JP4613524B2 - 鋼管の局部座屈性能評価方法、鋼管の設計方法、鋼管の製造方法、鋼管 - Google Patents
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Description
このような新しいパイプラインでは、高強度鋼管を適用して大口径でも薄い管厚で高い内圧に耐えられることが要求されるようになってきている。管厚を薄くすることによって、現地における溶接費やパイプの輸送費が低減されパイプラインの建設および操業のトータルコストの低減が図られるからである。
すなわち、試験片長手方向を鋼管の軸方向に一致させて採取した引張試験片を用いて引張試験を行い、得られた公称応力−公称歪曲線において、降伏点からオンロード歪量が5%までのいずれの歪量においても、公称応力/公称歪の勾配が正となる鋼管は、勾配が0または負となる鋼管に比較して局部座屈を起こす限界の外径/管厚比が著しく大きく、座屈歪を起こしにくいとの知見から、軸方向の引張試験により得られる公称応力−公称歪曲線において、降伏点からオンロード歪が5%までのいずれの歪においても公称応力/公称歪の勾配が正となるような鋼管とする(特許文献1参照)。
近年においては、このような考え方がパイプライン業界では一般的であり、逆に連続硬化型でない降伏棚のあるものでは大きな局部座屈歪が得られないとして、そのような材料はパイプライン用の鋼管には不向きであると認識されていた。
ここで、連続硬化型応力歪曲線とは、材料の応力歪曲線において弾性域を超えた後に降伏棚が生じることなく、歪の増加に伴って応力が増加して滑らかな曲線となるものである(図12参照)。
また、降伏棚型応力歪曲線とは、線形域の後に降伏棚を生ずるものをいう(図12参照)。なお、降伏棚型応力歪曲線における直線で示される弾性域を線形域、応力が増加することなく歪が増加する領域を降伏棚域、降伏棚終点後の滑らかな曲線領域を歪硬化域、歪硬化域が開始する歪を歪硬化開始歪という(図13参照)。
連続硬化モデルの鋼管は、鋼管の化学成分や造管前の鋼板の圧延条件を制御し、あるいは造管中や造管後の鋼管に熱処理や加工処理を施すことによって得られる。
しかしながら、鋼管の製造途中においては、連続硬化型を維持していたとしても、例えば塗装工程のように熱処理を加えることによって、材質が変化してしまい連続硬化型を維持できなくなってしまう場合もある。
このような場合には、降伏棚モデルとなってしまい、従来の考えであれば、このような鋼管は局部座屈性能が低いとして例えばパイプライン用の鋼管としては不向きであるとされることになる。
しかしながら、このようなものを一律排除するのは現実的でない。かといって、従来では降伏棚モデルを一律に排除する考え方しかなかったために、どのようなものであればパイプライン用に使用できるかを判定することができなかったのである。
また、上記鋼管の局部座屈性能評価方法に用いた技術思想を用いた鋼管の設計方法、また、該鋼管の設計方法により鋼管を製造する方法、さらに、前記鋼管の局部座屈性能評価方法によって得られる鋼管を提供することを目的としている。
つまり、従来の鋼管の評価方法を図示すると、図14(a)に示すように、連続硬化モデルかどうかのみを判定基準として、連続硬化モデルの場合にはパイプライン等への適用の可能性ありと評価し、連続硬化モデルでない、すなわち降伏棚モデルの場合にはパイプライン等への適用の可能性なしと評価していたのである。
しかしながら、このような考えに固執すると、本来的には連続硬化モデルモデルであったものが塗装のための熱処理などにより、降伏棚モデルへと変わったような場合には、もはやパイプラインには使用できないことになってしまう。
そこで、発明者は従来の連続硬化モデルか降伏棚モデルかという2者択一で鋼管の局部座屈性能を峻別することに疑問を感じ、図14(b)に示すように、降伏棚モデルであっても所定の判定基準を満たす場合には連続硬化モデルと同様の局部座屈性能を発揮し、パイプライン等への適用の可能性があるものがあるのではないかとの着想のもとに、降伏棚モデルのうちどのような基準を満たすものであれば連続硬化モデルと同等の局部座屈性能を発揮できる可能性があるのかの検討を重ね、その判定方法を見出し本発明を完成したものである。
降伏棚モデルの鋼管が降伏棚の領域で座屈する場合、降伏棚領域では、応力が増加しない状態で変形が進行するため、降伏棚領域で座屈する鋼管は降伏歪の直後に座屈波形が成長する。したがって、降伏棚領域で座屈する鋼管の局部座屈歪は近似的には降伏歪となってしまう。
このように、降伏棚領域で座屈する場合にはその座屈歪は降伏歪と考えられ、その値は小さく(約1%)なってしまうのである。そうだとすれば、降伏棚を有する材料であってもパイプライン等に使用できるような座屈性能に優れるものとなるには、応力歪曲線上における座屈点が降伏棚領域の終点(歪硬化領域の始点)以降にあればよいのではないか、換言すれば、局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きければよいのではないかとの知見を得た。
そこで、ある鋼管の局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかを知ることができれば、当該鋼管が座屈性能に優れる可能性があるかどうかを判断できると考え、本発明を完成したものである。
第2ステップは、第1ステップで取得された応力歪特性における歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係を判定するステップである。ここでは、鋼管の局部座屈歪を求める必要はなく、歪硬化開始歪と局部座屈歪との大小関係が分かればよい。したがって、例えば鋼管を試作して歪硬化開始歪に相当する歪を生じさせるような荷重を与えたときに試作の鋼管が座屈するかどうかを試験して、座屈した場合には歪硬化開始歪が大きいと判断できる。
第3ステップは、第2ステップにおいて局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定された場合には当該材料を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、第2ステップにおいて歪硬化開始歪が局部座屈歪以上と判定された場合には塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性なしと評価する。
塑性設計を前提とされる構造物とは、換言すれば高い座屈強度が要求される構造物であり、その具体例としては、例えばパイプラインなどがある。
(1)の方法では歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係を判定するための方法は特に限定するものではないが、(1)の説明で示したように試作品を使うのでは時間とコストがかかる。そこで、
(1.2)式において、塑性変形する場合のポアソン比νとして0.5を代入して整理すると前記(1.1)式となる。
(1.1)式から分かるように、局部座屈歪は応力歪曲線の形状及び(t/D)の関数として表される。また、(1.1)式は、左辺と右辺の等式が成り立つときの左辺の値が局部座屈歪であることを意味している。したがって、ある歪に対する応力歪曲線上の点における割線係数(ES)と接線係数(ET)を基礎式に代入したときに等式が成立すれば、その歪が局部座屈歪である。そして、降伏棚の領域においては、接線係数がゼロとなるので、(1.1)式の右辺は算出不可能である。このことから、局部座屈歪が算出可能ということは少なくともその局部座屈歪は歪硬化開始歪よりも大きいと言える。
なお、算出可能かどうかは、第1ステップで取得した応力歪特性から得られる歪硬化開始歪以上の歪を代入して試行錯誤の演算により(1.1)式の等式が成立するかどうかによって判定できる。
歪硬化開始歪に対応する下式の右辺を演算し、その演算値が歪硬化開始歪よりも大きい場合には局部座屈歪は歪硬化開始歪よりも大きいと判定し、演算値が歪硬化開始歪以下の場合には局部座屈歪は歪硬化開始歪以下であると判定するようにしたものである。
図15に示される横軸の歪(想定歪)に対応する応力歪曲線上の点についての割線係数(ES)と接線係数(ET)を求めこれらを(1.1)式に代入して右辺の値を演算し、この演算値を縦軸、前記想定歪を横軸としてグラフにしたものを図1に示す。
図1に示されるように、降伏歪に至るまでは、応力歪曲線が原点を通るほぼ線形であるため演算値は一定となる。また、降伏棚領域においては、接線係数が0であるため計算歪がすべて0となる。さらに、歪硬化領域に入ると、計算歪は単調減少する。
(1.1)式は、左辺と右辺の等式が成り立つときの左辺の値が局部座屈歪であることを意味しているが、左辺と右辺の等式が成り立つのは、図1で考えると1:1線上である。
したがって、図1における1:1線との交点に対応する歪が局部座屈歪である。
よって、局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかの判定は、この歪と歪硬化開始歪とを比較すればよい。
局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きい場合というのは、図1について言えば、減少曲線が1:1線と交わる場合である。そして、減少曲線が1:1線と交わるためには、歪硬化開始歪に対応する演算値が歪硬化開始歪よりも大きいことが必要である(図1の丸数字2参照)。
逆に、局部座屈歪が歪硬化開始歪以下の場合というのは、減少曲線と1:1曲線とは交点を有しない場合であり(図1の丸数字1参照)、この場合には歪硬化開始歪に対応する演算値が歪硬化開始歪以下となる。
したがって、局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかを判定するためには歪硬化開始歪に対応する演算値と歪硬化開始歪とを比較すればよいことになる。
そこで、本発明においては、歪硬化開始歪に対応する応力歪曲線上の点において(1.1)式の右辺を演算し、この演算値と歪硬化開始歪とを比較して、演算値が大きければ局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定するようにしたのである。
図15に示す応力歪曲線の歪硬化域における応力と歪の関係を、累乗関数で近似すると図3に示すようになり、歪硬化域における応力と歪の関係、接線係数ETおよび割線係数Esは次式のように表される。
そこで、(3.7)式を解くため、下記の(3.8)式に示すように、局部座屈応力と降伏応力が近い値である性質を利用すると、鋼管の圧縮局部座屈歪は(3.9)式のようになり、これが前記(3.1)式である。
第4ステップにおける局部座屈歪を求める方法としては、上記(2)に示した(1.1)式を用いる方法、また上記(4)に示した式(2.1)を用いる方法、また上記(5)に示した式(3.1)を用いる方法のいずれでもよい。
なお、要求座屈歪とは、当該鋼管の用途において当該鋼管が局部座屈するときに要求される歪をいう。
以下においては、鋼管の管径管厚比(D/t)に基づいて当該鋼管の座屈性能を判定する方法を説明する。
鋼管の局部座屈εcrと管径管厚比(D/t)の関係が前述の(1.1)式に示されている。そこで、横軸に管径管厚比(D/t)を取り、縦軸に局部座屈歪εcrを取って(1.1)をグラフ表示すると図4のようになる。
図4から分かるように、鋼管のD/tが小さい(厚肉鋼管)場合には局部座屈歪εcrは大きく、鋼管のD/tの増加、すなわち鋼管を薄肉化と共に局部座屈歪εcrが減少する。そして、局部座屈歪εcrが歪硬化開始歪と一致したところで局部座屈歪は急激に減少し、以降の局部座屈歪εcrは降伏歪と同じ歪となる。
したがって、局部座屈歪εcrが歪硬化開始歪と一致するときの管径管厚比(D/t)cr
を求めておけば、この管径管厚比(D/t)crと判定対象の鋼管のD/tを比較することで、当該鋼管が降伏棚の領域で座屈するのか歪硬化領域で座屈するのか、ひいては座屈性能に優れているかどうかを判定できる。そこで、
第4ステップにおける局部座屈歪を求める方法としては、上記(2)に示した(1.1)式を用いる方法、また上記(4)に示した式(2.1)を用いる方法、また上記(5)に示した式(3.1)を用いる方法のいずれでもよい。
第3ステップにおいては、第1ステップで取得した応力歪特性及び判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)から求まる局部座屈歪が、要求座屈歪よりも大きくなるように、当該設計対象の鋼管の管径管厚比(D/t)を決定するようにしたものである。
また、本発明に係る鋼管の設計方法によれば、応力歪特性を有する鋼管の局部座屈歪が応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比(D/t)crを求め、設計対象の鋼管の管径管厚比(D/t)が前記管径管厚比(D/t)crよりも小さくなることを維持しつつ、設計対象の鋼管の管径管厚比(D/t)を決定するようにしたので、降伏棚のある材料であっても、あたかも連続硬化型の材料であるかのように取扱って最適な管径管厚比(D/t)を設計することができる。
本実施の形態においては、本発明の判定方法を、管径管厚比(D/t)=50の鋼管が要求座屈歪εreq=1.5%のパイプラインに適用可能かどうかを判定する場合を例に挙げて説明する。
図5は本実施の形態の判定方法の流れを示すフローチャートである。以下、図5に基づいて本実施の形態を説明する。
まず、判定対象の鋼管の応力歪特性を取得する(S1)。応力歪特性の取得方法としては、試験片による引張り試験により取得してもよいし、あるいは予め試験データが存在する場合には当該試験データを格納したデータベースから読み出すようにしてもよい。
取得した応力歪特性からその応力歪曲線において降伏棚を有する降伏棚モデルか、連続硬化モデルかを判定する(S3)。S3の判定において、連続硬化モデルであると判定された場合には、連続硬化モデルの場合には座屈歪性能に優れるのでパイプラインに対して適用の可能性ありと判断する(S7)。
他方、S3の判定において、降伏棚モデルであると判定された場合には、S1において取得された鋼材の応力歪特性から当該鋼材の歪硬化開始歪εHを取得し、この歪硬化開始歪εHと当該材料の鋼管の局部座屈歪εcrとの大小関係を判定する(S5)。
ここで(2.1)式の右辺に代入すべき具体的な数値について検討する。(t/D)は最初に与えられており、(t/D)=1/50である。歪硬化開始歪εHは(S1)で取得した応力歪特性から読み取ることができ、この例では1.5%である。また、降伏歪εyも同様にS1で取得した応力歪特性から読み取ることができ、この例では0.22%である。歪硬化係数mも同様にS1で取得した応力歪特性から決定することができ、m=0.04であった。
これらの値を(2.1)式の右辺に代入して演算するとその演算値は1.78%となる。この演算値1.78%と歪硬化開始歪εH=1.5%を比較すると、演算値の方が大きい。したがって、局部座屈歪εcrが歪硬化開始歪εHよりも大きいと判断し(S5)、パイプラインへの適用の可能性ありと判断する(S7)。
また、前述の(1.1)式に基づいて判断するようにしてもよい。
また、(S1)において取得した判定対象の鋼管の応力歪特性における歪硬化領域の応力歪曲線が累乗関数で近似できるような場合には(3.1)式に基づいて判断するようにする。
さらなるステップS5の変形例としては、局部座屈歪を(1.1)式、(2.1)式あるいは(3.1)式などによって算出し、算出された局部座屈歪εcrを歪硬化開始歪εHと直接比較するようにしてもよい。その場合には、ステップS9は省略されることになる。また、(1.1)式では局部座屈歪が降伏棚領域に位置するときには、局部座屈歪の値自体が算出不能となるので、その現象を利用してステップS5の判定を行う方法もある。すなわち、応力歪特性を(1.1)式に入力し、局部座屈歪が算出不能であったときにはステップS5「NO」とし、局部座屈歪が算出されたときにはステップS5「YES」とする。
本実施の形態においては、実施の形態1に示したものとは別の判定方法を、実施の形態1と同じ鋼管を判定対象として要求座屈歪εreq=1.5%のパイプラインに適用可能かどうかを判定する場合を例に挙げて説明する。
図6は本実施の形態の判定方法の流れを示すフローチャートである。以下、図6に基づいて本実施の形態を説明する。
鋼材の応力歪特性を取得し(S1)、当該鋼材が降伏棚モデルか、連続硬化モデルかを判定する(S3)。この処理は実施の形態1と同様である。
(S3)において降伏棚型モデルであると判定された場合には、当該鋼管の局部座屈歪が(S1)で取得した当該鋼管の応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比(D/t)crを求める(S4)。そして、ここで求めた管径管厚比(D/t)crと判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)の大小を判定する(S5)。
本実施の形態においては、(S1)で取得した応力歪特性における歪硬化領域の形状が線形硬化則の適用可能なものであったことから、(S5)の判定を、下記に示す前述の(4.1)式に基づいて行う。
なお、(S5)の判定において、(D/t)≧(D/t)crの場合には、局部座屈歪εcrが歪硬化開始歪εH以下であると判断し(S15)、パイプラインへの適用の可能性はないと判断し(S17)、最終的に不合格と判定する(S19)。
なお、上記の例においては、(S5)における管径管厚比(D/t)crと判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)の大小の判定を(4.1)式に基づいて行ったが、本発明はこれに限られるものではなく、(S1)において取得した判定対象の鋼管の応力歪特性における歪硬化領域の応力歪曲線が累乗関数で近似できるような場合には前述の(5.1)式に基づいて判断するようにする。
図7は本実施の形態に係る鋼管の設計方法の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7に基づいて本実施の形態を説明する。
降伏棚を有する候補材料の応力歪特性を取得する(S21)。S21の処理は実施の形態1におけるS1と同様である。
S21で取得した応力歪特性に基づいて(D/t)crを取得する(S23)。(D/t)crの取得方法としては、例えば下記に示す前述の(1.1)式に基づく方法がある。
なお、パイプライン用の鋼管を設計する場合であれば、パイプラインにて輸送する加圧流体の輸送量及び輸送距離を前提として、操業コスト及び建設コストを最低にすべくパイプの直径D、管厚tを仮設定することを要する。したがって、前記D/t<(D/t)crは設計条件のうちの必要条件である。
ここで局部座屈歪εcrを求める方法としては、前述の(2)に示した(1.1)式を用いる方法、また(4)に示した式(2.1)を用いる方法、あるいは上記(5)に示した式(3.1)を用いる方法のいずれでもよい。
S27で取得したεcrと要求される局部座屈歪である要求座屈歪εreqを比較してεreq<εcrを満たすかどうかを判定する(S29)。
なお、要求座屈歪εreqは、S25で仮設定された直径及び管厚を有するパイプに敷設線形を考慮してパイプラインを構造設計し、構造設計されたパイプラインに輸送圧力、地盤変位及び又は外力が作用したときにパイプに発生する最大歪を求め、この最大歪に一定の安全率を考慮して設定される。
S31でD/tを再設定した場合には、S25でD/t<(D/t)crを満たすことを確認した上でS27以降の処理を繰り返す。
S29の判断において、NOと判断された場合、すなわちεreq<εcrを満たさない場合には、当該処理がS31を経由しているかどうかを判断し(S33)、YES、すなわちS31を経由している場合には、直前のS31の一つ前の処理において設定したD/tを設計値として決定する(S35)。
D/tの設計値が決定されると、当該設計値に基づいて鋼管の製造を行うことにより、所定の要求座屈歪を満たす鋼管が製造できる。
S37の判断においてYES、すなわちD/tの再設定可能な場合には、S25に戻って同様の処理を繰り返す。他方、S37の判断においてNO、すなわちD/tの再設定ができない場合には、当該材料にて当該用途への適用は不可と判断する(S39)。
一方、1-4、1-5のものは、(D/t)crが50以上であり、歪硬化領域で座屈することが分かる。そして、1-4(実施の形態2で示したもの)の局部座屈歪εcrを求めると、1.78であり、要求座屈歪εreq=1.5%より大きいことから、判定は合格となる。同様に1-5についても合格となる。
第2グループ(εH=1.0%)2-1〜2-5、第3グループ(εH=0.5%)3-1〜3-5についても同様にして表1の通り判定ができる。
また、縦軸を(D/t)crとし、横軸を歪硬化開始歪としたグラフを図11に示す。
図8〜図10又は図11から分かるように、歪硬化係数mがいずれの場合であっても、歪硬化開始歪が小さいほど、換言すれば降伏棚が短いほど(D/t)crが大きくなっている。つまり歪硬化開始歪が小さいほど(降伏棚が短いほど)鋼管が薄肉になっても歪硬化領域にて局部座屈する、すなわち座屈性能に優れる傾向にあることを示している。
また、歪硬化領域開始歪(降伏棚の長さ)がいずれの場合であっても、歪硬化係数mが大きいほど(D/t)crが大きくなっている。つまり歪硬化係数mが大きいほど鋼管が薄肉になっても歪硬化領域にて局部座屈する、すなわち座屈性能に優れる傾向にあることを示している。
Claims (16)
- 応力歪特性上に降伏棚を有する材料の応力歪特性を取得する第1ステップと、該第1ステップで取得された応力歪特性における歪硬化開始歪と当該鋼管の局部座屈歪との大小関係を判定する第2ステップと、第2ステップにおいて局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定された場合には当該鋼管を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、第2ステップにおいて局部座屈歪が歪硬化開始歪以下と判定された場合には塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性なしと評価する第3ステップを備えたことを特徴とする鋼管の局部座屈特性評価方法。
- 局部座屈歪を求める第4ステップを有し、第3ステップにおいて適用可能性ありと評価された場合において、第4ステップで求めた局部座屈歪と当該用途に要求される要求座屈歪とを比較し、当該用途への適用可否を判定する第5ステップを有することを特徴とする請求項1乃至5のうち何れかに記載の鋼管の局部座屈特性評価方法。
- 降伏棚を有する鋼材の応力歪特性を取得する第1ステップと、前記応力歪特性を有する鋼管の局部座屈歪が前記応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比(D/t)crを求める第2ステップと、判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)と前記第2ステップで求めた管径管厚比(D/t)crとの大小を比較し、判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)の方が小さい場合には当該材料を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)の方が大きい場合には塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性なしと評価する第3ステップを備えたことを特徴とする鋼管の局部座屈特性評価方法。
- 局部座屈歪を求める第4ステップを有し、第3ステップにおいて適用可能性ありと評価された場合において、第4ステップで求めた局部座屈歪と当該用途に要求される要求座屈歪とを比較し、当該用途への適用可否を判定する第5ステップを有することを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の鋼管の局部座屈特性評価方法。
- 降伏棚を有する鋼材の応力歪特性を取得する第1ステップと、前記応力歪特性を有する鋼管の局部座屈歪が前記応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比(D/t)crを求める第2ステップと、設計対象の鋼管の管径管厚比(D/t)が前記第2ステップで求めた管径管厚比(D/t)crよりも小さくなることを維持しつつ、設計対象の鋼管の管径管厚比(D/t)を決定する第3ステップとを備えたことを特徴とする鋼管の設計方法。
- 第3ステップにおいては、第1ステップで取得した応力歪特性及び判定対象の鋼管の管径管厚比(D/t)から求まる局部座屈歪が、要求座屈歪よりも大きくなるように、当該設計対象の鋼管の管径管厚比(D/t)を決定することを特徴とする請求項13に記載の鋼管の設計方法。
- 請求項13又は14に記載の鋼管の設計方法による設計に基づき鋼管を製造することを特徴とする鋼管の製造方法。
- 請求項1〜12に記載の鋼管の局部座屈特性評価方法によって、塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価された鋼管。
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