JP4608671B2 - 傘歯車歯切装置のカバー、傘歯車歯切装置、および傘歯車歯切装置の切粉飛散防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は傘歯車歯切装置に係り、特に、工具ホルダとワーク保持具との相対的な揺動に拘らず切削加工部を良好に囲繞し、ドライ加工時に発生する切粉の飛散を防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切削工具とワークとを相対移動させながら切削加工を行う切削加工装置において、特にクーラント(潤滑冷却油剤)を使用しないドライ加工の場合、切粉の飛散を防止するために切削加工部をカバーで囲繞することが望ましいが、固定カバーの場合、ワークの供給・排出や工具交換などを阻害したり、十分な切粉除去性能が得られなかったりすることがある。このため、回転切削工具を保持している主軸に一体的にカバーを取り付けたり、切削工具の移動に同期してエアシリンダなどでカバーを往復移動させたりして、切削加工時だけ切削加工部をカバーで囲繞することが考えられている。特開平1−153247号公報に記載されている装置はその一例である。
【0003】
一方、(a) 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、(b) 円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、(c) 前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、その曲がり歯傘歯車用カッタで前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置が、例えば特開平3−142128号公報に記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記傘歯車歯切装置の場合、例えば工具ホルダおよびワーク保持具の何れか一方に一体的にカバーを固定して切削加工部を囲繞しようとすると、それ等の相対的な揺動に拘らず他方側の部材と干渉しないようにする必要があるため、その揺動を許容する比較的大きな開口部が必要になり、その開口部から切粉が飛散して必ずしも十分な飛散防止性能が得られない。飛散を防止するだけであれば、工具ホルダおよびワーク保持具の全体をカバーで囲繞するようにすれば良いが、囲繞範囲が広いためその後の切粉の回収作業などが面倒で必ずしも十分に満足できない。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、工具ホルダとワーク保持具とが相対的に揺動しながらドライ加工で曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置において、その揺動に拘らず切粉の飛散を良好に防止できるとともに、囲繞範囲が小さくて切粉の回収処理が容易なカバーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、(b) 円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、(c) 前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、その曲がり歯傘歯車用カッタで前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置に取り付けられ、(d) その曲がり歯傘歯車用カッタによる切削加工部を囲繞して切粉の飛散を防止するカバーであって、(e) 前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具の何れか一方に配設されるとともに、それ等の相対的な揺動に拘らず他方側の部材と干渉しないように、その揺動に連動して変位させられる可動カバーを備えていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の傘歯車歯切装置のカバーにおいて、(a) 前記可動カバーは、前記工具ホルダに一体的に取り付けられる固定カバーに複数配設されており、(b) 前記複数の可動カバーを相互に機械的に連結し、互いに連動して前記固定カバーに対して変位させる第1連動機構と、(c) 前記複数の可動カバーの何れか1つと前記ワーク保持具とに跨がって配設され、前記揺動に伴うそのワーク保持具との相対移動によってその可動カバーを前記固定カバーに対して変位させる第2連動機構と、を有することを特徴とする。
【0008】
第3発明は、(a) 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、(b) 円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、(c) 前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、その曲がり歯傘歯車用カッタで前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置において、(d) 前記曲がり歯傘歯車用カッタによる切削加工部を囲繞して切粉の飛散を防止するカバーを有し、且つ、(e) そのカバーは、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具の何れか一方に配設されるとともに、それ等の相対的な揺動に拘らず他方側の部材と干渉しないように、その揺動に連動して変位させられる可動カバーを備えていることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第3発明の傘歯車歯切装置において、前記曲がり歯傘歯車用カッタは、クーラントを使用しないドライ加工で前記曲がり歯を切削加工するものであることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、(a) 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、(b) 円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、(c) 前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、クーラントを使用しないドライ加工でその曲がり歯傘歯車用カッタにより前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置において、(d) 前記曲がり歯傘歯車用カッタによる切削加工に伴って発生する切粉の飛散を防止する方法であって、(e) 前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具の何れか一方に前記曲がり歯傘歯車用カッタの切削加工部を囲繞する可動カバーを設け、その可動カバーをそれ等の工具ホルダとワーク保持具との相対的な揺動に連動して変位させることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
第1発明の傘歯車歯切装置のカバーは、工具ホルダおよびワーク保持具の何れか一方に配設されるとともに、それ等の相対的な揺動に拘らず他方側の部材と干渉しないように、その揺動に連動して変位させられる可動カバーを備えているため、揺動による干渉を回避するための開口部が小さくなり、切粉の飛散を良好に防止できるようになる。また、切削加工部付近の比較的狭い範囲を囲繞して切粉の飛散を防止できるため、例えばその切削加工部の下方位置に設けられたロート状の回収穴から切粉を自然落下させて回収することもできるなど、クーラントを使用することなく切削加工を行うドライ加工においても、切粉の回収処理を容易に行うことができる。
【0012】
第2発明では、工具ホルダに一体的に取り付けられる固定カバーに複数の可動カバーが配設され、第1連動機構により互いに連動して変位させられるとともに、何れか1つの可動カバーは第2連動機構により揺動に伴うワーク保持具との相対移動によって固定カバーに対して変位させられるようになっているため、それ等の固定カバーおよび複数の可動カバーによって切粉の飛散を一層良好に防止できる。また、固定カバーを工具ホルダに取り付けるとともに、1つの可動カバーとワーク保持具とに跨がって第2連動機構を配設するだけで良いため、傘歯車歯切装置に対して容易且つ迅速に取り付けることができる。
【0013】
第3発明の傘歯車歯切装置は、実質的に第1発明のカバーを備えているもので、第1発明と同様の作用効果が得られる。
【0014】
第4発明は、クーラントを使用しないドライ加工で曲がり歯を切削加工するもので、その切削加工に伴って切粉が飛散するが、工具ホルダおよびワーク保持具の相対的な揺動に連動して変位させられる可動カバーが配設されることにより、その切粉の飛散が良好に防止されるとともに、切粉の回収処理を容易に行うことができる。
【0015】
第5発明の傘歯車歯切装置の切粉飛散防止方法は、クーラントを使用しないドライ加工で曲がり歯を切削加工する場合に、工具ホルダおよびワーク保持具の何れか一方に曲がり歯傘歯車用カッタの切削加工部を囲繞する可動カバーを設け、その可動カバーをそれ等の工具ホルダとワーク保持具との相対的な揺動に連動して変位させるため、第1発明と同様に切粉の飛散を良好に防止できるとともに、その切粉の回収処理を容易に行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明が適用される傘歯車歯切装置は、例えば曲がり歯傘歯車用カッタの軸心に対して捩れの位置にある一定のクレードル軸まわりに前記工具ホルダを揺動させる揺動装置を備えて構成されるが、ワーク保持具を所定のクレードル軸まわりに揺動させるようになっていても良いし、カム装置などにより任意の経路に沿ってそれ等を相対的に揺動させるものでも良いなど、種々の揺動装置を採用できる。なお、本発明が適用される傘歯車歯切装置は、曲がり歯傘歯車を加工できることは勿論、曲がり歯のハイポイドギヤの加工にも利用され得る。
【0017】
本発明はドライ加工を行う場合に好適に適用されるが、第1発明〜第3発明の場合、クーラントを使用するウェット加工においても、カバーの上部などにクーラント配管を施すことにより、クーラントの使用量を低減できる。また、切粉を吸引除去する場合でも、切粉の回収率が大幅に向上する。
【0018】
ワーク保持具は、例えば歯車素材を軸心まわりに回転可能に保持するように構成され、傘歯車歯切装置は、前記揺動に同期して歯車素材を軸心まわりに回転させて曲がり歯の切削加工を行うように構成されるが、歯車素材を軸心まわりに回転させる代わりに工具ホルダを歯車素材の軸心まわりに回転させるようにしても良いなど、曲がり歯を切削加工する際の態様は適宜定められる。揺動に同期して歯車素材を軸心まわりに回転させるのに加えて、3軸移動装置などにより相対的に平行移動させるようになっていても良い。
【0019】
可動カバーとしては、一定の回動軸まわりに往復回動させられる回動カバーや、一直線方向へ往復移動させられるスライドカバーなどが好適に用いられる。これ等の可動カバーは、工具ホルダやワーク保持具に一体的に固設される固定カバーに配設することが望ましいが、工具ホルダやワーク保持具に直接取り付けることも可能である。また、工具ホルダおよびワーク保持具の何れか一方に固定カバーを配設するとともに、他方に可動カバーを取り付けるようになっていても良い。
【0020】
第2発明では、第1連動機構によって複数の可動カバーが互いに連動させられるようになっているが、複数の可動カバーをそれぞれワーク保持具に機械的に連結して揺動に同期して連動させられるようにすることもできる。複数の可動カバーをワーク保持具に配設する場合も同様である。なお、可動カバーは必ずしも複数配設する必要はなく、単一の可動カバーを配設するだけでも良い。
【0021】
第2発明の第1連動機構は、例えば両端部においてそれぞれ相対回動可能に可動カバーに連結されるリンクや、ラック&ピニオン、互いに噛み合わされた複数の歯車など、可動カバーの変位形態などに応じて種々の態様を採用できる。揺動に伴う相対移動によって可動カバーを変位させる第2連動機構は、例えば揺動時に互いに係合させられる係合バーおよび係合フックによって構成されるなど、揺動形態に応じて適宜定められる。可動カバーがワーク保持具に配設される場合も同様である。
【0022】
また、第2発明では揺動に伴う工具ホルダとワーク保持具との相対移動によって可動カバーが機械的に変位させられるようになっているが、電動モータやエアシリンダ、ラック&ピニオン、送りねじなどの駆動機構により可動カバーを変位させるカバー駆動装置を設けるとともに、工具ホルダとワーク保持具とを相対的に揺動させる揺動装置の駆動信号などに基づいて、そのカバー駆動装置を電気的に作動させて揺動に同期して可動カバーを変位させるようにすることもできる。
【0023】
第3発明の傘歯車歯切装置、および第5発明の傘歯車歯切装置の切粉飛散防止方法は、実質的に第1発明のカバーを用いて切粉の飛散を防止するものであるが、第1発明のカバーの一実施態様である第2発明に記載のカバーを用いることができることは勿論である。
【0024】
工具ホルダに複数の可動カバーを配設する場合、少なくともワーク保持具に保持されている歯車素材を挟んで両側に位置するように設けることが望ましい。
【0025】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるカバー10が傘歯車歯切装置12に取り付けられた状態を示す概略斜視図で、(a) は1つの歯溝の歯切加工開始時の状態、(b) は1つの歯溝の歯切加工終了時の状態である。傘歯車歯切装置12は、曲がり歯傘歯車用カッタ14を軸心(工具軸心)OT まわりに回転可能に保持している工具ホルダ16と、工具軸心OT に対して捩れの位置にある一定のクレードル軸Sまわりに工具ホルダ16を曲がり歯傘歯車用カッタ14と共に揺動させる揺動装置18と、円すい形状の歯車素材20を軸心(ワーク軸心)OW まわりに回転可能に保持しているワーク保持具22と、揺動装置18による揺動に同期して歯車素材20をワーク軸心OW まわりに所定の回転速度で回転させるとともに位置決めする回転割出し装置24と、を備えて構成されている。そして、曲がり歯傘歯車用カッタ14を工具軸心OT まわりに回転駆動するとともに、工具ホルダ16をクレードル軸Sまわりに揺動させながら、その揺動に同期して回転割出し装置24により歯車素材20をワーク軸心OW まわりに回転させることにより、クーラントを使用しないドライ加工で曲がり歯傘歯車用カッタ14により歯車素材20の外周面に曲がり歯を切削加工する。本実施例では、ワーク保持具22に保持される歯車素材20の軸心OW が略水平になるように構成されている。
【0026】
上記ワーク保持具22は、図示しない3軸移動装置などの移動装置により歯車素材20と共に平行移動させられるようになっており、図1(b) の状態において工具ホルダ16に対して接近離間させられることにより、図に示す加工終了位置と歯車素材20を回転軸に装着したり加工後の曲がり歯傘歯車を回転軸から取り外したりする着脱位置とへ移動させられる。また、歯車素材20が曲がり歯傘歯車用カッタ14と干渉することがないように、図1(b) の加工終了位置から(a) の加工開始位置まで移動させられるとともに、(a) の加工開始位置から(b) の加工終了位置までの1つの歯溝の切削加工時には、目的の曲がり歯形状が得られるように歯車素材20の位置が揺動装置18の揺動に同期して変位(平行移動)させられる。そして、歯車素材20の回転位相を1ピッチずつずらしながら、図1の(a) →(b) の切削加工が歯溝の数だけ繰り返されることにより、目的とする曲がり歯傘歯車が製造される。
【0027】
カバー10は、図2に単独で示されているように、工具ホルダ16に一体的に固設される固定カバー30と、その固定カバー30にヒンジ32を介して一定の回動軸(ヒンジピン)まわりに往復回動可能に配設された回動カバー34と、固定カバー30にガイド36を介して一直線方向に往復移動可能に配設されたスライドカバー38と、を備えて構成されている。回動カバー34およびスライドカバー38は可動カバーに相当する。
【0028】
図3は、固定カバー30の詳細図で、(a) は正面図、(b) は(a) の右側面図、(c) は(a) の平面図、(d) は(a) の背面図であり、工具ホルダ16の正面に略密着して配設される平板状の本体プレート40には、その工具ホルダ16に対して位置決めするとともに一体的に固定するための位置決め板42、44、46が一体的に設けられているとともに、曲がり歯傘歯車用カッタ14を挿通させるための貫通穴48が形成されており、曲がり歯傘歯車用カッタ14が装着された状態のままその曲がり歯傘歯車用カッタ14側からカバー10を工具ホルダ16に取り付けることができるようになっている。位置決め板42には切欠42aが設けられており、工具ホルダ16に立設された図示しないボルトに係合させられるとともに、そのボルトにナットが螺合されて締め付けられることにより、工具ホルダ16に一体的に固設される。
【0029】
上記本体プレート40はまた、前記ワーク保持具22と反対側に位置する部分(図3(a) における左側部分)に設けられて曲がり歯傘歯車用カッタ14の略左半分を囲繞する台形状の左カバー部50、およびその左カバー部50の下半分に連続して設けられて曲がり歯傘歯車用カッタ14の略下半分を囲繞する下カバー部52、を備えている。図3の(a) は、図1(b) の加工終了位置におけるカバー10の姿勢と略一致しており、その状態で右上部分に開口部54が残されることにより、前記曲がり歯の切削加工時における工具ホルダ16の揺動やワーク保持具22の移動に拘らず、固定カバー30がワーク保持具22や歯車素材20と干渉することを回避しつつ、それ以外の部分が上記左カバー部50および下カバー部52により囲繞されて切粉の飛散が防止される。下カバー部52の内部には傾斜板56などが設けられて、下方へ向かうに従って狭くなるロート形状部が形成されており、切削加工部の略真下に設けられた比較的狭い長方形の回収穴58内に切粉が収集されるとともに、その回収穴58から下方へ自然落下させられ、マグネットコンベアなどで傘歯車歯切装置12の外部へ搬出されて容器などに回収されるようになっている。
【0030】
そして、上記左カバー部50の上端に、ヒンジ32を介して本体プレート40に対して略垂直で且つ略水平な回動軸(ヒンジピン)まわりの回動可能に前記回動カバー34が配設され、曲がり歯傘歯車用カッタ14の右側上部、すなわち切削加工部の上方を覆蓋するようになっている。また、下カバー部52の左端には上下方向に前記ガイド36が一体的に固設され、下カバー部52の右半分の外側に重なるように配設されるL字形状のスライドカバー38の一方の側端縁が、そのガイド36と下カバー部52との間の隙間に挿入されることにより、スライドカバー38が上下方向に移動可能な状態で所定位置に位置決めされるようになっている。これ等の回動カバー34およびスライドカバー38は、歯車素材20を挟んで上下の両側に位置するように配設されているとともに、第1連動機構として機能するリンク60(図2参照)の両端部にそれぞれ本体プレート40に対して略垂直な連結ピンまわりの相対回動可能に連結されており、回動カバー34がヒンジ32まわりに往復回動させられるのに連動して、スライドカバー38が下カバー部52に沿って上下方向へ直線往復移動させられるようになっている。
【0031】
また、上記回動カバー34の先端部には、本体プレート40に対して略垂直な係合フック62が固定されている一方、前記ワーク保持具22には、ワーク軸心OW と略平行に突き出す係合バー64が立設されており、曲がり歯の切削加工時における工具ホルダ16の揺動およびワーク保持具22の移動に伴って互いに係合させられ、回動カバー34をヒンジ32まわりに回動させるようになっている。これ等の係合フック62および係合バー64によって第2連動機構が構成されており、曲がり歯の切削加工時における工具ホルダ16およびワーク保持具22の相対移動に拘らず、回動カバー34およびスライドカバー38がワーク保持具22や歯車素材20と干渉することがないとともに、それ等の回動カバー34およびスライドカバー38によって前記開口部54の一部が閉塞されるように、係合フック62および係合バー64の配設位置、形状、寸法などが設定されている。
【0032】
これにより、図1の(a) に示す加工開始位置では、係合フック62および係合バー64の係合で回動カバー34は左カバー部50に対して相対的に上方へ回動させられるとともに、スライドカバー38はリンク60を介して上方へ引き上げられて下カバー部52よりも上方へ突き出し、歯車素材20が位置する比較的狭い範囲を除いて曲がり歯傘歯車用カッタ14の周囲がカバー10によって良好に囲繞される。また、図1(a) の加工開始位置から(b) の加工終了位置までの加工過程では、工具ホルダ16およびワーク保持具22の相対移動に伴って係合フック62および係合バー64の係合状態が変化することにより、回動カバー34は左カバー部50に対して徐々に下方へ回動させられるとともに、スライドカバー38はリンク60を介して下カバー部52に沿って下方へ直線移動させられ、ワーク保持具22や歯車素材20との干渉を回避しながらそれ等の近傍を閉塞する。そして、図1(b) の加工終了位置では、係合フック62および係合バー64の係合が解除され、回動カバー34は左カバー部50の上端に当接する略水平な初期位置に保持されるとともに、スライドカバー38は、上端縁が下カバー部52の上端縁よりも僅かに下になる初期位置に保持される。なお、図1の(b) の加工終了位置から(a) の加工開始位置へ戻る戻り動作(加工前のアプローチ動作を含む)時には、工具ホルダ16およびワーク保持具22の相対移動に伴って係合フック62および係合バー64が係合させられることにより、ワーク保持具22や歯車素材20との干渉を回避しながら回動カバー34は上方へ回動させられるとともに、スライドカバー38はリンク60を介して下カバー部52よりも上方へ引き上げられる。
【0033】
このように、本実施例のカバー10は、曲がり歯の切削加工時における工具ホルダ16の揺動およびワーク保持具22の移動に伴って変位させられる回動カバー34、スライドカバー38を備えており、ワーク保持具22や歯車素材20との干渉を回避しつつ固定カバー30の開口部54の一部を閉塞するようになっているため、工具ホルダ16に位置固定に取り付けられる固定カバー30のみの場合に比較して切粉の飛散が良好に防止される。特に、可動カバーとして、歯車素材20を挟んで両側に位置する一対の回動カバー34およびスライドカバー38を備えているため、ワーク保持具22や歯車素材20との間の隙間を狭くして、切粉の飛散を一層効果的に防止することができる。
【0034】
また、切削加工部付近の比較的狭い範囲、具体的には曲がり歯傘歯車用カッタ14の周囲を囲繞して切粉の飛散を防止するとともに、その切削加工部の下方位置にロート形状部が設けられて、回収穴58内に切粉が収集され且つその回収穴58から下方へ自然落下させられて、マグネットコンベアなどで回収されるようになっているため、クーラントを使用することなく切削加工を行うドライ加工においても、切粉の回収処理が容易である。
【0035】
また、本実施例では工具ホルダ16に一体的に取り付けられる固定カバー30に可動カバーとして回動カバー34およびスライドカバー38が配設され、リンク60によって互いに連動して変位させられるとともに、回動カバー34はワーク保持具22に配設した係合バー64との係合によりワーク保持具22との相対移動に伴ってヒンジ32まわりに回動させられるようになっているため、かかるカバー10を傘歯車歯切装置12に配設する際には、固定カバー30を工具ホルダ16に取り付けるとともに係合バー64をワーク保持具22に立設するだけで良く、取付作業を容易且つ迅速に行うことができる。
【0036】
なお、上例では回動カバー34が、係合フック62および係合バー64によりワーク保持具22との相対移動に伴って機械的に回動させられるようになっていたが、図4に示すように電動モータやエアシリンダ、ラック&ピニオン、送りねじなどの駆動機構により回動カバー34を回動させるカバー駆動装置70を設け、揺動装置18の駆動信号などに基づいてカバー駆動装置70を電気的に作動させることにより、工具ホルダ16の揺動に同期して回動カバー34を回動させるようにすることもできる。回動カバー34を回動駆動する代わりにスライドカバー38を往復移動させるようにしても良い。
【0037】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるカバーが傘歯車歯切装置に取り付けられた状態を説明する概略図で、(a) は加工開始時の状態、(b) は加工終了時の状態である。
【図2】図1のカバーを単独で示す斜視図である。
【図3】図2のカバーの固定カバーを説明する図で、(a) は正面図、(b) は右側面図、(c) は平面図、(d) は背面図である。
【図4】本発明の他の実施例を説明する図で、図1の(a) に相当する図である。
【符号の説明】
10:カバー 12:傘歯車歯切装置 14:曲がり歯傘歯車用カッタ 16:工具ホルダ 20:歯車素材 22:ワーク保持具 30:固定カバー 34:回動カバー(可動カバー) 38:スライドカバー(可動カバー) 60:リンク(第1連動機構) 62:係合フック(第2連動機構) 64:係合バー(第2連動機構) OT :工具軸心 OW :ワーク軸心
Claims (5)
- 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、該曲がり歯傘歯車用カッタで前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置に取り付けられ、該曲がり歯傘歯車用カッタによる切削加工部を囲繞して切粉の飛散を防止するカバーであって、
前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具の何れか一方に配設されるとともに、それ等の相対的な揺動に拘らず他方側の部材と干渉しないように、該揺動に連動して変位させられる可動カバーを備えている
ことを特徴とする傘歯車歯切装置のカバー。 - 前記可動カバーは、前記工具ホルダに一体的に取り付けられる固定カバーに複数配設されており、
前記複数の可動カバーを相互に機械的に連結し、互いに連動して前記固定カバーに対して変位させる第1連動機構と、
前記複数の可動カバーの何れか1つと前記ワーク保持具とに跨がって配設され、前記揺動に伴う該ワーク保持具との相対移動によって該可動カバーを前記固定カバーに対して変位させる第2連動機構と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の傘歯車歯切装置のカバー。 - 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、該曲がり歯傘歯車用カッタで前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置において、
前記曲がり歯傘歯車用カッタによる切削加工部を囲繞して切粉の飛散を防止するカバーを有し、且つ、該カバーは、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具の何れか一方に配設されるとともに、それ等の相対的な揺動に拘らず他方側の部材と干渉しないように、該揺動に連動して変位させられる可動カバーを備えている
ことを特徴とする傘歯車歯切装置。 - 前記曲がり歯傘歯車用カッタは、クーラントを使用しないドライ加工で前記曲がり歯を切削加工するものである
ことを特徴とする請求項3に記載の傘歯車歯切装置。 - 曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転可能に保持している工具ホルダと、円すい形状の歯車素材を保持しているワーク保持具と、を有し、前記曲がり歯傘歯車用カッタを軸心まわりに回転駆動するとともに、前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具を相対的に揺動させることにより、クーラントを使用しないドライ加工で該曲がり歯傘歯車用カッタにより前記歯車素材に曲がり歯を切削加工する傘歯車歯切装置において、前記曲がり歯傘歯車用カッタによる切削加工に伴って発生する切粉の飛散を防止する方法であって、
前記工具ホルダおよび前記ワーク保持具の何れか一方に前記曲がり歯傘歯車用カッタの切削加工部を囲繞する可動カバーを設け、該可動カバーを該工具ホルダと該ワーク保持具との相対的な揺動に連動して変位させる
ことを特徴とする傘歯車歯切装置の切粉飛散防止方法。
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