JP4599290B2 - 量子情報処理装置および方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁場の印加によりコヒーレンス時間を長くした物理系を、共振器モードを用いた量子情報処理装置に利用する際に、その磁場で長くなったコヒーレンス時間を有効に利用するための磁場の印加方法に関する量子情報処理方法、および、コヒーレンス時間を有効に利用することが可能な量子情報処理装置に関する。
量子コンピューターを始めとする量子情報処理装置では、原子やイオン、光子などの物理系のある物理量に関する重ね合わせの状態で情報(量子ビット)を表す。そして、それぞれの量子ビットを個別に操作する、あるいは物理系の間に相互作用を導入しある物理系の量子ビットに応じてもう片方の量子ビットが変化する条件付ゲート操作などを行う、などを繰り返して情報処理を行う。
この情報処理の間、物理系はその物理量のコヒーレンシーを保つ必要があるため、コヒーレンス時間(または、コヒーレンシーが壊れるまでの時間という意味で、デコヒーレンス時間とも呼ばれる。デコヒーレンスはコヒーレンシーが壊れることを意味する)の長い物理系が必要である。酸化物結晶中に分散させた希土類イオンの超微細構造準位のコヒーレンス時間は、固体としては特異的に長く、しかも可視光周波数近辺の光の周波数領域の電磁場で操作可能なため、この希土類イオンは量子情報処理装置を固体材料で構成できる物理系として大変有望である(例えば、非特許文献1、2参照)。
さらに近年、結晶中の希土類イオンの超微細構造準位のコヒーレンス時間をのばす、非常に有力な方法が提案され(例えば、非特許文献3参照)、コヒーレンス時間の顕著な増大が実験で確認されている。しかし、一度にデコヒーレンスが顕著に抑制されるのは一般に一組のエネルギー状態間のデコヒーレンスだけである。
K. Ichimura, K. Yamamoto, and N. Gemma, Phys. Rev. A 58(5), 4116(1998). K. Ichimura, Opt. Commun. 196, 119(2001). E. Fraval, M. J. Sellars, and J. J. Longdell, Phys. Rev. Lett. 92(7), 077601(2004).
結晶中の希土類イオンを量子情報処理デバイスに利用する場合には、現在、共振器モードを利用することがほとんど必須である。共振器モードを利用する場合、磁場印加によるデコヒーレンスの抑制が量子情報処理にとって実際に有効に働くためには、どのエネルギー状態間のデコヒーレンスを抑制すればよいか、あるいは磁場印加のタイミングをどうすればよいかなどの具体的な磁場印加方法は知られていない。
この発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、共振器モードを利用する量子情報処理装置での量子ビットの大幅にのびたコヒーレンス時間を量子情報処理に実際に役立てる量子情報処理装置および量子情報処理方法を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明の量子情報処理装置は、単一の共振器モードを有する共振器と、前記共振器の内部に含まれ、内部に複数の物理系を含んでいて、各物理系は少なくとも4つのエネルギー状態を有し該物理系に磁場が印加されていない場合に複数の前記エネルギー状態は互いに縮退せず、複数の前記エネルギー状態のうちの2つのエネルギー状態間の遷移が前記単一の共振器モードに共鳴し、前記エネルギー状態で量子ビットを表現し、前記エネルギー状態のうちの少なくとも2つのエネルギー状態の間の遷移エネルギーが磁場の印加によりエネルギーシフトを起こす物質と、量子ビットを表すエネルギー状態のある2つのエネルギー状態間の遷移エネルギーに対し、線形の遷移エネルギーシフトが消失するように、該遷移エネルギーに固有の向きと固有の大きさを有する磁場を前記物質に印加する磁場印加部と、を具備し、前記物質で、前記遷移エネルギーシフトが消失される2つのエネルギー状態が前記単一の共振器モードと共鳴する2つのエネルギー状態のいずれも含まないことを特徴とする。
また、本発明の量子情報処理装置は、単一の共振器モードを有する共振器と、前記共振器の内部に含まれ、内部に複数の物理系を含んでいて、各物理系は、複数の前記エネルギー状態のうちの2つのエネルギー状態間の遷移が前記単一の共振器モードに共鳴し、前記エネルギー状態のうちの縮退しているエネルギー状態で量子ビットを表現する物質と、前記複数の物理系に磁場を印加する磁場印加部と、レーザーを出力する光源と、前記レーザーを複数のレーザーに分離する分離部と、前記分離されたレーザーごとに位相、強度、周波数を制御するレーザー制御部と、各制御されたレーザーを前記複数の物理系に照射する照射部と、前記磁場の印加を制御する磁場制御部と、を具備し、2量子ビットゲートの際の共振器モードを利用した2つの物理系間のアディアバティック・パッセージの間だけ、前記磁場制御部は前記磁場印加部による磁場の印加を中断させ、前記レーザー制御部は前記レーザーがパルス状になるように制御することを特徴とする。
本発明の量子情報処理装置および量子情報処理方法によれば、共振器モードを利用する量子情報処理装置での量子ビットの大幅にのびたコヒーレンス時間を量子情報処理に実際に役立てることができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る量子情報処理装置および量子情報処理方法について詳細に説明する。
まず、本実施形態の量子情報処理装置および量子情報処理方法の本質的な事項について説明する。本実施形態では、磁場の印加によりcritical point(後述)に移行させ、コヒーレンス時間を大幅に増大させるエネルギー状態を、共振器モードに共鳴するエネルギー状態を含まない、量子情報が長時間とどまっているエネルギー状態とする。本実施形態の量子情報処理装置および方法は、この磁場の印加によって得られた長いコヒーレンス時間を有効に利用し、実行可能な最大のステップ数(一連の量子演算の実行回数)を多く、あるはこのステップ数と量子ビット数を多くする。すなわち、本発明の実施形態によれば量子計算による処理能力を大きくすることが可能になる。
また、本実施形態の量子情報処理装置および方法は、外場が印加されない場合には縮退しているエネルギー状態で量子情報を表す場合、縮退を利用する2量子ビットゲートにおけるアディアバティック・パッセージ(adiabatic passage)実行中を除いて定常磁場を印加し続けることにより、実行可能な最大のステップ数、あるいはこのステップ数と量子ビット数の両方を増大させた量子情報処理を可能にする。
次に、本発明の実施形態に係る量子情報処理装置および量子情報処理方法について詳細な説明をする前に、本発明の実施形態により、量子情報処理に有効な仕方でコヒーレンス時間が増大し、ステップ数あるいはステップ数と量子ビット数の大幅な増大が可能になる機構を説明する。
本発明の実施形態では、磁場の印加により物質中(例えば、結晶中)に分散した希土類イオンの核スピンのデコヒーレンスを押さえる、Fravalらの提案した方法(E. Fraval, M. J. Sellars, and J. J. Longdell, Phys. Rev. Lett. 92(7), 077601(2004))を利用する。希土類イオン分散結晶を液体ヘリウム温度まで冷やした場合、希土類イオンの核スピンがコヒーレンシーを失う原因となるのは、母体結晶を構成する原子、イオンの核スピンの揺らぎが分散させた希土類イオンの場所に生じさせる磁場の揺らぎである。Fravalらの方法では、ある着目した、分散した希土類イオンの核スピンの2つのエネルギー状態間の遷移エネルギーの磁場に対する線形の変化(1次のゼーマンシフト)が消失あるいは極めて小さくなるような、その2つのエネルギー状態に固有の向きと固有の大きさの磁場を印加する。このような磁場が印加された状態では、着目された2つの状態は3次元的なcritical pointにあると表現される。そのような磁場が印加されると、その2つのエネルギー状態間のデコヒーレンスが抑制される。
Fravalらは、Pr3+:YSiOの電子基底状態の核スピンの状態m=+1/2⇔+3/2の遷移をcritical pointにもっていく(x,y,z)=(732,173,−219)Gの磁場をPr3+:YSiOに印加すると、コヒーレンス時間が、それまでのコヒーレンス時間の最大測定値である約500μsから82msにまで増大することを観測している。ただし、結晶のC軸がy軸方向、の光学遷移の偏光方向がz軸方向である。
critical pointでは、デコヒーレンスを表すラマン・ヘテロダイン・スピン・エコー信号の減衰が、単純な指数関数ではなくI=Iexp{−(2t/T}で表され、コヒーレンス時間を表す82msは、この式のT(位相メモリー時間)である。ここで、Iはラマン・ヘテロダイン・スピン・エコー信号の強度を示し、Iは初期のラマン・ヘテロダイン・スピン・エコー信号の強度を示し、tは時間を示している。このような状況のデコヒーレンスの原因は解析されており、パルス列の印加でさらにコヒーレンス時間の増大が可能である(E. Fraval, M. J. Sellars, and J. J. Longdell, Phys. Rev. Lett. 95, 030506(2005).)。また、30G程度の磁場の印加で、もともと縮退していたエネルギー状態間のコヒーレンス時間も大きく増大することが観測されている(m=+3/2⇔−3/2で5.86ms)。
この磁場の印加によるコヒーレンス時間増大には、以下の2つの特徴がある。
(1)critical pointにもっていくことでデコヒーレンスを顕著に抑制できるのは、一般にはゼロ磁場では縮退していない一組のエネルギー状態のみである。
(2)ゼロ磁場で縮退しているエネルギー状態間のコヒーレンス時間は、磁場印加でのびる。
ところで、希土類イオン分散結晶を量子情報処理デバイスに実際に利用しようとする場合、図1に象徴的に示したように、共振器モードを利用して量子ビット間の相互作用を導入するのが現実的である。共振器モードはいわば「見えない配線」である。イオン1つずつを位置制御しつつ近接して並べ、相互作用を導入するのは困難であるから、共振器モードを利用する方が簡便かつ確実である。
この共振器モードは、量子ビットを担う2つの物理系間で条件付きゲートを行う際に利用する。量子ビットを担う各物理系は、量子ビットの単独操作(1量子ビットゲート)、2量子ビット間の条件付きゲート操作、あるいは何も操作しないで保持する、などの操作や状態に応じて、次々に物理系内の異なるエネルギー状態が量子ビットを表すように操作されていく。これらの操作を、個々のイオンに対して個別に行うには、量子ビットとして利用するイオンとして、それぞれのエネルギー状態のエネルギー(つまりエネルギー状態間の遷移エネルギー)がイオン間で異なるものを利用し(図1には、遷移エネルギーのイオン間での違いは表現されていない)、照射する光の周波数を操作したいイオンに合わせることで実行する。
図1に示した例では、ゲート操作をされずに待機している状態のイオン(1〜k−1番目、k+1〜l−1番目、l+1〜n番目のイオン)では、量子ビットは、例えば、|A>と|B>とで表現される。2量子ビットゲートが実行されるイオン(k、l番目のイオン)でのみ|C>も量子ビットを表現するために一時的に利用される。ただし、必ずしもk、l番目のイオンの両方で、あるいは、両方で同時に量子情報が|C>に移されるわけではない。
このような量子ビットによる情報処理の際、それぞれの物理系で量子ビットを表しているエネルギー状態に応じてその状態がcritical pointになるように磁場を印加しようとしても、以下の理由で困難である。
第一に、複数の量子ビットを扱う動作中の量子情報処理装置では、ある時刻においてそれぞれの物理系で量子ビットを表しているエネルギー状態が異なるため、個々の物理系に合わせて異なる向き、異なる大きさの磁場を印加する必要があり、現実的でない。第二に、同じ物理系内(例えば単一のイオン)で2つ以上の量子ビットを表現する場合があり、その際には、それぞれの量子ビットを表すエネルギー状態の組を同時にcritical pointにすることはできない。
したがって、全ての物理系に対して同じ向き、同じ大きさの磁場を同時に印加するのが現実的な方法である。また、その磁場でcritical pointにもっていき、コヒーレンス時間を顕著にのばす2つのエネルギー状態としては、量子ビットを最も長時間保持する必要のあるエネルギー状態、すなわち情報処理中に最も長時間、量子ビットを表さなければならないエネルギー状態を選択するのが有効である。
それぞれの物理系のエネルギー状態で量子ビットを表している時間がより長いのは、後に第1の実施形態で説明するように、共振器モードと共鳴していないエネルギー状態である(例えば、図1の|A>と|B>)。共振器モードと共鳴しているエネルギー状態は、ある2つの量子ビット間で2量子ビットゲートを行う必要が生じた際、対象である量子ビットを表している2つの物理系においてのみ量子ビットを表すのに用いられ、共振器モードを介した2量子ビットゲートが実行されることになる。その他の量子ビットは対象となる量子ビット間で行われている2量子ビットゲートの影響を受けないように、共振器モードと共鳴していないエネルギー状態で表されたままである。2量子ビットゲート実行後は、2量子ビットゲートの対象となった量子ビットも、共振器モードと共鳴しないエネルギー状態に戻される。
本発明の実施形態では、ゼロ磁場で縮退していないエネルギー状態で量子ビットを表す量子情報処理の場合には(例えば、H. Goto and K. Ichimura, Phys. Rev. A 70(1), 012305(2004).)、共振器モードに共鳴する2つのエネルギー状態のいずれも含まない、長時間、量子ビットを保持する必要のある2つのエネルギー状態間の遷移をcritical pointに持っていくこと(上記(1)に対応)で、顕著に増大したコヒーレンス時間を有効に利用することが可能になる(図2)。
縮退したエネルギー状態で量子ビットを表す量子情報処理の場合には、その縮退した2つのエネルギー状態をcritical pointにもっていくことはできない。しかし磁場の印加により縮退が解けたエネルギー状態のコヒーレンス時間は長くなる(上記(2)に対応)。したがって、量子ビットを保持するだけであれば、磁場を印加し続けることが望ましい。この磁場の大きさは、結晶の種類、どのレベルの縮退を解くかによって決まる。しかし、この場合、知られている、共振器モードを利用した2量子ビットゲート(例えば、K. Ichimura, Opt. Commun. 196, 119(2001).)では、対象となる2つの量子ビットを表す2つの物理系間で、アディアバティック・パッセージという手法を利用する際、量子ビットを表すエネルギー状態が縮退していることを利用しているため、その際には磁場の印加を中断する必要がある。したがって、この場合には、定常的に磁場を印加し、2量子ビットゲートのアディアバティック・パッセージの際のみ磁場の印加を中断する、という磁場の印加方法が有効である(図3)。
以上のようにして、本発明の実施形態では、共振器モードを利用する量子情報処理デバイスにおいて、磁場の印加によりコヒーレンス時間を増大させる際に、critical pointにもっていくエネルギー状態、タイミングを適切に選ぶことにより、増大したコヒーレンス時間を量子情報処理に有効に利用することが可能になる。
(第1の実施形態)
本実施形態の量子情報処理装置および方法について図4を参照して説明する。
本実施形態では、上述した「(1)critical pointにもっていくことでデコヒーレンスを顕著に抑制できるのは、一般にはゼロ磁場では縮退していない一組のエネルギー状態のみである」の場合の一例について説明する。
本実施形態の量子情報処理装置は、図4に示したように、制御部401、希土類分散結晶404、共振器405、コイル406,407,408、クライオスタット409、回転装置410を備えている。制御部401は、磁場指定部402、回転指定部403を含んでいる。
制御部401は、希土類分散結晶404に印加する磁場の向き、大きさを制御する。磁場指定部402は、コイル406,407,408のそれぞれに電流を流し、希土類分散結晶404に磁場を印加する。また磁場指定部402は、コイル406,407,408のそれぞれに流す電流の大きさを調整して、磁場の向き、大きさを制御する。回転装置410は、希土類分散結晶404を3次元的に回転させる。すなわち、回転装置410は、互いに平行でない3軸に関して希土類分散結晶404を回転させることができる。回転装置410によれば、希土類分散結晶404に印加する磁場の向きを自在に調整することができる。
図4には、コイル406,407,408、回転装置410ともに示したが、コイル406,407,408だけでも希土類分散結晶404に印加する磁場の向き、大きさを制御することができる。また、コイル406,407,408のいずれか1組のコイルと回転装置410とを組み合わせても、希土類分散結晶404に印加する磁場の向き、大きさを制御することができる。コイル406,407,408は、例えば、電磁石、超電導磁石である。
希土類分散結晶404は希土類イオンを分散した結晶であり、結晶中に分散させた希土類イオンの核スピンは重ね合わせの状態をつくる。希土類分散結晶404は、EIT(Electromagnetically Induced Transparency)発現に成功した固体材料である。EITを発現させることができた物質は、固体としては特異的に長く量子力学的な重ね合わせの状態を保つことができ、また光で量子状態の操作、観測ができる。EITは光学的性質を劇的に変化させる現象である。EITの本質的な性質は、光を吸収しなくなる重ね合わせの状態ができ、エネルギーの高い状態に原子やイオンが励起されなくなるというものである。固体EITを発現する物質としては、希土類イオンを含む結晶(Pr3+:YSiO)があり、準位はイオンの超微細構造準位を含む準位系を利用する。
希土類分散結晶404は、希土類イオンを含んだ酸化物結晶であり、本実施形態では、0.01%のY3+イオンをPr3+イオンに置換したPr3+:YSiO結晶を利用する。量子ビットを表す物理系は、Pr3+:YSiO結晶中のPr3+イオンである。希土類分散結晶404は、1mm×1mm×1mm程度の大きさで、表面に超高反射率のミラーが形成され、共振器構造になっている。
共振器405は、共振器モードを有する。共振器モードが、Pr3+イオンの間遷移に共鳴するように作られている。
コイル406,407,408は、図4に示すように結晶の周囲に設けられ、特定の向きに、ある大きさの磁場を印加する。図4では、コイル406,407が同一面を含んで希土類分散結晶404の周囲に配置され、この平面に垂直な方向に希土類分散結晶404を挟むようにコイル408の組が配置されている。
クライオスタット409は、クライオスタット409の中を1.5Kの温度に保つ。
次に、希土類分散結晶404に磁場を印加した場合に2つのエネルギー状態間のデコヒーレンスが抑制されることについて図5を参照して説明する。図5は、磁場を印加した場合の本実施形態で利用する3つのPr3+イオンのエネルギー状態を示した図である。
図5では、ある一つのイオンの電子基底状態の状態|±1/2>と状態|±3/2>との2つのエネルギー状態がcritical pointになるようにコイル406,407,408が希土類分散結晶404に磁場を印加する。コイル406,407,408は、例えば、結晶のC軸方向、間遷移の偏光方向、それら2つと直交する方向にそれぞれ173G、−219G、732Gの磁場を印加する。この磁場の向きと大きさは、量子ビットを表すエネルギー状態のある2つのエネルギー状態間の遷移エネルギーに対し、線形の遷移エネルギーシフトが消失するものであり、遷移エネルギーに固有なものである。
図5に示すように、それぞれのイオンの電子基底状態および電子励起状態から超微細構造分裂で生じた状態がさらに磁場の印加で分裂している。本実施形態で利用する状態を図5に示したエネルギーが低い順で|A’>、|A>、|B’>、|B>、|C’>、|C>、|D’>、|D>、|E’>、|E>、|F’>、|F>としている。本実施形態では、それぞれのイオンの|A>−|D>間遷移が全て共通の共振器モードに共鳴している3つのイオンを利用する。
まず、|A’>、|A>、|B’>、|B>、|C’>、|C>、|D’>、|D>、|E’>、|E>、|F’>、|F>をそれぞれ、|2’>、|2>、|0’>、|0>、|1’>、|1>、|3’>、|3>、|4’>、|4>、|5’>、|5>と呼ぶことにする。それぞれのイオンの12のエネルギー状態のうちの2つの状態間を結ぶ遷移エネルギーのうち、|2’>、|2>、|3’>、|3>の4つのエネルギー状態のうちの2つの状態間の遷移エネルギー以外の遷移エネルギーは、お互い不均一幅内で散らばり、イオン間で異なる遷移周波数を持つイオンを利用し、照射光の周波数を調整することで共鳴するイオンを選択できる。
次に、上述したようにコヒーレンシーを保った状態をつくることができたので、ゲート操作について説明する。ゲート操作では、光を希土類分散結晶404に入射する必要がある。まず、ゲート操作で使用する装置も含めた量子情報処理装置について図6を参照して説明する。
図6の量子情報処理装置は、図4に示した量子情報処理装置に加えて、リング色素レーザー601、4つのビームスプリッター602、ミラー603、位相変調用EOモジュレータ(EOM)604、強度変調用AOモジュレータ(AOM)605、周波数変調用AOM606、5つのミラー607、コントロール部608、光検出器610を備えている。コントロール部608は、磁場指定部602、位相強度周波数調整部609を備えている。以下、既に説明した装置部分と同様なものは同一の番号を付してその説明を省略する。図6では、コイルを2組だけ備え、回転指定部403は備えていないが、図4を参照して説明したようにコイルを1組、かつ、回転指定部403を備えていたり、コイルを3組だけ備えていてもよい。
リング色素レーザー601は、光源として光を生成する。リング色素レーザー601は、周波数ジッターを抑えるフィードバック系を備え、周波数を数kHzに狭窄化したレーザーを生成する。
ビームスプリッター602は、リング色素レーザー601からの光を受け入れ、透過光と反射光にわける。図6の例では、4つのビームスプリッター602がリング色素レーザー601からの光を5つにわける。ミラー603は、終端にあるビームスプリッター602(図6に示した4つのビームスプリッター602のうちの最上方に記述されているもの)の透過光を受け入れ、反射する。
位相変調用EOM604は、それぞれ対応するビームスプリッター602またはミラー603からの光を受け入れ、光の位相を変調する。強度変調用AOM605は、それぞれ対応する位相変調用EOM604からの光を受け入れ、光の強度を変調する。周波数変調用AOM606は、それぞれ対応する強度変調用AOM605からの光を受け入れ、光の周波数を変調する。
ミラー607は、それぞれ対応する周波数変調用AOM606からの光を受け入れ、反射する。各ミラー607は、反射光が希土類分散結晶404に照射するように調整されている。
光検出器610は、高効率の集光系を備えていて、希土類分散結晶404に光を照射した際、結晶中のイオンから生じる光子を、高感度、高効率に検出する。
コントロール部608は、希土類分散結晶404に印加する磁場を生成するコイル406,407に流れる電流を制御したり、位相変調用EOM604、強度変調用AOM605、周波数変調用AOM606を制御する。位相強度周波数調整部609は、位相変調用EOM604のそれぞれで変調させるべき位相を決定し各位相変調用EOM604を調整し、強度変調用AOM605のそれぞれで変調させるべき強度を決定し各強度変調用AOM605を調整し、周波数変調用AOM606のそれぞれで変調させるべき周波数を決定し各周波数変調用AOM606を調整する。
次に、ゲート操作について図5を参照して説明する。
図5に示したイオンを左からイオン1、イオン2、イオン3とする。図6の装置によって、イオン1、2、3に順次5本の光を同時に照射し、それぞれのイオンの状態を|0>または|1>に初期化する。例えばイオン1を|0>に初期化するには、イオン1の|2’>−|4’>、|2>−|4>、|0’>−|3’>、|1’>−|5’>、|1>−|5>間遷移にそれぞれ共鳴する光を同時に希土類分散結晶404に照射すればよい。このようにしてイオン1、2、3をそれぞれ、まず|0>、|0>、|0>に初期化する。
次いで、|2>−|4>間遷移と、|0>−|4>間遷移と|1>−|4>間遷移の2つの遷移からなる組と、の間で、それぞれの遷移に共鳴するパルス幅10μsのガウス型のパスル光の照射(|2>−|4>間遷移に先に照射)によるアディアバティック・パッセージを行う。ここで、エネルギー状態の下付きの添え字(|j>のk(j=0,1,2,3,4,5、k=1,2,3))はイオン1、2、3のいずれのエネルギー状態かを表す番号である。また、パルス幅10μsのガウス型のパスル光は、強度変調用AOM605により生成される。
次いで、|0>−|3>間遷移と|1>−|3>間遷移の2つの遷移からなる組と、|0>−|3>間遷移と|1>−|3>間遷移と|0>−|3>間遷移と|1>−|3>間遷移の4つの遷移からなる組と、の間で、それぞれの遷移に共鳴するパルス幅10μsのガウス型のパスル光を2回照射(1回目は前の組に先に照射、2回目は後の組に先に照射し、2回目の前の組への照射では光の位相を反転)することによるアディアバティック・パッセージを行う。
最後に|2>−|4>間遷移と、|0>−|4>間遷移と|1>−|3>間遷移の2つの遷移からなる組と、の間で、最初とは逆のアディアバティック・パッセージを行う(後の組に先に照射)。
この一連のゲート操作は、|0>、|1>を量子ビットと見ると、
(|0>,|0>,|0>)→(|0>,|0>,|0>)、
(|0>,|1>,|0>)→(|0>,|1>,|0>)、
(|1>,|0>,|0>)→(|1>,|0>,|0>)、
(|1>,|1>,|0>)→(|1>,|1>,|1>
と量子状態を変化させる量子トフォリ・ゲートとなっている。
イオン1、2、3を(|0>,|0>,|0>)に初期化し上記の量子トフォリ・ゲートを10msの間隔をおいて3回実行し、最終結果を光照射と光子検出で読み出すと、(|0>,|0>,|0>)となる。同様にして、イオンを(|0>,|1>,|0>)、(|1>,|0>,|1>)、(|1>,|1>,|0>)に初期化した3つの場合について、それぞれ上記3回の量子トフォリ・ゲートを実行し、その最終結果を読み出すと、それぞれ(|0>,|1>,|0>)、(|1>,|0>,|0>)、(|1>,|1>,|1>)となる。
この3連続のトフォリ・ゲートを多数回実行して最終結果を読み出すと、90%以上の確率で、4つの初期状態(|0>,|0>,|0>)、(|0>,|1>,|0>)、(|1>,|0>,|0>)、(|1>,|1>,|0>)に対応する最終状態が、それぞれ(|0>,|0>,|0>)、(|0>,|1>,|0>)、(|1>,|0>,|0>)、(|1>,|1>,|1>)となる。これは、奇数回連続して実行すると、2つの制御ビット(イオン1、2の表す量子ビット)が(1,1)の場合のみ標的ビット(イオン3の量子ビット)が反転するという性質をもつ量子トフォリ・ゲートが約30msにわたる長いゲート時間の間、高い確率で正しく実行されることを意味する。それぞれの量子トフォリ・ゲートの間の10msは、多数の量子ビットによる情報処理を想定し、他の量子ビットが操作されている時間、あるいは、|0>、|1>のみで量子ビットを表しながらの量子ゲートを実行している時間として設定してある。
次に、critical pointに移行する2つのエネルギー状態のうちの片方が、共振器モードに共鳴する2つのエネルギー状態(|C>、|D>)の片方である場合に、量子トフォリ・ゲートが正しく実行されないことを示す。
上記の磁場を印加した状態で、それぞれのイオンの|C>−|D>間遷移が全て共振器モードに共鳴している3つのイオン、イオン4、5、6を選択する。この3つのイオンに対して、今度は、|A’>、|A>、|B’>、|B>、|C’>、|C>、|D’>、|D>、|E’>、|E>、|F’>、|F>をそれぞれ、|0’>、|0>、|1’>、|1>、|2’>、|2>、|3’>、|3>、|4’>、|4>、|5’>、|5>と呼ぶことにする。このイオン4、5、6も、それぞれのイオンの12のエネルギー状態のうちの2つの状態間を結ぶ遷移エネルギーのうち、|2>、|3>、|6>、|7>の4つのエネルギー状態のうちの2つの状態間の遷移エネルギー以外の遷移エネルギーは、お互い不均一幅内で散らばり、イオン間で異なる遷移周波数を持つようなイオンを利用し、照射光の周波数を調整することで共鳴するイオンを選択できるようになっている。
このイオン4、5、6を、イオン1、2、3と同様の方法で初期状態(|1>,|1>,|0>)に設定しさらにイオン1、2、3に施したのと同様の手続きでトフォリ・ゲートを10msの間隔をおいて3回実行し、最終結果を光照射と光子検出で読み出すという操作を多数回実行する。この場合、最終状態が(|1>,|1>,|1>)となる場合と、(|1>,|1>,|0>)となる場合が不規則に現れる。これは、イオン4、5、6に対しては、量子トフォリ・ゲートが正しく実行されないことを意味する。
磁場印加によりcritical pointに移行する2つのエネルギー状態(|B>、|C>)は、イオン1、2、3の場合は、量子ビットを表すエネルギー状態(|A>、|B>、|C>)のうちの、共振器モードに共鳴する2つのエネルギー状態(|A>、|D>)のいずれも含まないエネルギー状態である。一方、イオン4、5、6では、critical pointに移行する2つのエネルギー状態(|B>、|C>)のうちの片方(|C>)は、共振器モードに共鳴する2つのエネルギー状態(|C>、|D>)の片方となっている。量子情報処理装置および量子情報処理の方法に関する本実施形態により、量子ビットを表すエネルギー状態のうち、磁場印加でcritical pointに移行させる2つのエネルギー状態が共振器モードに共鳴するエネルギー状態を含まない場合に、磁場印加により増大したコヒーレンス時間が有効に働き、一連の量子ゲートが正常に動作することが確認できる。
以上に示した本実施形態の量子情報処理装置および量子情報処理の方法によれば、量子ビットを表すエネルギー状態が、ゼロ磁場において縮退していない一組のエネルギー状態は、特定の向きに特定の大きさの磁場を希土類分散結晶に印加することで増大したコヒーレンス時間を有効に利用し、一連の量子ゲートを正常に動作させることが可能であることが確認できる。
(第2の実施形態)
本実施形態の量子情報処理装置および方法について図6を参照して説明する。
本実施形態では、上述した「(2)ゼロ磁場で縮退しているエネルギー状態間のコヒーレンス時間は、磁場印加でのびる」の場合の一例について説明する。
本実施形態での図6に示した量子情報処理装置は、第1の実施形態で説明した内容とほとんど同様であるが、異なる内容もある。ここでは、異なる内容についてのみ説明する。
本実施形態では、コイル406等が、図4に示すように結晶の周囲に設けられるのは第1の実施形態と同じである。しかし、本実施形態では、コイル406等は、結晶のC軸方向と間遷移の偏光方向の2方向に直交する方向に30Gの磁場を印加する。ここでは磁場の方向も指定しているが、本実施形態では、磁場をかけることが重要であり、磁場の方向は第1の実施形態ほど重要ではない。
磁場指定部402は、コイル406等に電流を流したり、流さなかったりすることができる。磁場指定部402は、いわば、コイル406等をオンまたはオフすることができる。
本実施形態でも図5に示されたのと同様の、磁場により縮退が解けたPr3+イオンのエネルギー状態を利用する。本実施形態では、それぞれのイオンの磁場を印加しない場合の|B>−|D>(|B’>−|D’>)間遷移が全て共通の共振器モードに共鳴している2つのイオンを利用する。
|A’>、|A>、|B’>、|B>、|C’>、|C>、|D’>、|D>、|E’>、|E>、|F’>、|F>をそれぞれ、|1>、|0>、|2>、|3>、|4>、|5>、|6>、|7>、|8>、|9>、|10>、|11>と呼ぶことにする。それぞれのイオンの|0>〜|11>の12のエネルギー状態のうちの2つの状態間を結ぶ遷移エネルギーのうち、|2>、|3>、|6>、|7>の4つのエネルギー状態のうちの2つの状態間の遷移エネルギー以外の遷移エネルギーは、お互い不均一幅内で散らばり、イオン間で異なる遷移周波数を持つイオンを利用し、照射光の周波数を調整することで共鳴するイオンを選択できる。
次に、ゲート操作について図7を参照して説明する。図7に本実施形態で利用する2つのイオンのエネルギー状態を示す。図中のイオンを左からイオン7、イオン8とする。
イオン7、8に順次5本の光を同時に照射し、それぞれのイオンの状態を|0>、|0>に初期化する。イオン7、8に照射する5本の光としては、例えば、|1>−|6>間遷移、|2>−|8>間遷移、|3>−|9>間遷移、|4>−|10>間遷移、|5>−|11>間遷移に共鳴する光を用いればよい。
次に、イオン7、8に対する2本のパルス幅10μsのガウス型のパスル光照射による3回のアディアバティック・パッセージで、|0>→|2>、|0>→|2>、|1>→|3>に量子状態を移す。
次に、磁場の印加を中断し、イオン7とイオン8との間にそれぞれ、|1>−|6>(|0>−|7>)間遷移に共鳴するパルス幅10μsのガウス型のパスル光照射によるアディアバティック・パッセージで、イオン7、8の量子状態を入れ替える。
次いでまた中断前と同様の磁場印加を開始した後、光照射でイオン8の|1>、|0>の量子状態を入れ替え、再度、イオン7とイオン8との間にそれぞれ、|1>−|6>(|0>−|7>)間遷移に共鳴する光照射によるアディアバティック・パッセージを施し、イオン7、8の量子状態を入れ替え、さらにイオン7、8に対する2本の光照射による3回のアディアバティック・パッセージで、量子ビットを元の|0>、|1>のエネルギー状態に戻す。
この一連のゲート操作は、|0>、|1>を量子ビットと見ると、
(|0>,|0>)→(|0>,|0>)、
(|0>,|1>)→(|0>,|1>)、
(|1>,|0>)→(|1>,|1>)、
(|1>,|1>)→(|1>,|0>
と量子状態を変化させる制御NOTゲートとなっている。
イオン7、8を(|0>,|0>)に初期化し上記の制御NOTゲートを300μsの間隔をおいて7回実行し、最終結果を光照射と光子検出で読み出すと、(|0>,|0>)となる。同様にして、イオンを(|0>,|1>)、(|1>,|0>)、(|1>,|1>)に初期化した3つの場合について、上記3回の制御NOTゲートを実行し、その最終結果を読み出すと、それぞれ(|0>,|1>)、(|1>,|1>)、(|1>,|0>)となる。この連続の制御NOTゲートを多数回実行して最終結果を読み出すと、90%以上の確率で、4つの初期状態(|0>,|0>)、(|0>,|1>)、(|1>,|0>)、(|1>,|1>)に対応する最終状態が、それぞれ(|0>,|0>)、(|0>,|1>)、(|1>,|1>)、(|1>,|0>)となる。これは、奇数回連続して実行すると、制御ビット(イオン7の量子ビット)が|1>の場合のみ標的ビット(イオン8の量子ビット)が反転するという性質をもつ制御NOTゲートが、約5msの長時間で実行される7回の多数回にわたって高い確率で正しく実行されることを意味する。
以上に示した本実施形態の量子情報処理装置および量子情報処理の方法によれば、量子ビットを表すエネルギー状態が、ゼロ磁場において縮退している場合には、定常的に磁場を印加し、2量子ビットゲートのアディアバティック・パッセージの際のみ磁場の印加を中断する、という磁場の印加方法により、磁場印加により増大したコヒーレンス時間を有効に利用し、一連の量子ゲートを正常に動作させることが可能であることが確認できる。
また、上述した実施形態により、個々のゲート操作の動作時間をのばすことも可能になる。そのため、周波数領域で(遷移エネルギーの違いで)量子ビットを区別するタイプの量子情報処理では、周波数(エネルギー)分解能を上げられる結果、量子ビット数を増大させることが可能になる。
さらに、上述した実施形態により、磁気的な相互作用を受ける物理系を量子ビットとする、共振器モードを利用する量子情報処理装置の量子ビットのコヒーレンス時間を磁場の印加により大幅にのばす場合に、大幅にのびたコヒーレンス時間を量子情報処理に実際に役立てる磁場の印加方法を提供することができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
複数の量子ビットを表す複数のイオンのエネルギー状態と共通の共振器モードとの関係を示す図。 本実施形態の量子情報処理装置および方法において、ゼロ磁場で縮退していないエネルギー状態で量子ビットを表す場合に、critical pointに持っていくエネルギー状態と共振器モードとの関係を示す図。 本実施形態の量子情報処理装置および方法において、ゼロ磁場で縮退しているエネルギー状態で量子ビットを表す場合に、磁場を印加するタイミングとエネルギー状態および共振器モードとの関係を示す図。 本発明の第1の実施形態の量子情報処理装置の、ゼロ磁場で縮退していないエネルギー状態で量子ビットを表す場合に、critical pointに持っていく場合のブロック図。 本発明の第1の実施形態での3つのPr3+イオンのエネルギー状態を示す図。 本発明の第1の実施形態でゲート操作をする際に使用する量子情報処理装置、第2の実施形態での量子情報処理装置のブロック図。 本発明の第2の実施形態での2つのPr3+イオンのエネルギー状態を示す図。
符号の説明
401…制御部、402…磁場指定部、403…回転指定部、404…希土類分散結晶、405…共振器、406,407,408…コイル、409…クライオスタット、410…回転装置、601…リング色素レーザー、602…ビームスプリッター、603,607…ミラー、604…位相変調用EOM、605…強度変調用AOM、606…周波数変調用AOM、608…コントロール部、609…位相強度周波数調整部、610…光検出器。

Claims (10)

  1. 単一の共振器モードを有する共振器と、
    前記共振器の内部に含まれ、内部に複数の物理系を含んでいて、各物理系は少なくとも4つのエネルギー状態を有し該物理系に磁場が印加されていない場合に複数の前記エネルギー状態は互いに縮退せず、複数の前記エネルギー状態のうちの2つのエネルギー状態間の遷移が前記単一の共振器モードに共鳴し、前記エネルギー状態で量子ビットを表現し、前記エネルギー状態のうちの少なくとも2つのエネルギー状態の間の遷移エネルギーが磁場の印加によりエネルギーシフトを起こす物質と、
    量子ビットを表すエネルギー状態のある2つのエネルギー状態間の遷移エネルギーに対し、線形の遷移エネルギーシフトが消失するように、該遷移エネルギーに固有の向きと固有の大きさを有する磁場を前記物質に印加する磁場印加部と、を具備し、
    前記物質で、前記遷移エネルギーシフトが消失される2つのエネルギー状態が前記単一の共振器モードと共鳴する2つのエネルギー状態のいずれも含まないことを特徴とする量子情報処理装置。
  2. 単一の共振器モードを有する共振器と、
    前記共振器の内部に含まれ、内部に複数の物理系を含んでいて、各物理系は、複数のエネルギー状態のうちの2つのエネルギー状態間の遷移が前記単一の共振器モードに共鳴し、前記エネルギー状態のうちの縮退しているエネルギー状態で量子ビットを表現する物質と、
    前記複数の物理系に磁場を印加する磁場印加部と、
    レーザーを出力する光源と、
    前記レーザーを複数のレーザーに分離する分離部と、
    前記分離されたレーザーごとに位相、強度、周波数を制御するレーザー制御部と、
    各制御されたレーザーを前記複数の物理系に照射する照射部と、
    前記磁場の印加を制御する磁場制御部と、を具備し、
    2量子ビットゲートの際の共振器モードを利用した2つの物理系間のアディアバティック・パッセージの間だけ、前記磁場制御部は前記磁場印加部による磁場の印加を中断させ、前記レーザー制御部は前記レーザーがパルス状になるように制御することを特徴とする量子情報処理装置。
  3. 前記各物理系は、酸化物結晶中の希土類イオンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の量子情報処理装置。
  4. 内部を一定の温度に保つクライオスタットをさらに具備し、
    前記共振器、前記物質、および、前記磁場印加部は、前記クライオスタットの内部に含まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の量子情報処理装置。
  5. 前記磁場印加部は、少なくとも2組の電磁石を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の量子情報処理装置。
  6. 前記磁場印加部は、少なくとも1組の電磁石と、前記物質を互いに平行でない3軸に関して回転させる回転部とを具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の量子情報処理装置。
  7. 単一の共振器モードを有する共振器を用意し、
    前記共振器の内部に含まれ、内部に複数の物理系を含んでいて、各物理系は少なくとも4つのエネルギー状態を有し該物理系に磁場が印加されていない場合に複数の前記エネルギー状態は互いに縮退せず、複数の前記エネルギー状態のうちの2つのエネルギー状態間の遷移が前記単一の共振器モードに共鳴し、前記エネルギー状態で量子ビットを表現し、前記エネルギー状態のうちの少なくとも2つのエネルギー状態の間の遷移エネルギーが磁場の印加によりエネルギーシフトを起こす物質を用意し、
    量子ビットを表すエネルギー状態のある2つのエネルギー状態間の遷移エネルギーに対し、線形の遷移エネルギーシフトが消失するように、該遷移エネルギーに固有の向きと固有の大きさを有する磁場を前記物質に印加することを特徴とし、
    前記物質で、前記遷移エネルギーシフトが消失される2つのエネルギー状態が前記単一の共振器モードと共鳴する2つのエネルギー状態のいずれも含まないことを特徴とする量子情報処理方法。
  8. 単一の共振器モードを有する共振器を用意し、
    前記共振器の内部に含まれ、内部に複数の物理系を含んでいて、各物理系は、複数のエネルギー状態のうちの2つのエネルギー状態間の遷移が前記単一の共振器モードに共鳴し、前記エネルギー状態のうちの縮退しているエネルギー状態で量子ビットを表現する物質を用意し、
    前記複数の物理系に磁場を印加し、
    レーザーを出力し、
    前記レーザーを複数のレーザーに分離し、
    前記分離されたレーザーごとに位相、強度、周波数を制御し、
    各制御されたレーザーを前記複数の物理系に照射し、
    前記磁場の印加を制御することを特徴とし、
    2量子ビットゲートの際の共振器モードを利用した2つの物理系間のアディアバティック・パッセージの間だけ、磁場の印加を中断させ、前記レーザー制御部は前記レーザーがパルス状になるように制御することを特徴とする量子情報処理方法。
  9. 前記各物理系は、酸化物結晶中の希土類イオンであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の量子情報処理方法。
  10. 内部を一定の温度に保つクライオスタットをさらに用意し、
    前記共振器、前記物質は、前記クライオスタットの内部に含まれていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の量子情報処理方法。
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