JP4606155B2 - 壁式鉄筋コンクリート構造物 - Google Patents

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Description

この発明は、柱と梁が無く、壁板と床板とで構成される壁式鉄筋コンクリート構造物の技術分野に属する。
柱と梁が無く、壁板と床板とで構成される壁式鉄筋コンクリート構造物は、種々開示されている(例えば、特許文献1参照)。
一般に、壁式鉄筋コンクリート構造物の壁板と床板との接合部(壁床接合部)は、柱と梁を用いる鉄筋コンクリート造などの構造物の柱梁接合部と比して、その設計寸法が一様に小さい。
そのため、前記壁床接合部を貫通して配筋される床主筋の定着を十分に図ることが困難で、地震力を受けた場合に当該床主筋の端部が壁床接合部から抜け出す虞があり、長期的に所要の大きな耐力を発揮できないという問題があった。また、前記壁床接合部のせん断設計を成立させることが困難で、地震力を受けた場合に壁床接合部にひび割れが多数生じて破壊する虞があり、やはり、長期的に所要の大きな耐力を発揮できないという問題があった。
前記特許文献1に開示された壁式鉄筋コンクリート構造物は、壁板及び床板を施工するために供される鉄筋篭の配筋に工夫を施して構造物全体の強度を高めることにより、前記問題を解決し、長期的に所要の大きな耐力を発揮する壁式鉄筋コンクリート構造物を提案している(特に、請求項1参照)。その他の解決案としては、壁板や床板の板厚を大きくしたり、壁床接合部にハンチを設けたりすることで長期的に所要の大きな耐力を発揮する方法が挙げられる。また、床板のスパンを小さくしたり、構造物の階数を制約して壁床接合部に生じる応力を小さくする方法が挙げられる。
しかしながら、前記特許文献1に係る技術によると、前記問題は解決できるものの、壁床接合部の配筋構造等が非常に複雑になり、施工性が悪く、コストが嵩むという問題がある。また、前記その他の解決案によると、居室空間や建物規模に対する設計の自由度が小さくなるという問題があり、改良の余地が残されている。
ところで、柱と梁を用いる鉄筋コンクリート造などの構造物の技術分野では、従来、応力が集中する柱梁接合部に、梁主筋の近傍位置に添え筋(補強筋)を並列して配筋することにより、当該添え筋に梁主筋の引張力を分担(分散)させて梁主筋の負担が軽減される結果、梁主筋の降伏の進行が防止され、梁主筋の端部の抜け出しを防止できる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、応力が集中する柱梁接合部に、高強度コンクリート等で補強した立方体形状のジョイント部材を設置することにより、当該柱梁接合部の強度及びせん断耐力を向上させる工夫を施した技術が開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。
特開平11−81450号公報 特開平3−262876号公報 特開平6−146476号公報 特開2000−291131号公報
柱と梁が無く、壁板と床板とで構成される壁式鉄筋コンクリート構造物については、応力が集中する壁板と床板との接合部(壁床接合部)に、壁板部分と床板部分に使用するコンクリートとほぼ同等の強度を有するコンクリートを現場で打設しているにすぎず(例えば、特許文献1参照)、上記特許文献3、4に相当するような、当該壁床接合部に使用するコンクリートの強度等に工夫を施した技術は今のところ見当たらない。これに伴い、前記特許文献2に係る柱梁接合部に添え筋を使用する技術は、設計寸法に特に制約を受けない柱梁接合部には実施できるものの、設計寸法が一様に小さい壁式鉄筋コンクリート構造物の壁床接合部には、コンクリート強度が低すぎて適用することはできなかった。
前記問題点を踏まえ、本出願人は、今般、先の特願2004−31923号(出願日:2004年2月9日)に係る壁式鉄筋コンクリート構造物を提案した。この壁式鉄筋コンクリート構造物によれば、応力が集中する壁床接合部に高強度のプレキャストコンクリート部材を設置することにより、地震力を受けた場合でも長期的に所要の大きな耐力を発揮できることは勿論、シンプルな架構形式で施工性と経済性に優れ、居室空間や建物規模に対する設計の自由度を向上させることができるので、非常に有用な技術であると云える。
しかしながら、前記壁床接合部に使用する高強度のプレキャストコンクリート部材は、通常強度のプレキャストコンクリート部材と比して、コンクリート強度が高強度であるが故にコストが嵩む。そこで、コンクリート強度をできるだけ抑えつつ、所謂床主筋の抜け出しを防止することができれば、さらに経済的で有益な技術となることは明らかである。
本発明の目的は、云うならば、先の特許2004−31923号を経済的に改善した技術である。即ち、応力が集中する壁床接合部に補強筋を内蔵した高強度のプレキャストコンクリート部材を設置することにより、地震力を受けた場合でも長期的に所要の大きな耐力を発揮できることは勿論、シンプルな架構形式で施工性に優れ、居室空間や建物規模に対する設計の自由度を向上させることができる、非常に経済的な壁式鉄筋コンクリート構造物を提供することである。
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物は、図1〜図4に示したように、
壁板1と床板2とで構成される壁式鉄筋コンクリート構造物10において、前記壁板1と床板2との接合部に、高強度コンクリートから成るプレキャストコンクリート部材4が設置され、当該プレキャストコンクリート部材4と壁板1及び床板2との一体的結合が行われていること、
前記プレキャストコンクリート部材4は、壁板1厚さの1.5〜4倍の幅を有しており、当該幅方向には、前記プレキャストコンクリート部材4を貫通する床主筋5が所定の長さ突き出して設けられていること、
前記床主筋5とほぼ平行に補強筋6が内蔵され、前記床主筋5に生じる引張力は高強度コンクリートを介して当該補強筋6に伝達させる構成とされていることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、プレキャストコンクリート部材4は、その断面形状が壁板1と床板2との接合部に適合する方形状、十字形状、T字形状に製作されていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、プレキャストコンクリート部材4は、壁板1及び床板2に使用するコンクリートの強度よりも2倍以上の強度を有する高強度コンクリートから成ることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、プレキャストコンクリート部材4は、金属系或いは有機・無機系の短繊維を混入して補強されていることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、プレキャストコンクリート部材4は、奥行き方向に分割された複数個から成り、分割された個々のプレキャストコンクリート部材4…は、隣り合うプレキャストコンクリート部材4、4同士を当接させて設置されていることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、プレキャストコンクリート部材4は、奥行き方向に分割された複数個から成り、分割された個々のプレキャストコンクリート部材4…は、隣り合うプレキャストコンクリート部材4、4同士が緊結されていることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、請求項1〜6のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、壁板1は、床板2に対して一方向にのみ平行な配置に設置されていることを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、請求項1〜7のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物において、床板2は、プレストレスを導入した長スパン床板として構成され、又はトラス筋などの補強材で補強されたプレキャストコンクリートにより長スパン床板として構成されていることを特徴とする。
本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物によれば、壁板1と床板2との接合部(壁床接合部)3に、壁板1及び床板2に使用するコンクリートより高強度のプレキャストコンクリート部材4を設置して実施するので、応力が集中する当該壁床接合部3の強度及びせん断耐力が飛躍的に向上し、以下の効果を奏する。
I)前記プレキャストコンクリート部材4を貫通して配筋される床主筋5の定着を十分に図ることができる。よって、地震力を受けた場合でも、当該床主筋5の端部が壁床接合部3(プレキャストコンクリート部材4)から抜け出す虞はなく、長期的に所要の大きな耐力を発揮できる。
II)前記壁床接合部3のせん断設計を容易に成立させることができる。よって、地震力を受けた場合でも、前記壁床接合部3にひび割れが生じて破壊する虞はなく、長期的に所要の大きな耐力を発揮できる。
III)壁板1や床板2の板厚を大きくして強度を高める必要がなく、壁床接合部3にハンチを設けたり、複雑な配筋を施す必要もない。よってシンプルな架構形式で実施することができ、施工性と経済性に優れている。
IV)床板2のスパンを小さくしたり、構造物10の階数を制約する等して、壁床接合部3に生じる応力を小さくする工夫を施す必要が一切ないし、床板2の長スパン化、構造物の高層化を図ることができる。また、壁板1と直角方向に耐震補強用の壁板を配設する必要がない。よって、居室空間や建物規模に対する設計の自由度を向上させることができる。
V)壁板1及び床板2にはそもそも、壁床接合部3に必要とされるような高強度のコンクリートが必要でないため、壁床接合部3のみに高強度のコンクリートをすることは極めて合理的且つ経済的である。
VI)さらに、本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物によれば、応力が集中する壁床接合部3(プレキャストコンクリート部材4)に、床主筋5とほぼ平行に補強筋6を内蔵して床主筋5に生じる引張力は高強度コンクリート8を介して当該補強筋6に伝達させる構成で実施することにより、当該補強筋6に床主筋5の引張力を分散させて床主筋5の負担が軽減される結果、床主筋5の降伏の進行が防止され、所謂床主筋5の抜け出しを防止できる。よって、先の特願2004−31923号と比して、補強筋6の作用効果により、コンクリート強度をできるだけ抑えて実施できるので、非常に経済的である。
また、プレキャストコンクリート部材4内部の鉄筋量が適度に多く、接合する床板2よりコンクリート強度が高いため、床の塑性ヒンジがプレキャストコンクリート部材4内部へ食い込んで形成される虞は皆無である。よって、当該プレキャストコンクリート部材4が大地震を受けて大きく変形しても、壁床接合部3での床主筋5と補強筋6との間でスムーズに応力(引張力)が行われるので、床主筋3の抜け出しを防止する機能を損なう虞はない。
本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物は、上述した発明の効果を奏するべく、以下のように実施される。
図1と図2は、請求項1に係る壁式鉄筋コンクリート構造物の実施概要を示している。
この壁式鉄筋コンクリート構造物10は、壁板1と床板2とで構成され、前記壁板1と床板2との接合部(以下、壁床接合部という。)3に、高強度コンクリート8から成るプレキャストコンクリート部材4(図2の網線部分)が設置され、当該プレキャストコンクリート部材4と壁板1及び床板2との一体的結合が行われている。前記プレキャストコンクリート部材4は、壁板1厚さの1.5〜4倍の幅を有しており、当該幅方向には、前記プレキャストコンクリート部材4を貫通する床主筋5が所定の長さ突き出して設けられている。また、図3に示したように、前記床主筋5とほぼ平行に補強筋6が内蔵され、前記床主筋5に生じる引張力は高強度コンクリート8を介して当該補強筋6に伝達させる構成とされている(請求項1記載の発明)。
図1に係る壁式鉄筋コンクリート構造物10は、鉛直方向に配設された鉄筋コンクリート壁板1と、水平方向に配設された鉄筋コンクリート床板2とによって構築されたフラットスラブ壁式鉄筋コンクリート構造物10の地上7階建て集合住宅を示している。
前記壁板1は、一例として、縦筋と横筋とで組み立てた壁用鉄筋篭を収容した型枠内に普通強度(20N/mm程度)のコンクリートを打設することにより、200〜400mm程度の比較的薄い幅寸法で実施している。前記床板2は、一例として、主筋と配力筋とで組み立てた床用鉄筋篭を収容した型枠内に普通強度(20N/mm程度)のコンクリートを打設することにより、200〜400mm程度の比較的薄い幅寸法で実施している。
ちなみに、本実施例に係る壁板1及び床板2は、300mmの幅寸法で実施している。本実施例に係るプレキャストコンクリート部材4は、900mmの幅寸法で300mmの高さ寸法の断面形状が方形状で(請求項2記載の発明)、前記壁板1及び床板2と同等(図示例では、12〜14m程度)の奥行き寸法を有する直方体形状で実施している。なお、前記プレキャストコンクリート部材4の幅寸法はこれに限定されず、上記したように、壁板1厚さの1.5〜4倍の範囲であればほぼ同様に実施することができる。
前記プレキャストコンクリート部材4の幅を、壁板1厚さの1.5〜4倍と限定する意義は、プレキャストコンクリート部材4の端部における床主筋5に生じている応力(引張力)を補強筋6にスムーズに伝達するのに必要な長さだからであり、その以上長くすると、高強度コンクリート8で実施するが故に経済的でなく、施工上及び運搬上も煩わしいからである。ちなみに、試験体による実験では、前記プレキャストコンクリート部材4の幅を、壁板1厚さの2〜3倍程度とすると、構造力学的にも経済的にも良好な結果が得られることが分かっている。
図示例に係るプレキャストコンクリート部材4は、施工性を考慮して、その断面形状を方形状(長方形状)に製作して実施しているが、これに限定されず、その断面形状が壁板と床板との接合部に適合することを条件に、十字形状(図5A参照)に製作しても実施できるし、T字形状(図5B参照)に製作しても実施できる(請求項2記載の発明)。
また、前記プレキャストコンクリート部材4は、上記したように、幅B方向に(図2と図3参照)、前記プレキャストコンクリート部材4を貫通する床主筋5が所定の長さ突き出して設けられている。具体的に、前記床主筋5は、図3と図4に特に示したように、上下二段に設けた横筋7、7に沿って、前記プレキャストコンクリート部材4の奥行き方向に所定の間隔(図示例では、180mm程度)で平行に複数本設けて実施されている。ちなみに、前記床主筋5が突き出る長さは、一体的接合する床板2との重ね継手に必要な長さとされ、少なくとも建築基準法に準じた長さで実施される。一例として、本実施例に係る床主筋5の径は25mmで実施しており、床主筋5の突き出し長さは1000mm程度で実施している。
さらに、前記プレキャストコンクリート部材4には、上記したように、前記床主筋5とほぼ平行に補強筋6が内蔵され、前記床主筋5に生じる引張力はその周りの高強度コンクリート8を介して当該補強筋6に伝達させる構成で実施されている。具体的に、前記補強筋6は、直線状の丸形鉄筋や異形鉄筋等が好適に使用され、図3と図4に示したように、上下二段に設けた横筋7、7に沿って、前記プレキャストコンクリート部材4の奥行き方向に所定の間隔(図示例では、180mm程度)で平行に複数本設けて実施されている。
すなわち、図示例に係る床主筋5と補強筋6は、前記横筋7、7に沿って90mm程度の等間隔で交互にほぼ平行に配設されているのである。
上記構成のプレキャストコンクリート部材4は、前記壁板1及び床板2に使用するコンクリートと比して、少なくとも2倍以上の(圧縮)強度を有する高強度コンクリート8で実施する(請求項3記載の発明)。一般に、高強度コンクリート8は、60〜200N/mm程度の強度を有するコンクリートを指すが、本実施例では、補強筋6の働きにより床主筋5に生じる引張力を分散(分担)することができるので、60N/mm程度の強度を有するプレキャストコンクリート部材4でも十分に実施することができる。
また、前記プレキャストコンクリート部材4は、必要に応じて、金属系或いは有機・無機系の短繊維を混入して補強して実施することもできる(請求項4記載の発明)。
本実施例に係るプレキャストコンクリート部材4は勿論、縦方向にも必要な鉄筋(縦筋)を貫通し一体化して実施している(一例として、図6の符号9参照)。また、前記床主筋5や縦筋は、コンクリート打設時に一体化して製造するほか、シース管を打ち込んでおき、現場で前記シース管に挿入してグラウト材を充填し、プレキャストコンクリート部材4と緊結する方法で実施することもできる。なお、床主筋5や縦筋をプレキャストコンクリート部材4に定着させる方法は、これに限定されず、当該部材4の強度に悪影響を及ぼさない手法で定着できる方法であればよい。
したがって、上記構成の壁式鉄筋コンクリート構造物10によれば、壁床接合部3に、壁板1及び床板2に使用するコンクリートより高強度のプレキャストコンクリート部材4を設置して実施するので、応力が集中する当該壁床接合部3の強度及びせん断耐力が飛躍的に向上する。
よって、前記プレキャストコンクリート部材4を貫通して配筋される床主筋5の定着を十分に図ることができ、地震力を受けた場合でも、当該床主筋5の端部が壁床接合部3(プレキャストコンクリート部材4)から抜け出す虞はなく、長期的に所要の大きな耐力を発揮できる。また、前記壁床接合部3のせん断設計を容易に成立させることができ、地震力を受けた場合でも、前記壁床接合部3にひび割れが生じて破壊する虞はなく、長期的に所要の大きな耐力を発揮できる。さらに、前記壁板1や床板2の板厚を大きくして強度を高める必要がなく、壁床接合部3にハンチを設けたり、複雑な配筋を施す必要もない。従って、シンプルな架構形式で実施でき、施工性と経済性に優れている。
さらに、前記プレキャストコンクリート部材4には、前記床主筋5に生じる引張力が高強度コンクリート8を介して補強筋6に伝達できる構成で実施しているので、当該補強筋6に床主筋5の引張力を分散させて床主筋5の負担が軽減される結果、床主筋5の降伏の進行が防止され、所謂床主筋5の抜け出しを確実に防止できる。これにより、先の特願2004−31923号に係る技術では、所謂床鉄筋5の抜け出し防止のために、100N/mm程度必要であったコンクリート強度を、本実施例に係る技術では、60N/mm程度のコンクリート強度で実現することができ(約40%減)、非常に経済的である。
また、プレキャストコンクリート部材4内部の鉄筋量が適度に多く、接合する床板2よりコンクリート強度が高いため、床の塑性ヒンジがプレキャストコンクリート部材4内部へ食い込んで形成される虞は皆無である。よって、当該プレキャストコンクリート部材4が大地震を受けて大きく変形しても、壁床接合部3での床主筋5と補強筋6との間でスムーズに応力(引張力)が行われるので、床主筋3の抜け出しを防止する機能を損なう虞はない。
副次的効果としては、床板2のスパンを小さくしたり、構造物10の階数を制約する等して壁床接合部3に生じる応力を小さくする工夫を施す必要が一切ないし、床板2の長スパン化、構造物の高層化を図ることができる。また、壁板1と直角方向に耐震補強用の壁板を配設する必要がなく、前記壁板1は、床板2に対して一方向にのみ平行な配置に設置して実施できる(請求項7記載の発明)。よって、居室空間や建物規模に対する設計の自由度を向上させることができる。
ところで、前記プレキャストコンクリート部材4に必要な奥行き長さは、一般的な集合住宅に適用する場合は、上記したように、12〜14m程度で実施されるのが通常である。そうすると、前記プレキャストコンクリート部材4を奥行き全長に亘って一本物として製造することは運搬上の問題からも難しく、一般的には2〜3m程度の長さで工場製作し、現場サイトへ搬入するのが最も合理的である。
そこで、本実施例に係るプレキャストコンクリート部材4は、図示は省略するが、奥行き方向に分割された複数個から成り、当該分割された個々のプレキャストコンクリート部材4は、2〜3m程度の長さを有し、隣り合うプレキャストコンクリート部材同士を当接(面タッチ)させて実施している(請求項5記載の発明)。前記個々のプレキャストコンクリート部材4…は、壁板1及び床板2によって一体的結合(緊結)されているので、当該個々のプレキャストコンクリート部材4同士を必ずしも緊結して実施する必要はないからである。勿論、高い耐震性能や品質を望む場合には、個々のプレキャストコンクリート部材4…同士を奥行き方向に緊結して実施することもできる(請求項6記載の発明)。当該緊結方法としては、例えば、奥行き方向に2〜3m程度の長さを有する個々のプレキャストコンクリート部材4に予め、バランス良く配置した横筋7…を奥行き方向に突き出して設けておき、対応する個々の横筋7の端部同士を溶接等の接合手段で緊結する。しかる後、前記プレキャストコンクリート部材4、4の隙間部分(接合部分)に高強度コンクリート8を充填して実施するのである。
なお、図示は省略するが、前記床板2の長スパン化を図るにあたり、安全・確実に実施するべく、当該床板2にPC鋼材を配設する等してプレストレスを導入して長スパン床板として構成して実施することもできるし、トラス筋などの補強材で補強されたプレキャストコンクリートにより長スパン床板として構成して実施することもできる(請求項8記載の発明)。
以上に実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、前記床主筋5及び補強筋6の形状は、直線状に限定されない。図6に示したように、壁式鉄筋コンクリート構造物10の外端部分(図1のY部分参照)では、ともにU字形状で実施することもできる。その他、プレキャストコンクリート部材4を設置する部位に応じて、90度折り曲げた形状で実施することもできるし、端部機械式定着工法など、床主筋5及び補強筋6をプレキャストコンクリート部材4に確実に定着できる方法であればよい。ちなみに、図6の符号9は、縦筋を示している。
また、前記壁式鉄筋コンクリート構造物10について、全ての壁床接合部3に同等強度のプレキャストコンクリート部材4を設置する必要はない。前記壁板1及び床板2に生じる外力による部材応力は均一ではなく、下層階の壁板1及び床板2ほど大きく、上層階の壁板1及び床板2ほど小さい。よって、各階層及び設置部位に応じて最低限要求される構造設計を満たす強度のプレキャストコンクリート部材4を設置すればよい。
さらに、壁式鉄筋コンクリート構造物10の床板2のスパンは、図1に示したように、同等の間隔で実施しているが、これに限定されない。壁床接合部3に設置するプレキャストコンクリート部材4の強度を調整することで当該壁床接合部3のせん断(断面)設計が容易にできるので、図7A〜Dに示したように、短スパンと長スパンを組み合わせたバリエーションに富む壁式鉄筋コンクリート構造物10を実現することができる。
本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物の架構形式を概略的に示した斜視図である。 図1の符号X部分を拡大して示した正面図である。 本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物に使用するプレキャストコンクリート部材の一部を示した平面図である。 本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物に使用するプレキャストコンクリート部材の一部を示した側面図である。 壁式鉄筋コンクリート構造物の外端部分に適用するプレキャストコンクリート部材4を概略的に示した立面図である。 A、Bはそれぞれ、本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物に使用するプレキャストコンクリート部材のバリエーションを示した正面図である。 A〜Dはそれぞれ、本発明に係る壁式鉄筋コンクリート構造物のバリエーションを示した概略図である。
符号の説明
1 壁板
2 床板
3 壁床接合部
4 プレキャストコンクリート部材
5 床主筋
6 補強筋
7 横筋
8 高強度コンクリート
9 縦筋
10 壁式鉄筋コンクリート構造物

Claims (8)

  1. 壁板と床板とで構成される壁式鉄筋コンクリート構造物において、前記壁板と床板との接合部に、高強度コンクリートから成るプレキャストコンクリート部材が設置され、当該プレキャストコンクリート部材と壁板及び床板との一体的結合が行われていること、
    前記プレキャストコンクリート部材は、壁板厚さの1.5〜4倍の幅を有しており、当該幅方向には、前記プレキャストコンクリート部材を貫通する床主筋が所定の長さ突き出して設けられていること、
    前記床主筋とほぼ平行に補強筋が内蔵され、前記床主筋に生じる引張力は高強度コンクリートを介して当該補強筋に伝達させる構成とされていることを特徴とする、壁式鉄筋コンクリート構造物。
  2. プレキャストコンクリート部材は、その断面形状が壁板と床板との接合部に適合する方形状、十字形状、T字形状に製作されていることを特徴とする、請求項1に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
  3. プレキャストコンクリート部材は、壁板及び床板に使用するコンクリートの強度よりも2倍以上の強度を有する高強度コンクリートから成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
  4. プレキャストコンクリート部材は、金属系或いは有機・無機系の短繊維を混入して補強されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
  5. プレキャストコンクリート部材は、奥行き方向に分割された複数個から成り、分割された個々のプレキャストコンクリート部材は、隣り合うプレキャストコンクリート部材同士を当接させて設置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
  6. プレキャストコンクリート部材は、奥行き方向に分割された複数個から成り、分割された個々のプレキャストコンクリート部材は、隣り合うプレキャストコンクリート部材同士が緊結されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
  7. 壁板は、床板に対して一方向にのみ平行な配置に設置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
  8. 床板は、プレストレスを導入した長スパン床板として構成され、又はトラス筋などの補強材で補強されたプレキャストコンクリートにより長スパン床板として構成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載した壁式鉄筋コンクリート構造物。
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