JP4601781B2 - 積層板用不織布 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半田耐熱性を要求される積層板用不織布に関するものであり、さらに詳しくはプリント配線板、絶縁板等に用いられる積層板用不織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、プリント配線板、絶縁板等に用いる不織布は、ガラスやセラミックなどの無機繊維又はテトロンやアラミドやフッ素などの有機繊維を湿式法又は乾式法でシート化し、このシートにバインダーを添加し、乾燥、キュアーして不織布とする。バインダーとしては、自己架橋性アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、水溶性シリコーン樹脂等が考えられるが、積層板成形後の耐熱性、機械的強度、電気絶縁性等の評価で、エポキシ系樹脂が良好な特性を持ち、この理由で電気材料に広く用いられている。
【0003】
これらの不織布用に使用できるエポキシ系バインダーのうち、比較的入手が容易で安価である理由で利用価値が高いものとして、カルボキシ変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0004】
カルボキシ変性エポキシ樹脂とは、主鎖のエポキシ樹脂にアクリル系ビニル共重合体を導入し、このビニル共重合体にカルボキシル基が結合しているものを指し、エポキシアクリレート樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、カルボキシ変性アクリレート樹脂等の表記を含む総称である。
カルボキシ変性エポキシ樹脂の第一の特徴としては自己乳化性があることであり、乳化剤を使用しないことから、電気絶縁性に有利になる点である。
第二の特徴としては、硬化反応が非常に速いため、速硬化性が要求される不織布バインダー用途に向いている点である。
【0005】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は電気絶縁用途のマトリクス樹脂に使用されることの多い樹脂であり、これをバインダー樹脂に使用した場合、硬化速度ではカルボキシ変性エポキシ樹脂に比較して劣るものの、カルボキシ変性エポキシ樹脂と比較して化学構造がマトリクス樹脂と近いため、相溶性(バインダー樹脂とマトリクス樹脂の界面の接着性)、熱膨張率の面で類似性を持ち、加熱時における繊維とマトリクス樹脂の熱膨張率差に起因するクラックは生じにくい。
【0006】
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較して、ノボラック型の特徴である多官能構造をもつため、架橋密度を比較的高くすることが可能である。その結果、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は硬化物の耐熱性が高く、接着性も優れるため、マトリクス樹脂や封止材用途等耐熱性が要求される用途に使用されている。またフェノールノボラック型エポキシ樹脂と比較して軟化温度が高く、耐湿性も優れている。
【0007】
一方、これらの不織布用エポキシ樹脂に使用する硬化剤としては、アミン系、フェノール系、エポキシ系、イソシアネート系、無機・有機・酸無水物系、メルカプタン系等が使用可能であるが、具体的に多く用いられるのは、メラミン系樹脂をはじめ、ジシアンジアミド、多価フェノール類、脂肪族及び芳香族アミン類などである。
【0008】
しかしながら、これらのエポキシ系樹脂と硬化剤をバインダーとして用いた場合、不織布の抄造工程の安定性(速硬化性、初期発現強度が要求される)、マトリクス樹脂ワニス含浸工程の安定性(硬化後の耐溶剤強度が要求される)、積層板の半田耐熱性(低吸水率、界面接着強度、バランスのとれた熱膨張率が要求される)を全て満足するものは得られていない。
【0009】
カルボキシ変性エポキシ樹脂は速硬化性であるため、抄造時の強度発現効果が早く抄造安定性に優れ、また、マトリクス樹脂含浸時の耐溶剤強度も強いという特徴があるが、カルボキシル基は親水性のため、積層板成形後の吸水率は他の樹脂を使用したものと比較して増大する。その結果として、積層板の半田耐熱試験において短時間の吸水処理でも半田浴中で膨れが生じる問題が発生する。
【0010】
一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は吸水率の面ではカルボキシ変性樹脂に比べ良好なものの、樹脂の硬化速度が非常に遅いため、不織布抄造工程における連続操業が低速となり生産性に劣る。また抄造後の不織布はマトリクス樹脂ワニス含浸時の耐溶剤強度が不十分なため、追加キュアーが必要となる場合が想定され、工程数が多くなってしまう。更に、積層板の半田耐熱試験においても樹脂の耐熱性が低く、十分なものは得られていない。
【0011】
これに対し、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をバインダー樹脂として用いたものは、不織布シートの耐溶剤強度、積層板の半田耐熱性、低吸水率において優れている。したがって、電気絶縁用途の不織布用バインダー樹脂として、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることで、良好な諸特性を期待できる。
【0012】
しかしながら、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂バインダーの不織布を実際に抄造すると、抄紙機乾燥ゾーン前半での工程強度が弱く、シート切れが非常に発生しやすいという不具合が生じる。この原因は、不織布の抄造工程におけるバインダー樹脂の硬化速度に比べ、ライン速度がはるかに上回っているため、抄紙機乾燥ゾーン前半での初期強度発現が不十分となるためである。
【0013】
これを解決するためには、抄紙機乾燥ゾーン前半でのシート強度を高める必要がある。その方法として、バインダー樹脂の反応速度を上げることが考えられる。しかし実際には、ライン速度を非常に低速にしない限り抄紙機乾燥ゾーン前半でオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の十分なキュアーを行うことはできないため、仮に触媒を使用したとしても、反応速度だけでこの問題に対処するのは製造上の観点から現実的ではない。
【0014】
抄紙機乾燥ゾーン前半でのシート強度を高めるもう一つの方法として、造膜性のあるバインダーを使用することが考えられる。即ち、分子骨格が柔らかく、かつある程度の高分子量の樹脂をオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と混合して使用すると、抄紙機乾燥ゾーンで高分子量樹脂が溶融し、不織布の繊維同士を融着させることが可能となる。
【0015】
バインダー樹脂に造膜性を持たせた場合、同時に、硬化後の耐溶剤強度が低下してはならない(マトリクス樹脂ワニスの含浸工程の操業安定性維持)、バインダー樹脂とマトリクス樹脂の界面接着強度が低下してはならない(半田耐熱性維持)、吸水率が高くなってはならない(半田耐熱性、電気絶縁性、長期信頼性の維持)等の付加条件が必要である。
【0016】
しかし、高分子量樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を単に混合するだけでは、これらの樹脂の間に何ら化学的な結合が生じないため、バインダー樹脂全体の架橋密度が低下し、樹脂強度の低下、吸水率の増大等、バインダー樹脂の物性が低下する恐れがある。即ち、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂に添加することで、製造ラインにおける不織布シートの初期強度発現の改善を図りつつ、かつ、バインダー樹脂物性を低下させないような、高分子量樹脂が必要であった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、積層板用不織布に用いるバインダー樹脂に関して、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を主成分とする不織布シートの硬化後の耐溶剤強度、及びこれを使用したプリント配線板或いは絶縁板の半田耐熱性を維持しつつ、製造ラインにおける不織布シートの初期強度発現の改善をはかることにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電気絶縁用不織布バインダーに用いる樹脂につき、主剤にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と、構造中にグリシジル基との反応性のある官能基を導入した分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂、特に、構造中にアミノ基、イミノ基又はカルボキシル基の少なくとも一種が導入されたビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂を併用し、かつ硬化剤として活性水素を有する化合物を使用することで、乾燥初期の造膜性による初期強度発現を図り、かつ高分子量エポキシポリオール樹脂に導入した官能基により主剤のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やマトリクス樹脂のエポキシ基との架橋反応による耐溶剤強度、半田耐熱性の向上を実現することで、この問題を解決した。
【0019】
本発明の第1の発明は、繊維と、繊維同士を結合するバインダー樹脂からなる積層板用不織布において、該バインダー樹脂は主剤と硬化剤からなり、該主剤はオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂からなり、該高分子量エポキシポリオール樹脂は、構造中にグリシジル基との反応性のある官能基を導入したエポキシポリオール樹脂であることを特徴とし、該硬化剤は活性水素を有する化合物であることを特徴とする積層板用不織布に関するものである。
【0020】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、主剤であるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の重合度が2〜20であることを特徴とする積層板用不織布に関するものである。
【0021】
本発明の第3の発明は、上記第1〜第2の発明において、バインダー樹脂中のグリシジル基のモル数の合計と、硬化剤中の活性水素のモル数の合計の割合が100:20〜100:100の範囲である積層板用不織布に関するものである。
【0022】
本発明の第4の発明は、上記第1〜第3の発明において、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂の比率が10/90〜70/30であることを特徴とする積層板用不織布に関するものである。
【0023】
本発明の第5の発明は、上記第1〜第4の発明において、高分子量エポキシポリオール樹脂が、グリシジル基との反応性のある官能基としてアミノ基、イミノ基又はカルボキシル基の少なくとも一種が導入されたビスフェノールA型高分子量エポキシポリオール樹脂であることを特徴とする積層板用不織布に関するものである。
【0024】
本発明の第6の発明は、上記第1〜第5の発明において、硬化剤はアミン系化合物、フェノール系化合物、メルカプタン系化合物、有機酸系化合物の中から選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする積層板用不織布に関するものである。
【0025】
本発明の第7の発明は、上記第1〜第6の発明に記載された積層板用不織布からつくられたプリプレグ、プリント配線板又は絶縁板に関するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
本明細書の中で、「バインダー樹脂」とは主剤と硬化剤を主成分とし、必要により併用硬化剤、カップリング剤、硬化促進剤等を加えたものをいう。
本明細書の中で、「グリシジル基のモル数」とは、「バインダー樹脂」中の、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及び他のグリシジル基を有するエポキシ樹脂の、それぞれ有するグリシジル基のモル数の合計をいう。
本明細書の中で、「全エポキシ樹脂」とは、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と他のグリシジル基を有するエポキシ樹脂の合計をいう。
本明細書の中で、「エポキシポリオール樹脂」とは、エポキシ樹脂のグリシジル基を活性水素化合物で開環して得られるエポキシ樹脂に由来するポリオール化合物をいう。
【0027】
本発明において、繊維同士を結合するバインダー樹脂の主剤としては、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂が用いられる。
【0028】
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、耐薬品性、耐熱性に優れ、高温での反応性が良いため、エポキシ粉体塗料や、成形体、積層板等に使用される樹脂である。本発明では、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用することでグリシジル基の数を圧倒的に多くできるため、高度な架橋構造を実現可能とし、反応性や接着性において優れた物性を発揮できる。
【0029】
本発明におけるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、マトリクス樹脂との接着性を維持するために、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂の合計を100重量%として、90〜30重量%含有することが望ましい。オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の量が下限に満たないと、硬化後の十分な架橋密度が得られず、強度(耐溶剤強度)や半田耐熱性や吸水率が悪化してしまい、好ましくない。またオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の量が上限を超えると、相対的に高分子量エポキシポリオール樹脂の量が減るため、抄紙機乾燥ゾーン前半でのバインダー樹脂の造膜性を高めることができず、工程強度(初期発現強度)が低下するため好ましくない。或いはバインダー樹脂の強度発現が遅くなるため、硬化反応に時間をかけることも考えられるが、十分な強度を出すための連続操業では低速となり、生産性が低下する。
【0030】
本発明において、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と混合して使用する分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂は、バインダー樹脂の乾燥キュアー工程において、初めから高分子量の成分として造膜性を持つため、抄紙機乾燥ゾーン前半での工程強度(初期発現強度)を高める効果がある。また、グリシジル基との反応性を有するため、バインダー樹脂全体の架橋密度を低下させないで硬化することができ、樹脂強度の低下、吸水率の増大等、バインダー樹脂の物性低下を防ぐことができる。
【0031】
高分子量エポキシポリオール樹脂は、分子量が1千〜10万、好ましくは3千〜1万である必要がある。分子量が下限に満たないと、抄紙機乾燥ゾーン前半でのバインダー樹脂の溶融粘度、造膜性が不十分となるため、工程強度(初期発現強度)が低下し好ましくない。また分子量が上限を超えると、Tgや融点が高くなるため、抄紙機乾燥ゾーン前半でバインダー樹脂が容易に溶融しにくくなることで造膜性が低下し、工程強度(初期発現強度)が低下するため好ましくない。さらに分子量が上限を超えて非常に大きい場合は、エポキシ樹脂を水溶化することが困難となり、またエマルジョンにすることも難しくなってくるため、好ましくない。
【0032】
高分子量エポキシポリオール樹脂を製造するために用いられるエポキシ樹脂は、その骨格としてグリシジルエーテル、グリシジルアミン、グリシジルエステル等の構造を有する化合物が該当する。具体的な例として、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、Br化ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、アルコール型、芳香族アミン型、アミノフェノール型、ハイドロフタル酸型、ダイマー酸型等のエポキシ樹脂が挙げられる。
これらの中で、実際の使用に適した樹脂骨格としては、ビスフェノールA型が好ましい。この理由はビスフェノールA型のエポキシ樹脂は、ある程度高分子量になると造膜性が出ること、溶剤系のみならず水系に化学修飾することも容易であること、比較的安価で高分子量のものが容易に手に入ること等による。
【0033】
高分子量エポキシポリオール樹脂を製造するために用いられる活性水素含有化合物は、その骨格としてアミノ基、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基等の構造を有する化合物が該当する。具体的な例としては、例えば、第1級又は第2級アミン、モノ又はポリカルボン酸(無水物)、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、リン酸モノ又はジエステル、フェノール類などがあげられる。
【0034】
上記第1級又は第2級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、第三ブチルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン、エチルプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、4−メチルピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミンなどがあげられる。
【0035】
上記モノ又はポリカルボン酸(無水)としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、乳酸、酪酸、オクチル酸、ラウリン酸、安息香酸、トルイル酸、桂皮酸、フェニル酢酸、シクロヘキサンカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ブタントリカルボン酸,ブタンテトラカルボン酸あるいはその無水物などがあげられる。
上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸などがあげられる。
上記アミノカルボン酸としては、例えば、アミノ安息香酸、アミノ酢酸などがあげられる。
【0036】
上記リン酸モノ/ジエステルとしては、例えば、リン酸モノ/ジアルキルエステル〔アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシルなどがあげられる。〕、リン酸モノ/ジアルケニルエステル〔アルケニル基としては、アリル、オクテニル、デセニル、オクタデセニルなどがあげられる。〕、リン酸モノ/ジ置換アルキルエステル〔置換アルキル基としては、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル等のヒドロキシアルキル基;2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−オクトキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−オクタデシロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−トルオキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−オクチルフェノキシプロピル等のアルコキシ又はアリーロキシヒドロキシアルキル基;2−(3−メトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、2−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、2−(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、2−(3−トルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル等のアルコキシ又はアリーロキシヒドロキシアルコキシアルキル基などがあげられる。〕があげられる。
【0037】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、オクチルフェノール、テルペンフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラック、テルペンジフェノール、(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールなどがあげられる。
【0038】
高分子量エポキシポリオール樹脂は、上記のエポキシ樹脂のグリシジル基に活性水素含有化合物を反応させて開環することによって得られるが、予め高分子量のエポキシ樹脂を調製し、これに活性水素含有化合物を付加する方法、あるいは、複数の活性水素を含有する活性水素含有化合物を付加させて、グリシジル基の開環とエポキシ樹脂の架橋による高分子量化を同時に行わせる方法等の周知の方法を用いることができる。
本発明に使用される高分子エポキシポリオール樹脂は、構造中にグリシジル基との反応性のある官能基を導入したことを特徴とするものであるが、その中でも、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基は反応性のある官能基であると同時にイオン性を付与するための機能を同時に奏することから好ましい。
【0039】
次に本発明に使用される高分子エポキシポリオール樹脂の製造方法のより具体的な方法に関して記載する。
構造中にアミノ基もしくはイミノ基を導入した高分子量エポキシポリオール樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、(1)約1千以上の高分子量エポキシ樹脂に第1級のモノアミンを付加する方法、(2)比較的低分子量のエポキシ樹脂に多価の活性水素含有化合物を反応せしめて得られる末端エポキシ基であるエポキシ樹脂を製造し、次いでこれに第1級のモノアミンを付加する方法などによって得ることができる。
【0040】
これらの構造中にアミノ基もしくはイミノ基を導入した構造を有する高分子量エポキシポリオール樹脂は、アミノ基もしくはイミノ基、あるいはニトリロ基を有することから、酸を併用することにより水溶性あるいは水分散性が付与され、本発明の水性樹脂組成物が得られる。
ここで使用される酸としては、リン酸、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などがあげられる。
これらの酸の使用量は、高分子量エポキシ樹脂のアミノ基、イミノ基及びニトリロ基と塩を形成して水溶化又は水分散させうる十分な量があればよく、通常、アミノ基、イミノ基及びニトリロ基を合わせて1当量に対して、0.5〜5当量、好ましくは0.8〜3当量が使用される。
【0041】
構造中にカルボキシル基を導入した高分子量エポキシポリオール樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、(1)約千以上の高分子量エポキシ樹脂に(無水)ポリカルボン酸を反応させる方法、(2)比較的低分子量のエポキシ樹脂と多価の活性水素含有化合物とを反応せしめて得られる約千以上の高分子量のエポキシポリオール樹脂と(無水)ポリカルボン酸を反応させる方法などによって製造することができる。さらに、(1)の(無水)ポリカルボン酸と反応させる前に、あるいは(2)の活性水素含有化合物の一部としてジアルカノールモノカルボン酸を反応させた後で(無水)ポリカルボン酸を反応させることによって優れた高分子量エポキシポリオール樹脂を得ることができる。
これら構造中にカルボキシル基を導入した構造を有する高分子量エポキシ樹脂は、カルボキシル基を有することから、塩基を併用することにより水溶性あるいは水分散性が付与され、本発明の水性樹脂組成物が得られる。
【0042】
ここで使用される塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性無機化合物;アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モルホリン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジアミノベンゼン、エチレンイミン、ピペラジン、ピロリジン、ピリジン、ヘキサメチレンイミンなどのアミン化合物があげられる。これらのうち、特に、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン等の揮発性アミンを使用することが最終的な硬化物にこれらが残存しないため好ましい。
これらの塩基の使用量は、高分子量エポキシポリオール樹脂のカルボキシル基と塩を形成して水溶化又は水分散させうる十分な量があればよく、通常、該カルボキシル基1当量に対して、0.5〜5当量、好ましくは0.8〜3当量が使用される。
【0043】
これらの高分子量エポキシポリオール樹脂は、グリシジル基との反応性を有することを特徴としており、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂との架橋構造を生成することにより、バインダー樹脂全体の架橋密度を低下させないで硬化することを可能とし、樹脂強度の低下、吸水率の増大等、バインダー樹脂の物性低下の防止に寄与する。
【0044】
本発明の硬化剤は活性水素を有する化合物を主成分とする。この硬化剤をエポキシ樹脂に対して使用することで架橋反応を促進し、不織布シートの耐溶剤強度を大幅に向上させ、半田耐熱性も改善することができる。
本発明の活性水素を有する化合物は、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と付加重合し、硬化させる。
例えば硬化剤に一級アミノ基を有する化合物を使用した場合、一級アミノ基の活性水素がグリシジル基に付加反応して二級アミノ基と水酸基を生成し、この二級アミノ基と別のグリシジル基が反応して三級アミノ基と水酸基(Nを介して主剤のエポキシ樹脂同士が結合)が生成する。その他の活性水素基を有する化合物の場合でも、硬化剤の付加反応は立体障害の少ないβ炭素上で主としてSN2的に行われ、架橋構造が形成される。
【0045】
具体的な化合物を例示すると、ポリアミド、ポリアミン樹脂等のアミン系化合物、ポリフェノール樹脂等のフェノール系化合物、ポリチオール樹脂等のメルカプタン系化合物、カルボン酸等の有機酸化合物が挙げられる。
中でも、ジシアンジアミドやフェノール系硬化剤がマトリクス樹脂との相溶性の点で好ましい。一般的な電材用G-10、G-11、FR-4、FR-5グレードのマトリクス樹脂では、主剤にビスフェノールA型エポキシ樹脂(難燃化グレードではブロム化タイプ)が用いられることが多いが、これに対して用いられる硬化剤はジシアンジアミドやフェノール系硬化剤が多く、活性水素を有する化合物なので、硬化システムをバインダー樹脂とマトリクス樹脂間で統一することで、界面接着強度の向上が図られる。
【0046】
本発明におけるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、重合度2〜20のものが好ましい。重合度をこの範囲に規定するのは、樹脂のTgや架橋密度がバインダー物性にふさわしいためである。もし重合度が20を上回ると、Tgが高くなってしまい、バインダー樹脂全体の硬化物が非常に硬く脆くなってしまうという欠点を生じるため、好ましくない。
【0047】
本発明に用いる高分子量エポキシポリオール樹脂は、充分な初期強度を得るためにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と高分子量エポキシポリオール樹脂の合計を100重量%として、70〜10重量%含有することが望ましい。高分子量エポキシポリオール樹脂の量が下限に満たないと、抄紙機乾燥ゾーン前半でのバインダー樹脂の造膜性を高めることができず、工程強度(初期発現強度)が低下するため好ましくない。或いはバインダー樹脂の強度発現が遅くなるため、硬化反応に時間をかけることも考えられるが、十分な強度を出すための連続操業では低速となり、生産性が低下する。一方、高分子量エポキシポリオール樹脂の量が上限を超えると、相対的にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の量が減るため、硬化後の十分な架橋密度及び、バインダー樹脂とマトリクス樹脂の接着性が得られず、強度(耐溶剤強度)や半田耐熱性や吸水率が悪化してしまい、好ましくない。
【0048】
本発明においては、バインダー樹脂中のグリシジル基のモル数の合計と、活性水素を有する化合物の活性水素のモル数が100:20〜100:100になるように全エポキシ樹脂と活性水素を有する化合物を混合する。
複数の硬化剤を併用して用いる場合においても、上記のモル比とすることが好ましい。グリシジル基のモル数の合計に対し、活性水素を有する化合物の活性水素のモル数の比が100:20に満たないと、硬化が不十分となるため強度が減少し、吸水率も高くなるので好ましくない。また活性水素のモル数の比が100:100を超えると、余剰の活性水素を有する化合物が樹脂中に残り吸水率を高めるため、半田耐熱性に悪影響を及ぼし好ましくない。
【0049】
また、硬化促進剤として熱潜在性触媒を用いると効果的である。熱潜在性触媒は、常温では触媒能を持たないが加熱によって触媒となる物質である。触媒を使用しないと硬化剤が架橋し樹脂に強度が発現するまでの時間が非常に長くなるため、生産ラインでの硬化所用時間が長くなり、操業性が劣る結果となる。したがって、熱潜在性触媒を使用することが好ましい。熱潜在性触媒は、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジウム塩、ベンジルホスホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等がある。例えば、2-エチル-4-メチル-イミダゾールを触媒に用いると、反応速度が上がり、短時間で硬化が完了するため、製造上好都合である。2-エチル-4-メチル-イミダゾールを用いる場合、その添加量は抄造条件(製造設備等)及び製造される不織布シートの耐溶剤強度より任意に決定されるが、硬化の発現性より活性水素を有する化合物100重量部に対し0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0050】
本発明においては、必要に応じてバインダー樹脂にカップリング剤、硬化促進剤等を適量添加して用いると効果的である。用いられるカップリング剤は、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系カップリング剤であるが、特殊なものとしてはカルボン酸系、リン酸系、脂肪酸・油脂系等も可能である。これらの中で、特にガラス繊維を用いる不織布の場合は、シランカップリング剤が非常に効果的であることは公知であり、耐熱性及び電気絶縁性が向上する。
【0051】
本発明で使用する繊維としては、有機系又は無機系から選ばれたチョップドストランド、カットファイバー、パルプ、ステープル等が用いられる。繊維の種類は1種類でも良いし、多種類のブレンドでも良い。繊維の成分は各種ガラス繊維、各種合成高分子繊維、無機繊維等のいずれでもよいが、電気絶縁材料に用いられる絶縁性を有し、かつその融点は半田耐熱温度の260℃以上であることが必要である。
具体的には、電気絶縁用Eガラス、電気絶縁用NEガラス、セラミック、パラ系アラミド、メタ系アラミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、PPS(ポリパラフェニレンサルファイド)、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、液晶ポリエステル等の繊維が該当するが、これに限定するものではない。
【0052】
本発明において、積層板用不織布は繊維80〜97重量%と繊維同士を結合するバインダー樹脂20〜3重量%とからなる。
バインダー樹脂が3重量%に満たないと不織布の強度が低下し、エポキシワニスを含浸してプリプレグとする工程で紙切れ等の不都合を生じたり、不織布表面にケバが発生したりして好ましくない。またバインダー樹脂が20重量%を超えると、不織布全体としての吸水量が増加する、不織布のしなやかさが失われるなどの不都合が生じる。
【0053】
本発明における不織布の形成方法は特に限定せず、湿式法又は乾式法のいずれの方法を用いてもよいが、より高密度の基材とするためには湿式法を採用するのがよい。
作成したシートにバインダー樹脂を添加する方法は、スプレーして散布する方法、シートをバインダー液に含浸する方法、シートにバインダー液をコートする方法等があり、またそれらの方法の組み合わせでもよい。バインダー樹脂添加後、熱風やドラムドライヤーなどにより乾燥、硬化させて本発明の不織布を得る。
【0054】
以上のようにして作成した不織布を、マトリックスの樹脂ワニスに含浸する。樹脂にはエポキシ樹脂を用いるのが通常であるが、PPE(PPO)樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂なども使用できる。ワニス濃度は適宜調製し、含浸で付いた余剰分はローラーで挟んで落とすか、或いはワニス粘度が低い場合には不織布ごと縦に吊るして重力で落とし、必要量を不織布中に残すようにする。
【0055】
ワニスを含浸した不織布を130〜160℃程度の条件下で乾燥キュアーし、Bステージにしてプリプレグとする。このプリプレグを数枚積層し(プリント配線板の場合は表面に銅箔を重ねる)、150〜200℃程度で加圧しながら熱成形して絶縁版又はプリント配線板を得る。
【0056】
【実施例】
次に、本発明を以下の実施例にしたがって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。。
【0057】
実施例1
カチオン変性ビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂(分子量6000)を以下のように合成した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(アデカレジンEP−4100、WPE=190)314重量部とビスフェノールA113重量部を触媒にエチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.4重量部用いて130℃、3時間反応させ、エポキシ当量650のものを得た。この樹脂にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート417重量部とモノエタノールアミン15重量部仕込み、130℃、4時間反応させ、エポキシ当量が5500(溶液として)あることを確認した後、モノエタノールアミン10重量部仕込み、130℃、2時間反応させ、エポキシ基が消滅したことを確認し、固形分50%の樹脂(固形分としてN−H当量2800)を得た。この樹脂はGPCにより分子量平均6000であることを確認した。この得られた樹脂を50℃冷却した後、30%の蟻酸水溶液を35重量部仕込んだ後、水1215重量部仕込んで、固形分20%のカチオン変性ビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂を得た。
【0058】
このように合成した高分子量エポキシポリオール樹脂を用いて、以下のように積層板用不織布を作成した。
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス株式会社製、繊維径φ9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。次に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エマルション(固形分50%、固形分としてエポキシ当量;220)とカチオン変性ビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂(分子量6000)を6:4で混合したエポキシエマルジョンとジシアンジアミド(水溶液)及び2-エチル-4-メチル-イミダゾールとジアミノシランカップリング剤を有効成分重量比100:5:1:1で混合したバインダー液を作成し(グリシジル基:活性水素=100:60)、対不織布有効固形分5重量%となるようスプレー法でこのシートに散布し、170℃で2時間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。この不織布の初期発現強度、耐溶剤強度を表1に示す。
この不織布にエポキシ樹脂ワニスを含浸して余剰分を取り除き、140℃で5分間乾燥熱硬化してプリプレグとした。次にこのプリプレグを4枚積層して180℃で1時間熱プレスにより硬化し、厚さ0.6mmの積層板を得た。この積層板について半田耐熱性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0059】
実施例2
アニオン変性ビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂(分子量4000)を以下のように合成した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(アデカレジンEP−4100、WPE=190))104重量部とビスフェノールA51重量部を触媒にエチルトリフェニルホスホニウムブロミド0.1重量部用いて130℃、3時間反応させ、エポキシ当量1500のものが得られた。この樹脂にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150重量部とジメチロールプロピオン酸14重量部仕込み、触媒にジメチルベンジルアミン0.1重量部用いて130℃、2時間反応させ、エポキシ基が消滅したことを確認した後、60℃に冷却後、無水コハク酸31重量部仕込み、60℃、2時間反応させ、酸価が43であることを確認し、固形分50%の樹脂(固形分としてカルボキシル基当量650)の樹脂を得た。この樹脂はGPCにより分子量平均4000であることを確認した。これにトリエチルアミン30重量部仕込み、続いて水620重量部仕込んで、固形分20%のアニオン変性ビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂を得た。
【0060】
このように合成した高分子量エポキシポリオール樹脂を用いて、以下のように積層板用不織布を作成した。
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス株式会社製、繊維径φ9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。次に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エマルションとアニオン変性ビスフェノールA型エポキシポリオール樹脂(分子量4000)を6:4で混合したエポキシエマルジョンとジシアンジアミド(水溶液)及び2-エチル-4-メチル-イミダゾールとジアミノシランカップリング剤を有効成分重量比100:5:1:1で混合したバインダー液を作成し(グリシジル基:活性水素=100:60)、対不織布有効固形分5重量%となるようスプレー法でこのシートに散布し、170℃で2時間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。この不織布の初期発現強度、耐溶剤強度を表1に示す。
この不織布にエポキシ樹脂ワニスを含浸して余剰分を取り除き、140℃で5分間乾燥熱硬化してプリプレグとした。次にこのプリプレグを4枚積層して180℃で1時間熱プレスにより硬化し、厚さ0.6mmの積層板を得た。この積層板について半田耐熱性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0061】
比較例1
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス株式会社製、繊維径φ9μm、繊維長13mm)を95重量%対不織布)湿式法でシート化した。一方、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エマルジョンとジシアンジアミド(水溶液)及び2-エチル-4-メチル-イミダゾールとジアミノシランカップリング剤を有効成分重量比100:5:1:1で混合したバインダー液を作成し(グリシジル基:活性水素=100:60)、対不織布有効固形分5重量%となるようスプレー法でこのシートに散布し、170℃で2時間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。この不織布の初期発現強度、耐溶剤強度を表1に示す。
この不織布にエポキシ樹脂ワニスを含浸して余剰分を取り除き、140℃で5分間乾燥熱硬化してプリプレグとした。次にこのプリプレグを4枚積層して180℃で1時間熱プレスにより硬化し、厚さ0.6mmの積層板を得た。この積層板について半田耐熱性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0062】
比較例2
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス株式会社製、繊維径φ9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン(平均分子量5000)とメラミン樹脂(水溶液)及びジアミノシランカップリング剤を有効成分重量比100:10:1で混合したバインダー液を作成し、対不織布有効固形分5重量%となるようスプレー法でこのシートに散布し、170℃で2時間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。この不織布の初期発現強度、耐溶剤強度を表1に示す。
この不織布にエポキシ樹脂ワニスを含浸して余剰分を取り除き、140℃で5分間乾燥熱硬化してプリプレグとした。次にこのプリプレグを4枚積層して180℃で1時間熱プレスにより硬化し、厚さ0.6mmの積層板を得た。この積層板について半田耐熱性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0063】
比較例3
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス株式会社製、繊維径φ9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。次に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂エマルションとビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン(平均分子量5000)を6:4で混合したエポキシエマルジョンとジシアンジアミド(水溶液)及び2-エチル-4メチル-イミダゾールとジアミノシランカップリング剤を有効成分重量比100:5:1:1で混合したバインダー液を作成し(グリシジル基:活性水素=100:60)、対不織布有効固形分5重量%となるようスプレー法でこのシートに散布し、170℃で2時間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。この不織布の初期発現強度、耐溶剤強度を表1に示す。
この不織布にエポキシ樹脂ワニスを含浸して余剰分を取り除き、140℃で5分間乾燥熱硬化してプリプレグとした。次にこのプリプレグを4枚積層して180℃で1時間熱プレスにより硬化し、厚さ0.6mmの積層板を得た。この積層板について半田耐熱性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
(測定方法及び評価方法)
1.官能基比率:バインダー樹脂の反応性官能基当量の比である。
2.不織布の初期発現強度(kgf/15mm):バインダー液風乾後、105℃、10秒の処理を行い測定した引張り強度である。スパンは100mm、引張り速度は10mm/min。
3.不織布の耐溶剤強度(kgf/15mm):アセトン中に5分浸漬後、測定した引張り強度である。スパンは100mm、引張り速度は10mm/min。
4.積層板の半田耐熱性試験:積層板に煮沸処理及びプレッシャークッカー(121℃、2気圧)処理による吸水処理を施し、JIS C−6481に定める半田耐熱試験(260℃、20秒間浸漬)後に発生する膨れの状況を評価した。
(評価基準) n=3で欠点ゼロを3点、欠点少数を2点、欠点多数を1点、全面に欠点発生を0点として、その合計点を評価点とする。
【0067】
以上の実施例及び比較例より、以下のことが示された。
1.実施例1及び2は、何れも初期発現強度、耐溶剤強度ともに高く、かつ半田耐熱性は長時間の吸水処理まで良好である。
2.比較例1は、高分子量エポキシ樹脂が配合されていないため、初期発現強度が低いという欠点を持つ。
3.比較例2は、オルソクレゾールノボラック樹脂を使用しておらず、半田耐熱性が非常に劣る。
4.比較例3は、高分子エポキシ樹脂に反応性官能基が導入されておらず、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂との反応がない。したがって比較例3は、煮沸12時間やPCT6時間等の長時間の吸水処理を行うと、反応性官能基が導入されている場合(実施例1及び2)と比較して、半田耐熱性が劣ってくる傾向が有る。
【0068】
【発明の効果】
本発明による積層板用不織布は、不織布としての強度、積層板状態における吸水後の半田耐熱性、吸水率を十分に保ちつつ、製造ラインにおけるシート切れを大幅に低減できるという特徴を持つ。
これは、バインダー樹脂中にグリシジル基との反応性官能基を持つ高分子量エポキシ樹脂を配合することによって、乾燥・硬化の初期段階における造膜性を高め、かつ主剤のオルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂との反応性を持たせ架橋構造を高度なものにした為で、初期強度発現を従来のものと比較してはるかに速く・高くすることができ、かつ耐溶剤強度、半田耐熱性の向上を実現できた為である。
Claims (7)
- 繊維と、繊維同士を結合するバインダー樹脂からなる積層板用不織布において、該バインダー樹脂は主剤と硬化剤からなり、該主剤はオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂からなり、該高分子量エポキシポリオール樹脂は構造中にグリシジル基との反応性のある官能基を導入したエポキシポリオール樹脂であり、該硬化剤は活性水素を有する化合物であることを特徴とする積層板用不織布。
- 主剤であるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の重合度が2〜20であることを特徴とする請求項1記載の積層板用不織布。
- バインダー樹脂中のグリシジル基のモル数の合計と、硬化剤中の活性水素のモル数の合計の割合が100:20〜100:100の範囲である請求項1又は2に記載の積層板用不織布。
- オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と分子量1千〜10万の高分子量エポキシポリオール樹脂の比率が10/90〜70/30であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層板用不織布。
- 高分子量エポキシポリオール樹脂が、グリシジル基との反応性のある官能基としてアミノ基、イミノ基又はカルボキシル基の少なくとも一種が導入されたビスフェノールA型高分子量エポキシポリオール樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層板用不織布。
- 硬化剤はアミン系化合物、フェノール系化合物、メルカプタン系化合物及び有機酸系化合物の中から選ばれた1種又は2種以上の化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層板用不織布。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載された積層板用不織布からつくられたプリプレグ、プリント配線板又は絶縁板。
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