明細書 鋼管の局部座屈性能評価方法、 鋼管の設計方法、 鋼管の製造方法及び鋼管 技術分野
本発明は、 ガス ·石油パイプライン等に用いる銅管の局部座屈性能評価方法、 鋼管の設 計方法、 鋼管の製造方法、 鋼管に関する。 背景技術
ガスパイプライン、 石油パイプラインはエネルギー供給の根幹として建設が進められて きている。 近年では、 特に天然ガス需要の増大を背景とし、 消費地から遠く離れた地にガ ス田が開発されることが多い。 このため、 近年の新しいパイプラインは長距離化の傾向を 呈し、 大量輸送のために大径化、 高圧化の傾向が強まってきている。
このような新しいパイプラインでは、 高強度鋼管を適用して、 大口径でも薄い管厚で高 い内圧に耐えられることが要求されるようになってきている。 管厚を薄くすることによつ て、 現地における溶接費やパイプの輸送費が低減され、 パイプラインの建設および操業の トータルコス卜の低減が図られるからである。
ところで、 鋼管は引張荷重に対しては材料の延性を十分に活かせるが、 圧縮負荷に対し ては断面形状が薄肉円筒であるため、 局部座屈が発生する。 そして、 一様伸びが 1 0 %前 後であるのに対し、 圧縮負荷による座屈歪は 1〜 2 %程度であり、 パイプラインの塑性設 計では、 局部座屈歪が支配因子となる可能性が高い。 特に管厚の薄い鋼管では局部座屈歪 が小さくなる傾向があり、 局部座屈歪を大きくすることが重要となる。
そこで、 局部座屈歪を大きく して座屈性能を高めるために以下のような提案がなされて いる。
すなわち、 試験片長手方向を鋼管の軸方向に一致させて採取した引張試験片を用いて引 張試験を行い、得られた公称応力一公称歪曲線において、降伏点からオンロード歪量が 5 % までのいずれの歪量においても、 公称応力/公称歪の勾配が正となる鋼管は、 勾配が 0ま たは負となる鋼管に比較して局部座屈を起こす限界の外径/管厚比が著しく大きく、 座屈 歪を起こしにくいとの知見から、 軸方向の引張試験により得られる公称応力一公称歪曲線 において、 降伏点からオンロード歪が 5 %までのいずれの歪においても公称応力 公称歪 の勾配が正となるような鋼管とする (特許文献 1参照)。
特許文献 1 : 特開平 9一 1 9 6 2 4 3号公報 発明の開示
発明が解決しようとする課題
上記特許文献 1に示されるように、 従来、 鋼管の局部座屈歪を大きくするには、 降伏点 以降においても公称応力 公称歪の勾配が正となる鋼材を用いるのが適切とされていた。 公称応力 公称歪の勾配が正となるとは、 鋼材の応力歪曲線がいわゆる連続硬化型 (詳細
は後述) であることを意味する。
近年においては、 このような考え方がパイプライン業界では一般的であり、 逆に連続硬 化型でない降伏棚のあるものでは大きな局部座屈歪が得られないとして、 そのような材料 はパイプライン用の鋼管には不向きであると認識されていた。
ここで、 連続硬化型応力歪曲線とは、 材料の応力歪曲線において弾性域を超えた後に降 伏棚が生じることなく、 歪の増加に伴って応力が増加して滑らかな曲線となるものである (図 1 2参照)。
また、降伏棚型応力歪曲線とは、線形域の後に降伏棚を生ずるものをいう(図 1 2参照)。 なお、 降伏棚型応力歪曲線における直線で示される弾性域を線形域、 応力が増加すること なく歪が増加する領域を降伏棚域、 降伏棚終点後の滑らかな曲線領域を歪硬化域、 歪硬化 域が開始する歪を歪硬化開始歪という (図 1 3参照)。
上記のように降伏棚型の応力歪曲線を有する銅管 (降伏棚モデルの鋼管) の局部座屈歪 は、 連続硬化型の応力歪曲線を有する鋼管 (連続硬化モデルの鋼管) よりも小さいことが 一般的に知られている。 このため、 パイプラインの建設のように座屈性能が高い鋼管を得 ようとする場合、 降伏棚モデルの鋼管は、 工学的な判断に基づいて自動的に排除されてい るのが現状である。
連続硬化モデルの鋼管は、 鋼管の化学成分や造管前の鋼板の圧延条件を制御し、 あるい は造管中や造管後の鋼管に熱処理や加工処理を施すことによって得られる。
しかしながら、 鋼管の製造途中においては、 連続硬化型を維持していたとしても、 例え ば塗装工程のように熱処理を加えることによって、 材質が変化してしまい連続硬化型を維 持できなくなってしまう場合もある。
このような場合には、 降伏棚モデルとなってしまい、 従来の考えであれば、 このような 鋼管は局部座屈性能が低いとして、 例えばパイプライン用の鋼管としては不向きであると ざれることになる。
しかしながら、 このようなものを一律排除するのは現実的でない。 かといつて、 従来で は降伏棚モデルを一律に排除する考え方しかなかったために、 どのようなものであればパ ィプライン用に使用できるかを判定することができな ったのである。
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、 降伏棚モデルのものを例えば パイプラインのような局部座屈性能に優れることが要求される用途に適用できるかどうか ^判定する鋼管の局部座屈性能評価方法を提供することを目的としている。
また、 上記鋼管の局部座屈性能評価方法に用いた技術思想を用いた鋼管の設計方法、 ま た、 該鋼管の設計方法により鋼管を製造する方法、 さらに、 前記鋼管の局部座屈性能評価 方法によって得られる鋼管を提供することを目的としている。 課題を解決するための手段
前述のように、 降伏棚モデルの鋼管の場合、 鋼管の座屈性能は低く、 該鋼管は大きな変 形性能が要求されるパイプラインへの適用は不適当であると考えられてきた。
つまり、 従来の鋼管の評価方法を図示すると、 図 1 4 ( a ) に示すように、 連続硬化モ
デルかどうかのみを判定基準として、 連続硬化モデルの場合にはパイプライン等への適用 の可能性ありと評価し、 連続硬化モデルでない、 すなわち降伏棚モデルの場合にはパイプ ライン等への適用の可能性なしと評価していたのである。
しかしながら、 このような考えに固執すると、 本来的には連続硬化モデルモデルであつ たものが外面コ一ティングのための熱処理などにより、 降伏棚モデルへと変わったような 場合には、 もはやパイプラインには使用できないことになつてしまう。
そこで、 癸明者は従来の連続硬化モデルか降伏棚モデルかという 2者択一で鋼管の局部 座屈性能を峻別することに疑問を感じ、 図 1 4 ( b ) に示すように、 降伏棚モデルであつ ても所定の判定基準を満たす場合には、 連続硬化モデルと同様の局部座屈性能を発揮し、 パイプライン等に適用する可能性があるのではないかとの着想のもとに、 降伏棚モデルの うちどのような条件を満たすものであれば連続硬化モデルと同等の局部座屈性能を発揮で きる可能性があるのかの検討を重ね、 その判定方法を見出し、 本発明を完成したものであ る。
発明者はまず、 降伏棚モデルの場合には何ゆえに局部座屈性能が低いのかを検討した。 降伏棚モデルの鋼管が降伏棚の領域で座屈する場合、 降伏棚領域では、 応力が増加しな い状態で変形が進行するため、 降伏棚領域で座屈する鋼管は降伏歪の直後に座屈波形が成 長する。 したがって、 降伏棚領域で座屈する鋼管の局部座屈歪は近似的には降伏歪となつ てしまう。
このように、 降伏棚領域で座屈する場合にはその座屈歪は降伏歪と考えられ、 その値は 小さく (約 0· 1〜0· 2%) なってしまうのである。 そうすれば、 降伏棚を有する材料であつ ても、 パイプライン等に使用できるような座屈性能に優れた鋼管となるためには、 応力歪 曲線上における座屈点が降伏棚領域の終点 (歪硬化領域の始点) 以降にあればよいのでは ないか、 換言すれば、 局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きければよいのではないかとの 知見を得た。
そこで、 ある鋼管の局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかを知ることができ れば、 当該鋼管が座屈性能に優れる可能性があるかどうかを判断できると考え、 本発明を 完成したものである。
( 1 ) 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法は、 応力歪特性上に降伏棚を有する材料 の応力歪特性を取得する第 1ステップと、 該第 1ステップで取得された応力歪特性におけ る歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係を判定する第 2ステップと、 第 2ステップにおいて局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定された場合には当該 材料を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、 第 2ステップにおいて 局部座屈歪が歪硬化開始歪以下と判定された場合には塑性設計を前提とされる構造物に適 用可能性なしと評価する第 3ステップを備えたものである。
第 1ステップは降伏棚を有する鋼材の応力歪特性を取得するステップである。 ここで応 力歪特性とは、例えば当該鋼材を引張試験した場合の応力と歪の関係を示す点列のデータ、 あるいはこれに基づく応力歪曲線等であり、 ここで取得した応力歪曲線の一例を図 1 5に 示す。
第 2ステップは、 第 1ステップで取得された応力歪特性における歪硬化開始歪と当該材 料の銅管の局部座屈歪との大小関係を判定するステップである。 ここでは、 鋼管の局部座 屈歪を一求 43 める必要はなく、 歪硬化開始歪と局部座屈歪との大小関係が分かればよい。 した がって、 例えば鋼管を試作して歪硬化開始歪に相当する歪を生じさせるような荷重を与え たときに試作の鋼管が座屈するかどうかを試験して、 座屈した場合には歪硬化開始歪が大 きいと判断できる。
第 3ステップは、 第 2ステップにおいて局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定 された場合には当該材料を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、 第 2ステップにおいて歪硬化開始歪が局部座屈歪以上と判定された場合には塑性設計を前提 とされる構造物に適用可能性なしと評価する。
塑性設計を前提とする構造物とは、 換言すれば高い変形性能 (座屈歪) が要求される構 造物であり、 その具体例としては、 例えばパイプラインなどがある。
上記のように、 (1 ) の方法によれば、歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との 大小関係を判定するだけで、 鋼管の用途を判定できるので非常に便利である。
( 1 ) の方法では歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係を判定する ための方法は特に限定するものではないが、(1 )の説明で示したように試作品を使うので は時間とコストがかかる。 そこで、
( 2 )本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法は、 (1 ) の方法の第 2ステップにおける 歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係の判定を、 下式に第 1ステップ で取得された応力歪特性を入力した結果、 局部座屈歪を算出可能であったときには、 局部 座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定し、 局部座屈歪を算出不能であったときには、 局部座屈歪が歪硬化開始歪以下であると判定するようにしたものである。 ε (1. 1 ) 但し、 ε„ :圧縮局部座屈歪
E !cr:降伏棚型モデルの応力歪曲線におい '、 原点と座屈点とを結ぶ線の傾き E Tcr:座屈点における応力歪曲線の傾き
t : 管厚
D : 管径 まず、 上記 (1 . 1 ) 式について説明する。
圧縮力を受ける鋼管の局部座屈歪を表す基礎式として、 下記 (1. 2) 式がある
t
(1. 2)式において、 £ crは圧縮局部座屈歪、 Vはポアソン比、 tは管厚、 Dは管径をそれ ぞれ示している。 また、 Es„は、 降伏棚モデルの応力歪曲線を示した図 1 5において、 原 点と座屈点とを結ぶ線の傾き (以下、 「割線係数」 という) を示し、 ETcrは座屈点における 応力歪曲線の傾き (以下、 「接線係数」 という) を示している。 また、 図中 £ Hは歪硬化開
始点における歪を表す。 但し、 図 15において、 歪硬化域における応力歪曲線は、 任意の 関係を表現するために曲線で描いている。
(1.2)式において、 塑性変形する場合のポアソン比 Vとして 0.5を代入して整理すると前 記 (1. 1) 式となる。
次に、 . 1) 式を用いて、'ある鋼管の局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどう かを判定する方法を説明する。
(1. 1) 式から分かるように、 局部座屈歪は応力歪曲線の形状及び (tZD) の関数 として表される。 また、 (1. 1) 式は、 左辺と右辺の等式が成り立つときの左辺の値が局 部座屈歪であることを意味している。 したがって、 ある歪に対する応力歪曲線上の点にお ける割線係数 (Es) と接線係数 (Ετ) を基礎式に代入したときに等式が成立すれば、 そ の歪が局部座屈歪である。そして、降伏棚の領域においては、接線係数がゼロとなるので、
(1. 1) 式の右辺は算出不可能である。 このことから、 局部座屈歪が算出可能というこ とは少なくともその局部座屈歪は歪硬化開始歪よりも大きいと言える。
なお、 算出可能かどうかは、 第 1ステップで取得した応力歪特性から得られる歪硬化開 始歪以上の歪を代入して試行錯誤の演算により (1. 1) 式の等式が成立するかどうかに よって判定できる。
もっとも、 (I. 1) 式に歪値を代入して試行錯誤の演算を繰り返すのは煩雑である。 そ こで、 試行錯誤の演算を繰り返すことなく局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどう かを判定する方法を以下に示す。
(3)本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 (1) の方法の第 2ステップにお ける歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係の判定を、 下式及び第 1ス テツプで取得された応力歪特性に基づいて行うこととし、
歪硬化開始歪に対応する下式の右辺を演算し、 その演算値が歪硬化開始歪よりも大きい 場合には局部座屈歪は歪硬化開始歪よりも大きいと判定し、 演算値が歪硬化開始歪以下の 場合には局部座屈歪は歪硬化開始歪以下であると判定するようにしたものである。
但し、 ε„ :圧箱局部座屈歪
E5cr:降伏棚モデルの応力歪曲線において、 原点と座屈点とを結ぶ線の傾き ETor:座屈点における応力歪曲線の傾き
t : 管厚
D: 管径
以下、 上記 (3) の方法を説明する。
図 15に示される横軸の歪 (想定歪) に対応する応力歪曲線上の点についての割線係数 (Es) と接線係数 (Ετ) を求めこれらを (1. 1) 式に代入して右辺の値を演算し、 こ の演算値を縦軸、 前記想定歪を横軸としてグラフにしたものを図 1に示す。
図 1に示されるように、 降伏歪に至るまでは、 応力歪曲線が原点を通るほぼ線形である ため演算値は一定となる。 また、 降伏棚領域においては、 接線係数が 0であるため計算歪 がすべて 0となる。 さらに、 歪硬化領域に入ると、 計算歪は単調減少する。
( 1 . 1 ) 式は、 左辺と右辺の等式が成り立つときの左辺の値が局部座屈歪であること を意味しているが、左辺と右辺の等式が成り立つのは、図 1で考えると 1: 1線上である。 したがって、 図 1における 1 : 1線との交点に対応する歪が局部座屈歪である。
よって、 局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかの判定は、 この歪と歪硬化開 始歪とを比較すればよい。
もっとも、 局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかを判定するためには、 必ず しも局部座屈歪を求める必要はない。
局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きい場合というのは、 図 1について言えば、 減少曲 線が 1 : 1線と交わる場合である。 そして、 減少曲線が 1 : 1線と交わるためには、 歪硬 化開始歪に対応する演算値が歪硬化開始歪よりも大きいことが必要である (図 1の丸数字 2参照)。
逆に、 局部座屈歪が歪硬化開始歪以下の場合というのは、 減少曲線と 1 : 1曲線とは交 点を有しない場合であり (図 1の丸数字 1参照)、この場合には歪硬化開始歪に対応する演 算値が歪硬化開始歪以下となる。
したがって、 局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいかどうかを判定するためには歪硬 化開始歪に対応する演算値と歪硬化開始歪とを比較すればよいことになる。
そこで、 本発明においては、 歪硬化開始歪に対応する応力歪曲線上の点において (1 . 1 ) 式の右辺を演算し、 この演算値と歪硬化開始歪とを比較して、 演算値が大きければ局 部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きいと判定するようにしたのである。
上記の方法による場合でも (1 . 1 ) 式の右辺を演算するためには歪硬化開始歪に対応 する応力歪特性上の点における割線係数 (E s ) と接線係数 (Ε τ) を求める必要があり、 そのためには複雑な演算が必要である。 そこで、 さらに簡易な演算にてできるようにする ために、
( 4 ) 本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 上記 (3 ) の第 2ステップにお ける歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係の判定を、 式 (1 . 1 ) に 代えて下記 (2. 1) 式に基づいて行うようにしたものである。
但し、 Dlt :最大管径管厚比
Ey :降伏歪
εΗ :歪硬化開始歪
m 歪硬化係数
以下、(2. 1)式を説明する。図 1 5に示す応力歪曲線の歪硬化域における応力と歪の関係 を、 傾きが m Eの直線で表すと図 2のようになり、 歪硬化域における応力と歪の関係、 接 線係数 E
τおよび割線係数 E
sは次式のように表される。
ET =— = mE (2.3)
αε
Es = a_=ay +mE^-eH) (2.4) したがって、 £r/£sは次式のように求められる t
ET mEs 1
(2.5)
Es ay + mE( ε - εΗ ) I + ( sy / m- εΗ ) / ε
(2.5) 式の歪を局部座屈歪で表して (1.1) 式に代入すると次式が得られる。 if n:丄 (2.6)
Ι·~ ξ = ενΙηι-εΗ
(2.6)式を局部座屈歪について解くと、歪硬化領域における鋼管の圧縮局部座屈歪は(2.7) 式のように表される。
さらに、 (2.7) 式を下記 (2.8) 式のように変形し、 (2.8) 式の右辺第二項を一次近似する と、 局部座屈歪は (2.9) 式のように表され、 これが上記 (2.1)式である。
(5) また、 本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 上記 (3) の第 2ステツ プにおける歪硬化開始歪と当該材料の鋼管の局部座屈歪との大小関係の判定は、 式 (1. 1) に代えて下記(3.1)式に基づいて行うものである。 1)
ay :降伏応力
c :累乗関数の回帰係数
b :累乗関数の回帰係数
ここで、 上記(3. 1)式について説明する。
図 1 5に示す応力歪曲線の歪硬化域における応力と歪の関係を、 累乗関数で近似すると 図 3に示すようになり、歪硬化域における応力と歪の関係、接線係数 Ετおよび割線係数 E sは次式の一 43ように表される。
= as" + c (3. 2)
は累乗関数の回帰係数
ET =— = abe (3. 3)
一 43
αε + c
(3. 4)
したがって、 割線係数と接線係数の比は次式で表される,
(3. 5)式の歪を局部座屈歪で表して(1. 1)式に代入すると次式が得られる c
4 b
(3. 6)
Escr D 3 p + c/ aec b r D
上式を整理すると 終的に、 鋼管の圧縮局部座屈歪は (3. 7)式となる < D (3. 7)
ただし、 (3. 7)式の右辺には局部座屈応力が含まれているので、このままでは圧縮局部座 屈歪を求めることができない。
そこで、 (3. 7)式を解くため、 下記の(3. 8)式に示すように、 局部座屈応力と降伏応力が 近い値である性質を利用すると、鋼管の圧縮局部座屈歪は(3. 9)式のようになり、 これが前 記(3. 1)式である。
(3. 8)
ヽ
び—
( 6 ) 本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 局部座屈歪を求める第 4ステツ プを有し、 上記 (1 ) 〜 (5 ) における第 3のステップにおいて適用可能性ありと評価さ
れた場合において、 第 4ステップで求めた局部座屈歪と当該用途に要求される要求座屈歪 とを比較し、 当該用途への適用可否を判定する第 5ステップを有するものである。
第 4ステップにおける局部座屈歪を求める方法としては、 上記 (2 ) に示した (1. 1) 式 を用いる方法、 また上記 (4 ) に示した式 (2. 1) を用いる方法、 また上記 (5 ) に示した 式 (3. 1) を用いる方法のいずれでもよい。
なお、 要求座屈歪とは、 当該鋼管の用途において当該鋼管が局部座屈するときに要求さ れる歪をいう。
( 7 ) 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法は、 応力歪特性上に降伏棚を有する材料 の応力歪特性を取得する第 1ステップと、 下式に該第 1ステップで取得された応力歪特性 を入力して、 局部座屈歪を求めるように演算処理する第 2ステップと、 第 2ステップにお いて局部座屈歪が求められた場合には当該鋼管を塑性設計を前提とされる構造物に適用可 能性ありと評価し、 第 2ステップにおいて局部座屈歪が算出不能である場合には塑性設計 を前提とされる構造物に適用可能性なしと評価する第 3ステップを備えたものである。
但し、 ε„ :圧縮局部座屈歪
Escr:降伏棚型モデルの応力歪曲線において、 原点と座屈点とを結ぶ線の傾き E rcr:座屈点における応力歪曲線の傾き
t : 管厚
D: 管径
( 8 ) 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法は、 応力歪特性上に降伏棚を有する材料 の応力歪特性を取得する第 1ステップと、 下式に該第 1ステップで取得された応力歪特性 を入力して、 局部座屈歪を求めるように演算処理する第 2ステップと、 第 2ステップにお いて局部座屈歪が算出不能である場合には塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性な しと評価するとともに、 第 2ステップにおいて局部座屈歪が求められた場合には、 求めた 局部座屈歪と当該用途に要求される要求座屈歪とを比較し当該用途への適用可否を判定す る第 3ステップを備えたものである。
但し、 ε。 圧縮局部座屈歪
E,cr:降伏棚型モデルの応力歪曲線において、 原点と座屈点とを結ぶ線の傾き E Tcr:座屈点における応力歪曲線の傾き
t : 管厚
D : 管径 上記 (1 ) 〜 (8 ) の発明においては、 鋼管の局部座屈歪が歪硬化開始歪よりも大きい かどうか、 あるいは局部座屈歪の算出可能性の有無によって当該鋼管の座屈性能を判定し た。
以下においては、 鋼管の管径管厚比 (DZ に基づいて当該鋼管の座屈性能を判定す
る方法を説明する。
鋼管の局部座屈 E c rと管径管厚比 (DZt) の関係が前述の (1. 1) 式に示されてい る。 そこで、 横軸に管径管厚比 (DZ を取り、 縦軸に局部座屈歪 ε c rを取って (1. 1) をグラフ表示すると図 4のようになる。
図 4から分かるように、 鋼管の DZtが小さい (厚肉鋼管) 場合には局部座屈歪 £ c rは 大きく、 鋼管の DZtの増加、 すなわち鋼管を薄肉化と共に局部座屈歪 £ c rが減少する。 そして、 局部座屈歪 ε c rが歪硬化開始歪と一致したところで局部座屈歪は急激に減少し、 以降の局部座屈歪 £ c rは降伏歪と同じ歪となる。
したがって、 局部座屈歪 f c rが歪硬化開始歪と一致するときの管径管厚比 (DZt) cr を求めておけば、 この管径管厚比 (DZt) crと判定対象の銅管の D/tを比較すること で、 当該鋼管が降伏棚の領域で座屈するのか歪硬化領域で座屈するのか、 ひいては座屈性 能に優れているかどうかを判定できる。 そこで、
(9) 本発明に係る銅管の局部座屈特性評価方法は、 降伏棚を有する鋼材の応力歪特性を 取得する第 1ステップと、 前記応力歪特性を有する鋼管の局部座屈歪が前記応力歪特性に おける歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比(DZ t)crを求める第 2ステップと、判 定対象の鋼管の管径管厚比 (DZt) と前記第 2ステップで求めた管径管厚比(DZ t)cr との大小関係を比較し、 判定対象の鋼管の管径管厚比 (DZ の方が小さい場合には当 該材料を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、 判定対象の鋼管の管 径管厚比 (DZt) の方が大きい場合には塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性な しと評価する第 3ステップを備えたものである。
第 2ステップにおける管径管厚比(D/ t)cr の求め方は特に限定されるものではない が、 その一例を挙げれば下記に示す前述の (1. 1) 式を用いる方法がある。
(1. 1) 式は、 左辺と右辺の等式が成り立つときの左辺の値が局部座屈歪であること を意味している。 したがって、 第 1ステップで求めた応力歪特性の歪硬化開始歪にて鋼管 が座屈するめには、 d. 1) 式の左辺に歪硬化開始歪を代入すると共に、歪硬化開始歪に 対応する応力歪特性上の点における割線係数 (Es) と接線係数 (Ετ) を求め、 これらを (1. 1) 式の右辺に代入して等式が成立するときの管径管厚比 (DZt) を求めればよ い。
上記の方法による場合でも (1. 1) 式の右辺を演算するためには歪硬化開始歪に対応 する応力歪特性上の点における割線係数 (Es) と接線係数 (ET) を求める必要があり、 そのためには複雑な演算が必要である。 そこで、 さらに簡易な演算にてできるようにする ために、
(10) 本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 上記 (9) の第 2ステップに おける管径管厚比 (DZt) cr を下記(4.1)式及び上記 (9) の第 1ステップで取得され た応力歪特性に基づいて求めることを特徴とするものである。
但し、 Dlt :最大管径管厚比
ey :降伏至
εΗ -.歪硬化開始歪
m :歪硬化係数
(4.1)式は、局部座屈歪が応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比 (D/ t ) cr を求めるために、 前記(2.1)式の局部座屈歪 ε c rを歪硬化開始歪 £ Hで置き 換え、 管径管厚比 (DZt) crについて解いたものである。
( 1 1 ) また、 本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 上記 (9) の第 2ステ ップにおける管径管厚比 (DZt) cr を下記(5.1)式及び上記 (9) の第 1ステップで取 得された応力歪特性に基づいて求めることを特徴とするものである。
m :歪硬化係数
(5.1)式は、局部座屈歪が応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比 (DZt) cr を求めるために、 前記(3.1)式の局部座屈歪 E e rを歪硬化開始歪 ε Hで置き 換え、 管径管厚比 (D/t) crについて解いたものである。
( 1 2) また、 本発明に係る他の鋼管の局部座屈特性評価方法は、 上記 (9) 〜 ( 1 1 ) に記載のものにおいて、 局部座屈歪を求める第 4ステップを有し、 第 3ステップにおいて 適用可能性ありと評価された場合において、 第 4ステップで求めた局部座屈歪と当該用途 に要求される要求座屈歪とを比較し、 当該用途への適用可否を判定する第 5ステップを有 することを特徴とするものである。
第 4ステップにおける局部座屈歪を求める方法としては、 上記 (2) に示した (1.1) 式 を用いる方法、 また上記 (4) に示した式 (2.1) を用いる方法、 また上記 (5) に示した 式 (3.1) を用いる方法のいずれでもよい。
( 1 3) 本発明に係る鋼管の設計方法は、 降伏棚を有する鋼材の応力歪特性を取得する第 1ステップと、 前記応力歪特性を有する鋼管の局部座屈歪が前記応力歪特性における歪硬 化開始歪に一致するときの管径管厚比(DZ t)crを求める第 2ステップと、設計対象の鋼 管の管径管厚比 (DZt) が前記第 2ステップで求めた管径管厚比(D/ t)crよりも小さ くなることを維持しつつ、 設計対象の鋼管の管径管厚比 (DZt) を決定する第 3ステツ プとを備えたものである。
( 1 4)本発明に係る鋼管の設計方法は、上記(1 3) における第 3ステップにおいては、 第 3ステップにおいては、 第 1ステップで取得した応力歪特性及び制定対象の銅管.の管径
管厚比 (D/t) から求まる局部座屈歪が、 要求座屈歪よりも大きくなるように、 当該設 計対象の鋼管の管径管厚比 (DZt) を決定するようにしたものである。
(15) 本発明に係る鋼管の製造方法は、 上記 (13) 又は (14) に記載の鋼管の設計 方法による設計に基づき鋼管を製造するものである。
( 1 6) 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法は、 管径13、 管厚 tおよび要求局部座 屈歪
£ reqが与えられた鋼管の局部座屈特性評価方法であって、 応力歪特性上に降伏棚を有 する材料の応力歪特性を取得し、 取得された応力歪特性における応力歪曲線の降伏歪 t
y、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 f
Hが、 縦軸を E
y/m、 横軸を ε
Ηとした座標面において、 下式 で示される領域内にあるかどうかを判断し、 当該領域内にある場合には当該鋼管を塑性設 計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価し、 当該領域内にない場合には当該鋼管 を塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性なしと評価することを特徴とするものであ る。
但し、 sy≤sH <snq
( I、
3
但し、 s,,qく
3
以下、 式(30) (31)について説明する。
鋼管の圧縮局部座屈歪 ε c rと管径管厚比 (D/ t ) の関係が前述の(1.1)式に示されて いる。 そこで、 横軸に管径管厚比 (D, t ) を取り、 縦軸に圧縮局部座屈歪 E crを取って (L 1)式をダラフ表示すると図 4のようになる。
図 4から分かるように、 鋼管の D/ tが小さい (厚肉鋼管) 場合には圧縮局部座屈歪 r は大きく、 鋼管の D/ tの増加、 すなわち鋼管の薄肉化と共に圧縮局部座屈歪 ε„が減少す る。 そして、圧縮局部座屈歪 £„が歪硬化開始歪 Ε Ηと一致したところで圧縮局部座屈歪 ε „は急激に減少し、 以降の圧縮局部座屈歪 ξ„は降伏歪 ε yとほぼ同じ歪となる。
図 4から降伏棚モデルの鋼管の座屈性能が低い理由として、 圧縮局部座屈歪 E crが歪硬 化開始歪 £„と一致したところで圧縮局部座屈歪は急激に減少してしまうことが上げられ る。 これは、 降伏棚領域では、 応力が増加しない状態で変形が進行するため、 降伏棚領域 で座屈する鋼管は降伏歪の直後に座屈波形が成長し、 圧縮局部座屈歪は近似的には降伏歪 となってしまうからである。
以上検討したように、 降伏棚モデルの銅管の変形性能が低い理由として降伏棚領域で座 屈する鋼管の圧縮局部座屈歪は近似的には降伏歪となってしまうことが挙げられる。 この ことから、降伏棚モデルの鋼管はその応力歪曲線における歪硬化開始歪 ε の値、換言すれ ば降伏棚の長さが鋼管の変形性能に関連していると考えられる。
すなわち、歪硬化開始歪 £„の値が小さい、すなわち降伏棚の長さが短い鋼管は、歪硬化
開始歪 f Hの値が大きい、すなわち降伏棚の長さが長いものよりも変形性能に優れると考え ら Lる。
したがって、降伏棚モデルの銅管の変形性能を評価するのに歪硬化開始歪 £ Hの値を指標 とすることが有効である。 '
発明者は降伏棚長さの他に変形性能を評価する指標についてさらに検討を重ねた。 そして、 発明者は(1. 1)式によれば、 E Tcr/ E scrが大きくなることで圧縮局部座屈歪 £„ が大きくなることに着目した。 図 1 5からわかるように、 ETcrは応力歪曲線における傾き であることから、 降伏棚終点近傍において応力歪曲線の傾きが大きいことが圧縮局部座屈 歪 £„を大きくすることになつているとの知見を得た。
このことから、 降伏棚モデルの鋼管の変形性能を評価するのに応力歪曲線の傾きを指標 とすることが有効であることを見出した。
以上のように応力歪曲線の形状に着目することで、 変形性能を評価することが可能とな る。 ここで着目する応力歪曲線の形状とは、 降伏棚の長さと、 歪硬化域の接線勾配の大き さである。
以上が応力歪曲線の形状によつて鋼管の変形性能を評価できることの(1. 1)式に基づく 図式的な説明である。 ,
発明者はこのことを数式を用いて定量的な評価方法を案出すべく、 上記の基礎式を変形 して降伏棚モデルの圧縮座屈歪を表す数式を案出し、 さらに検討を進めた。
以下、 この点につき詳細に説明する。
前述したように、 降伏棚モデルの鋼管の圧縮局部座屈歪 ε CTは下記の数式(11) (前述の (2. 1)式と同じ式である) で表すことができる。
16
' = : ( 1 1 )
sy lm
但し、 D lt 管径管厚比
:降伏歪
:歪硬化開始歪
:歪硬化係数 上記のように、 降伏棚モデルの鋼管の圧縮局部座屈歪 ε„を数式(11)に示すように、 応 力歪曲線の傾きを表す歪硬化係数 mと、降伏棚の長さの指標となる歪硬化開始歪 ε Ηで表現 できたので、 以下においては、 この数式(11)を用いて鋼管の局部座屈特性を評価する方法 を具体的に説明する。
なお、 降伏棚モデルの圧縮局部座屈歪を推定する(11)式の適用範囲は、 圧縮局部座屈歪 と歪硬化開始歪を等値することによって、 管径管厚比 D/tについて次式のように表すこと ができる。 すなわち、 降伏棚型モデルの応力歪曲線の特性が与えられた場合、 適用可能な 鋼管の最大管径管厚比(D/t) maxは(12)式で表される。 したがって、(D/t) ma
Xよりも大きい D/tを有する鋼管については、局部座屈歪推定式である(11)式を適用できないことになる。
管径0、 管厚 t、 要求局部座屈歪
ε reqが与えられたときに降伏棚モデルの材料を用いて 鋼管を製造したときに当該鋼管が前記要求局部座屈歪 E
reqを満たしてパイプライン用の鋼 管として適用できるためには、 以下の要件を満たす必要がある。
( A) 鋼管の圧縮局部座屈歪 f crが要求局部座屈歪 f reqよりも大きいこと
( B ) 鋼管の局部座屈が降伏棚領域で生じないこと、 換言すれば銅管の局部座屈が歪硬化 領域で生ずること
( C ) 歪硬化開始歪が降伏歪よりも大きいこと
つまり、 上記の (A) 〜 (C ) のすベての条件を満たす場合には当該鋼管はパイプライ ン用鋼管として適用可能と評価でき、 上記の (A) 〜 (C ) のいずれかの条件を満たさな い場合には、 該鋼管はパイプライン用鋼管として適用できないと評価できる。
図 1 6は上記の 3つの条件を、 縦軸が 横軸が ε Ηからなる座標面に領域とし表示した ものである。
以下においては、上記の 3つの条件についてそれが必要とされる理由を説明すると共に、 その条件を図で示した図 1 6について説明する。
( Α) 鋼管の圧縮局部座屈歪 f „が要求局部座屈歪 eqよりも大きい条件
実際のパイプライン用の鋼管の設計においては、 局部座屈歪の要求値 (要求局部座屈歪 ε req) が与えられる。
したがって、 当該銅管をパイプライン用の鋼管として用いることができるためには、 当 該鋼管の圧縮局部座屈歪 ε„が要求局部座屈歪値 E reqよりも大きいことが必要条件となる。 つまり、 当該鋼管をパイプライン用の鋼管として用いることができるかどうかを評価する には、 当該鋼管の圧縮局部座屈歪 £„が要求局部座屈歪 ε reqの値よりも大きいかどうかを 判定することが必要となる。
鋼管の圧縮局部座屈歪 ε
crが要求局部座屈歪 ε
reqの値よりも大きいことを数式(11)を用 いて表現すると、 下式(13)のようになる。
(13)式を
ε y/mについて整理すると下記の(14)式が得られ、 (13)式の不等号を満足する
£ yZmおよぴ"は図 1 6の直線(a)以下の領域となる。 また、 直線 (a)は(14)式の不等号 を等号で置き換えた(15)式で表される。直線(a)の上における f
yZmと ε„の組み合わせは、
£ crと
f reqが等しくなることを表している。
また、 安全側に考えれば、 ε„は £ reqよりも大きいことが要求されるから、 選択される E y/mと £ Hは、直線 (a)と平行で下方に位置する直線上の値となる。換言すれば、直線 (a) と平行で下方に位置する直線上の £ 7 mと ε Hの組み合わせを選択すると、 ε crは £ reqより も大きくなる。
もっとも、 £ reqは E„の最大値 (最大圧縮局部座屈歪 ε craaI) を超えることはできない。 したがって、直線 (a)と平行で下方にも限界値が存在するが、この限界値については後述す る。
( B ) 鋼管の局部座屈が降伏棚領域で生じないこと、 換言すれば鋼管の局部座屈が歪硬化 領域で生ずるための条件
銅管が歪硬化領域で局部座屈するためには、圧縮局部座屈歪 ε„が歪硬化開始歪 £ 以上 であることが必要条件となる。 この条件は、 (13)式の左辺の歪硬化開始歪 ε reqを歪硬化開 始歪 ε Hで置き換えることによって下記の(16)式のように表すことができる。
16
(16)
9(ey / m - £H )
( 16)式を ε y/mについて整理すると下記の(17)式が得られ、 (17)式の不等号を満足する ε yZmおよび ε Hの値は図 1 6の曲線 (b)以下の領域となる。また、図 1 6の曲線(b)は(17) 式の不等号を等号で置き換えた(18)式で表される。 直線(b)の上における ε yZm と £„は、 鋼管に付与できる圧縮局部座屈歪 E crと歪硬化開始歪 ε re„が等しくなることを表している:
また、 直線 ωと曲線 (b)の交点 Aの横軸の座標(
£ η) Αは、 与えられた要求局部座屈歪
Ε reqであり、 縦軸の座標 (ε ,/m) Aは上記(18)式に与えられた要求局部座屈歪
eqを代入す ることで下記の(19)式で示すように表される。
(19)
( 17)式およびこれを線図で示した図 1 6の ί¾線(b)からすると、 歪硬化開始歪 ε„はどこ までも大きくなることが許容されているようにも思える。 しかしながら、歪硬化開始歪 ε
Η は降伏棚の長さを規定するものであり、 当然にその最大値が存在する。 そこで、 この最大 値について検討する。
(17)式を歪硬0化 J 0 開始歪 £ について整理すると £„の二次方程式である下記の(20)式が得ら れる。 丄 Q
(20)式の二次方程式が実根を持っためには、 (21)式に示すように判別式が正である必要 がある。 このことから、 £ yZmと t/Dの関係が(22)式のように表される。 (22)式が曲線 (b) の定義域を縦軸について示しており、曲線 (b)の縦軸に関する最小値は(23)式となる。 (23) 式が曲線(b)の B点の縦軸の座標である。
0≤ (21 )
£y 8 f t
(22)
m 3 D ,
( ε 、
(23)
"* ノ
(22)式の関係が成立する場合、 (20)式を満足する解の範囲は(24)式および (25)式で表さ れる。
16
(24)
(24)式は ε Hが有限の値であることを表しているが、(25)式は £„が無限大となることを許 容している。 ε Ηは有限の値であることから、 (20)式の解として(24)式が採用され、 (25) 式は却下される。 また、 (23)式で与えられる f yZmの最小値を(24)式に代入すると、 曲線 (b)における B点の横軸の座標が(26)式のように求められる。 い fe (26) 式 (26)で表される B点の横軸の座標( ε H) Bは最大圧縮局部座屈歪 を示している。し
たがって、前述したように直線(a)を下方に平行移動したときに、下方に平行移動できる限 界値は下方に平行移動した直線が B点を通るときである。 そこで、 以下ではこの直線を直 線(c)として、 直線 (c)表す式を求める。
仮にこの直線(c)を下記の式(27)のように表現する。
(27)
ここで、 cは縱軸の切片の値である。
直線(c)が B 点を通ることから、 B点の座標を(27)式に代入することによって(27)式は (28)式のように表される。
( C ) 歪硬化開始歪が降伏歪よりも大きいこと
歪硬化開始歪が降伏歪よりも大きい条件は次式 (29)で与えられる。
(29) 図 1 6の直線(d)は E„= i yを表しており、歪硬化開始歪 ε„が降伏歪 ε yよりも大きいこ とが必要条件であるから、 解の領域は直線( の右側となる。
以上のように、 図 1 6に示したように解領域が求まった。 したがって、 管径 Dと管厚 t が既知の鋼管が要求局部座屈歪 eqよりも大きい圧縮局部座屈歪 £ crを与えるかどうかを 評価するには、応力歪曲線の降伏歪 £ y、歪硬化係数 m、歪硬化開始歪 ε„が、直線 (a)、 (c) , (d)、 曲線 (b)で囲まれた領域内にあるかどうかを判断すればよいことになる。
この関係を式で表すと、 下記の 2式となり、 これが本発明 (1 6 ) に示した式である。
(30)
但し、
( 1 7 ) また、 本発明に係る鋼管の材質設計方法は、 管径0、 管厚 tおよび要求局部座屈 歪
£ ^が与えられた鋼管の材質設計方法であって、 応力歪特性上に降伏棚を有する材料の 応力歪特性を決定するに際し、 設計対象の材料の応力歪曲線の降伏歪 、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 ε
Ηが、 縦軸を £
y/m、 横軸を £
Hとした座標面において、 下式で示される領域 内にあるように降伏歪 ε
y、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪
£ Hこれらの応力歪特性を決定す
ることを特徴とするものである
(
D (30) 但し、 ^≤ε
Η≤ε,
但し、
(18) また、 本発明に係る鋼管は、 上記 (17) の鋼管の材質設計方法によって材質設 計されたことを特徴とするものである。
(19) 本発明に係る鋼管は、 上記 (1) 〜 (12)、 (16)、 (1 7) に記載の鋼管の局 部座屈特性評価方法によって、 塑性設計を前提とされる構造物に適用可能性ありと評価さ れた鋼管である。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法の説明図である (その 1)。
図 2は、 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法の説明図である (その 2)。
図 3は、 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法の説明図である (その 3)。
図 4は、 本発明に係る鋼管の局部座屈特性評価方法の説明図である (その 4)。
図 5は、 本発明の実施の形態 1のフローチャートである。
図 6は、 本発明の実施の形態 2のフローチャートである。
図 7は、 本発明の実施の形態 3のフローチャートである。
図 8は、 本発明の実施例にかかる判定対象について局部座屈歪と Dノ tの関係を示すグラ フである (その 1)。
図 9は、 本発明の実施例にかかる判定対象について局部座屈歪と DZ tの関係を示すグラ フである (その.2)。
図 10は、 本発明の実施例にかかる判定対象について局部座屈歪と DZ tの関係を示すグ ラフである (その 3)。
図 1 1は、 本発明の実施例にかかる判定対象について (DZt) crと歪硬化開始歪との 関係を示すグラフである。
図 12は、 鋼材の応力歪曲線の説明図である。
図 13は、 降伏棚型の鋼材の応力歪曲線の説明図である。
図 14は、 本発明の考え方を説明する説明図である。
図 15は、 降伏棚型の鋼材により形成された鋼管の応力歪曲線の説明図である。
図 16は、 本発明の局部座屈特性評価方法に係る領域を示したグラフである。
図 17は、本発明の実施形態 4に係る評価の対象とした材料の応力歪曲線である(その 1)。
図 1 8は、本発明の実施形態 4に係る評価の対象とした材料の応力歪曲線である(その 2)。 図 1 9は、本発明の実施形態 4に係る評価の対象とした材料の応力歪曲線である(その 3)。 図 20は、本発明の実施形態 4の局部座屈特性評価方法に係る領域を示したグラフである。 図 2 1は、本発明の実施形態 5の局部座屈特性評価方法に係る領域を示したグラフである。 図 22は、本発明の実施形態 5の局部座屈特性評価方法に係る領域を示したグラフである。 発明を実施するための最良の形態
実施の形態 1
本実施の形態においては、 本発明の判定方法を、 管径管厚比 (D/ t) =50の鋼管が 要求座屈歪 £ r e q = 1.5%のパイプラインに適用可能かどうかを判定する場合を例に挙げ て説明する。
図 5は本実施の形態の判定方法の流れを示すフローチャートである。 以下、 図 5に基づ いて本実施の形態を説明する。
まず、判定対象の鋼管の応力歪特性を取得する(S 1)。応力歪特性の取得方法としては、 試験片による引張り試験により取得してもよいし、 あるいは予め試験データが存在する場 合には当該試験データを格納したデータベースから読み出すようにしてもよい。
取得した応力歪特性からその応力歪曲線において降伏棚を有する降伏棚モデルか、 連続 硬化モデルかを判定する (S 3)。 S 3の判定において、 連続硬化モデルであると判定され た場合には、 連続硬化モデルの場合には座屈歪性能に優れるのでパイプラインに対して適 用の可能性ありと判断する (S 7)。
他方、 S 3の判定において、 降伏棚モデルであると判定された場合には、 S 1において 取得された鋼材の応力歪特性から当該鋼材の歪硬化開始歪 ε Ηを取得し、 この歪硬化開始 歪 ε Ηと当該材料の鋼管の局部座屈歪 ε c rとの大小関係を判定する (S 5)。
本実施の形態では (S 3) の判定において、 降伏棚モデルであると判定されたので、 $ 5) の判断を行う。 また、 本実施の形態においては、 (S 1) で取得した応力歪特性 (応力 歪曲線) における歪硬化領域の形状が線形硬化則の適用可能なものであったことから、 (S 5) の判定を、 下記に示す前述の (2.1) 式に基づいて行う。
すなわち、 (2.1) 式の右辺の演算値と歪硬化開始歪
£ Hを比較して演算値が歪硬化開始 歪
£ Hよりも大きい場合には局部座屈歪 f
c rが歪硬化開始歪 ε
Ηよりも大きいと判断する。 ここで (2.1) 式の右辺に代入すべき具体的な数値について検討する。 (tZD) は最初 に与えられており、 ( t/D) = 1ノ 50である。 歪硬化開始歪 £
Hは (S 1) で取得した 応力歪特性から読み取ることができ、 この例では 1.5%である。 また、 降伏歪
∑ yも同様に S 1で取得した応力歪特性から読み取ることができ、 この例では 0.22%である。 歪硬化係 数 mも同様に S 1で取得した応力歪特性から決定することができ、 m = 0.04であった。
これらの値を (
2.1) 式の右辺に代入して演算するとその演算値は 1.78%となる。 この 演算値 1.78%と歪硬化開始歪
Ε Η = 1· 5%を比較すると、演算値の方が大きい。したがって、 局部座屈歪 ε
e rが歪硬化開始歪 ε Ηよりも大きいと判断し (S 5)、 パイプラインへの適用 の可能性ありと判断する (S 7)。
パイプラインへの適用の可能性ありと判断されると、 次に、 当該鋼管の局部座屈歪 ε c r を取得する (S 9)。本例では(S 5) の演算値が当該鋼管の局部座屈歪 ε c rであるので、 新たに演算等する必要はない。 ここで取得された局部座屈歪 ε c rと要求座屈歪 f r eq比較 して (S 1 1)、 局部座屈歪 ε c rが要求座屈歪 E r eqよりも大きい場合には、 合格と判定 する (S 1 3)。 この例では局部座屈歪 ε c r = 1.78%、 要求座屈歪 £ r e q = 1.5%であるの で、 局部座屈歪 ε c rが要求座屈歪 £ r eqよりも大きく合格と判定される。
なお、 (S 5) の判断において局部座屈歪 ε c rが歪硬化開始歪 ε H以下であると判断され た場合には、 当該鋼管はパイプラインへの適用の可能性はないと判断し (S 1 5)、判定を 不合格とする (S 1 7)。 また、 (S 1 1) において局部座屈歪 E c rが要求座屈歪 ε r e q以 下の場合にも、 不合格と判定される (S 1 7)。
以上のように、 本実施の形態によれば、 判定対象の鋼管が局部座屈性能に優れるものか どうかを簡易に判定できる。 したがって、 例えば連続硬化モデルの銅管をパイプライン用 として製造する場合において製造途中の塗装段階での加熱処理によって材質変化が生じ、 当該銅管が降伏棚モデルに変質したような場合においても、 当該鋼管の座屈性能を判定す ることにより、 連続硬化モデルと同等に扱ってよいかどうかを簡易に判定できる。
なお、 上記の例においては、 (S 5) における局部座屈歪 ε c rと歪硬化開始歪 E Hの大小 関係の判断を (2.1) 式に基づいて行ったが、本発明はこれに限られるものではなく、例え ば判定対象の鋼管と同じ鋼管に歪硬化開始歪に相当する歪を生じさせるような荷重を与え たときに試作の鋼管が座屈するかどうかを試験して、 局部座屈した場合には歪硬化開始歪 が局部座屈歪 £ c r以上であると判断し、局部座屈しない場合には局部座屈歪 ε c rが歪硬化 開始歪より大きいと判断するようにしてもよレ、。
また、 前述の 1)式に基づいて判断するようにしてもよい。
また、 (S 1)において取得した判定対象の鋼管の応力歪特性における歪硬化領域の応力 歪曲線が累乗関数で近似できるような場合には(3.1)式に基づいて判断するようにする。 さらなるステップ S 5の変形例としては、局部座屈歪を(1.1)式、 (2.1)式あるいは(3.1) 式などによって算出し、算出された局部座屈歪 E crを歪硬化開始歪 £ Hと直接比較するよう にしてもよい。 その場合には、 ステップ S 9は省略されることになる。 また、 (1.1)式では 局部座屈歪が降伏棚領域に位置するときには、局部座屈歪の値自体が算出不能となるので、 その現象を利用してステップ S 5の判定を行う方法もある。すなわち、応力歪特性を(1.1) 式に入力し、 局部座屈歪が算出不能であったときにはステップ S 5 「NO」 とし、 局部座 屈歪が算出されたときにはステップ S 5 「YE S」 とする。 実施の形態 2
本実施の形態においては、 実施の形態 1に示したものとは別の判定方法を、 実施の形態
1と同じ鋼管を判定対象として要求座屈歪 ε r e q = l.5%のパイプラインに適用可能かど うかを判定する場合を例に挙げて説明する。
図 6は本実施の形態の判定方法の流れを示すフローチャートである。 以下、 図 6に基づ いて本実施の形態を説明する。
鋼材の応力歪特性を取得し (S 1)、 当該鋼材が降伏棚モデルか、 連続硬化モデルかを判 定する (S 3)。 この処理は実施の形態 1と同様である。
(S 3 ) において降伏棚型モデルであると判定された場合には、 当該鋼管の局部座屈歪 が (S 1 ) で取得した当該鋼管の応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径 管厚比(DZ t )crを求める (S 4)。 そして、 ここで求めた管径管厚比(D/ t )crと判定 対象の鋼管の管径管厚比(D/ t )の大小を判定する (S 5)。
本実施の形態においては、 (S 1 ) で取得した応力歪特性における歪硬化領域の形状が線 形硬化則の適用可能なものであったことから、 $ 5) の判定を、 下記に示す前述の (4.1) 式に基づいて行う。
ここで、
£ η = 1.5%、 ε
y =0.22%、 m = 0.04を(4.1)式の右辺に代入して演算すると、 (DZ t )cr = 54.4となる。 他方、 D, t = 5 0であるから、 (D/ t ) < (D, t )crが成 立する。 よって、 局部座屈歪 E
c rが歪硬化開始歪 E Hよりも大きいと判断し (S 6)、 パイ プラインへの適用の可能性ありと判断する (S 7)。 以降は、 実施の形態と同様に S 9、 S 1 1の処理をして、 最終的には実施の形態 1と同様に合格と判定する (S 1 3)。
なお、 (S 5) の判定において、 (DZ t ) ≥ (D/ t )cr の場合には、 局部座屈歪 E c r が歪硬化開始歪 £ H以下であると判断し (S 1 5)、 パイプラインへの適用の可能性はない と判断し (S 1 7)、 最終的に不合格と判定する (S 1 9)。
以上のように、 本実施の形態によれば、 判定対象の鋼管が局部座屈性能に優れるものか どうかを簡易に判定できる点は実施の形態 1と同様である。 さらに、 本実施の形態 2にお いては管径管厚比(DZ t )という分力 りやすいパラメータを基準にして局部座屈性能を判 定するので、 判定が容易である。
なお、 上記の例においては、 (S 5) における管径管厚比(DZ t )cr と判定対象の鋼管 の管径管厚比(DZ t )の大小の判定を (4. 1) 式に基づいて行ったが、 本発明はこれに限ら れるものではなく、 (S 1 ) において取得した判定対象の鋼管の応力歪特性における歪硬化 領域の応力歪曲線が累乗関数で近似できるような場合には前述の(5.1)式に基づいて判断 するようにする。
本実施の形態においてはすでにある鋼管に対して局部座屈性能の判定をするようにした が、 使用する鋼材が決まっていれば当該鋼材の応力歪特性における歪硬化開始歪に一致す るときの管径管厚比(DZ t )crを求めておくことで、パイプライン用の鋼管を設計する場 合において管径管厚比( D t )をどこまで大きくできるか、 換言すればどこまで薄肉化で
きるかの設計指針として用いることもできる。 このような考えに基づく鋼管の設計方法に ついて以下の実施の形態 3で説明する。 実施の形態 3
図 7は本実施の形態に係る鋼管の設計方法の処理の流れを示すフローチャートである。 以下、 図 7に基づいて本実施の形態を説明する。
降伏棚を有する候補材料の応力歪特性を取得する (S 2 1 )。 S 2 1の処理は実施の形態 1における S 1と同様である。
S 2 1で取得した応力歪特性に基づいて (DZ t ) crを取得する (S 2 3 )。 (D/ t ) crの取得方法としては、 例えば下記に示す前述の(1. 1)式に基づく方法がある。
( 1 . 1 ) 式は、 左辺と右辺の等式が成り立つときの左辺の値が局部座屈歪であること を意味している。 したがって、 S 2 1で求めた応力歪特性の歪硬化開始歪にて鋼管が座屈 するめには、 . 1 ) 式の左辺に歪硬化開始歪を代入すると共に、 歪硬化開始歪に対応す る応力歪特性上の点における割線係数 (E
s) と接線係数 (Ε
τ) を求め、 これらを (1 . 1 ) 式の右辺に代入して等式が成立するときの管径管厚比 (DZ t ) を求めればよい。 また、 他の方法としては、 S 2 1で求めた応力歪特性における歪硬化域が線形近似でき る場合には、前述の下記(4. 1)式によって取得し、 S 2 1で求めた応力歪特性における歪硬 化域が累乗近似することができる場合には、前述の下記(5. 1)式によって取得することがで さる。
但し、 D/t : 大管径管厚比
ey :降伏歪
% :歪硬化開始歪
歪硬化係数
次に、 設計対象の鋼管の DZ tを仮設定する (S 2 5 )。 このとき DZ tが満たすべき条 件は DZ t < (D/ t ) crである。
なお、 パイプライン用の鋼管を設計する場合であれば、 パイプラインにて輸送する加圧
流体の輸送量及び輸送距離を前提として、 操業コスト及ぴ建設コストを最低にすべくパイ プの直径 D、 管厚 tを仮設定することを要する。 したがって、 前記 DZ tく (D/ t ) cr は設計条件のうちの必要条件である。
仮設定した D, tを前提として、 当該材料で設計した鋼管の局部座屈歪 rを取得する (S 2 7)。
ここで局部座屈歪 £ crを求める方法としては、 前述の (2) に示した (1.1) 式を用いる方 法、 また (4) に示した式 (2.1) を用いる方法、 あるいは上記 (5) に示した式 (3.1) を用いる方法のいずれでもよい。
S 2 7で取得した と要求される局部座屈歪である要求座屈歪 ε reqを比較して £ req< E crを満たすかどうかを判定する (S 2 9)。
なお、 要求座屈歪 E reqは、 S 2 5で仮設定された直径及び管厚を有するパイプに敷設線 形を考慮してパイプラインを構造設計し、 構造設計されたパイプラインに輸送圧力、 地盤 変位及び又は外力が作用したときにパイプに発生する最大歪を求め、 この最大歪に一定の 安全率を考慮して設定される。
S 2 9の判定において YE Sと判断された場合、すなわち ε reqく ε„を満たす場合には、 さらなる鋼管の薄肉化のために D/ tの設定を 1ランク大きく設定する (S 3 1)。 ここで Ό/ tを大きくする割合としては S 2 7で取得した E crと £ reqとの差の大きさ、 あるいは 予め設定した一定値等、 適宜の条件に基づく所定の値とする。
S 3 1で DZ tを再設定した場合には、 3 2 5で0 1 < (DZ t ) crを満たすことを 確認した上で S 2 7以降の処理を繰り返す。 '
S 2 9の判断において、 NOと判断された場合、 すなわち eq< rを満たさない場合 には、 当該処理が S 3 1を経由しているかどうかを判断し (S 3 3)、 YE S、すなわち S 3 1を経由している場合には、 直前の S 3 1の一^ 3前の処理において設定した D/ tを設 計値として決定する (S 3 5)。
D/ tの設計値が決定されると、 当該設計値に基づいて銅管の製造を行うことにより、 所定の要求座屈歪を満たす鋼管が製造できる。
S 3 3の判断において、 NO、 すなわち S 3 1を経由していない場合には、 S 2 5に戻 つて DZ tをさらに小さく設定できるかどうかを判断する (S 3 7)。すなわち、 S 2 5の 仮設定においては、 0ノ1を1) 1 < (Ό/ t ) crを前提条件として、 さらにパイプライ ンにて輸送する加圧流体の輸送量及び輸送距離を前提とした操業コスト及ぴ建設コストを 最低にすべきという条件の下でパイプの直径 D、 管厚 tを仮設定しているので、 例えば操 業コスト及ぴ建設コスト面を緩和して D_ tを一つ前の処理で設定した値よりも小さく設 定できるかどうかを判断する。
S 3 7の判断において YE S、 すなわち DZ tの再設定可能な場合には、 S 2 5に戻つ て同様の処理を繰り返す。 他方、 S 3 7の判断において NO、 すなわち DZ tの再設定が できない場合には、 当該材料にて当該用途への適用は不可と判断する (S 3 9)。
以上のように、本実施の形態においては、 管径管厚比(DZ t )crを考慮しつつ図 7に示 した処理を適宜行えば、すなわち(DZ t )く(DZ t )crを常に満たすようにしながら管径
管厚比(DZt)の値を修正していくようにしたので、 降伏棚のある材料であっても、 あた かも連続硬化型の材料であるかのように取扱って最適な管径管厚比(Dノ t)を設計してい くことができる。 実施の形態 4
本実施の形態においては、 表 1に示す応力歪特性を有する 9種類の材料を用いて外径 D=762.0mm、 管厚 t=15.24删 (D/t=50)の鋼管を製造したときに、 当該鋼管が局部座屈歪の 要求値 ε req = 0.5¾とされる X80グレードのラインパイプ用の鋼管として適用できるかどう かの評価を本発明に基づいて行った。.そして、 その評価が妥当かどうかを F EM解析によ つて検証した。 表 1
表 1には X80グレードのラインパイプに関する 9種類の材料の応力歪特性を示しており、 各材料の降伏歪 ε
yは 0.0029 (0.29%)、 歪硬化開始歪 ε
Hは 0.003 (0.3%)、 0.005 (0.5%), 0.010 (1.0%) である。 また、 歪硬化係数/ n£の係数は/ «=0.015、 0.020、 0.025 とした。 表 1の(D/t)maxは、 これらの値を(12)式に代入して求めた値である。 また、 P_1〜P- 9に対 応する応力歪曲線を図 1 7、 図 1 8、 図 1. 9に示す。
降伏棚モデルの局部座屈特性評価方法を示す下式に、 D=762.0mm、t=15.24謹、 ε
y = 0.29%, E
req = 0.5%を代入し、 縦軸を
£ y/m、 横軸を £
H とした座標面において、 下式の示す領域を 示した図 2 0を示す。
但し、 ey≤sH < εη
図 2 0には表 1に示した 9種類の各材料について座標点 (£ y/m, ε„) をプロットして ある。 また、 図 2 0において、.上式の領域内にあるものは白丸で示し、 領域外のものは黒 丸で示してある。
図 2 0から分かるように、 解領域の中にプロットされているのは Ρ-2、 Ρ- 3、 P-5および P-6である。 このことから、 P-2、 P-3、 P-5および P-6が合格と評価され、 これら 4ケース の材質設計条件で鋼管を製造することができれば、 鋼管の圧縮局部座屈歪 ε crは要求局部 座屈歪 E reqを満足するものとされる。
次に、 上記の評価が正しいかどうかを F E M解析によって検証した。
FEMで圧縮座屈解析を行なう鋼管の外径を D=762. 0mm、 管厚を t=15. 24mm (D/t=50)と設 定して解析を実施する。 圧縮座屈解析の結果を表 2に示す。
表 2
表 2には図 2 0の領域による判定結果を併せて記載している。
表 2に示すように、 P-2、 P-3、 P-5、 P-6の 4ケースについての FEMによるこれら 4つの 解析モデルの圧縮局部座屈歪 ε crは、 それぞれ 0. 58%、 0. 82%、 0. 51%および 0. 85%である。 このように、 P- 2、 P- 3、 P-5、 P-6の 4ケースについてはそれぞれの座屈歪が要求局部座 屈歪 (0. 5%) よりも大きい値である。
そして、 表 2から明らかなように、 図 2 0の領域によって P- 2、 P-3、 P- 5、 P- 6の 4ケー スを合格と判定した結果と一致している。
したがって、 本発明によって評価することが F E M解析結果と一致しており、 本発明が 実効性があることが検証された。 実施の形態 5
本実施の形態においては、 表 3に示す応力歪特性を有する 1 0種類の材料を用いて外径 D=762. 0mm、 管厚 t=15. 6瞧 (D/t=48. 8)の鋼管を製造したときに、 当該鋼管が局部座屈歪の 要求値 £ req = 0. 5%とされる X80グレードのラインパイプ用の鋼管として適用できるかどう かの評価を本発明に基づいて行った。
また、 表 3に示す同様の材料を用いて、 外径 D=914. 4誦、 管厚 t = 15. 2mmの鋼管を製造 したときに、 当該鋼管が局部座屈歪の要求値 £ req=0. 4%とされる X80グレードのラインパ ィプ用の鋼管として適用できるかどうかについての評価を行った。
そして、 何れのケースについてもその評価が妥当かどうかを F E M解析によって検証し た。
表 3に示すように、 応力歪曲線の降伏歪 は 0. 17〜0. 31%であり、 歪硬化開始歪 £ は 0. 17〜2. 0%である。 また、 歪硬化係数 m£の係数は 0. 006〜0. 025 である。 また、 表中の (D/t) maxはこれらの値を(12)式に代入して求めた値である。
図 2 1は、降伏棚モデルの局部座屈特性評価方法を示す前述の式(30) (31)に、 D=762. 0醒、 t=15. 6匪、 ε req=0. 5%および表 3に示した E yを代入し、 縦軸を / m、 横軸を ε Hとした座 標面において、 上記 3式の示す領域を示したものである。 図 2 1には表 3に示した 1 0種 類の各材料について座標点 ( £ y/m, £ H) をプロットしてある。
図 2 1を見ると、 Q - 1、 Q - 2および Q-3が解領域 (合格の範囲) にプロットされており、 Q - 4〜Q- 10は解領域の外側 (不合格の範囲) にプロットされている。
図 2 2は、降伏棚モデルの局部座屈特性評価方法を示す前述の式(30) (31)に、 D=914. 4議、 t=15. 2匪、 ε req = 0. 4%および表 3に示した ε 7を代入し、 縦軸を ε y/m、 横軸を ε Hとした座 標面において、 上記 3式の示す領域を示したものである。 図 2 2には表 3に示した 1 0種 類の各材料について座標点 (£ y/m, £„) をプロットしてある。
図 2 2見ると、 D=762. 0瞧の銅管と同様に、 Q_l、 Q- 2および Q-3が解領域 (合格の範囲) にプロットされており、 Q_4〜Q - 10 は解領域の外側 (不合格の範囲) にプロッ トされてい る。
次に、 上記の評価が正しいかどうかを F E M解析によつて検証した。
D=762. 0mmの鋼管と D=914. 4瞧の鋼管について、 F E M解析で求めた圧縮局部座屈歪を 表 4に示す。 D=762. 0瞧の鋼管の圧縮局部座屈歪は 0. 28〜0. 63%で、 D=914. 4mmの銅管では
0. 28〜0. 50%である。
表 4
図 2 1、 図 2 2のダイアグラムによる判定結果を F E Mの解と比較して照査した結果を それぞれ、 表 5、 表 6に示す。 表 5、 表 6に示す圧縮局部座屈歪は、 表 4の値を転記した ものである。
(D=762.0mm、 t= 15.6mm、 D/t=48.8の鋼菅の例)
(D=914.4mm. t=15.2mm. D/t=60の鍋管の例)
表 5を見れば、 D=762. 0讓の鋼管の要求座屈歪を 0. 5。と設定した場合、 Q- 1〜Q_3が合格 し、 その他の材料特性は不合格となることが分かる。
また、 表 6を見れば、 D=914. 4腿の鋼管の要求座屈歪を 0. 4%と設定した場合、 Q- 1〜Q- 3 が合格し、 その他の材料特性は不合格となることが分かる。
いずれの場合についても、 図 2 1、 図 2 2のダイアグラムによる判定結果と F E Mの結 果が一致しており、 本発明が実効性があることが検証された。
なお、 上記の説明では鋼管材料における降伏歪 、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 ε„を
取得して、 これらが縦軸を εノ m、 横軸を f Hとした座標面において上記式(30) (31)で規定 される特定の領域内にあるかどうかによって当該材料で鋼管を製造したときの局部座屈特 性評価方法の具体例について述べた。
しかし、 ここで示した考え方は局部座屈特性の評価方法のみならず、 管径0、 管厚 tお よび要求局部座屈歪 £ reqが与えられた鋼管の材質設計方法にも適用できる。 つまり、 管径 D、 管厚 tおよび要求局部座屈歪 ε reqが与えられた鋼管の材質設計に際して、 降伏歪 £ y、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 が、 縦軸を E y/m、 横軸を E hとした座標面において、 前述 の特定領域内にあるように降伏歪 、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 ε„を決定するように すればよい。
具体的には、 D=762. 0隱、 t=15. 24讓、 ε req = 0. 5%という要件を満たす鋼管の材質設計を 行う場合には、 前述の式(30) (31)にこれらの値を代入し、 縦軸を £ y/m、 横軸を ε Ηとした 座標面において、 式(30) (31)の示す領域を図 2 0のように描く。 そして、 図 2 0で示され る解領域内になるように降伏歪 £ y、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 E Hを決定する。 このよ うな、 歪硬化係数 m、 歪硬化開始歪 を有する材料であれば、 D=762. 0mm、 t=15. 24mm, ε req = 0. 5%という要件を満たす。 このようにすれば、 鋼管の材料の満たすべき材質つまり、 応力歪特性を簡易に決定できるので、 効率的な設計が可能となる。
なお、 上記の説明にでは圧縮局部座屈歪について説明したが、 圧縮局部座屈歪と曲げ局 部座屈歪とは約 1対 2という定量的な関係があるので、 このような定量的な関係を用いれ ば本願の考え方は曲げ局部座屈歪にも適用できる。 実施例
上記の実施の形態 2に示した判定方法によって、 実施の形態 2と同様に D Z t = 5 0の ときに要求座屈歪 ε req= l. 5%として複数の判定対象について判定を行った結果を表 7に 示す。 判定対象の材料は、 歪硬化開始歪 f Hが ε H = 1 . 5 、 1 . 0 、 0 . 5の 3種類であ り、 各歪硬化開始歪 £ Hについて、 歪硬化係数 m = 0. 01、 0. 02、 0. 03、 0. 04、 0. 05 のもの を対象としている。
表 7
表 7の第 1グループ ( ε
Η= 1. 5%) を見ると、 1- 1〜1-3はいずれも (D/ t) crが 50以下であり、 D/ t = 50としたときにはいずれも降伏棚領域で座屈することになる。 したがって、 1- 1〜1-3のものの局部座屈歪は降伏歪 (0.22) 程度と考えられ、 具体的な局 部座屈を求めるまでもなく不合格と判定できる。
一方、 1-4、 1-5のものは、 (DZ t) crが 50以上であり、 歪硬化領域で座屈すること が分かる。 そして、 1-4 (実施の形態 2で示したもの) の局部座屈歪 ε c rを求めると、 1.78 であり、 要求座屈歪 ε req=l.5%より大きいことから、 判定は合格となる。 同様に 1-5につ いても合格となる。
第 2グループ ( f H= l . ◦%) 2- 1〜2- 5、 第 3グループ ( £ H= 0. 5%) 3-1〜3 - 5 についても同様にして表 7の通り判定ができる。
次に、 歪硬化開始歪 ε Ηと (D/ t) cr との関係を求めるために、 表 7の一部を抜き出 して表 8に示す。
表 8
表 8に示した各判定対象について、 各グループごとに、 縦軸を局部座屈歪
∑ cr、 横軸を D / tとして、 局部座屈歪 f
cr と tの関係を取ったグラフ表示すると図 8〜図 10とな る。
また、 縦軸を (DZt) crとし、 横軸を歪硬化開始歪としたグラフを図 1 1に示す。 図 8〜図 10又は図 1 1から分かるように、 歪硬化係数 mがいずれの場合であっても、 歪硬化開始歪が小さいほど、 換言すれば降伏棚が短いほど (D/t) crが大きくなつてい る。 つまり歪硬化開始歪が小さいほど (降伏棚が短いほど) 鋼管が薄肉になっても歪硬化 領域にて局部座屈する、 すなわち座屈性能に優れる傾向にあることを示している。
また、 歪硬化領域開始歪 (降伏棚の長さ) がいずれの場合であっても、 歪硬化係数 mが 大きいほど (D/t) crが大きくなつている。 つまり歪硬化係数 mが大きいほど鋼管が薄 肉になっても歪硬化領域にて局部座屈する、 すなわち座屈性能に優れる傾向にあることを 示している。 産業上の利用可能性
本発明の鋼管の局部座屈特性評価方法によれば、 鋼管の座屈性能の優劣を簡易に判定でき るので、 当該鋼管の用途の判別が簡易にできる。
また、 本発明に係る鋼管の設計方法によれば、 応力歪特性を有する鋼管の局部座屈歪が 応力歪特性における歪硬化開始歪に一致するときの管径管厚比(D/ t)crを求め、設計対 象の鋼管の管径管厚比 (DZt) が前記管径管厚比(DZt)crよりも小さくなることを維 持しつつ、 設計対象の鋼管の管径管厚比 (DZt) を決定するようにしたので、 降伏棚の ある材料であっても、 あたかも連続硬化型の材料であるかのように取扱って最適な管径管 厚比(DZ t)を設計することができる。