JP4606323B2 - 油温センサを備える空冷式内燃機関 - Google Patents

油温センサを備える空冷式内燃機関 Download PDF

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本発明は、燃焼室と排気ポートとが設けられたシリンダヘッドと、潤滑油の温度を検出する油温センサとを備える空冷式内燃機関に関する。
空冷式内燃機関の機関温度を検出するために、シリンダヘッドに設けられた潤滑部位を潤滑した後の潤滑油が流通する戻り油路の潤滑油の温度を検出する油温センサを設けることは知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2000−213326号公報
ところで、油温センサが設けられる戻り油路が、シリンダヘッドにおいて排気ポートに比較的近い位置にある場合には、戻り油路の潤滑油が排気ポートを流通する排気ガスの温度(以下、便宜上「排気ポートの温度」という。)の影響を受けやすく、油温センサにより検出された温度が、燃焼室の温度に精度よく対応していないことがある。このため、例えば内燃機関の暖機時におけるアイドル回転速度制御や空燃比制御をより高精度に制御することが望まれる場合には、燃焼室の温度をより正確に反映した潤滑油の温度を検出して、内燃機関の暖機状態をより高精度で検出する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1または2記載の発明は、油温センサにより検出される潤滑油の温度が排気ポートの温度の影響を受けにくくして、燃焼室の温度の検出精度の向上を図ることを目的とする。
請求項1記載の発明は、燃焼室(12)と排気ポート(14)とが設けられたシリンダヘッド(3)と、潤滑油の温度を検出する油温センサ(61)とを備える空冷式内燃機関において、前記シリンダヘッド(3)および前記シリンダヘッド(3)と一体化されるシリンダ(1)には、前記シリンダヘッド(3)に設けられた潤滑箇所を潤滑した後の潤滑油が流通する戻り油路(59)が設けられ、前記油温センサ(61)は前記戻り油路(59)の潤滑油の温度を検出し、前記シリンダヘッド(3)には、前記戻り油路(59)において前記油温センサ(61)よりも上流に位置する上流部分(59a)と、前記排気ポート(14)との間に、冷却風通路(65)を構成する断熱空間(65)が設けられ、前記断熱空間(65)は、前記冷却風通路(65)の入口部(65a)と出口部(65b)を具備しており、前記冷却風通路(65)の入口部(65a)と出口部(65b)は、シリンダヘッド側壁に開放し、冷却ファン(40)の冷却風を前記冷却風通路(65)の入口部(65a)に流すシュラウド(45)を備え、前記排気ポート(14)および前記戻り油路(59)は前記冷却風通路(65)の出口部(65b)を挟んで対抗した位置に配置され、前記空冷式内燃機関は、頭上カム軸式空冷式内燃機関(E)であり、シリンダ軸線(L2)上に前記冷却風通路(65)とカム軸(22)とが配置され、カム軸方向一端側に前記シリンダヘッド(3)から前記シリンダ(1)を介してクランクケース(2)に連通するチェーン室(19)を備え、前記冷却風通路(65)には前記カム軸方向他端側に入口(65a)が設けられると共に、前記排気ポート(14)と前記チェーン室(19)を構成する壁との間に連通し、前記排気ポート(14)に隣接して出口(65b)が設けられ、前記戻り油路(59)は前記冷却風通路(65)の出口(65b)と前記チェーン室(19)の間に配置されたことを特徴とする空冷式内燃機関である。
これによれば、排気ポートと上流部分との間の断熱空間により、排気ポートを流通する排気ガスから上流部分を流通する潤滑油への熱伝達が行われにくくなる。そして、油温センサは、戻り油路において上流部分よりも下流の、排気ポートの温度の影響が少ない潤滑油の温度を検出する。
請求項2記載の発明は、前記油温センサ(61)は前記排気ポート(14)の出口(14a)が開口する側で前記シリンダ(1)に取付けられ、前記油温センサ(61)の検出部(61b)はカム軸の他端側に、前記油温センサ(61)の接続部(61c)はカム軸の一端側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関である。
請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、油温センサは、戻り油路において排気ポートの温度の影響が少ない潤滑油の温度を検出するので、燃焼室の温度の検出精度が向上する。
以下、本発明の実施形態を図1〜図9を参照して説明する。
図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
まず図1,図2を参照すると、本発明が適用された空冷式内燃機関Eは、Vベルト式自動変速機Mを備える動力伝達装置と共に車両としての自動二輪車に搭載される。
クランク軸7の回転中心線L1が左右方向を指向する横置き配置で車体に支持される内燃機関Eは、単気筒4ストローク内燃機関であり、シリンダ1と、シリンダ軸線L2の方向(以下、「シリンダ軸線方向」という。)でシリンダ1のクランク軸7側に結合されるクランクケース2と、シリンダ軸線方向でシリンダ1の反クランク軸7側に結合されるシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3に結合されるヘッドカバー4とから構成される機関本体を備える。シリンダ1、クランクケース2、シリンダヘッド3およびヘッドカバー4は、熱の良導体である材料としての金属、例えばアルミニウム合金により形成されている。
なお、この実施形態において、上下、前後および左右は、それぞれ、内燃機関Eが備えられる機器としての自動二輪車を基準にしたときの上下、前後および左右を意味するものとし、軸方向は、クランク軸7の回転中心線L1に平行な方向を意味する。また、左方および右方の一方を、軸方向での一方とするとき、左方および右方の他方は、軸方向での他方である。
シリンダ1は、シリンダ軸線L2が前方に向かってやや斜め上方に指向するように、水平面に対してやや上向きに傾斜した状態で、車体に配置される。シリンダ1のシリンダ孔1aにはピストン5が往復運動可能に嵌合し、該ピストン5がコンロッド6を介して連結されるクランク軸7は、玉軸受からなる1対の主軸受8を介してクランクケース2に回転可能に支持される。クランク軸7が収容されるクランク室9を形成する左右割りのクランクケース2は、左ケース半体2aと右ケース半体2bとから構成される。
シリンダヘッド3は、シリンダ1およびシリンダヘッド3に設けられた挿通孔10(図6,図7参照)に挿通される複数の、ここでは4つのヘッドボルト11によりクランクケース2にシリンダ1と共締めされて、シリンダ1と一体化される。
シリンダヘッド3には、シリンダ軸線方向でピストン5と対向する燃焼室12と、燃焼室12に開口する吸気ポート13および排気ポート14と、点火プラグ15が燃焼室12に臨むように挿入されて取り付けられる取付孔68とが形成される。ここで、点火プラグ15は、シリンダ軸線L2に対して大きく傾斜、例えばシリンダ軸線L2から45°以上の角度で傾斜している。
そして、シリンダヘッド3に設けられる吸気弁16および排気弁17は、動弁用伝動機構18を介して伝達されるクランク軸7の動力により回転駆動されるカム軸22を備える動弁装置20により開閉駆動され、クランク軸7の回転に同期して、吸気ポート13および排気ポート14をそれぞれ開閉する。
シリンダヘッド3およびヘッドカバー4により形成される動弁室21に収容される動弁装置20は、シリンダヘッド3に軸受を介して回転可能に支持されるカム軸22と、カム軸22に設けられる吸気カム22aおよび排気カム22bによりそれぞれ駆動されてロッカ軸23,24をそれぞれ中心にして揺動する吸気ロッカアーム25および排気ロッカアーム26とを備える。
伝動機構18は、左の主軸受8を貫通して左方に突出するクランク軸7の左の軸端部7aに設けられる駆動スプロケット18aと、カム軸22の軸端部に設けられる被動スプロケット18bと、両スプロケット18a,18bに掛け渡される無端伝動帯としての無端のチェーン18cとから構成される。両スプロケット18a,18bおよびチェーン18cは、シリンダ1、シリンダヘッド3、ヘッドカバー4および左ケース半体2aにより形成されると共に動弁室21およびクランク室9に連通する伝動室としてのチェーン室19に収納される。
軸方向(左右方向でもある。)でチェーン室19を挟んでクランク室9の左方には、Vベルト30が掛け渡されると共に遠心ウエイト31aにより機関回転速度に応じて巻き掛け半径が変更される駆動プーリ31および被動プーリ(図示されず)を備える変速機Mが収納されるミッション室33が形成される。ミッション室33を形成するミッションケース32は、左ケース半体2aから構成されるケース本体32aと、ケース本体32aの左側に多数のボルトにより結合されるカバー32bとから構成される。左ケース半体2aを貫通して左方に突出する軸端部7aは駆動プーリ31の駆動軸を構成する。
内燃機関Eの吸気装置は、エアクリーナからの吸入空気の流量を制御するスロットル弁が設けられるスロットルボディ(図示されず)とシリンダヘッド3の吸気ポート13側とを接続する吸気管35とを備える。吸気管35には、前記吸気装置の吸気通路を流通する吸入空気に燃料を供給して混合気を形成する混合気形成手段としての燃料噴射弁36が取り付けられる。
燃料噴射弁36から吸気ポート13を指向して噴射された燃料は、混合気となって吸気弁16の開弁時に吸気ポート13を経て燃焼室12に流入し、燃焼室12で点火プラグ15により点火されて燃焼する。発生する燃焼ガスの圧力により駆動されて往復運動するピストン5がコンロッド6を介してクランク軸7を回転駆動する。燃焼ガスは、排気ガスとして排気弁17の開弁時に排気ポート14を経て排気管37を備える排気装置を通じて内燃機関Eの外部に排出される。
そして、クランク軸7の動力は、変速機Mで機関回転速度に応じて自動的に変速された後、終減速機構を介して駆動輪としての後輪に伝達されて、該後輪が回転駆動される。
図1,図3を参照すると、クランク室9の右方には、交流発電機39と、外気を吸引して前記機関本体を強制空冷する冷却風を発生させる冷却ファン40とが収納されるファン室41が形成される。ファン室41は右ケース半体2bと冷却ファン40を右方から覆うファンカバー42とにより形成される。クランク軸7により駆動される交流発電機39および冷却ファン40は、右ケース半体2bを貫通して右方に突出してファン室41内で延びるクランク軸7の右の軸端部7bに取り付けられる。
内燃機関Eに備えられて右ケース半体2bに複数のボルト43により結合される合成樹脂製のファンカバー42は、ファン室41において外気が流入する吸入口41aを形成する円筒状の空気吸入部42aを有する。空気吸入部42aの内側には吸引された空気が軸方向に流れるように整流するルーバ42bが配置される。冷却ファン40により圧送された空気は、ファン室41の出口であって、冷却ファン40の径方向外方に、かつシリンダ軸線方向でシリンダ1側に開口する送風口41bから、冷却風として、後述する通風路46に送られる。
図2を併せて参照すると、内燃機関Eに備えられるシュラウド45は、前記機関本体を構成するシリンダ1およびシリンダヘッド3の全体を覆うことにより、シリンダ1およびシリンダヘッド3を囲む冷却風の通風路46を形成する。シリンダ1およびシリンダヘッド3の外面には、それぞれ、冷却風による冷却効果を高めるために多数の冷却フィン1f,3fが設けられる。
合成樹脂製のシュラウド45は、シリンダ軸線L2にほぼ平行な分割面により2つに分割される上側のシュラウド部分45aおよび下側のシュラウド部分45bとが互いに分離可能に結合されて構成される。そして、冷却ファン40からの冷却風は、冷却ファン40の径方向外方で、かつ冷却ファン40の回転方向の成分を有してファン室41の送風口41bから通風路46に流入し、通風路46でシリンダ1およびシリンダヘッド3の周囲を流れてそれらを冷却し、その後、排風口46bからシュラウド45の外部に排出される。
図1を参照すると、軸端部7bには、主軸受8と交流発電機39との間に内燃機関Eの潤滑系統を構成するオイルポンプを駆動する駆動ギヤ50が設けられる。該オイルポンプは、駆動ギヤ50を含むギヤ対により構成される伝動機構を介して伝達されるクランク軸7の動力により駆動されて、クランクケース2の底部により構成されるオイル貯留部から汲み上げた潤滑油を、多数の油路を通じて主軸受8、クランク軸7および動弁装置20をはじめとする内燃機関Eの潤滑部位に供給する。
併せて図2,図5〜図7を参照すると、シリンダヘッド3に設けられる動弁装置20には、前記オイルポンプから吐出された潤滑油が、挿通孔10aを利用して形成された油路52を流通し、油路52の一部の潤滑油がシリンダヘッド3設けられた油路53(図5参照)を経てヘッドカバー4に形成された油路54(図2参照)に導かれて、油路54の噴口54aから動弁室21内に噴出すると共に、油路62の残りの潤滑油がロッカ軸23内の油路55から吸気ロッカアーム25との摺動部を通って動弁室21内に噴出して、動弁装置20などの動弁室21内の潤滑部位に供給される。該潤滑部位を潤滑した後の潤滑油は、動弁室21からシリンダヘッド3およびシリンダ1を貫通してクランク室9に開放する貫通孔からなる戻り油路59を流下してクランク室9に流入し、前記オイル貯留部に戻る。
図3を参照すると、内燃機関Eは、機関状態を検出するセンサとして、シリンダヘッド3に取り付けられて機関状態としての排気ガスの性状を排気ポート14(図6参照)において検出する排気ガスセンサ、例えば排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ60と、燃焼室12の温度に対応した温度を検出すべく、潤滑油の温度を検出する油温センサ61とを備える。
図6を参照すると、シリンダヘッド3において排気ポート14の出口14a付近に取り付けられる酸素濃度センサ60は、シリンダヘッド3にねじ込まれて取り付けられるネジ部からなる取付部60aと、シリンダヘッド3の内部に位置して排気ポート14内に臨む検出部60bと、検出信号を制御装置に伝達する電線が接続される接続部60cとを有する。
図4,図7を参照すると、排気ポート14の出口14aが開口する側でシリンダ1に取り付けられる油温センサ61は、シリンダ1にねじ込まれて取り付けられるネジ部からなる取付部61aと、シリンダ1の内部に位置して戻り油路59に臨む検出部61bと、検出信号を前記制御装置に伝達する電線が接続される接続部61cとを有する。
図4〜図7を参照すると、シリンダヘッド3およびシリンダ1に渡ってシリンダ軸線L2にほぼ平行に設けられる戻り油路59は、シリンダヘッド3の下側周壁3bに設けられて動弁室21(図1参照)に開口する入口59cを有するヘッド側油路59aと、ヘッド側油路59aに連通すると共にシリンダ1の下側周壁1bに設けられてクランク室9に開口する出口59dを有するシリンダ側油路59bとから構成される。戻り油路59は、軸方向でチェーン室19と排気ポート14との間に位置する。そして、油温センサ61の検出部61bはシリンダ側油路59bに臨んでいる。ここで、動弁室21から戻り油路59の入口59cに達する潤滑油は、動弁室21においてシリンダヘッド3を通じて伝達された燃焼室12の温度を反映したものとなっている。
図1,図4,図6を参照すると、戻り油路59において、検出部61bが位置する部分よりも上流に位置する上流部分としてのヘッド側油路59aと排気ポート14との間には、断熱空間としての冷却風の通路65が設けられる(図2も参照)。シリンダヘッド3に設けられる空洞により構成される通路65は、シリンダ軸線方向で燃焼室12の室壁12aと動弁室21の底壁21aとの間に、吸気ポート13と排気ポート14とを分断するように両ポート13,14の間に設けられて、シリンダ軸線方向から見てほぼ直角に排気ポート14側に屈曲している。そして、通路65は、両ポート13,14の間で軸方向で開放して通風路46の冷却風が流入する入口部65aと、チェーン室19と排気ポート14との間で平面Hに対して直交する方向に開放する出口部65bとを有する。排気ポート14および戻り油路59は、出口部65bを挟んで軸方向で対向する。そして、冷却風は、入口部65aに配置された点火プラグ15を冷却しながら通路65に流入し、その後、室壁12aおよび排気ポート14のポート壁14bを冷却しながら出口部65bに向かって流れ、出口部65bから通風路46に流出する。ここで、平面Hとは、シリンダ軸線L2を含むと共に、回転中心線L1に平行な、または回転中心線L1を含む平面である。
そして、酸素濃度センサ60で検出された検出値は、前記排気装置に備えられる触媒装置による排気ガスの浄化性能を高めるために、燃料噴射弁36の燃料量の制御に使用され、また油温センサ61で検出された検出値は、内燃機関Eの暖機状態に応じた燃料噴射弁36の燃料量の制御や、暖機時のアイドル回転速度制御のためのアイドル空気量の制御に使用される。
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
空冷式内燃機関Eにおいて、シリンダヘッド3に設けられた動弁装置20などの潤滑箇所を潤滑した後の潤滑油が流通する戻り油路59がシリンダヘッド3およびシリンダ1に設けられ、油温センサ61は戻り油路59の潤滑油の温度を検出し、シリンダヘッド3において、戻り油路59の上流部分であるヘッド側油路59aと排気ポート14との間には、断熱空間としての冷却風の通路65が設けられることにより、排気ポート14とヘッド側油路59aとの間の通路65により、排気ポート14を流通する排気ガスからヘッド側油路59aを流通する潤滑油への熱伝達が行われにくくなり、油温センサ61は、戻り油路59においてヘッド側油路59aよりも下流の、排気ポート14の温度の影響が少ない潤滑油の温度を検出する。この結果、油温センサ61は、戻り油路59において排気ポート14の温度の影響が少ない潤滑油の温度を検出するので、燃焼室12の温度の検出精度が向上する。
次に、図1,図2、図5を援用しつつ、図8,図9を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、第1実施形態とは、主として油温センサが温度を検出する潤滑油の流通する油路が相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施形態の部材と同一の部材または対応する部材については、必要に応じて同一の符号を使用した。
図1,図2,図5,図8を参照すると、シリンダヘッド3のシリンダ1との結合面であるヘッド側結合面3cには、挿通孔10b(図7も参照)により形成されて前記オイルポンプからの潤滑油が導かれる油路51と、挿通孔10aにより形成されて油路53(図5参照)を経てヘッドカバー4の油路54に潤滑油を導く油路52とが開口し、さらに両油路51,52を連通する油路を構成する油溝57が燃焼室12の周囲に設けられる。油溝57は、図1,図2においては二点鎖線で示されている。なお、第2実施形態では、挿通孔10aにおいてシリンダ1に設けられる部分は、潤滑油を潤滑部位に供給する油路を構成していない。
そして、シリンダ1およびシリンダヘッド3の互いの結合面3c,1c間、すなわち結合面3cと、シリンダ1のシリンダヘッド3との結合面であるシリンダ側結合面1cとの間に設けられる油溝57は、シリンダ軸線方向から見て、点火プラグ15を挟んで対向する油路51,52を連通させるべく、点火プラグ15と重ならないように、燃焼室12を囲んで円弧状、この実施形態では優弧状に、燃焼室12を部分的に囲んで設けられる(図8参照)。
併せて図9(A),(B)を参照すると、油路52に連通する油路53は、シリンダヘッド3およびヘッドカバー4の互いの結合面3d,4dにおいて油路54に連通する。そして、油路54の噴口54aから噴出する潤滑油が動弁室21内の各潤滑部位に供給される。また、油路54には、油温センサ62の検出部62bが臨んでいる。
ここで、油路52においてシリンダヘッド3に設けられる油路部分52a、油路53および油路54は、油溝57に開口する給油路を構成し、該給油路から動弁室21内の潤滑部位への潤滑油が供給される。そして、該給油路を構成する油路のうち、シリンダヘッド3に設けられる油路である油路部分52aおよび油路53は、排気ポート14よりも吸気ポート13に近い位置にあり、油路54も同様に、排気ポート14よりも吸気ポート13に近い位置にある。
この第2実施形態によれば、次の作用および効果が奏される。
内燃機関Eにおいて、ヘッドカバー4に取り付けられる油温センサ62は、シリンダ1およびシリンダヘッド3の互いの結合面3c,1c間に設けられた油溝57を流通した後の、油溝57に開口する油路である前記給油路の潤滑油の温度を検出し、該給油路の油路部分52aは、シリンダヘッド3において排気ポート14よりも吸気ポート13に近い位置に設けられることにより、シリンダ1およびシリンダヘッド3の互いの結合面3c,1c間の設けられた油溝57において燃焼室12の温度が反映された潤滑油は、吸気ポート13に比べて排気ポート14から比較的遠い位置にあるために、排気ポート14の温度の影響を受けにくい前記給油路を流通し、油温センサ62は、この給油路の、排気ポート14の温度の影響が少ない潤滑油の温度を検出する。この結果、油温センサ62は、油溝57を流れることで燃焼室12の温度を反映していると共に、排気ポート14の温度の影響が少ない潤滑油の温度を検出するので、燃焼室12の温度の検出精度が向上する。
油溝57は、シリンダヘッド3のシリンダ1との結合面3c,1c間に設けられ、シリンダ軸線方向から見て、シリンダヘッド3に取り付けられた点火プラグ15と重ならないように燃焼室12を囲んで設けられることにより、点火プラグ15がシリンダ軸線L2から大きく傾斜してシリンダヘッド3に取り付けられる場合にも、点火プラグ15の位置に関わらず、燃焼室12に沿って広い範囲に渡って油溝57を形成できるので、燃焼室12の温度が油溝57を流通する潤滑油の温度により正確に反映して、油温センサ62による燃焼室12の温度の検出精度が向上する。
また、シリンダ軸線方向から見て油溝57が優弧状であることにより、燃焼室12の温度が油溝57を流通する潤滑油に反映する長さを確保できるので、この点でも燃焼室12の温度の検出精度向上に寄与する。
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
空冷式内燃機関Eは、冷却ファンを備える強制空冷式の以外の、冷却ファンおよびシュラウドを備えない内燃機関であってもよく、また多気筒内燃機関であってもよい。
第1実施形態において、内燃機関は、シリンダとシリンダヘッドとが一体成形されて一体化されたものでもよい。
第2実施形態において、油溝57は、結合面1cに設けられてもよく、さらに両結合面3c,1cに設けられてもよい。
第2実施形態において、油溝57の代わりに、両油路51,52を連通させる油溝58が、図8に二点鎖線で示されるように、シリンダ軸線方向から見て、点火プラグ15と重なるように、かつ劣弧状に設けられてもよい。これにより、油溝58を流通する潤滑油の温度には、燃焼室12の温度に加えて、取付孔68が設けられた点火プラグ15の取付座69(図1参照)の温度が反映される。取付座69の温度は燃焼室12の温度と密接に関連するので、油溝57が短い場合にも、燃焼室12の温度を精度よく検出できる。
本発明の第1実施形態を示し、本発明が適用された空冷式内燃機関の、図2の概略I−I線断面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1の空冷式内燃機関の要部右側面図である。 図3のIV矢視でのシリンダおよびシリンダヘッドの要部の図である。 図4のV矢視図である。 図4のVI−VI線での断面図である。 図4のVII−VII線での断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、図1の内燃機関をシリンダ側から見たときのシリンダヘッドの図である。 (A)は、図8のシリンダヘッドに結合されるヘッドカバーをシリンダヘッド側から見たときのヘッドカバーの要部の図であり、(B)は、(A)のb−b線断面図である。
符号の説明
1…シリンダ、3…シリンダヘッド、20…動弁装置57,58…油溝、59…戻り油路、61,62…油温センサ、65…通路、E…空冷式内燃機関。

Claims (2)

  1. 燃焼室(12)と排気ポート(14)とが設けられたシリンダヘッド(3)と、潤滑油の温度を検出する油温センサ(61)とを備える空冷式内燃機関において、
    前記シリンダヘッド(3)および前記シリンダヘッド(3)と一体化されるシリンダ(1)には、前記シリンダヘッド(3)に設けられた潤滑箇所を潤滑した後の潤滑油が流通する戻り油路(59)が設けられ、前記油温センサ(61)は前記戻り油路(59)の潤滑油の温度を検出し、前記シリンダヘッド(3)には、前記戻り油路(59)において前記油温センサ(61)よりも上流に位置する上流部分(59a)と、前記排気ポート(14)との間に、冷却風通路(65)を構成する断熱空間(65)が設けられ、
    前記断熱空間(65)は、前記冷却風通路(65)の入口部(65a)と出口部(65b)を具備しており、
    前記冷却風通路(65)の入口部(65a)と出口部(65b)は、シリンダヘッド側壁に開放し、冷却ファン(40)の冷却風を前記冷却風通路(65)の入口部(65a)に流すシュラウド(45)を備え、
    前記排気ポート(14)および前記戻り油路(59)は前記冷却風通路(65)の出口部(65b)を挟んで対抗した位置に配置され、
    前記空冷式内燃機関は、頭上カム軸式空冷式内燃機関(E)であり、シリンダ軸線(L2)上に前記冷却風通路(65)とカム軸(22)とが配置され、カム軸方向一端側に前記シリンダヘッド(3)から前記シリンダ(1)を介してクランクケース(2)に連通するチェーン室(19)を備え、
    前記冷却風通路(65)には前記カム軸方向他端側に入口(65a)が設けられると共に、
    前記排気ポート(14)と前記チェーン室(19)を構成する壁との間に連通し、
    前記排気ポート(14)に隣接して出口(65b)が設けられ、前記戻り油路(59)は前記冷却風通路(65)の出口(65b)と前記チェーン室(19)の間に配置されたことを特徴とする空冷式内燃機関。
  2. 前記油温センサ(61)は前記排気ポート(14)の出口(14a)が開口する側で前記シリンダ(1)に取付けられ、
    前記油温センサ(61)の検出部(61b)はカム軸の他端側に、前記油温センサ(61)の接続部(61c)はカム軸の一端側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
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