JP4603841B2 - 耐酸化性を有するタングステン合金とその製造方法 - Google Patents

耐酸化性を有するタングステン合金とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特定組成のタングステン−クロム−硼化物の合金とすることにより得られ、高温の大気雰囲気で材料が酸化され消耗・劣化が問題となる、例えば、高温炉等に使用されるヒーター,ブロック,丸棒,線,板,パイプ,ボルトおよびナット等の高温構造部材に用いられる耐酸化性を有する高融点金属合金およびその製造方法に関する。
タングステン(W)は、金属材料中で最も高融点(3380℃)で、且つ良好な機械的特性を兼ね備えるため、例えば高温炉のヒーターや放電灯の電極等、各方面で使用されている。
しかしながら、タングステンは酸素との親和力が大きく、酸化し易いという欠点がある。例えば、タングステンは400℃以上の大気雰囲気で酸化反応が急激に起きる。そのためタングステンを使用する際は使用雰囲気の制限を受け、高温の大気雰囲気では本来のタングステン材料が有する特性を活かすことが出来ず、実用性の面で制約のある材料となっている。
上述した酸化し易いという欠点は、タングステンの本質的性質であり、タングステン単体ではこれを防止することは不可能である。
そこで、従来においては、タングステンの耐酸化性を向上させたタングステン合金が種々提案されている。
例えば、非特許文献1にはタングステンに耐酸化性向上に効果のあるクロム(Cr)を添加し、W−5〜30質量%Cr合金を作製している。得られた合金を3×3×7mmの試験片に切り出し、最大温度1200℃の大気中で耐酸化性の評価を行っている。その評価結果としてW−20質量%Cr合金が酸化による消耗減量が少なく、耐酸化性に優れた合金であることが報告されている。
また特許文献1にはタングステンに耐酸化性に効果のあるクロムを15〜35質量%、さらに耐酸化性を強化するシリコンあるいはアルミニウムを1〜10質量%の添加により、タングステンの耐酸化性を向上させる技術が開示されている。
また、本発明者らは特許文献2において、クロムを10〜30質量%、イットリウム酸化物,ランタン酸化物あるいはセリウム酸化物のうち一種以上をl〜l0質量%、残部がタングステンおよび不可避不純物分からなる耐酸化性を有する酸化物分散型タングステン合金材料について提案している。
さらに、本発明者らは特許文献3において、クロムを5〜30質量%、及び白金族元素であるルテニウム,ロジウム,イリジウム,あるいは白金のうちの少なくとも一種を1〜20質量%含み、残部がタングステンおよび不可避不純物分から成る耐酸化性を有するタングステン合金材料について提案している。
しかしながら、前述した非特許文献1のタングステン−クロム合金の場合、図3に示したタングステン−クロム平衡状態図(非特許文献2、参照)によれば、高温では全率固溶し単相の合金を形成するが、図3中に(α+α)と記載されている半円内部の組成および温度では単相の合金であっても相の分離を引き起こすとされる。
例えば、W−22質量%Cr組成の場合、1677℃を超えて加熱すれば単相の合金になるが、1677℃以下の加熱ではタングステンに富んだ相(α)とクロムに富んだ相(α)の二相の合金になることを示している。また1677℃を超えた加熱で単相の合金を作製したとしても前記単相合金を1677℃以下、例えば1500℃で使用するとタングステンに富んだ相(α)とクロムに富んだ相(α)に分離してしまうことを示している。相分離した合金のうちクロムに富んだ相は酸素の合金内部への拡散を防止するクロム酸化物の皮膜を形成するが、タングステンに富んだ相はクロムの酸化物だけでなく、タングステンの酸化物も容易に形成する。このように分離した相ごとに異なる酸化のメカニズムを持つため、長時間使用する程、形成した酸化皮膜の均質性は失われ、酸化消耗が激しくなるという問題がある。
相の分離を引き起こす組成・温度域については、前述したとおり図3中の半円内部となるのだが、低温側は実線ではなく点線で示されている。これは低温側の相分離温度が不明確であることを示している。したがって、単相のタングステン−クロム合金が相分離し始める温度を把握する必要がある。
図4は、これを検証するために本発明者等が単相のW−30質量%Cr合金を作製し、そのW−30質量%Cr合金を真空中,400℃〜1000℃で1時間加熱処理をした合金のX線回折図形をタングステンとクロムの混合粉末のX線回折図形と併せて示したものである。図4内の(a)が示すようにタングステンとクロムの混合粉末ではタングステンおよびクロムは夫々の単独ピークとして存在しているが、焼結すると図4内の(b)が示すようにクロムのタングステンへの固溶によりクロムのピークは消失し、タングステンのピークが高角度側へシフトした。図4内の(b)〜(e)が示すように、W−30質量%Cr合金および800℃までの加熱処理までは単相を保持し、相分離は起きていないが、図4内の(f)に示すように1000℃で加熱処理を行うと、相分離が始まり、単相からタングステンに富んだ相とクロムに富んだ相の二相に分離した。
また、特許文献1においては、添加元素のうちシリコンおよびアルミニウムの融点はそれぞれ1427℃,660℃とタングステン(3380℃)やクロム(1890℃)に比べると低い。またシリコンやアルミニウムはタングステンと多くの組成域で金属間化合物を生成し易い元素である。したがって生成される金属間化合物の融点も低くなり、タングステンの本来の高融点の特徴を活かすことができないという問題がある。
また、特許文献1から3の組成においても、前述した非特許文献1と同程度量のクロムを含有しているため、非特許文献1について述べた上記相分離が起こり得ると言える。そのため相分離が起こる温度域で長時間使用すると、酸化消耗が激しくなるという問題がある。
伊藤 普,古沢 勝:粉体および粉末冶金,第16巻第3号,pp.145〜149 B.Massalski, Binary Alloy Phase Diagrams 特開昭61‐26748号公報 特開2004−115845号公報 特開2004−169148号公報
従って、本発明の技術的課題は、タングステン−クロム合金が高温加熱、例えば、1000℃以上により相分離が生じても、合金に形成した酸化皮膜が長時間に亘り均質を維持し、タングステン本来の特徴を活かした耐酸化性を有するタングステン合金およびその製造方法を提供することにある。
前述のとおり、タングステンにクロムを添加することでタングステンに耐酸化性を付与することができるが、本発明者等は上記課題に対し、種々の実験の結果、従来のタングステン−クロム組成に硼化物を添加した合金を作製することにより、高温の大気雰囲気でCrの酸化皮膜を形成させ、前記酸化皮膜が長時間維持できることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明によれば、10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB,VB,LaB,MoB,TiB,WB,NbB,TaB,ZrB,HfBの内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含む合金からなることを特徴とするタングステン合金が得られる。
また、本発明によれば、10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB ,VB ,LaB ,MoB,TiB ,WB,NbB ,TaB ,ZrB ,HfB の内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含む合金からなるタングステン合金を製造する方法であって、タングステンとクロムと前記少なくとも一種の硼化物を混合する工程と、0.5質量%以上5質量%以下の有機バインダーを混合する工程と、成形する工程と、脱脂する工程および1700℃以上で焼結する工程とを備えていることを特徴とするタングステン合金の製造方法が得られる。
ここで、本発明において、前記タングステン合金の密度は理論密度に対して90%以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB ,VB ,LaB ,MoB,TiB ,WB,NbB ,TaB ,ZrB ,HfB の内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含む合金からなり、前記合金は、三酸化二クロム(Cr )のみの酸化皮膜を有することを特徴とする耐酸化性を有するタングステン合金が得られる。
ここで、本発明において、タングステン合金は理論密度の90%以上の密度を有することが好ましい。
また、本発明によれば、10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB ,VB ,LaB ,MoB,TiB ,WB,NbB ,TaB ,ZrB ,HfB の内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含み、且つ表面に三酸化二クロム(Cr )のみの酸化皮膜を有する合金からなる耐酸化性を有するタングステン合金を製造する方法であって、タングステンとクロムと前記少なくとも一種の硼化物を混合する工程と、0.5質量%以上5質量%以下の有機バインダーを混合する工程と、成形する工程と、脱脂する工程および1700℃以上で焼結する工程とを備え、更に、前記焼結する工程の後に、三酸化二クロム(Cr )のみの酸化皮膜を、高温の大気雰囲気で形成する工程を含むことを特徴とする耐酸化性を有するタングステン合金の製造方法が得られる。
本発明においては、タングステン−クロム合金が高温加熱により生じる相分離が引き起こす酸化皮膜の不均質を硼化物と合金化することにより抑制し、タングステン本来の高融点の特徴を活かした耐酸化性を有するタングステン合金およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明では、10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と1質量%以上5質量%以下の硼化物および残部が実質的にタングステン(W)からなる合金であって、前記合金を酸化する条件で使用する際に、合金内部への酸素の拡散を防ぐ三酸化クロム(Cr)の酸化皮膜のみを形成せしめ、合金中のタングステンの酸化を防止することを特徴とする耐酸化性を有するタングステン合金を提供するものである。
ここで、本発明の耐酸化性を有するタングステン合金において、前記酸化皮膜は、厚み1μm以上の三酸化クロム(Cr)であることが好ましい。
また、本発明の耐酸化性を有するタングステン合金を製造するには、タングステンとクロムと硼化物を混合し、0.5質量%以上5質量%以下の有機バインダーを混合、成形、脱脂した後、1700℃以上で焼結する。ここで製造されたタングステン合金は、理論密度に対して90%以上の密度を有する耐酸化性を有するタングステン合金である。
このように、本発明のタングステン合金において、タングステンとクロムと硼化物を乾式で混合した後、有機バインダー混合、成形、脱脂の各工程を経て、理論密度に対して90%以上の密度を有するタングステン合金に焼結することによって、高温の大気雰囲気で前記合金にCrの酸化皮膜のみを形成せしめて合金内部への酸素の拡散を防ぐ作用を有する。
次に、本発明の原理について詳細に説明する。
本発明では、タングステンの高融点の特徴を損なうことなく、高温の大気雰囲気で使用可能な耐酸化性の有するタングステン合金の開発を目指した。この目的を達成するためにはクロムと硼化物が合金中に均一に存在する必要があり、タングステン、クロムおよび硼化物の各粉末を特定組成に秤量したものを乾式混合、好ましくは非酸化雰囲気でのボールミルで混合し、タングステン、クロムおよび硼化物の混合粉末を得る。
ここで、本発明において、クロムの添加量は合金が高温の大気中で合金内部への拡散防止に有効なCrの酸化皮膜を効率的に形成するためのもので、そのためには10質量%未満では不十分で、30質量%を超えるとタングステンの特徴の高融点が損なわれることから、10質量%以上30質量%以下とした。
また、本発明において、硼化物は高温の大気雰囲気でCrの酸化皮膜のみを効率的に形成させるためのもので、そのためには1質量%未満では効果を示さず、5質量%を超えると合金の密度が相対密度に対して90%以上にならないことから1質量%以上5質量%以下とした。また、タングステン本来の高融点を損なわないために、硼化物の融点は2000℃を下回らないようにし、且つ市販されている、CrB,VB,LaB,MoB,TiB,WB,NbB,TaB,ZrB,HfBを用いた。
また、上述したタングステン,クロムおよび硼化物の混合粉末のみでは成形性が悪く、この混合粉末に有機バインダーとしてパラフィンを2質量%混合してプレス成形を行なった。
ここで、有機バインダーは、パラフィンに限定されず、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール、樟脳などを用いても良い。
また、有機バインダーの量は0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。0.5質量%未満では成形性の向上が得られず、また5質量%を超えると得られる合金の密度が理論密度に対して90%以上にならないことが、テストによって判明したためである。より好ましくは1質量%以上3質量%以下である。
また、脱脂条件は水素中で上記の有機バインダーが完全除去できる400℃〜1000℃の条件で、しかも混合粉末プレス体が形状崩れしないよう適度な強度を付与するために上記温度範囲内で調整した。
本発明において、混合粉末プレス体の焼結は理論密度に対して90%以上の密度が得られる1700℃以上とした。尚、理論密度に対して90%以上密度を有する前述のタングステン合金でも、更に高密度にして完璧な耐酸化性を得るために、1000℃以上に加熱して鍛造加工、圧延加工、孔圧延加工、転打加工などの工程も付与できる。
それでは、本発明の実施の形態によるタングステン合金材料の作製方法と、合金評価方法の具体例を述べる。
本発明の実施の形態によるタングステン合金材料は、粉末冶金法に拠り作製される。比較的入手し易い平均粒径2μmのタングステン,平均粒径2μmのクロムおよび硼化物粉末を原料として、下記表1に記載した本発明品No.1〜12になるように秤量し、アルゴン雰囲気中にて20時間乾式のボールミル混合することによって混合粉末を得た。
本発明に用いた硼化物は、それぞれ粒径は異なるものの、粗すぎると目標の密度が得られなくなるため、5μm以下の粒径の硼化物を使用した。
得られたタングステン−クロム−硼化物の混合粉末に有機バインダーとしてパラフィンを2質量%加え、0.294GPa(3ton/cm)でプレス成形し、直径32mm,高さ15mmの円柱状の混合粉末プレス体(圧粉体)を得た。
成形方法については、一軸プレスや等方圧プレス等種々あるが、どの方法を用いても理論密度に対して90%以上の密度を有するタングステン合金が得られるので、成形方法については限定されない。
次いで圧粉体を前述の温度範囲の条件で脱脂した後、1700℃で10時間焼結した。ここで、クロム量が30質量%を超えると、下記表1の比較品No.16および17に示すように、密度は理論密度に対して84〜86%であった。本発明のクロム量が10質量%以上30質量%以下で作製した合金の密度は、表1の本発明品No.1〜12に示すように、すべて理論密度に対して90%以上であった。
焼結して得られた本発明品をX線回折測定を行ったところ、タングステン中にクロムが固溶したことにより得られた単相のタングステン合金のピークと添加した硼化物のピークが検出された。
上記で得られたタングステン合金から直径5mm、高さ1mmの試験片を切り出し、耐酸化性を評価するために以下の試験を行った。
試験内容としては、1200℃に温度保持された大気炉の中に本発明品あるいは比較品を投入し、一時間加熱保持した後に大気炉から取り出し、室温の大気中で自然冷却した(以下、前記試験を加熱冷却試験と呼ぶ)。
加熱冷却試験温度を1200℃としたのは、従来技術が1200℃で評価をしているためであり、同温度で評価をすることにより、従来技術との耐酸化性の優位性が確認できると考えたためである。
冷却後に得られた試験片はX線回折測定により形成した酸化皮膜の同定評価を行った。
その後、超音波洗浄機を用いて合金部との密着性が悪い酸化皮膜など除去できる分は除去し、(試験後の重量)/(試験前の重量)を計算することで試験片残存率を算出した。
前記加熱冷却試験を計20回繰り返した。加熱冷却試験は、加熱と冷却を行うことにより、合金および酸化皮膜に体積膨張および収縮を起こさせ、酸化皮膜が剥離しやすい状況を作り出すことにより、比較的短時間で耐酸化性の評価を行えるものである。
また、X線回折測定により、酸化皮膜の同定を行うことによって、酸化皮膜の均質性を調べた。
また、20回の加熱冷却試験後の試験片について、形成した酸化皮膜の厚さを測定するために、試験片を樹脂埋めし、研磨により断面を観察できるようにして測定した。
また、加熱冷却試験前および20回の加熱冷却試験後の試験片について、残存した合金部のX線回折測定を行い、タングステン−クロム合金相の数を測定し、相分離の状態を確認した。
下記表1に、本発明品の加熱冷却試験における各試験回数ごとの、酸化皮膜の同定結果、試験片残存率および試験前後の合金部のタングステン−クロム合金相の数を比較品と併せて示す。
加熱冷却試験1回目では、本発明品だけでなく、10質量%以上のクロムを含んでいれば比較品でも合金表面にCrを形成していた。試験片残存率としては酸化皮膜形成分の重量増加により100%を超える試料もあったが、全体的に高い耐酸化性を示した。
しかし、2回目以降からは比較品は表面にCrの他にCrとWOが反応したことにより生成したと思われるCrWOも存在し、且つ酸化皮膜の剥離が生じて試料残存率が低下していった。それに対し、本発明品はいずれの硼化物を添加した合金でも試験終了の20回目までCrのみの酸化皮膜を維持し、重量減少は殆どみられなかった。
図1は加熱冷却試験後の試験片表面をX線回折測定を行った結果である。得られた夫々のピークから酸化皮膜の同定を行ったところ、図1(a)に示す比較品(W−20Cr合金)に形成した酸化皮膜はCrとCrWOであったのに対し、図1(b)に示す本発明品(W−20Cr−5CrB)はCrのみが形成していた。
図2(a)及び(b)は加熱冷却試験後の試験片表面の組織を示す顕微鏡写真である。図2(b)に示す比較品(W−20Cr合金)は母材の表面にCrの皮膜が不規則な凹凸状を呈して浮き上がり、表面状態が不良であることが分かる。それに対し、図2(a)で示す本発明品(W−20Cr−5CrB)のCrの皮膜は凹凸が小さく平滑で、且つ浮き上がりもなく母材の表面状態が良好であることが分かる。
加熱冷却試験終了後に表面に形成した酸化皮膜の厚さを測定したところ、本発明品は合金部に密着した厚さ1μmから100μmまでの酸化皮膜が確認された。また比較品については、加熱冷却試験中に酸化皮膜の剥離が起きため正確な厚さを測定することができなかった。
加熱冷却試験前後の合金部のX線回折を行ったところ、加熱冷却試験前の合金部は本発明品と比較品は単相のタングステン−クロム合金を呈していたのに対し、加熱冷却試験後の合金部は本発明品と比較品の両方とも2相あるいは3相のタングステン−クロム合金に分離していた。
上記の結果から、本発明品は、タングステン−クロムに硼化物を添加することにより、高温の大気雰囲気下で使用した際に、均質な酸化皮膜を形成するとともに、長時間の使用においてもタングステン合金内部への酸素の拡散を防止できるという優れた特性を有することが確認された。
高温の大気雰囲気下で使用した際に、比較品に形成された酸化皮膜が本発明品と異なり当初Crのみだった酸化皮膜がCrおよびCrWOへ変化したのは、比較品は相分離や低密度また低Cr量が起因してCrだけでなくタングステンの酸化によりWOも生成し、そのCrとWOが反応することによりCrWOが形成したためである。
それに対して本発明品は高温加熱によりタングステン−クロム合金は相分離するものの、添加した硼化物の作用によりCrの酸化皮膜を維持させ、タングステンが酸化し難い構造を維持したため、長時間の高温使用に適していることが検証された。
尚、本発明品の硼化物添加による耐酸化性改善のメカニズムは明確になっていないが、硼化物を添加することによる作用効果は実施の通り明らかである。
以上、説明したように、本発明によれば、タングステンとクロムに硼化物を添加し、タングステン合金を作製することによって、高温において合金表面にCrの酸化皮膜のみが形成し、従来の耐酸化性を有するタングステン合金に比べて耐酸化性が向上したタングステン合金を提供することができた。
さらに、本発明によれば、主原料が安価であるため、低コストで高耐酸化性を有するタングステン合金を提供することができる。
本発明によるタングステン合金は、高温の大気雰囲気下における高耐酸化性・高耐熱性を活かし、例えば高温炉等に使用されるヒーター、ブロック、丸棒、線、パイプ、ボルト、ナット等の高温構造部材に適用できる。
(a)は従来技術のW−20Cr合金および(b)は本発明のW−20Cr−5CrB合金の加熱冷却試験20回後の表面のX線回折測定による図形を夫々示した図である。 (a)及び(b)は夫々本発明のW−20Cr−5CrB合金および従来技術のW−20Cr合金の加熱冷却試験20回後の表面の金属組織を示す顕微鏡写真である。 公知のタングステン−クロム平衡状態図である。 従来技術のW−30質量%Cr合金を400℃から1000℃の各温度で加熱処理を行い、加熱処理後の合金のX線回折測定による図形を各熱処理温度毎に示した図である。

Claims (4)

  1. 10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB,VB,LaB,MoB,TiB,WB,NbB,TaB,ZrB,HfBの内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含む合金からなることを特徴とするタングステン合金。
  2. 10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB ,VB ,LaB ,MoB,TiB ,WB,NbB ,TaB ,ZrB ,HfB の内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含む合金からなるタングステン合金を製造する方法であって、タングステンとクロムと前記少なくとも一種の硼化物を混合する工程と、0.5質量%以上5質量%以下の有機バインダーを混合する工程と、成形する工程と、脱脂する工程および1700℃以上で焼結する工程とを備えていることを特徴とするタングステン合金の製造方法。
  3. 10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB ,VB ,LaB ,MoB,TiB ,WB,NbB ,TaB ,ZrB ,HfB の内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含む合金からなり、前記合金は、三酸化二クロム(Cr)のみの酸化皮膜を有することを特徴とする耐酸化性を有するタングステン合金。
  4. 10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、1質量%以上5質量%以下のCrB ,VB ,LaB ,MoB,TiB ,WB,NbB ,TaB ,ZrB ,HfB の内の少なくとも一種の硼化物と、および残部としてタングステン(W)及び不可避不純物を含み、且つ表面に三酸化二クロム(Cr )のみの酸化皮膜を有する合金からなる耐酸化性を有するタングステン合金を製造する方法であって、タングステンとクロムと前記少なくとも一種の硼化物を混合する工程と、0.5質量%以上5質量%以下の有機バインダーを混合する工程と、成形する工程と、脱脂する工程および1700℃以上で焼結する工程とを備え、更に、前記焼結する工程の後に、三酸化二クロム(Cr )のみの酸化皮膜を、高温の大気雰囲気で形成する工程を含むことを特徴とする耐酸化性を有するタングステン合金の製造方法。
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