JP4604357B2 - 補修コスト計算システム、補修コスト計算システムをコンピュータにより実現するためのプログラム、およびこのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、補修コスト計算システムに係り、特に、評価対象物の欠陥の大きさを考慮した補修コストを計算するうえで好適な補修コスト計算システムに関する。本発明は、また、このような補修コスト計算システムをコンピュータにより実現するためのプログラムおよびこのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体にも関する。
【0002】
【従来の技術】
各種構造物は、建築後の経年変化による劣化が避けられない。例えばコンクリート構造物の場合、塩害、コンクリートの中性化、化学的腐食環境等の要因により、ひび割れや剥離等の欠陥が発生して劣化する。そして、このような欠陥が一定の許容限度を超えた場合には補修工事を行わねばならず、その際、補修コストを見積もることが必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、このような補修コストの見積りは、構造物の欠陥箇所をスケッチしたうえで、そのスケッチ図面を見ながら欠陥の個数および各欠陥の大きさを計測し、これに基づいて求めた補修数量から補修コストを計算することにより行われていた。しかし、図面を見ながら手作業で各欠陥の大きさを計測することは大きな時間と労力を必要とし、効率が悪い。また、補修は所定の基準値を超える大きさの欠陥についてのみ行うことになるが、その基準値を変化させながら補修コストを計算することは特に時間と労力が問題となる。さらに、欠陥の大きさを人間が計測するので、計測者による個人差によって客観的な補修コストの計算が困難になる。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、構造物等に生じた欠陥を補修するためのコストの計算を、簡便かつ正確に行うことが可能な補修コスト計算システム、補修コスト計算システムをコンピュータにより実現するためのプログラム、および、このプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、評価対象物の補修コストを計算するシステムであって、前記評価対象物の観察画像を表す画像データから、前記評価対象物が有する各欠陥の大きさに関する情報を含む欠陥データを抽出する欠陥抽出手段と、欠陥の補修数量と補修コストとの対応関係に関するデータを記憶する記憶手段と、補修の対象となる欠陥の大きさに関する基準値の入力を受け付ける入力手段と、欠陥の大きさが前記入力を受け付けた基準値以上である前記抽出した欠陥データに基づいて各欠陥の大きさに応じた補修数量を計算し、該補修数量から前記記憶手段を参照して前記評価対象物が有する欠陥を補修するための補修コストを計算する補修コスト計算手段と、該計算した補修コストを出力するコスト出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、欠陥抽出手段により、評価対象物の観察画像を表す画像データから各欠陥の大きさに関する情報を含む欠陥データを抽出し、補修コスト計算手段によりこの欠陥データに基づいて補修コストを計算するので、簡便かつ正確に補修コストを求めることができる。
【0008】
なお、請求項に記載された発明は請求項1記載の補修コスト計算システムをコンピュータにより実現するためのプログラムに係るものであり、また、請求項に記載された発明は、このプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に係るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態であるシステムのハードウェア構成を示す図である。また、図2は、本実施形態のシステムの概念的な構成を示す図である。図1に示す如く、本実施形態のシステムは、カメラ12とコンピュータ14とにより構成されている。コンピュータ14はハードディスク装置等の記憶装置14aを備えており、この記憶装置14aに記録された所定の処理プログラムを読み出して実行することにより図2に示す画像処理部20および補修コスト計算部22が実現され、また、補修コストデータベース26は記憶装置14a内に構築される。
【0010】
コンピュータ14は、さらに、半導体メモリ、フロッピーディスク、CD−ROM、DVD−ROM等の可搬記憶媒体16のドライブ装置12bを備えている。そして、上記処理プログラムは記録媒体16からドライブ装置12bを介して記憶装置14aへインストールされる。ただし、コンピュータ14をインターネット等のコンピュータネットワークに接続し、このネットワーク経由で処理プログラム14をダウンロードしてインストールすることとしてもよい。
【0011】
カメラ12は、評価対象物(例えばコンクリート構造物)30の表面を撮影し、それにより得られた画像データをコンピュータ14へ送出する。
【0012】
図3は、カメラ12による撮影画像の一例を示す。図3に示す撮影画像では、構造物30の表面上に存在する欠陥A1〜A6が表れている。画像処理部20は、このような撮影画像データについて、画像強調などの適宜な前処理を行ったうえで、パターン抽出等の公知の処理手法により、画像内に存在する欠陥の個数、並びに、各欠陥の種類および大きさを検出する。なお、本実施形態では、画像処理部20を処理プログラムによりソフトウェア的に実現するものとしているが、これに限らず、画像処理部20を画像処理専用のハードウェア装置により構成してもよい。
【0013】
図4は、図3に示す画像についての画像処理部20による欠陥の検出結果を示す図である。図4に示す如く、欠陥A1〜A6が検出され、各欠陥について種類(本例ではひび割れまたは剥離)および大きさ(ひび割れについては長さ、剥離については面積)が検出される。
【0014】
図4に示すような画像処理部20による欠陥の検出結果(具体的には、欠陥の個数、各欠陥の種類、ひび割れ長さまたは剥離面積)は、コスト計算部22に引き渡される。コスト計算部22は、補修コストデータベース26を参照し、画像処理部20から引き渡された欠陥の検出結果に基づいて、補修コストを計算する。
【0015】
図5は、補修コストデータベース26に記録されたデータの内容の一例を示す。図5に示す如く、補修コストデータベース26には、各種の補修工法(例えば、断面修復、表面塗装、脱塩)について補修コストの単価(単位数量の補修に必要なコスト)が記録されている。
【0016】
以下、図6を参照して、コスト計算部22における補修コスト計算処理の内容について説明する。図6は、コスト計算部22におけるコスト計算処理の内容を表すフローチャートである。
【0017】
図6に示す如く、先ずステップ100において、欠陥の補修を行うべきか否かの判断基準となるひび割れ長さおよび剥離面積についての基準値L0およびS0が入力される。
【0018】
次にステップ102において、欠陥を特定するためのインデックスiが1に初期化されると共に、積算ひび割れ長さALおよび積算剥離面積ASが夫々0に初期化される。
【0019】
ステップ104では、欠陥Aiがひび割れであるか、剥離であるかが判別される。その結果、欠陥Aiがひび割れであれば、ステップ106においてその長さLiが基準値L0以上であるか否かが判別される。そして、Li≧L0が成立する場合は、ステップ108において、積算ひび割れ長さALにLiが加算される。一方、欠陥Aiが剥離である場合には、ステップ110においてその面積Siが所定値S0以上であるか否かが判別される。そして、Si≧S0が成立する場合には、ステップ112において、積算剥離面積ASにSiが加算される。ステップ108,112の処理が終了するとステップ114へ進む。一方、ステップ106においてLi≧L0が不成立であり、または、ステップ110においてSi≧S0が不成立である場合は、欠陥Aiについての修復は不要であると判断され、直ちにステップ114へ進む。
【0020】
ステップ114では、インデックスiがインクリメントされ、続くステップ116では、インデックスiが欠陥の個数Nを超えたか否かが判別される。その結果、i>Nが不成立であれば、上記ステップ104へ戻る。一方、i>Nが成立する場合は、修復すべき全ての欠陥についてひび割れ長さおよび剥離面積の積算が完了したこととなる。この場合、次にステップ118において、積算ひび割れ長さALおよび積算剥離面積ASから、補修数量Vが計算される。具体的には、例えば、適宜な係数a,bを用いて、V=a・AL+b・ASにより補修数量Vが計算される。
【0021】
次に、ステップ120において、補修コストデータベース26を参照して、各補修工法について、補修コスト単価に補修数量Vを乗ずることにより、補修コストが計算される。そして、ステップ122において、計算された補修工法ごとの補修コストが出力部24(例えばディスプレイ画面やプリンタ)に出力されて、コスト計算部による処理が終了する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のシステムでは、カメラ12により評価対象である構造物30の観察画像を入力するだけで、補修コストが自動計算されて出力される。このため、僅かな時間と労力だけで補修コストの見積り計算を行うことができる。
【0023】
また、補修すべきか否かの判断基準となる欠陥の大きさ(すなわち、ひび割れ長さについての基準値L0および剥離面積についての基準値S0)を自由に設定できるので、この基準値を変化させながら補修コストの見積り計算を行うことが可能となる。すなわち、補修コストを勘案しながら、どの位のレベルの欠陥まで補修するかを決定できるので、経済的な補修計画を立てることが可能となる。そして、欠陥の大きさの検出、および、欠陥の大きさと基準値との比較はコンピュータにより行われるため、調査員が人手で判断する場合のように個人差が生ずる余地はなく、客観的で正確な補修コスト計算を行うことができる。
【0024】
さらに、評価対象である構造物の画像をカメラ12で撮影するので、評価対象箇所が高所や水上部である場合にも、作業用設備を必要とすることなくかつ安全に、構造物の欠陥を検出して、補修コストを計算することができる。ただし、構造物の評価対象箇所を人間が観察することが容易な場合は、カメラ12による撮像に代えて、評価対象箇所の欠陥を人手でスケッチしてそのスケッチ図面を例えばスキャナー等の画像入力手段によりコンピュータ14へ入力することとしてもよい。
【0025】
なお、欠陥の大きさが基準値L0またはS0以上となって補修すべきと判断された欠陥を、カメラ12から入力された画像データに重ね合わせた図面を出力するようにしてもよい。このような図面は、補修箇所が明示されることになるので、補修の施工計画図や今後の維持管理用図面として活用することができる。
【0026】
また、上記実施形態では、ひび割れの大きさとして、ひび割れ長さを用いるものとしたが、これに限らず、例えば、ひび割れの幅を考慮するようにしてもよい。その場合、画像処理部20によりひび割れ幅を検出することが困難であれば、評価対象物の調査により得られた値を補修コスト計算部22へ入力するようにしてもよい。同様に、評価対象物の調査によりひび割れや剥離の深さについてのデータが得られる場合には、そのようなデータも補修コスト計算部22へ入力して、補修コストの計算において欠陥の深さを考慮するようにしてもよい。そして、ひび割れ幅や、ひび割れ・剥離の深さについても基準値を設け、例えば、ひび割れ幅が0.2mm以上のひび割れについてのみ補修を行うといった条件を付することで、より緻密な補修コストの計算を行うことができる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、欠陥抽出手段により、評価対象物の観察画像を表す画像データから各欠陥の大きさに関する情報を含む欠陥データを抽出し、補修コスト計算手段によりこの欠陥データに基づいて補修コストを計算するので、簡便かつ正確に補修コストを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるシステムのハードウェア構成を示す図である。
【図2】本システムの概念的な構成を示す図である。
【図3】カメラ12による撮影画像の一例を示す図である。
【図4】図3に示す撮影画像についての画像処理部による欠陥の検出結果を示す図である。
【図5】補修コストデータベースに記録されたデータの内容の一例を示す図である。
【図6】コスト計算部におけるコスト計算処理の内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
12 カメラ
14 コンピュータ
16 記録媒体
20 画像処理部
22 補修コスト計算部
24 出力部
26 補修コストデータベース
30 評価対象物(コンクリート構造物)

Claims (3)

  1. 評価対象物の補修コストを計算するシステムであって、
    前記評価対象物の観察画像を表す画像データから、前記評価対象物が有する各欠陥の大きさに関する情報を含む欠陥データを抽出する欠陥抽出手段と、
    欠陥の補修数量と補修コストとの対応関係に関するデータを記憶する記憶手段と、
    補修の対象となる欠陥の大きさに関する基準値の入力を受け付ける入力手段と、
    欠陥の大きさが前記入力を受け付けた基準値以上である前記抽出した欠陥データに基づいて各欠陥の大きさに応じた補修数量を計算し、該補修数量から前記記憶手段を参照して前記評価対象物が有する欠陥を補修するための補修コストを計算する補修コスト計算手段と、
    該計算した補修コストを出力するコスト出力手段と、
    を備えることを特徴とする補修コスト計算システム。
  2. 評価対象物の補修コストを計算するシステムをコンピュータにより実現するためのプログラムであって、欠陥の補修数量と補修コストとの対応関係に関するデータを記憶する記憶手段を参照可能なコンピュータに、
    評価対象物の観察画像を表す画像データから抽出された、前記評価対象物が有する各欠陥の大きさに関する情報を含む欠陥データを取得するステップと、
    補修の対象となる欠陥の大きさに関する基準値の入力を受け付けるステップと、
    欠陥の大きさが前記入力を受け付けた基準値以上である前記取得した欠陥データに基づいて各欠陥の大きさに応じた補修数量を計算し該補修数量から前記記憶手段を参照して、前記評価対象物が有する欠陥を補修するための補修コストを計算するステップと、
    該計算した補修コストを出力するステップと、
    をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
  3. 請求項記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
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