JP2004128077A - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エチレングリコールを主体とする溶媒中に、硼酸と多価アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩を8〜15wt%、有機カルボン酸化合物あるいはその塩を、0.5〜8重量%含有し、pHを5.3〜6.2としているので、火花電圧、電導度が高く、これを用いた電解コンデンサの高温での寿命特性は良好である。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサ用電解液に関し、更に詳しくは中高圧用の電解液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサ用電解液は、アルミニウムまたはタンタルなどの表面に絶縁性の酸化皮膜が形成された弁金属を陽極電極に使用し、前記酸化皮膜層を誘電体とし、この酸化皮膜層の表面に電解質層となる電解液を接触させ、さらに通常陰極と称する集電用の電極を配置して構成されている。
【0003】
電解コンデンサ用電解液は、上述のように誘電体層に直接に接触し、真の陰極として作用する。即ち、電解液は電解コンデンサの誘電体と集電陰極との間に介在して、電解液の抵抗分が電解コンデンサに直列に挿入されていることになる。故に、その電解液の特性が電解コンデンサ特性を左右する大きな要因となる。
【0004】
電解コンデンサの従来技術においては、中高圧用の電解液として、1,6−デカンジカルボン酸や1,7−オクタンジカルボン酸が用いられてきたが、これらの電解液においては、エチレングリコールの水酸基と有機カルボン酸のカルボキシル基との間でエステル化反応が進行し、イオンの減少により電導度が低下する。また、電極箔の表面でアルミニウムとの錯体を形成して、電極箔の有効面積の減少をもたらし、静電容量が低下するという問題点があった。そこで、これらの有機カルボン酸に硼酸の多価アルコール錯化合物を含有させることによって、前記のエステル化とアルミニウムとの錯体の形成を抑制してこれらの問題点を解決した電解液が用いられている。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この有機カルボン酸と硼酸の多価アルコール錯化合物からなる電解液を用いた電解コンデンサにおいて、高温寿命試験中に漏れ電流が上昇するという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、火花電圧、電導度が高く、これを用いた電解コンデンサの高温での寿命特性、すなわち、tanδと静電容量特性が良好で、さらに、漏れ電流特性も良好な中高圧用の電解液を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の電解コンデンサ用電解液は、 エチレングリコールを主体とする溶媒中に、硼酸と多価アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩を8〜15wt%、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸から選ばれる、少なくとも1種以上の有機カルボン酸化合物あるいはその塩を、0.5〜8重量%含有し、pHを5.3〜6.2としたことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記電解液の硼酸の多価アルコール錯化合物における多価アルコールが、エリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのうちから選ばれる糖アルコールであることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、硼酸と多価アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩(以下、硼酸の多価アルコール錯化合物類)を8〜15wt%含有している。そして、硼酸の多価アルコール錯化合物における多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ポリビニルアルコール等、さらには、トリット、テトリット、ペンチット、ヘキシット、へプチット、オクチット、ノニット、デシット、ドデシット等の糖アルコールがあげられる。
【0010】
ここで、硼酸の多価アルコール錯化合物類は、硼酸と多価アルコールとを合成して得るが、電解液を混合、作成する際に、エチレングリコール中に硼酸及び多価アルコールを所定量混合し、加熱溶解させて、電解液中で合成して得ることもできる。後者の方法では、硼酸の多価アルコール錯化合物形成時に水の生成(硼酸1モルに対して3モルの水)を伴うので、必要に応じ開放系で加熱攪拌する等により、水分を除去する。
【0011】
そして、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸から選ばれる、少なくとも1種以上の有機カルボン酸化合物あるいはその塩(以下、有機カルボン酸類)を、0.5〜8wt%含有している。
【0012】
さらに、アンモニア等のカチオン成分の調整によって、pHを5.3〜6.2とする。
【0013】
以上の本発明の電解液は、火花電圧が高く、高温寿命特性、すなわち、高温での電導度、電解コンデンサの静電容量特性、漏れ電流特性の安定性が良好である。
【0014】
従来の電解液を用いた電解コンデンサにおいて、高温寿命試験中に漏れ電流が上昇する原因を検討したところ以下のことが推察された。寿命試験中にエステル反応等によって電解コンデンサ内部の水分が増大する。すると硼酸の多価アルコール錯化合物類の平衡反応によって硼酸と多価アルコールに分解する。このことによって、電解液のpHが上昇し、またpHの上昇を緩和する有機カルボン酸の寿命試験中の減少によってpHがさらに上昇して、電極箔の皮膜溶解が進行し、漏れ電流が上昇する。以上の考察から本発明の電解コンデンサ用電解液に至ったものである。
【0015】
すなわち、硼酸の多価アルコール錯化合物類を8〜15wt%とすることによって、硼酸と多価アルコールへの分解によっても、pHの上昇が穏やかであり、また、有機カルボン酸を0.5〜8wt%とすることによって有機カルボン酸が減少してもpHの上昇を緩和し、さらにpHを5.3〜6.2とすることによって、pHを高温寿命試験中の漏れ電流が上昇しない範囲とすることができる。
【0016】
ここで、硼酸の多価アルコール錯化合物類の含有量がこの範囲未満では高温下での電導度が上昇し、この範囲を越えると、高温寿命試験中の漏れ電流が上昇する。また、有機カルボン酸の含有量がこの範囲未満では高温寿命試験中の漏れ電流が上昇し、この範囲を越えると火花電圧が低下する。そして、pHがこの範囲未満では初期の電導度が低下し、この範囲を越えると高温寿命試験中の漏れ電流が上昇する。
【0017】
ここで、硼酸の多価アルコール錯化合物における多価アルコールとして、エリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのようなシス位の水酸基をもつ糖アルコールを用いると、さらに、高温下での電導度の低減を抑制することができる。ここで、これらのシス位の水酸基をもつ糖アルコールのうち、最も好ましいのはマンニットである。
【0018】
本発明における硼酸の多価アルコール錯化合物の塩、有機カルボン酸化合物の塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、四級アンモニウム塩および環状アミジン化合物の四級アンモニウム塩があげられる。アミン塩を構成するアミンとしては、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジフェニルアミン、ジエタノールアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、トリエタノールアミン等)があげられる。これらのうちで好ましいのは、アンモニウム塩である。
【0019】
溶媒はエチレングリコールを主体としているが、低温度特性の改善、比抵抗の低減等の目的でプロトン性極性溶媒、非プロトン性溶媒、あるいは水を添加することもできる。プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、等)、多価アルコール及びオキシアルコール化合物類(プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,3−ブタンジオール、メトキシプロピレングリコール等)などがあげられる。非プロトン性溶媒としては、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類、環状アミド類、カーボネート類(γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ニトリル類(アセトニトリル)オキシド類(ジメチルスルホキシド等)などが代表としてあげられる。
【0020】
以上の本発明の電解液を用いることによって、耐電圧が高く、高温での誘電損失変化、静電容量変化、漏れ電流変化等の寿命特性が良好な電解コンデンサを得ることができる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0022】
(表1)に本発明例の実施例、比較例について、電解コンデンサ用電解液の組成と、火花電圧および比抵抗を、示した。なお、pHはアンモニアガスの注入によって調整した。
【0023】
そして、(表2)には、(表1)の実施例、比較例の電解液を用いた、450V−180μFの電解コンデンサの初期特性及び、105℃で定格電圧を印加した状態の3000時間後の特性を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
Cap:静電容量(μF)、tan δ:誘電損失の正接、
LC :漏れ電流(μA)、ΔCap :静電容量変化率(%)
【0026】
以上のように、本発明の実施例は電解液の比抵抗も低く、火花電圧も高く、電解コンデンサの初期特性、高温寿命特性共に良好である。これらに比べて、硼酸の多価アルコール錯化合物の含有量が多い比較例1、有機カルボン酸の含有量が好くない比較例2、pHが本発明の範囲を越えた比較例3では高温寿命試験での漏れ電流が高く、tanδも上昇している。
【0027】
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の電解液を用いることによって、耐電圧が高く、高温での誘電損失変化、静電容量変化、漏れ電流変化等の寿命特性が良好な電解コンデンサを得ることができる。
Claims (2)
- エチレングリコールを主体とする溶媒中に、硼酸と多価アルコールから得られる、硼酸の多価アルコール錯化合物あるいはその塩を8〜15wt%、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、7−メチル−7−メトキシカルボニル−1,9−デカンジカルボン酸、7,9−ジメチル−7,9−ジメトキシカルボニル−1,11−ドデカンジカルボン酸、7,8−ジメチル−7,8−ジメトキシカルボニル−1,14−テトラデカンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸から選ばれる、少なくとも1種以上の有機カルボン酸化合物あるいはその塩を、0.5〜8重量%含有し、pHを5.3〜6.2とした電解コンデンサ用電解液。
- 硼酸の多価アルコール錯化合物における多価アルコールが、エリトリット、アラビット、アドニット、ソルビット、マンニット、ズルシット、タリットのうちから選ばれるシス位の糖アルコールである、請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
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JP2002287685A JP2004128077A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 電解コンデンサ用電解液 |
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JP2007123821A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-05-17 | Nippon Chemicon Corp | 電解コンデンサ用電解液および電解コンデンサ |
JP2014072465A (ja) * | 2012-09-29 | 2014-04-21 | Nippon Chemicon Corp | 電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ |
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2002
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