JP4606390B2 - 車両用前照灯 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の前面から側面に回り込むように配置された車両用前照灯に関し、特には、合理的にロービームおよびハイビームを照射することができる車両用前照灯に関する。
詳細には、本発明は、使用頻度が低いハイビーム照射時に最高出力が得られるように設定されている場合よりも合理的にロービームおよびハイビームを照射することができる車両用前照灯に関する。
更に詳細には、本発明は、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光が遮光される場合よりも光源から照射される光を有効利用することができる車両用前照灯に関する。
図11は従来の車両用前照灯100の斜視図である。図11において、101は車両用前照灯100の光源を示している。光源101としては、例えばフィラメントコイル光源、放電灯の高輝度部分などが用いられる。102は光源101を内蔵したバルブを示している。103はバルブを取り付けるためのソケット穴を示している。104はリフレクタの反射面を示している。
更に、図11において、105は前面レンズとも呼ばれるカバーレンズを示しており、106はカバーレンズ105の中央部分に形成されたレンズカットとしてのレンズ群を示している。107は光源101からの直射光が天空に飛散し、規格を超えるグレア光となってしまうのを防止するためのフードカバーを示している。光源101からの直射光が天空に飛散する程度は、レンズカット106の形状によって異なってくるため、光源101からの直射光が天空に飛散してしまうのをレンズカット106のみによって十分に低減することができる場合には、フードカバー107が省略されることがある。
図12は車両用前照灯の異形化に関する近年の概要を示した図である。1985年以前においては、標準サイズを有する車両用前照灯が全盛の時代であり、車両用前照灯の種類が、図12中の「丸2」形、「丸4」形、「角2」形、および、「角4」形の4種類に限定され、その4種類の車両用前照灯のいずれかが車両に用いられていた。詳細には、「丸2」形、「丸4」形、「角2」形、および、「角4」形の車両用前照灯では、カバーレンズ105(図11参照)の全面がレンズカット106(図11参照)によって覆われていた。
1990年代に入ると、車両の高速化・スタイリングの個性化の進展、および樹脂成形技術の発展に伴って、車両用前照灯の異形化の流れが一気に本格化した。
詳細には、まず最初に、図12に示す「多角形化」が起こり、「丸2」形、「丸4」形、「角2」形、および、「角4」形の標準サイズを離れて車両のスタイルに適合した形状の車両用前照灯が求められるようになり、丸形・角形を離れて、台形化・タイプIとタイプIIとを統合しつつ多角形化する傾向が加速した。
引き続き、「上下幅薄型化」および「上下スラント化」が起こった。これらは、可能な限り車両のボンネットを下げて車両の流線型化を図ると同時に、運転者の視界を広くするという共通の要望を車両用前照灯に反映したものであった。
「上下幅薄型化」および「上下スラント化」を従来構造の技術によって対応しようとすると、光源を囲む立体角が減少して暗い車両用前照灯になってしまうという問題が発生した。この問題を解決するために、MR(マルチリフレクタ)車両用前照灯、および、ラインビームと称される上下幅が小さくても従来の車両用前照灯以上の明るさを確保することができる車両用前照灯が開発された。
最近においては、異形化がもっと進み、図12に示す「左右スラント化」、「釣り目化(ウイング化)」、「奥行き薄型化」のトレンドを生み出している。
図12に示すように、車両用前照灯の「左右スラント化」は、車両の左右方向の流線型化に伴うものであり、「左右スラント化」が採用された車両用前照灯においては、極端な場合、車両用前照灯の端部(車両の側面側の端部)におけるカバーレンズの法線と車両の前後方向とがなす角度が60°〜70°になる。
また、図12に示すように、「釣り目化(ウイング化)」が採用された車両用前照灯においては、車両の前方から車両用前照灯を見た時に、車両用前照灯の外側(車両の側面側)が車両用前照灯の内側(車両の中心側)よりも高くなっている。
「左右スラント化」が採用された車両用前照灯、および、「釣り目化(ウイング化)」が採用された車両用前照灯においては、所望の光量を確保しようとすると、光源を比較的後側の位置(車両の前面から離れた位置)に配置しなければならず、その結果、車両用前照灯の奥行きが長くなるという傾向が生まれた。
車両の安定性・乗り心地を向上させるためには、車両の前輪を車両の前面のできるだけ近くに配置するのが好ましいにもかかわらず、上述したように、車両用前照灯の奥行きが長くなると、車両の前輪を車両の前面の近くに配置しづらくなってしまう。そのため、近年においては、図12に示すように、車両用前照灯の「奥行き薄型化」の要望(トレンド)が生まれてきている。
換言すれば、従来の車両用前照灯においては、遠方視認性を向上させるために大きいリフレクタを用いると、車両用前照灯の奥行き寸法および左右方向寸法が大型化してしまい、一方、車両用前照灯の奥行き寸法および左右方向寸法を小型化しようとすると、リフレクタが小さくなってしまい、その結果、集光度が不足して遠方視認性が低い車両用前照灯になってしまう。
また、車両の側方への配光が安全運転には不可欠であるが、従来の車両用前照灯においては、車両の側方への配光が十分ではなかった。
更に、従来の車両用前照灯においては、車両の前側から車両用前照灯を見た時に、車両用前照灯の隅部が、明るく光って見えず、暗く見えていた。
また、従来から、車両の前面から側面に回り込むように配置された車両用前照灯が知られている。この種の車両用前照灯の例としては、例えば特開2001−6409号公報などに記載されたものがある。
特開2001−6409号公報に記載された車両用前照灯では、アウターレンズが、車両の前面から側面に回り込むように配置され、それにより、車両用前照灯の外観形状が車両の形状にマッチングせしめられている。また、特開2001−6409号公報に記載された車両用前照灯では、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えるための配光パターン切り替え手段が設けられている。
ところで、特開2001−6409号公報に記載された車両用前照灯では、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光によって、対向車の運転者、歩行者などが眩しく感じてしまうのを回避するために、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光が、フード部によって遮光されている。
換言すれば、特開2001−6409号公報に記載された車両用前照灯によっては、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光を有効利用することができない。そのため、特開2001−6409号公報に記載された車両用前照灯によっては、合理的にロービームおよびハイビームを照射することができない。
特開2001−6409号公報
前記問題点に鑑み、本発明は、合理的にロービームおよびハイビームを照射することができる車両用前照灯を提供することを目的とする。
詳細には、本発明は、使用頻度が低いハイビーム照射時に最高出力が得られるように設定されている場合よりも合理的にロービームおよびハイビームを照射することができる車両用前照灯を提供することを目的とする。
更に詳細には、本発明は、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光が遮光される場合よりも光源から照射される光を有効利用することができる車両用前照灯を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明によれば、車両の前面から側面に回り込むように配置された車両用前照灯において、光源の主光軸線が車両の前後方向に対して約30〜60°の角度をなし、かつ、光源の先端が車両の前側かつ側面側に向くように、光源を配置し、楕円系反射面の水平断面曲線の一部が光源の主光軸線とほぼ平行になり、かつ、前記光源がその楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、その楕円系反射面を有する第1リフレクタの一部を前記光源より前側かつ車両の中心側に配置し、前記第1リフレクタからの光を集光させて車両の前側に反射するための反射面を有する第2リフレクタを、前記光源よりも後側かつ車両の側面側に配置し、前記第2リフレクタから照射される配光パターンをロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えるための配光パターン切り替え手段を前記第1リフレクタと前記第2リフレクタとの間に配置し、ロービーム照射時に最高出力が得られるように前記第1リフレクタの楕円系反射面および前記第2リフレクタの反射面を設定し、前記第1リフレクタからの光のうち、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分に照射される光の一部を反射するための反射部を前記配光パターン切り替え手段に設け、ハイビーム照射時には、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分に照射される前記第1リフレクタからの光の一部を、前記配光パターン切り替え手段の反射部によって反射し、水平線よりも上側に照射することを特徴とする車両用前照灯が提供される。
請求項2に記載の発明によれば、前記光源からの光を拡散させるためのインナーレンズを設け、前記インナーレンズを通過せしめられた屈折光が前記インナーレンズによって拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向に照射されると共に、前記インナーレンズによって反射された反射光が拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向に照射されるように、前記インナーレンズを配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、楕円系反射面を有する第3リフレクタを前記第1リフレクタと前記第2リフレクタとの間に配置し、前記光源が前記第3リフレクタの楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、前記第3リフレクタを配置し、前記第3リフレクタからの光が、その楕円系反射面の第2焦点において一旦集光せしめられた後に拡散せしめられ、次いで、前記インナーレンズを通過せしめられることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯が提供される。
請求項4に記載の発明によれば、前記光源からの直射光を車両用前照灯の照射方向に反射するための第4リフレクタを前記第1リフレクタよりも車両の中心側に配置し、前記光源からの直射光を通過させるための隙間を前記第1リフレクタと前記第4リフレクタとの間に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用前照灯が提供される。
請求項1に記載の車両用前照灯では、光源の主光軸線が車両の前後方向に対して約30〜60°の角度をなし、かつ、光源の先端が車両の前側かつ側面側に向くように、光源が配置されている。詳細には、請求項1に記載の車両用前照灯では、例えばHID(High−intensity discharge lamp)のような光源の主光軸線方向に所定の長さを有するものが、光源として用いられる。
更に、請求項1に記載の車両用前照灯では、楕円系反射面の水平断面曲線の一部が光源の主光軸線とほぼ平行になり、かつ、光源がその楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、その楕円系反射面を有する第1リフレクタが光源より前側かつ車両の中心側に配置されている。
また、請求項1に記載の車両用前照灯では、第1リフレクタからの光を集光させて車両の前側に反射するための反射面を有する第2リフレクタが、光源よりも後側かつ車両の側面側に配置されている。
更に、請求項1に記載の車両用前照灯では、第2リフレクタから照射される配光パターンをロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えるための配光パターン切り替え手段が、第1リフレクタと第2リフレクタとの間に配置されている。
また、請求項1に記載の車両用前照灯では、ハイビーム照射時に最高出力が得られるようにではなく、ロービーム照射時に最高出力が得られるように、第1リフレクタの楕円系反射面および第2リフレクタの反射面が設定されている。
詳細には、請求項1に記載の車両用前照灯では、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光が、例えばフード部などによって遮光されるのではなく、第1リフレクタの楕円系反射面および第2リフレクタの反射面を介して車両用前照灯の照射方向に照射される。つまり、請求項1に記載の車両用前照灯では、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光が有効利用される。
更に、請求項1に記載の車両用前照灯では、第1リフレクタからの光のうち、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分に照射される光の一部を反射するための反射部が、配光パターン切り替え手段に設けられている。
また、請求項1に記載の車両用前照灯では、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分に照射される第1リフレクタからの光の一部が、ハイビーム照射時に、配光パターン切り替え手段の反射部によって反射され、水平線よりも上側に照射される。
換言すれば、請求項1に記載の車両用前照灯では、ロービームの使用頻度がハイビームの使用頻度よりも一般的に高い点に鑑み、ロービーム照射時に最高出力が得られるように第1リフレクタの楕円系反射面および第2リフレクタの反射面が設定され、ロービーム照射時に水平線よりも下側に照射される光の一部が、ハイビーム照射時に、反射されて水平線よりも上側に照射される。
そのため、請求項1に記載の車両用前照灯によれば、使用頻度が低いハイビーム照射時に最高出力が得られるように設定されている場合よりも合理的にロービームおよびハイビームを照射することができる。
詳細には、請求項1に記載の車両用前照灯によれば、光源から車両用前照灯の前側かつ水平線よりも上側に照射される光が遮光される場合よりも光源から照射される光を有効利用することができる。
請求項2に記載の車両用前照灯では、光源からの光を拡散させるためのインナーレンズが設けられている。そのため、請求項2に記載の車両用前照灯によれば、インナーレンズが設けられていない場合よりも、車両用前照灯の照射方向に照射される光を拡散させることができ、車両の側方に明るい光を照射することができる。
更に、請求項2に記載の車両用前照灯では、インナーレンズを通過せしめられた屈折光がインナーレンズによって拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向に照射されると共に、インナーレンズによって反射された反射光が拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向に照射されるように、インナーレンズが配置されている。
換言すれば、請求項2に記載の車両用前照灯では、インナーレンズの入射面および出射面によって反射された反射光、および、インナーレンズを通過せしめられ、インナーレンズの出射面から出射せしめられた屈折光の両方が、車両用前照灯の照射方向に照射される。
そのため、請求項2に記載の車両用前照灯によれば、インナーレンズを通過せしめられた屈折光のみが車両用前照灯の照射方向に照射される場合よりも、車両用前照灯の照射方向に照射される光の拡散角度を増加させると共に、光の利用効率を向上させることができる。
請求項3に記載の車両用前照灯では、楕円系反射面を有する第3リフレクタが第1リフレクタと第2リフレクタとの間に配置され、光源が第3リフレクタの楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、第3リフレクタが配置されている。
更に、請求項3に記載の車両用前照灯では、第3リフレクタからの光が、その楕円系反射面の第2焦点において一旦集光せしめられた後に拡散せしめられ、次いで、インナーレンズを通過せしめられる。換言すれば、請求項3に記載の車両用前照灯では、光源からの光が、インナーレンズを通過せしめられる前に、一旦集光せしめられる。
そのため、請求項3に記載の車両用前照灯によれば、光源からの光がインナーレンズを通過せしめられる前に一旦集光せしめられない場合よりも、車両用前照灯の照射方向に照射される光の拡散角度を増加させることができる。
請求項4に記載の車両用前照灯では、光源からの直射光を車両用前照灯の照射方向に反射するための第4リフレクタが第1リフレクタよりも車両の中心側に配置され、光源からの直射光を通過させるための隙間が第1リフレクタと第4リフレクタとの間に形成されている。
換言すれば、請求項4に記載の車両用前照灯では、光源から放射された光の一部が、第1リフレクタと第4リフレクタとの間に形成された隙間を通過せしめられ、第4リフレクタによる1回のみの反射を経て車両用前照灯の照射方向に拡散光として照射される。
そのため、請求項4に記載の車両用前照灯によれば、光源から放射された光のすべてが2回以上の反射を経て車両用前照灯の照射方向に照射される場合よりも、反射に伴う光量のロスを低減することができ、明るい光を車両用前照灯の照射方向に照射することができる。
以下、本発明の車両用前照灯の第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態の車両用前照灯の斜視図、図2は図1に示した第1の実施形態の車両用前照灯を水平面によって切断した断面図、図3は図2に示した第1の実施形態の車両用前照灯から照射される光の光路を示した図である。
詳細には、図1〜図3に示す第1の実施形態の車両用前照灯は、車両の右側用の前照灯として適用され、車両の前面から右側面に回り込むように配置されている。
図1〜図3において、Aは例えば放電ランプ(HID)の高輝度部分などのような光源を示している。Cは光源Aを内蔵したバルブ(図示せず)を取り付けるためのソケット穴を示している。
また、図1〜図3において、R1は光源Aから車両用前照灯の前側(図1の手前側、図2および図3の下側、車両の前側)かつ車両用前照灯の上側(図1の上側、図2および図3の手前側)に放射された光を車両用前照灯の後側(図1の奥側、図2および図3の上側、車両の後側)に反射するためのリフレクタを示している。R2は光源Aから車両用前照灯の前側(図1の手前側、図2および図3の下側、車両の前側)かつ車両用前照灯の下側(図1の下側、図2および図3の奥側)に放射された光を車両用前照灯の後側(図1の奥側、図2および図3の上側、車両の後側)に反射するためのリフレクタを示している。
更に、図1〜図3において、H3は光源Aから車両用前照灯の前側(図1の手前側、図2および図3の下側、車両の前側)に放射された光を通過させるためにリフレクタR1とリフレクタR2との境界部分に配置された直射光穴を示している。
また、図1〜図3において、B1は光源Aから車両用前照灯の後側(図1の奥側、図2および図3の上側、車両の後側)に放射された光を車両用前照灯の左前側(図1の左手前側、図2および図3の左下側、車両の前側かつ右側面側)に反射するためのリフレクタを示している。
第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタB1の反射面が、複数の楕円弧を組み合わせることによって構成されている。詳細には、リフレクタB1の反射面の横断面曲線が楕円弧によって構成され、光源A(図2および図3参照)が、その楕円弧の第1焦点上、あるいは、その近傍に配置され、点Q1(図2および図3参照)が、その楕円弧の第2焦点上、あるいは、その近傍に配置されている。また、リフレクタB1の反射面の縦断面曲線が、放物線に近い楕円弧によって構成されている。つまり、その楕円弧の第1焦点上、あるいは、その近傍に光源Aが配置され、その楕円弧の第2焦点が、光源Aよりも約40m前側(図2および図3の下側)に配置されている。
また、図1〜図3において、B2は光源Aから車両用前照灯の左側(図1の左側、図2および図3の左側、車両の右側面側)に放射された光を車両用前照灯の右前側(図1の右手前側、図2および図3の右下側、車両の前側かつ中心側)に反射するためのリフレクタを示している。
第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタB2の反射面が、複数の楕円弧を組み合わせることによって構成されている。詳細には、リフレクタB2の反射面の横断面曲線が楕円弧によって構成され、光源A(図2および図3参照)が、その楕円弧の第1焦点上、あるいは、その近傍に配置され、点Q2(図2および図3参照)が、その楕円弧の第2焦点上、あるいは、その近傍に配置されている。また、リフレクタB2の反射面の縦断面曲線が、放物線に近い楕円弧によって構成されている。つまり、その楕円弧の第1焦点上、あるいは、その近傍に光源Aが配置され、その楕円弧の第2焦点が、光源Aよりも約40m前側(図2および図3の下側)に配置されている。
更に、図1〜図3において、P1はリフレクタR1からの反射光を通過させるためにリフレクタB1とリフレクタB2との境界部分に配置された穴を示している。P2はリフレクタR2からの反射光を通過させるためにリフレクタB1とリフレクタB2との境界部分に配置された穴を示している。
第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR1の反射面が、複数の楕円弧を組み合わせることによって構成されており、光源Aが、その楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に配置され、穴P1が、その楕円系反射面の第2焦点上、あるいは、その近傍に配置されている。詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、第1焦点と第2焦点とを結ぶ直線を中心に楕円弧を回転させることにより得られる回転楕円面によって、リフレクタR1の反射面が構成されている。第2の実施形態の車両用前照灯では、代わりに、回転楕円面に近い自由曲面によってリフレクタR1の反射面を構成することも可能である。
また、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR2の反射面が、複数の楕円弧を組み合わせることによって構成されており、光源Aが、その楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に配置され、穴P2が、その楕円系反射面の第2焦点上、あるいは、その近傍に配置されている。詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、第1焦点と第2焦点とを結ぶ直線を中心に楕円弧を回転させることにより得られる回転楕円面によって、リフレクタR2の反射面が構成されている。第2の実施形態の車両用前照灯では、代わりに、回転楕円面に近い自由曲面によってリフレクタR2の反射面を構成することも可能である。
また、図1〜図3において、L2はリフレクタB1からの反射光の一部を反射し、リフレクタB1からの反射光の残りを屈折させるためにリフレクタB2の前側(図1の手前側、図2および図3の下側、車両の前側)に配置されたインナーレンズを示している。H2はリフレクタB1からの反射光をインナーレンズL2に到達させるため、および、リフレクタB2からの反射光を通過させるために、リフレクタR1,R2とインナーレンズL2との間に配置された中央出口穴を示している。
更に、図1〜図3において、S1は穴P1を通過せしめられたリフレクタR1からの反射光を車両用前照灯の前側(図1の手前側、図2および図3の下側、車両の前側)および車両用前照灯の左前側(図1の左手前側、図2および図3の左下側、車両の前側かつ右側面側)に反射するためのリフレクタを示している。S2は穴P2を通過せしめられたリフレクタR2からの反射光を車両用前照灯の前側(図1の手前側、図2および図3の下側、車両の前側)および車両用前照灯の左前側(図1の左手前側、図2および図3の左下側、車両の前側かつ右側面側)に反射するためのリフレクタを示している。
また、図1〜図3において、T1は光源Aから車両用前照灯の右側(図1の右側、図2および図3の右側、車両の中心側)に放射された光を車両用前照灯の左前側(図1の左手前側、図2および図3の左下側、車両の前側かつ右側面側)に反射するためのリフレクタを示している。H1は光源Aから放射された光をリフレクタT1に到達させるために、リフレクタR1,R2とリフレクタT1との間に配置された出口穴を示している。L1はアウターレンズを示している。
第1の実施形態の車両用前照灯では、図1に示すように、リフレクタT1が右側(図1の右側、車両の中心側)に少ししか張り出していないが、第3の実施形態の車両用前照灯では、図2および図3に破線で示すように、リフレクタT1の代わりに、右側(図1の右側、図2および図3の右側、車両の中心側)に大きく張り出したリフレクタT2を設けることも可能である。第3の実施形態の車両用前照灯では、第1の実施形態の車両用前照灯のリフレクタR1,R2とリフレクタT1との隙間(出口穴H1)の幅寸法(図2および図3の左右方向寸法)よりも、リフレクタR1,R2とリフレクタT2との隙間(出口穴H1)の幅寸法(図2および図3の左右方向寸法)が大きくされる。
その結果、第3の実施形態の車両用前照灯では、第1の実施形態の車両用前照灯よりも、リフレクタT2からの反射光の光量が増加せしめられる。
一方、車両用前照灯全体の幅寸法の小型化が要求される第4の実施形態の車両用前照灯においては、リフレクタT1および出口穴H1を省略することも可能である。
また、図1〜図3において、EはリフレクタS1から照射される配光パターンをロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えるためにリフレクタR1とリフレクタS1との間に配置された配光パターン切り替え手段を示している。
第1の実施形態の車両用前照灯では、図2に示すように、アウターレンズL1の左端部(図2の左側の端部、車両の右側面側の端部)における法線が、車両の前後方向(図2の上下方向、車両用前照灯全体の主光軸方向)に対して約70°の角度をなすように、車両用前照灯がスラントして配置されている。また、第1の実施形態の車両用前照灯では、車両用前照灯の左右方向寸法(図2の左右方向寸法)が例えば約200mmに設定されている。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2に示すように、インナーレンズL2がリフレクタB2から前側(図2の下側)に突出せしめられ、インナーレンズL2の先端(図2の下側端部)が湾曲せしめられている。また、第1の実施形態の車両用前照灯では、例えばインナーレンズL2とリフレクタB2とが一部材によって形成され、リフレクタB1と、リフレクタS1,S2と、リフレクタT1とが一部材によって形成されている。
また、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2に示すように、光源Aの主光軸線A1が車両の前後方向(図2の上下方向、車両用前照灯全体の主光軸方向)に対して約30〜60°の角度をなし、かつ、光源Aの先端(図2の左下側端部)が車両の前側かつ右側面側(図2の左下側)を向くように、光源Aが配置されている。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2に示すように、リフレクタR1の楕円系反射面の水平断面曲線(横断面曲線)の一部が光源Aの主光軸線A1とほぼ平行になるように、リフレクタR1の一部が光源Aより前側かつ車両の中心側(図2の右下側)に配置されている。詳細には図示しないが、同様に、リフレクタR2の楕円系反射面の水平断面曲線(横断面曲線)の一部が光源Aの主光軸線A1とほぼ平行になるように、リフレクタR2の一部が光源Aより前側かつ車両の中心側(図2の右下側)に配置されている。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2に示すように、リフレクタS1が光源Aよりも後側かつ車両の右側面側(図2の左上側)に配置されている。また、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR1の楕円系反射面の第2焦点からリフレクタS1の反射面までの平均距離が約40mm以上になるように、リフレクタS1の反射面が形成されている。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2に示すように、リフレクタS2が光源Aよりも後側かつ車両の右側面側(図2の左上側)に配置されている。また、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR2の楕円系反射面の第2焦点からリフレクタS2の反射面までの平均距離が約40mm以上になるように、リフレクタS2の反射面が形成されている。
第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、光源Aから前側(図3の下側)かつ上側(図3の手前側)に放射された光が、リフレクタR1の楕円系反射面によって反射され、その楕円系反射面の第2焦点において一旦集光せしめられる。次いで、拡散しながら穴P1を通過せしめられ、リフレクタS1の反射面によって反射される。リフレクタS1の反射面の右側部分(図3の右側部分、車両の中心側部分)によって反射された光d1,d2,d3は一旦集光せしめられ、次いで、拡散しながら車両の前側かつ右側面側(図3の左下側)に拡散光として照射される。一方、リフレクタS1の反射面の左側部分(図3の左側部分、車両の右側面側部分)によって反射された光d4,d5,d6,d7は車両の前後方向(図3の上下方向)とほぼ平行なスポット光として車両の前側(図3の下側)に照射される。つまり、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタS1の反射面からの反射光のうち、約3分の1が拡散光として車両の前側かつ右側面側(図3の左下側)に照射され、約3分の2がスポット光として車両の前側(図3の下側)に照射される。
換言すれば、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR1からの光を集光させて車両の前側(図3の下側)に反射するためのリフレクタS1の反射面が、リフレクタR1の楕円系反射面の第2焦点から平均して約40mm以上離されている。
そのため、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、車両の前面から右側面に回り込むように配置された車両用前照灯の形状の都合上、例えば特開2001−6409号公報の図15、特開平6−203612号公報の図9に記載された車両用前照灯のように、光を集光させて車両の前側に反射するための反射面が光源の比較的近くに配置されている場合よりも、リフレクタS1の反射面を大きくすることができる。
その結果、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、例えば特開2001−6409号公報の図15、特開平6−203612号公報の図9に記載された車両用前照灯よりも、強く集光せしめられた光を車両の前側(図3の下側)に照射して、車両の前側(図3の下側)を明るく照らすことができ、車両用前照灯を車両の前側(図3の下側)から見た時に光って見える部分(つまり、リフレクタS1の反射面の左側部分)を大きくすることができる。
詳細には図示しないが、同様に、第1の実施形態の車両用前照灯では、光源Aから前側(図3の下側)かつ下側(図3の奥側)に放射された光が、リフレクタR2の楕円系反射面によって反射され、その楕円系反射面の第2焦点において一旦集光せしめられる。次いで、拡散しながら穴P2(図1参照)を通過せしめられ、リフレクタS2の反射面によって反射される。リフレクタS2の反射面の右側部分(図3の右側部分、車両の中心側部分)によって反射された光は一旦集光せしめられ、次いで、拡散しながら車両の前側かつ右側面側(図3の左下側)に拡散光として照射される。一方、リフレクタS2の反射面の左側部分(図3の左側部分、車両の右側面側部分)によって反射された光は車両の前後方向(図3の上下方向)とほぼ平行なスポット光として車両の前側(図3の下側)に照射される。つまり、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタS2の反射面からの反射光のうち、約3分の1が拡散光として車両の前側かつ右側面側(図3の左下側)に照射され、約3分の2がスポット光として車両の前側(図3の下側)に照射される。
換言すれば、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR2からの光を集光させて車両の前側(図3の下側)に反射するためのリフレクタS2の反射面が、リフレクタR2の楕円系反射面の第2焦点から平均して約40mm以上離されている。
そのため、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、車両の前面から右側面に回り込むように配置された車両用前照灯の形状の都合上、例えば特開2001−6409号公報の図15、特開平6−203612号公報の図9に記載された車両用前照灯のように、光を集光させて車両の前側に反射するための反射面が光源の比較的近くに配置されている場合よりも、リフレクタS2の反射面を大きくすることができる。
その結果、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、例えば特開2001−6409号公報の図15、特開平6−203612号公報の図9に記載された車両用前照灯よりも、強く集光せしめられた光を車両の前側(図3の下側)に照射して、車両の前側(図3の下側)を明るく照らすことができ、車両用前照灯を車両の前側(図3の下側)から見た時に光って見える部分(つまり、リフレクタS2の反射面の左側部分)を大きくすることができる。
詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2および図3に示すように、光源Aの主光軸線A1が車両の前後方向(図2および図3の上下方向、車両用前照灯全体の主光軸方向)に対して約30〜60°の角度をなすように光源Aが配置されているため、光源Aの側面(円筒面)がリフレクタR1,R2に対向せしめられている。その結果、リフレクタR1,R2からの反射光によって穴P1,P2(図1参照)の近傍に形成される擬似光源は横に長い実像となる。その横長実像が、リフレクタS1,S2の反射面の左側部分(図2および図3の左側部分)によって約20°の入射角、反射角で効率良く反射され、スポット光として車両の前側(図2および図3の下側)に照射される。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2および図3に示すように、光源Aから車両用前照灯の右側(図2および図3の右側、車両の中心側)に放射された光が、出口穴H1を通過せしめられ、次いで、リフレクタT1の反射面によって反射され、拡散光c1,c2,c3として車両用前照灯の照射方向、詳細には、車両用前照灯の左前側(図2および図3の左下側、車両の前側かつ右側面側)に照射される。
詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、光源Aから車両用前照灯の右側(図3の右側、車両の中心側)に放射され、出口穴H1を通過せしめられた光が、リフレクタR1,R2よりも車両の中心側(図3の右側)に配置されたリフレクタT1による1回のみの反射を経て、車両用前照灯の左前側(図3の左下側、車両の前側かつ右側面側)に照射される。
そのため、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、光源Aから放射された光のすべてが2回以上の反射を経て車両用前照灯の照射方向に照射される場合よりも、反射に伴う光量のロスを低減することができ、明るい光を車両用前照灯の照射方向(図3の左下側)に照射することができる。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、光源Aから車両用前照灯の後側(図3の上側)に放射された光が、リフレクタB1の反射面によって車両用前照灯の左前側(図3の左下側)に反射される。
詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、リフレクタB1の反射面からの反射光が、車両用前照灯の左右方向(図3の左右方向)に一旦集光せしめられ、点Q1を通過した後に拡散光a1,a2,a3となってインナーレンズL2に入射する。その入射光a1,a2,a3の大部分は、インナーレンズL2内に入り込み、インナーレンズL2によって屈折せしめられ、大きな拡散光となって車両用前照灯の左側(図3の左側、車両の右側面側)に照射される。具体的には、入射光a3は、インナーレンズL2によって屈折せしめられ、車両の前後方向の前向き(図3の上下方向の下向き)に対して約100°の大きい角度をなして車両用前照灯の左後側(図3の左上側、車両の後側かつ右側面側)に照射される。一方、入射光a1,a2,a3の残りは、インナーレンズL2の入射面(図3の右側の面)および出射面(図3の左側の面)によって反射され、拡散光となって車両用前照灯の右前側(図3の右下側、車両の前側かつ中心側)に照射される。
図示しないが、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタB1の反射面からの反射光が、車両用前照灯の上下方向(図3の手前−奥側方向)に集光せしめられる。詳細には、リフレクタB1の反射面からの反射光が、光源Aよりも約40m前側(図3の下側)において、上下方向に集光せしめられ、左右方向には水平帯状に拡散せしめられる。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、光源Aから車両用前照灯の左側(図3の左側)に放射された光が、リフレクタB2の反射面によって車両用前照灯の右前側(図3の右下側、車両の前側かつ中心側)に反射される。
詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、リフレクタB2の反射面からの反射光が、車両用前照灯の左右方向(図3の左右方向)に一旦集光せしめられ、点Q2を通過した後に、インナーレンズL2に入射することなく、拡散光b1,b2,b3となって車両用前照灯の右前側(図3の右下側、車両の前側かつ中心側)に照射される。
図示しないが、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタB2の反射面からの反射光が、車両用前照灯の上下方向(図3の手前−奥側方向)に集光せしめられる。詳細には、リフレクタB2の反射面からの反射光が、光源Aよりも約40m前側(図3の下側)において、上下方向に集光せしめられ、左右方向には水平帯状に拡散せしめられる。
換言すれば、第1の実施形態の車両用前照灯では、図2および図3に示すように、楕円系反射面を有するリフレクタB1がリフレクタR1,R2とリフレクタS1,S2との間に配置され、光源AがリフレクタB1の楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、リフレクタB1が配置されている。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、リフレクタB1からの光が、その楕円系反射面の第2焦点Q1において一旦集光せしめられた後に拡散せしめられ、次いで、インナーレンズL2を通過せしめられる。換言すれば、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、光源Aからの光が、インナーレンズL2を通過せしめられる前に、一旦集光せしめられる。
そのため、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、光源Aからの光がインナーレンズL2を通過せしめられる前に一旦集光せしめられない場合よりも、車両用前照灯の照射方向(図3の左側、車両の右側面側)に照射される光の拡散角度を増加させることができる。
また、第1の実施形態の車両用前照灯では、図1〜図3に示すように、光源Aからの光を拡散させるためのインナーレンズL2が設けられているため、インナーレンズL2が設けられていない場合よりも、車両用前照灯の照射方向(図3の左側)に照射される光を拡散させることができ、車両の右側面側(図3の左側)に明るい光を照射することができる。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、インナーレンズL2を通過せしめられた屈折光がインナーレンズL2によって拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向(図3の左側)に照射されると共に、インナーレンズL2によって反射された反射光が拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向(図3の右下側)に照射されるように、インナーレンズL2が配置されている。
換言すれば、第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、インナーレンズL2の入射面(図3の右側の面)および出射面(図3の左側の面)によって反射された反射光、および、インナーレンズL2を通過せしめられ、インナーレンズの出射面(図3の左側の面)から出射せしめられた屈折光の両方が、車両用前照灯の照射方向(図3の左側および右下側)に照射される。
そのため、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、インナーレンズL2を通過せしめられた屈折光のみが車両用前照灯の照射方向(図3の左側)に照射される場合よりも、車両用前照灯の照射方向(図3の左側および右下側)に照射される光の拡散角度を増加させると共に、光の利用効率を向上させることができる。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図1および図2に示すように、光源Aから車両用前照灯の前側かつ下側(図1の手前側かつ下側、図2の下側かつ奥側)に放射された光が、直射光穴H3を通過せしめられ、反射を経ることなく、車両用前照灯の前側(車両の前側)に効率良く照射される。詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、直射光穴H3の上縁が、光源Aとほぼ同じ高さに設定されている。そのため、第1の実施形態の車両用前照灯では、直射光穴H3から照射される光が対向車にとって眩しい上向きのグレア光になってしまうことが回避されている。
また、第1の実施形態の車両用前照灯では、図1〜図3に示すように、光源Aから車両用前照灯の左前側(図1の左手前側、図2および図3の左下側)に放射され、中央出口穴H2を通過せしめられた直射光が、インナーレンズL2を通過せしめられた後に、車両用前照灯の左前側(車両の前側かつ右側面側)に照射される。詳細には、第1の実施形態の車両用前照灯では、インナーレンズL2を通過せしめられた直射光が対向車にとって眩しいグレア光になってしまうのを回避するために、インナーレンズL2にレンズカットが形成されている。つまり、第1の実施形態の車両用前照灯では、インナーレンズL2を通過せしめられ、上向きに照射される光が、比較的弱い光になるようにインナーレンズL2のレンズカットによって拡散せしめられる。
図4は図2および図3に示した配光パターン切り替え手段Eの斜視図である。図4において、E1はロービーム用配光パターンを形成するためのシールド板を示しており、E2はハイビーム用配光パターンを形成するためのハイビーム反射板を示しており、E3はシールド板E1およびハイビーム反射板E2を駆動するためのソレノイドを示している。第1の実施形態の車両用前照灯では、シールド板E1およびハイビーム反射板E2が一部材によって構成されているが、第5の実施形態の車両用前照灯では、代わりに、シールド板E1およびハイビーム反射板E2を別個の部材によって構成することも可能である。
図5はリフレクタS1から照射される配光パターンがロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えられる様子を示した図である。詳細には、図5(A)はシールド板E1によってロービーム用配光パターンが形成されている状態を示しており、図5(B)はハイビーム反射板E2によってハイビーム用配光パターンが形成されている状態を示している。図5において、2点鎖線に囲まれた同心楕円は、リフレクタR1によってシールド板E1およびハイビーム反射板E2の近傍に形成される光源Aの擬似光源像を示している。
第1の実施形態の車両用前照灯では、図3に示すように、リフレクタB1,B2,T1からの反射光が拡散光になり、リフレクタS1,S2からの反射光のみがスポット光になる。更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、上半面方向への出力が強く下半面方向への出力が弱い例えば放電ランプ(HID)の高輝度部分が光源Aとして用いられている。また、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR2の一部を切り欠くことによって直射光穴H3が形成されている。そのため、第1の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタS2からの反射光が、リフレクタS1からの反射光の6割程度になり、リフレクタS1からの反射光よりも弱くなる。それゆえ、第1の実施形態の車両用前照灯では、配光パターン切り替え手段Eが、光源AからリフレクタS2への光路上には設けられず、光源AからリフレクタS1への光路上にのみ設けられている。
第1の実施形態の車両用前照灯では、ロービーム用配光パターンを形成すべき時に、図5(A)に示すように、シールド板E1が光源AからリフレクタS1への光路上に配置される。詳細には、シールド板E1が光源Aの擬似光源像(図5(A)中の2点鎖線に囲まれた同心楕円)上に配置される。更に詳細には、リフレクタR1からの反射光のうち、スポット部(高光度部、最も明るい部分)が、シールド板E1によって遮光されることなく、シールド板E1の上側(図5(A)の上側)を通過せしめられるように、シールド板E1が配置される。一方、ハイビーム用配光パターンを形成すべき時には、図5(B)に示すように、ハイビーム反射板E2がソレノイドE3によって図5(B)中の矢印の向きに回動せしめられ、その結果、ハイビーム反射板E2が光源AからリフレクタS1への光路上に配置される。詳細には、ハイビーム反射板E2が光源Aの擬似光源像(図5(B)中の2点鎖線に囲まれた同心楕円)上に配置される。
つまり、第1の実施形態の車両用前照灯では、ハイビーム用配光パターンを形成すべき時に、図5(B)に示すように、光源Aからの光の一部が、ハイビーム反射板E2の下面(図5(B)の下側の面)によって反射される。詳細には、ハイビーム用配光パターンを形成すべき時には、光源Aの擬似光源像(図5(B)中の2点鎖線に囲まれた同心楕円)のスポット部(高光度部、最も明るい部分)が、ハイビーム反射板E2の下面(図5(B)の下側の面)によって反射され、少しだけ押し下げられる。その結果、周辺の広がりが上下反転するように下方に広がりが大きくなる。この擬似光源像(図5(B)中の2点鎖線に囲まれた同心楕円)がリフレクタS1によって反射され、車両の前側に照射されると、上方に大きく広がったハイビーム用配光パターンが形成される。
換言すれば、ロービーム用配光パターンには充分過ぎるほどの下方拡散光が含まれる点に鑑み、第1の実施形態の車両用前照灯では、ロービーム用配光パターンを形成すべき時に照射される下方拡散光の一部が、ハイビーム用配光パターンを形成すべき時に、ハイビーム反射板E2によって反射され、上方拡散光に切り替えられる。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図5(A)および図5(B)に示すように、リフレクタR1からの反射光がハイビーム反射板E2の下面(図5(B)の下側の面)に効率良く当たるように、シールド板E1およびハイビーム反射板E2が、リフレクタR1の上縁付近の高さに配置されている。
図示しないが、第6の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR1の上縁よりも上側に漏れ出る光源Aからの直射光からの反射光を反射し、車両用前照灯の照射方向(図3の下側あるいは左側)に拡散光として照射するためのリフレクタを設けることも可能である。
同様に、第7の実施形態の車両用前照灯では、リフレクタR2の下縁よりも下側に漏れ出る光源Aからの直射光からの反射光を反射し、車両用前照灯の照射方向(図3の下側あるいは左側)に拡散光として照射するためのリフレクタ(図示せず)を設けることも可能である。
第1の実施形態の車両用前照灯では、ハイビーム照射時に最高出力が得られるようにではなく、ロービーム照射時に最高出力が得られるように、リフレクタR1の楕円系反射面およびリフレクタS1の反射面が設定されている。詳細には、上述したように、リフレクタR1からの反射光のうち、スポット部(高光度部、最も明るい部分)が、シールド板E1によって遮光されることなく、シールド板E1の上側(図5(A)の上側)を通過せしめられるように、シールド板E1が配置される。
更に、第1の実施形態の車両用前照灯では、図4および図5に示すように、リフレクタR1からの光のうち、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分(図5(A)の2点鎖線に囲まれた同心楕円の上側半分)に照射される光の一部を反射するためのハイビーム反射板E2が、配光パターン切り替え手段Eに設けられている。
また、第1の実施形態の車両用前照灯では、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分(図5(A)の2点鎖線に囲まれた同心楕円の上側半分)に照射されるリフレクタR1からの光の一部が、ハイビーム照射時に、図5(B)に示すように、配光パターン切り替え手段Eのハイビーム反射板E2の下面(図5(B)の下側の面)によって反射され、リフレクタS1から水平線よりも上側に照射される。
換言すれば、ロービームの使用頻度がハイビームの使用頻度よりも一般的に高い点に鑑み、第1の実施形態の車両用前照灯では、ロービーム照射時に最高出力が得られるようにリフレクタR1の楕円系反射面およびリフレクタS1の反射面が設定されている。更に、ロービーム照射時にリフレクタS1から水平線よりも下側に照射される光の一部が、ハイビーム照射時に、ハイビーム反射板E2の下面(図5(B)の下側の面)によって反射され、リフレクタS1から水平線よりも上側に照射される。
そのため、第1の実施形態の車両用前照灯によれば、使用頻度が低いハイビーム照射時に最高出力が得られるように設定されている場合よりも合理的にロービームおよびハイビームを照射することができる。
第1の実施形態の車両用前照灯では、例えば特開平10−244871号公報に記載されたような自動レベリング装置が設けられていないが、第8の実施形態の車両用前照灯では、代わりに、自動レベリング装置を設け、この自動レベリング装置と連動させることにより、ハイビーム用配光パターンの全体像を上下調整することも可能である。
図6〜図10はリフレクタによって形成される反射光像を概念的に説明するための図である。図6において、ABは光源を示しており、C,C1,C2はリフレクタ上の点を示しており、aは光源ABからリフレクタへの直射光の光路を示している。詳細には、Cはリフレクタの反射面上の重心点を示している。A’B’はリフレクタによって形成される光源ABの擬似光源像を示しており、bはリフレクタからの反射光の主光路を示しており、A”B”はリフレクタからの反射光の主光路bに交わる仮想スクリーン上に形成される光源ABの反射光像を示している。
詳細には、図7は仮想スクリーン上に形成される全ての実像を重ね合わせた全体像を示した図である。仮想スクリーン上に形成される反射光像は、全体としては雲みたいなものであり、中心(水平線Hと鉛直線Vとの交点)付近が極度に明るくなっている。
また、図8はリフレクタからの反射光の主光路bに平行な半透明な仮想スクリーンを示した図である。図8に示すように、リフレクタからの反射光の主光路bに平行な半透明な仮想スクリーン上においても、図7に示した反射光像と同様の光度分布を有する反射光像が観測できる。
図9は図8に示した反射光像に対して反射板を上側から押し当てた状態を示した図である。図9に示す例では、リフレクタからの反射光の最も明るい部分(スポット部、高光度部)が反射板の中に入り込んでおり、その最も明るい部分(スポット部、高光度部)の反射光像が反射板の下面(図9の下側の面)に形成される。
図10は図9に示した状態から反射光の主光路bに平行な半透明な仮想スクリーンを取り除いた状態を示した図である。図10に示すように、リフレクタの上縁付近に反射板を配置することにより、リフレクタの反射面からの実質的に全ての反射光群が反射板の下面(図10の下側の面)によって反射される。その結果、反射板で再反射して見える反射光像は、元の反射光像を反転し、最も明るい部分(スポット部、高光度部)が少し下方に移動したように観測される。
第9の実施形態では、上述した第1から第8の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
第1から第9の実施形態では、本発明の車両用前照灯が車両の右側用の前照灯として適用されているが、第10の実施形態では、本発明の車両用前照灯を車両の左側用の前照灯として適用することも可能である。
第1の実施形態の車両用前照灯の斜視図である。 図1に示した第1の実施形態の車両用前照灯を水平面によって切断した断面図である。 図2に示した第1の実施形態の車両用前照灯から照射される光の光路を示した図である。 図2および図3に示した配光パターン切り替え手段Eの斜視図である。 リフレクタS1から照射される配光パターンがロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えられる様子を示した図である。 リフレクタによって形成される反射光像を概念的に説明するための図である。 リフレクタによって形成される反射光像を概念的に説明するための図である。 リフレクタによって形成される反射光像を概念的に説明するための図である。 リフレクタによって形成される反射光像を概念的に説明するための図である。 リフレクタによって形成される反射光像を概念的に説明するための図である。 従来の車両用前照灯100の斜視図である。 車両用前照灯の異形化に関する近年の概要を示した図である。
符号の説明
A 光源
B1,B2 リフレクタ
C ソケット穴
E 配光パターン切り替え手段
E1 シールド板
E2 反射板
H1 出口穴
H2 中央出口穴
H3 直射光穴
L1 アウターレンズ
L2 インナーレンズ
P1,P2 穴
R1,R2 リフレクタ
S1,S2 リフレクタ
T1 リフレクタ

Claims (4)

  1. 車両の前面から側面に回り込むように配置された車両用前照灯において、光源の主光軸線が車両の前後方向に対して約30〜60°の角度をなし、かつ、光源の先端が車両の前側かつ側面側に向くように、光源を配置し、楕円系反射面の水平断面曲線の一部が光源の主光軸線とほぼ平行になり、かつ、前記光源がその楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、その楕円系反射面を有する第1リフレクタの一部を前記光源より前側かつ車両の中心側に配置し、前記第1リフレクタからの光を集光させて車両の前側に反射するための反射面を有する第2リフレクタを、前記光源よりも後側かつ車両の側面側に配置し、前記第2リフレクタから照射される配光パターンをロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとに切り替えるための配光パターン切り替え手段を前記第1リフレクタと前記第2リフレクタとの間に配置し、ロービーム照射時に最高出力が得られるように前記第1リフレクタの楕円系反射面および前記第2リフレクタの反射面を設定し、前記第1リフレクタからの光のうち、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分に照射される光の一部を反射するための反射部を前記配光パターン切り替え手段に設け、ハイビーム照射時には、ロービーム照射時にロービーム用配光パターンの下側半分に照射される前記第1リフレクタからの光の一部を、前記配光パターン切り替え手段の反射部によって反射し、水平線よりも上側に照射することを特徴とする車両用前照灯。
  2. 前記光源からの光を拡散させるためのインナーレンズを設け、前記インナーレンズを通過せしめられた屈折光が前記インナーレンズによって拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向に照射されると共に、前記インナーレンズによって反射された反射光が拡散せしめられて車両用前照灯の照射方向に照射されるように、前記インナーレンズを配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
  3. 楕円系反射面を有する第3リフレクタを前記第1リフレクタと前記第2リフレクタとの間に配置し、前記光源が前記第3リフレクタの楕円系反射面の第1焦点上、あるいは、その近傍に位置するように、前記第3リフレクタを配置し、前記第3リフレクタからの光が、その楕円系反射面の第2焦点において一旦集光せしめられた後に拡散せしめられ、次いで、前記インナーレンズを通過せしめられることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
  4. 前記光源からの直射光を車両用前照灯の照射方向に反射するための第4リフレクタを前記第1リフレクタよりも車両の中心側に配置し、前記光源からの直射光を通過させるための隙間を前記第1リフレクタと前記第4リフレクタとの間に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
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