JP4609607B2 - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサ用電解液に関し、更に詳しくは中高圧用の電解液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサ用電解液は、アルミニウムまたはタンタルなどの表面に絶縁性の酸化皮膜が形成された弁金属を陽極電極に使用し、前記酸化皮膜層を誘電体とし、この酸化皮膜層の表面に電解質層となる電解液を接触させ、さらに通常陰極と称する集電用の電極を配置して構成されている。
【0003】
電解コンデンサ用電解液は、上述のように誘電体層に直接に接触し、真の陰極として作用する。即ち、電解液は電解コンデンサの誘電体と集電陰極との間に介在して、電解液の抵抗分が電解コンデンサに直列に挿入されていることになる。故に、その電解液の特性が電解コンデンサ特性を左右する大きな要因となる。
【0004】
電解コンデンサの従来技術においては、中高圧用の電解液として、火花電圧が比較的高く得られることから、エチレングリコールを溶媒とし、セバシン酸、やアゼライン酸等の有機カルボン酸が用いられることもあるが、これらは溶解性が低いため、低温において結晶が析出しやすくコンデンサの低温特性を劣化させるという欠点を免れ得なかった。さらに、特公昭60−13296号公報に示されているようにブチルオクタン二酸を溶質として用いる例や特公昭63−15738号公報に示されているように5,6−デカンジカルボン酸を溶質として用いた例がある。これらの有機カルボン酸あるいはその塩を用いた電解液では、火花電圧および電導度が高く、溶解性も高いので、低温特性も良好である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの電解液においては、エチレングリコールの水酸基と有機カルボン酸のカルボキシル基との間でエステル化反応が進行し、イオンの減少により電導度が低下を引き起こし、電解コンデンサのtanδが上昇する。さらには、有機カルボン酸は電極箔の表面でアルミニウムとの錯体を形成して、電極箔の有効面積の減少をもたらし、静電容量が低下するという現象が起こる。このため、電解コンデンサの高温での寿命特性が十分なものではないという問題点があった。
【0006】
さらに、近年、スイッチング電源を使用した電子機器が一般家庭で汎用されるようになり、アルミ電解コンデンサの安全性に対する要求が高まっている。この電解コンデンサの安全性を向上させるために、電解コンデンサの過電圧特性を向上させることが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、高温での寿命特性、すなわち、tanδと静電容量特性が良好で、さらに、過電圧特性の良好な中高圧用の電解液を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の電解コンデンサ用電解液は、エチレングリコールを主体とする溶媒中に、硼酸と硼酸1に対して0.4〜3.0のエリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのうちから選ばれるシス位の糖アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩の一種以上からなる主溶質に、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸から選ばれる、少なくとも1種以上の有機カルボン酸化合物あるいはその塩を、前記硼酸の総量の5〜40重量%添加した溶質を、5〜20重量%溶解したことを特徴とする。
【0009】
そして、前記電解液に、非イオン性界面活性剤、多価アルコールに酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを重合させて得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物を一種又は二種以上添加したことを特徴とする。
【0010】
また、前記電解液に、芳香族ニトロ化合物を一種以上を添加したことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記電解液に、一般式:
【化2】
(式中、R1 、R2 は、炭素数1〜18の同一または異なってよいアルキル基または水素原子を表わし、少なとも一つはアルキルである。)で示される酸性アルキル燐酸エステルあるいは、燐酸、亜燐酸を一種又は二種以上添加したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、硼酸と多価アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩(以下、硼酸の多価アルコール錯化合物類)を主たる溶質としている。そして、硼酸の多価アルコール錯化合物における多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ポリビニルアルコール等、さらには、トリット、テトリット、ペンチット、ヘキシット、へプチット、オクチット、ノニット、デシット、ドデシット等の糖アルコールがあげられる。
【0013】
ここで、硼酸の多価アルコール錯化合物類は、硼酸と多価アルコールとを合成して得るが、電解液を混合、作成する際に、エチレングリコール中に硼酸及び多価アルコールを所定量混合し、加熱溶解させて、電解液中で合成して得ることもできる。後者の方法では、硼酸の多価アルコール錯化合物形成時に水の生成(硼酸1モルに対して3モルの水)を伴うので、必要に応じ開放系で加熱攪拌する等により、水分を除去する。
【0014】
そして、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸から選ばれる、少なくとも1種以上の有機カルボン酸化合物あるいはその塩(以下、有機カルボン酸類)を、前記硼酸の総量の5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%添加する。ここで、前記硼酸の総量とは、前述したように、硼酸の多価アルコール錯化合物類は硼酸と多価アルコールから作成されるが、その時に用いる硼酸の総量を示す。
【0015】
以上の本発明の電解液は、火花電圧が高く、高温寿命特性、すなわち、高温での電導度、静電容量特性、漏れ電流特性の安定性が良好で、さらに、過電圧特性も良好である。その理由は以下のようであると推察される。
【0016】
本発明の電解液の主溶質である、硼酸と多価アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物類は、有機カルボン酸のようにエチレングリコールとのエステル化反応によって電導度が低下するというようなことがない。また、アルミニウムとの錯体を形成するということもないので、静電容量が低下するということがなく、したがって、高温での寿命特性は良好である。ここで、硼酸のみであると、高温試験において、電導度が低下し、漏れ電流が上昇するという問題があるが、硼酸の多価アルコール錯化合物類は、このような欠点を有することがない。それは、電解液中で硼酸陰イオンとなった硼酸は、高温下では、陽極酸化皮膜中にとりこまれて、電解液中の硼酸陰イオンの濃度が低下して、電解液の電導度が低下し、さらには、酸化皮膜に取り込まれた硼酸陰イオンが酸化皮膜と反応して、酸化皮膜が溶解し、漏れ電流が上昇する。しかしながら、本発明の硼酸の多価アルコール錯化合物類は、分子サイズが大きいので、酸化皮膜中に取り込まれることがなく、したがって、電導度が低下することもなく、また、漏れ電流が上昇することもないということによるものであると考えられる。
【0017】
そして、前述の有機カルボン酸類を、前記硼酸の総量の5〜40重量%添加しているので、電解液の酸化皮膜修復能力、すなわち化成性が向上して、火花電圧及び、漏れ電流特性が向上し、また、長時間にわたって良好な化成性を維持するので、寿命試験での漏れ電流特性はさらに向上する。
【0018】
さらに、以上の電解液は、電解コンデンサに過電圧が印加された時の過電圧特性、すなわち、安全性に優れている。通常、コンデンサに過電圧が印加された場合、陽極酸化反応が生じて、電流が増大し、発熱及び水素ガスの発生がおこる。ここで、従来の有機カルボン酸を用いた電解液においては、過電圧が印加された当初は陽極酸化反応が遅く、途中で反応が爆発的になる。そして、この爆発的な反応によって大電流が流れるので、ショートの発生の可能性が高くなる。しかしながら、本発明の硼酸の多価アルコール錯化合物類を主溶質とした電解液では、過電圧が印加されると、当初から陽極酸化反応が進行し、電流が増大して、発熱及び水素ガスの発生がおこり、この発熱と発生したガスによって、安全弁が作動し、電解液が蒸発して、オープン状態になるので、高い安全性を有することができる。そして、本発明の電解液において、理由は明らかではないが、有機カルボン酸類を前記硼酸の総量の5〜40重量%の範囲で添加することによって、この過電圧特性が低下することはない。
【0019】
本発明の電解液は、有機カルボン酸類が前記硼酸の総量の5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%添加されてなるものであるが、これまでに述べたような状況であるので、この範囲未満では、初期及び寿命試験中の漏れ電流特性向上の効果が小さくなる。そして、この範囲を越えると、火花電圧が低下し、寿命試験中での有機カルボン酸類のエチレングリコールとのエステル化反応による陰イオンの減少によって電導度が低下するので、寿命特性が悪化する。
【0020】
そして、これらの硼酸の多価アルコール錯化合物類と有機カルボン酸類からなる溶質の電解液中の含有量は、3〜50重量%、好ましくは5〜20重量%である。この範囲未満では、イオン濃度が低いため、またこの範囲を越えると電解液の粘性が高くなることによるイオンの移動度低下のため、電導度が著しく低下する。
【0021】
そして、このようにして形成した電解質溶液に、アンモニアガスを注入、添加して、pHを調整し、本発明の電解液が形成される。
【0022】
ここで、硼酸の多価アルコール錯化合物における多価アルコールとして、エリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのようなシス位の水酸基をもつ糖アルコールを用いると、さらに、高温下での電導度の低減を抑制することができる。これは、シス位の水酸基をもつ糖アルコールを用いると、このシス位の二つの水酸基が硼酸と結合して、高温下においてより安定な硼酸錯化合物が形成されるためと思われる。また、理由は明らかではないが、火花電圧を上昇させることができる。ここで、これらのシス位の水酸基をもつ糖アルコールのうち、最も好ましいのはマンニットである。そして、シス位の水酸基をもつ糖アルコールの含有量は、重量比で、硼酸1に対して0.4〜3.0、好適には、1.0〜2.0の範囲である。この範囲未満では、高温下での電導度が上昇し、またこの範囲をこえると初期の電導度が低下する。
【0023】
本発明における硼酸の多価アルコール錯化合物の塩、有機カルボン酸化合物の塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、四級アンモニウム塩および環状アミジン化合物の四級アンモニウム塩があげられる。アミン塩を構成するアミンとしては、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジフェニルアミン、ジエタノールアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、トリエタノールアミン等)があげられる。これらのうちで好ましいのは、アンモニウム塩である。
【0024】
溶媒はエチレングリコールを主体としているが、低温度特性の改善、比抵抗の低減等の目的でプロトン性極性溶媒、非プロトン性溶媒、あるいは水を添加することもできる。プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、等)、多価アルコール及びオキシアルコール化合物類(プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,3−ブタンジオール、メトキシプロピレングリコール等)などがあげられる。非プロトン性溶媒としては、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類、環状アミド類、カーボネート類(γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ニトリル類(アセトニトリル)オキシド類(ジメチルスルホキシド等)などが代表としてあげられる。
【0025】
以上のように、本発明の電解液は、火花電圧が高く、高温下での電解液の特性が安定で、さらに、過電圧特性も良好である。したがって、本発明の電解液を用いることによって、耐電圧が高く、高温での誘電損失変化、静電容量変化、漏れ電流変化等の寿命特性が良好で、さらには過電圧特性が良好な電解コンデンサを得ることができる。
【0026】
そして、前記電解液に非イオン性界面活性剤、多価アルコールに酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを重合して得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物を添加することにより、電解液の火花電圧を向上させることができる。このことによって、再化成時での、ショート率を低減することができ、高圧コンデンサ用電解液として、好適なものとなる。また、非イオン性界面活性剤は含浸の際に発泡する性質があるので、含浸時の作業性を考慮すると、多価アルコールに酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを重合して得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物の方が好ましい。
【0027】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトール脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、親水性シリコンオイル等があげられる。
【0028】
多価アルコールに酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを重合して得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等があげられる。これらのうちで、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンが好ましい。
【0029】
非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物の添加量は、0.1〜15重量%、好適には0.5〜10重量%である。この範囲未満では、効果が低下し、この範囲を越えると、電導度が低下する。ここで、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物においては、平均分子量が1000以上の場合は効果が高いので、添加量は少なくて良い。
【0030】
また、前記電解液に芳香族ニトロ化合物を添加することにより、コンデンサ内部圧力の上昇を抑制することができ、コンデンサの寿命特性の改善が図ることができる。これは、コンデンサ内部に発生した水素ガスとの間でニトロ基の還元反応がおこることによるものと思われる。芳香族ニトロ化合物の添加量は、0.01〜7.0重量%、好適には0.1〜5.0重量%である。この範囲未満では、効果が低下し、この範囲を越えると電解液の電導度が低下する。
【0031】
芳香族ニトロ化合物の具体例としては、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロベンジルアルコール、ニトロアセトフェノン、ニトロアニソール、ジメトキシニトロベンゼン、ニトロアニリン、ニトロフェネトール、ニトロフタル酸、2−(ニトロフェノキシ)エタノール等をあげることができる。
【0032】
さらに、前記電解液に(化2)で示される酸性アルキル燐酸エステル化合物、燐酸、亜燐酸を添加することにより、コンデンサの高温下での漏れ電流の上昇を抑制することができる。これは、これらの添加剤の、コンデンサを長時間放置した際に発生する陽極酸化皮膜の水和劣化を抑制する効果によるものであると思われる。燐酸、亜燐酸の添加量は、0.01〜1.0重量%、好適には0.1〜0.5重量%である。酸性アルキル燐酸エステル化合物の添加量は0.01〜5.0重量%、好適には0.1〜3.0重量%である。この範囲未満では効果が低下し、この範囲を越えると、火花電圧が低下する。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0034】
(表1)〜(表3)は、本発明例の実施例、従来例、及び、比較例について、電解コンデンサ用電解液の組成と、火花電圧および電導度を、示したものである。ここで、電解液の作成は常法により行い、アンモニアガスを注入してpHを調整した。また、火花電圧は、コンデンサ素子(定格:550V−120μF)を用い、室温において、10mAの定電流を流して測定した値である。なお、表における脂肪族カルボン酸Aは、1,7−オクタンジカルボン酸(51%)、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸(14%)、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸(13%)、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸(22%)の混合物である。
【0035】
そして、(表4)には、(表1)〜(表3)における実施例、従来例、比較例の電解液を用いた、450V−180μFの電解コンデンサの初期特性及び、105℃で定格電圧を印加した状態の2000時間後の特性を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
(表1)〜(表3)から明らかなように、本発明の電解液は従来例の電解液と比較して、火花電圧が高く、電導度特性に優れた電解液が得られている。
【0041】
また、(表4)から明らかなように、本発明の電解液を用いた実施例1〜6の電解コンデンサは、有機酸を主体とした従来例2の電解コンデンサと比較して、2000時間後のtanδ変化が小さく、また、容量減少も小さく、寿命特性に優れている。また、有機カルボン酸類を添加していない比較例1の電解コンデンサは、初期の漏れ電流は大きく、寿命試験においても、漏れ電流の増大によるガス発生によって、開弁が発生しており、本発明の電解液によって、初期、寿命試験での良好な漏れ電流特性を得ていることがわかる。なお、有機カルボン酸類の添加量が硼酸の総量の10〜25重量%の範囲内であり、さらに溶質の添加量が電解液の5〜20重量%の範囲内である、実施例1が初期、寿命特性ともに、最も良好な結果を得ている。
【0042】
そして、実施例1、2の組成の電解液を用いた電解コンデンサを用いて、過電圧特性の評価を行った。なお、従来例4として、エチレングリコール93、水2、1,6-デカンジカルボン酸5、比較例3として、エチレングリコール83、硼酸5、マンニット7、1,6-デカンジカルボン酸5の組成の電解液を用いた。また、それぞれの電解液について、注入、添加するアンモニアガスの量を調整して、火花電圧が同等になるように作成した。試験は、化成電圧674Vの陽極箔を用いた、定格450V−180μFの電解コンデンサを20個使用し、DC650V、10Aの過電圧印加の際のショート発生率を調査した。結果を(表5)に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
(表5)から明らかなように、有機カルボン酸を用いた従来例4においては、ショート率が20%となっているが、実施例1、2では、ショートの発生が見られない。また、有機カルボン酸類の添加量を硼酸の多価アルコール錯化合物類に含有される硼酸量の100重量%添加とした比較例においても、ショートが発生している。以上のように、本発明の硼酸の多価アルコール錯化合物類を主溶質とし、有機カルボン酸類を添加した電解液に用いることによって、過電圧特性の良好な電解コンデンサを得ていることがわかる。以上のように、本発明の主溶質である硼酸の多価アルコール錯化合物類と添加した有機カルボン酸類との相乗効果により、耐電圧が高く、高温寿命試験中のtanδならびに静電容量の変化及び漏れ電流の増大の少なく、さらに、過電圧特性の良好な電解コンデンサを得ることができる、電解液を実現している。
【0045】
次に、シス位の水酸基を有する糖アルコールを用いた実施例を示す。(表6)、(表7)には、実施例及び比較例の電解液の組成と火花電圧、電導度を示した。電解液の作成はこれまでと同様である。また、(表8)には、(表6)、(表7)における実施例、比較例の電解液を用いた450V−220μFの電解コンデンサの初期特性及び、105℃で定格電圧を印加した状態の2000時間後の特性を示した。
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
(表6)〜(表8)から明らかなように、実施例7〜10の電解液を用いた電解コンデンサでは、シス位の水酸基を有することのない糖アルコールであるグリセリンを用いた比較例4及び従来例2の電解液を用いた電解コンデンサ用電解液と比較して、火花電圧は高く、寿命試験後のtanδ変化が小さく、より高温度下での寿命特性に優れていることがわかる。
【0050】
次に、本発明の非イオン性界面活性剤、ポリオキシ多価アルコールエーテル化合物を用いた電解液の実施例を示す。(表9)には、実施例及び比較例の電解液組成、火花電圧及び電導度特性を示した。
【0051】
【表9】
【0052】
(表9)から明らかなように、本発明の界面活性剤等を用いた、実施例11〜13の電解液では、これらを用いない、実施例14に比べて、火花電圧の向上が認められ、これらの電解液を用いることによって、再化成時でのショート率の低い電解コンデンサを得ることができる。これらの中で、重合度が1000以上であるポリオキシエチレングリセリンを用いた実施例12は、火花電圧がもっとも高く、良好な結果を得ている。
【0053】
次に、本発明の芳香族ニトロ化合物を用いた実施例を示す。(表10)には、実施例及び比較例の電解液組成を示した。また、(表11)には、これらの電解液を用いた 400V−220μFの電解コンデンサの105℃の2000時間後の製品高さ寸法の変化を示した。
【0054】
【表10】
【0055】
【表11】
【0056】
(表10)、(表11)から明らかなように、本発明の芳香族ニトロ化合物を用いた、実施例15〜17は、これらを用いない、実施例18、及び従来例2に比べて、2000時間後の製品高さ寸法変化は小さく、コンデンサの内圧上昇が抑制され、寿命特性が向上している。
【0057】
次に、本発明の(化2)で示される酸性アルキル燐酸エステル化合物、燐酸、亜燐酸を用いた実施例を示す。(表12)、(表13)には、実施例及び比較例の電解液組成を示し、(表14)には、これらの電解液を用いた、400V−220μFの電解コンデンサの105℃の1000時間放置後の特性を示した。
【0058】
【表12】
【0059】
【表13】
【0060】
【表14】
【0061】
(表12)〜(表14)からわかるように、本発明の燐酸等を用いた、実施例19〜22では、これらを用いない、実施例23、24、及び従来例2に比べて、高温放置後の漏れ電流は低く保たれ、寿命特性が向上している。これらの中で、実施例19の電解液組成が静電容量変化率、漏れ電流上昇共にもっとも良好な値を得ている。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電解液は、エチレングリコールを主体とする溶媒中に、硼酸と硼酸1に対して0.4〜3.0のエリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのうちから選ばれるシス位の糖アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物類の一種以上からなる主溶質に、有機カルボン酸類を前記硼酸の総量の5〜40重量%添加した溶質を5〜20重量%溶解した電解液であり、火花電圧が高く、高温長寿命特性が良好であり、さらに、過電圧特性も良好である。したがって、本発明の電解液を用いることによって、耐電圧が高く、寿命試験後の容量変化、tanδ変化、及び漏れ電流変化の低い、寿命特性の良好で、さらに過電圧特性の良好な電解コンデンサを得ることができる。
【0063】
また、前記電解液に、非イオン性界面活性剤、多価アルコールに酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを重合させて得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物を添加した場合は、電解液の火花電圧をさらに上昇させることができ、電解コンデンサの再化成性が向上して、高圧用電解コンデンサには好適である。
【0064】
さらに、前記電解液に、芳香族ニトロ化合物を添加した場合は、コンデンサ内部のガス発生が抑制されるので、電解コンデンサの寿命特性は向上する。
【0065】
そして、前記電解液に、(化2)で示される、酸性アルキル燐酸エステルあるいは、燐酸、亜燐酸を添加した場合は、陽極酸化皮膜の劣化を抑制できるので、電解コンデンサの高温放置後の漏れ電流の上昇を抑制できる。
Claims (4)
- エチレングリコールを主体とする溶媒中に、硼酸と硼酸1に対して0.4〜3.0のエリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのうちから選ばれるシス位の糖アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩の一種以上からなる主溶質に、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸から選ばれる、少なくとも1種以上の有機カルボン酸化合物あるいはその塩を、前記硼酸の総量の5〜40重量%添加した溶質を、5〜20重量%溶解した電解コンデンサ用電解液。
- 非イオン性界面活性剤、多価アルコールに酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを重合させてえられるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物を1種以上添加した、請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- 芳香族ニトロ化合物を一種以上添加した、請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- 一般式:
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