JP4601595B2 - 消炎鎮痛用経口医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、消炎鎮痛用の経口医薬組成物に関する。より詳細には、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬を有効成分として含有する消炎鎮痛用経口医薬組成物に関する。さらに、本発明は苦味を有するフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬について、その苦味を低減する方法に関する。
イブプロフェンなどのフェニルプロピオン酸系の消炎鎮痛剤は、優れた鎮痛および消炎作用を有するため、炎症性疾患やそれに伴う疼痛や発熱に対する薬物として広く用いられている。特にイブプロフェンは、公知の消炎鎮痛剤のなかでもとりわけ末梢での消炎作用が高いことから、炎症を伴う関節痛の治療薬として好適に使用されている。しかし、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬は、胃粘膜の損傷を引き起こし易く消化性潰瘍や胃腸出血などの副作用を発生しやすいことから、使用量を減らす目的でフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬自体の作用効果を増強するための工夫や、その胃腸障害自体を軽減するための工夫が種々試みられている(例えば、特許文献1〜10等参照)。
またイブプロフェンは苦味を有する薬物であるため、これを内服製剤(経口医薬組成物)として調製するためには、その苦味をマスキングすることが、その製剤の服用性を向上させて他社製品との差別化を図るうえで重要なことである。この観点から、イブプロフェン等の消炎鎮痛剤の苦味をマスキングし低減する方法が種々提案されている(例えば、特許文献11または12等参照)。
しかし、イブプロフェン等のフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の消炎作用(抗炎症作用)を増強し、それに伴って副作用も軽減しながら、同時にその苦味を低減する方法は未だ知られていない。
特公昭64−8602号公報 特公平1−24131号公報 特開平5−148139号公報 特開平9−48728号公報 特開平7−188004号公報 特開平10−259130号公報 特開平11−12187号公報 特開平11−158066号公報 特開2006−1920号公報 特開2004−59579号公報 特開2000−273037号公報 特開2001−106639号公報
本発明は、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の消炎作用(抗炎症作用)が増強されてなる消炎鎮痛用経口医薬組成物を提供することを目的とする。特に、本発明はフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の消炎作用(抗炎症作用)が増強されることによって、副作用が軽減されてなる消炎鎮痛用経口医薬組成物を提供することを目的とする。また本発明は、苦味を有するフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬について、その消炎作用を増強しながら、同時に苦味を低減する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討していたところ、イブプロフェンなどのフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、塩酸グルコサミンを併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の消炎作用が増強することを見出し、さらにこれにコンドロイチン硫酸塩を併用することによって、さらにその消炎作用が増強することを見出した。また本発明者らは、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に塩酸グルコサミン、または塩酸グルコサミンとコンドロイチン硫酸塩を併用することによって、消炎作用が増強するだけでなく、同時にフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味が有意にマスキングでき、服用しやすい経口製剤が調製できることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、下記の態様を有するものである:
項1.(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬、および(b)グルコサミン、その誘導体またはこれらの塩、を含有する消炎鎮痛用経口医薬組成物。
項2.さらに(c)コンドロイチン、コンドロイチン硫酸またはその塩を含有する項1記載の消炎鎮痛用経口医薬組成物。
項3.(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬1重量部に対して、(b)グルコサミン、その誘導体またはそれらの塩を0.001〜5000重量部の割合で含有する項1または2に記載する消炎鎮痛用経口医薬組成物。
項4.(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬1重量部に対して、(c)コンドロイチン、コンドロイチン硫酸またはその塩を0.0001〜5重量部の割合で含有する項2または3に記載する消炎鎮痛用経口医薬組成物。
項5.(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬がイブプロフェンである項1乃至4のいずれかに記載する消炎鎮痛用経口医薬組成物。
項6.苦味を有するフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)グルコサミン、その誘導体若しくはそれらの塩、または(b)グルコサミン、その誘導体若しくはそれらの塩および(c)コンドロイチン、コンドロイチン硫酸若しくはその塩を併用することを特徴とする、当該フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味を低減する方法。
項7.フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬がイブプロフェンである項6に記載する苦味低減方法。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物によれば、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)グルコサミン、グルコサミン誘導体若しくはその塩、または(b)グルコサミン、グルコサミン誘導体若しくはその塩と(c)コンドロイチン、コンドロイチン硫酸若しくはその塩を併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬が本来有する消炎作用が顕著に増強されるため、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の有効量を減らすことができ、その結果、少量のフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬を用いて優れた消炎効果を発揮することができる。このため、従来より問題とされているフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の副作用(胃腸障害)を軽減することができる。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬のうちイブプロフェンは、特に関節などの末梢の消炎作用に優れている。このため、イブプロフェンを有効成分とする本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、関節炎、腱鞘炎、または炎症を伴う肩こり、関節痛、腰痛若しくは神経痛などを対象とした消炎鎮痛剤(内服用)として有用である。
さらに本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)グルコサミン、グルコサミン誘導体若しくはその塩、または(b)グルコサミン、グルコサミン誘導体若しくはその塩と(c)コンドロイチン、コンドロイチン硫酸若しくはその塩を併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味がマスキングされており、内服しやすい製剤として提供することができる。
I.消炎鎮痛用経口医薬組成物
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬(以下、これを「(a)成分」ともいう)に加えて、(b)グルコサミン、その誘導体またはこれらの塩(以下、これらを総称して「グルコサミン類」ともいう)を含有することを特徴とするものである。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に上記のグルコサミン類を併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の特に消炎作用が相乗的に増強されて優れた消炎作用を発揮することができるとともに、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味が低減されて、服用しやすい内服製剤とすることができる。
(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬
本発明においてフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬とは、フェニルプロピオン酸骨格を有する消炎作用、鎮痛作用または/および解熱作用を有する薬物を意味し、例えばアルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナブメトン、ナプロキセン、フェノプロフェン(カルシウム塩)、プラノプロフェン、フルルビプロフェンまたはロキソプロフェン(ナトリウム塩)を挙げることができる。これらは一種単独、または二種以上を任意に組み合わせて使用することができる。好ましくは、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、プラノプロフェンであり、より好ましくはイブプロフェン〔化学名:2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸〕である。
これらの成分は、水和物または溶媒和物として配合されていてもよく、例えばロキソプロフェンは、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物として用いることができる。
消炎鎮痛用経口医薬組成物中に含まれる(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の割合としては、制限はされないが、通常、消炎鎮痛用経口医薬組成物の一日投与あたりに、(a)成分が10〜2000mg、好ましくは100〜1000mg、より好ましくは150〜600mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。この範囲となるように、消炎鎮痛用経口医薬組成物100重量%中の(a)成分の含有割合は、0.1〜99.9重量%、好ましくは0.2〜90重量%の範囲から適宜調整することができる。
(b)グルコサミン類
グルコサミン類は、例えば、蟹、海老若しくは蝦蛄などの甲殻類の殻、または烏賊軟骨に含まれるキチンや、キチンを濃塩酸等の酸で加水分解して得られるキトサンを構成する単糖である。
本発明ではグルコサミンとして用いるほか、その誘導体の形態で用いることもできる。天然で存在が確認されているグルコサミンの誘導体としては、N−アセチル化誘導体などのアシル化誘導体、N−硫酸化誘導体やO−硫酸化誘導体などの硫酸化誘導体、N−グリコリル化誘導体などのグリコリル化誘導体などが挙げられる。好ましくはN−アセチルグルコサミンである。
これらのグルコサミンまたはその誘導体は、さらに薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される塩の形態で使用することもできる。かかる塩としては、例えば、乳酸塩、酢酸塩、酪酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、パルチミン酸塩、ステアリン酸塩などの有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩などを例示できる。グルコサミンの塩としては、好ましくは塩酸グルコサミンおよび硫酸グルコサミン、より好ましくは塩酸グルコサミンを挙げることができる。グルコサミンの塩は、D、L又はDL体のいずれであってもよい。これらは一種単独、または二種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
本発明においてグルコサミン類として好ましくは、塩酸グルコサミンである。
消炎鎮痛用経口医薬組成物中に含まれるグルコサミン類の割合としては、特に制限されないが、通常、消炎鎮痛用経口医薬組成物の一日投与あたりに、グルコサミン類が1〜3000mg、好ましくは40〜1000mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。この範囲となるように、消炎鎮痛用経口医薬組成物100重量%中のグルコサミン類の含有割合を、0.1〜99.9重量%、好ましくは5〜90重量%の範囲から適宜調整することができる。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬〔(a)成分〕の消炎作用を増強する好適なグルコサミン類の割合として、(a)成分1重量部に対して0.001〜5000重量部、好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは1〜500重量部を挙げることができる。なかでも(a)成分の消炎作用を増強し、且つその苦味をマスキングする好適なグルコサミン類の割合として、(a)成分1重量部に対して0.01〜5000重量部、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.1〜3重量部を挙げることができる。
また本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、上記(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬および(b)グルコサミン類に加えて、さらに(c)コンドロイチン、またはコンドロイチン硫酸もしくはその塩(以下、これを総じて「コンドロイチン類」ともいう)を配合することができる。
(c)コンドロイチン類
コンドロイチン類は、その起源を問わず、サメなどの魚類や牛等の哺乳動物の軟骨から抽出したものを挙げることができるが、安全性の観点から好ましくは魚類に由来するものである。
ここでコンドロイチン硫酸の塩としては、薬理学的に(製薬上)又は生理学的Fに許容される塩であればよく、通常ナトリウム塩やカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、およびアルミニウム塩等を挙げることができる。これらは一種単独、または二種以上を任意に組み合わせて使用することができる。好ましくはナトリウム塩である。
本発明においてコンドロイチン類として好ましくは、コンドロイチン硫酸ナトリウムである。
消炎鎮痛用経口医薬組成物中に含まれるコンドロイチン類の割合としては、特に制限されないが、通常、消炎鎮痛用経口医薬組成物の一日投与あたりに、コンドロイチン類が0.01〜2000mg、好ましくは0.1〜1000mgとなるような割合で含まれていることが望ましい。この範囲となるように、消炎鎮痛用経口医薬組成物100重量%中のコンドロイチン類の含有割合を、0.000002〜85重量%、好ましくは0.0001〜65重量%の範囲から適宜調整することができる。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬〔(a)成分〕の消炎作用を、グルコサミン類とともに増強する好適なコンドロイチン類の割合として、(a)成分1重量部に対して0.0001〜5重量部、好ましくは0.0005〜2重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部を挙げることができる。また、(a)成分の消炎作用をグルコサミン類とともに増強すると同時に、(a)成分の苦味をマスキングする好適なコンドロイチン類の割合として、(a)成分1重量部に対して0.0001〜5重量部、好ましくは0.0005〜2重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部を挙げることができる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、上記(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に加えて、(b)グルコサミン類、または(b)グルコサミン類および(c)コンドロイチン類を含有するものであればよいが、本発明の消炎効果および苦味低減効果に悪影響を与えるものでなければ、例えば消炎、鎮痛または解熱の用途で用いられる薬効成分など、他の薬効成分配合の有無を制限するものではない。
より具体的には、ビタミン類(ビタミンA,D,E,K,Uなどの脂溶性ビタミン類;ビタミンB,C,Pなどの水溶性ビタミン類);解熱・鎮痛・消炎薬(スルピリンなどのピリン系解熱鎮痛薬;サリチル酸ナトリウム、アスピリン、エテンザミド、サリチルアミド、サザピリンなどのサリチル酸系薬剤、アセトアミノフェンなどのアニリン系薬剤、フルフェナム酸、メフェナム酸などのフェナム酸系薬剤、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンなどのアリール酢酸系薬剤、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾンなどのピラゾリジン系薬剤、ブコロームなどのピリミジン系薬剤、ピロキシカムなどのオキシカム系薬剤、イソプロピルアンチピリンなど);抗ヒスタミン薬(フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなど);鎮咳薬(例えば、リン酸コディン、リン酸ジヒドロコディン、クロペラスチン、デキストロメトルファン、ベンゾナテートなど);去痰薬(例えば、塩酸ブロムヘキシン);塩酸L−システイン、塩酸L−メチルシステイン、アセチルシステインなどの粘膜溶解液;カルボシステインなどの粘液修復薬;アリルイソプロピルアセチル尿素などの催眠鎮静剤;トラネキサム酸などの抗プラスミン剤;塩酸アンブロキソールなどの粘液潤滑薬;気管支拡張薬又は喘息治療薬(例えばシュードエフェドリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸テルブタリン、イソプロテレノール、サルブタモール、テルブタリンなどのβ2−アドレナリン受容体刺激薬、テオフィリン、アミノフィリン、プロキシフィリンなどのキサンチン系薬剤、クロモグリク酸など);カフェイン類;制酸剤;アミノ酸類;生薬などが例示できる。これらの薬効成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物の剤型は、経口投与形態を有するものであれば特に制限されない。例えば、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠およびドライシロップ剤などの経口投与固体製剤;または液剤、懸濁剤およびシロップ剤などの経口投与液体製剤とすることができる。また、薬効成分の放出性を制御した製剤形態を有するものであってもよい(例えば、速放性製剤、徐放性製剤など)。かかる剤型を有する製剤は、当業界の慣用法に従って調製することができる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、上記の経口投与形態に製剤化するため、またその安定化のために、薬学上経口投与に許容される各種の担体並びに添加剤を配合することもできる(例えば、局方または「医薬品添加物事典」(薬事日報社発行)などが参照できる。)。
経口投与剤用の担体または添加剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビトール、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、タルクなどの賦形剤;デンプン、α−デンプン、寒天、ゼラチン、アラビアガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、結晶セルロースなどの結合剤;炭酸カルシウム、クロスポピドン、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、無水ケイ酸などの滑沢剤;ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びプルロニックなどの懸濁化剤;白糖、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルフタレートなどのコーティング剤;白糖、ブドウ糖、サッカリンナトリウム、ソルビトール、クエン酸、及びアスパルテームなどの矯味剤等を挙げることができる。また上記成分の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、通常医薬品の添加物として許容される安定剤、乳化剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、湿潤剤、界面活性剤、粘稠剤、防腐剤、pH調整剤、着色剤、溶剤、溶解補助剤などの任意成分を所望に応じて添加することもできる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、前述する固体または液体の経口製剤(内服製剤)として調製され、投与することができる。本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、治療すべき症状の程度、及び投与方法により左右されるが、中に含まれている(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の成人に対する1日あたりの投与量が10〜2000mg、好ましくは100〜1000mg、より好ましくは150〜600mgを挙げることができる。この投与範囲であれば、1日に1〜数回に分けて投与することもできる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、好適には炎症を抑制する目的で使用することができる。しかし有効成分であるフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬は、消炎作用に加えて、鎮痛作用および解熱作用をも有しているため、炎症を伴う疼痛や発熱に対しても、疼痛を鎮め(鎮痛)発熱を抑える(解熱)目的で使用することもできる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物、特にフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としてイブプロフェンを含有する消炎鎮痛用経口医薬組成物は、関節炎、腱鞘炎、または炎症を伴う関節痛、腰痛、神経痛、筋肉痛若しくは肩こりなどの末梢における炎症の改善(消炎)や鎮痛を目的として好適に使用することができる。
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、前述する(b)グルコサミン類、または(b)グルコサミン類と(c)コンドロイチン類とを組み合わせて用いることにより、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の消炎作用が増強されて、少量で優れた消炎作用を発揮することができる。このため、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬について問題とされている胃腸障害などの副作用の発生を回避することができ、効能及び副作用の点から好ましい消炎鎮痛剤として用いることができる。
また本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、前述する(b)グルコサミン類、または(b)グルコサミン類と(c)コンドロイチン類とを組み合わせて用いることにより、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味が低減されるため、服用しやすい内服製剤として提供することができる。
II.フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味低減方法
本発明の方法は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、前述する(b)グルコサミン類、または(b)グルコサミン類と(c)コンドロイチン類とを組み合わせて使用することによって実施することができる。
対象とするフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としては、前記(I)に記載するものであって苦味を有する薬物を挙げることができる。好ましくは、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびプラノプロフェンであり、より好ましくはイブプロフェンである。
当該フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に組み合わせて用いられる(b)グルコサミン類としては、前記(I)に記載するグルコサミン、グルコサミン誘導体(好ましくはN−アセチルグルコサミン)またはそれらの塩を挙げることができる。好ましくはグルコサミンの薬学的に許容される塩であり、好ましくは塩酸グルコサミンまたは硫酸グルコサミンであり、より好ましくは塩酸グルコサミンである。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬と組み合わせて用いられる当該グルコサミン類の割合としては、両者を併用することによって増強された消炎作用に悪影響を与えることなく、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味を低減することのできる範囲であれば、特に制限されない。例えばフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬1重量部に対するグルコサミン類の使用割合として、通常0.01〜5000重量部の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.1〜3重量部の範囲である。
また(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬および(b)グルコサミン類と組み合わせて用いられる(c)コンドロイチン類としては、前記(I)に記載するコンドロイチン、コンドロイチン硫酸またはその塩を挙げることができる。好ましくはコンドロイチン硫酸の薬学的に許容される塩であり、より好ましくはコンドロイチン硫酸ナトリウムである。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬およびグルコサミン類と組み合わせて用いられるコンドロイチン類の割合としては、3成分を併用することによって増強された消炎作用に悪影響を与えることなく、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味を低減することのできる範囲であれば、特に制限されない。例えばフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬1重量部に対するコンドロイチン類の使用割合としては、通常0.0001〜5重量部の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.0005〜2重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部の範囲である。
本発明の方法によれば、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、前述する(b)グルコサミン類、または(b)グルコサミン類と(c)コンドロイチン類とを組み合わせて使用することにより、これらの成分を併用することによって増強された消炎作用を維持しながら、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の好ましくない苦味をマスキングし低減することができる。よって本発明は、苦味なく口当たりのよい経口投与タイプの消炎鎮痛剤を調製し、提供するために有効に利用することができる。
以下、実験例および実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
実験例1
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬は、プロスタグランジンE2(PGE2)等の炎症性メディエーターの産生を阻害することにより消炎および解熱鎮痛活性を発揮する薬物として知られている。そこでフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としてイブプロフェンを用いて、培養細胞に対するPGE2産生阻害率を測定して、本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物の消炎作用を評価した(Chong-Jeh Lo et al., Journal of trauma, Vol. 45, No.1, 1998, pp.19−24)。なお、ここではグルコサミン類として塩酸グルコサミンを、コンドロイチン類としてコンドロイチン硫酸ナトリムを用いた。
具体的には、マウスのマクロファージ細胞株RAW264(理化学研究所バイオリソースセンターから入手)を、表1に記載する被験組成物(比較例1〜12、実施例1〜4)の存在下または被験組成物の非存在下(コントロール群)で、0.2μg/mLのエンドトキシン(LPS)を含む培地(10%牛胎児血清(FCS)を含むMEM培地)で24時間インキュベートし(LPSで刺激し)、培養上清を回収した。次いで、回収した上清中に含まれるPGE2の量を吸光度法で測定し、その量をコントロール群の結果と比較して、PGE2産生阻害率を算出した。その結果を表1に併せて示す。
Figure 0004601595
比較例5および8と実施例1の結果を対比したグラフを図1;比較例5、8、11および12と実施例1および2の結果を対比したグラフを図2;および比較例2、4および6と実施例3および4の結果を対比したグラフを図3に示す。
図1に示すように、塩酸グルコサミン1μg/mL単独(比較例8)では殆どPGE2産生阻害作用はないにも関わらず、イブプロフェン1μg/mLと併用することによって、イブプロフェンのPGE2産生抑制作用が顕著に向上した(実施例1)。また、図2に示すように、塩酸グルコサミン1μg/mL(比較例8)、コンドロイチン硫酸ナトリウム1μg/mL(比較例11)、および塩酸グルコサミン1μg/mL+コンドロイチン硫酸ナトリウム1μg/mL(比較例12)では、殆どPGE2産生抑制作用がないにも関わらず、イブプロフェン1μg/mLと組み合わせることで、イブプロフェンのPGE2産生抑制作用が顕著に向上した(実施例2)。特にイブプロフェン、塩酸グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸ナトリウムの3種を併用すると(実施例2)、イブプロフェンと塩酸グルコサミンの2種を組み合わせた場合(実施例1)よりも一層PGE2産生抑制作用が増強され、PGE2産生抑制率100%に近づいた。これらのことから、イブプロフェンに塩酸グルコサミンまたは塩酸グルコサミンとコンドロイチン硫酸ナトリウムを組み合わせることにより、イブプロフェンの消炎作用が相乗的に向上することが明らかとなった。
また、図3に示すように、イブプロフェン0.1μg/mL単独ではPGE2産生阻害率が20%であるが(比較例2)、これに塩酸グルコサミン50μg/mLを組み合わせることによって(実施例3)、イブプロフェン0.5μg/mL単独(比較例4)の場合とほぼ同等のPGE2産生阻害効果が得られること、またイブプロフェン0.1μg/mLにグルコサミン500μg/mLを組み合わせることによって(実施例4)、イブプロフェン10μg/mL単独(比較例6)の場合とほぼ同等のPGE2産生阻害効果が得られることが明らかとなった。
これらのことから、イブプロフェンに塩酸グルコサミンまたは塩酸グルコサミンとコンドロイチン硫酸ナトリウムを組み合わせることにより、イブプロフェンの有効量を顕著に低減することができ、その結果、イブプロフェンが有する胃腸障害などの副作用の発生を防止することができることが明らかとなった。
実験例2
本発明の消炎鎮痛用経口医薬組成物の関節炎に対する消炎作用を評価するために、下記の実験を行った。
<実験方法>
(1)体重100g前後のFicher344系雄ラット(5週齢)(日本エスエルシー株式会社)の後左足の足てい部分に牛酪菌をアジュバンドとして接種して関節炎を誘発した。接種から12日目より毎日被験組成物〔比較例13:イブプロフェン(1日投与量30mg/kg体重)、実施例5(3成分配合剤):イブプロフェン(1日投与量30mg/kg体重)+塩酸グルコサミン(1日投与量33.2mg/kg体重)+コンドロイチン硫酸ナトリウム(1日投与量0.00264mg/kg体重)〕を経口投与し、投与後10日目と15日目に左足(アジュバンド接種足)の足容積を測定した。また対照例として、アジュバンド接種後、何も処理しない無処理群についても同様に左足(アジュバンド接種足)の足容積を測定した。
被験組成物投与群および無処理群について得られた足容積から、下式に従って浮腫率および浮腫抑制率を算出した(藤平栄一,“薬効検定のためのRat-adjuvant病”「リウマチ」, Vol. 8, 1968, p.14など参照)。
Figure 0004601595
Figure 0004601595
(2)また、被験組成物投与15日目の後、右肢(アジュバンド非接種)を切断し、病理組織学検査により関節炎の重傷度を確認した(検体数:3)。
<結果>
(1)浮腫抑制率を評価した結果を、表2および図4に示す。
Figure 0004601595
この結果から、イブプロフェン単独(比較例13)よりも、イブプロフェンに塩酸グルコサミンとコンドロイチン硫酸ナトリウムを併用することによって(実施例5)、関節炎によって生じた浮腫を抑制する効果(消炎効果)が顕著に増強することが明らかになった。
(2)病理組織学検査の結果(所見)を表3に示す。
なお、表3中、数字は該当する検体数を意味する。
Figure 0004601595
この結果からわかるように、イブプロフェン単独(比較例13)よりも、イブプロフェンに塩酸グルコサミンとコンドロイチン硫酸ナトリウムを併用することによって(実施例5)、関節炎の症状がより有意に抑制されることが明らかになった。
実験例3
グルコサミン類、またはグルコサミン類とコンドロイチン類の併用によるフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の苦味低減効果を、グルコサミン類として塩酸グルコサミン、コンドロイチン類としてコンドロイチン硫酸ナトリウム、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としてイブプロフェンを用いて評価した。
具体的には、表4に記載する各成分を一般的な散剤の製造方法に従って製剤化し粉末状の製剤を調製した(比較例14〜15、実施例6〜15)。これを6人のメンバーからなる味パネラーに服用(口中に10秒間保持し服用)してもらい、以下の評価基準に従って、(1)苦味、(2)口当たり〔服用したときの刺激感(ピリピリ感)の有無〕を各々点数化してもらった。(3) 総合的な服用感(比較例14(イブプロフェン100mg))と比較した場合の服用感の向上効果)は、各人の(1)と(2)の点数を乗じて算出した。
<評価基準>
(1)苦味
5点:苦味なし
4点:殆ど苦味なし
3点:やや苦味あり
2点:苦味あり
1点:強烈に苦味あり。
(2)口当たり
3点:口当たりがとてもよい
2点:口当たりがややよい
1点:どちらともいえない。
(3)総合的な服用感
比較例14(イブプロフェン100mg)と比較した場合の服用感の向上効果を下記の基準で評価:
12〜15点 :服用感が非常に向上している
9〜12点未満:服用感がかなり向上している
6〜9点未満 :服用感が向上している
3〜6点未満 :服用感がやや向上している
1〜3点未満 :服用感変わらず。
結果を表4に併せて示す。なお、結果は6名のパネラーの平均値として示す。
Figure 0004601595
表4からわかるようにイブプロフェンに塩酸グルコサミンを配合することにより、イブプロフェンの苦味が有意に低減された。特に、イブプロフェン100mgに塩酸グルコサミンを10mgの割合で配合することによりパネラー全員が苦味が殆ど感じず、さらに塩酸グルコサミンを300mgの割合で配合することによりパネラー全員が苦味を完全に感じないほどに、イブプロフェンの苦味をマスキングすることができた。また塩酸グルコサミンの苦味マスキング効果は、コンドロイチン硫酸ナトリムを併用することによって増強された。
また口当たりも、イブプロフェンに塩酸グルコサミンを配合することにより、またさらにコンドロイチン硫酸ナトリムを併用することによって向上することが確認された。
実施例16 錠剤6錠(1日投与量)の処方例
イブプロフェン 450 mg
塩酸グルコサミン 500 mg
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.4 mg
結晶セルロース 100 mg
乳糖 適量
トウモロコシデンプン 300 mg。
実施例17 顆粒剤(1日投与量)の処方例
イブプロフェン 450 mg
塩酸グルコサミン 500 mg
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.4 mg
デキストリン 500 mg
トウモロコシデンプン 300 mg
キシリトール 1000 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 100 mg
香料 微量。
実験例1において、比較例5(イブプロフェン1μg/mL)、比較例8(塩酸グルコサミン1μg/mL)、実施例1(イブプロフェン1μg/mL+塩酸グルコサミン1μg/mL)のPGE2産生阻害作用を対比したグラフを示す。 実験例1において、比較例5(イブプロフェン1μg/mL)、比較例8(塩酸グルコサミン1μg/mL)、比較例11(コンドロイチン硫酸ナトリウム1μg/mL)、比較例12(塩酸グルコサミン1μg/mL+コンドロイチン硫酸ナトリウム1μg/mL)、実施例1(イブプロフェン1μg/mL+塩酸グルコサミン1μg/mL)および実施例2(イブプロフェン1μg/mL+塩酸グルコサミン1μg/mL+コンドロイチン硫酸ナトリウム1μg/mL)のPGE2産生阻害作用を対比したグラフを示す。 実験例1において、比較例2(イブプロフェン0.1μg/mL)、比較例4(イブプロフェン1μg/mL)、比較例6(イブプロフェン10μg/mL)、実施例3(イブプロフェン0.1μg/mL+塩酸グルコサミン50μg/mL)および実施例4(イブプロフェン0.1μg/mL+塩酸グルコサミン500μg/mL)のPGE2産生阻害作用を対比したグラフを示す。 実験例2において、比較例13(イブプロフェン(1日投与量30mg/kg体重))と実施例5(イブプロフェン(1日投与量30mg/kg体重)+塩酸グルコサミン(1日投与量33.2mg/kg体重)+コンドロイチン硫酸ナトリウム(1日投与量0.00264mg/kg体重))の浮腫抑制作用を対比したグラフを示す。

Claims (1)

  1. (a)イブプロフェン、(b)グルコサミンまたはその塩、ならびに(c)コンドロイチン、コンドロイチン硫酸またはその塩を含有し、
    該(a)成分1重量部に対して、該(b)成分が1〜3重量部、該(c)成分が0.0005〜0.1重量部である、消炎鎮痛用経口医薬組成物。
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