JP4598275B2 - 高忠実度の熱安定性リガーゼおよびその使用 - Google Patents

高忠実度の熱安定性リガーゼおよびその使用 Download PDF

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Description

【0001】
本出願は、1998年10月30日に出願された米国特許仮出願第60/106,461号の恩恵を請求するものである。
【0002】
本発明は、米国立保健研究所(NIH)の基金第GM-41337-09およびPO1-CA65930-02-04の支援を受けて行われた。米国政府は一定の権利を有するものである。
【0003】
発明の分野
本発明は、高忠実度熱安定性リガーゼおよびその使用に関する。
【0004】
発明の背景
ウイルスからヒトまでにおいて認められる、DNAの複製、組換えおよび修復システムの必須の成分としてのDNAリガーゼは、二重鎖上の1本鎖破壊でのホスホジエステル結合の生成を触媒する(Lehman, I.R.、Science、186:790-797(1974))。DNAリガーゼは、補因子依存性を基にふたつのファミリーに分類することができる。ATP-依存性リガーゼは、バクテリオファージ(Dunnら、J.Mol. Biol.、148(4):303-330(1981)およびWeissら、Proc Natl Acad Sci USA、57(4):1021-1028(1967))、ChlorellaウイルスPBCV-1(Hoら、J.Virol.、71(3):1931-19374(1997))、ワクシニアウイルス(Shuman, S.、Biochemistry、34(49):16138-161475(1995))、古細菌(Kletzin, A.、Nucleic Acids Res、20(20):5389-5396(1992)およびBultら、Science、273(5278):1058-1073(1996))、酵母(Andaluzら、Yeast、12(9):893-8988(1996)、Ramosら、Nucleic Acids Res、25(8):1485-1492(1997)、Scharら、Genes Dev.、11(15):1912-1924(1997))、哺乳類(Tomkinsonら、Bioessays、19(10):893-901(1997)、Tomkinsonら、Mutat Res.、407(1)1-9(1998)、およびWangら、J. Biol. Chem、269(50)31923-3192811(1994))、ならびに最近は真正細菌(Chengら、Nucleic Acids Res.、25(7):1369-1374(1997)およびDeckertら、Nature、392(6674):353-358(1998))に認められている。しかし、NAD+(すなわち、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)-依存型リガーゼは、真正細菌において優先的に認められている。一部の高等真核生物は、生物学的機能の多様性を満たすために複数のATP(すなわち、アデノシン三リン酸)-依存型リガーゼを使用することができ、いくつかの単純な真正細菌ゲノムは、NAD+-依存型リガーゼおよびATP-依存型リガーゼの両方の宿主となり得る(Deckertら、Nature、392(6674):353-358(1998)およびFleischmannら、Science、269(5223):496-512(1995))。これらのゲノムにおける追加のATP-依存型リガーゼの起源は、まだ決定されずにいる。
【0005】
ATP依存型リガーゼとNAD+依存型リガーゼは、ほとんど配列の相同性を共有していないが、これらのリガーゼは全て、これまでにアデニル化された酵素中間体を形成するために同じKXDGモチーフを使用していることが調べられた(Tomkinsonら、Bioessays、19(10):893-901(1997)、Shumanら、Virology、211(1):73-83(1995)、およびLuoら、Nucleic Acids Res、24(15):3079-3085(1996))。更にこれらは、類似のドメインおよび構造的フォールドにより組織化されているように見える((Dohertyら、Nucleic Acids Res、24(12):2281-2287(1996)、Subramanyaら、Cell、85(4):607-615(1996)、およびSekiguchiら、Nucleic Acids Res.、25(4):727-734(1997))。リガーゼ配列の多様性は、単にそれらの最適反応条件および速度論的速度の差異を反映しているのみならず、より重要なことに、マッチ基質およびミスマッチ基質に対するそれらの異なった特異性を反映している。ウイルスのATP-依存型リガーゼの中で、広範な基質耐性が、ニック接合部の3'側および5'側の両側で様々なミスマッチをシールするT4酵素により示されている(Wuら、Gene、76(2):245-254(1989))。ワクシニアリガーゼは、3'-ヒドロキシル側のプリン−プリンミスマッチ対を除き、 3'-ヒドロキシル側または5'-リン酸側の両方で様々なミスマッチをライゲーションする(Shuman, S.、Biochemistry、34(49):16138-161475(1995))。哺乳類ATP-依存型リガーゼは、様々な基質感受性を示し、リガーゼIはリガーゼIIIよりも3'ミスマッチに対してより感受性がある(Husainら、J. Biol. Chem.、270(16):9683-9690(1995))。加えて、リガーゼIおよびリガーゼIIIは両方共、3'G/Tミスマッチよりも3'C/Tミスマッチに耐性がある。ATP-依存型リガーゼの祖先としての性質を明らかにする古細菌のATP-依存型リガーゼについてはほとんど分かっていない。大腸菌由来のNAD+-依存型DNAリガーゼの研究は、T4リガーゼと共に、DNAライゲーション反応の基本的生化学的経路を理解するために多大に貢献している。(Lehman, I.R.、Science、186(4166):790-797(1974)およびRossiら、Nucleic. Acids Res.、25(11):2106-2113(1997))。サームス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)HB8由来のNAD+-依存型リガーゼの研究は、この酵素が高度な識別力を有することを明らかにしている(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996))。5'-リン酸側のミスマッチはある程度耐性があるが(5'A/C、5'A/A、5'C/A、5'C/T、5'G/T、5'G/A、5'T/T、5'T/G)、3'-ヒドロキシル側のミスマッチは、3'G/Tまたは3'T/Gミスマッチ以外は、ニック閉鎖活性を本質的に破壊する(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996))。明らかに、DNAリガーゼ間の配列多様性およびその後の複雑なな構造変化は、異なるミスマッチ塩基対に対する酵素認識の選択の基礎となっている。
【0006】
リガーゼの生化学の研究は、その生物学的機能を理解する上で重要なだけではなく、新規技術を開発する上でも重要である。DNAリガーゼについて認められる単ヌクレオチドの識別は、リガーゼが介する検出法の開発に繋がる(Wuら、Gene、76(2):245-254(1989)、Wuら、Genomics、4(4):560-569(1989)、Landegrenら、Science、241(4869):1077-1080(1988)、Landegren, U.、Bioessays、15(11):761-765(1993)、Barany, F.、PCR Methods Appl、1(1):5-16(1991)、およびBarany, F.、Proc Natl Acad Sci USA、88(1):189-193(1991))。LDR(すなわち、リガーゼ検出反応)として公知のリガーゼ−ベースの線形シグナル増幅は、PCR(すなわち、ポリメラーゼ連鎖反応)をベースとした遺伝子特異的標的増幅と組合せて、癌および疾患の遺伝子突然変異の検出の強力な道具となることが証明されている(Dayら、Genomics、29(1):152-162(1995))。PCR/LDR技法は、DNAリガーゼのふたつの特性に頼っている:(i)特異性および(ii)熱安定性。Tth(すなわち、サームス・サーモフィルス HB8)DNAリガーゼは、LDRおよびLCR(すなわち、リガーゼ連鎖反応)において、完全にマッチする基質に対するそれらの高い識別性のニック閉鎖活性および熱循環(thermocycling)を可能にするその熱安定性のために成功のうちに使用されている(Barany. F.、PCR Methods Anpl.、1(1):5-16(1991)およびBarany, F.、Proc Natl Acad Sci USA、88(1):189-193(1991))。今日までに、T. Scot(すなわち、サームス・スコットダクツ(Thermus scotoductus)由来のもう1種のリガーゼがクローニングされ、かつ配列決定されているが(Thorbjarnardottirら、Gene、161(1):1-6(1995)およびJonssonら、Gene、151(1-2):177-180(1994))、このリガーゼの基質特異性は決定されていない。
【0007】
様々な宿主給源に由来する多くのリガーゼが存在するにもかかわらず、依然として、より大きい忠実度を有する別のリガーゼを同定する必要性がある。本発明は、T. sp.(すなわち、サームス種)AK16D由来のリガーゼのクローニングおよび発現の結果としてこの目的を達成すること、ならびにこの高忠実度酵素の生化学的特徴を決定することに関する。
【0008】
発明の概要
本発明は、ライゲーション接合点の直前の塩基にライゲーション接合点に隣接する3'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブとのミスマッチがあるような標的配列にハイブリダイズされた一対のオリゴヌクレオチドプローブ間のライゲーション接合点をシールした場合に、T4リガーゼよりも100倍高い忠実度および野生型サームス・サーモフィルスリガーゼよりも6倍高い忠実度を有する、熱安定性リガーゼに関する。
【0009】
本発明の別の局面は、ライゲーション接合点の最後から2番目の塩基にライゲーション接合点に隣接する3'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブとのミスマッチがあるような標的配列にハイブリダイズされた一対のオリゴヌクレオチドプローブ間のライゲーション接合点をシールした場合に、T4リガーゼよりも50倍高い忠実度および野生型サームス・サーモフィルスリガーゼよりも5倍高い忠実度を有する熱安定性リガーゼに関する。
【0010】
さらに別の本発明の局面は、Mn2+補因子の存在下で、ライゲーション接合点の直前の塩基にライゲーション接合点に隣接する3'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブとのミスマッチがあるような標的配列にハイブリダイズされた一対のオリゴヌクレオチドプローブ間のライゲーション接合点をシールした場合に、野生型サームス・サーモフィルスリガーゼよりも12倍高い忠実度を有する熱安定性リガーゼに関する。
【0011】
更に本発明は、熱安定性リガーゼをコードしているDNA分子に加え、このようなDNA分子を含む発現システムおよび宿主細胞に関する。
【0012】
本発明の別の局面は、リガーゼ検出反応法またはリガーゼ連鎖反応法を行う際の熱安定性リガーゼの使用に関する。
【0013】
このリガーゼ検出反応法は、1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位による、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる標的ヌクレオチド配列の検出に関連している。これは、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる標的ヌクレオチド配列を含有する可能性のある試料を提供することに関する。
【0014】
本方法は更に、各々が、(a)標的に特異的部分を有する第一のオリゴヌクレオチドプローブ、および(b)標的特異的部分を有する第二のオリゴヌクレオチドプローブを特徴とする、1個以上のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供することを含む。特定のセット中のオリゴヌクレオチドプローブは、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位による、試料中の別のヌクレオチド配列とは異なる標的ヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションに適している。このプローブは更に、標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合の互いのライゲーションにも適しているが、しかし試料中に存在する任意の他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合にこのようなライゲーションを妨害するようなミスマッチを有する。
【0015】
試料、1個以上のオリゴヌクレオチドプローブセット、および熱安定性リガーゼを配合し、リガーゼ検出反応混合物を作成する。このリガーゼ検出反応混合物に、変性処理およびハイブリダイゼーション処理を含む1種以上のリガーゼ検出反応サイクルを施す。変性処理においては、任意のハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドが、標的オリゴヌクレオチド配列から分離される。ハイブリダイゼーション処理の間には、試料中に存在する場合は、オリゴヌクレオチドプローブセットがそれらの各標的ヌクレオチド配列に対して塩基特異性の方法で隣接位置でハイブリダイズし、かつ互いにライゲーションする。これは、リガーゼ検出反応混合物中の他の核酸から区別できる各セットについてライゲーション産物配列とともに結合された標的特異的な部分を含むライゲーション産物配列を作成する。オリゴヌクレオチドプローブセットは、その各々の標的ヌクレオチド配列以外の試料中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるが、1個以上のミスマッチの存在のために互いにはライゲーションせず、かつ変性処理時に個別に分離する。その後試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の結果として作成されたライゲーション産物配列の存在を検出する。
【0016】
本発明のリガーゼ連鎖反応法において、第一および第二の相補的標的ヌクレオチド配列により形成された標的二本鎖核酸の存在が、試料中に検出される。この標的二本鎖核酸は、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、他のヌクレオチド配列とは異なる。
【0017】
本方法は、第一および第二の相補的ヌクレオチド配列により形成された標的二本鎖核酸を含有する可能性のある試料を提供することに関する。この核酸は、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる。
【0018】
更に本方法は、(a)標的に特異的部分を有する第一のオリゴヌクレオチドプローブ、および(b)標的特異的部分を有する第二のオリゴヌクレオチドプローブを特徴としている、第一のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供することを含む。第一のセット中のオリゴヌクレオチドプローブは、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第一の標的ヌクレオチド配列と相補的である。このプローブは更に、第一の標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合の互いのライゲーションにも適しているが、しかし試料中に存在する任意の他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合にこのようなライゲーションを妨害するようなミスマッチを有する。本発明の方法は更に、(a)標的に特異的部分を有する第三のオリゴヌクレオチドプローブ、および(b)標的特異的部分を有する第四のオリゴヌクレオチドプローブを特徴としている、第二のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供することも必要としている。第二のセット中のオリゴヌクレオチドプローブは、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第二の標的ヌクレオチド配列と相補的である。第二のセット中のプローブは、第二の標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合の互いのライゲーションにも適しているが、しかし試料中に存在する任意の他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合のこのようなライゲーションを妨害するようなミスマッチを有する。
【0019】
試料、第一および第二のオリゴヌクレオチドプローブセット、ならびに熱安定性リガーゼを一緒に配合し、リガーゼ連鎖反応混合物を作成する。このリガーゼ連鎖反応混合物に、変性処理およびハイブリダイゼーション処理を含む1種以上のリガーゼ連鎖反応サイクルを施す。変性処理においては、任意のハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドが、標的オリゴヌクレオチド配列から分離される。ハイブリダイゼーション処理においては、試料中に存在する場合は、オリゴヌクレオチドプローブセットがそれらの各標的ヌクレオチド配列に対して塩基特異性の方法で隣接位置でハイブリダイズする。これらのプローブは更に、互いにライゲーションし、リガーゼ連鎖反応混合物中の他の核酸から区別できる各セットについてライゲーション産物配列とともに結合された標的特異的な部分を含むライゲーション産物配列を作成する。オリゴヌクレオチドプローブセットは、それらの各々の標的ヌクレオチド配列以外の試料中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるが、1個以上のミスマッチの存在のために互いにはライゲーションせず、かつ変性処理時に個別に分離している。その後試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の結果として作成されたライゲーション産物配列の存在を検出する。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、高忠実度熱安定性リガーゼ酵素に関する。この酵素は、下記の配列番号:1のアミノ酸配列を有する:
Figure 0004598275
【0021】
このタンパク質は、SDS-PAGEで測定した場合に、分子量78〜81kDaを有する。本明細書のための用語「熱安定性」は、熱による失活に対し抵抗性があるようなDNAリガーゼを意味する。
【0022】
本発明の熱安定性リガーゼは、ライゲーション接合点の直前の塩基にライゲーション接合点に隣接するその3'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブとのミスマッチがあるような標的配列にハイブリダイズされた一対のオリゴヌクレオチドプローブ間のライゲーション接合点をシールした場合に、T4リガーゼよりも100倍高い忠実度および野生型サームス・サーモフィルスリガーゼよりも6倍高い忠実度を有する。このリガーゼは更に、ライゲーション接合点の最後から2番目の塩基にライゲーション接合点に隣接するその3'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブとのミスマッチがあるような標的配列にハイブリダイズされた一対のオリゴヌクレオチドプローブ間のライゲーション接合点をシールした場合に、T4リガーゼよりも50倍高い忠実度および野生型サームス・サーモフィルスリガーゼよりも5倍高い忠実度を有する。最後に、本発明の熱安定性リガーゼは、Mn2+補因子の存在下で、ライゲーション接合点の直前の塩基にライゲーション接合点に隣接するその3'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブとのミスマッチがあるような標的配列にハイブリダイズされた一対のオリゴヌクレオチドプローブ間のライゲーション接合点をシールした場合に、野生型サームス・サーモフィルスリガーゼよりも12倍高い忠実度を有する。本発明のために「忠実(フィデリティ;fidelity)」は、ライゲーション接合点のその3'末端とプローブの塩基でC-Gマッチを伴う相補的鋳型にハイブリダイズされた2個の隣接するプローブのライゲーションの初速度の、ライゲーション接合点のその3'末端とプローブの塩基でG-Tミスマッチを伴う相補的鋳型にハイブリダイズされた2個の隣接するプローブのライゲーションの初速度に対する比を意味すると定義される。
【0023】
本発明の熱安定性リガーゼは更に、KXDGモチーフ(式中、Xは任意のアミノ酸である)中の活性部位リシン(すなわち、K)に隣接するアルギニンを有することを特徴としている。
【0024】
このタンパク質は、下記の配列番号:2のヌクレオチド配列を有するDNA分子によりコードされている:
Figure 0004598275
【0025】
本発明は、前述のポリペプチドまたはタンパク質の断片も包含している。
【0026】
適当な断片は、いくつかの手段により作成される。第一に、本発明のタンパク質をコードしている遺伝子のサブクローンが、遺伝子断片のサブクローニングによる、通常の分子遺伝子学的操作により作成される。その後これらのサブクローンは、インビトロまたは細菌細胞内でインビボにおいて発現され、以下に説明する手順に従いリガーゼ活性について試験することができる比較的小さいタンパク質またはペプチドを生じる。
【0027】
あるいは、本発明のリガーゼ断片を、キモトリプシンまたはStaphylococcusプロテイナーゼAまたはトリプシンのようなタンパク質分解酵素による完全長リガーゼの消化により作成することができる。様々なタンパク質分解酵素が、恐らくリガーゼタンパク質を、リガーゼのアミノ酸配列を基に異なる位置で切断するであろう。タンパク質分解の結果生じた断片の幾つかは、活性リガーゼであることがある。
【0028】
別の方法において、該タンパク質の一次構造に関する知識を基に、遺伝子をコードしているリガーゼの断片は、PCR技術を該タンパク質の特定部分を示すように選択されたプライマーの特異的セットと共に用いて合成することができる。次に、これらは、切断型ペプチドまたはタンパク質の発現の増大のために適当なベクターにクローニングされる。
【0029】
化学合成を用いて適当な断片を作成することができる。このような合成は、作成されるリガーゼに関する公知のアミノ酸配列を用いて行うことができる。あるいは、完全長リガーゼを高温・高圧に晒し、断片を作成する。次にこれらの断片を常法(例えば、クロマトグラフィー、SDS-PAGE)により分離することができる。
【0030】
変異型は、同じく(または代わりに)、例えば該ポリペプチドの特性、二次構造および水感応性(hydropathic nature)に最小の影響を及ぼすアミノ酸の欠失または付加により修飾することができる。例えばポリペプチドは、同時翻訳的または後翻訳的にタンパク質の転移を指示するタンパク質のN-末端のシグナル(またはリーダー)配列に接合することができる。このポリペプチドを同じく、ポリペプチドの合成、精製または同定を容易にするために、リンカーまたは他の配列に接合することもできる。
【0031】
適当なDNA分子とは、温度37℃の0.9Mクエン酸ナトリウム(「SSC」)緩衝液を含有しかつ37℃のSSC緩衝液による洗浄を施した場合に結合を維持するハイブリダイゼーション緩衝液;および好ましくは、温度42℃の0.9M生理食塩水/0.09M SSC緩衝液中の20%ホルムアミドを含有しかつ42℃のO.2x SSC緩衝液で42℃で洗浄した場合に結合を維持するハイブリダイゼーション緩衝液を特徴とする、ストリンジェントな条件下で、配列番号:2の50個の連続する塩基のヌクレオチド配列を含むDNA分子にハイブリダイズしているものである。
【0032】
本発明のタンパク質またはポリペプチドは、常法により精製した形で産生されることが好ましい(好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは90%の純度)。典型的には、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、組換え宿主細胞の増殖培地へ分泌される。あるいは本発明のタンパク質またはポリペプチドは、増殖培地で産生されるが、分泌されない。このような場合は、タンパク質を単離するために、組換えプラスミドを保持する宿主細胞(例えば大腸菌)を増殖し、音波処理、熱処理または化学処理により溶菌し、かつそのホモジネートを遠心し、細菌デブリを取り除く。その後上清に、段階的硫酸アンモニウム沈降を施す。本発明のポリペプチドまたはタンパク質を含有する画分に、適当なサイズのデキストランまたはポリアクリルアミドカラムにおいてゲル濾過を施し、タンパク質を分離する。必要に応じて、このタンパク質画分を更にHPLCにより精製することができる。
【0033】
本発明のリガーゼをコードしているDNA分子は、通常の組換えDNA技術を用いて細胞に組入れることができる。一般にこれは、DNA分子の、そのDNA分子が異種である(すなわち通常存在しない)ような発現システムへの挿入を含む。異種DNA分子は、適当なセンス方向および正確なリーディングフレームで、発現システムまたはベクターに挿入される。このベクターは、挿入されたタンパク質−コード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む。
【0034】
CohenおよびBoyerに付与された米国特許第4,237,224号は、制限酵素切断およびDNAリガーゼによるライゲーションを用いる組換えプラスミド形の発現システムの作成を開示し、これは本明細書に参照として組入れられている。その後これらの組換えプラスミドは、形質転換により導入され、かつ組織培養物中の原核生物および真核細胞を含む単細胞培養物中で複製される。
【0035】
組換え遺伝子は更にワクシニアウイルスのようなウイルスに導入することもできる。組換えウイルスは、プラスミドのウイルス感染細胞へのトランスフェクションにより作成することができる。
【0036】
適当なベクターは、下記のウイルスベクター、例えばラムダベクターシステムgt11、gtWES.tB、Charon4、およびプラスミドベクター、例えばpBR322、pBR325、pACYC177、pACYC1O84、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR29O、pKC37、、pKC101、SV40、pBluescript II SK+/-またはKS+/-(ストラタジーン社(ラ・ホヤ、カリフォルニア)の「ストラタジーン社クローニングシステム」カタログを参照のこと(1993)、これは本明細書に参照として組入れられている)、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ(F.W. Studierら、「クローン遺伝子の直接発現のためのT7 RNAポリメラーゼの利用(Use of T7 RNA Polymerase to Direct Expression of Cloned Genes)」、Gene Expression Technology、185(1990)を参照のこと、これは本明細書に参照として組入れられている)、ならびにそれらの派生物のいずれかを含むが、これらに限定されるものではない。組換え分子は、形質転換、好ましくは形質導入、接合、動態化、または電気穿孔により、細胞に導入することができる。DNA配列は、本明細書に参照として組入れられているSambrookらの著書、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、(1989)に記されたような、当該技術分野において標準のクローニング法を用いてベクターにクローニングされる。
【0037】
さまざまな宿主−ベクターシステムを用いて、タンパク質−コード配列(複数)を発現することができる。第一にこのベクターシステムは、使用した宿主細胞と適合性がなければならない。宿主−ベクターシステムは、下記を含むが、これらに限定されるものではない:バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNAで形質転換された細菌;酵母ベクターを含む酵母のような、微生物;ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)で感染した哺乳類細胞システム;ウイルス(例えばバキュロウイルス)で感染した昆虫細胞システム;ならびに、細菌に感染した植物細胞。これらのベクターの発現エレメントは、それらの強度および特異性が変動する。使用した宿主−ベクターシステムに応じて、多くの適当な転写および翻訳エレメントの任意のひとつを用いることができる。
【0038】
様々な遺伝子シグナルおよびプロセッシング事象は、遺伝子発現を多くのレベルで管理する(例えば、DNA転写およびメッセンジャーRNA(mRNA)翻訳)。
【0039】
DNAの転写は、RNAポリメラーゼの結合を指示し、これによりmRNA合成を促進するDNA配列であるプロモーターの存在によって左右される。真核細胞プロモーターのDNA配列は、原核細胞プロモーターのそれとは異なる。更に真核細胞プロモーターおよび随伴する遺伝子シグナルは、原核細胞システムにおいては認識されずかつ機能もせず、更に原核細胞プロモーターは、真核細胞プロモーターを認識せず、そこで機能もしない。
【0040】
同様に、原核細胞中のmRNAの翻訳は、真核細胞のものとは異なる適当な原核細胞シグナルの存在によって左右される。原核細胞におけるmRNAの効果的翻訳には、mRNA上にシャイン・ダルガルノ(「SD」)配列と称されるリボソーム結合部位が必要である。この配列は、通常タンパク質のアミノ末端のメチオニンをコードしているAUGである開始コドンの上流に位置したmRNAの短いヌクレオチド配列である。SD配列は、16S rRNA(リボソームRNA)の 3'末端に対して相補的であり、かつ恐らくrRNAによる二重鎖形成(duplexing)によりmRNAのリボソームへの結合を促進し、リボソームの位置を補正することができる。遺伝子発現の最大化に関する検証については、本明細書に参照として組入れられている、RobertsおよびLauerの論文、Methods in Enzymology、68:473(1979)を参照のこと。
【0041】
プロモーターは、その「強さ」(すなわち、それらの転写を促進する能力)が変動する。クローン化した遺伝子の発現を目的とすると、高レベルの転写を得、これにより遺伝子を発現するために、強力なプロモーターを使用することが望ましい。利用した宿主細胞システムに応じて、多数の適当なプロモーターの任意のひとつを使用することができる。例えば、大腸菌、そのバクテリオファージまたはプラスミドをクローン化する場合、プロモーター、例えばT7ファージプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、コリファージラムダおよびlacUV5、ompF、bla、lppを含むがこれに限定されないその他のPRおよびPLプロモーターなどを、隣接DNAセグメントの転写のレベルを高めるために使用することができる。更に、組換えDNAまたは他の合成DNA技術により作出されたハイブリッドtrp-lacUV5 (tac)プロモーターまたは他の大腸菌プロモーターを使用し、挿入された遺伝子の転写を提供することができる。
【0042】
特異的に誘導されることなくプロモーターの作用を阻害するような細菌宿主細胞株および発現ベクターを、選択することができる。ある操作において、挿入されたDNAの効率的転写のためには、特異的誘導物質の添加が必要である。例えば、lacオペロンは、ラクトースまたはIPTG(イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド)の添加により誘導される。trp、proなどのような様々な他のオペロンは別の制御下にある。
【0043】
特異的開始シグナルも、原核細胞における効率的な遺伝子転写および翻訳のために必要である。これらの転写および翻訳開始シグナルは、各々、遺伝子特異的メッセンジャーRNAの量および合成されたタンパク質の量で測定した「強さ」が変動する。プロモーターを含むDNA発現ベクターも、様々な「強い」転写および/または翻訳の開始シグナルの組合せを含むことができる。例えば大腸菌における効率的翻訳には、リボソーム結合部位を提供するために、開始コドン(「ATG」) の5'側に約7〜9塩基のSD配列が必要である。従って、宿主細胞リボソームが利用することができるSD-ATGの組合せを使用することができる。このような組合せは、コリファージラムダのcro遺伝子またはN遺伝子に由来する、または大腸菌トリプトファンE、D、C、BもしくはA遺伝子に由来するSD-ATG組合せを含むが、これらに限定されるものではない。加えて、組換えDNAまたは合成ヌクレオチドの組込みに関する他の技術により作成されたいずれかのSD-ATG組合せを使用することができる。
【0044】
一旦本発明のリガーゼをコードしている単離DNA分子が発現システムにクローン化されたならば、これは容易に宿主細胞に組込むことができる。このような組込みは、ベクター/宿主細胞システムに応じて、前述の形質転換の様々な形で行うことができる。適当な宿主細胞は、細菌、ウイルス、酵母、哺乳類細胞、昆虫、植物など含むが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明は、リガーゼ酵素が通常高温で使用されるような多くの方法において有用である。一般に、これらの方法は、リガーゼ検出反応およびリガーゼ連鎖反応を含む。
【0046】
リガーゼ検出反応およびリガーゼ連鎖反応は両方共、高温での標的配列の検出およびその配列の増幅に関する。これらの方法を実施する際に、該酵素は、高温に晒されるが、その熱安定な特性のために分解されない。リガーゼ検出反応法およびリガーゼ連鎖反応法は、一般にBaranyらの国際公開公報第90/17239号、F. Baranyら、「熱安定性DNAリガーゼコード遺伝子のクローニング、過剰発現およびヌクレオチド配列(Cloning, Overexpression, and Nucleotide Sequence of a Termostable DNA Ligase-Encoding Gene)」、Gene、109:1-11(1991)、およびF. Baranyら、「クローン化した熱安定性リガーゼを使用する遺伝疾患の検出およびDNA増幅(Genetic Disease Detection and DNA Amplification Using Cloned Termostable Ligase)」、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA、88:189-93に記されており、これらは本明細書に参照として組入れられている。
【0047】
リガーゼ検出反応法は、以下により詳細に説明するような、試料中の標的ヌクレオチド配列の検出において有用である。
1種以上のオリゴヌクレオチドプローブセットが、この方法と複合した使用のために提供される。各セットは、(a)標的特異的部分を有する第一のオリゴヌクレオチドプローブおよび(b)標的特異的部分を有する第二のオリゴヌクレオチドプローブを含む。特定のセットのオリゴヌクレオチドプローブは、対応する標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合に互いのライゲーションに適しているが、しかし試料中に存在するいずれか他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合にはこのようなライゲーションを妨害するミスマッチを有する。
【0048】
試料、1個以上のオリゴヌクレオチドプローブセット、および熱安定性リガーゼを配合し、リガーゼ検出反応混合物を作成する。このリガーゼ検出反応混合物に、変性処理およびハイブリダイゼーション処理を含む1種以上のリガーゼ検出反応サイクルが施される。変性処理において、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドが標的ヌクレオチド配列から分離される。ハイブリダイゼーション処理は、試料中に存在する場合は、オリゴヌクレオチドプローブセットがそれらの各標的ヌクレオチド配列に対して塩基特異性の方法で隣接位置でハイブリダイズすることに関する。各セットのハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドプローブは、互いにライゲーションし、互いに結合された標的特異的な部分を含むライゲーション産物配列を作成する。各セットのライゲーション産物配列は、リガーゼ検出反応混合物中の他の核酸から識別することができる。このオリゴヌクレオチドプローブセットは、それらの各標的ヌクレオチド配列以外の試料中の隣接配列にハイブリダイズすることができるが、1個以上のミスマッチの存在のために互いにはライゲーションしない。ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドがライゲーションしない場合は、これらは変性処理時に個別に分離している。
【0049】
リガーゼ検出反応相の間に、変性処理は、温度80〜105℃で行われるが、ハイブリダイゼーションは50〜85℃で実施することができる。各サイクルは、全体で約1〜5分間の長さの変性処理および加熱ハイブリダイゼーション処理を含む。典型的には、ライゲーション検出反応は、2〜50サイクルの変性およびハイブリダイゼーションの反復に関する。リガーゼ検出反応法の総時間は、1〜250分間である。
【0050】
このオリゴヌクレオチドプローブセットは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、修飾されたリボヌクレオチド、修飾されたデオキシリボヌクレオチド修飾されたリン酸-糖-主鎖オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、およびそれらの混合物の形状であることができる。
【0051】
ある変種において、各オリゴヌクレオチドプローブセットのオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションまたは融解温度(すなわちTm)66〜70℃を有する。これらのオリゴヌクレオチドの長さは、20〜28個のヌクレオチドである。
【0052】
前述のオリゴヌクレオチドプローブセットは、検出に適したレポーター標識物を有する。有用な標識物は、発色団、蛍光部分、酵素、抗原、重金属、磁気プローブ、色素、りん光基、放射性物質、化学発光部分、および電気化学的検出部分を含む。
【0053】
リガーゼ検出反応の生成物は、いずれか2種の形式で検出することができる。これらは本明細書に参照として組入れられているBaranyらの国際公開公報第98/03673号に詳細に開示されている。これらの形式のひとつにおいて、リガーゼ検出反応産物は、キャピラリーまたはゲル電気泳動により検出される。あるいは、ライゲーション産物は、アレー上の相補配列への特異的ハイブリダイゼーションによりアレー上で検出することができる。
【0054】
ライゲーション検出反応混合物は、サケ精巣DNAのような担体DNAを含むことができる。
【0055】
リガーゼ検出反応のハイブリダイゼーション段階は、加熱ハイブリダイゼーション処理が好ましいが、これはライゲーション接合点で識別するヌクレオチドを基に、ヌクレオチド配列間で識別する。標的ヌクレオチド配列間の差異は、例えば1個の核酸の塩基の差異、核酸の欠失、核酸の挿入、または再編成であることができる。1個よりも多い塩基に関与しているこのような配列の差異も検出することができる。好ましくは、このオリゴヌクレオチドプローブセットは、実質的に同じ長さを有し、その結果これは標的ヌクレオチド配列に実質的に類似したハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズすることができる。結果として、本発明の方法は、感染症、遺伝疾患、および癌を検出することができる。更にこれは環境のモニタリング、法医学および食品化学においても有用である。
【0056】
広範な感染症を、本発明の方法で検出することができる。典型的には、これらは細菌、ウイルス、寄生体および真菌の感染原因物質により惹起される。様々な感染性原因物質の薬剤に対する耐性も本発明の方法を用いて決定することができる。
【0057】
本発明の方法で検出することができる細菌感染の原因物質は、大腸菌、サルモネラ、シゲラ、クレブシエラ、シュードモナス、リステリア・モノサイトゲネス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ、エルシニア、フランセシラ、パスツレラ、ブルセラ、クロストリジア、ボルデテラ・パータスシス、バクテロイデス、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、B-溶血性菌(Hemolytic strep.)、コリネバクテリウム、レジオネラ、マイコプラズマ、ウレプラズマ、クラミジア、ナイセリア・ゴノロエ、ナイセリア・メニンギイディディス、ヘモフィルス・インフルエンザ、エンテロコッカス・フェカーリス、プロテウス・ブルガリス、プロテウス・ミラビリス、ヘリコバクター・ピロリ、トレポネーマ・パラディウム、ボレリア・バーグドオルフェリー、ボレリア・リカレンシス、リケッチア病原体、ノカルジア、およびアクチノマイセスがある。
【0058】
本発明の方法で検出することができる真菌感染の原因物質は、クリプトコッカス・ネオファルマンス、ブラストマイセス・デルマチチジス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、コクシディオイデス・イミチス、パラコクシディオイデス・ブラジリエンシス、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・フミガーツス、フィコマイセテス(リゾプス)、スポロトリックス・シェンキイ、クロロマイコシシ、およびマデュロミコシスがある。
【0059】
本発明の方法で検出することができるウイルス感染の原因物質は、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス(T-cell lymphocytotrophic virus)、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス)、エプスタイン−バールウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、オルソキクソウイルス、パラミクソウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、ポリオウイルス、トガウイルス、バンヤウイルス、アレナウイルス、風疹ウイルス、およびレオウイルスがある。
【0060】
本発明の方法で検出することができる寄生性感染の原因物質は、亜熱帯マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、Onchoverva volvulus、リーシュマニア、トリパノソーマ種、シストソマティウム種、赤痢アメーバ、クリプトスポリジウム、ジアルジア種、トリコモナス種、大腸バランチジウム、バンクロフト糸状虫、トキソプラズマ種、エンテロウイルス・ベルミキュラリス、回虫、トリクリス・トリキウラ、メジナ糸状虫、吸虫、広節裂頭条虫、テニア種、ニューモシスティス・カリニ、および アメリカ十二指腸虫がある。
【0061】
本発明は、感染原因物質による薬物耐性の検出にも有用である。例えば、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎双球菌、多剤耐性結核菌、およびAZT耐性ヒト免疫不全ウイルスは、全て本発明で同定することができる。
【0062】
遺伝疾患も、本発明により検出することができる。これは、染色体および遺伝子の異常または遺伝疾患のための、出生前または出生後スクリーニングにより実施される。検出可能な遺伝疾患の例は以下を含む:21ヒドロキシラーゼ欠損症、膵嚢胞性繊維症、脆弱X染色体症、ターナー症候群、デュシェーヌ筋ジスロトフィー症、ダウン症または他のトリソミー、心臓疾患、単一遺伝子病、HLAタイピング、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血症、テイ−サックス症、サラセミア、クラインフェルター症、ハンチントン病、自己免疫病、リピドーシス、肥満性欠損症(obesity defects)、血友病、先天性代謝異常、および糖尿病である。
【0063】
本発明により検出することができる癌は、一般に、癌遺伝子、癌抑制遺伝子、またはDNAの増幅、複製、組換えまたは修復に関する遺伝子に関する。これらの例は以下を含む:BRCA1遺伝子、p53遺伝子、APC遺伝子、Her2/Neu増幅、Bcr/Ab1、K-ras遺伝子およびヒトパピローマウイルスタイプ16および18である。本発明の様々な局面は、下記の一般的ヒト癌において、前述の遺伝子の増幅、巨大な欠失に加え点突然変異および小さい欠失/挿入を同定するために使用することができる:白血病、結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、脳腫瘍、中枢神経系腫瘍、膀胱癌、メラノーマ、肝癌、骨肉腫および他の骨の癌、精巣および卵巣の癌腫、頭部および頚部の腫瘍、ならびに子宮頚癌がある。
【0064】
環境モニタリングの領域において、本発明は、天然の病原体および風土微生物、ならびに遺伝子操作したエコシステムおよび例えば自治体の下水処理システムおよび貯水槽のようなミクロコスム、汚染地域の生体系改善における検出、同定およびモニタリングに使用することができる。生体異物を代謝することができる遺伝子含有プラスミドを検出し、集団の動的研究(population dynamic studies)において特異的標的微生物をモニタリングする、もしくは環境および産業プラントにおいて遺伝子に修飾された微生物をモニタリングすることも可能である。
【0065】
本発明は、軍隊および犯罪捜査における人物の確定、父親の鑑定および家族関係の分析、HLA適合性決定、ならびに夾雑物に関する血液、精液、または移植臓器のスクリーニングを含む様々な法医学分野にも利用することができる。
【0066】
食品および飼料産業において、本発明は広範な用途を有する。例えば、ビール、ワイン、チーズ、ヨーグルト、パンなどの製造に関する酵母のような産生生物を同定しかつ特徴決定するために使用することができる。別の分野の用途は、汚染に対する製品および加工処理(例えば、家畜、低温殺菌、および加工肉) の品質管理および検定に関する。その他の用途は、繁殖目的の植物体、球根、および種子の特徴決定、植物に特異的な病原体の存在の同定、ならびにさまざまな感染症の検出および同定を含む。
【0067】
望ましいオリゴヌクレオチドプローブは、ライゲーション接合点での完全な相補性のために、対応する標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズする場合にライゲーション接合点での互いのライゲーションに適している。しかし、セット中のオリゴヌクレオチドプローブが、試料中に存在するいずれか他のヌクレオチド配列にハイブリダイズされる場合は、ライゲーション接合点の塩基にミスマッチがあり、これがライゲーションを妨害する。最も好ましくは、ミスマッチは、ライゲーション接合点の3'塩基側の塩基である。あるいは、ミスマッチは、ライゲーション接合点の塩基に隣接する塩基であることができる。
【0068】
リガーゼ検出反応を行う前に、本発明に従い、試料中の標的ヌクレオチド配列は、予備的に増幅することができる。これは、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応で実施することができる。ポリメラーゼ連鎖反応法は、H. Erlichら、「Recent Advances in the Polymerase Chain Reaction」、Science、252:1643-50(1991);M. Innisら、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Academic Press:ニューヨーク(1990)、およびR. Saikiら、「Primer-directed Enzymatic Amplification of DNA with a Termostable DNA Polymerase」、Science、239:487-91(1988)に詳細に説明されていて、これらは本明細書に参照として組入れられている。
【0069】
リガーゼ検出反応法は、標的配列の線状増幅を達成する。リガーゼ連鎖反応は、指数関数的増幅を達成するために、リガーゼ検出反応と本質的に同じ段階および条件を利用する。このより大きいレベルの増幅は、相補的オリゴヌクレオチド2セットを用い、標的核酸配列の相補鎖と各セットをハイブリダイゼーションして行われる。
【0070】
本発明のリガーゼ連鎖反応において、試料中の第一および第二の相補的標的ヌクレオチド配列から形成された標的二本鎖核酸の存在が検出される。この標的二本鎖核酸は、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失、または転位により、他のヌクレオチド配列とは異なる。
【0071】
本方法は、第一および第二の相補的標的ヌクレオチド配列から形成された標的二本鎖核酸を含む可能性のある試料を提供することに関する。この核酸は、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失、または転位により、他のヌクレオチド配列とは異なる。
【0072】
本方法は更に、(a)標的に特異的部分を有する第一のオリゴヌクレオチドプローブ、および(b)標的特異的部分を有する第二のオリゴヌクレオチドプローブを特徴とする第一のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供することを含む。第一のセット中のオリゴヌクレオチドプローブは、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第一の標的ヌクレオチド配列に対し相補的である。このプローブは更に、第一の標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合に互いのライゲーションに適しているが、しかし試料中に存在するいずれか他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合にこのようなライゲーションを妨害するミスマッチを有する。本発明の方法は更に、(a)標的に特異的部分を有する第三のオリゴヌクレオチドプローブ、および(b)標的特異的部分を有する第四のオリゴヌクレオチドプローブを特徴とする第二のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供することを必要としている。この第二のセット中のオリゴヌクレオチドプローブは、1個以上の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第二の標的ヌクレオチド配列に対し相補的である。第二のセットのプローブは、第二の標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合に互いのライゲーションに適しているが、しかし試料中に存在するいずれか他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合にこのようなライゲーションを妨害するミスマッチを有する。
【0073】
試料、第一及び第二のオリゴヌクレオチドプローブセット、および熱安定性リガーゼは配合され、リガーゼ連鎖反応混合物を作成する。リガーゼ連鎖反応混合物には、変性処理およびハイブリダイゼーション処理を含む1種以上のリガーゼ連鎖反応サイクルが施される。変性処理において、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドが標的ヌクレオチド配列から分離される。ハイブリダイゼーション処理において、試料中に存在する場合は、オリゴヌクレオチドプローブセットがそれらの各標的ヌクレオチド配列に対して塩基特異性の方法で隣接位置でハイブリダイズする。このプローブは、互いにライゲーションし、互いに結合された標的特異的な部分を含むライゲーション産物配列を作成し、各セットのライゲーション産物配列は、リガーゼ連鎖反応混合物中の他の核酸から識別することができる。このオリゴヌクレオチドプローブセットは、それらの各標的ヌクレオチド配列以外の試料中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるが、1個以上のミスマッチの存在のために互いにはライゲーションせず、かつ変性処理時に個別に分離している。その後試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の結果として作成されたライゲーション産物配列の存在を検出する。
【0074】
実施例
実施例1−試薬、培地および菌株
一般的化学試薬は全て、シグマ・ケミカル社(セントルイス、MO)またはフィッシャー・サイエンティフィック社(フェアレーン、NJ)から購入した。制限酵素およびT4 DNAリガーゼは、ニューイングランドバイオラボ社(ビバリー、MA)から購入した。オリゴヌクレオチド合成試薬、DNAシーケンシングキット、およびPCRキットは、パーキンエルマー社のアプライドバイオシステム事業部(フォスターシティー、CA)から得た。dNTP、BSA(すなわち、ウシ血清アルブミン)、ATPは、ベーリンガーマンハイム社(インディアナポリス、IN)から購入した。Pfu DNAポリメラーゼは、ストラタジーン社(ラホヤ、 CA)から購入した。大腸菌株NovaBlue(DE3)pLysS、およびプラスミドpET11cは、ノバゲン社(マジソン、WI)から購入した。タンパク質アッセイキットは、バイオラド社(ハーキュラス、CA)から得た。HiTrap Blueアフィニティーカラムは、ファルマシア社(ピスカタウェイ、NJ)から得た。LB培地は、常法に従い調製した(Sambrookら、(1989)、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク(1994)、これは本明細書に参照として組入れられている)。音波処理用緩衝液は、50mM Tris-HCl(pH8.0)および1mM EDTAからなった。TE緩衝液は、10mM Tris-HCl(pH8.0)および1mM EDTAからなった。Tth DNAリガーゼおよびその突然変異体K294Rは、既述のように精製した(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996)、これは本明細書に参照として組入れられている)。
【0075】
実施例2−オリゴヌクレオチド合成
オリゴヌクレオチドを、パーキンエルマー社のアプライドバイオシステム事業部の394自動DNA合成装置を用いて合成した。PCRおよび配列決定のプライマーは、操作マニュアルに従いエタノール沈殿により精製した。T. thermophilus HB8 DNAリガーゼ遺伝子のアミノ酸32-38(ISDAEYD)(配列番号:4)に相当する縮重センスプライマー5'-ATC(T/A)(C/G)CGACGC(C/G)GA(G/A)TA(T/C)GA-3' (配列番号:3)、ならびにアミノ酸333-339(FQVGRTG)(配列番号:7)および641-647(GSKLEKA)(配列番号:8)に相当するアンチセンスプライマー5'-CC(C/G)GT(C/G)C(G/T)-(G/C)CC(G/C)AC(C/T)TG(A/G)AA-3'(配列番号:5)および5'-GCCTTCTC(C/G/A)A(A/G)(T/C)TTG(C/G)(A/T)(G/C)CC-3'(配列番号:6)を用いて、サームス株のDNAリガーゼ遺伝子断片を増幅した。追加のPCRおよび配列決定用プライマーは、必要に応じて合成した。Tsp. AK16D DNAリガーゼ遺伝子のpET11cベクターへのクローニングのためのPCR増幅プライマーは、
Figure 0004598275
および5'-GCGGGATCCGAGGCCTTGGAGAAGCTCTT-3'(配列番号:10)であり、ここでNdeIおよびBamHI部位には下線をつけ、前向きプライマーの開始コドンは太字で示した。ライゲーションアッセイのためのオリゴヌクレオチド基質は、変性配列決定ゲル上で精製した(7M尿素/10%ポリアクリルアミド)(アプライドバイオシステムズ社の合成オリゴヌクレオチドの評価および単離のための完全な指針、アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティー、CA(1992))。オリゴヌクレオチドの5'-リン酸化は、Chemical Phosphorylation Reagent (グレンリサーチ社、スターリング、VA)を用いて、合成の間に完了した。蛍光基は、Fluorescein CPGカラム(グレンリサーチ社)を用いて、3'-末端に結合した。
【0076】
実施例3−DNA増幅、クローニングおよび配列分析
サームス株由来のゲノムDNAは、既報のように単離した(Caoら、Gene、197:205-214(1997)、これは本明細書に参照として組入れられている)。縮重プライマーおよびユニークプライマーによるPCR増幅ならびに円形にした(circularized)鋳型上の逆転写PCRを、GeneAmp PCRシステム9700サーモサイクラー(パーキンエルマー社のアプライドバイオシステム事業部)中で既述のように行った(Wetmurら、J Biol Chem、269(41):25928-25935(1994)、これは本明細書に参照として組入れられている)。増幅されたリガーゼ断片のヌクレオチド配列は、ABI 373シーケンサー上でABI PRISM(登録商標)Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いて、直接決定した。完全長Tsp. AK16D DNAリガーゼ遺伝子は、前述のPCR増幅プライマーを用いて増幅し、NdeIおよびBamHIで消化し、同じ制限酵素対で処理したクローニングベクターpET11cにライゲーションし、かつ大腸菌株NovaBlue(DE3)pLysSに形質転換した。pET発現ベクターへの挿入物を、両方向で配列決定し、かつこのプラスミド構築体にPCRまたはライゲーションの誤りがないことをことを確認した。核酸およびタンパク質配列の分析は、DNASTAR社(マジソン、WI)のMegAlignプログラムを用いて、Clustal法で行った(Higginsら、Comput Appl Biosci、5(2):151-153(1989)、これは本明細書に参照として組入れられている)。
【0077】
実施例4−Tsp. AK16D DNAリガーゼの発現および精製
pET11c構築物からのTsp. AKl6D DNA リガーゼ遺伝子をコードしているプラスミドpTAKを含む大腸菌 NovaBlue(DE3)pLysS細胞を、50μg/mlアンピシリン、25μg/mlクロラムフェニコール、および0.2%グルコースを含有するLB培地において37℃で一晩増殖した。一晩培養物を、同じ培地に100-倍希釈し、培養物の光学密度が600nmで0.5に達するまで増殖し、その後IPTGを最終濃度1mMとなるよう添加することにより誘導し、かつ更に4時間同じ条件で増殖した。細胞を遠心により収集し、-20℃/23℃で凍結/解凍し、音波処理で破壊し、かつ既報のように遠心により透明化した(Wetmurら、J Biol Chem、269(41):25928-25935(1994)、これは本明細書に参照として組入れられている)。得られる上清を、70℃で15分間加熱し、熱不安定な大腸菌タンパク質を変性し、氷上に30分間放置し、変性タンパク質を凝集し、かつ4℃15分間の微量遠心により変性タンパク質を透明化した。部分的に純粋なDNAリガーゼを、更に1ml HiTrap Blueアフィニティーカラムを用いるクロマトグラフィーにより精製した。簡単に述べると、Tsp. AK16D DNAリガーゼを含有するカラムを、0.1M NaOAcを含有するTE緩衝液(pH7.8)で完全に洗浄し、かつ該リガーゼを、2M NaClを含有するTE緩衝液(pH7.8)で溶離した。0.2M KClを含有するTE緩衝液(pH8.0)に対して透析しかつCentricon-30(アミコン社)を用いて濃縮した後、タンパク質濃度を、バイオラドタンパク質アッセイキットに入っている試薬を用い、Bradford法により測定した。タンパク質量は、標準としてBSAを用いて決定した。該リガーゼの純度は、7.5%SDS(すなわちドデシル硫酸ナトリウム)-PAGE(すなわち、ポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析、その後の過剰負荷したゲルの常用のクーマシーブルーR染色による可視化で検証した。
【0078】
実施例5−基質およびライゲーションアッセイ法
オリゴヌクレオチドの完全にマッチした基質は、2個の短いオリゴヌクレオチド(LP3'C(配列番号:11)の33-merおよびCom3F(配列番号:12)の30-mer)の59-mer相補的オリゴヌクレオチド(Glg)とのアニーリングにより作成した。オリゴヌクレオチドLP3'CおよびGlg(配列番号:14)は、1.5-倍過剰であり、そのため3'Fam標識したCom3Fは全てニック入り基質を示している(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996)を参照、これは本明細書に参照として組入れられている)。T/Gミスマッチ基質は、単一塩基対ミスマッチをニック接合点の3'-末端に導入したLP3'T(配列番号:13)を、Com 3'Fと共に相補鎖(Glg)へアニーリングすることにより作成した。ニック入りDNA二重鎖基質を、DNAプローブの94℃2分間の変性、それに続くライゲーション用緩衝液中の65℃2分間の再アニーリングにより作成した。オリゴヌクレオチドの配列を下記に示した(pは5'リン酸基を示す):
Figure 0004598275
【0079】
リガーゼ緩衝液(20mM Tris-HCl(室温でpH7.6);10mM MgCl2;100mM KCl;10mM DTT(すなわちジチオスレイトール);1mM NAD+;および20mg/ml BSA)中のDNAリガーゼおよびマッチまたはミスマッチ基質を指示量含有するライゲーション混合物(20μl)を、65℃で所定の時間インキュベーションした。反応を、等量の停止溶液(すなわち、50mM EDTA、80%ホルムアミド、および1% Blue Dextran)を添加し終結した。試料(5μl)を、8M尿素-10%ポリアクリルアミドGeneScanゲルにより、操作マニュアル(パーキンエルマー社)に従い電気泳動した。未反応の基質は、30-mer com3Fで示され、かつ生成物はマッチ基質の場合ライゲーションされた63-merで示された。残余の基質およびライゲーション産物は両方共、GeneScan分析ソフトウェア672(ver.2.0、パーキンエルマー社)を用いて定量した。
【0080】
実施例6−定常状態速度論
定常状態の速度定数は、100μlの反応容量65℃での、所定の基質濃度(ニック入りDNA二重鎖基質濃度は25〜400nM)および所定のリガーゼ濃度(TthおよびTsp. AK16Dの両方について12.5pM)での、ライゲーション反応の初速度を測定することにより決定した。アリコート5μlを、0、2、4、6、8、10分で取り出し、かつ停止溶液5μlと混合した。残りの基質を、前述のようにGeneScanゲルによりライゲーションされた生成物から分離した。ライゲーション反応の初速度は、経時的にライゲーション産物の生成から算出した。Kmおよびkcat値は、コンピュータソフトウェアUltrafit(バイオソフト社、ファーガソン、MO)を用いて決定した。
【0081】
実施例7−7種のサームスリガーゼ遺伝子の配列分析
GeneBankから検索した配列データを基にした5種のグラム陰性菌のNAD+-依存型DNAリガーゼのアミノ酸配列を並置したところ、Tthリガーゼは、サームス・スコットダクツリガーゼと93%、リオドサーマス・マリナス(Rhodothermus marinus)リガーゼと49%、大腸菌リガーゼと48%、並びにジモノマス・モービリス(Zymomonas mobilis)と38%同じであることを示している。これらのリガーゼの高度に保存された領域に相当する縮重プライマーを用いて、下記の世界規模の収集を示す7種のサームス株からのリガーゼ遺伝子断片を増幅した:日本からのサームス・フラバス(Thermus flavus)(配列番号:16)、米国イエローストーン国立公園からのサームス・アクアティカス(Thermus aquaticus)YT-1(配列番号:15)およびサームス種AK16D、ニュージーランドからのサームス・フィリフォールミス(Thermus filformis) Tok4A2(配列番号:17)およびサームス・フィリフォルミス(Thermus filiformis) Tok6A1(配列番号:18)、アゾレス諸島からのサームス種 SM32(配列番号:19)、ならびにポルトガルからのサームス種 Vil3(配列番号:20)。1.4〜1.6kbの範囲の増幅したリガーゼ断片の配列を、ABI 373自動シーケンサーを用いてPCR産物を直接配列決定することにより決定した。一般にサームスリガーゼは、85%〜98%の配列同一性で示されるような進化の間に高度に保存されている。対照的に、同等株からの制限エンドヌクレアーゼTaqIおよびそのアイソシゾマーのアミノ酸配列は、わずかに50〜70%アミノ酸同一性を示した(Caoら、Gene、197:205-214(1997)、これは本明細書に参照として組入れられている)。一般にサームスリガーゼは、他の細菌のDNAリガーゼと比較した場合に30〜40%の配列同一性を示す。配列の分岐進化は、様々な地理群において、同じ群よりもわずかに高く、これは機会的浮動またはそれぞれの地域環境への適合を反映している(図1)。サームス・フラバス、サームス・フィリフォールミス(Thermusfilformis) Tok4A2、サームス・フィリフォルミス Tok6A1、サームス種SM32、サームス種Vil3、サームス・アクアティカス YT-1、およびサームス種AK16D(配列番号:14)リガーゼは、サームス・サーモフィルス HB8 DNAリガーゼと各々、98.2%、89.9%、89.5%、89.8%、88.3%、88.2%、88.1%を共有していた。Tth DNAリガーゼの位置指定突然変異により同定されるようなこれらの酵素のアデニル化部位(118KXDG、ここでx一般に疎水性残基である)は、全てのサームスリガーゼにおいて完全に同一であり、更にアデニル化モチーフのフランキング配列も、アミノ酸残基の118K前の117Hが118Rで置換されているTsp. AK16D以外は同じである(図1B)。現在までに発見された非-サームス NAD+-依存型リガーゼにおいて、対応する位置は、ProまたはLeuのいずれかである。日本からの2個の単離体は、その他のサームス株から、234位での3-aa-挿入により識別することができる。
【0082】
実施例8−Tsp. AK16D由来のDNAリガーゼのクローニング、発現および精製
新規特性を伴うサームスリガーゼを発見する機会を最大にするために、T. thermophilusリガーゼと比べて最低の配列同一性を示したTsp. AK16Dリガーゼを選択した。ORF(すなわちオープンリーディングフレーム)の完全な配列を得るために、この遺伝子のN-およびC-末端の断片を、逆転写PCRにより増幅し、かつ直接配列決定した。サームス種 AK16Dリガーゼ遺伝子の完全なORFは、674個のアミノ酸からなるのに対し、Tthリガーゼは676個のアミノ酸およびT. Scotリガーゼは674個のアミノ酸であった(図1C)。完全長サームス種 AK16Dリガーゼ遺伝子は、Pfuポリメラーゼを用いてPCR増幅し、かつ発現プラスミドpET11c(ノバゲン社)にクローニングした。このリガーゼ遺伝子を含む挿入物の完全性は、DNA配列決定により証明した。Tsp. AK16Dリガーゼを発現しているpET11cプラスミドは、コンピテント大腸菌細胞NovaBlue(DE3)pLysSに形質転換した。リガーゼの産生は、IPTGの最終濃度1mMとなるような添加により誘導された。Tsp. AK16Dリガーゼタンパク質は、総細胞タンパク質のおよそ10%まで発現された(図2、レーン3)。70℃15分間の加熱は、ほとんどの大腸菌タンパク質を変性したが、熱安定性リガーゼは優性バンドとして残った(図2、レーン4)。シバクロンブルーベースのアフィニティークロマトグラフィー(ファルマシア社)は更に、残留する大腸菌タンパク質および核酸を除去し、クーマシー染色により判定してほぼ相同なTsp. AK16Dリガーゼタンパク質を生じた(図2、レーン5)。
【0083】
実施例9−ライゲーション反応の塩、pH、およびNAD+依存性
図3Aは、TthおよびTsp. AK16Dリガーゼタンパク質のリガーゼ活性のpH依存性を示している。TthリガーゼおよびTsp. AK16DリガーゼのpH依存曲線の形状は、本質的に重ね合わせることができる。TthリガーゼおよびTsp. AK16Dリガーゼの最適pHは8.5であり、80%以上の活性がpH7.8〜9.5の間で認められる。このpH作用の同一性は、両方のリガーゼが、それらの触媒中心に類似した局所的環境を有することを示唆しており、これはこれら2種のリガーゼ間の配列保存性の程度に一致している。図3Bは、TthおよびTsp. AK16Dリガーゼタンパク質のリガーゼ活性の塩濃度依存性を示している。TthリガーゼおよびTsp. AK16Dリガーゼの最適KCl濃度は、各々100および50mMである。図3Cは、TthおよびTsp. AK16Dリガーゼタンパク質のリガーゼ活性のNAD+濃度依存性を示している。最適NAD+濃度は、TthリガーゼおよびTsp. AK16Dリガーゼの両方について1mMである。NADプロフィールの類似性は、NAD+結合に関与するリガーゼのN-末端ドメインの高度に保存された性質と調和している。
【0084】
実施例 10−ライゲーション反応への2価金属の作用
2価金属イオンは、下記のライゲーション反応の3段階の各々で重要である:(i)アデニル化モチーフKXDGにおけるリシン残基のアデニル化;(ii)アデニル酸塩の5'リン酸への転移による、DNA-アデニル酸中間体の生成;および(iii)アデノシン一リン酸(AMP)の放出を伴う、ホスホジエステル結合の形成。一般にMg2+は、ATP-依存型およびNAD+-依存型リガーゼの両方にとって好ましい金属である。Mg2+は、アルカリ土類金属イオンCa2+および通常試験した周期表4族遷移金属イオンで置換することができる。TthおよびTsp. AK16Dリガーゼは、ライゲーション活性を支持するために、代用金属補因子としてMn2+を使用することができる(図4)。両酵素はCa2+では活性が低く、Co2+、Ni2+、Cu2+およびZn2+ではライゲーションを支持することに失敗した。比較すれば、Hin(すなわち、Haemophilus influenzae)由来のATP-依存型リガーゼは、ニック閉鎖の金属補因子としてMg2+およびMn2+のみを利用するが、Ca2+、Co2+、Cu2+、およびZn2+は利用しない(Chengら、Nucleic Acids Res、25(7):1369-1374(1997)、これは本明細書に参照として組入れられている);ChlorellaウイルスPBCV-1由来のATP-依存型リガーゼは、Mg2+、Mn2+、およびCo2+を利用するが、Ca2+、Cu2+、およびZn2+は利用しない(Hoら、J Virol、71(3):1931-1937(1997)、これは本明細書に参照として組入れられている)。金属補因子としてのCa2+の利用は、サームス酵素が、ほとんどの基質をDNA-アデニル酸中間体に変換することができた。しかし、ニック閉鎖の割合は低下し、このことはDNA-アデニル酸中間体の蓄積に繋がる(図4B)。この中間体の少量Ni2+においても認められたが;しかし、ライゲーション産物は本検出レベルでは認められず、このことはNi2+はニック閉鎖段階を支持しないことを示唆している(図4B)。Mg2+およびMn2+による2種のサームスリガーゼの相対活性を更に比較するために、ライゲーション産物の生成を、最初に20分間モニタリングした。図5に示したように、サームス酵素は、一貫してMg2+のほうがMn2+よりも活性があった。第二に、Mg2+またはMn2+の最大40mMまでの濃度のライゲーション活性を測定した(図6)。これらの酵素は両方共、反応混合物中の金属イオン濃度の変化に敏感に反応した。高Mn2+濃度で、高イオン強度が酵素活性を阻害し、これはKCl依存性のプロフィールに一致している(図4)。時間経過の結果と同様に、サームス酵素は、Mg2+のほうがMn2+よりもより活性があった(図6)。これらの試験と以前の報告書の間のサームスリガーゼの相対活性の矛盾は、ここではクローン化した酵素を用いたのに対し、以前の研究では精製した天然の酵素を用いたためであろう(Takahashiら、J Biol Chem、259(16):10041-10047(1984)、これは本明細書に参照として組入れられている)。
【0085】
実施例 11−定常状態速度論
定常状態の速度定数は、推定Km値にまたがる基質濃度を用い蛍光標識したライゲーション産物の形成を経時的にモニタリングすることにより測定した(表1)。
【0086】
【表1】
TthおよびTsp. AK16Dリガーゼの定常状態速度論a
Figure 0004598275
a. 結果は最低3回の実験の平均で示した。
【0087】
Tsp. AK16Dリガーゼの定常状態の特性は、Tthリガーゼと類似しており、これは触媒チャネルがサームスリガーゼにおいて高度に保存されていることを示している。サームスリガーゼの平均Km値約90nMは、大腸菌リガーゼの5OnMのKm値に類似していて(Modrichら、J Biol Chem、248(21):7495-7501(1973)、これは本明細書に参照として組入れられている)、かつワクシニアウイルスATP-依存型リガーゼの約10倍である(Sekiguchiら、Nucleic Acids Res、25(4)727-734(1997)、これは本明細書に参照として組入れられている)。サームスリガーゼの1分当たりの約45代謝回転数の平均kcat値は、大腸菌リガーゼの1分当たりの約28代謝回転数のkcat値よりも高い(Modrichら、J Biol Chem、248(21):7495-7501(1973)、これは本明細書に参照として組入れられている)。
【0088】
実施例 12−ギャップのあるまたは挿入されたDNA二重鎖基質のライゲーション
ギャップのある基質は、オリゴヌクレオチドLP3'Cの3'ヒドロキシル部位からの1または2個のヌクレオチドの欠失により作成し、挿入のある塩基は、オリゴヌクレオチドLP3'Cの3'ヒドロキシル部位からの1または2個のヌクレオチドの追加により作成した。ギャップのあるまたは挿入された二重鎖DNA配列は、正常なニック入り基質と著しく異なっていた。本発明者らの実験条件下で、ライゲーションは、TthまたはTsp. AK16Dリガーゼのいずれかに関する1-nt(すなわちヌクレオチド)もしくは2-ntギャップのある基質または2-nt挿入された基質で検出可能でなかった(図7A)。1-nt挿入基質について、A挿入のみが、両リガーゼについて微量のライゲーション産物を生じた(図7A)。ライゲーション接合点において全ての他の1-nt挿入は、ライゲーションすることはできない。対照的に、HinリガーゼおよびChlorellaリガーゼは、1-ntギャップで認知可能なライゲーションを示した(Hoら、J Virol、71(3):1931-1937(1997)およびChengら、Nucleic Acids Res、25(7):1369-1374(1997)、これは本明細書に参照として組入れられている)。ワクシニアリガーゼの場合、1-ntギャップのライゲーションは無視できるが、DNA-アデニル酸中間体の形成は顕著であり、このことは1-ntギャップのある基質の使用の大きい影響は、ニック閉鎖であることを示唆している(Shuman, S.、Biochemistry、34(49):16138-16147(1995)、これは本明細書に参照として組入れられている)。サームス酵素によるDNA-アデニル酸中間体の生成は認められず、このことはギャップのあるまたは挿入された基質のほとんどが、ライゲーションサイクルの第二段階−5'リン酸でのDNA基質のアデニル化を完了する可能性を失い得る。1-nt A挿入のミス-ライゲーションは、スリップ(slippage)によるものである(図7B)。サームスリガーゼスリップはサームス DNAポリメラーゼよりもはるかに少ないが、これは低頻度では生じる。隣接ntがTであるという事実を仮定すると、このスリップは、5'A/Cミスマッチがライゲーションされている5'リン酸側で生じることができる(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996)、これは本明細書に参照として組入れられている)。恐らくこの酵素は、3'側でスリップに耐性を示し、これは1nt C挿入が検出可能なライゲーション産物を生じないことによるものであろう(図7)。
【0089】
実施例13−サームス DNAリガーゼの忠実
Tth DNAリガーゼは、ミスマッチがニック接合点の3'側に位置する場合、より識別可能である。3'G/Tまたは3'T/Gは、認知可能なミスマッチライゲーションを示す唯一のミスマッチである(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996)、これは本明細書に参照として組入れられている)。クローン化したTsp. AK16Dリガーゼの忠実度を評価するために、3'T/Gミスマッチライゲーションに勝るマッチの割合の比は、市販の給源のT4リガーゼと野生型およびK294R突然変異体Tth DNAリガーゼとを比較した(表2)。
【0090】
【表2】
DNAリガーゼの忠実a
Figure 0004598275
a 反応混合物は、12.5nMニック入りDNA二重鎖基質、指定量のDNAリガーゼからなる。T4 DNAリガーゼ忠実度は37℃でアッセイし、好熱性リガーゼの忠実度は65℃でアッセイした。160μl反応混合物からの5μlアリコートを、マッチ基質を含む反応について0、10、20、30、40、50、60秒後に取り出し、かつミスマッチ基質を含む反応について0、1、2、3、4、5、6時間後に取り出し、停止溶液5μlと混合した。試料(5μl)を、記載のように8M尿素-10%ポリアクリルアミドゲルを通し電気泳動した。蛍光標識したライゲーション産物を分析し、かつGenescan 672 ver.2.0ソフトウェア(アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティー、CA)を用いて定量した。これらの結果は、DeltaGraph Pro3ソフトウェア(DeltaPoint社、モントレー、CA)を用いてプロットした。初速度は、x-軸が時間でy-軸が生成したライゲーション産物の量で示されたグラフの直線範囲の傾斜で決定した。マッチおよびミスマッチの基質の概略的説明を以下に示す:
Figure 0004598275
b ライゲーション忠実度1=C-Gマッチ初速度/3'-末端でのT-Gミスマッチ初速度
c ライゲーション忠実度2=C-Gマッチ初速度/3'-末端の最後から2番目でのT-Gミスマッチ初速度。各実験で使用したDNAリガーゼの濃度は示したとおりである。結果は少なくとも2回の実験の平均として算出した。
【0091】
T4リガーゼは、ライゲーション忠実度50を得るためのマッチおよび3'T/Gミスマッチの両基質に対する高い触媒効率を示した。サームスリガーゼは、同等のマッチライゲーション速度を達成するために比較的高い酵素濃度が必要であることにより証明されるように、マッチライゲーションにおいて効率が低いように見える。しかし、同じアッセイ条件下で、サームス酵素は、3'T/Gミスマッチをライゲーションする傾向ははるかに低かった。結果としてサームス酵素の忠実度は、T4リガーゼよりも17-から126-倍高い(表2、ライゲーション忠実度1)。新たにクローン化されたTsp. AK16Dリガーゼの忠実度は、K294R Tth突然変異体に類似していたが、野生型Tth酵素よりも6-倍高かった。DNA-アデニル酸中間体は、3'T/Gミスマッチライゲーションで認められ、このことは、3'ライゲーション接合点でのミスマッチが、サームスリガーゼのニック閉鎖の能力に関する実質的に制約を課し、これによりDNA-アデニル酸中間体のライゲーション産物および遊離のAMP(ライゲーションサイクルの第三段階)への代謝回転を制限することを示している。T/Gミスマッチの1塩基対をライゲーション接合点から遠ざける作用について更に検証した。3'末端の最後から2番目でのT/Gミスマッチによるライゲーション速度は、一般にライゲーション接合点の3'末端でのT/Gミスマッチと比較して7-倍改善していた。しかし、このライゲーション速度は、マッチライゲーションのものよりも依然非常に遅く、ライゲーション接合点近傍のヌクレオチド相補性の重要性に加え、ライゲーション反応の制御における3'末端の完全な塩基対の究極的に重要な役割を強調している。従って、ミスマッチが3'側から第二の位置にある場合のライゲーション忠実度(ライゲーション忠実度2)は、ミスマッチがライゲーション接合点の直ぐ傍に位置した場合のものよりも低い。ミスマッチが最後から2番目の位置にある場合であっても、Tsp. AKl6D酵素が極めて高い忠実度(1.1 x 103)を維持することは注目すべきであり、更にこの新規サームスリガーゼの識別力を強調すべきである。
【0092】
実施例14−Mn2+の存在下での熱安定性DNAリガーゼの忠実
DNAポリメラーゼおよび制限エンドヌクレアーゼのような多くの酵素が、金属補因子としてMn2+が使用された場合に緩んだ(relaxed)特異性を示す。リガーゼ忠実度に対する金属イオンの交換の影響は、完全には解明されていないが、ライゲーション反応の代用金属補因子としてMn2+を使用することができることは分かっている((Hoら、J. Virol、71(3):1931-1937(1997)およびChengら、Nucleic Acids Res、25(7):1369-1374(1997)、これらは本明細書に参照として組入れられている)。Tsp. AK16DリガーゼおよびTthリガーゼへのマッチおよびミスマッチライゲーションの反応速度が決定された。表3において、マッチライゲーション速度は、Mn2+よりもMg2+によるほうが高く(表3)、これは様々なMg2+条件下での一定の高いライゲーション速度と一致した(図4-6)。
【0093】
【表3】
Mn2+によるDNAリガーゼ忠実a
Figure 0004598275
a 反応条件は、Mg2+の代わりに10mM Mn2+を使用した以外は、表2と同じであった。ライゲーション忠実度は、3'-末端のC-Gマッチの初速度をT-Gミスマッチの初速度で割った比により定義される。結果は少なくとも2回の実験の平均として算出した。
【0094】
Tthリガーゼのミスマッチライゲーション速度は、Mg2+よりもMn2+の方が約6-倍高いが、Tsp. AK16Dリガーゼでは約4-倍高い。従って、他のこれまでに試験したDNA酵素と同様に、DNAリガーゼも、Mg2+がMn2+で交換された場合に緩んだ特異性を示す。 結果として、TthリガーゼおよびTsp. AK16Dリガーゼの忠実度因子は、各々、12-および6-倍低下された(表2-3)。驚くべきことに、Tsp. AK16D酵素は、ミスマッチライゲーションに対してTth酵素よりも12-倍高い忠実度を維持する。金属補因子としてのMg2+の使用とは対照的に、Tthリガーゼは、Mn2+による3'T/Gミスマッチライゲーションの間にDNA-アデニル酸中間体を生成しない。この知見は、Tth酵素による3'T/Gミスマッチのニック閉鎖は、Mn2+により加速されることを示唆している。他方でTsp. AK16D酵素は、Mg2+またはMn2+のいずれかによる3'T/Gミスマッチライゲーションの間にDNA-アデニル酸中間体を蓄積した。これらの結果は、Tsp. AK16D DNAリガーゼによるMn2+での3'T/Gミスマッチのニック閉鎖は、後期律速段階として残存し、これがこの酵素のより高い忠実度を説明していることを示唆している。
【0095】
Tth DNAリガーゼに関する研究は、熱安定性リガーゼの理解を深め、かつライゲーションの共通のテーマである−KXDGモチーフでのリガーゼのアデニル化を再確認している(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3079-3085(1996)、これは本明細書に参照として組入れられている)。本研究は、サームスリガーゼは、それらの一次タンパク質配列は非常に類似しているにもかかわらず、基質特異性は互いに異なることも明らかにする。高度に相同的な構造は、様々なサームスリガーゼから予想することができるが、微妙な局所環境(local environment)は、特定のミスマッチを基質として許容する可能性を指示することができる。サームスリガーゼの忠実度は、多ドメイン、多モチーフおよび/または多配列エレメントにより決定され得る。TthおよびTsp. AK16Dリガーゼを比較すると、K294R(同一の局所環境、図1B参照)はTthリガーゼの忠実度を増強するが(Luoら、Nucleic Acids Res、24(15):3071-3078(1996)、これは本明細書に参照として組入れられている)、この位置にKを伴うTsp. AK16Dリガーゼは、依然優れたミスマッチ識別を発揮することがわかる。追加の配列エレメントはカバーされないままである。KXDGモチーフの隣接位置でのR置換は、Tsp. AK16Dリガーゼの特異性に対し作用することができるが、これはChlorellaリガーゼに関する研究が、ニック認知に関するAMP結合ポケットの占拠の重要性を強調しているからである(Sriskandaら、Nucleic Acids Res、26(2):525-531(1998))。Tsp. AK16Dリガーゼといくつかの2価金属イオンによるDNA-アデニル酸中間体の蓄積は、ライゲーション反応のニック閉鎖段階が金属イオン、ギャップのある基質およびミスマッチ基質の選択に対し感受性があることを明らかにする。Tsp. AK16Dリガーゼに関する更なる構造的および機能的研究は、いかにしてこの酵素が異なる基質および異なる金属イオンに対して高い忠実度を達成するかを明らかにすると思われる。
【0096】
本発明は例証のために詳細に説明されているが、このような詳細は単にその目的のためであり、かつ当業者は、「特許請求の範囲」で定義された本発明の範囲の精神から逸脱することなく変更を行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A〜Cは、サームス DNAリガーゼの配列を比較している。図1Aは、サームス DNAリガーゼの進化樹を示している。図1Bは、次の9種のサームスリガーゼの部分配列を並置している:Tsp. AK16D (配列番号:22)、Thermus aquaticus YT-1 (配列番号:15)、Thermus Thermophilus (“Tth”) (配列番号:23)、Thermus flavus (配列番号:16)、Thermus filiformis Tok4A2 (配列番号:17)、Thermus filiformis Tok6A1 (配列番号:18)、Tsp. SM32 (配列番号:19)、Tsp. Vil3 (配列番号:20)、およびT. scot (配列番号:21)。T. Scotのaa(すなわちアミノ酸)配列は、アクセッション番号1085749でGenebankから検索した(配列番号:31)。アデニル化モチーフKXDG(配列番号:24)には下線をつけ、アデニル化部位には*印をつけた。アミノ酸の番号は、Tsp. AK16Dリガーゼ(配列番号:1)を基にした。図1Cは、Tsp. AK16Dリガーゼ(配列番号:1)の完全なアミノ酸配列である。アデニル化モチーフKXDG(配列番号:24)には下線をつけ、アデニル化部位118Kには残基の上に印(*)をつけた。Tsp. AK16Dリガーゼ遺伝子の完全な配列および6個の他のサームスリガーゼ遺伝子の部分配列は、GenBankに、Tsp. AK16DはAF092862(配列番号:1)で、サームス・アクアティカス(Thermus aquaticus)YT-1はAF092863(配列番号:25)で、サームス・フラバス(Thermus flavus)はAF092864(配列番号:26)で、サームス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)Tok4A2はAF092865(配列番号:27)で、サームス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)Tok6A1はAF092866(配列番号:28)で、Trp. Vil3はAF092867(配列番号:29)で、およびTsp. SM32はAF092868(配列番号:30)で登録されている。
【図2】 図2は、 Tsp. AK16Dリガーゼタンパク質のSDS-PAGE分析を示した。レーン1、分子量マーカー;レーン2、誘導されない細胞溶解液;レーン3、誘導された細胞溶解液;レーン4、70℃で加熱後の上清;レーン5、Hitrapブルーカラムから溶離した画分。SDS-ポリアクリルアミドゲルは、0.1% SDS-7.5%ポリアクリルアミドであり、かつ電気泳動後クーマシーブリリアントブルーで染色した。矢印は、Tsp. AK16Dリガーゼの位置である。
【図3】 図3A〜Cは、ライゲーション活性に対する塩、pH、およびNAD+の作用を示している。Tsp. AK16Dリガーゼ:黒四角;Tthリガーゼ:白四角。図3Aは、pHの作用を明らかにしている。反応は、200nM ニック二重鎖基質、12.5pM TthリガーゼまたはTsp. AK16Dリガーゼ、20mM Tris-HCl(pH値は、室温で測定した)、10mM MgCl2、100mM KCl、10mM DTT、1mM NAD+、および20mg/ml BSAを含有する20μl混合物中で、65℃で10分間行った。図3Bは、塩の作用を示している。反応は、200nM ニック二重鎖基質、12.5pM TthリガーゼまたはTsp. AK16Dリガーゼ、20mM Tris-HCl(TthリガーゼについてはpH8.5、Tsp. AK16DリガーゼについてはpH8.0)(室温で測定)、10mM MgCl2、指示量のKCl、10mM DTT、1mM NAD+、および20mg/ml BSAを含有する20μl混合物中で、65℃で10分間行った。図3Cは、NAD+の作用を示している。Tthライゲーション反応は、200nM ニック二重鎖基質、12.5pM Tthリガーゼおよび指示濃度のNAD+、20mM Tris-HCl(pH8.5)、5mM MgCl2、100mM KCl、10mM DTT、1mM NAD+、および20mg/ml BSAを含有する20μl混合物中で、65℃で10分間行った。Tsp. AK16Dライゲーション反応は、200nM ニック二重鎖基質、12.5pM Tthリガーゼ、および指示濃度のNAD+、20mM Tris-HCl(pH8.5)、5mM MgCl2、50mM KCl、10mM DTT、1mM NAD+、および20mg/ml BSAを含有する20μl混合物中で、65℃で10分間行った。
【図4】 図4A〜Bは、Tsp. AK16D(斜線棒)およびTth(黒棒)リガーゼ活性の2価カチオンの依存性を示している。図3Cに示したような反応緩衝液中に2nMニック二重鎖基質、0.5nM Tthリガーゼまたは1nM Tsp. AK16Dリガーゼ、および5mM指示された2価カチオンを含む反応混合物(20μ1)を、65℃で10分間インキュベーションした。図4Aは、金属補因子としての様々な2価イオンを用いたライゲーション反応を示す。図4Bは、ライゲーション産物およびDNAアデニル酸中間体を示す代表的GeneScanゲルのクロマトグラムを示す:(-):リガーゼが省かれた陰性対照反応。Co2+は、DNA基質の沈殿を引き起こし、未反応基質の消失を生じた。
【図5】 図5A〜Bは、Mg2+(白四角)またはMn2+(黒四角)の存在下でのTth(図5A)およびTsp. AK16D(図5B)リガーゼ活性の時間経過を示している。反応は、図3Cに記したような反応緩衝液中に20nM ニック二重鎖基質、0.5nM Tthリガーゼまたは1nM Tsp. AK16Dリガーゼ、および5mM Mg2+またはMn2+を含有する100μl混合物中で65℃で行った。アリコート(5μl)を、指定時刻に取り出し、等量の停止溶液を添加し反応を停止した。
【図6】 図6A〜Bは、Tsp. AK16D(図6A)およびTth(図6B)リガーゼ活性の2価カチオン濃度依存性を示している。Mg2+(白四角);Mn2+(黒四角)。反応は、図4Cに記したような反応緩衝液中に20nMニック二重鎖基質、0.5nM Tthリガーゼまたは1nM Tsp. AK16Dリガーゼ、および指定濃度のMg2+またはMn2+を含有する20μl混合物中で65℃で2分間行った。
【図7】 図7A〜Bは、ギャップおよび挿入基質のライゲーションを示している。図7Aは、ギャップおよび挿入基質によるライゲーション産物の形成を示している。反応は、反応緩衝液中に12.5nM ニック二重鎖基質、1.25pM Tthリガーゼまたは12.5nM Tsp. AK16Dリガーゼを含有する20μl混合物中で65℃で4時間行った。図7Bは、提唱された反応経路が1nt(すなわちヌクレオチド)挿入基質のライゲーションにつながることを示す。

Claims (30)

  1. 配列番号:1のアミノ酸配列を含む、単離された熱安定性リガーゼ。
  2. KXDGモチーフに隣接するヒスチジンを有するサームス属由来DNAリガーゼの変異体であり、そのアミノ酸配列中、サームス属由来DNAリガーゼのKXDGモチーフに隣接するヒスチジンのみがアルギニンに置換された変異を有し、Xが任意のアミノ酸である、単離された熱安定性リガーゼ。
  3. サームス属由来DNAリガーゼが、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:19、または配列番号:21を含むアミノ酸配列を有するリガーゼからなる群より選択される、請求項2に記載の熱安定性リガーゼ。
  4. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:15を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  5. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:16を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  6. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:17を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  7. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:18を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  8. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:20を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  9. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:19を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  10. サームス属由来DNAリガーゼが配列番号:21を含むアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  11. サームス属由来DNAリガーゼが、GenBankアクセッション番号AF092863 (配列番号:25)、AF092864 (配列番号:26)、AF092865 (配列番号:27)、AF092866 (配列番号:28)、AF092867 (配列番号:29)、AF092868 (配列番号:30)、または1085749 (配列番号:31) のアミノ酸配列を有するリガーゼからなる群より選択される、請求項2に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  12. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号AF092863(配列番号:25)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  13. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号AF092864(配列番号:26)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  14. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号AF092865(配列番号:27)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  15. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号AF092866(配列番号:28)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  16. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号AF092867(配列番号:29)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  17. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号AF092868(配列番号:30)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  18. サームス属由来DNAリガーゼがGenBankアクセッション番号1085749(配列番号:31)のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  19. KXDGモチーフのKがアデニル化部位である、請求項2に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  20. アミノ酸配列が、配列番号:1のアミノ酸配列に対し少なくとも98%類似している、請求項2に記載の単離された変異体熱安定性リガーゼ。
  21. 請求項1または2に記載の熱安定性リガーゼをコードしている、単離DNA分子。
  22. 配列番号:2のヌクレオチド配列を有する、請求項21記載の単離DNA分子。
  23. 請求項21記載の異種DNA分子で形質導入されたDNA発現システム。
  24. 請求項21記載の異種DNA分子で形質導入された宿主細胞。
  25. 1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる標的ヌクレオチド配列を試料中において検出するための、下記の段階を含む方法:
    1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる標的ヌクレオチド配列を含有する可能性がある試料を提供する段階;
    各々が、(a)標的特異的部分を有する第一のオリゴヌクレオチドプローブと、(b)標的特異的部分を有する第二のオリゴヌクレオチドプローブとを特徴とする1個または複数のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供する段階であって、特定のセットにおけるオリゴヌクレオチドプローブが、1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる標的ヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションに適し、かつ標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合に互いのライゲーションに適しているが、試料中に存在する任意の他のヌクレオチド配列にハイブリダイズされた場合にこのようなライゲーションを妨害するミスマッチを有する段階;
    請求項1または2に記載の熱安定性リガーゼを提供する段階;
    試料、1個または複数のオリゴヌクレオチドプローブセット、および熱安定性リガーゼを配合し、リガーゼ検出反応混合物を形成する段階;
    任意のハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドが標的ヌクレオチド配列から分離される変性処理と、試料中に存在する場合は、オリゴヌクレオチドプローブセットがそれらの各標的ヌクレオチド配列に対して塩基特異的な様式で隣接位置でハイブリダイズし且つ互いにライゲーションするハイブリダイゼーション処理とを含む1種以上のリガーゼ検出反応サイクルをリガーゼ検出反応混合物に施し、リガーゼ検出反応混合物中の他の核酸から識別できる各セットについてライゲーション産物配列と互いに結合された標的特異的部分を含むライゲーション産物配列を形成する段階であって、該オリゴヌクレオチドプローブセットは、それらの各標的ヌクレオチド配列以外の試料中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるが、1個または複数のミスマッチの存在のために互いにはライゲーションせず、かつ変性処理時に個別に分離している段階;ならびに
    試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の結果として生産されたライゲーション産物配列の存在を検出する段階。
  26. 熱安定性リガーゼが、配列番号:1のアミノ酸配列を有する、請求項25記載の方法。
  27. 配合前に、試料中に存在する標的ヌクレオチド配列を増幅する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
  28. 増幅がポリメラーゼ連鎖反応により行われる、請求項27記載の方法。
  29. 1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により他のヌクレオチド配列とは異なる第一および第二の相補的標的ヌクレオチド配列から形成された標的二本鎖核酸を試料中において検出するための、下記の段階を含む方法:
    1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第一及び第二の相補的ヌクレオチド配列から形成された標的二本鎖核酸を含有する可能性がある試料を提供する段階;
    (a)標的特異的部分を有する第一のオリゴヌクレオチドプローブと、(b)標的特異的部分を有する第二のオリゴヌクレオチドプローブとを特徴とする第一のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供する段階であって、該第一のセット中のオリゴヌクレオチドプローブが、1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第一の標的ヌクレオチド配列に対し相補的であり、かつ第一の標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合に互いにライゲーションするのに適しているが、試料中に存在する任意の他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされる場合にこのようなライゲーションを妨害するミスマッチを有する段階;
    (a)標的特異的部分を有する第三のオリゴヌクレオチドプローブ、および(b)標的特異的部分を有する第四のオリゴヌクレオチドプローブを特徴とする第二のオリゴヌクレオチドプローブセットを提供する段階であって、第二のセット中のオリゴヌクレオチドプローブが、1個もしくは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失または転位により、試料中の他のヌクレオチド配列とは異なる第二の標的ヌクレオチド配列に対し相補的であり、かつ第二の標的ヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズされた場合に互いにライゲーションするのに適しているが、試料中に存在する任意の他のヌクレオチド配列へハイブリダイズされた場合にこのようなライゲーションを妨害するミスマッチを有する段階;
    請求項1または2に記載の熱安定性リガーゼを提供する段階;
    試料と、第一及び第二のオリゴヌクレオチドプローブセットと、熱安定性リガーゼとを配合することにより、リガーゼ連鎖反応混合物を形成する段階;
    ハイブリダイズされた任意のオリゴヌクレオチドが標的オリゴヌクレオチド配列から分離される変性処理と、試料中に存在する場合は、オリゴヌクレオチドプローブセットがそれらの各標的ヌクレオチド配列に対して塩基特異的な様式で隣接位置でハイブリダイズし且つ互いにライゲーションするハイブリダイゼーション処理とを含む1種以上のリガーゼ連鎖反応サイクルをリガーゼ連鎖反応混合物に施し、リガーゼ連鎖反応混合物中の他の核酸から識別できる各セットについてライゲーション産物配列と互いに結合された標的特異的部分を含むライゲーション産物配列を形成する段階であって、該オリゴヌクレオチドプローブセットはそれらの各標的ヌクレオチド配列以外の試料中のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるが、1個または複数のミスマッチの存在のために互いにはライゲーションせず、かつ変性処理時に個別に分離している段階;ならびに
    試料中に存在する標的ヌクレオチド配列の結果として生産されたライゲーション産物配列の存在を検出する段階。
  30. 熱安定性リガーゼが、配列番号:1のアミノ酸配列を有する、請求項29記載の方法。
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