JP4596938B2 - 光ピックアップ、光情報処理装置 - Google Patents
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Description
また、情報の記録・再生を行うためには、光ピックアップ用の光学系の性能が、マレシャル限界(波面収差が0.07λrms以下)を満足する必要がある。実際の光ピックアップでは、コリメータ、プリズム等の対物レンズ以外の光学素子が含まれるため、対物レンズお波面収差劣化では0.03λrms以下に抑えることが望ましい。
光情報記録再生装置は、半導体レーザを光源としているが、この半導体レーザの発振波長は、個々に異なっていたり、温度の変化に伴い変動したりする。光学材料の屈折率は、波長により変化する性質(分散)を持つため、光源の波長が変動すると3次の球面収差が発生する。したがって、情報の記録・再生時、この球面収差が光学的な課題の一つとなる。この波長が変化した時の球面収差発生量は、光源の短波長化と高NA化により大きくなる。これは、波長を短くすると光学材料の屈折率変化が大きくなり、波長が変化した時の球面収差変化量が大きくなることと、球面収差変化はNAの4乗に比例して大きくなるためである。したがって、波長が変化した時の記録、再生における光情報の劣化に与える影響はより大きくなる。
図14に、波長405nmにおいてNA0.65とNA0.85の対物レンズを使用したときの波長変動による波面収差の変化を示す。
NA0.65では、対物レンズの設計波長である405nmから10nm波長が変動しても、対物レンズの要望性能である0.03λrms以下であるのに対して、NA0.85では、3nm波長が変動すると0.03λrmsを超えてしまい、情報の記録・再生が行えなくなるおそれがある。
一般的に光情報記録装置の動作環境として、温度を10℃から80℃まで想定すると、半導体レーザの波長は、3nm程度変動する。また、中心波長ばらつきが±5nm程度と想定する必要がある。したがって、NA0.85の対物レンズを用いる光学系では、このような波長変化による球面収差を補正する必要がある。
また、波長の異なる複数の光源を用いる互換型の光ピックアップにおいて、小型化、低コスト化を実現させるためには、単一の対物レンズで達成されることが望ましい。
この時、単一の対物レンズで波長や基板厚さが異なる光情報記録媒体を記録または再生するときには、球面収差が発生するため、収差を補正する必要がある。
例えば、基板厚0.1mm、NA0.85、青色帯域の光源により構成されている光ピックアップと基板厚0.6mm、NA0.65の赤色帯域の光源により構成されている光ピックアップとを一つの対物レンズで互換する場合が相当する。
また特許文献1には、光源の発振波長の変化による球面収差を、設計温度における発振波長に対して略2πの整数倍の位相差を、厚みの異なる領域を持つ収差補正素子により補正するように技術が開示されている。
また特許文献2には、光軸を中心とする輪帯を形成し、設計波長λ0の整数倍の光路差を付与することで波長変化による球面収差を補正するようにした技術が開示されている。
また特許文献3には、同心円状に分割された領域ごとに、波面の位相に不連続なとびを付与するような対物レンズを用いて、温度変化による色収差を補正し、かつ複数の光情報記録媒体で良好なスポットを得られるよう補正するようにした技術が開示されている。
また上記特許文献1では、異なる光情報記録媒体に対する異なる波長の光束は、収差補正素子により波面が劣化してしまうという欠点があった。
また上記特許文献2では、許容できる波長変化は2nmまでと狭い範囲であり、また輪帯数が多く、加工が複雑となる。さらに、複数の異なる波長の互換を達成するためには、段差だけでなく回折構造を必要とし、光利用効率の低下や加工が複雑になるという欠点があった。
また上記特許文献3では、対物レンズに段差等を形成しており、加工が複雑になるという欠点があった。
そこで、本発明は上記したような実情を鑑みてなされたものであり、光源の個々が持つ発振波長のばらつきや温度変化により、対物レンズ設計波長λ0から、波長が変化した場合に発生する球面収差を補正し、且つ、複数の光情報記録媒体に対して開口径の異なる光束で情報の再生又は記録を可能とする光ピックアップ及び光情報処理装置を提供することを目的とする。
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ピックアップにおいて、前記収差補正素子は、前記開口制限素子が貼り合わされていることを特徴とする。
また請求項3に記載の発明は、複数の前記光情報記録媒体に対して、光ピックアップを用いて情報の記録・再生・消去の少なくともいずれか1以上を行う光情報処理装置において、前記光ピックアップが請求項1または請求項2に記載の光ピックアップであることを特徴とする。
また収差補正素子は、少ない領域で簡易に構成されているため、加工し易く回折素子で発生するような光利用効率の低下を少なくできる。またコストが安い材料を選択することで、レンズの低コスト化が実現できる。
また収差補正素子は、対物レンズに設計波長とは異なる波長の光が入射したときに発生する球面収差と逆極性の球面収差が発生する位相差を付与する第2の段差を有しているため、最も大きい開口径を通過する光束において、光源が持つ発振波長ばらつきや、温度変化により、対物レンズの設計波長λ0から、波長が変化したとき発生する球面収差を低減させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、本発明の光ピックアップを搭載した光情報処理装置であるため、開口径の異なる複数の情報記録媒体に記録、または再生することができ、且つ光源が持つ発振波長ばらつきや、温度変化が生じても、良好な信号を得ることができる。また、光利用効率の低下を抑制でき、低コスト化、小型化が実現できる。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る光ピックアップ装置の全体構成示した概略図である。なお、第1の実施形態の光ピックアップ装置は、基板厚の異なる情報記憶媒体を異なる開口径を有する光ピックアップで記録または再生を行うことができる。
また2種類の光記録情報媒体である光記録媒体の記録または再生を行うことができるものとする。ここで2種類の光記録媒体の開口数、波長、領域までの基板厚は、それぞれNA=0.85、青色領域までの基板厚0.1mmと、NA=0.65、赤色領域までの基板厚0.6mmであるものとする。
この図1において、青色領域の光源を利用した光ピックアップは、半導体レーザ1、コリメートレンズ2、プリズム4、1/4波長板5、開口制限素子9、収差補正素子20、対物レンズ6、偏光ビームスプリッタ3、検出レンズ8、受光素子10より構成される。
青色領域の光源の中心波長λ0は405nmであり、開口数NAは0.85、光記録媒体7の基板厚を0.1mmとすると、半導体レーザ1の出射光は、コリメートレンズ2により略平行光にされる。コリメートレンズ2を通過した光は偏光ビームスプリッタ3に入射し、プリズム4により偏向される。そして、1/4波長板5、開口制限素子9、収差補正素子20、対物レンズ6を介して集光されることにより、光記録媒体7に情報の記録、再生が行われる。光記録媒体7からの反射光は対物レンズ6、1/4波長板5を通過した後、偏光ビームスプリッタ3により入射光と分離して偏向され、検出レンズ8により受光素子10上に導かれ、再生信号、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号が検出される。
赤色領域の光源の中心波長λ1は660nmであり、半導体レーザ31aから出射した光は、発散角変換レンズ32、ビームスプリッタ33を経て、プリズム4より偏向される。そして1/4波長板5、開口制限素子9、収差補正素子20、対物レンズ6を介して、光記録媒体37に集光される。光記録媒体37の基板厚は0.6mmであり、対物レンズ6の開口数NAは0.65である。開口数NAの切り替えは、波長選択性を有する開口制限素子9を用いる。光記録媒体37からの反射光は対物レンズ6、1/4波長板5を通過した後、ビームスプリッタ33により入射光と分離して偏向され、ホログラム素子31bにより受光素子31c上に導かれ、再生信号、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号が検出される。
ここで、本実施形態の光ピックアップ装置において使用した対物レンズ6のレンズデータを以下に示す。
対物レンズ6は、開口径2mmの非球面屈折型レンズであり、その設計波長は405nmである。そして、その波長405nmでは波面収差0.01λrms以下と十分小さくなるように設計されている。但し、405nmから波長が変化していくと、NA0.85においては図14に示すように球面収差が発生することになる。
図2は収差補正素子の正面図、図3はその側面図であり、図2、図3に示すように、収差補正素子20は、光軸方向に光軸を中心とした同心円状に領域が3つに分割(実線20a、20b、20c)されており、光軸から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。それぞれの領域における厚みの段差は対物レンズ6の設計波長405nmの整数(N)倍の光路差を生じるように形成されている。
その様子を図4に示す。横軸は半径位置、縦軸は位相段差数Nを示す。なお、本実施形態ではN=4.7を用いた。
収差補正素子20の段差の境(20b、20c)の半径位置は、1.76mm、1.88mmである。また用いた硝材は合成石英である。
点線で示した領域の境20dは、基板厚0.6mmの光記録媒体を開口数0.65、波長660nmの光束で記録または再生を行う時の開口となる。
収差補正素子20の段差の境(20b、20c)は、20dより外側に設けている。これは、段差がNA=0.65の660nmの光束には作用しないようにするためである。
収差補正素子20がないときの青色領域での波長変化による球面収差量は、図5の点線になるのに対して、上記収差補正素子20を用いると図5の実線のように3次の球面収差を補正することができる。
位相段差を付与したところで波面の位相が不連続になっているのが分かる。このように波面を不連続に変化させて3次の球面収差を補正している。
なお、段差の高さ、段差の境の半径位置は、対物レンズの形状、対物レンズの設計波長λ0、収差補正素子を構成する材料、開口数によって異なり、本実施形態に限定されるものではない。
光記録媒体37は、開口制限素子9により開口が制限され、開口数NA=0.65の対物レンズ6により集光される。この開口制限素子9は、例えば波長選択性を有する誘電体多層膜を用いている。また対物レンズ6は、405nmで波面が良好になるよう設計されているため、赤色領域の光が対物レンズ6を透過する場合は、球面収差が発生する。
この時発生する球面収差を補正するために赤色領域の光束は、図7に示すような有限系で対物レンズ6を使用する。
有限系で対物レンズ6へ入射することにより発生する対物レンズ6の光軸と垂直方向へのシフトに対する波面劣化を低減するためには、平行光に近づければよく、このような時は、図7のような断面を持つ同心円状の収差補正素子を使用すると良い。
シフトに対して強くするためには、平行光に近づける必要があるが、この時、対物レンズ6で球面収差が生じる。この発生した球面収差を図8の領域22の部分で補正する。
領域22の段差は、対物レンズの設計波長405nmの整数倍で形成されており、この段差は660nmにおいては、0.19倍の位相段差に対応する。
したがって、領域22に形成された段差は405nmでは位相差が発生せず、660nmにおいてのみ位相差が発生し、平行光に近づけた際に発生する球面収差を補正することができる。
しかしながら、このような収差補正を行うと、青色領域の光束を用いる場合、光源個々の波長ばらつきや、温度変化により設計波長405nmから波長がずれ、球面収差が発生する。したがって、このようなときは収差補正素子20の領域22で発生する球面収差と対物レンズ6の球面収差の両方を打ち消すことができるように領域22の位相段差を付与すればよい。
図9は、第2の実施形態に係る光ピックアップ装置の全体構成示した概略図であり、収差補正素子を青色領域、赤色領域、赤外帯域の3種類の異なる光情報記録媒体に対して用いた場合の構成を示した図である。なお、青色、赤色領域の光源に対する構成は、第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
赤外領域の光源においては、中心波長λ2が780nmの半導体レーザ41aから出射した光は、発散角変換レンズ42、ビームスプリッタ43を経てプリズム4より偏光される。そして1/4波長板5、開口制限素子44、収差補正素子20、対物レンズ6を介して光記録媒体47に集光される。
光記録媒体47の基板厚は1.2あり、対物レンズ6の開口数は0.4である。開口数の切り替えは、波長選択性の開口変換素子44を用いる。光情報媒体47からの反射光は対物レンズ6、1/4波長板5を通過した後、ビームスプリッタ43により入射光と分離して偏向され、ホログラム素子41bにより受光素子41c上に導かれ、再生信号、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号が検出される。
収差補正素子20は図10のように青色領域の光束11のみに作用し、赤色、赤外の光束には作用しないように形成されている。
赤色、赤外領域の記録場媒体7は、開口制限素子49により開口が制限され、それぞれ開口数NA0.65、0.45の対物レンズ6により集光される。この開口制限素子49は、波長選択性を有する誘電体多層膜を用いている。
また対物レンズ6は波長405nmで波面が良好になるよう設計されているため、赤色又は赤外領域の光が対物レンズを透過する場合は球面収差が発生する。この時発生する球面収差を補正するために、赤色、赤外領域の光束は図10のように有限系で対物レンズを使用する。
また図11に示すように、本実施形態の収差補正素子20は開口制限素子9と貼り合わせて使用することができる。これにより、小型化が可能となり、組付け工程が容易になる。また図12に示すように、本実施形態の収差補正素子20は、開口変換手段9bと一体にして用いることができる。これにより、部品点数が低減し、軽量化、小型化が実現でき、また組付け工程が容易になる。
さらに本実施形態の収差補正素子20、開口変換素子9b、1/4波長板5を図示しないアクチュエータ上に設置して用いる実施形態について説明する。
これらの部品をアクチュエータ上に設置して対物レンズ6と一体に可動させることにより、相対的なシフトやチルトに伴う波面劣化を抑制できる。
なお、アクチュエータは2軸から4軸のいずれかの可動変位であってもよい。即ちフォーカス・トラックの2方向制御に加えて、ラジアル方向又はタンジェンシャル方向のチルト制御が可能なアクチュエータであってもよい。3軸または4軸のアクチュエータにより対物レンズの傾きを変化させると、対物レンズ6を透過する光束にコマ収差が発生するので、光情報記録媒体の傾きにより発生するコマ収差と相殺することができる。
また図13に示すように、本実施形態の収差補正素子を対物レンズ面に形成して用いることができる。また、図示しないが開口制限素子9も同様に対物レンズ面に形成するようにしても良いことは言うまでもない。
Claims (3)
- 中心波長405nmの第1の光源と、中心波長660nmの第2の光源と、中心波長780nmの第3の光源と、設計波長405nmの対物レンズと、を備え、複数の光情報記録媒体に対して、前記第1〜第3の光源から互いに異なる開口径で入射する光束を単一の前記対物レンズで集光させる光ピックアップであって、
NA0.85の開口径を通過した前記第1の光源からの光束が通過する輪帯領域に位相差を付与する第1の段差と、前記第1の光源の波長が変化した場合に波面を不連続に変化させて球面収差を補正する第2の段差を備えた収差補正素子と、
波長選択性を有する誘電体多層膜により形成され、前記第2、第3の光源からの光束を前記対物レンズにより前記光情報記録媒体に集光する時は、開口径をNA0.65、0.45にそれぞれ制限する開口制限素子と、を備え、
前記対物レンズ、前記収差補正素子、及び前記開口制限素子を一体で可動するようにアクチュエータ上に設置すると共に、
前記第1の光源からの光束は、略平行光であり、
前記対物レンズは、前記第2、第3の光源からの光束が透過するときに発生する球面収差を補正するために有限系で使用され、
前記第1の段差は、前記第2の光源からの光束により前記光情報記録媒体に対して記録または再生を行う時の開口径より外側に位置し且つ光軸から離れるに従って光軸方向の厚みが増すように形成され、
前記第2の段差は、位相差が前記対物レンズの設計波長405nmに対して略2πの整数倍であることを特徴とする光ピックアップ。 - 請求項1に記載の光ピックアップにおいて、
前記収差補正素子は、前記開口制限素子が貼り合わされていることを特徴とする光ピックアップ。 - 複数の前記光情報記録媒体に対して、光ピックアップを用いて情報の記録・再生・消去の少なくともいずれか1以上を行う光情報処理装置において、
前記光ピックアップが請求項1または請求項2に記載の光ピックアップであることを特徴とする光情報処理装置。
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