JP4612204B2 - レンズシートおよびこれを有する表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、背面投映型スクリーン用のレンチキュラーレンズシートとして、または液晶表示装置、もしくはデジタルマイクロミラーデバイス(略称;DMD)等の表示装置の前置用として、画像の見える範囲である視野角を広げる等の機能を果たすレンズシート、およびそのレンズシートを備えた表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
表示装置の視野角を広げるためのレンズシートとして、レンチキュラーレンズシートが単独もしくは他のレンズシートと組み合わせて用いられている。
特開平6−194741号公報、特開平7−72808号公報、もしくは特開平10−111537号公報には、レンチキュラーレンズもしくはその他の突起を有したレンズシートをCRT、液晶ディスプレイ、もしくはDMD等の表示装置用に用いることが記載されている。
【0003】
表示装置の視野角を広げる目的で、例えば、レンチキュラーレンズシートを使用し、40°以上の広い視野角(θ)を得ようとすると、各々のレンチキュラーレンズの幅を広くする必要がある。
図1(a)および(b)は、焦点距離が互いに等しい、言い換えれば、曲率半径が等しいが、互いに幅が異なるレンチキュラーレンズが上面に配列したレンチキュラーレンズシートの断面図であり、各々、レンチキュラーレンズ1個について、入射した平行光の屈折の様子を描いたものである。
【0004】
図1(a)に示すレンチキュラーレンズの幅Waは、図1(b)に示すレンチキュラーレンズの幅Wbよりも広く(図では約2倍)なっており、図1(a)に示すレンチキュラーレンズの視野角θaは、図1(b)にに示すレンチキュラーレンズシートの視野角θbより広く(図では約3倍)なっている。
従って、図からも分かるように、視野角(θ)を広げるには、各レンチキュラーレンズの幅を、焦点距離、もしくは曲率半径に対し、十分に大きくする必要がある。
【0005】
ところが、このようにレンチキュラーレンズの幅を大きくすると、図2(a)に示すように、レンチキュラーレンズシートの面方向(図中、一点鎖線で示す左右方向)と、各レンチキュラーレンズの幅方向の端部における接線がなす角度φが次第に大きくなる。一般的には、視野角(θ)を40°以上としたいときは、この角度φを60°以上にする必要がある。
しかし、このように、角度φが大きくなると、レンチキュラーレンズシート下面の非レンズ面から入射した光Iは、図2(b)に示すように、レンズ面で全反射して、レンチキュラーレンズシートの入射側に出光(I’で示す。)する割合が増加する。
【0006】
レンチキュラーレンズシートは、レンチキュラーレンズの凸部が表示装置側になるように配置することが多いので、図2(b)に示すように、観察側から入射する外光が、観察側に出光して、画像のコントラストを低下させる。
また、レンチキュラーレンズの凸部が観察側になるように配置したとすると、表示装置側から入射する光がレンズ面で全反射し、画像が暗くなる結果、コントラストを低下させる。
【0007】
また、図1(a)および(b)にも示されるように、視野角(θ)が広いと、視野角(θ)内の観察位置で眺める際の画像の輝度が低下し、特に、正面から眺める際の輝度である正面輝度が著しく低下し、やはり、画像のコントラストを低下させる。
【0008】
即ち、レンチキュラーレンズシートにおいては、視野角を広げると、正面輝度が低下して、画像のコントラストを損ない、逆に、正面輝度を上げて、画像のコントラストを向上させると、視野角が狭くなり、正面輝度および画像のコントラストと、視野角を共に向上させることが困難であった。
【0009】
また、レンチキュラーレンズシートを構成する各々のレンチキュラーレンズのかわりに、等方性もしくは異方性のレンズを密に配列した、いわゆる蝿の目レンズシートがあるが、上記のレンチキュラーレンズシートにおけるのと同様、正面輝度および画像のコントラストと、視野角を共に向上させることが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、レンチキュラーレンズもしくは蝿の目レンズを配列したレンズシートにおいて、正面輝度および画像のコントラストと、視野角を共に向上させることが困難であった点を解消することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決する手段】
発明者等は、レンズシートを、光学特性の等しいレンズを密に配列して構成することに換えて、光学特性の異なる複数種類のレンズを配列して構成する等により、広い視野角を持つ部分と、正面輝度および画像のコントラストの優れた部分とを混在させることにより、正面輝度および画像のコントラストと、視野角を共に向上させることができた。
【0012】
第1の発明は、背面の法線方向から平行光を入射し前面で測定した場合に、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以下である高輝度レンズと、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.7以上である広視野角レンズとが混在して構成されたレンズ層を片面に有するレンズシートであって、前記高輝度レンズおよび前記広視野角レンズとは同じ曲率半径を有するレンチキュラーレンズ又は蝿の目レンズであり、且つ広視野角レンズの幅が高輝度レンズの幅よりも広いことを特徴とするレンズシートに関するものである。
第2の発明は、第1の発明のレンズシート2枚が、各々のレンチキュラーレンズの方向が直交するように重ねられていることを特徴とする複合されたレンズシートに関するものである。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記レンズ層が着色されていることを特徴とするレンズシートに関するものである。
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明において、前記レンズシートの非レンズ層面に、防眩処理、反射防止処理、帯電防止処理、もしくは傷付き防止処理のいずれか一以上の処理が施されている事を特徴とするレンズシートに関するものである。
第5の発明は、第1、第3、もしくは第4のいずれかの発明のレンズシートが、前記レンズ層側が、表示装置側を向いて、前記表示装置の前面に配置されたことを特徴とするレンズシートを有する表示装置に関するものである。
第6の発明は、第2の発明の複合されたレンズシートが、表示装置の前面に配置されたことを特徴とするレンズシートを有する表示装置に関するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図3は、本発明のレンズシートの典型的な例を示す図で、図3(a)に示すように、レンズシート1は、片面(図では上面)がレンズ層2をなしており、レンズ層2は、2種類のレンチキュラーレンズ2a、および2bが交互に配列したものであって(図3(a)および(b)参照)、そのうちの1種類は、レンズの幅が広く、視野角の広い、広視野角レンズ2aであり、また、他の1種類は、レンズの幅が狭く、視野角は狭いが、正面付近の輝度が高い、高輝度レンズ2bからなっている。
【0014】
図3においては、広視野角レンズ2aおよび高輝度レンズ2bは、いずれも、同じ曲率半径を有し、広視野角レンズ2aの幅は、高輝度レンズ2bの幅の約2倍に描いてあり、図5に拡大して示すように、レンズ2aの方が、レンズ2bよりも広い視野角を与える。
勿論、レンズ2aおよび2bの幅が仮に同じでも、曲率半径、ひいては焦点距離を変えて、例えば、レンズ2aの曲率半径をレンズ2bの曲率半径よりも小さくすれば、レンズ2aによる視野角をレンズ2bによる視野角よりも広くすることができる。
【0015】
ところで、正面付近の輝度に関しては、視野角の狭いレンズの方が、視野角の広いレンズにくらべて高く、同じ曲率半径を有している場合には、レンズ幅が狭いほど、正面付近の輝度が、正面付近以外にくらべて高くなる。透過する全光量は変わらないので、狭い範囲に出光する方が明るく見えるからである。また、レンズ幅が一定であるとすれば、曲率半径が大きいほど、正面付近の輝度が、正面付近以外にくらべて高くなる。
【0016】
図6中、P30、P40、およびP50の符号を付けた曲線は、いずれも、曲率半径が30μmで、レンズ幅がそれぞれ順に30μm、40μm、および50μmのレンチキュラーレンズを配列したシートを背面から平行光を用い、同条件で照明した際の、正面(視野角0°)および、角度を変えて正面から離れた位置で測定した輝度分布を示すものである。また、P30+P55、およびP40+P55の符号を付けた曲線は、それぞれ、レンズ幅が30μmのものと55μmのものを組み合わせたシート、レンズ幅が40μmのものと55μmのものを組み合わせたシートに関する輝度分布を示すものである。いずれも、曲率半径が30μmである。なお、P30+P55、およびP40+P55のいずれにおいても、異なる幅のレンズが交互に組み合わせられている。
【0017】
図6中、レンズ幅が狭いP30、およびP40の両曲線においては、正面を中心にして、輝度分布が立ち上がっており、正面から離れるほど、急峻な輝度の低下を生じる。また、レンズ幅が広いP50の曲線においては、正面から離れるほど輝度が低下するものの、急峻な低下はなく、なだらかな低下となっている。
【0018】
理想的には、例えば、正面付近の輝度がP30の曲線もしくはP40の曲線並みに立ち上がり、かつ、正面から離れても、P50の曲線並みのなだらかな低下となることが理想的であるが、入射光量は一定であるから、両者のよい部分のみを組み合わせることは不可能であり、実際的には、P50の曲線に相当するような輝度分布の裾部分(視野角が大きい部分)の輝度を若干低下させ、その分を正面付近の輝度の向上に回すような曲線となることが好ましい。
【0019】
このような輝度分布を与えるため、発明者は、輝度分布の異なるレンズを混在させて使用することにより、理想的な輝度分布に近づけたレンズシートを得ることができた。例えば、上の例で言えば、P30の曲線を輝度分布とするレンズとP50の曲線を輝度分布とするレンズを混在させるというようにである。
このように輝度分布が異なるレンズを混在させた、複合レンズシートとすることにより、単一のレンズが配列されたレンズシートでは得られない輝度分布を有するレンズシートが得られる。
【0020】
我々の実験によれば、輝度分布が互いにあまり異ならないレンズを組み合わせても、目立った向上効果は得られず、上の例のように、かなり輝度分布が異なるレンズを組み合わせることが好結果を生むことが判明した。
【0021】
即ち、正面付近の輝度が、正面付近以外にくらべて高い高輝度レンズとして、背面の法線方向から平行光を入射し前面で測定した場合に、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以下であるレンズが好ましい。
また、角度による輝度の変化がなだらかで、従って、広い角度で、一定以上の輝度が得られる広視野角レンズとして、背面の法線方向から平行光を入射し前面で測定した場合に、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.7以上であるレンズが好ましい。
従って、本発明においては、上記のような条件に合致するレンズどうしが混在して構成されたレンズ層を有するレンズシートを用いることが好ましい。
【0022】
なお、上記の条件設定において、輝度分布を測定するためには、同一レンズが密に配列したレンズ層を有するレンズシートを測定対象とし、白色で均一な平行光を入射し、輝度計((株)トプコン製、BM−7、瞳角;0.1°、距離;50cm)を観察角に応じて移動させながら行なった、
【0023】
本発明において、高輝度レンズに関して、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5を超えるものは、正面付近の輝度が十分でなく、広視野角レンズと組み合わせても、正面付近の充分な輝度を得ることが難しい。
また、広視野角レンズの、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.7未満であると、広い視野角において、一定以上の輝度が得られず、高輝度レンズと組み合わせたとしても、正面付近を除けば、不十分な輝度しか得られない。
【0024】
具体的なレンズの諸元を、図6に関連させて、実例で挙げると、曲率半径が30μmの断面が円形のレンチキュラーレンズを想定する場合、高輝度レンズとしては、レンズ幅が30μm(図6中のP30に相当)、もしくは40μm(図6中のP40に相当)程度が好ましく、広視野角レンズとしては、レンズ幅が50μm(図6中のP50に相当)以上が好ましい。
【0025】
曲率半径が30μm、かつレンズ幅が30μmの高輝度レンズと、曲率半径が同じで、レンズ幅が55μmの広視野角レンズを用いた例を、P30+P55として、太さが細い細かい破線で、図6中に示す。P30+P55の符号の意味は、前記したものと同じである。
このP30+P55の曲線を見ると、0°〜±約20°の正面付近では、P40の曲線並みの輝度を有しており、±約20°から±約80°の範囲では、P40の曲線とP50の曲線のほぼ中間の輝度を示す。
【0026】
同様に、曲率半径が30μm、かつレンズ幅が40μmの高輝度レンズと、曲率半径が同じで、レンズ幅が55μmの広視野角レンズを用いた例を、P40+P55として、太さが太い粗い破線で、図6中に示す。
このP40+P55の曲線を見ると、0°〜±約20°の正面付近では、P40とP50の中間の輝度を有しており、±約20°から±約80°の範囲では、上記のP30+P55の曲線と同様、P40の曲線とP50の曲線のほぼ中間の輝度を示す。
【0027】
理想的には、輝度が視野角に依存することなく、一定であることが望ましいが、そのような拡散特性を持つレンズシートは実現できていない。仮に実現できたとしても、光源を非常に明るくしないと、画面が暗くなる。さらに、このようなレンズシートを用いることは、低消費電力化、および軽量化の妨げとなり、エネルギー、および資源の浪費となる。
【0028】
視感的には、人間が輝度の変化(低下)を感じられる、輝度が最大輝度の0.5未満となる領域を、いかに狭くできるかがポイントになり、実際には、レンズシートの法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以上得られることが必要であり、より好ましくは、レンズシートの法線方向から45°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以上得られることが必要である。
【0029】
図7は、レンズシートの視野角度によって変化する様子を、法線方向の輝度を1として、正規化して示したものである。
レンズシートの法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以上得られるものとしては、P50、P40+P55、P30+P55、およびP40の符号を付したものであり、また、レンズシートの法線方向から45°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以上得られるものとしては、P50、P40+P55、およびP30+P55の順になる。
【0030】
正規化した輝度で示す図7によれば、曲線が上になるものほど、視野角が広いと言えるが、実際には、輝度の絶対値も重要で、輝度が低ければ、光源を明るくしなければならず、このようなレンズシートを用いることも、低消費電力化、および軽量化の妨げとなり、エネルギー、および資源の浪費となるから、視野角が広く、かつ、得られる輝度の絶対値もしくはGAINが高いことが好ましい。GAINが同じであれば、視野角が広いことが好ましい。
例えば、P40とP30+P55とは、マクロ的に見れば、レンズ幅がほぼ等しいので、得られる輝度の絶対値もしくはGAINもほぼ同じであるが、正規化した輝度と視野角の関係で見れば、P30+P55が勝っており、視野角が広いと言える。従って、輝度の絶対値もしくはGAINが同等でも、視野角の広いレンズシートを提供することができる。
【0031】
上記の例では、レンズシート1を構成するレンズは、いずれもレンチキュラーレンズであって、しかも交互に配列したものである。
異なる視野角のレンチキュラーレンズを交互に配列する以外の方式としては、広視野角レンズ2aを二つずつ接して並べ、間に高輝度レンズ2bを一つずつ配置し、即ち、レンズの符号で示すなら、2a、2a、2b、2a、2a、2bのように配列して、正面付近の輝度を若干向上させ、かつ、視野角をより広くすることを行なってもよい。
あるいは、高輝度レンズ2bを二つずつ並べ、間に広視野角レンズ2aを一つずつ配置して、即ち、2b、2b、2a、2b、2b、2aのように配列して、正面付近の輝度をより向上させ、視野角を若干広くすることを行なってもよい。
【0032】
レンズシート1を構成するレンズとしては、図4に示すように、異方性の単位レンズを用いて配列した、いわゆる蝿の目レンズであってもよい。蝿の目レンズにおける、各々の単位レンズは、観察時の水平方向(図4においては左右方向)の視野角の調整を行なうと同時に、観察時の垂直方向(図4においては、手前〜奥の方向)に関しても視野角の調整を行なうことができるので、レンチキュラーレンズを用いた際の考え方を観察時の水平方向のみならず、垂直方向にも適用できる。このうち、水平方向の視野角調整の方がより重要であるので、最小限としては、水平方向についてのみ視野角を調整すればよい。いずれの方向の視野角を調整するにせよ、高輝度レンズと広視野角レンズを組み合わせる。
【0033】
図4に示すような蝿の目レンズ2a、および2bで構成したレンズシート1においても、観察時の水平方向で切断した断面の構造は、図3に示すようなレンチキュラーレンズの場合と同じであるので、各々のレンズの視野角を、図5に示すように、異ならせ、上記したのと同様にして、正面付近の高輝度と広い視野角を持つレンズシートとすることができる。
即ち、蝿の目レンズでレンズシート1を構成するときも、単位レンズとして、背面の法線方向から平行光を入射し前面で測定した場合に、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以下である高輝度レンズと、背面の法線方向から平行光を入射し前面で測定した場合に、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.7以上である広視野角レンズの2種類を混在させて、レンズシートのレンズ層を構成すればよい。
【0034】
蝿の目レンズは、レンチキュラーレンズのように、長さがレンズシートの短辺と等しい、即ち、長いものではなく、レンズシートの各辺を細分化した寸法を有するので、図4(b)のように、縦横に規則的に配列すると、各々の単位レンズの境界線が表示装置のセル等との干渉によりモアレを生じる場合がある。その場合、図4(c)に示すように、レンズ2a(広視野角レンズを想定)とレンズ2b(高輝度レンズを想定)とを1/2ピッチずつずらして、配置する等すればよい。
【0035】
蝿の目レンズでレンズシートを構成する際にも、広視野角レンズ2aを二つずつ並べ、間に高輝度レンズ2bを一つずつ配置して、即ち、2a、2a、2b、2a、2a、2bのような配列にしても、あるいは、高輝度レンズ2bを二つずつ並べ、間に広視野角レンズ2aを一つずつ配置して、即ち、2b、2b、2a、2b、2b、2aのような配列にしてもよい。
【0036】
蝿の目レンズの場合には、レンズシート1が一枚あれば、水平および垂直の両方向の視野角(もしくは画角)を調整し得るが、レンチキュラーレンズの場合には、レンズ層の構造から、垂直方向の視野角を広げることができず、通常は拡散剤を用いて、垂直方向の視野角の拡大を図っている。
ただし、レンチキュラーレンズにおいても、レンズシートを2枚用い、レンチキュラーレンズの溝方向が互いに直交するよう重ねて用いれば、視野角を水平方向、および垂直方向の両方向に広げることができる。このとき、2枚の各々を本発明のレンズシートとしてもよいが、いずれか一方のレンズシート、通常であれば、水平方向の視野角を広げるためのレンズシートを、本発明のレンズシートとすることが好ましい。
【0037】
なお、以上のレンチキュラーレンズ、および蝿の目レンズでは、同一レンズシート上のレンズ層は、輝度分布の異なる2種類のレンズからなるが、本発明において異なる輝度分布を有するレンズを混在させる考えを拡大して、3種類以上のレンズを混在させてもよい。
また、異なる輝度分布を有する2種類以上のレンズを混在させる際に、レンズシート全面に均一に混在させてもよいが、混在させる位置を局在化させることも可能である。
【0038】
本発明のレンズシートは、図3等に示すように一層からなっていてもよいが、透明基材シート上にレンチキュラーレンズが並んだレンズ層が積層された積層構造からなるものであってもよい。
一層からなる構造のものは、型内に樹脂のプレポリマー等を流し込んで硬化させる注型重合等や透明プラスチックシートのプレス加工により製造することができる。また、ガラス板の切削やエッチングによって製作することもできる。
また、上記のような積層構造を有するものは、透明基材シート上に透明樹脂層を介して、レンズ面の逆型形状を有する付型用型を押し付けることにより製造するのに適している。通常、透明な紫外線硬化性樹脂組成物を透明基材シート上に塗布し、塗布後、金型ロールと接触させ、そのままの状態で、紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより製造する。
【0039】
この場合、透明基材シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー、酸変性ポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(略称;PET)、ポリブタジエンテレフタレート、ナイロン等の単体、あるいは、混合体(共押出フィルム等)、および、ラミネート品等を挙げることができる。
【0040】
透明基材シートに積層して、レンズ層を形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレートなどの熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、或いは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができる。
【0041】
レンズ層を形成するための樹脂層を構成する樹脂としては、より好ましくは、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、或いは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性、さらに紫外線吸収剤や光開始剤を配合して、特に紫外線硬化性としたもの等を使用することができる。このほか、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、サーモクロミックス材料、カルコゲンガラスなどの感光材料なども使用できる。
レンズ層を形成する樹脂層中には、カーボンブラックを含有させることにより、ニュートラルグレーのレンズ層とすることもできる。
【0042】
本発明のレンズシートは、表示装置と組み合わせて使用するものである。
図8は、レンズシート1を適用した液晶ディスプレイ装置の例を示すもので、液晶ディスプレイ装置10は、液晶パネル11の上側と下側に偏光板12、および12’が配置され、下側の偏光板12’のさらに下方に白色光源13aを内臓した白色光源装置13からの平行光(矢印で表示)が上面側を照明するよう配置され、上側の偏光板12の上方には、本発明のレンズシート1が配置されたものである。
【0043】
本発明のレンズシート1は、液晶表示装置と組み合わせる以外にも、CRTを使用する背面投映型テレビジョン用スクリーンのレンチキュラーレンズシートとして、またはデジタルマイクロミラーデバイス(略称;DMD)等の表示装置の前置用として、これらの装置と組み合わせて使用することができる。
本発明のレンズシートを、表示装置と組み合わせて使用する場合、レンズ層のある側を表示装置側にしても、観察側にしてもよいが、次に述べるように、種々の層を伴なうときは、レンズ層のある側を表示装置側にすることが好ましい。
【0044】
ところで、本発明のレンズシートは、今まで説明したような、単独のものを使用しても、勿論効果を有するが、既に知られている、この種の分野で備えることが好ましい種々の処理を施して使用してもよく、そのような処理の例としては、防眩処理、反射防止処理、帯電防止処理、および傷付き防止処理等がある。
各々の処理は単独でも行なえるが、傷付き防止処理と兼ねて行なわれる場合が多い。また、防眩処理、反射防止処理、帯電防止処理、および傷付き防止処理等の処理のうちから、2種類以上を選択して適用してもよい。
【0045】
傷付き防止処理は、いわゆるハードコート層を施すことである。通常、レンズシート1のレンズ層2とは反対側に施すことが多いが、レンズ層2に施すこともできる。
ハードコート層は、通常は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物で構成し、レンズシートの表面に、物理的および化学的な耐久性を付与する。
ハードコート層中に種々の添加剤を含有させることにより、レンズシートの表面への物理的および化学的な耐久性の付与に加えて、他の機能を付与することができるので、レンズシート1には、ハードコート層が備わっていることが多い。
【0046】
ハードコート層の表面は、フラットなクリア面でもマット面でもよいが、ハードコート層表面側からの入射光の反射を抑制する反射防止処理を兼ね、かつ、ディスプレイ側から入射する映像光が局部的に輝度の高い部分をつくるのを解消する防眩処理の意味で、微細な凹凸からなるマット面となっていることがより好ましい。
【0047】
ハードコート層は、最表面に形成して、表面の耐久性を発揮するほかに、ハードコート層上に薄膜を追加しても、なお耐久性を発揮することができる。
例えば、ハードコート層上に光干渉層や、光干渉層に加えて防汚層を積層することができる。
【0048】
光干渉層は、例えば、ハードコート層上に、互いに光の屈折率を異にする、中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層の三層を順に積層した積層体からなるものである。
光干渉層は、この三層の積層体のほか、ハードコート層側から、高屈折率層、および低屈折率層を順に積層したもの、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層のように繰返し多層としたもの等、種々のタイプの積層体があるが、いずれも、表面での外光反射を少なくする機能を有する。
【0049】
上記の三層の積層体において、中屈折率層は、例えば、ZnO(屈折率1.90、以下カッコ内は屈折率)、TiO2(2.3〜2.7)、酸化インジウム錫(1.95)、アンチモンドープの酸化インジウム錫、もしくはZrO2(2.05)等の酸化物である。
また、高屈折率層は、Fe、Ni、Cr、Ti、Hf、Zn、Zr、Mo、もしくはTaを含有する合金の薄膜、もしくは同じ合金の超微粒子が、バインダー樹脂中に分散した層からなるものである。
さらに、低屈折率層は、SiO2からなる薄膜もしくは、SiO2ゾルを含むゾル液からSiO2ゲル膜を形成されたものである。
【0050】
防汚層は、上記の光干渉層上に積層され、光干渉層の表面への、ごみや汚れが付着するのを防止する防汚処理の目的で積層するほか、その他の層の表面に積層してもよい。。
具体的には、透明性や反射防止機能を低下させない範囲でフッ素系界面活性剤等の界面活性剤、フッ素系樹脂を含む塗料、シリコーンオイル等の剥離剤、もしくはワックス等をごく薄く、光学性能を変えない程度に塗布する。余剰分を拭い除去してもよい。
【0051】
レンズシート1は、また、帯電防止処理として、導電性を付与してあってもよい。導電性が付与されることにより、帯電による塵埃の付着を防止できる。
導電性の付与は、ハードコート層と透明性フィルムとの間に導電性粒子を含有する導電性層を積層することにより行なえる。必要な導電性の程度によっては、ハードコート層中に導電性粒子を含有させることもできる。
【0052】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、一種類のレンズを配列したのでは得られない、正面輝度および画像のコントラストと、視野角を共に満足するレンズシートを提供することができる。また、高輝度レンズおよび広視野角レンズがレンチキュラーレンズのときは、設計や製造を効率よく行なうことが可能なレンズシートを提供することができる。また、高輝度レンズおよび広視野角レンズが蝿の目レンズであるときは、1枚のレンズシートを使用して、垂直方向、および水平方向の両方に視野角を拡大することが可能なレンズシートを提供することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明のレンチキュラーレンズシートが、各々のレンチキュラーレンズの方向が直交するように重ねられているので、通常のレンチキュラーレンズを有するレンズシートシートでは、一方向、通常、水平方向の視野角を広げることしかできないが、垂直方向、および水平方向の両方に視野角を拡大することが可能なレンズシートを提供することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加え、レンズ層が着色されているため、外光反射を低減することが可能なレンズシートを提供することができる。
請求項4の発明によれば、請求項1〜3いずれかの発明の効果に加え、非レンズ層面に、防眩処理、反射防止処理、帯電防止処理、もしくは傷付き防止処理のいずれか一以上の処理が施されているので、各々の処理による効果を発揮することが可能なレンズシートを提供することができる。
請求項5の発明によれば、請求項1、請求項3、もしくは請求項4のいずれか記載のレンズシートが、表示装置の前面に配置されているので、表示装置の画像の視野角を拡大でき、しかも正面輝度が高い表示装置を提供できる。
請求項6の発明によれば、請求項2の発明のレンズシートが、表示装置の前面に配置されているので、表示装置の画像の視野角を拡大でき、しかも正面輝度が高い表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズ幅と視野角の関係を示す図である。
【図2】幅の大きいレンズの全反射を示す図である。
【図3】本発明のレンズシートを示す図である。
【図4】蝿の目レンズで構成したレンズシートを示す図である。
【図5】本発明のレンズシートの視野角を説明する図である。
【図6】レンズシートの輝度分布を示すグラフである。
【図7】レンズシートの輝度分布を示すグラフで、輝度値を正規化したものである。
【図8】レンズシート1を適用した液晶ディスプレイ装置の例を示す図である。
【符号の説明】
1 レンズシート
2 レンズ層(2a;広視野角レンズ、2b;高輝度レンズ)
10 表示装置
12 偏光板
11 液晶パネル
13 白色光源装置(13a;白色光源)
Claims (6)
- 背面の法線方向から平行光を入射し前面で測定した場合に、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.5以下である高輝度レンズと、法線方向から40°離れた方向から測定した輝度が、法線方向から測定した輝度の0.7以上である広視野角レンズとが混在して構成されたレンズ層を片面に有するレンズシートであって、
前記高輝度レンズおよび前記広視野角レンズとは同じ曲率半径を有するレンチキュラーレンズ又は蝿の目レンズであり、且つ広視野角レンズの幅が高輝度レンズの幅よりも広いことを特徴とするレンズシート。 - 請求項1記載のレンズシート2枚が、各々のレンチキュラーレンズの方向が直交するように重ねられていることを特徴とする複合されたレンズシート。
- 前記レンズ層が着色されていることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズシート。
- 前記レンズシートの非レンズ層面に、防眩処理、反射防止処理、帯電防止処理、もしくは傷付き防止処理のいずれか一以上の処理が施されている事を特徴とする請求項1〜3いずれか記載のレンズシート。
- 請求項1、請求項3、もしくは請求項4のいずれか記載のレンズシートが、前記レンズ層側が、表示装置側を向いて、前記表示装置の前面に配置されたことを特徴とするレンズシートを有する表示装置。
- 請求項2記載の複合されたレンズシートが、表示装置の前面に配置されたことを特徴とするレンズシートを有する表示装置。
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