JP4614052B2 - ニッケルのバレルメッキ方法 - Google Patents

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Description

本発明はニッケルのバレルメッキ方法に関して、水に浮くような小型又は低比重の部品でも、バレルメッキによりニッケル皮膜を均一且つ良好に形成できるものを提供する。
ニッケルメッキは耐食性に優れ、硬さや色調も良好であるため、防食、装飾などの各種用途に汎用されている。
電着皮膜の向上などを目的としたニッケルメッキ浴の従来技術には、下記の特許文献1〜3がある。
上記特許文献1は、被メッキ物のセラミックス部分を侵食することがなく、本来のメッキされるべき部分だけをメッキすることを目的として、ニッケルとキレートを形成する錯化剤を含有したpH7〜14のニッケルメッキ浴であり(特許請求の範囲、段落2)、この錯化剤には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミンテトラエタノールなどのアミノアルコールが記載され(請求項2、段落5)、さらには、プロパギルアルコール、ブチンジオールをメッキ浴に含有させると、セラミックス部の侵食、変質を防止できることが記載されている(請求項3、段落8)。
上記特許文献2は、優れた被覆力と広い面積の全面に良好なメッキ皮膜を形成することなどを目的として、錯化剤とポリエーテル化合物を含有する中性乃至アルカリ性の電気ニッケルメッキ液であり(特許請求の範囲、段落6)、このポリエーテル化合物には数平均分子量200〜5万程度の化合物が好ましく、具体的には、ポリプロピレングレコール、ポリエチレングリコールなどであることが記載され(段落26)、さらには、ブチンジオール、プロパギルアルコールなどを析出性調整剤として配合できることが記載されている(段落30)。
上記特許文献3は、イオン移動度の高いカチオンとアニオンを組み合わせた電解質からなる添加剤(例えば、塩化水素、臭化水素など)と、表面張力を大きくする界面活性剤とを添加することにより、電着皮膜の多孔質化を図る電気メッキ方法であり(請求項1〜2、段落8、段落14〜17)、上記界面活性剤としては、ギ酸、酢酸、アクリル酸などの低級脂肪酸、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3〜4価の高級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの低級アルコールが好適であることが記載されている(請求項3、段落17、段落24〜25)。また、電気メッキ浴の実施例はニッケルメッキ浴である(段落18)。
特開平9−157884号公報 特開2000−204495号公報 特開平6−65779号公報
バレルメッキ方法によってニッケルメッキを行うと、ラック不要でメンテナンスが簡単であり、生産性が高いという利点があるが、メッキ液に浮遊するような小型又は低比重の部品に適用すると均一なメッキ皮膜の形成が困難である。
上記特許文献1〜3の技術に基づいてバレルメッキを行っても、やはり小型又は低比重部品に適用した場合には、均一なニッケルの電着皮膜を形成するには充分ではない。特に、特許文献3は電着皮膜の多孔質化を目的とするため、なおさら皮膜の均一性を期待することは難しい。
本発明は、小型又は低比重部品をバレルメッキするに際して、ニッケル皮膜を均一に形成できるメッキ浴を開発することを技術的課題とする。
上記特許文献1〜2には、各種アミノアルコール、プロパギルアルコール、ブチンジオールなどのアルコール類が開示されているが、本発明者らは、このようなアルコール類とは別種の脂肪族アルコール類又はエーテル類であって、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、1,2−ジメトキシエタンなどのようなオリゴ分子的な特定の化合物をニッケルメッキ浴に添加してバレルメッキを行うと、小型部品又は低比重部品の場合でもニッケル皮膜を均一且つ良好に形成できること、上記脂肪族アルコール類又はエーテル類の沸点が70℃以上であれば皮膜の均一性をより促進できることを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、
(A)可溶性ニッケル塩と、
(B)酸又は塩と、
(C)脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類を含有するニッケルメッキ浴を用いて、被メッキ物をバレルメッキするとともに、
上記脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類が、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルよりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
上記被メッキ物が、半導体デバイス、プリント基板、フレキシブルプリント基板、IC、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子より選ばれた電子部品であることを特徴とするニッケルのバレルメッキ方法である。
本発明2は、上記本発明1において、脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類の沸点が70℃以上であることを特徴とするニッケルのバレルメッキ方法である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類のメッキ浴に対する含有量が2〜500g/Lであることを特徴とするニッケルのバレルメッキ方法である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、さらに、ピット防止剤、光沢剤より選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とするニッケルのバレルメッキ方法である。
ニッケルメッキ浴に特定の脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類を添加するため、水に浮くような小型又は低比重部品に対しても、部品がメッキ液に濡れ易くなるため、バレルメッキによりニッケルメッキ皮膜を均一且つ良好に形成できる。従って、バレルメッキ方法によりニッケルメッキを行うに際して、小型又は低比重部品が多いプリント基板、ICなどの特定の電子部品に好適である。
尚、沸点が70℃以上の脂肪族アルコール類又はエーテル類を使用すると、生産性の見地から加温状態でバレルメッキを行っても、当該アルコール類又はエーテル類の蒸散を抑えてメッキ浴に有効にとどまるため、浴の濡れ性を良好に確保することができる。また、ニッケルメッキを行った後、これを下地皮膜として上層にスズ又はスズ合金メッキを行う場合でも(即ち、後工程を施す場合でも)、上層メッキ皮膜のハンダ濡れ性を損なうことはない。
ちなみに、上記特許文献3には、メッキ浴(実施例ではニッケル浴)に含有する界面活性剤として、ギ酸、酢酸、アクリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが好ましいことが記載される(段落17)
しかしながら、後述の試験例にも示すように、グリセリン、ペンタエリスリトールでは濡れ性の改善は期待できず、均一な電着皮膜を得ることが難しく、また、労働安全基準法の規制物質であって強い又は特有の刺激臭があるギ酸、酢酸、アクリル酸でも同様に皮膜の均一性は劣るうえ、得られたニッケル皮膜を下地として後工程でスズメッキを行う場合の濡れ性に悪影響を及ぼす。
一方、ニッケルメッキ浴に含有される公知の光沢剤としてブチンジオールなどのアルコール類があるが、ブチンジオールをニッケルメッキ浴に含有すると、後工程でスズ又はスズ合金皮膜を上層に形成した場合、上層皮膜の濡れ性が低下する悪影響がある。
本発明は、特定の脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類を含有するニッケルメッキ浴を用いて、小型又は低比重部品が多い特定種の電子部品をバレルメッキする方法である。
本発明のニッケルメッキ浴は、ワット浴やスルファミン酸浴などの公知のニッケルメッキ浴を包含する概念であり、(A)可溶性ニッケル塩と、(B)酸又は塩と、(C)特定の脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類を基本成分とする。
上記可溶性ニッケル塩(A)は公知のニッケル塩を使用でき、具体的には、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、ギ酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、ホウフッ化ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ニッケルなどが挙げられる。
上記酸又は塩(B)としては、ホウ酸、スルファミン酸、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
本発明の脂肪族アルコール類及び脂肪族エーテル類は、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルから選択できる。
前記に列挙した本発明の脂肪族アルコール及びエーテル類においては、加温状態でバレルメッキを行う際のメッキ浴からの蒸散を防止して歩留りを良くするために、その沸点は70℃以上のものが好ましい。
従って、小型又は低比重部品の濡れ性を向上し、上記メッキ浴での歩留りを良好に保持する見地から、好ましい脂肪族アルコール類及びエーテル類として、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルが挙げられる。
上記脂肪族アルコール類又はエーテル類は単用又は併用でき、その含有量はメッキ浴に対して2〜500g/Lが適当であり(本発明3参照)、好ましくは5〜300g/Lであり、より好ましくは10〜200g/Lである。2g/Lより少ないとメッキ浴の濡れ性を改善するには不充分であり、また、500g/Lを越えても効果に余り違いがないうえ、ニッケル皮膜を下地として上層に被覆したスズ系皮膜の濡れ性などを損なう恐れがある。
本発明のバレルメッキ用ニッケルメッキ浴には、必要に応じてピット防止剤、光沢剤などの各種添加剤を含有できる。
上記ピット防止剤としてはラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤、過酸化水素などが挙げられる。
上記光沢剤には一次光沢剤と二次光沢剤があり、一次光沢剤は1,3,6−ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ナトリウムなどの各種スルホン酸、サッカリンなどのスルホンイミド類、p−トルエンスルホンアミドなどのスルホンアミド類等である。二次光沢剤はレベラーでもあり、2−ブチン−1,4−ジオール、エチレンシアンヒドリン、ゼラチン、プロパギルアルコール、クマリン、ホルムアルデヒド、アリルアルデヒド、チオ尿素、キノリン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール等である。
本発明は、特定の脂肪族アルコール類又はエーテル類を含有するニッケルメッキ浴を用いて、小型又は低比重の被メッキ物をバレルメッキするニッケルのバレルメッキ方法である。
前述したように、ニッケルメッキ浴に上記脂肪族アルコール類又はエーテル類を添加すると、メッキ浴に浮遊するような小型又は低比重の被メッキ物に対しても濡れ性が改善されて、ニッケル皮膜の均一性が向上する。従って、本発明にあっては、ニッケルのバレルメッキ方法を適用する小型又は低比重の被メッキ物には、これらの要件を満たす部品が多い各種電子部品が選択される。当該電子部品としては、半導体デバイス、プリント基板、フレキシブルプリント基板、IC、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子などが挙げられる。
以下、本発明のバレルメッキ用ニッケルメッキ浴の実施例、実施例で得られたニッケルメッキ浴の表面張力測定試験例、並びに当該ニッケルメッキ浴を用いてバレルメッキした際のメッキ皮膜の目視外観評価試験例を順次説明する。
本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
下記の実施例1〜19のうち、実施例1〜13は本発明の脂肪族アルコール類を単用した例、実施例14〜17は本発明の脂肪族エーテル類を単用した例、実施例18〜19は当該脂肪族アルコール類と脂肪族エーテル類を併用した例である。
一方、下記の比較例1は本発明の脂肪族アルコール類又はエーテル類を含まないブランク例である。比較例2〜6は本発明の脂肪族アルコール類又はエーテル類を使用する代わりに、前記特許文献3に界面活性剤として記載された化合物を使用した例であり、比較例2はグリセリン、比較例3はペンタエリスリトール、比較例4はギ酸、比較例5は酢酸、比較例6はアクリル酸を夫々含有させた例である。
下記の組成でニッケルメッキの基本浴A〜Bを調製し、各基本浴に本発明の脂肪族アルコール類及び/又は脂肪族エーテル類を添加して、各実施例1〜19のニッケルメッキ浴を調製した。
(1)ニッケルメッキの基本浴A
硫酸ニッケル 240g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 30g/L
(2)ニッケルメッキの基本浴B
スルファミン酸ニッケル 400g/L
塩化ニッケル 5g/L
ホウ酸 30g/L
《実施例1》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、CH3−OCH2CH2−OHで表される2−メトキシエタノール5g/Lを添加した。
《実施例2》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、C25−OCH2CH2−OHで表される2−エトキシエタノール10g/Lを添加した。
《実施例3》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、CH3−(OCH2CH2)2−OHで表されるジエチレングリコールモノメチルエーテル50g/Lを添加した。
《実施例4》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、C25−(OCH2CH2)2−OHで表されるジエチレングリコールモノエチルエーテル100g/Lを添加した。
《実施例5》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、C49−(OCH2CH2)2−OHで表されるジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル200g/Lを添加した。
《実施例6》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、H−(OCH2C(CH3)H)2−OHで表されるジプロピレングリコール300g/Lを添加した。
《実施例7》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、CH3−(OCH2C(CH3)H)2−OHで表されるジプロピレングリコールモノメチルエーテル5g/Lを添加した。
《実施例8》
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、CH3−(OCH2C(CH3)H)3−OHで表されるトリプロピレングリコールモノメチルエーテル10g/Lを添加した。
《実施例9》
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、CH3C(CH3)H−OCH2CH2−OHで表されるエチレングリコールモノイソプロピルエーテル100g/Lを添加した。
《実施例10》
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、前記実施例7のジプロピレングリコールモノメチルエーテル200g/Lを添加した。
《実施例11》
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、C37−OCH2C(CH3)H−OHで表されるプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル300g/Lを添加した。
《実施例12》
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、C37−(OCH2C(CH3)H)2−OHで表されるジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル5g/Lを添加した。
《実施例13》
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、CH3−(OCH2CH2)3−OHで表されるトリエチレングリコールモノメチルエーテル10g/Lを添加した。
《実施例14
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、CH3−OCH2CH2−OCH3で表される1,2−ジメトキシエタン100g/Lを添加した。
《実施例15
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、C25−OCH2CH2−OC25で表される1,2−ジエトキシエタン50g/Lを添加した。
《実施例16
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、CH3−(OCH2CH2)2−OCH3で表されるジエチレングリコールジメチルエーテル10g/Lを添加した。
《実施例17
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、C49−(OCH2CH2)2−OC49で表されるジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル10g/Lを添加した。
《実施例18
上記ニッケルメッキの基本浴Aに、前記実施例1の2−メトキシエタノール100g/Lと、前記実施例14の1,2−ジメトキシエタン100g/Lを添加した。
《実施例19
上記ニッケルメッキの基本浴Bに、前記実施例9のエチレングリコールモノイソプロピルエーテル10g/Lと、前記実施例16のジエチレングリコールジメチルエーテル10g/Lを添加した。
《比較例1》
前記実施例1において、2−メトキシエタノールを添加せず、ニッケルメッキの基本浴Aのみを使用した。
《比較例2》
上記ニッケルメッキの基本浴Aにグリセリン100g/Lを添加した。
《比較例3》
上記ニッケルメッキの基本浴Aにペンタエリスリトール100g/Lを添加した。
《比較例4》
上記ニッケルメッキの基本浴Aにギ酸5g/Lを添加した。
《比較例5》
上記ニッケルメッキの基本浴Aに酢酸5g/Lを添加した。
《比較例6》
上記ニッケルメッキの基本浴Aにアクリル酸5g/Lを添加した。
《各種ニッケルメッキ浴の表面張力試験例》
上記実施例1〜19及び比較例1〜6で得られた各ニッケルメッキ浴について、被メッキ物に対する濡れ性の指標として、表面張力(dyne/cm)をウィルヘルミ(プレート)法により、協和界面科学(株)製のSurface Tensiometer CBVP-A3を用いて測定した。
下表はその試験結果である。
表面張力(dyne/cm) 表面張力(dyne/cm)
実施例1 60 実施例2 58
実施例3 46 実施例4 42
実施例5 33 実施例6 32
実施例7 58 実施例8 44
実施例9 31 実施例10 34
実施例11 31 実施例12 49
実施例13 57 実施例14 25
実施例15 23 実施例16 53
実施例17 46 実施例18 23
実施例19 46
比較例1 69 比較例2 69
比較例3 69 比較例4 52
比較例5 52 比較例6 62
上表を見ると、本発明の脂肪族アルコール類又はエーテル類を添加しないブランク例である比較例1の表面張力(dyne/cm)は69(単位省略)であるのに対して、実施例1〜19では表面張力が共にこの基準値から明確に低減していた。
この点を詳述すると、脂肪族アルコール類又はエーテル類の添加量が増すと、概ね表面張力の低減幅が大きくなり、例えば、ジプロピレングリコールを300g/L添加した実施例6では表面張力は32であり、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルを同量添加した実施例11では表面張力は31であった。しかしながら、5g/Lの少量を添加しても表面張力は基準値から有効に低減し、例えば、実施例1では60、実施例7では58、実施例12では49であった。また、脂肪族アルコール類より脂肪族エーテル類の方が、表面張力を低減する効果が大きい傾向にあり、例えば、1,2−ジメトキシエタンを100g/L添加した実施例14では表面張力は25であり、脂肪族アルコール類を同量添加した実施例4(表面張力は42)や実施例9(同31)より小さな値であった。
尚、ニッケルメッキ浴の種類は、ワット浴(基本浴A)やスルファミン酸浴(基本浴B)を問わず、本発明の化合物の添加がメッキ浴の表面張力の低減に寄与することが確認できた。
一方、前記特許文献3に記載され、本発明と同様に脂肪族アルコール類に属するグリセリンやペンタエリスリトールを使用した比較例2〜3では、表面張力は比較例1の基準値と変化はなく、メッキ浴の表面張力を低減する効果がないことが判った。これにより、脂肪族アルコール類の中でも、本発明で特定した脂肪族アルコール類が、メッキ浴の表面張力を低減する点で、グリセリンやペンタエリスリトールに比べて優位性があることが確認された。さらに、同文献3に記載されたギ酸、酢酸、アクリル酸を夫々使用した比較例4〜6では、基準値からの表面張力の低減が見られた反面、ギ酸は強い刺激臭があって労働安全基準法の規制対象であり、後工程でニッケル面にスズ系メッキを被覆する場合に、スズ系メッキの濡れ性を低下させる問題があり、また、酢酸、アクリル酸についても特有の刺激臭があって同法の規制対象であり、後工程で被覆したスズ系メッキの濡れ性に悪影響を及ぼす点も同じであるため、実際のメッキ作業において、ニッケルメッキ浴に添加する成分としては好ましくない。
ちなみに、前記特許文献1〜2に記載され、公知の光沢剤であるプロパギルアルコールやブチンジオールの場合、プロパギルアルコールは毒物であって、作業上の危険を伴うものであり、また、ブチンジオールは後工程で被覆したスズ系メッキの濡れ性に悪影響を及ぼすため、やはりニッケルメッキ浴の添加成分としては好ましくないという実情がある。公知のピット防止剤であるラウリル硫酸ナトリウムについても界面活性剤であるために発泡性が高く、且つ、後工程で悪影響が出るため、好ましくない。
《脂肪族アルコール類の含有量の増加に伴う表面張力試験例》
そこで、本発明の脂肪族アルコール類の含有量と表面張力の関係をより明解にするため、脂肪族アルコール類の種類を含めたニッケルメッキ浴の組成を固定化して、脂肪族アルコール類の含有量のみを順次増加させた場合のメッキ浴の表面張力の変化を測定した。
即ち、前記ニッケルメッキの基本浴Aに実施例1の2−メトキシエタノールを脂肪族アルコール類として含有し、その含有量を2〜500g/Lの範囲で変化させた実施例20〜27の各表面張力を調べた。また、脂肪族アルコール類の濃度がゼロの場合の基準例として前記比較例1を援用した。尚、表面張力試験の方法は前記試験例と同じである。
下表はその試験結果である。
含有量(g/L) 表面張力(dyne/cm)
比較例1 0 69
実施例20 2 66
実施例21 5 60
実施例22 10 57
実施例23 50 45
実施例24 100 38
実施例25 200 34
実施例26 300 33
実施例27 500 33
上表を見ると、脂肪族アルコール類の含有量が増加するとニッケルメッキ浴の表面張力は順次低減していくことが明らかになった。詳細には、含有量が2〜100g/Lの領域では表面張力は効果的に低減していき、さらに、100g/Lから200g/Lに増加すると表面張力はさらに少し下がるが、200g/L以上の領域では表面張力はそれ以上あまり下がらないことが判った。
従って、効率的に表面張力を低減するためには、本発明の脂肪族アルコール類又はエーテル類の含有量は10〜200g/L程度が好ましい。
《ニッケル皮膜の目視外観評価試験例》
前記実施例1〜27及び比較例1〜6の各ニッケルメッキ浴を用いて、低比重の電子部品の代表例として選択したチップ抵抗器(0603型)に膜厚が5μm程度になるようにバレルメッキを行い、得られたニッケル皮膜の目視外観を均一電着性を主眼として評価した。
当該バレルメッキの条件は次の通りである。
バレル装置:直径55mm×幅100mm
(直径0.5mmのスチールボール50ccと共に、上記チップ抵抗器1万個を投入)
同装置の回転数:6.5rpm
電流密度:0.3A/dm2
浴温:50℃
メッキ時間:60分
その結果、実施例1〜19では共にメッキ皮膜の均一電着性に優れ、実施例20〜27についても脂肪族アルコール類の含有量を変化させたものなので、同様に良好な均一性を示した。
これに対して、脂肪族アルコール類を含まない比較例1、或は、本発明以外の脂肪族アルコール類であるグリセリンやペンタエリスリトールを含む比較例2〜3では、メッキ皮膜の均一電着性に劣り、色調(光沢)ムラが認められた。アクリル酸を含む比較例6の均一性は比較例1〜3よりさらに劣り、ギ酸や酢酸を含む比較例4〜5では電着皮膜の実用レベルを保持できなかった。
従って、ニッケルメッキに際して、本発明の特定の脂肪族アルコール類又はエーテル類は、無添加のメッキ浴(比較例1)、或は、本発明以外の脂肪族アルコール類であるグリセリンやペンタエリスリトールを含むメッキ浴(比較例2〜3)に対して、バレルメッキで得られるニッケル皮膜の均一性を促進する面で明らかに優位性があることが確認できた。
そして、この均一なメッキ皮膜を形成する面での優位性は、前記試験例において実施例1〜27の表面張力が、無添加の比較例1や他種の脂肪族アルコール類を添加した比較例2〜3に比べて明確に減少していることからも裏付けられる。

Claims (4)

  1. (A)可溶性ニッケル塩と、
    (B)酸又は塩と、
    (C)脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類を含有するニッケルメッキ浴を用いて、被メッキ物をバレルメッキするとともに、
    上記脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類が、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルよりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
    上記被メッキ物が、半導体デバイス、プリント基板、フレキシブルプリント基板、IC、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子より選ばれた電子部品であることを特徴とするニッケルのバレルメッキ方法
  2. 脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類の沸点が70℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のニッケルのバレルメッキ方法
  3. 脂肪族アルコール類又は脂肪族エーテル類のメッキ浴に対する含有量が2〜500g/Lであることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケルのバレルメッキ方法
  4. さらに、ピット防止剤、光沢剤より選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケルのバレルメッキ方法。
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