JP4610484B2 - 送風機 - Google Patents
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Description
一般に従来の送風機においては、遠心方向の流れを増加させるために翼後方の流れを斜流化することが必要である。このため、例えば特開昭53−116513号公報には、翼の基準線をその根元から中間部までは所定の傾斜角で回転方向に向けて屈曲させ中間部から先端部までは所定の傾斜角で回転方向と反対方向に向けて屈曲させて、該基準線の最外端が回転中心と前記根元を結ぶ線より回転方向と反対側に位置するようにしたものが記載されている。
上記構成の従来の送風機では、基本的にはほぼ軸線方向に沿って空気が流れる、所謂軸流送風機である。そのために外周部では翼形状による斜流効果が小さく、そのため十分な静圧上昇が得られず、送風効率が悪く、騒音が増加する等の問題点があった。
この発明に係る送風機は、ボスの外周面に周方向に間隔を置いて取り付けられた複数枚の軸流翼を配置した羽根車と、前記羽根車の周囲を囲ったケースと、気体を前記ケースに案内するように筒状に絞られたベルマウスとを備え、前記ベルマウスの内径が前記羽根車の外径より小さいものである。
また、ボスの外周面に周方向に間隔を置いて取り付けられた複数枚の翼を配置した羽根車と、前記羽根車の周囲を囲ったケースと、気体を前記ケースに案内するように筒状に絞られたベルマウスとを備え、前記ベルマウスの内径が前記羽根車の外径より小さく、かつ前記ベルマウスの内径より外周側に位置する前記翼部分の一部が、前記羽根車の回転中心軸に沿った方向において前記ベルマウスの縮径側端部から拡径側端部の方に突出しているものである。
また、ボスとこのボスの外周面に周方向に間隔を置いて取り付けられた複数枚の翼を配置し、回転中心軸に対して垂直な面に翼を垂直に投影した際に、前記面と前記回転中心軸との交点を中心とした径方向に延びた各同心円と、投影した前記翼とが重なる周方向に延びた各円弧長の中心点を繋いで形成された曲線を周方向中心曲線と定義し、前記交点と前記翼の前記周方向中心曲線の前記ボス側の端点とを結んだ直線と、前記交点と前記周方向中心曲線の任意の点とを結んだ直線とが成す角度を前記翼の回転方向を正とする前進角θとし、この前進角θの半径方向単位長さあたりの変化率を前進率と定義した場合、前記翼は、半径方向に前記前進率が正の値を持つ前記ボス側の前進翼部及び負の値を持つ前記翼の外周側の後退翼部を備え、前記翼の前記円弧長は、前記ボス側から前記外周側に向かうに従って長くなるものである。
図2は図1のベルマウスを除いたときの正面図である。
図3は図1の翼の斜視図である。
図4は翼が回転しているときにおける図1のIV−IV線に沿った断面図であり、大風量時の空気の流れを示す図である。
図5は翼が回転しているときにおける図1のIV−IV線に沿った断面図であり、小風量時の空気の流れを示す図である。
図6は図5のVI−VI線に沿った断面図である。
図7は実施の形態1の送風機において比率(%)と比騒音レベル(dBA)との関係図である。
図8は実施の形態1の送風機において後退翼部の前進率と比騒音レベルとの関係図である。
図9はこの発明の実施の形態2の送風機を示し、翼が回転しているときにおける回転中心軸に沿った断面図である。
図10はこの発明の実施の形態3の送風機を示し、翼が回転しているときにおける回転中心軸に沿った断面図である。
図11は実施の形態3の送風機において比率(%)と比騒音レベルの相対値との関係図である。
図12は実施の形態3の送風機において比率(%)と静圧差の相対値との関係図である。
図13はこの発明の実施の形態4の送風機を示し、翼が回転しているときにおける回転中心軸に沿った断面図である。
図14はこの発明の実施の形態4の送風機を示し、翼が回転しているときにおける回転中心軸に沿った断面図である。
図15は実施の形態1に係り、食い違い角を説明するための図である。
図16は実施の形態1に係り、径方向中心線を説明するための図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による送風機の吸い込み側から見た正面図、図2は図1のベルマウス8を除いたときの正面図、図3は図1の翼4の斜視図、図4および図5は図1の翼4が回転しているときにおけるIV−IV線に沿った断面図、図6は図5のVI−VI線に沿った断面図である。なお、図2は、ボス1の中心軸線である回転軸30に垂直な面に翼4を投影した様子を示しており、回転軸30に垂直な面を吸込み側から見た図である。
この送風機は、モータ軸20と、このモータ軸20と同心になるように直結した円柱形状のボス1と、このボス1の外周面に周方向に等間隔で取り付けられた4枚の翼4と、翼4の周囲を囲った円筒形状のケース19と、このケース19の吸い込み側の端部に取り付けられ空気をケース19の内部へと案内するベルマウス8とを備えている。
ボス1と4枚の翼4とで羽根車を構成しており、図1および図2中の矢印は羽根車(ボス1)の回転方向を示している。ボス1の中心軸線である回転軸30は羽根車の回転中心軸と同一である。
なお、本明細書では、流れの吸込み側に配置された、気流を羽根車になだらかに案内する曲線部を有する装置のことをベルマウスと呼ぶ。
各翼4は、前進翼部2および後退翼部3から構成されている。
ここで、前進翼部2および後退翼部3について説明する。
先ず、図2に示すように、ボス1の中心軸線である回転軸30に垂直な面に翼4を投影した際に、前記面と回転軸30との交点である第2の中心点Bを中心とした径方向に延びた各同心円と、投影した前記翼4とが重なる周方向に延びた各円弧長の中心点を繋いで形成された曲線を周方向中心曲線6と定義する。第2の中心点Bと翼4の周方向中心曲線6のボス側の端点である第1の中心点Aとを結んだ第1の直線イと、第2の中心点Bと周方向中心曲線6の任意の点とを結んだ第2の直線ロ(図2では翼4の最外周端)とが成す角度を翼4の回転方向を正とする前進角θとし、この前進角θの半径方向単位長さあたりの変化率を前進率(°/mm)と定義する。
前進角θは、回転軸30に垂直な面を吸込み側から見たとき、第1の直線イから紙面に向かい翼4の時計回りの回転方向を正とし、逆回転の方向を負とする。
図1および図2においては、翼4は回転軸30に垂直な面から見たとき紙面に向かって右回りの回転をし、吸込み方向は、紙面表から裏としている。翼4の前進角θは、第1の直線イに対して第2の直線ロが右回り側にあるときが正の値であり、第1の直線イに対して第2の直線ロが左回り側にあるときが負の値である。そして、半径方向に前進率が正の値を持つ翼4の部位が前進翼部2であり、負の値を持つ翼4の部位が後退翼部3である。
前進翼部2および後退翼部3からなる翼4は、ボス1側から外周部7に向かうに従って円弧長の寸法は増大する。また、前進翼部2と後退翼部3との間の境界部5の円弧形状は、翼4のある翼半径位置における円弧形状と概略一致している。この翼4の前進角θの半径方向単位長さあたりの変化分である前進率は、境界部5と周方向中心曲線6との交点Cの位置でゼロであり、この点Cより外径(外周)側は前進率θが負の後退翼部3であり、この交点Cの内径(ボス)側は前進率が正の前進翼部2である。
なお、本明細書では、以上説明したような翼4を複合翼と呼び、一般的な軸流送風機に用いられる翼を軸流翼と呼ぶ。複合翼は以下で詳細に説明するように、前進翼部2が主に軸流送風機として作用し、後退翼部3が主に遠心送風機として作用する。
図4に示すように、翼4の空気の吸込み側に取り付けられたベルマウス8の開口部8Aの口径D1の寸法は、境界部5の径D3の寸法と概略一致している。ここでいう概略一致とはベルマウス8の口径D1と翼4の境界部5の径D3との寸法比が1割程度のずれがある状態までとする。
また、本実施の形態による翼4は、図15に示すように、翼4を各径における円筒面で展開した翼列において、各翼の回転方向前側である前縁4Fと回転方向後ろ側である後縁4Bを結んだ直線L2と、回転中心軸方向に平行な直線L1とのなす角を吸い込み側から見た角(食違い角)をγとしたとき、γが図15の紙面に向かって反時計回りの方向に0°から90°までの範囲にある。
さらに図16に示すように、翼4のボス1と接する部分における回転中心軸(回転軸)30方向高さの中心点を翼外周部まで軸に垂直に延長した直線を直線ハと定義する。また、翼部の各半径における軸方向高さの中心点を繋いだ線を径方向中心線トと定義する。ボス部における軸方向高さの中心点と径方向中心線ト上の任意の点とを結んだ直線を直線ヘと定義する。直線ヘと直線ハとのなす角をφと定義する。直線ハよりも気体の吸込み側(紙面に向かって上側)を正とし、直線ハよりも気体の吐出側(紙面に向かって下側)を負とすると、φ>0である。言い換えれば、ボス1の外周面に配置された4枚の翼4は、回転軸30に垂直な平面に対し吸込側に向け角度φ>0の傾きを持つ。すなわち、直線ヘは直線ハに対して気体の吸込み側に傾いている。
このことから、羽根車の圧力面側の曲面が吐出側かつ、外周側に傾いており、半径方向外側に向かう流れを生じさせることが可能となり、静圧の上昇が可能となる。
なお、図16では径方向中心線トが曲線である場合を示したが、直線であってもよい。図4では径方向中心線トが直線である場合を示しており、直線ヘは径方向中心線トと重なる。
また、この翼4は、ベルマウス8の口径D1の内周側の領域にある前進翼部2では、周方向断面形状(回転軸30に対して垂直に翼4を切断したときの形状)が軸流送風機の翼(軸流翼)と類似し、図4に矢印で示すように回転中心軸30に沿った流れとなる。また、ベルマウス8の口径D1より外径側にある後退翼部3では、遠心送風機の翼(本明細書では遠心翼と呼ぶ。)と類似し、図6の矢印で示すように半径方向に広がる子午面流れとなり、遠心送風機と同様な流れ場となる。
このような構成により、遠心送風機の高静圧特性と、軸流送風機の大風量特性を満たす送風機の実現が可能となる。
上記構成の送風機では、大風量時では図4に示すようになる。すなわち、子午面流れは矢印ニに示すように、流体はほぼ中心軸線30の方向に沿って流れ、翼4の周方向断面形状が軸流送風機と等しいため軸流送風機として動作する。
これに対して、小風量時では図5に示すようになる。すなわち、ベルマウス8の開口部8Aの口径(図4に示すD1)がケース19の内径(図4に示すD2)より小さく、子午面流れは矢印ホに示すように、斜流成分が増加し、前進率が負の後退翼部3から斜流化して流出するが、この後退翼部3では、遠心方向に拡がる子午面流れに対し、概略一致する翼形状をしているので、翼4にかかる負荷が減少し、送風効率が上昇する。
このように、翼4は、半径方向に前進率が正の値を持つボス1側の前進翼部2及び負の値を持つ翼4の外周側の後退翼部3を備えている。しかも、翼4の円弧長は、ボス1側から外周側に向かうに従って長くなっている。したがって、半径方向外周側に向かって翼の円弧長が長い形状となるため、翼外周部で流れに沿う翼面積が増加し、翼の流れに対する実質的な半径が増加するため遠心力による静圧上昇が増加し、翼の仕事量を増加させることが可能となる。
また、前進翼部2の周方向中心曲線6上では、ボス1側から境界部5側に移行するに従って、周方向中心曲線6の接線の傾斜角度が回転軸を基準として回転方向側に漸次大きく傾いており、また境界部5側から外周側に移行するに従って、周方向中心曲線6の接線の傾斜角度が回転方向と反対側に漸次大きく傾いている。
このことから、前進翼部2においては、軸流送風機と同一の流れとなり、軸流送風機として動作する。この翼4の外周側では、流れに対して概略一致するように前進率が負に後退しており、後退翼部3に相当する部位が遠心送風機の翼と類似しており、遠心送風機として動作する。
従って、本実施の形態による送風機では、軸流送風機および遠心送風機の両機能を持つとともに、ベルマウスを設置したことにより生じた遠心送風機と同様の半径方向に拡がる流れ場と、軸流送風機と同様の回転中心軸と平行方向に流れる流れ場との2つの流れ場に対して、翼の形状をそれぞれ沿わせることが可能となり、乱れによる騒音の増加を低下させることが可能となる。
前進翼部2の周方向中心曲線6上では、ボス1側から境界部5側に移行するに従って、周方向中心曲線6の接線の傾斜角度が気体の吐出側に漸次大きく傾いており、また境界部5側から外周側に移行するに従って、周方向中心曲線6の接線の傾斜角度が気体の吸込み側に漸次大きく傾いていることから、羽根車の曲面が外周側に傾いており、半径方向外側に向かう流れを生じさせることが可能となり、静圧の上昇が可能となる。
また、ケース19の空気の吸い込み側にベルマウス8を取り付けたことにより、送風機の吸込み側の口径がベルマウス8の口径D1と等しくなり、吸込み面積が減少する。流れ場が軸流送風機と同じ状態である、翼4の径がベルマウス8の口径D1よりも小さい領域にある前進翼部2においては、羽根車の吸込み側の口径がベルマウス8の口径D1と等しくなり、大風量時、小風量時においても軸流送風機と同一の流れとなり、軸流送風機として動作する。
一方、流れ場が半径方向外側に向かう流れとなっている、翼4の径がベルマウス8の口径D1より大きい領域にある後退翼部3においては、図6で説明したように翼4の後退翼部3の断面が遠心方向に拡がる流れに対し、この翼4の外周側では、流れに対して概略一致するように前進率が負に後退しており、後退翼部3に相当する部位が遠心送風機の翼と類似しており、遠心送風機として動作する。
従って、この送風機では、軸流送風機および遠心送風機の両機能を持つとともに、遠心力による全圧(オイラーヘッド)の上昇が見込まれ、高静圧化が可能となる。
図7は、本願発明者が、上記構成の送風機の性能を実験により求めた図であり、ベルマウス8の内径D1’を一定にして境界部5の径D3を変化させた場合の、ベルマウス8の内径D1’に対する境界部5の径D3の比率D3/D1’(%)を横軸とし、ほぼ最高効率点の条件下で、ケース19にベルマウス8を取り付けたときにベルマウス8を取り付けていないときと比較して低下する比騒音レベル(dBA)の値を縦軸としたときの図である。なお、ここでベルマウス8の内径D1’とは、図9に示すように、ベルマウス8の縮径部の内面の径である。また、図4で示したベルマウス8の口径D1とは、ベルマウス8の縮径部の肉厚中央部の径であり、ベルマウス8の内径D1’と口径D1とはほぼ等しい。また、ここで最高効率点とは、ベルマウス8の開口部8Aの口径D1(内径D1’)を一定にして翼4の外径(翼4の外径とは、すなわち、ボス1と4枚の翼4とで構成される羽根車の外径である。)を変更したときの送風効率(静圧×風量/モータ出力)の最も高い点をいう。
この図から、比率が80%から130%までの範囲の翼4の形状にある場合においては、送風機の低騒音化が、ほぼ3.0(dBA)からほぼ4.7(dBA)減少するという、顕著な効果が得られ、比率が105%で比騒音レベルが最大4.7(dBA)低減されることが分かった。また、比率が100%から110%までであれば、比騒音レベルが4.5(dBA)以上減少し、静音効果が特に顕著である。なお、この図から分かるように、図中147%では比騒音レベルはゼロとなり、このときにはベルマウス8は比騒音レベルの低減化には寄与せず、ベルマウス8が無いときと同じである。
また、図8は、本願発明者が、上記構成の送風機の性能を実験により求めた図であり、後退翼部3の前進率を横軸とし、ほぼ最高効率点の条件下で、ケース19にベルマウス8を取り付けたときに、ベルマウス8を取り付けていないときと比較して低下する比騒音レベル(dBA)の値を縦軸としたときの図である。
この図から、前進率が−2.0(°/mm)から−2.9(°/mm)までの範囲で、送風機の低騒音化に顕著な効果が得られ、前進率−2.2で比騒音レベルが最大約11[dBA]低減されることが分かった。
また、図4に示すように、ベルマウス8の内径より外周側に位置する翼部分の一部4A、すなわち本実施の形態では後退翼部3の一部が、羽根車の回転中心軸(回転軸)30に沿った方向においてベルマウス8の縮径側端部8Bから拡径側端部8Cの方に突出している。もしもこのように、ベルマウス8の内径より外周側に位置する翼部分の一部4Aが、羽根車の回転中心軸(回転軸)30に沿った方向においてベルマウス8の縮径側端部8Bから拡径側端部8Cの方に突出していない場合には、ベルマウス8の縮径側端部8Bと拡径側端部8C間に羽根車の回転により発生する循環渦と、羽根車と縮径側端部8Bとの間より漏れる漏れ流れとが生ずるため、騒音が増加し、入力が増加するという問題が発生する。
また、翼部分の一部4Aを突出させる代わりに、例えばベルマウスの厚みを大きくするなどして翼部分の一部4Aが突出するべき空間を埋めると、縮径側端部と循環渦が吸い込み側に移動し、翼の有効面積が減少する結果、騒音が増加し入力が増加するという問題が発生する。
そこで、図4に示すように、ベルマウス8の内径より外周側に位置する翼部分の一部4Aを、羽根車の回転中心軸(回転軸)30に沿った方向においてベルマウス8の縮径側端部8Bから拡径側端部8Cの方に突出させると、羽根車と縮径側端部8Bとの間より生ずる漏れ流れが減少するため、漏れ流れによる静圧上昇の損失および風量の損失を低下させることが可能となる。また、漏れにより生じた乱れが減少するため、騒音を低下させることが可能となる。
したがって、ベルマウス8の縮径側端部8Bと拡径側端部8Cとの間に羽根車の回転により発生する循環渦と、ベルマウス8の縮径側端部8Bと羽根車との間からの漏れ流れとの両方を制御することができ、高静圧化および大風量化が可能となることによる高効率化および低騒音化を図ることができる。
なお、上記のような複合翼を有する羽根車に限らず、一般的な軸流翼あるいは遠心翼を有する羽根車と、羽根車の周囲を囲ったケースと、気体をケースに案内するように筒状に絞られたベルマウスとを備え、ベルマウスの内径が羽根車の外径より小さくなるように構成された送風機においても、ベルマウスの内径より外周側に位置する翼部分の一部が、羽根車の回転中心軸に沿った方向においてベルマウスの縮径側端部から拡径側端部の方に突出していることにより、上記複合翼の場合と同様に、送風効率の向上を図ることができるともに、低騒音化が可能となる。
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2による送風機の構成を説明するための図であり、翼4が回転しているときにおける回転軸(回転中心軸)30に沿った断面図である。
上記実施の形態1では、前進翼部2と後退翼部3との境目となる境界部5と、ベルマウス8の内径とがほぼ一致している場合について示した。
これに対して、本実施の形態では、図9に示すように、前進翼部2と後退翼部3との境目となる境界部5が、ベルマウス8の内径より外周側に位置する。すなわち、D1’<D3である。
翼4(羽根車)の前進翼部2と後退翼部3との境界部5より内周側における翼形状は前進翼部2であり、かつベルマウス8の内径D1’より内周側の領域では軸流送風機として動作するため、大風量の特性を持つ。また、翼4(羽根車)の前記境界部5より内周側における翼形状は前進翼部2であり、ベルマウス8の内径D1’より外周側の領域では、ベルマウス8によって絞られるため、半径方向外側に広がる流れとなり、遠心力により静圧を上昇させることが可能となる。
他方、翼4(羽根車)の前進翼部2と後退翼部3との境界部5より外周側における翼形状は後退翼部3であり、遠心送風機として動作する。このため、遠心方向に拡がる子午面流れに対し、概略一致しているので、にかかる負荷が減少し、送風効率が上昇する。したがって、翼4(羽根車)の前進翼部2と後退翼部3との境界部5はベルマウス8の内径D1’より外周側にあることが望ましい。そのため、ベルマウス8の内径D1’は、翼4(羽根車)の前進翼部2と後退翼部3との境界部5の半径位置より、ボス1側にあることが望ましい。
軸流送風機の最小騒音点は開放側にあり、遠心送風機の最小騒音点は高静圧側にある。このため、必要動作点に応じて、前進翼部2と後退翼部3の割合とベルマウス8の内径寸法を変化させることで、羽根車(翼4)に生じる3次元流れ場を変化させることとなり、動作点による流れの違いをベルマウス8の内径D1’で制御することが可能となる。例えば、ベルマウス8の内径D1’を小さくすると、流れが半径方向外側に拡がる領域が大きくなり、羽根車の高静圧側の流れを模擬する流れの状態となる。一方、ベルマウス8の内径D1’を大きくすると、半径方向外側に広がる流れの領域が小さくなり、ベルマウス8の内径D1’よりもボス1側の軸流送風機として動作する翼の領域が大きくなり、低静圧側の流れを模擬する流れの状態となる。
以上説明したように、本実施の形態では、前進翼部2と後退翼部3との境目となる境界部5が、ベルマウス8の内径より外周側に位置するので、ベルマウス8の内径D1’を変化させることで、羽根車(翼4)に生じる3次元流れ場を変化させることとなり、動作点による流れの違いをベルマウス8の内径D1’で制御することが可能となる。
なお、実施の形態1および2で説明したように、前進翼部2と後退翼部3の境目となる境界部5の径D3とベルマウス8の内径D1’との関係がD1’≦D3である場合に限らず、ベルマウスの内径D1’が翼の外径D4より小さい場合であれば、流れを径方向外向きに流すことが可能となり、半径方向に広がる流れによる静圧の上昇が可能となる。
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3による送風機の構成を説明するための図であり、翼4が回転しているときにおける回転軸30に沿った断面図である。
上記実施の形態1および2では、例えば図2および図3で示したように、翼4が、半径方向に前進率が正の値を持つボス1側の前進翼部2及び負の値を持つ外周側の後退翼部3を備え、翼4の円弧長は、ボス1側から外周側に向かうに従って長くなっている複合翼である場合について説明した。しかし、このような複合翼を有する羽根車に限らず、一般的な軸流翼40を有する羽根車(軸流羽根車)と、羽根車の周囲を囲ったケース19と、気体をケース19に案内するように筒状に絞られたベルマウス8とを備え、ベルマウス8の内径D1’が羽根車の外径D4より小さくなるように構成された送風機においても、上記実施の形態と同様に、高静圧化により送風効率の向上を図ることができるともに、低騒音化が可能となる。
すなわち、ベルマウス8の内径D1’が軸流羽根車の外径D4より小さい場合の気体の流れは、羽根車の吸込み側で羽根車に流入する際、ベルマウスにより絞りこまれ、ベルマウスから吐き出し側に向かうにつれ半径方向外側に広がる。
軸流羽根車(軸流翼40)において、ベルマウス8の内径D1’より内周側の領域では、軸流送風機として動作するため、大風量の特性を持つ。他方、軸流羽根車(軸流翼40)において、ベルマウス8の内径D1’より外周側の領域では、ベルマウスによって絞られるため、半径方向外側に広がる流れとなり、遠心力により静圧を上昇させることが可能となる。
したがって、ベルマウス8の内径D1’を小さくすると、流れが半径方向外側に拡がる領域が大きくなり、軸流羽根車の高静圧側の流れを模擬する流れの状態となる。これに対して、ベルマウス8の内径D1’を大きくすると、半径方向外側に広がる流れの領域が小さくなり、ベルマウス8の内径D1’よりもボス1側の軸流送風機として動作する翼の領域が大きくなり、低静圧側の流れを模擬する流れの状態となる。
そのため、軸流羽根車の外径の範囲内でベルマウス8の内径D1’を変化させることで、軸流羽根車に生じる3次元流れ場を変化させることとなり、動作点による流れの違いとして、流れ場をベルマウス8の内径D1’の大きさで制御することが可能となる。
例えば、低静圧側の動作点で使用する場合はベルマウス8の内径D1’を大きくし、高静圧側で使用する場合はベルマウス8の内径D1’を小さくする。
このように、ベルマウス8の内径D1’の大きさを制御することにより、動作点を制御することが可能となり、羽根車を狙いとする動作点で使用することが可能となるため、低騒音化および高効率化することが可能となる。
以上説明したように、ベルマウスの内径が軸流羽根車の外径より小さくなるように構成することにより、流れを径方向外向きに流すことが可能となり、半径方向に広がる流れによる静圧の上昇が可能となる。
さらに、軸流送風機(軸流羽根車)の吸い込み側に気流を案内するベルマウスを配置するため、軸流羽根車の実装条件によらず、吸い込み流れの分布を均一化する作用が働くので、軸流羽根車に流入する乱れを低減し、低騒音化することが可能となる。
また、図11は、本願発明者が、上記構成の送風機の性能を実験により求めた図であり、ボス1と4枚の軸流翼40とで構成される軸流羽根車の外径(図10にD4で示す。)を一定にしてベルマウス8の内径(図10にD1’で示す。)を変化させた場合の比率D1’/D4(%)を横軸とし、ケース19にベルマウス8を取り付けたときにベルマウス8を取り付けていないときと比較して低下する比騒音レベルKsの値(dBA)を横軸としたときの図である。
図11から分かるように、比率がほぼ50%から85%までの範囲で比騒音レベルが減少し、静音効果が顕著である。
また、図12は、本願発明者が、上記構成の送風機の性能を実験により求めた図であり、ボス1と4枚の軸流翼40とで構成される軸流羽根車の外径(図10にD4で示す。)を一定にしてベルマウス8の内径(図10にD1’で示す。)を変化させた場合の比率D1’/D4(%)を横軸とし、送風機の上流側と下流側間の静圧差の相対値を縦軸としたときの図である。
この図から分かるように、比率がほぼ50%から85%までの範囲で静圧上昇効果が顕著である。
図11および図12の結果より、ベルマウス8の内径寸法D1’を軸流羽根車の外径寸法D4の50%以上、望ましくは85%以下とした時に、軸流羽根車の大風量特性を比較的損なわず、軸流羽根車を高静圧化、低騒音化することが可能となる。
実施の形態4.
図13はこの発明の実施の形態4による送風機の構成を説明するための図であり、翼4が回転しているときにおける回転軸30に沿った断面図、図14はこの発明の実施の形態4による送風機の別の構成を説明するための図であり、翼4が回転しているときにおける回転軸30に沿った断面図である。図中、太線矢印は気体の流入方向を示しており、長い方が速度が大きい。
羽根車を配置する風路は実装条件により異なり、羽根車吸込み側で羽根車の回転中心軸30の周方向に吸込み流速に差が生ずる場合がある。このような場合、ベルマウス8の拡径側端部から縮径側端部に至る絞り部内面は、羽根車の回転中心軸30からの距離が周方向に不均一な曲面形状とし、流速の早い部位においてはベルマウスの絞り部内面の曲率を他の部位におけるよりも大きくすることにより、ベルマウス上の剥離により生ずる乱れを減少させ、騒音の増加を防ぐことができる。さらに、風路の周方向不均一構成により生ずる吸込み側の流速の不均一分布をなだらかにし、吸込み側の流速の不均一による回転騒音を低減することが可能となる。
本実施の形態では、図13に示すように、図13に向かって左右でベルマウス8の縮径側端部における羽根車の回転中心軸30からの距離は、図13に向かって左右で等しく、すなわち、左の距離d1と右の距離d2は等しい。しかも、拡径側端部と縮径側端部間の回転中心軸方向30の長さ(高さ)を右側の方が長くなるようにすることにより、絞り部内面は、羽根車の回転中心軸30からの距離が図13の右側と左側で異なるようにしている。すなわち、高速度流入側である右側の絞り部内面の曲率を左側におけるよりも大きくしている。
なお、図14に示すように、拡径側端部と縮径側端部間の回転中心軸方向30の長さは左側と右側とで等しくして曲率のみを変化させ、高速度流入側である右側の絞り部内面の曲率を左側におけるよりも大きくしてもよい。
なお、図13および図14では軸流翼40を有する送風機について示したが、複合翼4を有する送風機であっても同様に構成することにより、同様の効果が得られる。
なお、上記各実施の形態では、4枚の翼をボスに取り付けた場合について説明したが、勿論この数に限定されるものではなく、この発明は、複数枚の翼について適用される。
また、この送風機は、換気用の送風機に限定されるものではなく、例えば自動車、冷蔵庫、空気調和機の熱交換器を冷却する送風機にも勿論適用できる。
また、送風されるものは空気に限定されるものではなく、気体であればよい。
以上説明したように本発明の送風機によれば、ベルマウスの内径が軸流羽根車の外径より小さいので、流れを斜流化し遠心力により高静圧化するため、送風効率の向上を図ることができるともに、翼面近傍の流れを翼に一致させる流れ場を生じさせるため、低騒音化が可能となる。
また、ベルマウスの内径が羽根車の外径より小さく、かつベルマウスの内径より外周側に位置する翼部分の一部が、羽根車の回転中心軸に沿った方向においてベルマウスの縮径側端部から拡径側端部の方に突出しているので、ベルマウスの縮径側端部と拡径側端部との間に羽根車の回転により発生する循環渦と、ベルマウスの縮径側端部と羽根車との間からの漏れ流れとの両方を制御することができ、高静圧化および大風量化が可能となることによる高効率化および低騒音化を図ることができる。
また、翼は、半径方向に前進率が正の値を持つボス側の前進翼部及び負の値を持つ外周側の後退翼部を備え、翼の円弧長は、ボス側から外周側に向かうに従って長くなっているので、高静圧化により送風効率の向上を図ることができるともに、低騒音化が可能となる。
Claims (3)
- ボスの外周面に周方向に間隔を置いて取り付けられた複数枚の翼を配置した羽根車と、前記羽根車の周囲を囲ったケースと、気体を前記ケースに案内するように筒状に絞られたベルマウスとを備え、前記ベルマウスの内径が前記羽根車の外径より小さく、かつ前記ベルマウスの内径より外周側に位置する前記翼部分の一部が、前記羽根車の回転中心軸に沿った方向において前記ベルマウスの縮径側端部から拡径側端部の方に突出していることを特徴とする送風機。
- 前記羽根車は、その回転中心軸に対して垂直な面に翼を垂直に投影した際に、前記面と前記回転中心軸との交点を中心とした径方向に延びた各同心円と、投影した前記翼とが重なる周方向に延びた各円弧長の中心点を繋いで形成された曲線を周方向中心曲線と定義し、前記交点と前記翼の前記周方向中心曲線の前記ボス側の端点とを結んだ直線と、前記交点と前記周方向中心曲線の任意の点とを結んだ直線とが成す角度を前記翼の回転方向を正とする前進角θとし、この前進角θの半径方向単位長さあたりの変化率を前進率と定義した場合、前記翼は、半径方向に前記前進率が正の値を持つ前記ボス側の前進翼部及び負の値を持つ前記翼の外周側の後退翼部を備え、前記翼の前記円弧長は、前記ボス側から前記外周側に向かうに従って長くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
- 前記後退翼部の一部が、前記羽根車の回転中心軸に沿った方向において前記ベルマウスの縮径側端部から拡径側端部の方に突出していることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
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