以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係る体内観察用カテーテルの構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1乃至図3には、本発明に従う構造を有する体内観察用カテーテルの一実施形態として、狭窄部が形成された心臓の血管内に挿入されて、かかる血管内の狭窄部の状態を観察するのに用いられる体内観察用カテーテルが、内部にセンサ素子が挿入位置せしめられた状態における正面形態と軸方向断面形態と軸直角方向断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の体内観察用カテーテルにあっては、長尺な管体からなる、管状本体としてのカテーテル本体10を有している。そして、このカテーテル本体10の内部には、それよりも細長い管体形態を呈するイメージングカテーテル12が挿入されている。
より具体的には、カテーテル本体10は、人体の大腿部や手首部から心臓まで延びる血管内に、それらの全長に亘って挿入可能な外径と長さとを有している。また、このカテーテル本体10は、互い異なる材質からなる先端ブッシュ14と、透過部としての第一チューブ16と、第二チューブ18とを、有している。そして、それら先端ブッシュ14と第一チューブ16と第二チューブ18とが、その順番で、カテーテル本体10の血管内への挿入方向前方側に相当する先端側から、かかる挿入方向後方側に相当する基部側に向かって、同軸的に配されて、溶着等により、互いに一体化せしめられている。
すなわち、カテーテル本体10の最先端(カテーテル本体10の血管内への挿入方向前端)に位置する先端ブッシュ14は、十分な可撓性を備えた熱可塑性ウレタン樹脂製で、長さが短かく、且つ外径の小さな(ここでは0.8mm程度)円筒体にて構成されている。また、この先端ブッシュ14は、軸方向に連続して延び、且つカテーテル本体10の先端側と基部側とにおいてそれぞれ開口する、小径(ここでは、0.4mm程度)の中心孔15を有している。
さらに、この先端ブッシュ14にあっては、先端側の外周面が、先端に向かって次第に小径となるテーパ状案内面20とされている。また、基部側部位の内部には、第一のマーカー部材としてのマーカーリング21が、先端ブッシュ14の中心孔15を取り囲むように、埋設されている。なお、このマーカーリング21は、金、白金、白金ロジウム等の放射線不透過材料を用いて、形成されている。
一方、先端ブッシュ14と第二チューブ18との間に位置する第一チューブ16は、先端ブッシュ14の形成材料たる熱可塑性ウレタン樹脂よりも、多少、可撓性の小さな成形体を与え得る熱可塑性エラストマの一種たるポリエーテルブロックアミド重合体材料を用いて形成されている。また、そのような材質からなる第一チューブ16は、無着色で、実質的に透明性を有し、例えば750〜1500nm程度、とりわけ850〜1500nm程度の波長の近赤外線を十分に透過可能な透光性が具備せしめられている。
さらに、第一チューブ16は、先端ブッシュ14よりも長い長さと、それと同一の外径とを有している。そして、かかる第一チューブ16にあっても、軸方向に連続して延び、且つカテーテル本体10の先端側(先端ブッシュ14側)と基部側(第二チューブ18側)とにおいてそれぞれ開口する中心孔17を有している。なお、この第一チューブ16の内径は、先端ブッシュ14の内径よりも僅かに大きな寸法(ここでは、0.5mm程度)とされている。
そして、このような第一チューブ16の外周面上には、その全長に亘って、軸方向に連続して延びる凹溝22が、周方向に等間隔をおいて、複数(ここでは四つ)設けられている。また、第一チューブ16の先端ブッシュ14側(カテーテル本体10の先端側)の端部における各凹溝22の底部には、その底部を貫通する貫通孔からなる吐出口24が、それぞれ一つずつ設けられている。
換言すれば、第一チューブ16にあっては、先端ブッシュ14におけるマーカーリング21の配設部位の直近に位置する部分に、中心孔17を外部に連通せしめる複数の吐出口24が、周方向に同一の位相差をもって、形成されている。これによって、マーカーリング21、先端ブッシュ14の位置を示すと共に、吐出口24の位置を示す役割を有するように構成されている。そして、そのような複数の吐出口24の形成部位のそれぞれに対して、凹溝22が、マーカーリング21の配設部位の直近に位置する部分から、カテーテル本体10の基部側に向かって連続的に延びるように、形成されている。なお、それら各凹溝22の幅は、例えば、0.16mm程度とされている。また、各吐出口24の直径は、0.15mm程度である。
また、第一チューブ16よりも更にカテーテル本体10の基部側に位置する第二チューブ18は、先端ブッシュ14と第一チューブ16とからなる先端側部分を除くカテーテル本体10の大部分を構成している。そして、この第二チューブ18は、金属線、例えばステンレス製の鋼線が筒状に編織せしめられた編組体が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなる内側樹脂層と、ポリエーテルブロックアミド重合体に対して、放射線透視下での造影性を高めるための三酸化ビスマスが含有せしめられた外側樹脂層との間に挟み込まれるように埋設されて、形成されている。また、かかる第二チューブ18は、先端側部分の外径が小さく(ここでは、0.95mm程度と)される一方、基部側部分の外径が大きく(ここでは、1.07mm程度と)されている。更に、大径とされた基部側部分では、基部側の末端に向かうに従って次第に硬度が高められている。これによって、第二チューブ18全体の可撓性が、第一チューブ16よりも低く、しかも基部側の末端に向かうに従って、より低下せしめられるようになっている。
そして、この第二チューブ18にあっても、軸方向に連続して延び、且つカテーテル本体10の先端側と基部側とにおいてそれぞれ開口する中心孔19を有している。なお、かかる第二チューブ16の内径は、第一チューブ16の内径よりも更に大きな寸法(ここでは、0.69mm程度)とされている。
かくして、本実施形態の体内観察用カテーテルのカテーテル本体10にあっては、全体として、血管内への挿入方向前方側の端部外周面がテーパ状案内面20とされて、かかる前方側(先端側)から後方側(基部側)に向かうに従って可撓性が段階的に低くされた細長いチューブにて、構成されている。これによって、蛇行する血管内に、その内壁面の損傷を可及的に抑えつつ、スムーズに挿入せしめられ得るようになっている。
また、このカテーテル本体10においては、先端ブッシュ14と第一及び第二チューブ16,18のそれぞれの中心孔15,17,19にて、軸方向に連続して延び、且つ先端に向かうに従って段階的に小径化する内孔26が、構成されている。そして、かかる内孔26が、先端ブッシュ14における中心孔15の先端側開口部と、第二チューブ18における中心孔19の基部側開口部とを通じて、カテーテル本体10の血管内への挿入方向の前方側と後方側とにおいて外部に開口せしめられ、且つ第一チューブ16の複数の吐出口24を通じて、側方において外部に開口せしめられているのである。
さらに、ここでは、かかるカテーテル本体10における第二チューブ18の基部側端部に、接続コネクタ27を介して、Y字コネクタ28が接続されている。このY字コネクタ28は、一つの接続口30と、第一及び第二の二つの挿入口32,34とを有している。そして、接続口30において、第二チューブ18の基部側端部に対して、接続コネクタ27を介して基部側開口部に連通せしめられた状態で、固定されている。これによって、カテーテル本体10の内孔26の後方側開口部が、Y字コネクタ28の第一及び第二挿入口32,34を通じて、後方に開口せしめられている。
そして、本実施形態においては、Y字コネクタ28の第一挿入口32を通じて、イメージングカテーテル12が、カテーテル本体10の内孔26内に挿入されているのである。
ここにおいて、このイメージングカテーテル12は、光断層画像計測法(OCT:optical coherence tomography)を利用した公知の基本構造を有している。即ち、イメージングカテーテル12は、内側管体としての外套チューブ36と、かかる外套チューブ36内に挿入された、近赤外線を発光/受光するセンサ素子40とを、有している。
より詳細には、外套チューブ36は、カテーテル本体10における先端ブッシュ14の中心孔15の内径よりも極僅かに小さな外径と、カテーテル本体10の全長よりも所定寸法長い長さとを有している。そして、カテーテル本体10の内孔26内への挿入方向の前方側(先端側)と後方側(基部側)とにおいて開口する内孔38を備えた細管からなっている。なお、かかる外套チューブ36は、例えば750〜1500nm程度、とりわけ850〜1500nm程度の波長の近赤外線を透過可能な透孔性と適度な柔軟性(可撓性)とを有するポリアミド樹脂材料を用いて、形成されている。
また、このような外套チューブ36の先端部には、金、白金、白金ロジウム等の放射線不透過材料からなる、第二のマーカー部材としてのマーカーチップ42が、取り付けられている。このマーカーチップ42は、全体として、外套チューブ36の外径と同一の外径と、カテーテル本体10における先端ブッシュ14よりも少しだけ長い長さとを有する細径の略円柱形状を呈している。また、このマーカーチップ42にあっては、後述する如く、それが取り付けられる外套チューブ36がカテーテル本体10の内孔26内に挿入される際に、その挿入操作がスムーズに進行せしめられるように、先端部が、全周が面取りされた半球形状とされている。そして、このようなマーカーチップ42が先端部に取り付けられていることによって、外套チューブ36の内孔38の先端開口部が、閉塞せしめられている。
一方、センサ素子40は、外套チューブ36の内孔38内を軸方向に自由に移動可能な大きさを有して、外套チューブ36の内孔38内の先端側部位に位置せしめられている。そして、750〜1500nm程度、とりわけ850〜1500nm程度の波長の近赤外線を発するレーザやLED等の発光素子と、かかる近赤外線を受光する受光素子とを備えた公知の構造を有している。
かくして、センサ素子40が、近赤外線を発光/受光可能で且つ外套チューブ36の内孔38内を軸方向に移動可能とされている。そして、それによって、外套チューブ36の内孔38内における所定の移動位置に位置せしめられたセンサ素子40から発せられた近赤外線が、外套チューブ36を透過して、外部の所定部位に照射され得るようになっている。また、そのような近赤外線が照射された外部の所定部位において反射せしめられた反射光が、外套チューブ36を透過して、センサ素子40の受光素子にて受光せしめられるようになっているのである。
また、このようなセンサ素子40には、近赤外線を発光すると共に、受光素子にて受光された光を導く光ファイバ44が、接続されている。この光ファイバ44は、外套チューブ36の内孔38の径よりも十分に小さな外径と、外套チューブ36の全長よりも所定寸法長い長さとを有している。そして、外套チューブ36の内孔38内において、センサ素子40の配置部分から、該内孔38の基部側開口部に向かって延出し、センサ素子40との接続側とは反対側の端部を、かかる基部側開口部から外部に突出させた状態で、位置せしめられている。
また、かかる光ファイバ44にあっては、外套チューブ36の内孔38における基部側開口部からの突出側端部において、光ファイバ44の軸方向への移動を自動的に行なわしめる駆動装置46に接続されている。そして、この駆動装置46は、それを制御するコントローラ48に対して、電気的に接続されている。これにより、コントローラ48による駆動装置46の駆動制御に基づいて、光ファイバ44が、外套チューブ36内を、軸方向に移動せしめられるようになっている。以て、センサ素子40も、コントローラ48による移動制御下で、光ファイバ44の移動に伴って、外套チューブ36内を軸方向に移動せしめられるようになっているのである。
また、ここでは、光ファイバ44も、センサ素子40との接続側とは反対側の末端において、コントローラ48に対して接続されている。これによって、センサ素子40の受光素子にて受光された光が、光ファイバ44を通じて、コントローラ48に導かれるようになっている。なお、このコントローラ48は、光ファイバ44を通じて、センサ素子40から導かれた反射光を画像データに変換可能な構造をも、備えている。そして、このコントローラ48には、かかる画像データに基づいた画像を映し出すモニタ50が、接続されている。
かくして、かかるイメージングカテーテル12にあっては、センサ素子40の受光素子にて受光された光、つまり、センサ素子40から所定の部位に対して照射せしめられた近赤外線が、かかる所定部位において反射して戻ってきた反射光に基づいて、近赤外線が照射された被照射部位の状態を、モニタ50に映し出し得るように構成されているのである。
そして、本実施形態においては、そのような構造とされたイメージングカテーテル12が、カテーテル本体10の内孔26内に、その後方側開口部に連通する前記Y字コネクタ28の第一挿入口32を通じて、挿入されている。これによって、カテーテル本体10の内孔26内に、センサ素子40と、それに接続される光ファイバ44とが、外套チューブ36の内孔38に挿入された状態で、軸方向に移動可能に挿入されている。また、かかるセンサ素子40は、特に、カテーテル本体10の内孔26における、近赤外線を透過可能な第一チューブ16の中心孔17にて与えられる部分内に、外套チューブ36を介して位置せしめられている。このことから明らかなように、外套チューブ36が、カテーテル本体10の内孔26内に挿入された内側管体として、構成されている。
さらに、このようなカテーテル本体10の内孔26内へのイメージングカテーテル12の挿入状態下において、カテーテル本体10の内孔26内におけるカテーテル本体10の内周面と外套チューブ36の外周面との間には、軸方向に連続して延びる円筒状の隙間51が、形成されている。また、この円筒状の隙間51が、Y字コネクタ28の第二挿入口34を通じて、外部に連通せしめられている。そして、かかるY字コネクタ28の第二挿入口34には、生理的塩類溶液の一種たる生理食塩水を供給する生理食塩水供給装置55が、接続されている。なお、この生理食塩水供給装置55は、例えば、手動シリンジや自動インジェクタ等にて、構成される。
かくして、本実施形態においては、カテーテル本体10の内孔26にて、イメージングカテーテル12が挿入されるルーメン54が構成されている。また、かかるルーメン54内のイメージングカテーテル12が挿入されるべき中心部が、第一ルーメン部52を構成している。そして、ルーメン54内へのイメージングカテーテル12の挿入状態下においては、イメージングカテーテル12の外套チューブ36の内孔38にて、センサ素子40が挿入される第一ルーメン部52が構成されていると共に、ルーメン54(カテーテル本体10の内孔26)の内周面と外套チューブ36の外周面との間に形成される円筒状の隙間51にて、生理食塩水が外部から供給される、流通路としての第二ルーメン部53が、構成されている。これにより、カテーテル本体10のルーメン54内において、第二ルーメン部53が、第一ルーメン部52の周りを取り囲むように、同軸的に位置せしめられた状態で、形成されているのである。
また、ここでは、そのようなカテーテル本体10のルーメン54内へのイメージングカテーテル12の挿入による第一ルーメン部52と第二ルーメン部53の形成下において、イメージングカテーテル12の外套チューブ36の先端部に取り付けられたマーカーチップ42が、先端ブッシュ14に嵌入せしめられている。
そして、かかる嵌入状態下において、マーカーチップ42は、先端ブッシュ14に埋設されたマーカーリング21に対して、先端ブッシュ14の内側部分を介して、重ね合わされるようになっている。また、マーカーチップ42の外周面が、カテーテル本体10の先端ブッシュ14の内周面に密接せしめられて、カテーテル本体10の内孔26の前方側開口部にて与えられるルーメン54の前方側開口部が、殆ど液漏れのないように、実質的に液密に閉塞せしめられている。
一方、図示されてはいないものの、Y字コネクタ28の第一挿入口32内には、第一挿入口32の内周面と、外套チューブ36の第一挿入口32内への挿通部位の外周面との間の隙間を液密に閉塞する弁体が、配設されている。また、Y字コネクタ28の接続口30にも、第二ルーメン部53からの外部への液体の流出を防止するための弁体が、配設されている。
これによって、第二ルーメン部53(筒状の隙間51)が、カテーテル本体10の基部側において、ルーメン54の後方側開口部に連通せしめられたY字コネクタ28の第二挿入口34を通じてのみ、後方に開口せしめられている。また、カテーテル本体10の先端部側では、カテーテル本体10における第一チューブ16の複数の吐出口24のみを通じて、側方に開口せしめられている。
かくして、Y字コネクタ28の第二挿入口34を通じて、生理食塩水供給装置55からカテーテル本体10の第二ルーメン部53内に供給された生理食塩水が、第二ルーメン部53内を、カテーテル本体10の先端側向かって流動せしめられる。そして、カテーテル本体10の先端側部位において、第一チューブ16に設けられた複数の吐出口24のみから、第一チューブ16の外部に吐出せしめられるようになっているのである。
一方、前述せるように、第一ルーメン部52(外套チューブ36の内孔38)内に挿入されたセンサ素子40は、前記コントローラ48の制御下での光ファイバ44の移動に伴って、第一ルーメン部52内を軸方向に移動せしめられるようになっている。従って、ここでは、カテーテル本体10における近赤外線透過性を備えた第一チューブ16内の所望の位置において、かかるセンサ素子40から発せられた近赤外線が、かかる第一チューブ16と外套チューブ36とを、内側から外側に向かって透過して、所定の部位に照射されるようになっている。また、そのような所定の部位に照射された近赤外線が、かかる所定部位(被照射部位)において反射されて形成された反射光が、カテーテル本体10の第一チューブ16と外套チューブ36とを、外側から内側に向かって透過して、センサ素子40にて、受光されるようになっている。そして、このようなセンサ素子40にて受光される反射光に基づいて、近赤外線が照射された被照射部位の状態が、モニタ50に映し出され得るようになっているのである。
ところで、かくの如き構造とされた本実施形態の体内観察用カテーテルを用いて、心臓の血管(冠動脈)内に形成された狭窄部である慢性完全閉塞病変(以下、CTO病変と言う)の内部を観察する際には、例えば、以下の如き手順に従って、その作業が進められることとなる。
すなわち、先ず、図4に示されるように、心臓の血管56内に形成されたCTO病変58に対して、ガイドワイヤ59の先端部を挿通させる。これによって、CTO病変58に、ガイドワイヤ59の外径に対応した内径を有する貫通孔60を形成する。
次に、ガイドワイヤ59に貫通孔拡径カテーテル62を外挿せしめる。そして、図5に示される如く、貫通孔拡径カテーテル62を、ガイドワイヤ59に沿って、心臓の血管56内に挿入させて、CTO病変58に形成された貫通孔60に挿通せしめる。このとき、貫通孔拡径カテーテル62として、例えば、複数の金属素線を撚り合わせた撚り線チューブの先端に刃部62aが設けられてなるものが、用いられる。そして、そのような貫通孔拡径カテーテル62が、回転せしめられつつ、CTO病変58の貫通孔60内に挿通される。これにより、CTO病変58の貫通孔60の内周面が、貫通孔拡径カテーテル62の刃部に削り取られて、かかる貫通孔60の径が、大きくされる。なお、この拡径された貫通孔60の径は、有利には、体内観察用カテーテルのカテーテル本体10がスムーズに挿入され得る大きさとされる。
次いで、CTO病変58の貫通孔60を拡径化したら、貫通孔拡径カテーテル62を、心臓の血管56内から抜き取ると共に、ガイドワイヤ59から離脱させる。その後、内孔26内に、イメージングカテーテル12が未だ挿入されていない体内観察用カテーテルのカテーテル本体10を、ガイドワイヤ59に外挿する。
そして、図6に示されるように、カテーテル本体10を、ガイドワイヤ59に沿って、心臓の血管56内に挿入して、拡径化されたCTO病変58の貫通孔60内に挿通せしめる。
このとき、前述せる如く、カテーテル本体10の先端ブッシュ14の先端部外周面が、テーパ状案内面20とされていると共に、カテーテル本体10が、基部側に向かうに従って、可撓性が段階的に低くされている。そのため、カテーテル本体10が、蛇行する血管56内に、その内壁面の損傷を可及的に抑えつつ、十分な押し込み特性をもって、スムーズに挿入せしめられることとなる。
また、このようなカテーテル本体10の血管56内への挿入作業は、例えば、放射線透視下で、実施される。そうすれば、カテーテル本体10における先端ブッシュ14の内部に設けられたマーカーリング21の位置を確認しながら、カテーテル本体10を血管56内及びCTO病変58の貫通孔60内に挿入乃至は挿通させることが出来る。そして、それによって、マーカーリング21の直近の第一チューブ16部位に形成された複数の吐出口24を、CTO病変58の貫通孔60内における所望の位置に配置されるように、カテーテル本体10の位置決めを行うことが出来る。
次いで、上記の如き要領で、複数の吐出口24が、CTO病変58の貫通孔60内における所望の位置にされるように、カテーテル本体10の位置決めを行った後、心臓の血管56内とカテーテル本体10内とから、ガイドワイヤ59を抜き取る。
その後、図7に示されるように、ガイドワイヤ59が抜き取られたカテーテル本体10の内孔26内、即ちルーメン54内に、イメージングカテーテル12を挿入する。これによって、CTO病変58の貫通孔60内に挿入されたカテーテル本体10のルーメン54内に、センサ素子40が移動可能に挿入された第一ルーメン部52が形成される。また、それと共に、外套チューブ36の外周面とカテーテル本体10の内周面との間に、生理食塩水が供給される第二ルーメン部53が形成される。
また、このようなイメージングカテーテル12のルーメン54内への挿入操作も、放射線透視下で、実施される。そうすれば、イメージングカテーテル12の外套チューブ36の先端に設けられたマーカーチップ42の位置を確認しながら、イメージングカテーテル12を、ルーメン54内に挿入させることが出来る。それによって、マーカーチップ42が、カテーテル本体10のマーカーリング21の配置位置と対応する、互いに重ね合わされる位置にまで、イメージングカテーテル12を、カテーテル本体10のルーメン54内に挿入させることが出来る。そして、その結果、カテーテル本体10内に形成される第二ルーメン部53の先端側開口部の実質的に液密な閉塞が実現され得るように、マーカーチップ42を、カテーテル本体10の先端ブッシュ14に対して確実に嵌入させることが可能となる。
その後、生理食塩水供給装置55を作動させて、生理食塩水を、Y字コネクタ28の第二挿入口34を通じて、カテーテル本体10の第二ルーメン部53内に供給する。この際の生理食塩水の流速や供給時間は、特に限定されるものではないものの、例えば、流速が0.5ml/s程度とされ、また供給時間が20秒間程度とされる。
これによって、図8に示されるように、第二ルーメン部53内に供給された生理食塩水57が、カテーテル本体10の第一チューブ16に設けられた複数の吐出口24を通じて、第一チューブ16の外周面上に吐出される。このとき、カテーテル本体10の先端ブッシュ14の外周面が、CTO病変58の貫通孔60の内周面と接触せしめられているか、若しくはそれら先端ブッシュ14の外周面とCTO病変58の貫通孔60の内周面との間の隙間が十分に小さくされている。また、第一チューブ16の外周面には、各吐出口24の形成部位から、カテーテル本体10の基部側に向かって延びる複数の凹溝22が、形成されている。
それ故、各吐出口24から外部に吐出された生理食塩水57は、第一チューブ16の外周面の周囲に存在する血液61と共に、各凹溝22に案内されて、各凹溝22内を、カテーテル本体10の基部側に向かって流動せしめられるようになる。その結果、少なくとも、カテーテル本体10の第一チューブ16の外周面の周囲から血液61が除去される。
そして、そのようにして、カテーテル本体10の第一チューブ16の外周面の周囲から血液61が除去された状態下において、カテーテル本体10の第一ルーメン部52内に挿入位置せしめられたイメージングカテーテル12のセンサ素子40から、近赤外線を発射させる。これにより、近赤外線を、イメージングカテーテル12の外套チューブ36とカテーテル本体10の第一チューブ16とを透過させて、CTO病変58の貫通孔60における内周面の所定部位に照射せしめる。また、その一方で、CTO病変58の貫通孔60における内周面の被照射部位で反射して、形成された反射光をセンサ素子40にて受光させる。
なお、この操作は、必要に応じて、光ファイバ44を、コントローラ48の駆動制御の下で、駆動装置46にて軸方向に移動させて、実施される。そうすることにより、CTO病変58の貫通孔60における内周面の様々な部位に対して、近赤外線が照射せしめられると共に、それら各内部部位からの反射光が、センサ素子40にて受光される。
そして、かくしてセンサ素子40にて受光された反射光は、光ファイバ44を通じて、コントローラ48に導かれるようになる。また、かかる反射光を検知したコントローラ48からは、反射光に基づいた画像データがモニタ50に出力される。これによって、モニタ50に、CTO病変58の貫通孔60における内周面の被照射部位の状態が映し出される。そうして、モニタ50に映し出された画像が、観察されることとなる。
このように、本実施形態では、近赤外線が透過せしめられるカテーテル本体10の第一チューブ16の外周面の周囲から血液61が、カテーテル本体10の各吐出口24から外部に吐出される生理食塩水にて除去された状態で、センサ素子40からの近赤外線の照射操作と、センサ素子40による反射光の受光操作が実施される。それ故、センサ素子40からの近赤外線の照射光と、CTO病変58の貫通孔60における内周面において反射されて形成される反射光とが、何れも、血液61中の赤血球に吸収せしめられるようなことが有利に解消され得る。そして、それによって、センサ素子40から照射される照射光と、センサ素子40にて受光される反射光のそれぞれの光量が、十分に且つ安定的に確保され得ることとなる。
従って、このような本実施形態の体内観察用カテーテルを用いた場合、コントローラ48からモニタ50に出力される画像データの解像度が、実質的に高められ得る。そして、その結果として、心臓の血管56に形成されたCTO病変58の内部の状態が、より詳細に観察され得る。以て、より一層適切な診断を行うことが可能となるのである。
また、かかる本実施形態によれば、カテーテル本体10内に、第二ルーメン部53が、第一ルーメン部52の周りを取り囲んで、第一ルーメン部52と同軸的に位置するように形成されている。それ故、例えば、第一ルーメン部52と第二ルーメン部53とが、カテーテル本体10内に径方向に並んで、平行に延びるように形成される場合に比して、各ルーメン52,54の流路断面積を減少させることなく、カテーテル本体10の小型化が、有利に図られ得る。
さらに、本実施形態では、カテーテル本体10のルーメン54内に、イメージングカテーテル12が挿入されることで、ルーメン54の前方側開口部が、イメージングカテーテル12の外套チューブ36の先端部に設けられたマーカーチップ42にて閉塞せしめられるようになっている。また、それによって、第二ルーメン部53が、カテーテル本体10の先端部側において、複数の吐出口24のみを通じて外部に開口せしめられるようになる。以て、第二ルーメン部53内に供給される生理的食塩水57の全量が、それら複数の吐出口24のみから外部に吐出されるようになっている。
それ故、かかる体内観察用カテーテルにおいては、心臓の血管56内への挿入状態下で、カテーテル本体10の第一チューブ16の外周面の周囲に存在する血液61が、各吐出口24から吐出される生理的食塩水57にて、より確実に且つ効率的に除去され得る。そして、その結果、カテーテル本体10内のセンサ素子40から照射される照射光と、センサ素子40にて受光される反射光のそれぞれの光量が、更に一層十分に且つ安定的に確保され得るようになる。従って、カテーテル本体10内のセンサ素子40にて受光される反射光に基づいて、モニタ50に映し出される画像の解像度が、より確実に且つ安定的に高められ得ることとなる。
また、本実施形態においては、カテーテル本体10の血管56内への挿入操作と、血管56内に挿入されたカテーテル本体10のルーメン54内へのイメージングカテーテル12の挿入操作とが、放射線透視下で実施されることにより、血管56内のCTO病変58の所定部位に対して、カテーテル本体10に設けられた複数の吐出口24とイメージングカテーテル12内のセンサ素子40とを、所望の部位に位置決めすることが出来る。
従って、かかる本実施形態の体内観察用カテーテルによれば、血管56内のCTO病変58の観察されるべき部位を、正確に且つ確実に観察することが可能となる。
さらに、このような体内観察用カテーテルでは、上述の如き放射線透視下で、カテーテル本体10のルーメン54内に、イメージングカテーテル12を挿入させる際に、カテーテル本体10のマーカーリング21とイメージングカテーテル12のマーカーチップ42とが対応位置せしめられて、重ね合わされた状態、即ち、マーカーチップ42が、カテーテル本体10の先端ブッシュ14に嵌合されて、カテーテル本体10の内孔26の前方側開口部が閉塞状態となったことが、容易に確認することが出来る。
それ故、かかる体内観察用カテーテルによれば、カテーテル本体10のルーメン54の前方側開口部が閉塞せしめられて、第二ルーメン部53が複数の吐出口24のみにて外部に開口せしめられるようになった状態が確保されることによって奏される、前述せる如き優れた特徴が、より一層確実に発揮され得ることとなる。
更にまた、本実施形態の体内観察用カテーテルでは、血管56内への挿入状態下で、カテーテル本体10における第一チューブ16の外周面の周囲に存在する血液61が、各吐出口24から外部に吐出された生理食塩水57により、それと共に、カテーテル本体10の外周面に設けられた複数の凹溝22に案内されて、各凹溝22内を、カテーテル本体10の基部側に向かって流通せしめられるようになっている。そして、それによって、カテーテル本体10の第一チューブ16の外周面の周囲から、血液61が、確実に除去され得る。以て、血管56内のCTO病変58の内部が、より詳細に観察され得ることとなる。
しかも、かかる体内観察用カテーテルにおいては、第一チューブ16の外周面の周囲に存在する血液61が、カテーテル本体10の基部側に向かって流通せしめられるようになっていることで、カテーテル本体10の先端部側、換言すれば、カテーテル本体10が挿入される血管56の抹消部側に流れることが、効果的に防止され得る。従って、例えば、CTO病変58の貫通孔60を拡径せしめたときに異物等が生じたとしても、そのような異物等が、血液61と共に、血管56の末梢部に流動せしめられることが、極めて有利に阻止され得ることとなる。
また、本実施形態の体内観察用カテーテルにあっては、カテーテル本体10のルーメン54が、その先端部と基部とにおいて、血管56内への挿入方向前方と後方とにそれぞれ開口せしめられている。そして、そのようなルーメン54内に、血管56内に予め挿入されたガイドワイヤ59を挿通させることにより、カテーテル本体10が、ガイドワイヤ59に案内されつつ、血管56内に挿入せしめられるようになっている。従って、このような本実施形態に係る体内観察用カテーテルにおいては、血管56内や、かかる血管56内に形成されたCTO病変58等の狭窄部の内部に対して、よりスムーズに且つ迅速に挿入され得ることとなる。
さらに、かかる体内観察用カテーテルでは、カテーテル本体10の内孔26にて与えられるルーメン54内に、第一ルーメン部52と第二ルーメン部53とが形成されている。これによって、カテーテル本体10、ひいては体内観察用カテーテル全体の構造の簡略化が図られ得る。
更にまた、本実施形態では、従来から一般に使用されるイメージングカテーテル12を利用して、近赤外線を発光/受光するセンサ素子40が、カテーテル本体10内に挿入配置されるようになっている。それ故、カテーテル本体10に対して、センサ素子40を挿入配置させるための特別な設計を施す必要がない。これによっても、体内観察用カテーテル全体の構造の簡略化が図られ得ると共に、設計変更に伴う特別な経済負担が強いられることもない。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約を受けるものではない。
例えば、カテーテル本体10の外周面に設けられる凹溝22の形態や配設数は、例示のものに、何等限定されるものではなく、種々変更が可能である。
すなわち、例えば、凹溝22を、軸方向に螺旋状に延びる螺旋形態をもって、構成しても良い。そうすれば、凹溝22を、軸方向と周方向とに延びる形態をもって構成することが出来る。それによって、各吐出口24から外部に吐出せしめられた生理食塩水を、凹溝22の延出方向に沿って、カテーテル本体の軸方向と周方向の両方向に導くことが出来る。以て、カテーテル本体10の外周面の周囲に存在する血液を、生理的食塩水にて、より効率的且つ確実に押し流して、除去することが可能となる。なお、そのような凹溝22の断面形状も、例示のものに、決して限定されるものではない。
また、カテーテル本体10に設けられる吐出口24の配設位置や配設個数も、例示のものに、何等限定されるものでないことは、勿論である。
さらに、前記実施形態では、カテーテル本体10の一部が、近赤外線を透過する透過部(第一チューブ16)とされていたが、カテーテル本体10の全体を、近赤外線を透過可能な透過部と為しても良い。
更にまた、カテーテル本体10を与える材料は、例示のものに、決して限定されるものではない。また、カテーテル本体10を一種類の材料にて形成しても、何等差し支えないのである。
さらに、センサ素子40として、近赤外線を発光する発光素子と該近赤外線を検知する受光素子とを有するものに代えて、例えば、超音波を発生する素子とそれを検知する素子とを備えたものを用いることも出来る。
更にまた、第二ルーメン部53内に供給されて、各吐出孔24から外部に吐出せしめられる生理食塩水を、生理食塩水以外の公知の生理的塩類溶液に変更しても良い。
また、第二ルーメン部53内に供給される生理食塩水等の生理的塩類溶液の流速や供給時間は、血液等、カテーテル本体の外周面の周囲から除去されるべき体内物質の量等によって、適宜に決定されるところである。
なお、前記実施形態では、本発明を、狭窄部が形成された心臓の血管内に挿入されて、かかる血管内の狭窄部の状態を観察するのに用いられる体内観察用カテーテルに適用したものの具体例を示した。しかしながら、本発明は、体内に挿入されて、体内の各種の部位を観察するのに用いられる体内観察用カテーテルの何れに対しても、有利に適用され得ることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものである。また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。