JP4608793B2 - 射出成形機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は射出成形機、特にノズルタッチ部分とランナー部分とに2分割されたスプルーブシュを備えた射出成形機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、射出成形機において、スプルーブシュは、樹脂が最後に固まる部分であり、しかも射出用ノズルに最も近い部分であるため、熱が籠もりやすい。そのため、スプルーブシュの冷却に時間がかかり、成形サイクルが長くなるという問題がある。これを改善するため、スプルーブシュを水冷によって速やかに冷却する方法もあるが、これでは成形機の射出用ノズルまで冷やす場合があり、コールドスラッグなどの別の問題が生じる。
【0003】
また、成形後、金型を開く時、スプルーブシュ内の樹脂部分(スプルー部)に大きな離型抵抗が働くため、スプルー部の引き出しが困難になる問題がある。このような問題を解消するため、スプルーブシュをノズルタッチ部分とランナー部分とに2分割した射出成形金型が提案されている(特許第2815919号公報)。
この射出成形金型では、ノズルタッチ部分を固定側金型に固定し、ランナー部分をノズルタッチ部分と固定側金型との間の空隙によって軸線方向に一定ストロークだけ移動可能とし、型締め時には移動金型によってランナー部分を押してノズルタッチ部分へ密着させ、型開き時にはスプルー部と共にランナー部分を上記ストローク分だけ引き出すように構成してある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構造の射出成形金型では、スプルーブシュのランナー部分が移動可能であるため、可動側金型とのパーティング部分が動くことになる。そのため、型開き量が増大したり、ランナー取出機との位置調整が必要になり、既存の設備に適用しにくい。
また、スプルーブシュが2分割されても、スプルーブシュを強制的に冷却する手段がないので、スプルー部の冷却に時間がかかり、成形品の取り出しを速めることができない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、スプルーブシュを速やかに冷却して成形サイクルを短縮するとともに、型開き量が増大せず、ランナー取出機との位置調整が不要な射出成形機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、射出装置の射出用ノズルを金型装置のスプルーブシュに接触させ、射出用ノズルからスプルーブシュを介して金型装置内に樹脂を射出する射出成形機において、上記スプルーブシュをノズルタッチ部分とランナー部分とに2分割し、上記ランナー部分を金型装置に固定するとともに、ノズルタッチ部分をランナー部分と金型装置との間で形成される空間に一定ストロークだけ軸方向移動自在に配置し、上記ノズルタッチ部分とランナー部分との間にエアー室を設けるとともに、このエアー室に冷却用エアーを供給するエアー供給通路を設け、上記射出用ノズルを前進させることにより、上記ノズルタッチ部分を押してランナー部分に密着させ、上記射出用ノズルを後退させるとともに、上記エアー室に供給される冷却用エアーのエアー圧によりノズルタッチ部分を後退させて、上記ノズルタッチ部分をランナー部分から離間させるように構成したことを特徴とする。
【0007】
射出用ノズルを前進させると、その押圧力によりノズルタッチ部分も前進し、ランナー部分に接触する。この状態で射出用ノズルから樹脂を射出すると、ノズルタッチ部分、ランナー部分を介して金型内に樹脂が射出される。このとき、ノズルタッチ部分とランナー部分はノズルタッチ力により密着しているので、樹脂がノズルタッチ部分とランナー部分との間から漏れ出すことがない。
射出用ノズルを後退させるとともに、エアー供給通路から冷却用エアーをノズルタッチ部分とランナー部分との間のエアー室に供給すると、そのエアー圧によってノズルタッチ部分が後退し、ランナー部分から分離される。この時、冷却用エアーはノズルタッチ部分を後退させる機能だけでなく、スプルーブシュを冷却する機能を持つ。
特に、ノズルタッチ部分とランナー部分とが離れると、その中のスプルー部(樹脂)が露出し、このスプルー部に冷却用エアーが直接吹きつけられるので、スプルー部は瞬時に冷却,固化される。そのため、成形品の取り出しを速め、成形サイクルを短縮できる。
また、射出用ノズルが接触するノズルタッチ部分と、金型に固定されたランナー部分とが分離され、その間がエアーにより冷却されるので、ノズルの熱が金型に伝わりにくく、金型の冷却時間を短縮できる。
【0008】
本発明では、軸方向に2分割されたスプルーブシュのうち、ランナー部分は金型装置に固定されている。つまり、可動側金型とのパーティング部分が動かないので、型開き量が増大したり、ランナー取出機との位置調整が必要になるといった不具合がない。
また、ノズルタッチ部分とランナー部分とを離間させることで、スプルー部の一部が型開き前に離型されるので、成形後、型開き時にスプルー部に働く離型抵抗が減少し、スプルー部の引き出しが容易になる効果がある。
【0009】
請求項2のように、エアー室にエアー排気通路を接続し、エアー供給通路からエアー室に入ったエアーをエアー排気通路を通って排気するのがよい。
この場合には、スプルー部から奪った熱をエアーとともに排気することができるので、エアー室に熱が籠もらず、冷却効率が向上する。
【0010】
請求項3のように、エアー室にノズルタッチ部分をランナー部分に対し離間方向に付勢するスプリングを収容してもよい。
すなわち、スプルーブシュ内の樹脂部分に働く離型抵抗が大きい場合には、エアー供給通路から供給される冷却用エアーの圧力だけでノズルタッチ部分をランナー部分から離すことが困難な場合がある。そこで、ノズルタッチ部分をランナー部分に対し離間方向に付勢するスプリングを設けることで、エアー圧による離型を助勢し、ノズルタッチ部分をランナー部分から確実に離すことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1,図2は本発明に係る射出成形機の第1実施例を示す。図1は射出直後、図2は冷却時を示す。
この射出成形機は、射出装置と金型装置とで構成される。射出装置については公知のため図示していないが、その先端部に設けられた射出用ノズル1が図1の上下方向に一定ストロークだけ移動し、前進位置にある時に先端から樹脂を射出する。
【0012】
金型装置2は、固定側金型取付板3、固定側金型取付板3上に固定れた固定側ベースプレート4、固定側ベースプレート4に固定された固定側キャビティブロック5、可動側金型取付板6、可動側金型取付板6の下面に固定された可動側ベースプレート7、可動側ベースプレート7の下面に固定された可動側キャビティブロック8などを備えている。固定側キャビティブロック5と可動側キャビティブロック8との間にはキャビティ9が形成されている。可動側金型取付板6には、固定側金型取付板3に下端部が固定されたガイドポスト17が挿通されており、可動側金型取付板6、可動側ベースプレート7および可動側キャビティブロック8の3者は一体に上下方向に移動することができる。可動側金型取付板6の上端部は図示しない型締め機構と連結されており、可動側キャビティブロック8は固定側キャビティブロック5に対して接離可能である。
【0013】
固定側ベースプレート4と固定側キャビティブロック5の内部には、射出用ノズル1からキャビティ9へ樹脂を導くためのスプルーブシュ10が設けられている。このスプルーブシュ10は、ノズルタッチ部分11とランナー部分12とに軸方向に2分割されており、ランナー部分12は固定側キャビティブロック5に固定されている。ノズルタッチ部分11の外周には中鍔11aが形成されており、この中鍔11aが固定側ベースプレート4に設けられた穴部4aの内面を軸方向に摺動自在である。中鍔11aと固定側キャビティブロック5またはランナー部分12の底面との間にはエアー室13が形成され、鍔部11aと穴部4aの内面との間にノズルタッチ部分11が後退できる空間14が形成される。上記中鍔11aは、ノズルタッチ部11が穴部4aから下方へ抜けるのを防止する機能と、エアー室13に供給されるエアー圧の受圧面積を拡大させる機能と、ノズルタッチ部11の表面積を大きくしてエアーによる冷却効果を高める機能とを有する。
【0014】
固定側ベースプレート4には、エアー室13に冷却用エアーを供給するエアー供給通路15が形成され、この供給通路15にエアー供給源(図示せず)から冷却用エアーが常時供給される。なお、エアー供給は、例えばノズル分離時のみ一時的に供給してもよい。固定側ベースプレート4には、エアー室13と接続されたエアー排気通路16が形成されており、エアー供給通路15からエアー室13に入ったエアーはエアー排気通路16を通って排気される。なお、エアー室13の圧力を高めるため、エアー排気通路16に絞りを設け、エアー供給通路15より通路面積を小さくしてもよい。
【0015】
次に、上記構成よりなる射出成形機の動作を図3に従って説明する。
図3の(a)は初期状態であり、射出用ノズル1は後退し、ノズルタッチ部分11から離れている。そのため、エアー供給通路15を介してエアー室13に送られる冷却用エアーにより、ノズルタッチ部分11はランナー部分12から離れている。また、可動側ベースプレート7は上方(型開き方向)へ上昇した状態にあり、可動側キャビティブロック8は固定側キャビティブロック5から離れている。
次に、図3の(b)のように、射出用ノズル1を前進させ、ノズルタッチ部分11に接触させるとともに、ノズルタッチ部分11を押し上げ、ランナ部分12に押し付ける。
次に、図3の(c)のように、型締め機構を作動させ、可動側キャビティブロック8を固定側キャビティブロック5に圧接させて型締めを行う。
次に、図3の(d)のように、射出用ノズル1からスプルーブシュ10を介してキャビティ9に樹脂を射出する。射出とほぼ同時に、冷却を開始する。この時、スプルーブシュ10は、エアー供給通路15からエアー室13、エアー排気通路16へと流れるエアーによって冷却される。
ある程度樹脂が固化すると、図3の(e)のように射出用ノズル1が後退し、これに伴ってエアー室13に送られたエアー圧によってノズルタッチ部分11も後退し、ランナー部分12から離れる。そのため、ノズルタッチ部分11の中のスプルー部(樹脂)Sが露出し、このスプルー部Sに冷却用エアーが直接当たるので、最も固化が遅れるスプルー部Sが瞬時に冷却,固化される。なお、射出用ノズル1はさらに後退してスプルーブシュ10(ノズルタッチ部分11)とも離れるので、ノズル1の熱がスプルーブシュ10に伝わりにくくなり、スプルーブシュ10の冷却速度が速い。
ノズル分離後、図3の(f)のように、型締め機構によって可動側キャビティブロック8を固定側キャビティブロック5から離し、型開きを行うとともに、キャビティ9から成形品Mを取り出す。成形品Mの取り出し時に、スプルー部Sとスプルーブシュ10との離型抵抗が大きいと、容易に取り出せないが、上記のようにスプルーブシュ10は2分割され、しかもその間がエアーによって冷却されるので、スプルー部Sが速やかに冷却され、成形品Mの取り出しが容易になる。
以後、上記(a)〜(f)の動作を繰り返す。
【0016】
図4は本発明にかかる射出成形機の第2実施例を示す。
この実施例は、エアー室13の中に圧縮スプリング20を設け、ノズルタッチ部分11を常時下方(ランナー部分12との離間方向)に付勢した点を除き、第1実施例と同様であるから、重複説明を省略する。
射出用ノズル1が後退し、エアー室13に送られたエアー圧によってノズルタッチ部分11が後退する際、ノズルタッチ部分11とその中のスプルー部(樹 脂)Sとが離型されることになるが、離型抵抗が大きいと、エアー圧だけではノズルタッチ部分11が後退できない可能性がある。
そこで、スプリング20によってノズルタッチ部分11に常時離型方向の力を与えておき、射出用ノズル1が後退した時にエアー圧との総和によって、ノズルタッチ部分11を確実に後退させることができるようにしたものである。
この場合には、エアー室13に供給されるエアー圧が比較的低くても、スプルー部Sからノズルタッチ部分11を容易に離型させることができる。
【0017】
本発明の射出成形機は、射出用ノズルが型開閉方向と同方向に移動できるものであれば、適用可能である。
金型の型開閉方向は、実施例のような上下方向に限らず、水平方向であってもよい。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、スプルーブシュをノズルタッチ部分とランナー部分とに2分割し、ノズルタッチ部分とランナー部分との間に設けられたエアー室に冷却用エアーを供給し、このエアー圧によってノズルタッチ部分をランナー部分から離間させるので、ノズルタッチ部分の中のスプルー部が露出し、このスプルー部に冷却用エアーが直接吹きつけられる。そのため、スプルー部が速やかに固化し、成形品の取り出しを速めることができる。
また、冷却用エアーがノズルタッチ部分をランナー部分から離間させるための付勢作用を持つので、ノズルタッチ部分を作動させるための格別な駆動源を必要としない。
また、軸方向に2分割されたスプルーブシュのうち、ランナー部分は金型装置に固定されており、可動側金型とのパーティング部分が動かないので、型開き量が増大したり、ランナー取出機との位置調整が必要になるといった不具合がない。さらに、ノズルタッチ部分とランナー部分とを離間させることで、型開きの前にノズルタッチ部分のスプルー部が離型されるので、型開き時にスプルー部に働く離型抵抗が減少し、スプルー部の引き出しが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る射出成形機の第1実施例の射出直後の断面図である。
【図2】図1の冷却時における断面図である。
【図3】図1に示された射出成形機の動作説明図である。
【図4】本発明に係る射出成形機の第2実施例の冷却時の断面図である。
【符号の説明】
1 射出用ノズル
2 金型装置
4 固定側ベースプレート
5 固定側キャビティブロック
8 可動側キャビティブロック
10 スプルーブシュ
11 ノズルタッチ部分
12 ランナー部分
13 エアー室
15 エアー供給通路
16 エアー排気通路
S スプルー部
M 成形品

Claims (3)

  1. 射出装置の射出用ノズルを金型装置のスプルーブシュに接触させ、射出用ノズルからスプルーブシュを介して金型装置内に樹脂を射出する射出成形機において、
    上記スプルーブシュをノズルタッチ部分とランナー部分とに2分割し、
    上記ランナー部分を金型装置に固定するとともに、ノズルタッチ部分をランナー部分と金型装置との間で形成される空間に一定ストロークだけ軸方向移動自在に配置し、
    上記ノズルタッチ部分とランナー部分との間にエアー室を設けるとともに、このエアー室に冷却用エアーを供給するエアー供給通路を設け、
    上記射出用ノズルを前進させることにより、上記ノズルタッチ部分を押してランナー部分に密着させ、
    上記射出用ノズルを後退させるとともに、上記エアー室に供給される冷却用エアーのエアー圧によりノズルタッチ部分を後退させて、上記ノズルタッチ部分をランナー部分から離間させるように構成したことを特徴とする射出成形機。
  2. 上記エアー室にはエアー排気通路が接続され、エアー供給通路からエアー室に入ったエアーはエアー排気通路を通って排気されることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
  3. 上記エアー室には、ノズルタッチ部分をランナー部分に対し離間方向に付勢するスプリングが収容されていることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形機。
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