JP4087554B2 - 量子ビット素子および量子ビットのデコヒーレンス時間延長方法 - Google Patents

量子ビット素子および量子ビットのデコヒーレンス時間延長方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、量子計算機の記憶素子となる量子ビット素子および量子ビットのデコヒーレンス時間延長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、量子力学の原理に基づいた現象を利用した量子計算機が提案されている。量子計算機では、現在の電子計算機の記憶素子におけるビットの概念に相当して、量子ビットが用いられる。量子ビットを実現するための量子ビット素子は、とり得る状態が真に2つであり、この2つの状態が区別可能な量子系である量子2準位系で構成される。ある純粋な量子系を用意したとき、この量子系の波動関数は完全な干渉性(コヒーレンス)を持ち、量子力学的な「重ね合わせ」が可能な状態になる。量子計算機は、この重ね合わせを利用しているので、量子計算機の構成要素である量子ビットも、上記コヒーレンスを保っている必要がある。
【0003】
ところが、単一の量子2準位系では、上記コヒーレンスが外界からの相互作用により失われていく。このコヒーレンスの消失(崩れ)によりコヒーレンスが失われるまでの時間は、デコヒーレンス時間と呼ばれているが、デコヒーレンス時間をより長くする方法として、量子誤り訂正符号(QECC)を用いる技術がある。これは、単純な量子2準位系によって構成された量子ビットを多数個用意し、1量子ビット分の量子情報を多数個の量子ビットに記憶させるものであり、外界からの擾乱によって生じる誤り(コヒーレンスの崩れ)を量子ゲート操作によって検出し、検出した誤りを訂正するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、量子誤り訂正符号を用いる、多数個の量子ビットを用いる技術では、個々の量子ビットのデコヒーレンス時間が長くなったわけではない。したがって、個々の量子ビットのデコヒーレンス時間よりも短い時間間隔で行う必要がある量子ゲート操作は、量子ゲート操作の内容および時間的精度(タイミング)などの条件が非常に厳しいものとなる。量子計算機の記憶容量を増やすために量子ビット数を増加させると、上記量子ゲート操作に必要なハードウエアやソフトウエアがきわめて複雑なものとなる。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、量子計算機の記憶素子として用いられる量子ビットのデコヒーレンス時間を従来より長くすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の量子ビット素子は、並列に接続されたn個(nは3以上の整数)の単一クーパー対箱の隣り合う単一クーパー対箱よりなるn−1個の量子2準位系と、n個の単一クーパー対箱の一方の電極が並列に接続される共通接続点に接続して一方の電極の近くに設けられたゲート電極から構成され、n−1個の量子2準位系の隣り合う2つの量子2準位系各々に第1の相互作用を与える第1の手段と、量子2準位系を構成する2つの単一クーパー対箱を接続する閉ループ回路各々を貫くn−1個の磁束を与える磁場発生手段から構成され、隣り合う2つの量子2準位系各々に第2の相互作用を与える第2の手段とを備え、第1の相互作用は、隣り合う2つの量子2準位系の一方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第1の物理量としての第1の電荷と、隣り合う2つの量子2準位系の他方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第2の物理量としての第2の電荷との符号を一致させるように働くものとし、第2の相互作用は、第1の電荷と量子力学的に直交する第3の物理量としての第1の磁束と第2の電荷と量子力学的に直交する第4の物理量としての第2の磁束との符号を異なるものにするように働くものとした。
この発明によれば、第1の手段により、複数の量子2準位系からなる量子ビットのコヒーレンスの崩れが抑制され、第2の手段により、コヒーレンスの崩れに伴う外界との相互作用が抑圧される。
【0008】
本発明の量子ビットのデコヒーレンス時間延長方法は、並列に接続されたn個(nは3以上の整数)の単一クーパー対箱の隣り合う単一クーパー対箱よりなるn−1個の量子2準位系を用意し、このn−1個の量子2準位系で1つの量子ビットとし、n個の単一クーパー対箱の一方の電極が並列に接続される共通接続点に接続して一方の電極の近くに設けられたゲート電極に所定の静電圧を印加することで、n−1個の量子2準位系の隣り合う2つの量子2準位系各々に、隣り合う2つの量子2準位系の一方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第1の物理量としての第1の電荷と、隣り合う2つの量子2準位系の他方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第2の物理量としての第2の電荷との符号を一致させるように働く第1の相互作用を与え、かつ量子2準位系を構成する2つの単一クーパー対箱を接続する閉ループ回路各々を貫くn−1個の磁束を与えることで、隣り合う2つの量子2準位系各々に、第1の電荷と量子力学的に直交する第3の物理量としての第1の磁束第2の電荷と量子力学的に直交する第4の物理量としての第2の磁束との符号を異なるものにするように働く第2の相互作用を与えようとしたものである。
この発明によれば、第1の相互作用を与えることで、複数の量子2準位系からなる量子ビットのコヒーレンスの崩れが抑制され、第2の相互作用を与えることで、コヒーレンスの崩れに伴う外界との相互作用が抑圧される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
前述したデコヒーレンス時間は、量子2準位系と外界との相互作用エネルギーHdisにほぼ反比例して短くなる。また、量子ビットにおけるコヒーレンスが失われていく過程は、つぎに示すような特徴を持っている。
【0010】
ある量子2準位系をS1とし、これがQ1という物理量を介して外界と相互作用していることで、コヒーレンスが失われていくものとする。上記相互作用によって量子2準位系S1のコヒーレンスが失われる過程では、S1が一時的に外界にエネルギーを渡し、この直後にまたエネルギーを回収するということが行われている。このエネルギーの受け渡しには、外界とつながっている物理量Q1の一時的な変化が伴う。このように、量子2準位系のコヒーレンスを崩す外界との相互作用と結びつく特定の物理量Q1が、量子2準位系には存在する。
【0011】
ここで、第1の方法として、量子2準位系S1の状態が、物理量Q1の固有状態SQ1,SQ1’などにあるようにすれば、量子2準位系S1は物理量Q1を介する外界との相互作用の影響を受けなくなる。言い換えると、量子2準位系S1の状態が、物理量Q1の固有状態SQ1,SQ1’などにあるようにすれば、量子2準位系S1が物理量Q1を介して外界と相互作用しても、量子2準位系S1のコヒーレンスは失われない。
【0012】
上述したように、外界との相互作用が起こると、物理量Q1の変動が伴うから、物理量Q1が変動しないような力が量子2準位系S1に加わっていれば、相互作用が起こりにくくなる。したがって、量子2準位系S1の量子状態が、SQ1あるいはSQ1’と離れた状態にある時間を短くすれば、量子2準位系S1のデコヒーレンス時間を長くすることができる。しかし、単一の量子2準位系を1つの量子ビットとして用いるときに、上述したような量子状態を形成すると、量子ビットとしての能力が著しく損なわれる。
【0013】
これに対し、複数の量子2準位系を用意してこれらの間に上述したような適切な相互作用(第1の方法)を与え、第2の方法として全体を1量子ビットとすると、全体系を外界からの擾乱の影響を受けにくい状態の近くに制限し、かつ量子ビットとしての機能が損なわれない状態とすることが可能となる。
この第1の方法と第2の方法との組み合わせは、たとえばつぎのようにして行えばよい。なお、以下では、説明を簡単にするため、2つの量子2準位系を用いて1量子ビットを構成する場合を例にするが、これに限るものではない。
【0014】
まず、2つの2準位系をS1およびS2とする。また、これらS1,S2各々が、Q1xおよびQ2xという物理量(第1および第2の物理量)を介して外界との相互作用を起こすことにより、S1,S2のコヒーレンスが失われていくものとする。この場合、前述したように、コヒーレンスを失う相互作用には、Q1xおよびQ2xの一時的な変化が伴う。
【0015】
ここで、まず、第1の方法として、S1,S2の間に、Q1xとQ2xの符号を一致させるようなエネルギーの相互作用Uxx(第1の相互作)を与えた状態とする。相互作用Uxxを与えるとは、相互作用エネルギー=−Uxx Q1x Q2xを与えることである。Uxxは係数であり、例えば、Q1x,Q2xが各々電荷であれば、Uxxの次元は、「エネルギー/[電荷の2乗]」となる。
【0016】
相互作用Uxxを与えた状態では、Q1xやQ2xの符号が変化すると、相互作用Uxxのエネルギーが増大するので、S1とS2からなる合成系の低エネルギー状態(基底状態と第一励起状態)は、Q1xとQ2xとの積が正になるような状態に限定される。これら低エネルギー状態は、Q1xとQ2xの固有状態に近いものになるので、前述したように「相互作用が起こってもコヒーレンスが失われない」状態に近いものとなり、相互作用が起こったときにコヒーレンスが失われる度合いが少なくなる。
【0017】
ただし、Uxxを与えただけでは、Uxxを与えていない状態と比較して、「相互作用の起こる頻度」が基本的に変わらない。したがって、Uxxを与えただけでは、他の種々の事情を考慮して概算を行うと、S1,S2からなる1量子ビットにおけるコヒーレンスの消失は、あまり抑制されない。
【0018】
つぎに、第2の方法として、S1,S2からなる系の間に、Q1yとQ2yの積に比例するエネルギー−Uyyの相互作用(第2の相互作用)を与えた状態とする。相互作用Uyyを与えるとは、相互作用エネルギー=−Uyy Q1y Q2yを与えることである。なお、Q1yはQ1xに直交する第3の物理量であり、Q2yはQ2xに直交する第4の物理量であり、これらは、Q1x,Q2xの固有状態では、量子力学的な不確定性がもっとも強い物理量である。
【0019】
S1,S2からなる系に上記−Uyyの相互作用が与えられた状態では、Q1x,Q2xを介した外界との相互作用があると、量子不確定性によってQ1y,Q2yのいずれかが変化する。この変化により相互作用エネルギーが増大するので、S1,S2からなる系においては、相互作用には大きなエネルギーのやりとりが必要となる。大きなエネルギーのやりとりを伴う過程が抑圧されるので、結果的に「相互作用の起きる頻度」が抑制され、コヒーレンスを失う過程が抑制され、デコヒーレンス時間が長くなる。
【0020】
他の種々の事情を考慮して概算を行うと、この第2の方法を単独で用いた場合、S1,S2からなる合成系のデコヒーレンス時間は、Uyy/Hdis(量子2準位系と外界との相互作用エネルギー)の因子だけ長くなる。たとえば、第1の方法も第2の方法もどちらも用いない場合のS1,S2からなる合成系のデコヒーレンス時間が1ナノ秒となるHdisに対し、この相互作用エネルギーの10倍のUyyを与えることで、デコヒーレンス時間は10ナノ秒程度になり得る。ただし、第2の方法を単独で用いた場合、相互作用Uyyによって、S1,S2からなる合成系は、2つの低エネルギー状態に局在するので、量子ビットにとって必要な2つの状態間の量子力学的な遷移を得ることができず、量子ビットとして働かない。
【0021】
ここで、上記第1の方法と第2の方法とを同時に用いることで、以下に説明するように、量子ビットとしての機能を損なうことなく、デコヒーレンス時間を長くすることができるようになる。
1つの量子系が量子ビットとして機能するためには、この量子系のとり得る状態の範囲(ヒルベルト空間)が、半径1の2次元球面と対応していることが必要である。たとえば、量子ビットの状態をブロッホ球面という座標系で表すなら、コヒーレンスが失われるにしたがってい、量子ビットの状態は半径1の球面から球の中に落ち込んでいく。
【0022】
これに対し、2つの量子2準位系からなる合成系では、とり得る状態の範囲が2つの球面よりも遙かに広いものとなる。この中で、2つの量子2準位系からなる合成系の間に、UxxやUyyのような強い相互作用があると、物理量Q1とQ2の関係が、上述したように固定されるので、合成系のとり得る状態の範囲は、物理量1個ないし3個分狭くなるが、もっとも狭い場合が量子ビット一個を表現する自由度と同じである。
相互作用Uyy単独の付与では、局在してしまった2つの低エネルギー状態は、Uyyと同程度の大きさのUxxの付与により、量子力学的に重ね合わされる。
【0023】
以上説明したように、複数の量子2準位系に対して第1の方法と第2の方法とを同時に用いることで、相互作用Uxxによる「外界との相互作用が起こっても影響が小さい」という効果と、相互作用Uyyによる「外界による相互作用の頻度を抑制する」という効果とを併せ持った量子ビットが得られる。たとえば、3つの量子2準位系S1,S2,S3の場合、S1とS2の間ならびにS2とS3の間に、各々相互作用Uxx,Uyyを加えることで、1つの量子ビットが得られる。
【0024】
ただし、量子2準位系の間の相互作用は有限であるから、2つの量子2準位系からなる合成系がとり得る状態の範囲が量子ビット一個分より広く、この合成系のコヒーレンスは時間と共に失われていくというのが現実的な状況である。
以下に、2つの量子2準位系からなる合成系による量子ビットで、実効的にデコヒーレンス時間が長くできる利用方法について説明する。
外界からの擾乱によって合成系のコヒーレンスは徐々に失われていくが、2つのに準位系の間に相互作用があるため、量子ビットの「0」および「1」をどのような2つの量子状態に対応させて、重ね合わせで量子情報を表現するかによって、この量子情報のデコヒーレンス時間が異なってくる。
【0025】
前述した第1の方法と第2の方法を実施して合成系のコヒーレンスを保つためには、外界との結合がないときに「0」,「1」に対応させる状態の時間変化が、「Q1yとQ2yの積の符号の量子力学的平均値を時間変化させない」ような条件を選ぶ必要がある。また、同時に、「0」,「1」に対応する状態が、Q1yとQ2yの積を固定するようなものでなくてはならない。
【0026】
これらの条件を近似的に満足する状態は、以下のようなものとなる。
Q1xについてS1の2つの直交する状態をα1,β1とし、Q2xについてS2の2つの直交する状態をα2,β2としたとき、以下の数1と数2に示す2つの状態をとれば、デコヒーレンス時間を長くした量子ビットが得られる。
【0027】
【数1】
Figure 0004087554
【0028】
【数2】
Figure 0004087554
【0029】
上記数1,数2で示される2つの状態は、2つの2準位系のエンタングルメントと呼ばれる量子状態である。S1,S2からなる合成系をこの特殊な量子状態とすることで、外界からの擾乱をさけながらも量子ビットとしての機能を発揮させることができる。数1と数2で示されるいくつかのモデルに対するシミュレーションでは、量子ビットの機能を持ちかつデコヒーレンス時間が10倍程度に長くなった2つの2準位系からなる合成系が得られることが確認された。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の実施例における量子ビット素子の構成を概略的に示す回路図である。この量子ビット素子は、3つの単一クーパー対箱101,102,103から構成し、単一クーパー対箱101の電極101aと単一クーパー対箱102の電極102aと単一クーパー対箱103の電極103aとを共通接続点104に集めて接続したものである。
【0031】
また、各電極101a,102a,103aに接近してゲート電極105が配置されているようにし、ゲート電極105に所定の静電圧VG(ゲート電圧)を印加するための電源106が設けられているようにした。したがって、この量子ビットの自由度は、2つの単一クーパー対箱101,103の電荷q1とq2との2つとなっており、2つの量子2準位系があることに対応している。
【0032】
図1の量子ビット素子において、コヒーレンスを消失させる外界の擾乱は、この量子ビット素子を動作させるために起こる電荷の運動によって発生する電荷双極子と、周辺回路によって発生する電磁場との結合に起因する。したがって、q1,q2の双極子の大きさを、各々第1,第2の物理量としてq1=Q1x,−q2=Q2xとすれば、前述の説明に対応しているのがわかる。
【0033】
図1の量子ビット素子では、電極101a,102,103を、共通接続点104に集めて接続しているので、q1とq2の和=Q1x−Q2xが一定な状態となっている。したがって、図1の量子ビット素子には、Q1xとQ2xの符号を一致させるエネルギーの相互作用Uxxが与えられた状態となっている。すなわち、電極101a,102,103を、共通接続点104に集めて接続することが、相互作用Uxxを与える手段となっている。
【0034】
また、図1の量子ビット素子は、単一クーパー対箱101,102で形成される閉ループ回路と単一クーパー対箱102,103で形成される閉ループ回路とを貫く磁束f1,f2を備えるようにしたものである。磁束f1,f2は、前述したQ1y(第3の物理量),Q2y(第4の物理量)に対応している。
たとえば、図1の量子ビット素子を、電磁石(磁場発生手段)などにより形成される一定の磁場中に配置すれば、磁束f1,f2が上記2つの閉ループ回路を貫く構成とできるが、この場合、磁束f1,f2は、2つの閉ループ回路の各々の面積に比例する。
【0035】
したがって、超伝導ループの「フラクソイド量子化」の条件を考慮した上で、2つの閉ループ回路各々の面積を調整することで、Q1yとQ2yとの間に特定の拘束条件を課すことができる相互作用Uyyを、図1の量子ビット素子に加えることができる。すなわち、磁束f1,f2が、相互作用Uyyを与える手段となっている。たとえば、2つの閉ループ回路各々の面積を同面積とした上で、図1の量子ビット素子を一定の磁場中に配置すれば、Q1y≒Q2yという拘束条件を課すことができる。
【0036】
以上の2つのことにより得られる、図1の量子ビット素子における長いデコヒーレンス時間を持つ2つの状態とは、q1−q2空間の2つの結合したポテンシャル井戸の結合状態と反結合状態との2つであり、これは、前述したエンタングルメント状態となっている。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数の量子2準位系からなる量子ビットのコヒーレンスの崩れが抑制され、コヒーレンスの崩れに伴う外界との相互作用が抑圧されるので、量子計算機の記憶素子として用いられる量子ビットのデコヒーレンス時間を従来より長くできるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における量子ビット素子の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
101,102,103…単一クーパー対箱、101a,102a,103a…電極、104…共通接続点、105…ゲート電極、106…電源。

Claims (2)

  1. 並列に接続されたn個(nは3以上の整数)の単一クーパー対箱の隣り合う前記単一クーパー対箱よりなるn−1個の量子2準位系と、
    前記n個の単一クーパー対箱の一方の電極が並列に接続される共通接続点に接続して前記一方の電極の近くに設けられたゲート電極から構成され、n−1個の前記量子2準位系の隣り合う2つの量子2準位系各々に第1の相互作用を与える第1の手段と、
    前記量子2準位系を構成する2つの単一クーパー対箱を接続する閉ループ回路各々を貫くn−1個の磁束を与える磁場発生手段から構成され、前記隣り合う2つの量子2準位系各々に第2の相互作用を与える第2の手段と
    を備え、
    前記第1の相互作用は、前記隣り合う2つの量子2準位系の一方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第1の物理量としての第1の電荷と、前記隣り合う2つの量子2準位系の他方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第2の物理量としての第2の電荷との符号を一致させるように働くものであり、
    前記第2の相互作用は、前記第1の電荷と量子力学的に直交する第3の物理量としての第1の磁束と前記第2の電荷と量子力学的に直交する第4の物理量としての第2の磁束との符号を異なるものにするように働くものである
    ことを特徴とする量子ビット素子。
  2. 並列に接続されたn個(nは3以上の整数)の単一クーパー対箱の隣り合う前記単一クーパー対箱よりなるn−1個の量子2準位系を用意し、
    このn−1個の量子2準位系で1つの量子ビットとし、
    前記n個の単一クーパー対箱の一方の電極が並列に接続される共通接続点に接続して前記一方の電極の近くに設けられたゲート電極に所定の静電圧を印加することで、前記n−1個の量子2準位系の隣り合う2つの量子2準位系各々に、前記隣り合う2つの量子2準位系の一方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第1の物理量としての第1の電荷と、前記隣り合う2つの量子2準位系の他方のコヒーレンスが失われる過程で作用する第2の物理量としての第2の電荷との符号を一致させるように働く第1の相互作用を与え、
    かつ
    前記量子2準位系を構成する2つの単一クーパー対箱を接続する閉ループ回路各々を貫くn−1個の磁束を与えることで、前記隣り合う2つの量子2準位系各々に、前記第1の電荷と量子力学的に直交する第3の物理量としての第1の磁束前記第2の電荷と量子力学的に直交する第4の物理量としての第2の磁束との符号を異なるものにするように働く第2の相互作用を与える
    ことを特徴とする量子ビットのデコヒーレンス時間延長方法。
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