JP4596753B2 - 磁気ヘッドおよび磁気記録再生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果膜の積層面を貫くようにセンス電流を流すCPP (Current perpendicular to the plane) 構造の磁気ヘッドおよびこれを搭載した磁気記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録再生装置の記録密度は、年率100%という驚異的な速さで増加している。これに伴い、磁気記録再生装置に搭載されている磁気ヘッドには、高出力化が求められている。
【0003】
これに対応するために、磁気抵抗効果膜の性能向上が図られており、1cm2当たり約3 ×108ビット程度の記録密度までは異方性磁気抵抗効果(AMR)膜を用いていたが、それ以上の記録密度では、より高出力が得られる巨大磁気抵抗効果(GMR)膜を開発し、さらには改良を加え、現在に至っている。しかしながら、GMR膜も1cm2当たり9.3 ×109ビットより大きな記録密度に対しては出力不足になることが懸念されるため、GMR膜の次の世代の磁気抵抗効果膜として、文献1(1995年発刊のジャーナル オブ マグネティズム アンド マグネティック マテリアルズ 第139巻 L231〜L234 頁)に記載されているようなトンネル磁気抵抗効果(TMR)膜、あるいは文献2(2001年発刊のジャーナル オブ アプライド フィジックス 第89巻 6943〜6945 頁)に記載されているようなGMR膜の積層面を貫くように電流を流すCPP(Current perpendicular to the plane) -GMR膜の研究開発が行われている。
【0004】
ここで、AMR膜やGMR膜を用いる磁気ヘッドと、TMR膜やCPP-GMR膜を用いるヘッドとでは、構造が大きく異なる。前者の場合には、AMR膜やGMR膜からなる磁気抵抗効果膜の膜面内方向にセンス電流を流すCIP(Current into the plane)構造であり、センス電流を供給する電極はこれらの磁気抵抗効果膜の両脇に設けられる。一方、後者の場合には、TMR膜やCPP-GMR膜からなる磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直方向にセンス電流を流すCPP(Current perpendicular to the plane)構造であるため、センス電流を供給する電極はこれらの磁気抵抗効果膜に積層するように設けることになる。これに伴い、電極、および、センス電流を電極まで導くためのリード導体に関して、CIP構造の磁気ヘッドとは異なる新規な構造を考案する必要がある。
【0005】
CPP構造における電極およびリード導体の構造について、文献3(特開2001-67628 号公報)には上部電極層全体が平面視において下部電極層の形成領域内に延在している構造が、文献4(特開2002 25016号公報)には上部シールド層と電気的に接続されたリード導体がその下部シールド層上に位置する部分の面積が小さくなるようにパターニングされている構造が開示されている。
【0006】
【文献1】
1995年発刊のジャーナル オブ マグネティズム アンド マグネティック マテリアルズ 第139巻 L231〜L234 頁
【文献2】
2001年発刊のジャーナル オブ アプライド フィジックス 第89巻 6943〜6945 頁
【文献3】
特開2001-67628 号公報
【文献4】
特開2002 25016号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
文献3で開示されているのは、下部電極層と上部電極層の間の短絡を防止するために、基板上方から見たときに、下部電極層の上に上部電極層全体を載せることにより、下部電極層の端部で上部電極層と短絡しないようにする電極層の構造である。
【0008】
文献4で開示されているのは、基板上方から見たときに、下部電極層の上に配置されているリード導体を細くして、高速転送の際の周波数特性を改善するための構造である。
【0009】
ところで、CPP構造の場合には磁気抵抗効果膜の積層界面を貫くようにセンス電流を流すという本質的な要請によって、CIP構造ではなかった新たな問題を解決する必要がある。それは、電極やリード導体によって、シールド層、特に上部シールド層に段差が生じ、それが原因でシールドに磁区が発生してノイズの原因となるということである。
【0010】
CIP構造の場合には、リード導体は磁気抵抗効果膜の両脇に形成されるため、同じレイヤーで作製することになるので、例え段差が生じたとしても、上部シールド層にとっては磁気抵抗効果膜に対して対称な段差を持つことになる。
【0011】
これに対し、CPP構造の場合には、磁気抵抗効果膜の上下に電極を設ける必要があるため、下部リード導体と上部リード導体を異なるレイヤーで作製しなければならず、上部シールド層にとっては磁気抵抗効果膜に対して非対称な段差を持つことになる。これにより、上部シールド層に不安定な磁区構造が発生し、シールド起因のノイズが発生する。
【0012】
また、磁気ディスク装置の転送速度を向上させるためには、磁気ヘッドの静電容量Cを小さくすることが要求され、そのためには、CPP構造ヘッドの場合には上下のシールド層が対向する面積を小さくする必要がある。一方で、ヘッド抵抗の増加を抑えるためには、シールド層とリード導体とが接続される部分の面積を小さくすることはできないので、シールド全体の面積に対して、リード導体との接続部の面積が占める割合が大きくなる。このことにより、シールド層の磁化は、リード導体による段差や、リード導体や保護層を形成することによって生じる応力の影響を受け易くなり、再生動作の際に安定な動作をすることが難しくなる。
【0013】
このような問題については、上記従来技術には言及がない。
【0014】
本発明の目的は、CPP型磁気抵抗効果膜を適用したCPP構造の磁気抵抗効果ヘッドにおいて、ノイズがなく安定な再生特性が得られる磁気抵抗効果素子を高い歩留まりで提供することであり、さらに、低ノイズにより高い歩留まりが実現できることにより低コスト化及び高性能化を図った磁気記録再生装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る磁気ヘッド及び磁気記録再生装置は、下部シールド層は同一平面内において下部リード接続部を有し、下部リード接続部は下部シールド層が在る平面に上部シールド層を投影したときに上部シールド層と重ならない位置に設けられ、第1のリード導体は前記下部リード接続部に接続されていることを主な構成要件とする。
【0016】
即ち、上記目的は、上部シールド層と、同一平面内においてその幅が下部シールド層のトラック方向の最大の長さと等しいかもしくは短い幅を有するリード接続部が素子高さ方向の端部に設けられた下部シールド層と、上部シールド層と下部シールド層との間に形成された磁気抵抗効果素子と、下部シールド層のリード接続部と電気的に接続された第1のリード導体と、上部シールド層と電気的に接続された第2のリード導体とを備え、下部シールド層が在る平面に上部シールド層を投影したときに下部シールド層のリード接続部が上部シールド層と重ならない位置に設けられ、センス電流が上部シールド層と磁気抵抗効果素子と下部シールド層とを流れる磁気ヘッドとすることにより達成することができる。
【0017】
ここで、第1のリード導体と下部シールド層が電気的に接続される下部シールド層のリード接続部が、その高さが下部シールド層の素子高さ方向の最大の長さと等しいかもしくは短い高さであり、下部シールド層のトラック方向の端部に設置されることによっても達成することができる。
【0018】
なお、上部シールド層が下部シールド層と同様に、その幅が上部シールド層のトラック方向の最大の長さと等しいかもしくは短い幅を有するリード接続部が素子高さ方向の端部に設けられており、そのリード接続部で第2のリード導体と電気的に接続する構造であってもよい。また、素子高さ方向の最大の長さと等しいかもしくは短い高さを有するリード接続部がトラック方向の端部に設けられており、そのリード接続部で第2のリード導体と電気的に接続する構造であってもよい。
【0019】
なお、上記のリード接続部の材料は、シールド層と同じ材料で構成することも、シールド層とは異なる材料、望ましくは電気抵抗率がシールド層を構成する材料よりも低い材料で構成することもできる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下において、図面を用いて本発明を詳述する。
【0021】
<実施の形態1>
図1に本発明の磁気抵抗効果型ヘッドの再生素子部の俯瞰図を示す。なお、図1は上部シールド層を形成して第2のリード導体を接続する工程が完了した状態で、素子が形成されている面から素子高さ方向に向かって俯瞰しており、他のレイヤーがあるために俯瞰しても見えない部分は破線で示した。
【0022】
基板表面にアルミナなどの絶縁体を被覆したアルミナ・チタンカーバイド基板10上に、Ni-Fe合金をめっき法により成膜した後所定の形状にパターニングする。その上にアルミナ膜を成膜し、化学的機械的研磨法(CMP ; chemical mechanical polishing)によって平坦化処理を行い、下部シールド層111および下部アルミナ層112を形成する。下部シールド層111の素子高さ方向の奥部で電気的に接続されるように第1のリード導体31を形成する。
【0023】
ここで、第1のリード導体31が接続されている部分の下部シールド層111の幅は、下部シールド層111のトラック方向の幅と同じである。第1のリード導体31が後の工程でエッチングされないように保護膜を形成した後、下部シールド層111の表面をCPP型磁気抵抗効果膜60を成膜する装置内でクリーニングし、図2に示すようなCPP型磁気抵抗効果膜60を形成する。
【0024】
即ち、例えばMoからなる下部ギャップ層13、その上部に形成される積層膜の配向性を制御するための金属、例えば81at.% Ni -19at.% Feからなるシード層15 、52at.% Pt -48at.% Mnからなる反強磁性層16 、75at.% Co-25at.% Feからなる第2の強磁性層17 、酸化アルミニウムからなるトンネル障壁層18 、81at.% Ni -19at.% Feからなる第1の強磁性層19からなるトンネル磁気抵抗効果膜50を成膜した後、例えばCu、Ta、Ru、あるいはこれらの積層膜からなる縦バイアス印加層下地層22、例えばNi-Fe合金、Co-Fe合金、Fe、あるいはこれらの積層膜からなる縦バイアス軟磁性層23、例えばMn-Ir系反強磁性層やCoCrPt系硬磁性層からなる縦バイアス磁化固定層24で構成される縦バイアス印加層201を積層し、さらに上部ギャップ層14を積層する。
【0025】
反強磁性層16と第2の強磁性層17の間に交換結合を生じさせるために、素子高さ方向に3 kOeの磁界を印加しながら、250℃、6hの磁界中熱処理を施した後、記録媒体からの磁界を検知する部分である感磁部となる位置にリフトオフマスクを形成し、イオンミリング法により感磁部以外のCPP型磁気抵抗効果膜をエッチングする。
【0026】
絶縁膜21を成膜しリフトオフマスクを除去した後、Ni-Fe合金からなる上部シールド層12を形成する。第2のリード導体32を上部シールド層12の素子高さ方向奥部で第1のリード導体31が配置されていない部分に設ける。
【0027】
ここで、上部シールド層12は、トラック方向の長さは下部シールド層111と略同じ長さであるが、素子高さ方向の長さは下部シールド層111よりも短く、第1のリード導体31の上には上部シールド層12が配置されないようにしてある。
【0028】
さらに、再生素子と記録素子を分離するための分離層を形成した後、下部磁極41、コイル42、層間絶縁膜43、上部磁極44、保護膜などを形成して記録素子を作成する。記録素子形成終了後、トラック幅方向に500 Oeの磁界を印加しながら、250℃、3h熱処理を行い、第2の強磁性層17の磁化の方向を概ね素子高さ方向に保ったまま、第1の強磁性層19の磁化の方向をトラック幅方向に向け、図3に示す磁気ヘッドのウェハ工程が完了する。
【0029】
次に、以下に述べる浮上面加工を行う。ウェハを複数個の磁気ヘッド素子が並んだバーに切断し、ラップ装置を用いて所望の素子高さになるまで機械研磨により削る。媒体対向面に、再生素子および記録素子を保護するための保護膜を形成し、さらに、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間隔(浮上量)を制御するために、イオンミリング法、ドライエッチング法などにより媒体対向面に所定の溝形状を形成する。この後、バーを素子毎に切断してスライダーとし、スライダーを支持体と接続して磁気ヘッドが完成する。
【0030】
比較のため、図4に示す下部シールド層111が上部シールド層12と同じ大きさを有する磁気ヘッドも作製し、スライダーでのトランスファーカーブを測定した。本発明および比較例のトランスファーカーブの一例を、それぞれ図5および図6に示す。図において、横軸は印加磁界(Oe)、縦軸は出力電圧(μV)であるが、測定装置の都合上、負の印加磁界で抵抗値が大きくなる設定になっている。
【0031】
図5の本発明の磁気ヘッドにおいては、磁界に対してほぼ直線的に変化する正常な動作を示しているのに対して、図6の比較例の磁気ヘッドでは、-70 Oeから70 Oeの範囲で抵抗値が直線的な変化から外れて不規則なうねりを示しており、出力電圧の絶対値も本発明の磁気ヘッドに比べて約2/3しか得られていないことが分かる。また、各420本の磁気ヘッドを測定して、正常な動作を示す割合を求めたところ、本発明の磁気ヘッドでは99%、比較例においては7%と、本発明の磁気ヘッドの方が歩留まりが著しく高かった。
【0032】
この原因として、従来例においては、下部シールド層111に接続された第1のリード導体31によって上部シールド層12に段差が生じ、これにより磁区が発生してしまい、上部シールド層の磁壁移動によって生じた磁界が磁気抵抗効果膜の磁化回転にも影響を及ぼしたためであると考えられる。
【0033】
本実施の形態では、トンネル磁気抵抗効果膜50と縦バイアス印加層201が積層された積層型の縦バイアス印加構造について述べたが、図7のように、トンネル磁気抵抗効果膜50の両脇に、絶縁層を介して、例えばCrなどからなる下地層と、Co-Cr-Pt系合金などの保磁力の大きいハード膜を積層した縦バイアス印加層202を配置した、所謂アバッテッド ジャンクション型の縦バイアス印加構造でも、本発明の効果は何ら変わるものではない。
【0034】
また、磁気抵抗効果膜の一例として、トンネル障壁層18を有するトンネル磁気抵抗効果膜50について述べたが、トンネル障壁層18の代わりに金属導電層を用いたCPP-GMR膜や、さらに、素子抵抗を高くする目的でその積層構造の一部にセンス電流の経路を絞り込むための高抵抗体と導電体の混合層を設けたCPP-GMR膜、高出力を得る目的で第1の強磁性層19や第2の強磁性層17の一部に、例えばホイスラー合金やマグネタイトなどの高分極率材料を用いたCPP-GMR膜を用いてもよい。
【0035】
なお、高記録密度を実現するためには、隣接するトラックから漏れて来る磁界の影響を小さくする必要があり、その目的に適した構造である図8のような構造、具体的にはCPP型磁気抵抗効果膜60、より正確には記録媒体からの磁界によってその磁化が回転する第1の強磁性層19の横にもシールド層を配置した構造にも、本発明は適用することができる。
【0036】
<実施の形態2>
図9および図10に、本発明の他の実施の形態の再生素子部の構造を示す。図9は、左側が素子が形成されている面から素子高さ方向に向かって俯瞰して図であり、右側は、説明のため、上部シールド層12を切り取って、下部シールド層111および第1のリード導体31の配置を明確にした図である。図10は、素子面上方から下部シールド層111が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図である。
【0037】
図9に示すように、下部シールド層111の素子高さ方向の端部に、下部シールド層111のトラック方向の長さよりも短い幅を有するリード接続部113が設けられており、そのリード接続部113において第1のリード導体31が下部シールド層111と電気的に接続されている。
【0038】
このような構造にすることにより、上部シールド層12の下に第1のリード導体31が配置されないので、上部シールド層12には段差が発生しない。
【0039】
また、第1のリード導体31が形成されることによって下部シールド層には応力が作用することになるが、その応力によって下部シールド層に磁区構造ができても、下部シールド層111と下部シールド層リード接続部113の境界で磁壁がピン止めされるため、再生動作においてノイズが発生しない。
【0040】
さらに、図10を見ると明らかであるが、下部シールド層111と第2のリード導体32が直接対向している部分がないため、これらが対向電極となって発生する静電容量Cを低減することができる。
【0041】
<実施の形態3>
図11は、本発明の他の実施の形態の再生素子部の俯瞰図であり、図の右側は上部シールド層12を切り取って、下部シールド層111および第1のリード導体31の配置を明確にした図である。図12は、素子面上方から下部シールド層111が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図である。
【0042】
本実施の形態は、上部シールド層12の素子高さ方向の端部に、上部シールド層12のトラック方向の長さよりも短い幅を有するリード接続部123を設けて、そのリード接続部123において第2のリード導体32が上部シールド層12と電気的に接続するように構造にしたものである。この構造では、実施の形態2で述べた利点に加え、リード導体32が上部シールド層12の上に配置されることによって応力が上部シールド層12に作用するが、その応力によって上部シールド層に磁区構造ができても、磁壁が上部シールド接続部123の境界でピン止めされ、再生動作に及ぼす影響を上部シールド層リード接続部123のみに留めることができる。
【0043】
<実施の形態4>
実施の形態1〜3は、リード導体が接続されるシールド層リード接続部をシールド層の素子高さ方向の端部に設けた構造であるが、本実施の形態はシールド層のトラック方向の端部に設けた構造である。図13は、俯瞰図および上部シールド層12を切り取ったときの部分俯瞰図であり、図14は、下部シールド層111、第1のリード導体31、上部シールド層12および第2のリード導体32を下部シールド層111が配置されている面に投影した図である。
【0044】
下部シールド層111のトラック方向の両端部に、下部シールド層111の素子高さ方向の長さよりも短い高さを有するリード接続部113が設けられており、そのリード接続部113において第1のリード導体31が下部シールド層111と電気的に接続されている。さらに、上部シールド層12のトラック方向の両端部に、上部シールド層12の素子高さ方向の長さよりも短い高さを有するリード接続部123が設けられており、そのリード接続部123において第2のリード導体32が上部シールド層12と電気的に接続されている。
【0045】
この構造は、静電容量を小さくするなどの目的のため、シールド層の素子高さ方向の長さをさらに短くするときに有利である。リード導体が接続されるシールド層リード接続部をシールド層の素子高さ方向の端部に設けた構造において、シールド層の素子高さ方向の長さを短くすると、記録媒体からの磁界がリード接続部にも及び、リード接続部とシールド層との境界に存在する磁壁が動かされる可能性があり、シールド層の素子高さ方向の長さが長いときに比べて、ノイズの発生が懸念される。
【0046】
そこで、リード導体が接続されるシールド層リード接続部をトラック方向に設けると、リード接続部と媒体対向面の間には磁性体が存在しないので、リード接続部に作用する磁界を低減することができる。また、シールド層リード接続部とシールド層との境界が記録媒体からの磁界の方向と平行であるため、シールド層リード接続部とシールド層との境界に磁壁が存在したとしても、記録媒体からの磁界の影響を受けにくい。これらの理由により、ノイズの発生を抑制することができる。
【0047】
また、第1のリード導体31が形成されることによって下部シールド層には応力が作用し、第2のリード導体32が形成されることによって上部シールド層に応力が作用することになるが、その応力によって下部シールド層及び上部シールド層に磁区構造ができても、下部シールド層と下部シールド層リード接続部の境界、及び上部シールド層と上部シールド層リード接続部の境界で磁壁がピン止めされるため、再生動作においてノイズが発生しない。
【0048】
<実施の形態5>
実施の形態4では、第1のリード導体31および下部シールド層リード接続部113の上に上部シールド層リード接続部123が重なっており、これらが静電容量Cが形成している。図15および図16の構造は、これらによって発生する静電容量Cを低減する構造である。
【0049】
下部シールド層リード接続部113および上部シールド層リード接続部123を、それぞれのシールド層のトラック幅方向に、お互いが重ならないように配置したものである。このような配置にすると、第1のリード導体31の上に上部シールド層12やそのリード接続部123が重ならず、下部シールド層111やそのリード接続部113の上に第2のリード導体32が重ならないため、静電容量Cの低減が実現できる。
【0050】
静電容量Cの低減は、図17および図18に示すように、下部シールド層111の素子高さ方向の長さを上部シールド層12よりも長くしても実現できる。同様に、図19や図20のように、一方のシールド層リード接続部は素子高さ方向の端部に、他方のシールド層リード接続部はトラック方向の端部に設けることによっても実現できる。この場合には、ノイズ発生を極力抑えるために、素子高さ方向の長さが長いシールド層の方に、その素子高さ方向端部にリード接続部を設けることが好ましい。
【0051】
また、第1のリード導体31が形成されることによって下部シールド層には応力が作用し、第2のリード導体32が形成されることによって上部シールド層に応力が作用することになるが、その応力によって下部シールド層及び上部シールド層に磁区構造ができても、下部シールド層と下部シールド層リード接続部の境界、及び上部シールド層と上部シールド層リード接続部の境界で磁壁がピン止めされるため、再生動作においてノイズが発生しない。
【0052】
なお、以上述べた実施の形態の図面では、リード導体が接続されるシールド層リード接続部を四角形(略凸形状)で説明したが、これらは本発明の特定の例であり、図21あるいは図22のように多角型であっても構わない。
【0053】
また、理解を容易にするために、素子高さ方向の端部に設ける場合にはその最もトラック方向の外側に、トラック方向の端部に設ける場合には最も素子高さ方向の奥側に配置した図を用いたが、必ずしもこれらの位置に配置する必要はなく、第1のリード導体31と第2のリード導体32が重ならない限り、その配置は任意である。
【0054】
さらに、第1のリード導体31および第2のリード導体が、図において右側および左側に配置されているが、これらの位置が入れ替わっても構わない。
【0055】
シールド層リード接続部の材料については、シールド層を構成する材料と同じであっても、別の材料を用いてもよい。図21および図22のように、楔型のリード接続部にするときには、線幅が細くなる部分で抵抗が増加しないようにすることが必要であり、シールド層を構成する材料よりも電気抵抗率が低い材料、例えば、Cu、Au、Cu-Al合金などの単層膜やこれらの層をその一部に含む積層膜を用いることが好ましい。
【0056】
下部シールド層11、上部シールド層12、CPP型磁気抵抗効果膜60、第1のリード導体31および第2のリード導体32を構成する材料に関しても本発明の特定の例であり、同様の機能を有する他の材料を用いても本発明の効果は変わるものではない。
【0057】
CPP型磁気抵抗効果膜50についても、主にトンネル障壁層を有するトンネル磁気抵抗効果膜で説明を行ったが、CPP-GMR効果を用いたCPP-GMR膜、それに電流狭窄層を設けたり高分極率材料層を設けたりしたCPP-GMR膜、あるいは、磁性半導体を用いた磁気抵抗効果膜など、その積層界面を貫くようにセンス電流を流す磁気抵抗効果膜であれば置き換えても本発明の効果は変わるものではない。
【0058】
また、磁気抵抗効果膜の中間層として、例えば非磁性導電層を用いても良い。さらにまた、磁気抵抗効果膜の中間層として、酸化物、窒化物、炭化物あるいは弗化物と、導電体との混合体を用いてもよい。
【0059】
また、再生波形の非対称性を改善する目的で、第2の強磁性層17をRu、Irなどを介して互いに反強磁性的に結合した2層の強磁性層で構成した構造にしても、また、再生感度を向上させる目的で、第1の強磁性層19をRu、Irなどを介して互いに反強磁性的に結合した2層の強磁性層で構成した構造にしても、同様に本発明の効果は変わるものではない。
【0060】
記録素子については、図3のように上部磁極と下部磁極との間の記録ギャップに作用する磁界で記録媒体に書き込む記録素子でもよい。また、軟磁性下地層を有する垂直磁気記録媒体に対して、図23に示すCPP型磁気抵抗効果膜60を含む面における断面構造のように、記録素子が主磁極441と副磁極411で構成されており、記録素子の主磁極441と垂直磁気記録媒体の軟磁性下地層との間に作用する磁界で書き込む方式のものであってもよい。
【0061】
【発明の実施の効果】
以上詳述したように、本発明により、トンネル磁気抵抗効果やCPP-GMR効果などを有するCPP型磁気抵抗効果膜を適用したCPP構造の磁気抵抗効果ヘッドにおいて、第1のリード導体31が同一平面内においてその幅が下部シールド層111のトラック方向の最大の長さと等しいか、もしくは短い幅を有する下部シールド層リード接続部113と電気的に接続される、あるいは、その高さが下部シールド層111の素子高さ方向の最大の長さと等しいかもしくは短い長さを有する下部シールド層リード接続部113と電気的に接続されることにより、第1のリード導体31によって上部シールド層12に段差が生じ、その段差によってノイズの発生源となる磁区構造が形成されることを防ぐことができるので、ノイズが少ない磁気ヘッドを供給することができる。
【0062】
また、第1のリード導体31と同様に、第2のリード導体32においても、上部シールド層12に設けた上部シールド層リード接続部123で電気的に接続する構造にすることにより、ノイズのみならず静電容量Cも低減することができるので、高周波特性に優れた磁気ヘッドを高い歩留まりで提供することができる。
【0063】
また、以上のように構成される磁気記録再生装置によれば、高周波特性に優れた磁気ヘッドにより記録情報を再生可能であるので、面記録密度が1cm2当たり9.3 ×109ビット以上、さらには線記録密度が1cm当たり25×104 ビット以上である磁気記録媒体と組み合わることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図。
【図2】本発明の実施の形態1のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの磁気抵抗効果膜の構造。
【図3】本発明の実施の形態1の磁気ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図4】従来構造のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図。
【図5】本発明のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドのトランスファーカーブ。
【図6】従来構造のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドのトランスファーカーブ。
【図7】本発明の縦バイアス印加方式が異なるCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの磁気抵抗効果膜の構造。
【図8】本発明のシールド形状が異なるCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図。
【図9】本発明の実施の形態2のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図10】本発明の実施の形態2のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの下部シールド層が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図。
【図11】本発明の実施の形態3のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図12】本発明の実施の形態3のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの下部シールド層が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図。
【図13】本発明の実施の形態4のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図14】本発明の実施の形態4のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの下部シールド層が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図。
【図15】本発明の実施の形態5のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図16】本発明の実施の形態5のCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの下部シールド層が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図。
【図17】本発明の実施の形態5の下部シールド層の形状が異なるCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図18】本発明の実施の形態5の下部シールド層の形状が異なるCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの下部シールド層が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図。
【図19】本発明の実施の形態5の下部シールド層の形状が異なるCPP構造磁気抵抗効果型ヘッドの俯瞰図および部分断面図。
【図20】本発明の実施の形態5の下部シールド層の形状が異なる下部シールド層が配置されている面に投影したシールド層とリード導体の配置を表す図。
【図21】本発明の他のシールド層リード接続部の形状。
【図22】本発明の他のシールド層リード接続部の形状。
【図23】本発明の単磁極型垂直記録素子を有するCPP型磁気抵抗効果型ヘッドのCPP型磁気抵抗効果膜を含む面における断面図。
【符号の説明】
10:基板、111:下部シールド層、112:下部アルミナ層、113:下部シールド層リード接続部、12:上部シールド層、123:上部シールド層リード接続部、124:第1の上部シールド層、13:下部ギャップ層、14:上部ギャップ層、15:シード層、16:反強磁性層、17:第2の強磁性層、18:トンネル障壁層、19:第1の強磁性層、20:縦バイアス印加層、21:絶縁膜、22:縦バイアス印加層下地層、23:縦バイアス軟磁性層、24:縦バイアス磁化固定層、31:第1のリード導体、32:第2のリード導体、41:下部磁極、42:コイル、43:層間絶縁膜、44:上部磁極、411:副磁極、441:主磁極、442:ヨーク、50:トンネル磁気抵抗効果膜、60:CPP型磁気抵抗効果膜、100:トラック幅方向、101:素子高さ方向、201, 202:縦バイアス印加層。

Claims (3)

  1. 上部シールド層と、
    部シールド層と、
    前記上部シールド層と前記下部シールド層との間に形成された磁気抵抗効果素子と、
    前記下部シールド層の下部リード接続部と直接接続された第1のリード導体と、
    前記上部シールド層の上部リード接続部と直接接続された第2のリード導体とを備え、
    前記下部シールド層が在る平面に上部シールド層を投影したときに前記下部シールド層の下部リード接続部が前記上部シールド層と重ならず、かつ前記上部シールドの上部リード接続部が前記下部シールド層と重ならない位置に設けられ、
    前記下部リード接続部は、前記下部シールド層の同一平面内においてトラック幅方向の一方の端部に、略凸形状に形成され、
    前記上部リード接続部は、前記上部シールド層の同一平面内において略凸形状であり、前記上部リード接続部は、前記上部シールド層においてトラック幅方向の方の端部に形成されており、
    センス電流が前記上部シールド層と前記磁気抵抗効果素子と前記下部シールド層とを流れる磁気ヘッド。
  2. 更に、主磁極と副磁極とを有する記録素子を備えることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
  3. 磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に情報を記録するための記録素子と、前記磁気記録媒体に記録された情報を検出するための再生素子を有する記録再生ヘッドと、前記記録再生ヘッドに記録信号および再生信号を送受信するリード/ライト回路と、前記記録再生ヘッドを前記磁気記録媒体上の所定に位置に移動させるアクチュエータ手段と、前記リード/ライト回路とアクチュエータ手段を制御する記録再生動作制御手段とを備えた磁気記録再生装置において、
    前記記録再生ヘッドとして請求項2に記載の磁気ヘッドを用いることを特徴とする磁気記録再生装置。
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