JP4606366B2 - 受動部品及びモジュール - Google Patents

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Description

本発明は、誘電体基板内に平衡入出力形式の回路部を有する受動部品と、該受動部品と外部回路とが接続されたモジュールとに関し、特に、端子接続構造に関する。
近時、IC等の半導体部品の高集積化が進み、半導体部品自体の小型化も急速に進んでいる。これに伴い、半導体部品の周辺に使用されるフィルタ等の高周波部品も小型化が進んでいる。また、高周波部品の小型化には、複数の誘電体層を積層した誘電体基板を使用することが有効である(例えば特許文献1及び2参照)。
また、一般に、誘電体基板内にフィルタ部と非平衡−平衡変換部とを一体に形成する方法が考えられている(例えば特許文献3参照)。
特開2002−280805号公報 特開2005−159512号公報 特開2004−056745号公報
ところで、誘電体基板内に複数の回路部を形成した場合、誘電体基板の端面に形成される端子の数は、なるべく同じにすることが好ましい。例えば図7に示すように、誘電体基板200の1つの端面202aに3つの端子204、206及び208を形成した場合は、他の端面202bにも3つの端子210、212及び214を形成するようにしている。
従って、誘電体基板200内にフィルタ部と不平衡−平衡変換部とを形成した場合、不平衡−平衡変換部の第1平衡出力端子216a及び第2平衡出力端子216bを誘電体基板200の1つの端面202aに導出するときは、対称の位置に導出することが一般に行われている。図7の例では、誘電体基板200の1つの端面202aに形成された3つの端子204、206及び208のうち、中央に形成された端子206が例えばNC端子218であり、その両側の端子204及び208がそれぞれ不平衡−平衡変換部から導出された第1平衡出力端子216a及び第2平衡出力端子216bである。
そのため、この受動部品220を例えば半導体部品222(IC等)に接続する場合、半導体部品222の例えば第1端子φ1〜第5φ5の有効活用のために、半導体部品222の互いに隣接する第1端子φ1及び第2端子φ2に、受動部品220の第1平衡出力端子216a及び第2平衡出力端子216bをそれぞれ接続することとなる。この場合、第1平衡出力端子216a及び第2平衡出力端子216bの間にはNC端子218が存在することから、第1平衡出力端子216a及び第2平衡出力端子216b間の距離が遠くなり、しかも、中央のNC端子218への接続を避ける必要から、半導体部品222の第1端子φ1及び第2端子φ2に接続するための線路(第1接続線路224a及び第2接続線路224b)は、その引き回しによって長くなる。第1接続線路224a及び第2接続線路224bの引き回しが長くなると、受動部品220と半導体部品222間の距離も長くなり、第1平衡出力端子216a及び第2平衡出力端子216bと半導体部品222の第1端子φ1及び第2端子φ2とを接続するために必要な領域226(斜線で示す領域)が広くなる。
そのため、受動部品220と半導体部品222を含めたモジュール228全体の占有する面積が広くなり、該モジュール228を含む電子機器の小型化に限界が生じるおそれがある。また、第1接続線路224a及び第2接続線路224bが長くなると、周辺の回路からの電磁的影響を受け易くなることと、第1接続線路224a及び第2接続線路224bのインピーダンスに変動が起こり易くなることから、特性劣化を引き起こすおそれがある。その場合、再度の調整が必要になり、設計工数が増大するおそれもある。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、受動部品と外部回路間の接続線路の長さを短くすることができ、しかも、接続するために必要な面積も縮小化できる受動部品を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、受動部品と外部回路間の接続線路の長さを短くすることができ、しかも、接続するために必要な面積も縮小化でき、モジュール全体の実装エリアの縮小化、該モジュールを含む電子機器の小型化を促進させることができるモジュールを提供することにある。
本発明に係る受動部品は、誘電体基板内に平衡入出力形式の回路部を有する受動部品において、前記誘電体基板の1つの端面に前記回路部からの2つの平衡入出力端子と、他の1以上の端子とが導出され、前記回路部からの前記2つの平衡入出力端子は、前記他の1以上の端子を介在させることなく、互いに隣接して配置され、前記回路部は、不平衡入出力を平衡入出力に変換する不平衡−平衡変換部であり、前記誘電体基板内に不平衡入出力形式のフィルタ部と前記不平衡−平衡変換部とを有し、前記不平衡−平衡変換部は、前記誘電体基板内の第1形成面に形成され、且つ、前記フィルタ部と電気的に接続され、一端から渦巻き状に展開され、さらに、他端に向かって渦巻き状に収束するような形状とされた第1コイル電極と、前記誘電体基板内の第2形成面に形成され、且つ、前記一方の平衡入出力端子に接続され、さらに、前記第1コイル電極の前記一端に対応する一端から、前記一方の平衡入出力端子に向かって渦巻き状に展開された形状を有する第2コイル電極と、前記誘電体基板内の前記第2形成面に形成され、且つ、前記他方の平衡入出力端子に接続され、さらに、前記第1コイル電極の前記他端に対応する一端から、前記他方の平衡入出力端子に対向する位置に向かって渦巻き状に展開された形状を有する第3コイル電極とを有し、前記第1コイル電極は、該第1コイル電極の前記一端からの線路長と前記他端からの線路長とが同じになる点を基準点としたとき、前記基準点を通る基準線に対して、前記一端から前記基準点にわたる渦巻き形状と前記他端から前記基準点にわたる渦巻き形状とが非対称であり、前記第2コイル電極の前記一端と前記第3コイル電極の前記一端は、前記基準線に対して非対称の位置に存在し、前記第2コイル電極の前記一端から前記一方の平衡入出力端子にわたる渦巻き形状と、前記第3コイル電極の前記一端から前記他方の平衡入出力端子にわたる渦巻き形状とが、前記基準線に対して非対称となっていることを特徴とする。
すなわち、2つの平衡入出力端子の間には他の端子が介在することがないため、2つの平衡入出力端子間の距離が従来の場合よりも短くなる。しかも、他の端子を避けて引き回す必要がなくなるため、外部回路の2つの端子に接続するための線路(接続線路)を大幅に短くすることができる。そのため、受動部品と半導体部品間の距離も短くなり、2つの平衡入出力端子と半導体部品の端子とを接続するために必要な領域も狭くなる。
また、前記不平衡−平衡変換部からの2つの平衡入出力端子は、前記誘電体基板の1つの端面において、他の1以上の端子を介在させることなく、互いに隣接して配置させることができる。
通常、不平衡−平衡変換部は、コイル形状を左右対称にし、さらに、各コイルの長さも同じにするようにしている。これは、不平衡−平衡変換部の2つの平衡入出力端子からそれぞれバランスのとれた信号を取り出せるようにするためである。ここで、バランスとは、2つの平衡入出力端子から出力される信号の振幅、位相角のバランスをいう。
2つの平衡入出力端子から出力される信号のバランスが良好であるということは、フィルタ部から出力される信号が2つの平衡入出力端子にバランスよく分配されて出力されることを意味する。従って、フィルタ部の周波数特性が、通過帯域のほか、通過帯域の奇数倍の高調波も通過するような特性を有する場合、不平衡−平衡変換部を通じて、高調波成分も通過してしまうという不都合が生じる。これは、フィルタ部を構成する共振器が例えば1/4波長で構成される場合等に顕著である。フィルタ部から出力される高調波成分は本来不要なものであり、従って、不平衡−平衡変換部から出力される信号としては、高調波成分を少しでも低減することが重要となってくる。
この発明では、上述したように、第2コイル電極と第3コイル電極は互いに非対称のコイル形状を有する。そのため、局部的に微量な浮遊容量の差が発生する。第2コイル電極と第3コイル電極が互いに対称であっても、微量な浮遊容量自体は発生するが、非対称にすることで浮遊容量の発生量に差が生じることになる。微量な浮遊容量の差は、高調波成分等の高い周波数に対して抵抗成分として働くようになるため、高調波成分を抑圧することが可能となる。しかも、本発明では、前記第2コイル電極の線路長と第3コイル電極の線路長が同じとされていることから、フィルタ部の通過帯域の信号を抑圧することはなく、通過特性を維持することができる。
つまり、本発明では、フィルタ部の通過帯域での通過特性を維持し、且つ、例えば通過帯域の奇数倍の高調波成分を抑圧するという特性を有することとなる。また、この受動部品を外部の半導体部品に接続した場合において、半導体部品から2つの平衡入出力端子を通じて入力される信号のうち、高調波成分を、不平衡−平衡変換部において抑圧することができ、不平衡−平衡変換部があたかも高調波成分を抑圧するフィルタとして機能することとなる。
次に、本発明に係るモジュールは、誘電体基板内に平衡入出力形式の回路を有する受動部品と該受動部品が接続される外部回路とを有するモジュールにおいて、前記受動部品は、前記誘電体基板の1つの端面に前記回路からの2つの平衡入出力端子と、他の1以上の端子とが導出され、前記回路からの前記2つの平衡入出力端子は、前記他の1以上の端子を介在させることなく、互いに隣接して配置され、前記外部回路は、1つの端面に複数の端子を有し、これら複数の端子のうち、互いに隣接する2つの端子に前記受動部品の2つの平衡入出力端子がそれぞれ接続されていることを特徴とする。
これにより、受動部品と外部回路間の接続線路の長さを短くすることができ、しかも、接続するために必要な面積も縮小化でき、モジュール全体の実装エリアの縮小化、該モジュールを含む電子機器の小型化を促進させることができる。
以上説明したように、本発明に係る受動部品によれば、受動部品と外部回路間の接続線路の長さを短くすることができ、しかも、接続するために必要な面積も縮小化できる。
また、本発明に係るモジュールによれば、受動部品と外部回路間の接続線路の長さを短くすることができ、しかも、接続するために必要な面積も縮小化でき、モジュール全体の実装エリアの縮小化、該モジュールを含む電子機器の小型化を促進させることができる。
以下、本発明に係る受動部品及びモジュールの実施の形態例を図1〜図6を参照しながら説明する。
まず、本実施の形態に係る受動部品10は、図1に示すように、複数の誘電体層(S1〜S11:図2参照)が積層、焼成一体化されて構成された誘電体基板12を有する。
誘電体基板12は、図2に示すように、上から順に、第1誘電体層S1〜第11誘電体層S11が積み重ねられて構成されている。これら第1誘電体層S1〜第11誘電体層S11は1枚あるいは複数枚の層にて構成される。
誘電体基板12内には、フィルタ部14と、不平衡−平衡変換部(以下、単に変換部16と記す)と、これらフィルタ部14と変換部16とを接続するための接続部18とが形成されている。
フィルタ部14は、2つの1/4波長の共振器(第1共振器20a及び第2共振器20b)を有する。フィルタ部14の第1共振器20a及び第2共振器20bは、第4誘電体層S4の主面に形成された第1共振電極22a及び第2共振電極22bにて構成される。
第3誘電体層S3の主面には、第1共振電極22a及び第2共振電極22bの各開放端と対向する第1内層アース電極24と、第1共振器20aと第2共振器20b間の結合度を調整するための結合調整電極26とが形成されている。
第5誘電体層S5の主面には、第1共振電極22a及び第2共振電極22bの各開放端と対向する第2内層アース電極28と、フィルタ部14の出力段と変換部16の入力段とを電気的に接続するための接続容量電極30が形成されている。
変換部16は、第7誘電体層S7の主面に形成された第1コイル電極32と、第8誘電体層S8の主面に形成された第2コイル電極34と、同じく第8誘電体層S8の主面に形成された第3コイル電極36とを有する。
フィルタ部14と変換部16は、第1誘電体層S1〜第11誘電体層S11の積層方向上下に分離された領域にそれぞれ形成されている。例えば、積層方向上部にフィルタ部14が形成され、積層方向下部に変換部16が形成され、両者間に接続部18が形成されている。
この受動部品10は、第2誘電体層S2、第6誘電体層S6、第9誘電体層S9、第11誘電体層S11の各主面にそれぞれ第3内層アース電極38、第4内層アース電極40、第5内層アース電極42及び第6内層アース電極44が形成され、第10誘電体層S10の主面にDC電極46が形成されている。第4内層アース電極40は、フィルタ部14と変換部16とのアイソレーションを目的とした電極である。
また、この受動部品10は、図1に示すように、誘電体基板12の外周面のうち、第1側面12aに、それぞれ前記第1内層アース電極24、第2内層アース電極28、第3内層アース電極38、第4内層アース電極40、第5内層アース電極42及び第6内層アース電極44が接続されるアース電極48が形成されている。
誘電体基板12の第2側面12b(第1側面12aと反対側の側面)には、それぞれ第1共振電極22a及び第2共振電極22bの各一端(短絡端)並びに前記第3内層アース電極38、第4内層アース電極40、第5内層アース電極42及び第6内層アース電極44が接続されるアース電極48が形成されている。
誘電体基板12の第3側面12cには、第1NC端子50と、非平衡入出力端子52と、DC端子54とが形成されている。非平衡入出力端子52は、図2に示すように、第1リード電極56を介して第1共振電極22aに電気的に接続される。DC端子54は、図示しない外部電源からDC電圧が印加される端子であって、第2リード電極58を介してDC電極46に電気的に接続されている。
誘電体基板12の第4側面12d(第3側面12cと反対側の側面)には、第2NC端子60と、第1平衡入出力端子62aと、第2平衡入出力端子62bとが形成されている。
また、図2に示すように、第5誘電体層S5の主面には、第2共振電極22bと第4誘電体層S4を間に挟んで重なる上述した接続容量電極30が形成されている。この接続容量電極30は、第5誘電体層S5及び第6誘電体層S6に設けられた第1ビアホール64を介して変換部16の第1コイル電極32と電気的に接続されるようになっている。
上述の接続容量電極30及び第1ビアホール64にて接続部18が構成されることになる。
第7誘電体層S7の主面に形成された変換部16の第1コイル電極32は、一端66から渦巻き状に展開され、さらに、他端68に向かって渦巻き状に収束するような形状とされている。ここで、図3に示すように、第1コイル電極32における一端66からの線路長L1と他端68からの線路長L2が同じになる点70と、該点P70を通る基準線mを考えたとき、一端66と他端68は基準線mに対して線対称の位置には存在せず、また、一端66から点70にわたる渦巻き形状と、他端68から点70にわたる渦巻き形状も基準線mに対して線対称とはなっていない。図3の例では、一端66から点70にわたる渦巻き形状の大きさが、他端68から点70にわたる渦巻き形状よりも小さく設定されている。
一方、第8誘電体層S8の主面には、変換部16を構成する第2コイル電極34及び第3コイル電極36が形成されている。第2コイル電極34は、上述した第1コイル電極32の一端66に対応する一端72から、当該第8誘電体層S8のうち、第1平衡入出力端子62aに対向する位置に向かって渦巻き状に展開された形状を有し、第3コイル電極36は、上述した第1コイル電極32の他端68に対応する一端74から、当該第8誘電体層S8のうち、第2平衡入出力端子62bに対向する位置に向かって渦巻き状に展開された形状を有する。
図4に示すように、第2コイル電極34における一端72から第1平衡入出力端子62aまでの線路長L3と、第3コイル電極36における一端74から第2平衡入出力端子62bまでの線路長L4は同じに設定されている。
また、第2コイル電極34の一端72と第3コイル電極36の一端74は基準線m(図3参照)に対して線対称の位置には存在せず、また、第2コイル電極34の一端72から第1平衡入出力端子62aにわたる渦巻き形状と、第3コイル電極36の一端74から第2平衡入出力端子62bにわたる渦巻き形状も基準線m(図3参照)に対して線対称とはなっていない。図4の例では、第2コイル電極34の一端72から第1平衡入出力端子62aにわたる渦巻き形状の大きさが、第3コイル電極36の一端74から第2平衡入出力端子62bにわたる渦巻き形状よりも小さく設定されている。
そして、図2に示すように、第1コイル電極32のうち、一端66あるいは一端66の近傍位置(第1接続位置76)において、上述した接続容量電極30が第1ビアホール64を介して電気的に接続されている。
また、第2コイル電極34の一端72あるいは該一端72の近傍位置(第2接続位置78)とDC電極46とが、第8誘電体層S8及び第9誘電体層S9に設けられた第2ビアホール80を介して電気的に接続されている。さらに、第3のコイル電極36の一端74あるいは該一端74の近傍位置(第3接続位置82)とDC電極46とが、第8誘電体層S8及び第9誘電体層S9に設けられた第3ビアホール84を介して電気的に接続されている。
これにより、DC端子54を介して、第2コイル電極34及び第3コイル電極36に図示しないDC電源が接続される。また、DC電極46は、第5内層アース電極42及び第6内層アース電極44(GND)との間で容量が形成されたものとなる。
このように、第2コイル電極34と第3コイル電極36は互いに非対称の渦巻き形状を有し、且つ、第2コイル電極34の線路長L3と第3コイル電極36の線路長L4が同じとされていることから、図5に示すように、変換部16(図2参照)からの第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bは、誘電体基板12の1つの端面(第4側面12d)において、他のNC端子(第2NC端子60)を介在させることなく、互いに隣接して配置させることができる。
つまり、第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bの間には他の端子(第2NC端子60)が介在することがないため、第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62b間の距離が従来の場合よりも短くなる。しかも、第2NC端子60を避けて引き回す必要がなくなるため、半導体部品86の互いに隣接する第1端子φ1及び第2端子φ2に接続するための線路、すなわち、第1接続線路88a及び第2接続線路88bを大幅に短くすることができる。そのため、受動部品10と半導体部品86間の距離も短くなり、第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bと半導体部品86の端子とを接続するために必要な領域(斜線で示す領域)90も狭くなる。これにより、受動部品10と半導体部品86を含むモジュール100全体の実装エリアの縮小化、該モジュール100を含む電子機器の小型化を促進させることができる。
通常、変換部16は、第2コイル電極34と第3コイル電極36を互いに対称な渦巻き形状とすることが考えられる。これは、変換部16の第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bからそれぞれバランスのとれた信号を取り出せるようにするためである。ここで、バランスとは、第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bから出力される信号の振幅、位相角のバランスをいう。
第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bから出力される信号のバランスが良好であるということは、フィルタ部14から出力される信号が第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bにバランスよく分配されて出力されることを意味する。従って、フィルタ部14の周波数特性が、通過帯域のほか、通過帯域の奇数倍の高調波も通過するような特性を有する場合、変換部16を通じて、高調波成分も通過してしまうという不都合が生じる。これは、フィルタ部14を構成する第1共振器20a及び第2共振器20bが例えば1/4波長で構成される場合等に顕著である。フィルタ部14から出力される高調波成分は本来不要なものであり、従って、変換部16から出力される信号としては、高調波成分を少しでも低減することが重要となってくる。
この実施の形態では、上述したように、第2コイル電極34と第3コイル電極36は互いに非対称のコイル形状を有する。そのため、局部的に微量な浮遊容量の差が発生する。第2コイル電極34と第3コイル電極36が互いに対称であっても、微量な浮遊容量自体は発生するが、非対称にすることで浮遊容量の発生量に差が生じることになる。微量な浮遊容量の差は、後述する実験例(図6参照)でもわかるように、通過帯域の奇数倍の高調波成分を抑圧する特性を具備することとなり、これは、微量な浮遊容量の差が、通過帯域の奇数倍の高調波成分に対して抵抗成分として働いているものと考えられる。しかも、本実施の形態では、第2コイル電極34の線路長L3と第3コイル電極36の線路長L4が同じとされていることから、フィルタ部14の通過帯域の信号を抑圧することはなく、通過特性を維持することができる。
つまり、本実施の形態では、フィルタ部14の通過帯域での通過特性を維持し、且つ、過帯域の奇数倍の高調波成分を抑圧するという特性を有することとなる。また、この受動部品10を外部の半導体部品86に接続した場合において、半導体部品86から第1平衡入出力端子62a及び第2平衡入出力端子62bを通じて入力される信号のうち、通過帯域の奇数倍の高調波成分を、変換部16において抑圧することができ、変換部16があたかも前記高調波成分を抑圧するフィルタとして機能することとなる。
ここで、第2コイル電極34と第3コイル電極36を互いに非対称のコイル形状にした効果を図6を参照しながら説明する。
図6において、破線Lnaは、第2コイル電極34と第3コイル電極36を互いに対称、すなわち、浮遊容量の差がない場合(比較例)の周波数特性を示す。一点鎖線Ln1は、第2コイル電極34と第3コイル電極36を互いに非対称にして、片側の浮遊容量が大きい場合(実施例1)の周波数特性を示す。実線Ln2は、第2コイル電極34と第3コイル電極36を互いに非対称にして、片側の浮遊容量が小さい場合(実施例2)の周波数特性を示す。
また、図6において、周波数f1は、基準周波数(通過帯域の中心周波数)を示し、周波数f2は、基準周波数の2倍の周波数(2次周波数)を示し、周波数f3は、基準周波数の3倍の周波数(3次周波数)を示す。なお、ここでは、基準周波数f1を中心とした例えば1000MHzの帯域を基準帯域T1、2次周波数f2を中心とした例えば1000MHzの帯域を2次帯域T2、3次周波数f3を中心とした例えば1000MHzの帯域を3次帯域T3と称する。
比較例の曲線Lnaにも示すように、一般に、1/4波長の分布定数回路では3次周波数において減衰が0dBであり、信号の通過が避けられない。これに対して、実施例1及び2では、3次周波数の減衰を大きくすることができ、浮遊容量の差が大きい実施例1の減衰量は実施例2よりも大きくなっている。すなわち、実施例1及び2においては、フィルタ部14の通過帯域での通過特性を維持し、且つ、通過帯域の奇数倍の高調波成分を抑圧するという特性を有することがわかる。
また、図6からもわかるように、2次帯域T2において現れる減衰極の周波数が、比較例、実施例1、実施例2でそれぞれ異なっている。これは、第2コイル電極34と第3コイル電極36を互いに非対称とすることによって、減衰極の周波数を可変にできることを示しており、例えば通過帯域を仕様に応じて容易に変更できることにつながる。
なお、本実施の形態に係る受動部品10においては、誘電体基板12内に、非平衡入力方式のフィルタ部14と、第1コイル電極32、第2コイル電極34及び第3コイル電極36を有する変換部16とを一体化するようにしたので、フィルタ部14として小型化に有利な1/4波長の第1共振器20a及び第2共振器20bにて構成することができ、1/2波長の共振器により構成された平衡型の受動部品よりも小型化を図ることができる。
また、一体化することで、フィルタ部14と変換部16間の特性インピーダンスを特定の値(例えば50Ω)に設定する必要がなくなり、両者間の特性インピーダンスを任意に決定することができるため、それぞれの設計の自由度を増すことができる。また、両者間の特性インピーダンスを低く設定することができることから、フィルタ部14を形成しやすくなり、変換部16を構成する第1コイル電極32、第2コイル電極34及び第3コイル電極36の線幅を広げることができるため、変換部16の損失も低減できるという効果がある。
また、誘電体基板12のうち、誘電体層の積層方向上部にフィルタ部14を形成し、積層方向下部に変換部16を形成するようにしたので、フィルタ部14と変換部16との間に、これらフィルタ部14と変換部16間のアイソレーションを目的とした第4内層アース電極40を容易に形成することができ、特性の向上を図ることができる。また、フィルタ部14と変換部16を誘電体基板12の上下に配置することで実装面積も低減する。
ところで、第2共振電極22bと変換部16とを直接接続するタップ構造とした場合、フィルタ部14と変換部16とが通過特性上の減衰域で不要なマッチングを起こし、減衰域で不要なピークが形成されることとなる。しかし、この実施の形態では、第2共振電極22bに対して接続容量電極30を通じ、容量を介してフィルタ部14と変換部16とを接続するようにしたので、前記容量にて変換部16の位相を変え、フィルタ部14との不要マッチングを抑制することができる。
また、第1共振器20a及び第2共振器20b間の結合度を調整する結合調整電極26を、接続部18に対し、第1共振器20a及び第2共振器20bを隔てた位置に形成するようにしている。この場合、結合調整電極26を接続部18の近傍に形成すると、接続部18の接続容量電極30との間で浮遊結合が生じ、不要な整合をなくすことができなくなるおそれがあるが、本実施の形態では、結合調整電極26を、接続部18に対し、第1共振器20a及び第2共振器20bを隔てた位置に形成したため、上述のような不要な整合は生じない。
また、本実施の形態では、DC端子54に接続されるDC電極46と第5内層アース電極42及び第6内層アース電極44間にそれぞれ容量が形成される。この容量は、コモンモードノイズを抑圧するデカップリングコンデンサとして機能する。すなわち、コモンモードノイズの抑圧を目的としたデカップリングコンデンサが誘電体基板12内に形成されており、本実施の形態に係る受動部品10を半導体部品86に接続する場合に、受動部品10と半導体部品86間に別途外付けコンデンサや専用回路を接続する必要がない。
なお、この発明に係る受動部品及びモジュールは、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本実施の形態に係る受動部品を示す斜視図である。 本実施の形態に係る受動部品を示す分解斜視図である。 変換部の第1のコイル電極を示す平面図である。 変換部の第2及び第3のコイル電極を示す平面図である。 本実施の形態に係るモジュールの一部を示す平面図である。 比較例、実施例1、実施例2の周波数特性を示す図である。 従来例に係るモジュールの一部を示す平面図である。
符号の説明
10…受動部品 12…誘電体基板
14…フィルタ部 16…変換部
18…接続部 32、34、36…コイル電極
62a、62b…平衡出力端子 86…半導体部品
88a、88b…接続線路 90…領域
100…モジュール

Claims (2)

  1. 誘電体基板内に平衡入出力形式の回路部を有する受動部品において、
    前記誘電体基板の1つの端面に前記回路部からの2つの平衡入出力端子と、他の1以上の端子とが導出され、
    前記回路部からの前記2つの平衡入出力端子は、前記他の1以上の端子を介在させることなく、互いに隣接して配置され、
    前記回路部は、不平衡入出力を平衡入出力に変換する不平衡−平衡変換部であり、
    前記誘電体基板内に不平衡入出力形式のフィルタ部と前記不平衡−平衡変換部とを有し、
    前記不平衡−平衡変換部は、
    前記誘電体基板内の第1形成面に形成され、且つ、前記フィルタ部と電気的に接続され、一端から渦巻き状に展開され、さらに、他端に向かって渦巻き状に収束するような形状とされた第1コイル電極と、
    前記誘電体基板内の第2形成面に形成され、且つ、前記一方の平衡入出力端子に接続され、さらに、前記第1コイル電極の前記一端に対応する一端から、前記一方の平衡入出力端子に向かって渦巻き状に展開された形状を有する第2コイル電極と、
    前記誘電体基板内の前記第2形成面に形成され、且つ、前記他方の平衡入出力端子に接続され、さらに、前記第1コイル電極の前記他端に対応する一端から、前記他方の平衡入出力端子に対向する位置に向かって渦巻き状に展開された形状を有する第3コイル電極とを有し、
    前記第1コイル電極は、該第1コイル電極の前記一端からの線路長と前記他端からの線路長とが同じになる点を基準点としたとき、前記基準点を通る基準線に対して、前記一端から前記基準点にわたる渦巻き形状と前記他端から前記基準点にわたる渦巻き形状とが非対称であり、
    前記第2コイル電極の前記一端と前記第3コイル電極の前記一端は、前記基準線に対して非対称の位置に存在し、
    前記第2コイル電極の前記一端から前記一方の平衡入出力端子にわたる渦巻き形状と、前記第3コイル電極の前記一端から前記他方の平衡入出力端子にわたる渦巻き形状とが、前記基準線に対して非対称となっていることを特徴とする受動部品。
  2. 請求項1記載の受動部品と、該受動部品が接続される外部回路とを有するモジュールにおいて、
    前記外部回路は、1つの端面に複数の端子を有し、これら複数の端子のうち、互いに隣接する2つの端子に前記受動部品の2つの平衡入出力端子がそれぞれ接続されていることを特徴とするモジュール。
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