JP4607349B2 - ザグリ加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,プリント配線板等の板状物その他の対象物に,ザグリ加工を施す方法に関する。さらに詳細には,加工跡にバリがほとんど残らず,また段差のある箇所に対しても正確に加工できるザグリ加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から,プリント配線板等の板状物その他の対象物を他の部材にネジ止めするための穴を形成するため,対象物にザグリ加工を施すことが行われている。従来一般的には,通常の穴開けに用いられるドリルを用い,先頭の切刃部分が貫通しない程度に加工して,対象物に円錐面状のネジ受け面を形成するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,前記した従来の技術には次のような問題点があった。すなわち,加工跡にバリが残りやすいのである。特に,対象物が配線板であり,加工箇所の表面に銅箔が存在していると,図8に示すように,加工跡の縁にヒゲ状の銅箔片20がバリとして残ってしまう。このようなバリは後工程で邪魔となるため,手作業等により除去しなければならず,煩雑である。これは,切刃部分が貫通していない状態で切削しているため,加工対象物に対するドリルの位置が安定しないことによると考えられる。
【0004】
また,加工箇所またはその付近に段差がある場合がある。その場合には,図9に示すように,穴21およびネジ受け面22が楕円状になってしまう傾向があった。このため確実なネジ止めができないこととなった。この理由は,段差のためにドリルが片方に押された状態で加工されるためであると考えられる。
【0005】
本発明は,前記した従来のザグリ加工技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,加工跡にバリを残すことがなく,また段差のある箇所に対しても正確に加工できるザグリ加工方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のザグリ加工方法では,加工対象物の凸状の段差箇所の近くのザグリ位置にザグリ加工を施すにあたり,主刃部分の先端の主切刃よりさらに前方に,主刃部分の径より小径の先行部分を有するドリルを使用し,そのドリルの先行部分を,加工対象物のザグリ位置の中心に位置させつつ加工対象物に進入させ,先行部分によりドリルを加工対象物に対して位置決めしつつ,ドリルの主切刃により加工対象物をザグリ加工する。そのザグリ加工の際に段差箇所の一部も加工する。
【0007】
このようにすると,主刃部分の先端の主切刃による加工対象物の切削が始まるに先立ち,先行部分が加工対象物に進入する。これにより,ドリルが加工対象物に対して位置決めされた状態となる。この状態で主刃部分の主切刃による加工対象物の切削が行われる。よって,主切刃による加工中,加工対象物に対するドリルの位置が安定している。このため,加工跡にヒゲ状のバリが残りにくい。また,加工箇所に段差による加工位置への影響なく正しい位置にザグリ加工できる。
【0008】
本発明では,加工対象物のザグリ位置に,ドリルの先行部分を挿入可能でかつ主刃部分の径より小径な穴をあらかじめ形成しておくことが望ましい。このようにすると,加工中における加工対象物に対するドリルの位置がさらに安定する。このため,バリの発生がより防止されるとともに,よりよい加工位置精度が得られる。
【0009】
そして本発明のザグリ加工方法は,刃部分と,主刃部分の径より小径であるとともに主刃部分の先端の主切刃よりさらに前方に設けられた先行部分とを有するドリルを用いて行うとよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
まず,本発明で使用するザグリ加工用ドリルの実施の形態を説明する。本実施の形態に係るザグリ加工用ドリル1は,図1に示すように,主刃部分2と,先行部分3とを有している。先行部分3は,主刃部分2の先端の主切刃4よりさらに前方に位置している。また,先行部分3の径dは,主刃部分2の径rより小さい。そして,螺旋状の溝5が,主刃部分2と先行部分3にわたって連続的に形成されている。なお,主切刃4の先端角θは90°程度である。
【0012】
続いて,上記のザグリ加工用ドリル1によるザグリ加工方法について説明する。ここでは,プリント配線板に,ネジ止め穴を形成する方法を説明する。
【0013】
まず参考例として,付近に段差がない箇所にネジ止め穴を形成する場合を説明する。この場合,図2に示すように,プリント配線板10の加工対象位置に,あらかじめ迎え穴11を開けておく。迎え穴11の径は,ザグリ加工用ドリル1の先行部分3の径dよりわずかに大きい程度とする。そして,ザグリ加工用ドリル1を回転させつつその先行部分3を迎え穴11に進入させ,主刃部分2の主切刃4により迎え穴11の周囲を加工する(図3)。
【0014】
これにより,プリント配線板10にザグリ加工が施される。すなわち図4に示すように,迎え穴11の周囲に円錐面状のネジ受け面12が形成される。ここにおいて,ザグリ加工用ドリル1により加工されたネジ受け面12は,真円度が高く,また縁13にバリがほとんどない。これは,加工中(図3の状態)において,ザグリ加工用ドリル1がほとんどぶれないことによる。すなわち,先行部分3が迎え穴11に進入していることにより,ザグリ加工用ドリル1が位置決めされた状態で加工が行われるからである。特に,プリント配線板10の表面(図2〜図4における上側の面)が銅箔のベタ面である場合であっても,ヒゲ状の銅箔片がバリとして残ることがない。
【0015】
次に,付近に段差がある箇所にネジ止め穴を形成する場合を説明する。すなわち図5に示すように,プリント配線板10の寸止め加工箇所15であって,ベタ箇所14との段差のすぐ近くにネジ止め穴を形成する場合である。この場合も,加工対象位置に,あらかじめ迎え穴11を開けておく。そして前述の場合と同様に,ザグリ加工用ドリル1を回転させつつその先行部分3を迎え穴11に進入させ,主刃部分2の主切刃4により迎え穴11の周囲を加工する。
【0016】
このとき,図6に示すように,主刃部分2の主切刃4によりベタ箇所14の一部も加工される。図6の状態ではベタ箇所14のためにザグリ加工用ドリル1に図中右から左向きの力が作用している。しかし前述のように,先行部分3が迎え穴11に進入している状態で加工が行われる。このため加工中にザグリ加工用ドリル1は位置決めされた状態にある。したがって,図7に示すように,加工後の状態において,穴11やネジ受け面12は楕円状でなく真円状である。また,ネジ受け面12のベタ箇所14における縁13にヒゲ状の銅箔片がバリとして残っていることはない。
【0017】
以上詳細に説明したように本実施の形態では,主刃部分2の先端の主切刃4よりさらに前方に先行部分3を有するザグリ加工用ドリル1を使用して,プリント配線板10にザグリ加工を施すこととしている。そして,プリント配線板10の当該加工箇所にあらかじめ設けた迎え穴11に進入させて加工を行うようにしている。よって,加工時に先行部分3と迎え穴11とによる位置決め作用が働き,ザグリ加工用ドリル1の位置が安定した状態で加工が行われるのである。これにより,プリント配線板10の上側の表面がベタ面であっても加工跡のネジ受け面12の縁13にバリが残らず,かつ,加工位置の付近に段差があっても加工後の穴11やネジ受け面12の真円度に問題が生じないザグリ加工方法およびそのためのドリルが実現されている。
【0018】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【0019】
例えば,本実施の形態では,プリント配線板10の加工対象位置にあらかじめ迎え穴11を開けておくこととした。しかし,先行部分3の先端が切刃であれば,迎え穴11は必ずしも不可欠ではない。そして,迎え穴11なしで加工した場合でも加工位置精度は高い。また,先行部分3にも螺旋状の溝5が形成されているので,その場合でも切り粉の排出に支障はない。ただし実際上,あらかじめ迎え穴11を開けておいた方が作業しやすい。逆に,あらかじめ迎え穴11を開けておくならば,先行部分3における螺旋状の溝5は必須のものではない。
【0020】
また,本実施の形態では,プリント配線板10という薄板状のものを対象物とした。しかしこれに限らず,塊状のものを対象とすることもできる。さらに,図4に示したようにネジ受け面12と表面とが連続している加工形態に限らず,ネジ受け面12が表面に対して潜り込んでいる加工形態にも適用可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば,加工跡にバリを残すことがなく,また段差のある箇所に対しても正確に加工できるザグリ加工方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るザグリ加工用ドリルの側面図である。
【図2】実施の形態におけるザグリ加工を示す概念図である。
【図3】実施の形態におけるザグリ加工を示す概念図である。
【図4】ザグリ加工後の状態を示す斜視図である。
【図5】加工箇所付近に段差のある状況を示す斜視図である。
【図6】実施の形態におけるザグリ加工(段差のある場合)を示す概念図である。
【図7】段差のある場合におけるザグリ加工後の状態を示す平面図である。
【図8】従来の方法で加工したためにバリが出ている状態を示す斜視図である。
【図9】従来の方法で加工したために楕円状を呈した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ザグリ加工用ドリル
2 主刃部分
3 先行部分
4 主切刃
11 迎え穴
Claims (2)
- 加工対象物の凸状の段差箇所の近くのザグリ位置にザグリ加工を施す方法において,
主刃部分の先端の主切刃よりさらに前方に,主刃部分の径より小径の先行部分を有するドリルを使用し,
前記ドリルの前記先行部分を,加工対象物の前記ザグリ位置の中心に位置させつつ加工対象物に進入させ,
前記先行部分により前記ドリルを加工対象物に対して位置決めしつつ,前記ドリルの前記主切刃により加工対象物をザグリ加工するとともに,
そのザグリ加工の際に前記段差箇所の一部も加工することを特徴とするザグリ加工方法。 - 請求項1に記載するザグリ加工方法において,
加工対象物のザグリ位置に,前記ドリルの前記先行部分を挿入可能でかつ前記主刃部分の径より小径な穴をあらかじめ形成しておくことを特徴とするザグリ加工方法。
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