JP4597904B2 - 石灰窒素粉末の湿式造粒法 - Google Patents

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Description

本発明は、石灰窒素粉末の湿式造粒法に関する。
石灰窒素は、カルシウムシアナミド(シアナミド態窒素)を主成分とし最大30質量%の生石灰等を含む窒素肥料である。カルシウムシアナミドには、除草の他に、長期間にわたって作物に窒素を供給する作用がある。粉状の石灰窒素は、散布時に飛散を起こしやすいので、通常は単独又は他の粉状肥料と合わせて造粒して施用されている。造粒方法としては、水を用いる湿式造粒法(特許文献1)と、尿素等をバインダーとする乾式造粒法(特許文献2)とがある。
乾式法では、バインダー水の残留による生石灰分の消化反応は起こらないのでシアナミド態窒素の減少はないが、尿素由来の尿素態窒素を含むので、窒素成分を同一量で施肥したときにシアナミド態窒素量が少なくなる。そこで、湿式造粒法が好まれているが、この方法では造粒物を100℃以上で熱風乾燥されているとは言え、完全にバインダー水がなくなるまでの乾燥は行われていないので、保存中にやはり消化反応を起こし、造粒物が膨張崩壊することが未解決であった。
特開昭52−150280号公報 特許第3483775号公報
この膨張崩壊を阻止するため、原料の粉状石灰窒素の段階で少量の水を混合熟成し、石灰窒素中の生石灰(CaO)成分の一部又は全部を消化させてから水を用いて造粒することが行われている。生石灰の全部を消化させた場合には、その後の消化反応は起こりえないので、造粒物の膨張崩壊ということはないが、粉状石灰窒素の消化の際に、消石灰の生成に伴う重量増加による肥料成分の希釈が起きる、シアナミド態窒素がアンモニアとなって揮発する、シアナミド態窒素が二量化してジシアンジアミドに変性するなどによって、シアナミド態窒素の20〜30%が損失する。一方、生石灰の一部を消化させた場合には、消石灰の生成量に応じ、膨張崩壊の阻止と性能が低下した中間的な造粒物となる。また、いずれの造粒物も熱風乾燥は施されていても、水分を十分に除去されていないことによる上記問題の他に、硬度も十分に大きくない問題があった。
本発明の目的は、造粒物が膨張崩壊すること及びシアナミド態窒素が損失することを軽減できる石灰窒素粉末の湿式造粒法を提供することである。
本発明は、生石灰含有率が5質量%以上の石灰窒素粉末を、減圧下、水を用いて造粒した後、減圧乾燥することを特徴とする石灰窒素粉末の湿式造粒法である。本発明においては、減圧乾燥を温度50〜80℃、圧力3kPa以下で行うこと、更には減圧乾燥の施される造粒物の含水率が10〜35質量%で、平均粒子径が1〜10mmであり、減圧乾燥終了時の含水率が0.5質量%以下であることが好ましい。
本発明によれば、膨張崩壊すること及び全窒素含量が損失することを軽減できる石灰窒素粉末の造粒物が提供される。また、造粒物の更なる硬度の増大も期待できる。
本発明の特徴は、造粒を水を用いて減圧下で行うとともに、造粒物の乾燥を従来の熱風乾燥のかわりに又は熱風乾燥とともに、減圧乾燥を行うことにある。減圧乾燥は温度50〜80℃、圧力3kPa以下で行うことが好ましい。減圧乾燥を行うことによって、熱風乾燥を行う場合よりも品温を低く保てるため消化反応が起こりにくくなり、しかも造粒物にひび割れ発生がするのを著しく軽減することができる。減圧は低圧であるほど好ましいが、減圧槽等の装置の制約から3kPa以下とする。減圧温度は、消化反応の抑制という点からはできるだけ低温がよいが、乾燥時間が長くなるので50〜80℃が好ましい。
減圧乾燥装置としては、例えば温度制御を可能とした金属製円筒からなる減圧槽を真空ポンプ等の真空装置に接続されているものが使用される。温度制御は、例えば減圧槽の外壁に循環水を循環させる際、その水温を変えることによってできる。造粒物の攪拌は、槽内に設けられた攪拌翼による方法と、減圧槽自体を回転させる方法のいずれであってもよい。造粒物の投入量は、減圧槽体積に対して40〜60体積%であることが好ましい。
造粒物の110℃加熱減量から測定した含水率(以下、単に「含水率」という。)は、乾燥前が10〜35質量%で、乾燥終了時では0.5質量%以下であることが好ましい。また、乾燥前の造粒物の平均粒子径は、乾燥効率や取り扱い性の点から1〜10mmであることが好ましい。
石灰窒素粉末は、その生石灰分が消化されていないことが好ましい。具体的には生石灰含有率が5質量%以上の石灰窒素粉末を造粒原料とすることが好ましい。これによって、従来の湿式造粒法が、消石灰化による重量増加したこと、また肥料成分が希釈されたことから開放される効果が大きくなる。
実施例1
減圧乾燥装置として以下のものを用意した。減圧槽にはステンレス製円筒容器の外周に循環水が循環できる構造のものを用いた。これを横置きにしてロール上にのせ、減圧槽自体を回転させることによって内容物が攪拌するようにした。減圧は、減圧槽の円筒底面部の中心部に真空ポンプにつなぐことによって行った。
石灰窒素粉末(全窒素量21.5質量%、生石灰の含有率が25質量%、生石灰分が消化されていないもの。)を減圧槽に2kg(減圧槽体積に対して40体積%)を入れ、循環水の水温を調節して減圧槽の内温を40℃に、また真空ポンプの開放弁と排気弁の開度を調節して減圧槽の内圧を3kPaに保持した。ついで、大気圧と減圧槽内圧との気圧差を利用して、減圧槽に石灰窒素粉末100質量部あたり32質量部の水を添加した後、減圧槽自体を毎分20回転で20分間回転させて造粒物を製造した。造粒物の含水率は10質量%であった。その後、減圧槽の内圧を3kPaに保持しながら、減圧槽の内温を80℃に高め、減圧槽の回転速度を毎分4回転とした。乾燥に要した時間、すなわち減圧槽内温度が80℃に到達してから乾燥終了の目安としている含水率が0.5質量%となるまでの時間は、約30分であった。得られた減圧乾燥造粒物の平均粒子径は2.5mmで、含水率は0.2質量%であった。この減圧乾燥造粒物について以下の特性を測定した。それらの結果を表1に示す。
(1)硬度:減圧乾燥造粒物(直径2〜3mm)の粒1個に圧縮加重を加え、粒が破壊した時の加重を木屋式硬度計にて測定した。20個の粒について測定しその平均値で示した。
(2)崩壊性:エチレン酢酸ビニル共重合体製袋(150mm×200mm×0.1mm。透湿度33.3g/m・day。JIS K7129 カップ法)に減圧乾燥造粒物250gを入れてから熱融着で密閉し、35℃×80%RHの恒温恒湿室に4日間静置した。その後、目開き1mmのふるいを用いたロータップ式振盪機にて10分間振盪させ、1mmふるい通過物の質量%を測定した。
(3)ひび割れ発生率:エチレン酢酸ビニル共重合体製袋内で4日間静置された上記減圧乾燥造粒物のうち、任意に選んだ直径2〜3mmの粒100個についてひび割れの発生の有無を肉眼観察し、ひび割れ発生した個数を百分率で示した。
(4)全窒素含量及び(5)シアナミド態窒素含量:減圧乾燥造粒物を乳鉢で粉砕し、0.5mmふるいを全通させたものを分析試料とし、ケルダール分解/水蒸気蒸留法によって全窒素含量を、また硝酸銀/チオシアン酸カリウム滴定法によってシアナミド態窒素含量を測定した。
実施例2
生石灰分を消化反応させ、生石灰含有率が16質量%とした石灰窒素粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして減圧乾燥造粒物を製造した。
実施例3
生石灰分を消化反応させ、生石灰含有率が11質量%とした石灰窒素粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして減圧乾燥造粒物を製造した。
比較例1
減圧乾燥のかわりに熱風乾燥を行ったこと以外は、実施例1と同様にして造粒物を製造した。熱風乾燥は、棚型熱風乾燥機を用い、造粒物を厚み1cm程度にうすく広げて、80℃の熱風を15分供給することによって行った。
Figure 0004597904
表1から以下のことが示された。減圧乾燥造粒物の硬度は、実施例は比較例よりも高硬度であった。崩壊性は、実施例では1mmふるい通過質量%が2%であり、耐崩壊性に優れていたのに対し比較例は54質量%であった。ひび割れ発生率は、実施例はいずれも比較例よりも小さかった。全窒素含量及びシアナミド態窒素含量は、実施例はいずれも比較例よりも高含有であったが、実施例1、2と実施例3との対比から明らかなように、造粒原料中の石灰窒素粉末の生石灰含有率に比例して大きくなった。

Claims (3)

  1. 生石灰含有率が5質量%以上の石灰窒素粉末を、減圧下、水を用いて造粒した後、減圧乾燥することを特徴とする石灰窒素粉末の湿式造粒法。
  2. 減圧乾燥を、温度50〜80℃、圧力3kPa以下で行う請求項1に記載の湿式造粒法。
  3. 減圧乾燥の施される造粒物の含水率が10〜35質量%で、平均粒子径が1〜10mmであり、減圧乾燥終了時の含水率が0.5質量%以下である請求項2に記載の湿式造粒法。
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