以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電子楽器システムの全体構成を示すブロック図である。図2は、同電子楽器システムの側面図である。この電子楽器システムは、図2に示すように、鍵盤楽器本体40と椅子体30とが通信ライン34で通信可能に接続されて構成される。詳細は後述するが、楽器本体40には振動部46が設けられ、椅子体30には振動部31、32が設けられる(図1、図2参照)。通信ライン34は、各種のデータ、信号のやりとりが可能な複合的な接続線であり、例えば、通信ライン34を通じて、楽器本体40から椅子体30へ、振動部31、32を振動させるためのPWM(Pulse Width Modulation)信号である駆動信号が送出される。
図1に示すように、鍵盤楽器本体40は、鍵盤部KB1、設定操作子2、ROM6、RAM7、タイマ8、表示装置9、外部記憶装置4、MIDIインターフェイス(MIDII/F)17、音源15、第1駆動制御部37、第2駆動制御部38が、バス16を介してCPU5にそれぞれ接続されて構成される。
また、CPU5にはタイマ8が接続され、MIDII/F17には外部のMIDI機器18が接続されている。音源15にはサウンドシステム3が接続されている。鍵盤部KB1には、それぞれ複数の白鍵55及び黒鍵56が含まれ、さらに、各鍵55、56に対応する押鍵スイッチ12が含まれる。鍵盤部KB1にはまた、振動部46が含まれる(図2も参照)。設定操作子2には不図示の各種スイッチが含まれ、それらの操作による信号がCPU5に供給される。また、押鍵スイッチ12は、対応する鍵55、56の押鍵操作を検出し、その検出信号がCPU5に供給される。
CPU5は、本鍵盤楽器本体40全体の制御を司る。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM7は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間等の各種時間を計時する。外部記憶装置4は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する。
MIDII/F17は、外部のMIDI機器18からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号を外部装置に出力したりする。音源15は、鍵盤部KB1から入力される演奏データや、再生用に予め設定された演奏データ等を楽音信号に変換し、サウンドシステム3が、それらの楽音信号を音響に変換する。振動部46は第1駆動制御部37と電気的に接続されている。振動部31、32はいずれも、第1駆動制御部37及び第2駆動制御部38と電気的に接続されている。
図2に示すように、振動部46は、棚板36上に固定して配置されている。一方、鍵盤部KB1も、棚板36上に固定して配置されており、振動部46の振動が各鍵55、56に伝わるようになっている。振動部46は、全鍵幅に亘って1つが設けられているが、複数設け、鍵並び方向等に沿って複数箇所に複数に分けて配置してもよい。振動部31は、椅子体30の座部35の下に固定され、座部35に座っている奏者に振動が伝わるようになっている。振動部32は、背もたれ部33内に配設され、椅子体30に座った奏者が背もたれ部33に背を接触させている場合には、背もたれ部33を通じて振動部32の振動が奏者に伝わるようになっている。
振動部31、32、46は、例えば、トランスデューサで構成される。しかし、駆動信号によって振動を発生させる構成であればよく、モータと振動子を用いたもの、導電性高分子(人工筋肉)を用いたもの等であってもよい。
ここで、本実施の形態では、演奏ガイドモードにおいて、複数のイベントデータで構成されるシーケンスデータである演奏ガイド用の演奏データ(以下、「ガイド用演奏データ」と称する)に従って、演奏ガイドが可能である。すなわち、ガイド用演奏データに従って、楽音を発生させると共に、表示装置9に楽譜を表示させ、それと並行して、奏者による演奏の適否を監視し、演奏ミスがあれば報知振動処理(後述する図2のステップS108)によってそれを報知する。本実施の形態では、一例として、この報知は、振動部31、32、46のすべてを所定の態様で振動させることでなされる。ガイド用演奏データは、例えば、外部記憶装置4に記憶されていたものがRAM7に一旦記憶され、演奏ガイド時にはRAM7からガイド用演奏データ中のイベントデータが順次読み出される。
報知振動処理における振動モードとして第1モードと第2モードとが設定可能になっている。すなわち、演奏の誤りの内容に応じて振動部31、32、46の振動の態様を異ならせる。どのような態様にするかは各種考えられ、いずれかに限定されるものではない。例えば、振動の大きさ(振幅)、速さ(周期)、振動方向(上下、左右、前後等)等を第1、第2モードで異ならせるようにする。報知振動処理における振動は、一定の時間で終了するようにする。あるいは、演奏ミスに対応する楽音の(ガイド用演奏データにおける)ノートオフに応じて振動を解除するようにしてもよい。
なお、演奏ガイド時は、演奏の進行を奏者に何らかの方法で知らせつつ鍵盤部KB1での演奏を受け付ければよく、ガイド用演奏データに基づく楽音の発生と楽譜表示は必須でない。例えば、メトロノーム音のみ、あるいは、メトロノーム音に代わって振動部31、32、46のいずれかによる振動で感触によってリズムを知らせてもよい。あるいは、各鍵に発光機能を設け、いわゆる光鍵ガイド機能によって演奏の進行を知らせるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、設定操作子2で「音響補助モード」を設定することで、椅子体30の振動部31、32に振動を発生させて、音響補助の役割を果たさせることができる。この場合、自動演奏用に設定された演奏データ(ガイド用演奏データも含まれる)のうち、所定パートのデータに従って、振動部31、32が振動を発生させる。その際、当該所定パートのノートオンイベントデータのベロシティに応じた強さで振動する。所定パートがどのパートであるか、また、振動部31、32のうちいずれかまたは双方を振動させるかの設定は、設定操作子2で行うことができる。また、設定によっては、奏者による演奏操作に応じて振動部31、32を振動させるようにすることもでき、さらに、演奏データ及び奏者による演奏操作の双方に応じて振動させるようにすることもできる。
報知振動処理においては、CPU5が、演奏の誤りの内容に応じた駆動指示信号を第1駆動制御部37に送り、第1駆動制御部37が、受けた駆動指示信号に応じた駆動信号として、PWM信号を、設定に応じて振動部31、32、46の少なくともいずれかに送る。一方、音響補助モードにおいては、CPU5が、演奏データ及び/又は奏者による演奏操作に応じた駆動指示信号を第2駆動制御部38に送り、第2駆動制御部38が、受けた駆動指示信号に応じた駆動信号として、PWM信号を、設定に応じて振動部31、32の少なくとも一方に送る。
図3は、本実施の形態におけるメインルーチンのフローチャートを示す図である。本処理は鍵盤楽器本体40において電源のオン時に開始される。
まず、初期化を実行、すなわち所定プログラムの実行を開始し、各種レジスタに初期値を設定して初期設定を行う(ステップS101)。次いで、パネル処理を実行、すなわち、設定操作子2の操作を受け付け、モード設定や演奏に関する設定等の機器の設定や指示等を実行する(ステップS102)。
このステップS102では、ユーザにより設定操作子2を用いて各種設定がなされ、例えば、音響補助モードの設定/非設定、音響補助モードにおいて、椅子体30の振動部31、32のうち実際に振動させるものの設定がなされる。また、報知振動処理における第1、第2モードの内容の設定もなされる。また、音響補助モードにおいて演奏データと奏者による演奏操作のいずれに応じて(または双方に応じて)振動部31、32を振動させるかの設定もなされる。
次いで、楽音処理、すなわち、自動演奏するよう設定されている演奏データや、押鍵スイッチ12の検出信号に応じて演奏信号を生成し、発音消音処理を実行する(ステップS103)。
次に、音響補助モードが設定されているか否かを判別する(ステップS104)。そして、音響補助モードが設定されている場合にのみ、椅子体30における振動部31、32のうち、実際に振動させるよう設定されているもの(片方または双方)を、演奏データ及び/又は奏者による演奏操作に応じて振動させる(ステップS105)。次に、ステップS106では、演奏ガイドモードが設定されているか否かを判別し、演奏ガイドモードが設定されていない場合は、ステップS109に進む一方、設定されている場合は、再生中のガイド用演奏データと演奏者による実際の演奏(実演奏)とを比較する(ステップS107)。
このステップS107では、ガイド用演奏データにおける所定パートの現在再生されているイベントデータ(再生のための不図示の読み出しポインタが示すイベントデータ)と、実演奏により発生したイベントデータとの一致がイベント単位で比較される。具体的には、本実施の形態では、演奏適否の判断対象となる演奏に関する要素として、押鍵すべき鍵(押鍵鍵)と押鍵タイミングとが採用され、これらについて比較判断される。押鍵タイミングについては、正しい鍵が所定の時間的許容範囲内に押鍵されれば、正しい押鍵タイミングに押鍵されたと判断される。
そして、その比較の結果、実演奏が、押鍵すべき鍵または押鍵タイミングのいずれかにおいてガイド用演奏データと一致しなかった場合は、後述する図4(a)の報知振動処理を実行して(ステップS108)、前記ステップS109に進む。なお、押鍵すべき鍵の一致/不一致が優先して判断され、押鍵タイミングの一致/不一致の判断は、押鍵すべき鍵が一致していることが前提となる。一方、押鍵すべき鍵及び押鍵タイミングのいずれも一致し、すなわち、正しい演奏がなされたと判断された場合は、報知振動処理を実行することなく前記ステップS109に進む。ステップS109では、その他処理を実行して、前記ステップS102に戻る。
図4(a)は、本実施の形態において図3のステップS108で実行される報知振動処理のフローチャートである。
まず、図3のステップS107における比較の結果、不一致の内容が押鍵すべき鍵であるか押鍵タイミングであるかを判別する(ステップS201)。そして、押鍵すべき鍵が不一致であった場合は、設定されている第1モードで振動処理を行う一方(ステップS202)、押鍵タイミングが不一致であった場合は、設定されている第2モードで振動処理を行う(ステップS203)。その後、本処理を終了する。
本実施の形態によれば、演奏ガイド実行時において、ガイド用演奏データと演奏者による実演奏とを比較して、演奏ミスがあった場合は、振動部31、32、46を振動させるので、それらの振動が、鍵盤楽器本体40を通じて演奏肢である手に伝わると共に、椅子体30を通じて体に伝わる。よって、演奏の適否を触覚で認識させることができる。すなわち、視覚的な認知機構ではなく触覚による認知機構であるので、常に鍵盤を見つめなくてもよく、楽譜を見ながらの演奏練習を行いやすく、視線移動も小さくて済む。
また、不一致の内容に応じて報知振動処理における振動モードを異ならせたので、誤りがあった演奏操作内容、具体的には、操作した鍵の誤りであるかそれとも押鍵タイミングの誤りであるかを、振動部31、32、46の振動の態様によって認識させることができる。
また、音響補助モードにおいては、演奏データの読み出しまたは奏者による演奏操作に応じて、椅子体30の振動部31または振動部32を音響補助用に振動させるよう制御するので、サウンドシステム3による音響だけでなく、自動演奏または実演奏を触覚でも感じることができ、音響を多角的に感じることができる。しかも、振動部31、32は、音響補助だけでなく、上記のように、報知振動処理においても用いられる。すなわち、振動部31、32を音響補助用と誤演奏報知の双方に兼用するので、音響補助のための振動機構等を専用に設ける必要がなく、演奏の適否を触覚で認識させる上で、簡単を極力構成にすることができる。
なお、報知振動処理において振動させるものは、振動部31、32、46のすべてとしたが、これに限られない。例えば、これらのうち少なくとも1つとしてもよく、実際に振動させるものを、図3のステップS102でユーザが設定できるようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比し、報知振動処理のみが異なり、その他の構成や処理は同様である。従って、図4(a)に代えて図4(b)を用いて本実施の形態を説明する。第1の実施の形態では、不一致の内容によって振動モードを異ならせたが、本実施の形態では、不一致の内容によって実際に振動させる振動部を異ならせる。
図4(b)は、本発明の第2の実施の形態において図3のステップS108で実行される報知振動処理のフローチャートである。
まず、ステップS301では、図4(a)のステップS201と同様の処理を実行する。そして、押鍵すべき鍵が不一致であった場合は、設定されている第1割り当て振動部を振動させる一方(ステップS302)、押鍵タイミングが不一致であった場合は、設定されている第2割り当て振動部を振動させる(ステップS303)。その後、本処理を終了する。
ここで、第1、第2割り当て振動部への割り当ては、図3のステップS102においてユーザによりなされる。一例として、第1割り当て振動部には、楽器本体40の振動部46、第2割り当て振動部には椅子体30の振動部31、32が割り当てられる。なお、第1、第2割り当て振動部として割り当てられる(選択される)振動部は、振動部46、31、32のうち少なくとも1つであればよく、第1、第2割り当て振動部の両者間に重複して割り当てられる振動部が存在してもよい。
本実施の形態によれば、報知振動処理において、不一致の内容に応じてそれぞれ実際に振動させる振動部を選択できるので、誤りがあった演奏操作内容が、操作した鍵の誤りであるかそれとも押鍵タイミングの誤りであるかを、どの振動部が振動しているかによって認識させることができる。
なお、報知振動処理において、第1の実施の形態における振動モードを異ならせる処理と、第2の実施の形態における選択的に振動部を振動させる処理とを組み合わせてもよい。すなわち、不一致の内容に応じて、振動させる振動部とその振動の態様の双方を異ならせてもよい。
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態では、鍵盤楽器本体40における振動部46は、棚板36上に1種類が固定されたものであった。これに対し、本発明の第3の実施の形態では、振動部46に代わる振動部を2種類設けると共に、そのうち1種類は、押鍵終了状態で効率的に振動が鍵に伝わるように配置される。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る電子楽器システムにおける鍵盤楽器本体の透視による前半部の右側面図である。図6は、鍵盤部KB2の平面図である。
この鍵盤楽器本体60は、第1の実施の形態におけるものと同じ椅子体30に対して通信ライン34で通信可能に接続されているものとする。また、鍵盤楽器本体60は、不図示のスタンド上に保持されるものとする。鍵盤楽器本体60の制御機構の構成及び制御内容は第1の実施の形態と同様である(図1、図3、図4(a)参照)。
図5に示すように、鍵盤楽器本体60は、ケース体49内に鍵盤部KB2が収容されてなる。ケース体49は、上ケース49A及び下ケース49Bが接合固定されてなる。下ケース49Bの下フレーム50に上フレーム70が複数箇所において不図示のネジ等で螺合固定される。例えば、少なくとも、上フレーム70の前後方向中間部である中間部70aの下部と下フレーム50の前後方向中間部である中間部50aとが固定され、上フレーム70の前部70cにおける底部70caと下フレーム50の前部50cとが固定されている。上フレーム70には鍵ユニットUNT1が取り付けられる。以降、本鍵盤楽器本体60の奏者側(図5の左方)を前方とし、左右方向については奏者を基準として呼称する。
鍵ユニットUNT1は、例えば、1オクターブを単位として構成され、それぞれ複数の白鍵本体47、黒鍵本体48を有する。鍵本体47、48は、各々のヒンジ部52を介して共通基端部51に接続され、共通基端部51を鍵支点部として上下方向(押離鍵方向)に回動(揺動)自在となっている。
図5に示すように、上フレーム70の底部70caの上には、鍵本体47、48の押鍵時の下限位置(押鍵終了位置)を規制する下限ストッパ11が設けられる。上フレーム70の前後方向における底部70caと中間部70aとの間に位置する基板支持部70bの前部下部には、鍵本体47、48の非押鍵位置でもある離鍵時の上限位置(押鍵初期位置)を規制する上限ストッパ14が設けられる。下限ストッパ11、上限ストッパ14は、いずれもフェルト等の弾性部材で構成される。下限ストッパ11、上限ストッパ14は、複数の鍵本体47、48に共通に設けられるが、全鍵本体47、48共通に、あるいは各鍵本体47、48に対応して設けてもよい。
押鍵スイッチ12は、上フレーム70の基板支持部70b上に、鍵本体47、48の各々に対応して配設される。なお、図5においては、押鍵スイッチ12が取り付けられるための取付部乃至基板の図示が省略されている。
白鍵本体47、黒鍵本体48の各前部からは、押鍵されたときに下限ストッパ11に当接するストッパ当接片29、30が垂下して形成されている。鍵ユニットUNT1の上フレーム70への組み付け後は、押鍵操作すると、各白鍵本体47、黒鍵本体48が、ヒンジ部52の弾性により下方(押鍵の往方向)に回動し、下限ストッパ11にストッパ当接片29、30の下端が当接して、押鍵終了状態となる。一方、押鍵を解除すると、鍵本体47、48が、ヒンジ部52の弾性により上方(押鍵の復方向)に回動し、ストッパ当接片29、30の後方に延びた部分の上端が上限ストッパ14に当接して、押鍵初期位置に復帰する。
図5に示すように、基板支持部70bの下方において、下フレーム50の中間部50aと前部50cとの間の底部50bの上面には、振動部53(53A、53B、53C)が配設固定されている。また、下フレーム50の前部50cの下面には、振動部54(54A、54B、54C)が配設固定されている。振動部53、54の構成は、第1の実施の形態における振動部31、32、46と同様である。
図6に示すように、振動部53、54は、いずれも鍵並び方向に沿って複数箇所(例えば、3箇所)に配設される。特に、振動部54は鍵並び方向に長く且つ互いの隙間が小さくなっていて、すべての鍵本体47、48が、振動部54A、54B、54Cのいずれかと平面視においてオーバーラップしている。しかも、図5に示すように、下限ストッパ11と振動部54とは、下フレーム50の前部50c及びフレーム70の底部70caを介して固定関係にあって且つ近接している。これらにより、押鍵終了状態にある鍵本体47、48には、振動部54の振動が、ストッパ当接片29、30を通じて直接的に効率よく伝達される。また、振動部を各鍵ごとに設けることなく、押鍵された鍵に振動を効率よく伝達することができ、構成が簡単で済む。
かかる構成において、音響補助モードにおける処理(図3のステップS105)、及び報知振動処理(図2のステップS108、図4(a))は、第1の実施の形態と同様である。ここで、報知振動処理において振動させるものは、振動部31、32、53、54のすべてである。しかし、これに限られず、これらのうち少なくとも1つとしてもよい。例えば、鍵盤楽器本体60における振動部53、54だけを振動対象としてもよい。特に、振動部54は上記のように振動伝達効果が高いので、振動対象に含めるのが好ましい。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。しかしそれだけでなく、振動部54が、下限ストッパ11に対して固定状態となるように配設され、その振動が下限ストッパ11に直接的に伝達可能なように配設されたので、誤演奏したときにはストッパ当接片29、30を通じて押鍵している指に振動が効率よく伝わり、演奏の誤りを一層明確に認識させることができる。
(第4の実施の形態)
上記第3の実施の形態では、振動部54が振動する場合は、押鍵終了状態にある鍵本体47、48にその振動が効率よく伝達されるように構成されたが、本発明の第4の実施の形態では、押離鍵全行程において振動部の振動が鍵本体に効率よく伝達されるように構成する。
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る電子楽器システムにおける鍵盤楽器本体の前半部の断面図である。
この鍵盤楽器本体80は、第1の実施の形態におけるものと同じ椅子体30に対して通信ライン34で通信可能に接続されているものとする。また、鍵盤楽器本体80は、不図示のスタンド上に保持されるものとする。鍵盤楽器本体80の制御機構の構成及び制御内容は第1の実施の形態と同様である(図1、図3、図4(a)参照)。
鍵盤楽器本体80は、鍵盤部KB3を有し、鍵フレーム10に鍵ユニットUNT2が取り付けられている。以降、本鍵盤楽器本体80の奏者側(図7の左方)を前方とし、左右方向については奏者を基準として呼称する。なお、鍵盤部KB3を収容するケースの図示は省略されている。
鍵ユニットUNT2は、例えば、所定鍵域(例えば、1オクターブ)分を単位として構成され、複数の白鍵本体27をそれぞれ有する第1白鍵ユニットWU1及び第2白鍵ユニットWU2と、複数の黒鍵本体28を有する黒鍵ユニットBUとが積層状態に組み付けられてなる。鍵フレーム10は、樹脂による一体成形、または樹脂と樹脂以外(金属等)の複合によって構成され、全鍵幅に亘る長さに一体に構成される。
詳細は図示しないが、黒鍵ユニットBUは、音高C#、D#、F#、G#、A#に相当する黒鍵本体28を備える。また、第1白鍵ユニットWU1は、音高C、E、G、Bに相当する白鍵本体27を備え、第2白鍵ユニットWU2は、音高D、F、Aに相当する白鍵本体27を備える。白鍵本体27、黒鍵本体28の前半部の上面は押鍵面27a、28aとして機能する。白鍵、黒鍵ユニットWU1、WU2、BUは、各々、樹脂で一体成形により構成される。
本実施の形態では、図7に示すように、白鍵本体27、黒鍵本体28の押鍵時の下限位置(押鍵終了位置)を規制する下限ストッパ11が、鍵フレーム10の前部10cの底部10caに設けられる。また、鍵本体27、28の非押鍵位置でもある離鍵時の上限位置(押鍵初期位置)を規制する上限ストッパ14が、鍵フレーム10の前部10cの下面に設けられる。また、押鍵スイッチ12は、鍵フレーム10の中間部10bに配設される。
鍵フレーム10の中間部10bの上部前部には、上方に突出した突条部42が、鍵並び方向に沿って一体に形成されている。さらに、各鍵本体27、28に対応して、突条部42を含む中間部10bの前部上部の前側に、弾性材41が固定して設けられる。また、中間部10bの前部下面には、第3の実施の形態における振動部54(図5、図6参照)に代わる振動部45が配設固定される。振動部45の構成は、第1の実施の形態における振動部31、32、46と同様である。
白鍵本体27、黒鍵本体28の各前部からは、ストッパ当接片43、44が垂下して形成されている。ストッパ当接片43、44は、それらの下部が前方に延設され、該前方に延設された部分が、鍵フレーム10の前部10cの対応する切り欠き部10d内に挿入されている。下限ストッパ11は、押鍵された鍵本体27、28のストッパ当接片43、44が当接する位置に配置されている。
図7に示すように、黒鍵ユニットBUにおいて、各黒鍵本体28の後端部から薄板状のヒンジ部26が下方に延設され、ヒンジ部26の下端部が、所定鍵域(例えば、1オクターブ)分の長さに亘る黒鍵共通基端部23に接続されている。ヒンジ部26及び黒鍵共通基端部23は、鉛直方向に延び、鍵並び方向(左右方向)に平行である。各黒鍵本体28は、対応するヒンジ部26を介して、黒鍵共通基端部23を鍵支点部として上下方向(押離鍵方向)に回動(揺動)自在である。
黒鍵ユニットBUと同様に、第1白鍵ユニットWU1において、各白鍵本体27の後端部から、ヒンジ部24が下方に延設され、ヒンジ部24の下端部が、第1白鍵共通基端部21に接続されている。第2白鍵ユニットWU2において、各白鍵本体27の後端部から、ヒンジ部25が下方に延設され、ヒンジ部25の下端部が、第2白鍵共通基端部22に接続されている。各白鍵本体27は、対応するヒンジ部24、25を介して第1、第2白鍵共通基端部21、22を鍵支点部として上下方向に回動自在である。ヒンジ部24及び第1白鍵共通基端部21、ヒンジ部25及び第2白鍵共通基端部22は、いずれも鉛直方向に延び、押鍵面27aとは直角を成し、鍵並び方向には平行である。
鍵ユニットUNT2は、事前に一体的に組み付けられて、鍵フレーム10に取り付けられる。第1白鍵ユニットWU1、第2白鍵ユニットWU2及び黒鍵ユニットBUが組み付けられる際には、図7に示すように、それぞれの共通基端部である第1白鍵共通基端部21、第2白鍵共通基端部22及び黒鍵共通基端部23が前方から順に積層される。これら共通基端部21〜23が当接して積層され、3層に積層状態となったものが、全鍵共通基端部20となる。
共通基端部21〜23には、前後方向に貫通する図示しない同心の穴が形成されている。これらの穴を介して、ネジ19によって、後方から鍵フレーム10の後部10aに共通基端部21〜23が螺着固定されている。これにより、白鍵本体27、黒鍵本体28が、鍵フレーム10に対して回動自在に支持される。
鍵ユニットUNT2の鍵フレーム10への組み付け後は、押鍵操作すると、各白鍵本体27、黒鍵本体28が、ヒンジ部24〜26の弾性により下方(押鍵の往方向)に回動し、下限ストッパ11にストッパ当接片43、44の下端が当接して、押鍵終了状態となる。一方、押鍵を解除すると、各白鍵本体27、黒鍵本体28が、ヒンジ部24〜26の弾性により上方(押鍵の復方向)に回動し、ストッパ当接片43、44の前方に延びた部分の上端が上限ストッパ14に当接して、各鍵本体27、28が押鍵初期位置に復帰する。
ところで、ヒンジ部24、25、26は、押鍵面27a、28aよりも下の位置で下方に延び、押鍵面27a、28aよりも共通基端部21〜23が下に位置するので、これらヒンジ部が上方に延びた構成や一般的な水平ヒンジの構成に比し、押鍵時における押鍵面27a、28aの軌跡が良好なものとなる。すなわち、通常、押鍵面27a、28a上の任意の位置(以下、「押鍵点」と呼称する)は、押鍵により回動支点を中心とした円上を回動移動するので、前後方向に着目すると、押鍵が進むにつれて押鍵点は後方に移動していく。
しかし、それだけでなく、ヒンジタイプの鍵では、ヒンジ部の撓みによっても押鍵点が変位する。例えば、水平ヒンジでは、ヒンジ部前部が下方に撓むことによる、押鍵点の位置の後方への変位が加わる。ヒンジ部が上方に延びた構成においても、ヒンジ部下部が後方に撓むことによる、押鍵点の位置の後方への変位が加わる。押鍵点の後方への変位量は、少ない方が、演奏上好ましい。
ところが、本実施の形態では、押鍵により、ヒンジ部24、25、26の上部が前方に撓むので、ヒンジ部24、25、26の撓みは、上記回動支点を中心とした回動移動による後方への変位を相殺する方向に作用することになる。本実施の形態では、具体的には、押鍵往行程において、押鍵点の前後方向の位置は、徐々に前方に変位するようになっている。
このようなヒンジ部構成により、実質的な押鍵点の軌跡は、アコースティックグランドピアノのような長尺で鍵下部に支点を有する鍵における押鍵点の軌跡に近いものとなる。従って、押鍵面27a、28aの軌跡を良好にして、表現力向上にとってより好ましい状態にすることができる。
ここで、ヒンジ部24、25、26は、これらの上端が前後方向に撓むので、白鍵本体27、黒鍵本体28は、対応するヒンジ部24、25、26の撓みを介して前後方向に変位可能である。従って、何ら対策が施されていなければ、手等で前方から鍵本体27、28に後方への力がかけられると、鍵本体27、28は簡単に後方に変位してしまい、ヒンジ部24〜26に過剰な応力がかかるおそれがある。
しかしながら、本実施の形態では、鍵本体27、28に後方への力がかかれば、ストッパ当接片43、44が弾性材41に当接して、後方への操作力に抗する前方への力が、弾性材41を介してストッパ当接片43、44に与えられるようになっている。これにより、非押鍵状態における鍵本体27、28の後方への変位が抑制されるので、ヒンジ部24〜26の撓み量が少なくて済み、それらの塑性変形が防止される。このような作用は、以下に説明するように、非押鍵状態時だけでなく、押離鍵の全行程において生じ得る。
図8は、ストッパ当接片43、44の拡大図である。ストッパ当接片43、44と当接する側の前面である、弾性材41の当接面41aは、側面視前方に凸の曲率半径R1の曲面状に形成されている。一方、ストッパ当接片43、44において、弾性材41の当接面41aと対向する後面43a、44aは、側面視前方に凹の曲率半径R1の曲面状に形成されている。後面43a、44aと当接面41aとは僅かな間隙を有して近接している。非押鍵状態において鍵本体27、28が後方に付勢されると、両者が面当接する。
また、図8に2点鎖線で示すように、少なくとも、ストッパ当接片43、44の後面43a、44aのうち当接面41aに対向する部分の曲面形状は、押離鍵による鍵本体27、28の回動行程において、その前後方向の位置が変化しないような形状になっている。すなわち、押離鍵行程のいずれのときでも、後面43a、44aと当接面41aとの間隔は一定である。これにより、押離鍵行程のいずれのときに鍵本体27、28が後方に付勢されたとしても、それが一定以上の力によるものであれば、後面43a、44aと当接面41aとが当接する。その一方、後方への操作が伴わない通常の押鍵操作を行う際には、後面43a、44aと当接面41aとが当接しないので、支障なく押鍵操作を行うことができる。すなわち、後方への付勢力が与えられない状態では、押離鍵の全行程において、ストッパ当接片43、44と弾性材41とは当接していないが、極めて狭い間隔を保って近接している。
ここで、詳細は図示しないが、振動部45は、振動部54と同様に鍵並び方向に沿って小さい隙間を保って複数箇所(例えば、3箇所)に配設される。そして、すべての鍵本体27、28が、振動部45のいずれかと平面視においてオーバーラップするようになっている。しかも、図7に示すように、弾性材41と振動部45とは、中間部10bの前部上部を介して固定関係にあって且つ近接している。また、振動部45は、主として前後方向に大きく振動するようになっているとする。従って、振動部45が振動すると、その振動によって弾性材41も振動し、弾性材41がストッパ当接片43、44に小刻みに当接/離間を繰り返す。これらにより、押離鍵全行程において、鍵本体27、28には、振動部45の振動が、ストッパ当接片43、44を通じて伝達される。
かかる構成において、音響補助モードにおける処理(図3のステップS105)、及び報知振動処理(図2のステップS108、図4(a))は、第1の実施の形態と同様である。ここで、報知振動処理において振動させるものは、振動部31、32、45のすべてである。しかし、これに限られず、これらのうち少なくとも1つとしてもよい。例えば、鍵盤楽器本体80における振動部45だけを振動対象としてもよい。特に、振動部45は上記のように振動伝達効果が高いので、振動対象に含めるのが好ましい。
本実施の形態によれば、押鍵指に振動が効率よく伝わるので、演奏の誤りを明確に認識させることに関し、第3の実施の形態と同様の効果を奏する。しかしそれだけでなく、押離鍵の全行程において、振動部45の振動が鍵本体27、28に伝達されるので、押鍵初期や押鍵途中においても演奏の誤りを明確に認識させることができる。
本実施の形態によればまた、振動部45が主として前後方向に振動するため、押鍵時において押鍵スイッチ12が正確にメイクし、チャタリングを起こすことが抑制される。
しかも、弾性材41が、鍵本体27、28の後方への過剰な変位を抑制するストッパ部としての機能を果たすと共に、振動部45の振動を鍵本体27、28に伝える機能も果たすので、構成がいたずらに複雑化することがない。
なお、第3、第4の実施の形態においては、報知振動処理については、上記第2の実施の形態と同様に、図4(a)に代えて図4(b)の処理を適用してもよい。その場合、第1、第2割り当て振動部として割り当てられる(選択される)振動部は、第3の実施の形態では振動部31、32、53、54のうち少なくとも1つ、第4の実施の形態では振動部31、32、45のうち少なくとも1つであればよく、第1、第2割り当て振動部の両者間に重複して割り当てられる振動部が存在してもよい。
なお、構成を簡単にする観点からは、第3の実施の形態においては、下限ストッパ11と振動部54とを一体に構成してもよく、第4の実施の形態においては、弾性材41と振動部45とを一体に構成してもよい。
なお、上記各実施の形態において、演奏適否の判断対象となる演奏に関する要素としては、押鍵すべき鍵と押鍵タイミングに限られない。例えば、押鍵長さ(音長)(あるいは離鍵タイミング)等も合致状態の判断要素にしてもよい。そして、報知振動処理(図4(a)参照)においては、要素種類の数に応じて、3つ以上の振動モードを設けてもよい。あるいは、報知振動処理(図4(b)参照)においては、振動部の割り当てパターン数を3つ以上としてもよい。
なお、上記各実施の形態において、配設する振動部は、鍵盤楽器本体40、60、70においては、振動が鍵本体に伝わるように配設すればよい。従って、複数の操作子に共通に設けてもよいし、各操作子毎に設けてもよい。椅子体30に設ける振動部については、座っている奏者の体に伝わるように配設すればよい。
なお、電子楽器システムを構成する楽器として、鍵盤楽器を例示したが、これに限るものではない。すなわち、楽器本体に振動部を設けた場合に、演奏操作する肢または接触している体の部分に振動が伝わるように構成すればよい。また、演奏操作子は指で操作される鍵に限られず、ペダルや足鍵等であってもよい。
なお、押鍵に対して適当な慣性を付与するハンマ体が鍵に連動して回動するようにされたハンマ体付きの鍵盤楽器を備えた電子楽器システムにおいても、本発明を適用可能である。
なお、上記各実施の形態において、報知振動処理を行うことに限っていえば、椅子体30を廃止した鍵盤楽器本体のみの構成であっても本発明を適用可能である。
5 CPU(読み出し手段、合致判断手段、振動制御手段)、 11 下限ストッパ(押鍵ストッパ)、 12 押鍵スイッチ(操作検出手段)、 27、47 白鍵本体(演奏操作子)、 28、48 黒鍵本体(演奏操作子)、 30 椅子体、 31、32、46、45、53、54 振動部、 40、60、80 鍵盤楽器本体、 55 白鍵(演奏操作子)、 56 黒鍵(演奏操作子)