JP4614219B2 - レーザ溶接継手の検査方法及び検査装置 - Google Patents
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Description
一般に、板厚数mmの薄板の検査方法としては、放射線透過試験、超音波探傷試験(透過法)、磁粉探傷試験、渦流探傷試験などが用いられている。しかし、放射線透過試験は被爆の問題があるので、現場での適用は制約を受ける。透過式の超音波探傷試験については、比較的大型の構造物の場合、送受信用の探触子を対向させて配置することが難しいため、このような構造物の製作現場での適用は困難である。また、磁粉探傷試験は非磁性体への適用は不可能であり、渦流探傷試験は板厚が1mm以下でないと適用することが困難である。
このような重ね継手10においては、溶接部3の溶込み深さが所定値以上であって、所望する機械的強度が必要なことは言うまでもないが、レーザ溶接による溶接線が裏材2の表面に露出しないため、溶接部3における溶込み深さを簡単に確認することができない。
また、反射式の超音波探傷試験法は一般に用いられている方法であるが、薄板のようにビーム路程が短い場合には、検出すべき信号が探触子の不感帯に埋もれてしまうため、薄板のレーザ重ね継手の検査に適用できなかった。
この従来の超音波探傷法による検査装置は、送受信用の各探触子を容易に対向させて配置することができる比較的小型の構造物を対象とするものであり、大型の構造物の場合は、送受信用の各探触子を対向させて配置することがきわめて難しいため、適用することが困難である。
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた解決手段1は、表材と裏材をレーザ溶接により接合した重ね継手の溶接部を検査する方法を前提として、
超音波垂直探触子を上記裏材又は表材の表面に沿って移動して、上記重ね継手の未接合部と接合部における裏材又は表材の底面エコー高さの変化を検出することである。
〔作 用〕
裏材(又は表材)の表面側からの探傷によって、重ね継手の未接合部では裏材(又は表材)の底面エコーが検出されるが、接合部では超音波の一部が溶接金属中を伝搬して表材(又は裏材)に透過するため、裏材(又は表材)の底面エコー高さが低下する。この底面エコー高さの変化を検出することにより、重ね継手の溶接部における接合度合を検査することができる。
実施態様1は、上記解決手段1の検査方法において、未接合部での底面エコー高さと接合部での最小底面エコー高さから、相対エコー高さを算出し、この算出された相対エコー高さと、レーザ溶接による接合幅、又は重ね継手の引張強度との相関関係に基づいて、上記相対エコー高さから重ね継手の接合幅又は引張強度を推定することである。
〔作 用〕
この相対エコー高さは、レーザ溶接による接合部の幅や重ね継手の引張強度と、図3及び図4に示されているような相関関係があるので、その関係を利用することによって、相対エコー高さから接合部の幅又は引張強度を推定することができる。
実施態様2は、上記実施態様1の検査方法において、超音波垂直探触子として、二振動子垂直探触子又はフェイズドアレイ探触子を用いることである。
〔作 用〕
超音波垂直探触子として二振動子垂直探触子を用いることにより、不感帯が非常に短くなるので、ビーム路程が短い探傷が可能である。また、二振動子垂直探傷の特長である超音波ビームの集束効果を利用して、探傷部位に超音波を集束することができる。
一方、超音波垂直探触子としてフェイズドアレイ探触子を用いることにより、電子的に超音波を集束させて使用することも可能である。その場合には、不感帯の影響があるため、くさびの使用や探触子と被検査体間に距離を設ける方法(ギャップ法)を利用することにより、不感帯の影響を受けないようにすることができる。
また、フェイズドアレイ探触子を用いる場合には、物理的に移動することなく走査(電子スキャン)が可能であるため、超音波垂直探触子を用いるときのように、裏材又は表材の表面に沿って探触子を移動(走査)させる必要はない。
上記課題を解決するために講じた解決手段2は、表材と裏材をレーザ溶接により接合した重ね継手の溶接部を検査する装置を前提として、
上記裏材又は表材の表面に沿って移動される超音波垂直探触子と、上記裏材又は表材の底面エコー高さを検出するエコー高さ検出手段と、上記エコー高さ検出手段により検出される上記重ね継手の未接合部での底面エコー高さと、接合部での最小底面エコー高さから、相対エコー高さを算出する演算手段と、上記算出された相対エコー高さと、レーザ溶接による接合幅、又は重ね継手の引張強度との相関関係に基づいて、上記相対エコー高さから重ね継手の接合度合を判定する比較判定手段を備えて成ることである。
〔作 用〕
超音波垂直探触子を裏材(又は表材)の表面に沿って移動させて、エコー高さ検出手段によって裏材(又は表材)からの底面エコー高さを検出することにより、重ね継手の未接合部での底面エコー高さと、接合部での最小底面エコー高さを検出することができる。演算手段において、この未接合部での底面エコー高さと、接合部での最小底面エコー高さから、相対エコー高さを算出することができ、この相対エコー高さによって重ね継手の溶接部における接合度合を検査することができる。
実施態様3は、上記解決手段2の検査装置において、超音波垂直探触子として、二振動子垂直探触子又はフェイズドアレイ探触子を用いることである。
〔作 用〕
上記実施態様2の作用と同じである。
(1) 請求項1及び請求項3に係る発明
超音波垂直探触子を用いて、裏材(又は表材)の底面エコー高さの変化を検出することにより、重ね継手の溶接部における接合度合を検査することができる。
そして、非磁性体材料から成る比較的大型の構造物における薄板の重ね継手についても、その作製現場において溶接部を比較的簡単に検査することができる。
また、相対エコー高さと、レーザ溶接による接合幅や重ね継手の引張強度との相関関係を利用して、相対エコー高さから接合部の幅又は引張強度を推定することができる。
二振動子垂直探触子を用いることにより、不感帯が非常に短くなりビーム路程の短い探傷が可能であるので、板厚数mmの重ね継手も精度良く検査することができる。また、二振動子垂直探傷を利用しているので、探傷部位に超音波を集束することができ、検査精度を向上することが可能である。
そして、超音波垂直探触子としてフェイズドアレイ探触子を用いることにより、電子的に超音波を集束させて使用することが可能であり、検査精度を向上することができる。また、上記超音波垂直探触子を用いるときのように、裏材(又は表材)の表面に沿って探触子を移動させる必要がない。
図2(a)に示されているように、表材1と裏材2がレーザ溶接により接合され、接合幅wの溶接部3を有する重ね継手10において、裏材2の表面上に超音波探触子5(例えば、二振動子垂直探触子)を配置する。その際、二振動子垂直探触子を用いる場合は、音響分割板が溶接線に対して平行(図2(a)において紙面に垂直)になるように配置する。この超音波探触子5は、図2(a)に示されている矢印のように、左側の未接合部から溶接部3(接合部)を経て右側の未接合部まで移動(走査)される。
重ね継手10を形成する表材1及び裏材2としては、ステンレス鋼、鉄又はアルミニウム等が使用される場合が多い。また、図2(a)に示されている実施例においては、重ね継手10の裏材2の表面上に超音波探触子5を配置しているが、これに限定されることなく、超音波探触子5を表材1の表面上に配置しても良いことは言うまでもない。
図3は、機械試験(引張強度試験)後の破面を観察して求めた重ね継手の溶接部の接合幅(接合部の面積を求め、接合長で除した値;平均接合幅)と、上述の相対エコー高さとの関係を示したものである。図3に示されているように、接合幅と相対エコー高さの間には相関関係があり、相対エコー高さを計測することにより接合幅を推定することが可能である。
また、図4は、機械試験で求めた引張強度と相対エコー高さの関係を示したものである。図4に示されているように、引張強度と相対エコー高さの間に相関関係があり、相対エコー高さから引張強度を推定することが可能である。
そして、図5は、接合幅と引張強度との関係を求めたもので、図3の結果から図4を求める際に用いたものである。
(1) 手 法
検査対象が薄板であるため、不感帯の短い二振動子垂直超音波法を用いた。
(2) 探触子
探触子は二振動子垂直探触子であり、次のような特性を有する。
周波数:10MHz
振動子寸法:3.5×10mm
集束範囲:0.8mm〜3.3mm
試験体Tは7種類作製されるが、各試験体毎に溶接速度を変えて入熱量を変えることによって、それぞれ溶込み量を異ならせている。各試験体の板厚は7種類とも同じであり、表材1’が1.0mm、裏材2’が1.5mmである。(図6に試験体Tの一例を示す。)
探傷方法としては、図2に示されているように、重ね継手の裏材の表面側に探触子を配置し、裏材の底面エコーを計測する。接合部では溶込みのため、超音波が表材側に透過して、該底面エコー高さが低下することが予想されるため、未接合部と接合部の底面エコー高さを計測し、その差(相対エコー高さ)を求める。
上記(3)において作製した試験体を上記探傷方法により底面エコー高さを計測し、相対エコー高さを求めた。
(5) 引張強度及び接合幅
上記(4)において超音波探傷方法により計測した試験片について、機械試験をすることにより引張強度を求めると共に、破断面を観察することにより接合幅を求めた。
図3は横軸に接合幅を、縦軸に相対エコー高さ(底面エコー高さに対する接合部のエコー高さ)を示したものであり、図4は横軸に引張強度を、縦軸に相対エコー高さを示したものである。図3及び図4に示されているように、接合幅が大きいほど、あるいは引張強度が高いほど相対エコー高さは低下しており、相対エコー高さを計測することによって、接合幅と引張強度を推定することが可能である。
したがって、重ね継手について、未接合部と接合部における裏材(又は表材)の底面エコー高さを測定して、この測定値から相対エコー高さを算出することによって、重ね継手の健全性を判定することが可能である。
フェイズドアレイ探触子は、多数(例えば、64個)の振動子が一列に連続して配列されているものであって、電子的に超音波を集束させたり、物理的に移動することなく走査(電子スキャン)することができるものであるから、このフェイズドアレイ探触子を用いて重ね継手(試験体)の溶接部を試験又は検査する場合には、溶接線を横切る方向への走査は電子スキャンにより行うことができる。
図7−1は、フェイズドアレイ探触子による電子スキャンにより、溶接線と直交する方向に走査したときの超音波エコー高さ分布図であり、また図7−2は、フェイズドアレイ探触子により溶接線と直交する方向に走査(電子スキャン)しながら、且つ、フェイズドアレイ探触子を溶接線と平行する方向に走査(物理的に移動)したときの裏材底面波の超音波エコー高さ分布図である。そして、図7−1及び図7−2における(a)は、前述の7種類の試験体のうち溶接速度が1番遅い(入熱量が最も大きい)ものの超音波エコー高さ分布図であり、また同じく(b)は、溶接速度が1番速い(入熱量が最も小さい)ものの超音波エコー高さ分布図である。
したがって、重ね継手の接合幅と相対エコー高さとの相関関係(図3)、又は引張強度と相対エコー高さとの相関関係(図4)を求める試験において、また、重ね継手の溶接部の検査において、超音波探触子としてフェイズドアレイ探触子を用いることができる。
この重ね継手の検査装置は、図8に示されているように、超音波探触子5と、該超音波探触子5に接続されるエコー高さ検出手段11と、該エコー高さ検出手段11に接続される相対エコー高さ演算手段12と、該演算手段12に接続される比較判定手段13と、該比較判定手段13に接続される入力手段16、メモリー部15及び表示手段14とから構成される。
上記エコー高さ検出手段11は、超音波探傷子5の受信部から信号を受けて、表材(又は裏材)の底面エコー高さを計測する。上記相対エコー高さ演算手段12は、該エコー高さ検出手段11により計測された重ね継手の未接合部での底面エコー高さと、接合部での最小底面エコー高さに基づいて相対エコー高さを算出する。また、上記比較判定手段13は、該演算手段12により算出された相対エコー高さと閾値(合否の判定基準)とを比較することにより、重ね継手の接合度合について合否を判定して、その結果を表示手段14に表示するものである。さらに、メモリー部15は、被検査体である重ね継手の板厚や材質等に応じて変更すべき閾値を記憶しているものであり、入力手段16は検査において必要な情報、例えば閾値選択指令、検査開始又は終了指令等を入力するものである。
この操作機器30は、吸盤又は磁石等のリニアガイド固定治具31により溶接線3aの方向に沿って固定される第1のリニアガイド32と、この第1のリニアガイド32に支持され該第1のリニアガイド32に沿って移動される駆動装置33と、この駆動装置33に支持され超音波探触子5を上記溶接線3aに直交する方向に移動する第2のリニアガイド34とから成る。上記超音波探触子5は、駆動装置33の動作によって、被検査体である重ね継手10の溶接線3aに沿うX方向と、該溶接線3aに直交するY方向に移動され、所定の検査位置において底面エコー高さを測定すべく走査される。
この操作機器40は、ロボットアーム42,43を備える多関節ロボット41と、このロボットアーム42,43の先端に取り付けられ衝撃吸収機能や位置検出機能を備える探触子駆動機構45とから成り、この探触子駆動機構45には超音波探触子5が取り付けられる。この超音波探触子5は、上記多関節ロボット41の動作によって、被検査体である重ね継手10の溶接線3aに対して移動され、所定の検査位置において底面エコー高さを測定すべく走査される。
また、図9(c)に示されたものは、上記ロボットアーム42,43の先端に、探触子駆動機構45と共にレーザ溶接ヘッド47が一緒に取り付けられており、該レーザ溶接ヘッド47でレーザ溶接をした直後にその溶接部の検査を行うことができるようにしたものである。
3,3’‥‥溶接部 3a‥‥溶接線
5‥‥超音波探触子
10‥‥重ね継手(被検査体) 11‥‥エコー高さ検出手段
12‥‥相対エコー高さ演算手段 13‥‥比較判定手段
14‥‥表示手段 15‥‥メモリー部
16‥‥入力手段
20,25‥‥裏材底面エコー高さの低い部分(接合部)
21‥‥重ね継手の裏材表面からの表面エコー高さ分布
22‥‥重ね継手の裏材裏面からの底面エコー高さ分布
26,27‥‥裏材底面エコー高さの高い部分(未接合部)
30‥‥リニアガイドによる操作機器 31‥‥リニアガイド固定治具
32,34‥‥リニアガイド 33‥‥駆動装置
40‥‥多関節ロボットによる操作機器 41‥‥多関節ロボット
42,43‥‥ロボットアーム 45‥‥探触子駆動機構
47‥‥レーザ溶接ヘッド
L‥‥レーザ光 T‥‥試験体
w‥‥接合幅
Claims (4)
- 表材と裏材をレーザ溶接により接合した重ね継手の溶接部を検査する方法において、
超音波垂直探触子を上記裏材又は表材の表面に沿って移動して、上記重ね継手の未接合部と接合部における裏材又は表材の底面エコー高さを検出し、
上記未接合部での底面エコー高さと上記接合部での最小底面エコー高さから、相対エコー高さを算出し、
上記算出された相対エコー高さと、レーザ溶接による接合幅、又は重ね継手の引張強度との相関関係に基づいて、上記相対エコー高さから重ね継手の接合幅又は引張強度を推定することを特徴とするレーザ溶接継手の検査方法。 - 上記超音波垂直探触子として、二振動子垂直探触子又はフェイズドアレイ探触子を用いることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接継手の検査方法。
- 表材と裏材をレーザ溶接により接合した重ね継手の溶接部を検査する装置において、
上記裏材又は表材の表面に沿って移動される超音波垂直探触子と、
上記裏材又は表材の底面エコー高さを検出するエコー高さ検出手段と、
上記エコー高さ検出手段により検出される上記重ね継手の未接合部での底面エコー高さと、接合部での最小底面エコー高さから、相対エコー高さを算出する演算手段と、
上記算出された相対エコー高さと、レーザ溶接による接合幅、又は重ね継手の引張強度との相関関係に基づいて、上記相対エコー高さから重ね継手の接合度合を判定する比較判定手段を備えて成ることを特徴とするレーザ溶接継手の検査装置。 - 上記超音波垂直探触子として、二振動子垂直探触子又はフェイズドアレイ探触子を用いることを特徴とする請求項3に記載のレーザ溶接継手の検査装置。
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