が変化してしまうため、状態変化を予測することのが難しい。
【0030】
しかし、音響光学素子102自身については、周囲の温度変化に対して過剰な変動をしないように単体で温度フィードバック機能を持ち、常に恒温化されているので、音響光学素子102単体で温度管理さえ行っていれば入出力特性関数F(x)の変化を小さいものになり、フィードバック制御時の補正対象から無視することができる。
【0031】
また、光量を常に測定しながら通常のフィードバック制御を行う場合、1%以下といった微弱な光量を出力しようとすると、検知手段(センサ)で測定する光量がさらに微小光量(数10nWオーダーの光量)となる。このため、センサ系の精度や雑音が問題となって、フィードバック制御の行われた後の光量調整の精度も不安定なものになる。
【0032】
そこで、本発明では、レーザ光の光量をできるだけ強くできる条件の下でフィードバック制御を行い、このとき得られる光量に基づいて、他での光量変化を推定することにより、全てについての光量調整を行うような制御方法を採用している。つまり、レーザ光の光量を決定する入力指示値から出力光量を求める基準として、音響光学素子102の入出力特性関数F(x)を用い、この入出力特性関数F(x)をベースに、ある1点での光量測定から、光量の変動量の推定を行って出力光量の補正を行うようにしている。
【0033】
この場合、音響光学素子102の特性関数F(x)を固定して制御を行い、出力光量PoutがPout’へ変化したとすると、
Pout=A・P・F(x)は、
Pout’=A’・P’・F(x) …(1)
となる。ここで、PoutとPout’を等しくするフィードバック補正係数をkとすると、このフィードバック補正係数kは、
Pout=kPout’ …(2)
k=Pout/Pout’=(A・P)/(A’・P’)…(3)
から求められることとなる。
【0034】
さらに、これら(2)(3)式を合わせる
Pout=kPout’=k・A’・P’・F(x) …(4)
となる。
【0035】
図2は、音響光学素子102の入力信号(駆動信号強度)Xと出力光量Pの関係を表わす出力特性を示すものである。ここでは、基準となる出力特性aに対して光量変動が+10%あった時の出力特性を同図b、光量変動が−10%あった時の出力特性を同図cで示している。
【0036】
いま、光量変動がなく、音響光学素子102の出力特性がaに示す状態で、入力信号として測定基準信号Xoが入力されると、基準光量としてPoが出力される。この状態から、上述した外乱要素により光量が−10%変動すると、出力特性はcとなって、現在の光量はPo’に変動する。
【0037】
この状態から、目標とする光量をPs(Po)とすると、式(4)より、A’・P’を除外して、改めて、
Ps=G(X)、Po’=k・Ps …(5)
とすると、
Ps=(1/k)・Po’ …(6)
となり、現在の光量Po’の1/k倍の光量を指定することで、目標とする光量Ps(Po)を得ることができる。
【0038】
これにより、必要とする入力信号(駆動信号強度)Xsは、
Xs=G−1(k・Ps) …(7)
となる。この式より、G−1( )が確定していて、補正係数kと目標とする光量Psが決まれば、この光量Psを得るための入力信号(駆動信号強度)Xsが求められることがが分かる。
【0039】
ここで、G−1( )は、補正関数として、目標とする光量Psに対応する入力値を持つものとすると、次のようなアルゴリズムで入力信号(駆動信号強度)Xsを求めることができる。
【0040】
まず、(a)基準光量Poに対しての光量変動の後の現在の光量Po’を測定する(測定時の音響光学素子102への入力信号は固定)。(b)基準光量Poと現在の光量Po’との比(補正係数k)を算出する。(c)現在の光量Po’に1/kをかけた値を求める。(d)補正関数G−1を用いて(c)で求めた値に対応する入力信号(駆動信号強度)Xsを割り出す。(e)(d)で求められた入力信号(駆動信号強度)Xsを音響光学素子102に入力する。
【0041】
この結果から、図2に示すように、例えば、設定したい光量がPaで、入力信号(駆動信号強度)がXaに設定されている状態から、仮に、光量が−10%変動したような場合も、入力信号Xaを補正係数kにより補正することで、音響光学素子102の出力特性aに基づいて光量Paを得るための入力信号(駆動信号強度)Xa’を簡単に求めることができる。
【0042】
実際に生じる光量変動は、周囲温度変化や経時変化による光量変動を補正対象にしているので、速くとも0.数Hzから分単位までの範囲で比較的ゆっくりしたものである。これにより光量の測定を頻繁に行う必要は無く、分単位の一定時間経過ごとに測定をすれば十分である。レーザ走査顕微鏡の場合は、各画素に対する処理で、上述したアルゴリズムで(c)〜(e)の動作を行うことになるが、この動作は1ピクセルクロック内で十分完了する。
【0043】
また、基準光量は、光量の増加減少ともに対応するために、基準光量を最大光量としてしまうと、光量が減光して、今以上の光量を必要とするときに調整範囲を越してしまうことになる。そこで、光量減少時の調整幅を確保するため、基準光量は最大光量より少ない値に設定する必要がある。こうすれば、基準光量と最大光量との差が補正可能な最大変動幅となる。
【0044】
次に、実際にレーザ走査顕微鏡の光源として用いる場合を簡単に説明する。この場合、顕微鏡の組み立てが終了し、光学系の調整が終わったところで、一度、補正関数G−1と基準光量について、レーザ光源の各波長のレーザ光量をセンサで測定しながら決定する。補正関数G−1の導き方は、必要とされる光量の設定段階に合わせて1点1点サーチをする方法や数点を決め手測定し、線形補間法などを用いて関数化する方法が用いられる。
【0045】
ここまでが顕微鏡のセットアップの一環で、光量補正を行うための準備となる。実際のアプリケーションにより補正を行うときは、測定のためレーザ光の強度を大きな値に設定しなければならない。また、レーザ光を1つの波長のみの放出に切り替えないと、センサは複数の波長の混じり合ったレーザ光の強度を測定してしまう。このため、このときの光量の測定は、標本観察(測定)が行われていないタイミングで行う必要がある。このタイミングは測定開始前や、レーザ光が1フレームを走査し、レーザスポットが次のフレームの最初の位置に移る帰線期間などが最適で、これらのタイミングごと波長別に現在の光量を測定する。この測定により現時点の光量が基準光量に対してどの程度増減しているか測定できる。
【0046】
これにより、上述した式(7)に基づいて、レーザ光量を安定化するのに必要な音響光学素子102への入力信号(駆動信号強度)が求められる。
【0047】
また、同様な動作をレーザ光の波長ごとに行うことにより、測定開始時のレーザ光量は安定な状態に補正される。また、一度走査を終了して再度走査するときも同様に光量を測定すると、各測定ごと光量は安定の状態とすることができるので、各走査の測定は、同一の条件で行われることとなり、測定データの定量性を飛躍的に向上することができる。
【0048】
次に、このような考えに基づいた本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0049】
(第1の実施の形態)
図3は、本発明が適用されるレーザ変調装置の概略構成を示している。
【0050】
図において、1はレーザ光源で、このレーザ光源1から発せられるレーザ光の光路上には、レーザ変調手段として音響光学素子2が配置されている。音響光学素子2は、上述した構成をなすもので、高速のレーザ変調機能を有している。
【0051】
音響光学素子2で変調されたレーザ光の光路上には、ビームスプリッタ3と遮光手段としてのレーザシャッタ4が配置されている。ビームスプリッタ3は、音響光学素子2からの出力光のうち数%ほどの光を反射し、参照光として取り出すためのものである。この場合、ビームスプリッタ3は、途中光路の変化による光量の揺らぎも光量の補正対象とするため、できるだけ標本(図示せず)に近い光路上に配置するのが望ましい。。また、レーザシャッタ4は、光量の測定中に、標本に対し不要なレーサ光を照射しないようにするため、光路を遮断するものである。
【0052】
ビームスプリッタ3の反射光路上には、レーザ光測定手段としての光センサ5が配置されている。光センサ5は、フォトダイオードセンサや光電子増倍管などからなり、ビームスプリッタ3で反射される参照光の光強度を測定し、これを電気信号に変換して出力するようになっている。
【0053】
光センサ5には、制御部6が接続されている。また、制御部6には、音響光学素子2が接続されている。制御部6は、パソコンなどの演算機能を持つ装置で構成され、光センサ5で測定される参照光の光強度から光量の安定に最適な変調率(補正係数k)を演算するとともに、入力信号(駆動信号強度)Xに対する音響光学素子2への入力値を制御するようになっている。
【0054】
制御部6は、具体的には図4に示すように、基準光量を記録する基準光量記録部7、割り算器8、掛け算器9および入力値変換手段としての関数演算部10から構成されている。
【0055】
基準光量記録部7は、基準光量Poとして、前述したように最大光量(100%)に対して数%程度小さい値を記録している。割り算器8は、基準光量記録部7の基準光量Poと光センサ5で測定される参照光(現在の光量Po’)との比から(補正係数)kを求めるものである。掛け算器9は、設定したい光量Paを得るために設定された入力信号(駆動信号強度)Xaを1/k倍することで、光量変動後の入力信号(駆動信号強度)Xa’を求めるものである。関数演算部10は、入力信号(駆動信号強度)Xを音響光学素子2への入力値に変換する変換テーブルとして、入力指示値に対する音響光学素子2への入力値(レーザ光量)の関係を線形対応させた関数fを有するもので、この関数fに基づいて入力信号(駆動信号強度)Xa’に相当する音響光学素子2への入力値を出力するようにしている。この場合、関数fは、上述した補正関数G−1に相当するもので、例えば、入力指示値である入力信号(駆動信号強度)Xの値を複数段階に設定し、それぞれの段階の設定値について、音響光学素子2への入力値を変化させながら、音響光学素子2からのレーザ光量に応じた光センサ5の測定値を、それぞれの設定値に一致させて、こときの入力信号(駆動信号強度)Xと音響光学素子2の入力値の関係を求め、これらの関係を線形補間法を用いて関数化したものが用いられる。
【0056】
次に、このように構成された実施の形態の動作を説明する。
【0057】
まず、補正係数kの算出までを図5に示すフローチャートにより説明する。
【0058】
フードバック動作のシーケンスが開始されると(ステップ501)、レーザシャッタ4を閉じて、不要なレーサ光が標本(図示せず)に照射しないように光路を遮断する(ステップ502)。このタイミングは、例えば、レーザ光が1フレームを走査し、レーザスポットが次のフレームの最初の位置に移る帰線期間などである。
【0059】
フィードバック要求を待って(ステップ503)、レーザ光源1から発せられたレーサ光を音響光学素子2に入射する。音響光学素子2は、制御部6からの入力信号(駆動信号強度)Xに応じた強度の光を素子内部の結晶体で回折し、この回折した1次回折光を出力する。この場合、音響光学素子2に与えられる入力信号(駆動信号強度)Xは、基準光量Poが得られるXoに設定される(ステップ504)。その後、補正係数kの書き込み待ちとなる(ステップ505)。
【0060】
音響光学素子2の出力光は、ビームスプリッタ3を介して光センサ5に導入される。この場合、ビームスプリッタ3は、音響光学素子2からの出力光のうちの数%の光を反射し、参照光として光センサ5に出力する。
【0061】
なお、このときの音響光学素子2からの出力光の導入方法は、図示しない幾つかのミラーを介して空間を伝送しても光ファイバを介して導いてもよい。
【0062】
一方、ステップ503でのフィードバック要求とともに、光センサ5による参照光測定のためのサンプリングのゲインを設定し(ステップ506)、ステップ507で、参照光を測定する。この場合、光センサ5による参照光測定のためのサンプリングは、複数回行って、これら検出値の平均を求める。これにより基準光量Poに対する光量変動が測定される。
【0063】
次に、光センサ5の測定結果より、変動後の現在の光量Po’を求め(ステップ508)、さらにk=Po/Po’から補正係数kをフィードバックパラメータとして算出し、この係数kを記憶する(ステップ509)。
【0064】
その後、ステップ510で、音響光学素子2に与えられる入力信号(駆動信号強度)Xをフードバック動作開始前の値に戻し、フィードバック動作を終了する(ステップ511)。
【0065】
その後の音響光学素子2でのレーザ光変調動作は、図6に示すフローチャートに従い実行される。
【0066】
この場合、まず、レーザ光源1からレーザ光が発せられた状態で(ステップ601)、所望する光量Paを設定する(ステップ602)。そして、音響光学素子2の光量Paに対応する入力信号(駆動信号強度)Xaを求める(ステップ603)。
【0067】
次に、補正係数kを用いて(Xa/k)により補正されたXa’を求める(ステップ604)。そして、このXa’を関数演算部10の関数fに代入することで、入力信号(駆動信号強度)として求める。そして、この入力信号(駆動信号強度)Xa’を音響光学素子2にセットすると(ステップ605)、音響光学素子2より変調されたレーザ光を出力することができる。
【0068】
これらの一連の動作をさらに具体的に説明すると、基準光量Poは出力光の最大強度100%に対して数%小さい値として設定し、このときの光強度を基準光量記録部7に記録しておく。また、このときの光強度に対する音響光学素子2への入力信号を関数fとして記録しておく。
【0069】
次に、この時の入力信号の下でのレーザ光量の変化、つまり現在の光量Po’を光センサ5の測定結果から求める。ここで基準光量Poを得るときの入力条件と光量安定化のための光量測定の条件を同一条件とすることで、純粋にレーザ光量の変化のみを検出できる。
【0070】
そして、これら光量Po、Po’を割り算器8に入力し、補正係数k(Po/Po’)を求める。ここで、基準光量Poに対して現在の光量Po’が90%であった場合、補正係数kは、(1.11)として求められる。
【0071】
これにより、次からのレーザ変調では、掛け算器9で音響光学素子2の入力信号(駆動信号強度)に補正係数1.11倍の変調をかける必要が生じる。この1.11倍の強度に相当する音響光学素子2への入力信号(駆動信号強度)は、関数演算部10の関数fに基づいて求めることができる。
【0072】
これらの一連の動作の後は、レーザシャッタ4を解放し、入力信号(駆動信号強度)Xに応じた変調を行っていくが、ここでは、入力信号(駆動信号強度)Xに対して1.1倍を掛け算器9でかけた上で、関数演算部10において、関数fに代入することで、すべての入力信号(駆動信号強度)Xに対して補正を行うことができる。
【0073】
従って、このようにすれば、補正処理のためのフィードバック要求により、基準光量と光センサ5により測定されたレーザ光量より補正係数kを求めるとともに、補正係数kにより入力信号(駆動信号強度)Xaを補正してXa’を求め、このXa’を関数演算部10の関数fに代入することで、音響光学素子2への入力値を決定するような制御系を構成したので、所定の応答速度を維持しながら、複雑な制御系を組まずともレーザ光の光量を強度0〜100%まですべての光量を安定して変調することができ、レーザ光量の安定化を図ることができる。
【0074】
また、光センサ5により参照光を測定するのは、補正処理の期間だけで、ビームスプリッタ3からの反射光から十分な光量を確保できるので、測定系のS/Nの問題を解消でき、安定したフィードバック制御を行うことができる。
【0075】
さらに、光センサ5によりレーザ光量を参照光として測定するときは、レーザシャッタ4を閉じて標本側に不要なレーサ光を照射しないようにしているので、レーザ光による標本のダメージなどを防止することができる。
【0076】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0077】
この第2の実施の形態では、音響光学素子2としてAOTFを使用した例である。つまり、AOTFは波長選択性を有することから、レーザ波長が重なる複数の光線に対して個別に制御することを可能にしている。
【0078】
図7は、第2の実施の形態の概略構成を示すもので、図3と同一部分には、同符号を付している。
【0079】
この場合、1a、1b、1cはレーザ光源で、これらレーザ光源1a、1b、1cは、それぞれレーザ波長の異なるものからなっている。
【0080】
レーザ光源1aから発せられるレーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー12aが配置されている。また、レーザ光源1bから発せられるレーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー12bが配置されている。さらに、レーザ光源1cから発せられるレーザ光の光路上には、全反射ミラー13が配置されている。ここで、全反射ミラー13は、レーザ光源1cからのレーザ光を反射するものである。
【0081】
この場合、ダイクロイックミラー12aは、レーザ光源1aから発せられるレーザ光を透過し、レーザ光源1b、1cから発せられるレーザ光を反射するようになっている。ダイクロイックミラー12bは、レーザ光源1bから発せられるレーザ光を反射し、レーザ光源1cから発せられるレーザ光を透過するようになっている。
【0082】
これにより、レーザ光源1aから発せられるレーザ光は、ダイクロイックミラー12aを透過し、レーザ光源1bから発せられるレーザ光は、ダイクロイックミラー12b、12aで反射し、レーザ光源1cから発せられるレーザ光は、全反射ミラー13で反射し、ダイクロイックミラー12bを透過した後、ダイクロイックミラー12aで反射することとなり、これら3本のレーザ光は、1本にまとめられ、音響光学素子としてのAOTF14に入力される。
【0083】
ここで、AOTF14は、波長選択性を有するものであり、複数のレーザ光源1a、1b、1cからのレーザ波長が重なった光線に対して個別に制御することができるものである。つまり、AOTF14は、その特性により、1波長の制御が他の波長の制御に干渉するとことがない。このためレーザ光源1a、1b、1cの分だけ、同様な制御部6を複数組用意することで、各レーザ光源1a、1b、1cについて安定したレーザ変調を行うことができる。
【0084】
また、光センサ5は、レーザ光源1a、1b、1cのレーザ波長の帯域が感度内にすべて収まれば、1個のみでよいが、紫外や赤外などの帯域の場合は、ビームスプリッタ3を介して得られる参照光を複数に分けて、光センサ5を複数個とするすることが必要である。
【0085】
このような構成において、まず、レーザ光源1a、1b、1cに対応する1波長ずつAOTF14で出力光を切替え、各波長ごとの基準光量と関数を求めておく。また、1波長ずつAOTF14で出力光を切替えて変動の後の光量を求め、すべての光量を求めた後に、これら光量に基づいて各々の補正係数kを求め、補正動作を完了する。
【0086】
この後は、それぞれの補正係数kを用いて、各波長ごとの変調を行うことにより、レーザ光源1a、1b、1cに対するレーザ光量の安定化を格別に行うことが可能となる。
【0087】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0088】
第1の実施の形態では、処理の中心となる制御部6はコンピュータ内部のソフトウエア演算で行うようにしたが、より簡単な構成として、FPGAなどの複数ゲートを持つ論理回路とメモリで構成される電気回路のハードウェアで構成することもできる。
【0089】
この場合、図4に示す制御部6内で割り算器8、掛け算器9は、演算論理回路、基準光量値はメモリあるいはレジスタに記録することで構成する。また、関数演算部10は、入力信号(駆動信号強度)に対応した音響光学素子2への入力値をテーブルとして作り上げ、半導体メモリ上にルックアップテーブル(LUT)として構築することで実現している。
【0090】
このような構成とすると、より簡単な構成にできる。また、関数fを光センサ5を使って求めていくシーケンスと組み合わせることで、複雑な処理をすることなしで、光源装置単体で機能を実現することも可能となる。つまり、このような光センサ5を使ったシーケンスは、音響光学素子2への入力値を変化させていき、必要とする入力信号(駆動信号強度)と光センサ5の出力が一致したら、このときの音響光学素子2への入力値をメモリへ記録する。この動作を必要とする入力信号値の範囲について行うことで関数fに相当するLUTを完成する。
【0091】
また、シーケンスはカウンターや比較器などで構成できるので、関数fを表現するために三角関数や指数関数などの複雑な関数式を使わなくてすみ、実際の装置を使って関数fが決定されるので補正後の精度がさらに向上する。
【0092】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0093】
この第4の実施の形態は、上述した第1乃至第3の実施の形態で述べたレーザ変調装置をレーサ走査型顕微鏡の光源として組み合わせた例について示している。
【0094】
図8は、第4の実施の形態の概略構成を示すもので、図3と同一部分には、同符号を付している。
【0095】
この場合、レーザ光源1と音響光学素子2は、レーザ光学台21を構成し、音響光学素子2からの出力光は、光ファイバ22を介してビームスプリッタ3に導かれる。この場合、ビームスプリッタ3、レーザシャッタ4および光センサ5は、スキャナ23、対物レンズ24などともに、レーザ走査顕微鏡の走査装置25を構成している。また、制御部6は、パーソナルコンピュータ(PC)26により構成している。
【0096】
このようにすれば、レーザ走査顕微鏡の光源として使う場合、まず一度装置のセットアップ(ユニットに組み立てと光学系の調整など)と同時に、組み上げられた光学系で基準となる光量と関数fを各レーザ波長ごとに光センサ5で測定する。
【0097】
これによりレーザ走査顕微鏡特有のパラメータを決定する。このパラメータは顕微鏡の設置や光字系の変更を行わない限り変化しないので、次回以降の装置の立ち上げ時は関数fなどを改めて求める必要はない。
【0098】
実際にレーザ走査顕微鏡を使って標本のデータを取るとき、走査を行う直前に、現在の光量を測定する。そして、この測定値により補正係数を求められ、この補正係数により、測定時の光量は前回使用したときと同じ状態に補正される。
【0099】
測定開始後は、スキャナ23での走査の帰線期間に再度光量の測定を行うことで、光量を安定の状態とすることかできる。
【0100】
この光量を測定するときは1波長ずつ測定をするシーケンスを組むが、シーケンスの順番は特にどのような手順を踏んでもよい。また測定でレーザ光量の細かなノイズを低減するため、画像1ライン分あるいは特定の回数分光量のデータをとり続け平均化したものを、パラメータとしてもよい。特に1ライン分とすることは画像データのデータ転送と同じフォーマットおよび方式か使えるため、装置の回路構成を複雑にせすに済み有効である。
【0101】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。
【0102】
この第5の実施の形態では、第4の実施の形態で述べたレーザ走査顕微鏡により連続してデータを長時間にわたって測定を行うような場合、レーザ光量が測定される蛍光強度などに大きく影響するため、レーザ光量の変動は、測定されたデータの確かさに大きな影響を及ぼしてしまう。このため、長時間の測定中も一定時間ごとに光量の補正を行い、安定した光量を取得することが必要となる。
【0103】
ところで、長時間にわたってデータの測定を行うような場合、この測定の間にインターバルが発生し、何分か経過ごとに測定することが多い。そして、この測定を行わないインターバルの間、標本にレーザ光を照射し続けることは、標本のダメージにつながることから、この間は、レーザシャッタ4を閉じるようにしている。
【0104】
そこで、この第5の実施の形態では、光量の補正を行うタイミングとして、標本測定を行わないインターバル時間を使うことにより、標本に、不要なレーザ光を照射することなく補正のための測定を行うようにしている。
【0105】
このようにすれば、長時間にわたってデータ測定を行うような場合も安定した光量補正を行うことができる。
【0106】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、レーザ光源の最大光量を使用したい場合には、補正係数を強制的に最大値に設定するようにすれば、レーザ変調手段への制御入力信号を最大値にして最大光量を得ることができる。
【0107】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【0108】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、所定の応答速度を維持したレーザ変調を可能とし、レーザ光量の安定化を図ることができるレーザ変調装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の考え方を説明するための概略構成を示す図。
【図2】音響光学素子の入力信号(駆動信号強度)と出力光量の関係を表わす出力特性を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の概略構成を示す図。
【図4】第1の実施の形態に用いられる制御部の概略構成を示す図。
【図5】第1の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートを示す図。
【図6】第1の実施の形態の動作を説明するための他のフローチャートを示す図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の概略構成を示す図。
【図8】本発明の第4の実施の形態の概略構成を示す図。
【符号の説明】
101…レーザ光、102…音響光学素子、
103…光ファイバ、1…レーザ光源
1a〜1c…レーザ光源、2…音響光学素子、3…ビームスプリッタ
4…レーザシャッタ、5…光センサ、6…制御部、7…基準光量記録部
8…割り算器、9…掛け算器、10…関数演算部
12a、12b…ダイクロイックミラー、13…全反射ミラー
14…AOTF、21…レーザ光学台、22…光ファイバ
23…スキャナ、24…対物レンズ、25…走査装置

Claims (6)

  1. レーザ光源と、
    前記レーザ光源から発せられるレーザ光を変調するレーザ変調手段と、
    前記レーザ変調手段で変調されるレーザ光の光量を測定するレーザ光測定手段と、
    入力指示値として測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ変調手段から出力される前記レーザ光の光量の変動前の光量を基準光量として与えられ、前記基準光量と、前記測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ光測定手段により測定された前記レーザ光の光量の変動後の前記レーザ光量の比を算出し、前記レーザ変調手段への入力信号を前記レーザ光の光量の比で補正し、設定したいレーザ光の光量を得るための補正入力指示値を決定する入力値決定手段とを備えることを特徴とするレーザ変調装置。
  2. レーザ光源と、
    前記レーザ変調手段は、音響光学素子からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ変調装置。
  3. 走査装置を有するレーザ走査顕微鏡に適用され、前記レーザ光測定手段は、前記走査装置でのレーザ走査の帰線期間に前記レーザ光の光量を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ変調装置。
  4. インターバル時間を置いた長時間連続測定に用いられるレーザ走査顕微鏡に適用され、前記レーザ光測定手段は、前記インターバルごとに前記レーザ光の光量を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ変調装置。
  5. さらに遮光手段を有し、少なくとも前記レーザ光測定手段による前記レーザ光の光量測定の間、前記レーザ光の標本側への照射を阻止可能としたことを特徴とする請求項3又は4に記載のレーザ変調装置。
  6. レーザ光源と、
    前記レーザ光源から発せられるレーザ光を変調するレーザ変調手段と、
    前記レーザ変調手段で変調されるレーザ光の光量を測定するレーザ光測定手段と、
    入力指示値として測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ変調手段から出力される前記レーザ光の光量の変動前の光量を基準光量として与えられ、前記基準光量と、前記測定基準信号を前記レーザ変調手段へ入力したときの前記レーザ光測定手段により測定された前記レーザ光の光量の変動後の前記レーザ光量の比を算出し、前記レーザ変調手段への入力信号を前記レーザ光の光量の比で補正し、設定したいレーザ光の光量を得るための補正入力指示値を決定する入力値決定手段とを備え、
    前記補正入力指示値を前記レーザ変調手段に入力して、設定したいレーザ光の光量を得ることを特徴とするレーザ変調方法。
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