JP4595443B2 - 噴霧乾燥装置 - Google Patents

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Description

本発明は、スラリーの噴霧および乾燥を行う噴霧乾燥装置に係り、さらに詳しくは、得られる顆粒の粒度のバラツキが小さく、かつ、不純物の混入を有効に防止できる噴霧乾燥装置に関する。
噴霧乾燥装置は、原料粉末、溶媒およびバインダ等により構成されるスラリーを、ノズルや回転ディスク等の噴霧部により噴霧して、熱風で瞬時に乾燥させるための装置である。このような噴霧乾燥装置は、医薬品、ファインセラミックス等において、顆粒を得るために、従来より用いられている。
噴霧乾燥装置の噴霧部としては、加圧ノズルや回転ディスク等が主に使用される。噴霧部として回転ディスクを使用した場合においては、加圧ノズルを使用した場合と比較して、より細かい顆粒を得ることができ、そのため、噴霧部としては、回転ディスクが好適に使用されている。
上記回転ディスクは、一般に、円板形状を有しており、回転軸により支持される下板、液滴を噴霧するための分散ピン、分散ピン上に形成される上板から構成される。さらに、回転ディスクの上方には、回転ディスク上にスラリーを吐出するためのスラリー吐出部と、このスラリー吐出部を保持するための保持部とが形成されている(たとえば、特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載されているような回転ディスクを有する噴霧乾燥装置では、噴霧乾燥を連続して行うと、スラリーの跳ね返りや乾燥熱風の影響により、回転ディスクの上板と、スラリー吐出部を保持する保持部との隙間に原料の付着(スケーリング)が発生してしまう。上板と保持部との隙間に原料が付着し、この付着物が堆積してしまうと、堆積により一定の大きさとなった付着物が、脱落し、製品中に混入してしまい、結果として、粒度の揃った製品が得られなくなってしまう。
さらに、付着物の堆積により、高速回転する回転ディスクの上板と、保持部との間において、付着物による摩擦が生じてしまい、この摩擦により、上板あるいは保持部が摩耗してしまい、摩耗物が製品中に不純物として混入し、製品に悪影響を及ぼしてしまうという問題もあった。
特開平10−118536号公報
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、回転ディスクの上板と、スラリー吐出部を保持する保持部との隙間への原料の付着を防止し、得られる顆粒の粒度のバラツキを小さくするとともに、不純物の混入を有効に防止できる噴霧乾燥装置に関する。
上記目的を達成するために、本発明に係る噴霧乾燥装置は、
スラリーを吐出するためのスラリー吐出部と、前記スラリー吐出部を保持するための保持部と、前記吐出部から吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、を有する噴霧乾燥装置であって、
前記回転ディスクには、上板が形成されており、
前記保持部には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、外周に向かって前記上板との隙間が広くなるようなテーパーが形成してあることを特徴とする。
本発明においては、前記保持部の、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分のうち少なくとも一部に、外周に向かって前記上板との隙間が広くなるようなテーパーを形成してある。これにより、前記回転ディスクの上板と前記保持部との隙間を広げることができるため、前記隙間への原料の付着を有効に防止することができる。そのため、本発明によると、上板と保持部との隙間への原料の付着を防止することができ、付着物の脱落が原因となる製品の粒度のバラツキや、付着物による摩耗が原因となる不純物の混入を有効に防止することができる。
好ましくは、前記保持部のテーパーは、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の全体にわたって形成してある。
前記保持部のテーパーを、特に、原料の付着が顕著に発生する部分である前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の全体にわたって形成することにより、より効果的に原料の付着を防止することができ、本発明の作用効果を高めることができる。
あるいは、本発明に係る噴霧乾燥装置は、
スラリーを吐出するためのスラリー吐出部と、前記スラリー吐出部を保持するための保持部と、前記吐出部から吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、を有する噴霧乾燥装置であって、
前記回転ディスクには、上板が形成されており、
前記上板の内周側端部上面には、内周に向かって隙間が広くなるテーパーが形成してあることを特徴とする。
好ましくは、前記上板の内周側端部上面のテーパーは、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、形成してある。
好ましくは、前記上板の内周側端部上面のテーパーは、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の全体にわたって形成してある。
本発明においては、前記上板の内周側端部上面に、内周に向かって隙間が広くなるテーパーを形成することにより、前記回転ディスクの上板と前記保持部との隙間を広げることができるため、前記隙間への原料の付着を有効に防止することができる。しかも、前記上板のテーパーを、好ましくは、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分のうち少なくとも一部に、形成することにより、より効果的に原料の付着を防止することができ、本発明の作用効果を高めることができる。特に、前記上板のテーパーを、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の全体に形成することが好ましい。
なお、本発明においては、
前記保持部には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、外周に向かって前記上板との隙間が広くなるようなテーパーを形成し、かつ、
前記上板の内周側端部上面には、内周に向かって隙間が広くなるテーパーが形成してもよい。
前記保持部および前記上板の両方にテーパーを設けることにより、前記上板と前記保持部との隙間を、より広くすることができ、本発明の作用効果をより高めることができる。なお、前記保持部および前記上板の両方にテーパーを設ける場合においても、これらのテーパーは、上述したテーパーと同様な構成とすることができる。
好ましくは、前記上板には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、スリットまたは貫通孔が形成されている。
前記上板と前記保持部とが重なり合う部分のうち少なくとも一部に、複数のスリットまたは貫通孔を形成することにより、前記スリットまたは貫通孔を形成した部分では、前記上板と前記保持部との間の隙間をなくすことができる。そして、前記スリットまたは貫通孔を形成した部分には、前記上板と前記保持部との間の隙間がなくなるため、原料の付着を効果的に防止することができる。
前記スリットは、前記回転ディスクの上板の内側(内径側)から外側(外径側)に向かって、放射状に形成されていることが好ましく、このように放射状に形成することにより、スリットの形成効果を高めることができる。前記貫通孔は、前記上板に同心円状に配置されることが好ましく、このように同心円状に配置することにより、回転ディスクの回転を安定化させることができる。
本発明において、好ましくは、前記保持部には、ガスを吐出するためのガス吐出機構が具備してある。前記保持部にガス吐出機構を設け、ガスを吐出することにより、前記回転ディスクの上板と前記保持部との隙間への原料の付着の防止、および付着物の除去が可能となる。
本発明に係る粉体の乾燥方法は、上記いずれかの噴霧乾燥装置を使用して、原料粉末を含有するスラリーを噴霧乾燥し、顆粒化することを特徴とする。本発明の乾燥方法によると、上記本発明の噴霧乾燥装置を使用するため、良好な粒度分布を有し、かつ、不純物の混入が極めて少ない粉体を得ることができる。
本発明によると、保持部あるいは回転ディスクの上板に、テーパーを形成するため、回転ディスクの上板と保持部との隙間への原料の付着を有効に防止することができ、付着物の脱落が原因となる製品の粒度のバラツキや、付着物による摩耗が原因となる不純物の混入を有効に防止することができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の全体構成図、
図2は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図、
図3は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の拡大断面図、
図4〜図10は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図、
図11は従来の噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。
第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥システムは、乾燥手段である噴霧乾燥装置1と、噴霧乾燥装置1にスラリーポンプ11を介してスラリーを供給するスラリー供給手段と、送風機12を介して乾燥用熱風を供給する熱風供給手段と、排気手段(サイクロン14、バグフィルター15、回収機用ブロアー16)とを有する。
本実施形態の噴霧乾燥システムにおいては、原料粉末、溶媒およびバインダ等により構成されるスラリーを、スラリーポンプ11を介してスラリー供給手段から噴霧乾燥装置1に供給し、送風機12を介して熱風供給手段から送られる乾燥用熱風により、噴霧乾燥装置1内にて原料の乾燥を行い、顆粒状の原料粒を得る。
噴霧乾燥装置1は、筒状の乾燥筒体10と、乾燥筒体10の上方中心部に位置する噴霧部2とを有する。噴霧部2へは、スラリーポンプ11を介してスラリー供給手段から、スラリーが供給されるようになっており、供給されたスラリーは、噴霧部2により、乾燥筒体10の内壁に向けて放射状に噴霧される。そして、噴霧部2により、噴霧されたスラリーは、送風機12を介して熱風供給手段から送られる乾燥用熱風により乾燥され、顆粒となり、乾燥材料排出口13から取り出される。
図2に示すように、噴霧部2は、回転軸4を介して回転自在に配置された回転ディスク3と、スラリーホース(スラリー供給手段の一部)5と、回転軸4およびスラリーホース5を保持するディストリビュータ6とを有している。さらに、ディストリビュータ6は、ケーシング7の下端部7−1により外周側から固定されている。ディストリビュータ6およびケーシング7の下端部7−1は、本発明の「保持部」を構成している。
スラリーホース5は、スラリー供給手段から供給されたスラリーを吐出するための吐出部5aを有している。スラリー供給手段から供給されたスラリーは、吐出部5aを介して、回転ディスク3上の回転軸4付近に滴下される。本実施形態では、スラリーホース5は、図2に示すように、回転軸4を中心として180°対称位置に2本配置したが、スラリーホース5の本数や配置位置は特に限定されない。なお、スラリーホース5を2本以上配置する場合には、スラリーの滴下が一定になるように、回転ディスク3の周方向に等間隔に配置することが好ましい。また、スラリーホース5を構成する材質は特に限定されないが、たとえばナイロンなどが使用可能である。
回転ディスク3は、円板形状であり、回転軸4により支持される下板31を有し、下板31の外周側上面には、回転ディスク3の周方向に分散ピン32が複数配置してある。さらに、分散ピン32上には、上板33が固定されている。回転ディスク3は、回転軸4により、好ましくは回転速度3000〜8000rpmで回転自在となっており、吐出部5aから吐出されるスラリーを、回転による遠心力により、放射状に噴霧可能となっている。
本実施形態における噴霧部2によるスラリーの具体的な噴霧方法を次に示す。まず、吐出部5aから、回転ディスク3の下板31の表面にスラリーが液滴の状態で滴下される。次いで、回転ディスク3の回転による遠心力により、このスラリー液滴が、下板31上を外周側に移動していき、分散ピン32の下部周面に付着する。そして、分散ピン32に付着したスラリー液滴は、遠心力により、分散ピン32の表面上を上昇していき、分散ピン32の上端付近において分散ピン32を離れ噴霧される。
本実施形態において、分散ピン32の上方に形成されている上板33は、スラリー液滴の噴霧を安定化させる機能を有しており、上板33を形成することにより、得られる顆粒の粒度分布をシャープにすることができる。本実施形態では、上板33を形成することにより、粒度分布をシャープにすることができるため、粒度分布を基準とする良品率を約10%程度高めることができる。
本実施形態では、図2,3に示すように、ディストリビュータ6の下面には、外周に向かって上板33との隙間が広くなるようなテーパー8が全周にわたり形成されている。本実施形態では、ディストリビュータ6の下面にテーパー8を形成してあるため、上板33とディストリビュータ6との隙間を広げることができ、この隙間への原料の付着を有効に防止することができる。そして、原料の付着を防止することにより、付着物の脱落が原因となる製品の粒度のバラツキや、付着物による摩耗が原因となる不純物の混入を有効に防止することができる。
図3に示すように、テーパー8は、内周側のテーパー開始点8−1から、外周側のテーパー終点8−2にかけて形成されており、本実施形態では、テーパー8はディストリビュータ6の内周側からケーシング7の下端部7−1にかけて形成されている。なお、テーパー開始点およびテーパー終点という概念は、便宜的なものであり、見方を変えれば、開始点が終点となり、逆に、終点が開始点となる。
本実施形態では、テーパー8の内周側のテーパー開始点8−1が、上板33の内側端部33−1より内周側(あるいは、内側端部33−1と同じ位置)になるようにテーパー8を形成している。そのため、テーパー8が、回転軸4方向から見て、上板33とディストリビュータ6およびケーシング7の下端部7−1とが重なり合う部分(すなわち、上板33の上方)の全体に形成されていることとなる。その結果、本実施形態では、上板33とディストリビュータ6との重なり合う部分全体の隙間を広くすることができ、この隙間への原料の付着を、効果的に防止することができる。なお、後に説明する第2実施形態に示すように、テーパー8は、必ずしも、重なり合う部分の全体に形成する必要はなく、重なり合う部分の少なくとも一部に形成すればよく、その場合においても、本発明の作用効果は発揮される。
本実施形態において、テーパー8の形成角度θ1は、特に限定されないが、3〜30度とすることが好ましく、より好ましくは5〜15度とする。テーパー8の形成角度θ1が小さすぎると、テーパー8の形成効果が得られなくなる傾向にある。また、θ1が大きすぎると、ディストリビュータ6の厚みが薄くなりすぎてしまし、好ましくない。
なお、通常、噴霧部2においては、回転ディスク3の回転ブレを防止するために、回転ディスク3は、保持部であるディストリビュータ6になるべく近い位置に設置する必要がある。そのため、回転ディスク3の上板33と、ディストリビュータ6との隙間は、比較的に狭くする必要がある。
そのため、従来の噴霧乾燥装置の噴霧部2gにおいては、図11に示すように、回転ディスク3に形成された上板33とディストリビュータ6gとの隙間が、約1〜2mm程度と非常に狭くなっていた。そのため、従来の噴霧乾燥装置の噴霧部2gでは、噴霧乾燥を連続して行うと、スラリーの跳ね返りや乾燥熱風の影響により、上板33とディストリビュータ6gとの隙間に原料の付着(スケーリング)が発生していた。そして、上板33とディストリビュータ6gとの隙間に原料が付着し、この付着物が堆積し、堆積により一定の大きさとなった付着物が脱落し、製品中に混入してしまい、製品の粒度のバラツキが大きくなってしまうという問題があった。
さらに、付着物の堆積により、高速回転する回転ディスク3の上板33とディストリビュータ6gとの間に、付着物による摩擦が生じてしまう。そして、この摩擦により、上板33あるいはディストリビュータ6gの一部が摩耗してしまい、摩耗物が製品中に不純物として混入し、製品に悪影響を及ぼしてしまうという問題もあった。
これに対して、本実施形態では、ディストリビュータ6の下面にテーパー8を形成しているため、上板33とディストリビュータ6との隙間を広くすることができ、従来の噴霧乾燥装置の噴霧部2gにおける付着物の問題を解決することができる。
そして、噴霧部2より噴霧されたスラリーの液滴は、図1に示す送風機12を介して熱風供給手段から送られる乾燥用熱風(好ましくは180〜230℃)により乾燥され、顆粒となり、最終的に、乾燥材料排出口13より取り出される。本実施形態によると、良好な粒度分布を有し、かつ、不純物の混入が極めて少ない顆粒を得ることができる。
なお、熱風供給手段から送られた乾燥用熱風は、排気手段であるサイクロン14、バグフィルター15および回収機用ブロアー16により、噴霧乾燥により気化した溶媒や粉塵と共に回収される。
第2実施形態
図4に示す本実施形態の噴霧部2aは、第1実施形態の噴霧部2と以下に示す以外は、同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
本実施形態のディストリビュータ6aには、第1実施形態と異なり、内周側のテーパー開始点8a−1が、上板33の内側端部33−1より外周側になるようにテーパー8aが形成してある。すなわち、テーパー8aが、回転軸4方向から見て、上板33とディストリビュータ6およびケーシング7aの下端部7a−1とが重なり合う部分(すなわち、上板33の上方)のうち一部に形成されていることとなる。
第1実施形態とは異なり、本実施形態のように、テーパー8aは、上記重なり合う部分の全体ではなく、上記重なり合う部分のうち一部に形成した場合においても、上板33とディストリビュータ6との隙間への原料の付着を防止することができる。そのため、噴霧部2aの構造上の理由、あるいは、噴霧乾燥する原料の性質に合わせて、テーパー8aは、上記重なり合う部分の全体ではなく、その一部に形成しても良い。
第3実施形態
図5,6に示す本実施形態の噴霧部2bは、第1実施形態の噴霧部2と以下に示す以外は、同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
本実施形態の回転ディスク3bの上板33bには、第1実施形態と異なり、内周側端部上面に、内周に向かって隙間が広くなるテーパー34bが、全周にわたって形成されている。さらに、本実施形態では、ディストリビュータ6bには、テーパーを形成していない。
ディストリビュータ6bではなく、上板33bにテーパー34bを形成した場合においても、第1実施形態と同様に、上板33bとディストリビュータ6bとの隙間を広げることができるため、この隙間への原料の付着を有効に防止することができる。そして、原料の付着を防止することにより、付着物の脱落が原因となる製品の粒度のバラツキや、付着物による摩耗が原因となる不純物の混入を有効に防止することができる。
図6に示すように、テーパー34bは、外周側のテーパー開始点34b−1から、内周側のテーパー終点34b−2にかけて形成されている。
本実施形態では、外周側のテーパー開始点34b−1が、ケーシング7bの下端部7b−1の外周面よりも外周側になるようにテーパー34bが形成してある。すなわち、テーパー34bが、回転軸4方向から見て、上板33bとディストリビュータ6bおよびケーシング7bの下端部7b−1とが重なり合う部分(すなわち、上板33bの上方)の全体に形成されていることとなる。
本実施形態において、テーパー34bの形成角度θ2は、第1実施形態におけるディストリビュータ6に形成したテーパー8の形成角度θ1と同様にすればよい。ただし、上板33bは、第1実施形態のディストリビュータ6と比較して、厚みが薄いため、通常、θ2の上限は、θ1の上限よりも小さくなる。
第4実施形態
図7に示す本実施形態の噴霧部2cは、第3実施形態の噴霧部2bと以下に示す以外は、同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
本実施形態の上板33cには、第3実施形態と異なり、外周側のテーパー開始点34c−1が、ケーシング7cの下端部7c−1の外周面よりも内周側になるようにテーパー34cが形成してある。すなわち、テーパー34cが、回転軸4方向から見て、上板33cとディストリビュータ6cおよびケーシング7cの下端部7b−1とが重なり合う部分(すなわち、上板33cの上方)のうち一部に形成されていることとなる。
第3実施形態とは異なり、本実施形態のように、テーパー34cは、上記重なり合う部分の全体ではなく、上記重なり合う部分のうち一部に形成した場合においても、上板33cとディストリビュータ6cとの隙間への原料の付着を防止することができる。そのため、噴霧部2cの構造上の理由、あるいは、噴霧乾燥する原料の性質に合わせて、テーパー34cは、上記重なり合う部分の全体ではなく、その一部に形成しても良い。
第5実施形態
第5実施形態に係る噴霧乾燥装置は、噴霧部の回転ディスク上に図8に示す上板33dが形成されている以外は、第1実施形態の噴霧乾燥装置1と同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。なお、図8は、図2のVIII−VIII線断面図に相当する。
本実施形態では、図8に示すように、上板33dには、回転軸4方向から見て、上板33dとディストリビュータ6およびケーシング7の下端部7−1とが重なり合う部分に、複数の短形スリット35dを有する。本実施形態においては、上板33dに複数のスリット35dを形成することにより、スリット35dを形成した部分では、上板33dとディストリビュータ6との間の隙間をなくすことができる。そのため、上板33dとディストリビュータ6との隙間への原料の付着を防止することができる。
しかも、本実施形態では、上板33dには、スリット35dを形成しているため、たとえ、スラリーの付着が発生したとしても、スラリーの付着物が堆積し、大きな堆積物となってしまう前に、付着物をスリット35dから落下させることができる。そのため、スラリー付着による堆積を有効に防止することもできる。
上記スリット35dの数は、特に限定されず、上板33dの強度が十分に確保される範囲内において、できる限り多く形成することが好ましい。ただし、スリット35dは、上板33dの下部に位置する分散ピン32d(図示省略)を避けて形成する。また、スリット35dの幅wは、上板33dの内径r1の1/20〜1/10程度とする。あるいは、スリット35dの幅wは、5〜10mm程度とする。なお、上板33dの内径r1の大きさは、通常50〜100mm程度である。本実施形態においては、図8に示すように、複数のスリット35dは、回転ディスク33dの周方向に等間隔に配置するため、回転ディスク33dの回転を安定化させることができる。
第6実施形態
第6実施形態に係る噴霧乾燥装置は、噴霧部の回転ディスク上に図9に示す上板33eが形成されている以外は、第5実施形態の噴霧乾燥装置1と同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。なお、図9は、図2のIX−IX線断面図に相当する。
本実施形態の上板33eには、第5実施形態と異なり、回転軸4方向から見て、上板33eとディストリビュータ6およびケーシング7の下端部7−1とが重なり合う部分に、複数の貫通孔35eが形成されている。本実施形態においては、上板33eに複数の貫通孔35eを形成することにより、第5実施形態と同様に、貫通孔35eを形成した部分では、上板33eとディストリビュータ6との間の隙間をなくすことができる。そのため、上板33eとディストリビュータ6との隙間への原料の付着を防止することができる。
しかも、本実施形態では、図9に示すように、複数の貫通孔35eは回転ディスク33eの同心円状に、かつ、回転ディスク33eの周方向に等間隔に配置されている。そのため、回転ディスク33eの回転を安定化させることができる。
上記貫通孔35eの数は、特に限定されず、上板33eの強度が十分に確保される範囲内において、できる限り多く形成することが好ましい。また、貫通孔35eの内径r2の大きさは、上板33eの内径r1の1/10〜1/5程度、あるいは、5〜10mm程度とする。
第7実施形態
図10に示す本実施形態の噴霧部2fは、第1実施形態の噴霧部2と以下に示す以外は、同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
本実施形態の噴霧部2fでは、第1実施形態と異なり、ディストリビュータ6fに、ガス吐出用ホース9が設けられており、ディストリビューター6fの下面に設けられたガス吐出部9aよりガスを吐出できるようになっている。
本実施形態では、ディストリビュータ6fにはテーパー8fを形成し、さらに、ディストリビュータ6fの下面には、ガス吐出用ホース9を介してガスを吐出するガス吐出部9aを形成する。そのため、ガス吐出用ホース9を介してガス吐出部9aよりガスを吐出することにより、上板33とディストリビューター6fとの隙間における原料の付着を防止することができるとともに、もし、原料が付着した場合においても、付着物を有効に除去することができる。ガス吐出部9aは、ディストリビューター6fの下面の少なくとも一部に形成されていることが好ましく、必要に応じて、複数個形成することも可能である。
なお、本実施形態では、ガス吐出部9aは、ディストリビューター6fの下面に形成したが、ケーシング7の外周側の表面に形成しても良い。また、ガス吐出部9aは、ディストリビュータ6fの下面、およびケーシング7の外周側の表面の両方に形成しても良い。
ガス吐出部9aから吐出するガスとしては、特に限定されず、噴霧乾燥する原料に併せて適宜選択すればよいが、たとえば、空気やNガスなどが使用でき、必要に応じて水分を含有させても良い。また、ガス吐出部9aから吐出するガスの温度は、常温〜400℃程度であることが好ましく、より好ましくは送風機12を介して熱風供給手段より供給される乾燥用熱風と同じものを使用する。
その他の実施形態
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、ディストリビュータ6のテーパー8(第1実施形態)、および上板33bのテーパー34b(第3実施形態)は、それぞれ、別々に形成したが、同時に形成することも可能である。また、上述した各実施形態では、スリット35d、貫通孔35e、ガス吐出部9aは、それぞれ別々に形成したが、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、これらを複合して形成することも可能である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
まず、出発原料として、セラミック原料を用意し、セラミック原料とバインダーと純水とを撹拌・混合し、次いで、配合粉砕機を使用して配合・粉砕を行い、セラミックスラリーを作製した。
次いで、得られたセラミックスラリーについて、図2,3に示す噴霧部2を有する本発明の噴霧乾燥装置(実施例)を使用して噴霧乾燥を行った。なお、噴霧乾燥の条件としては、回転ディスク3の回転数を3500rpm、乾燥用熱風の温度を190℃とした。また、本実施例においては、テーパー8の形成角度θ1を、5度とした。
さらに、上記とは別に、得られたセラミックスラリーについて、上記と同様にして、図11に示す噴霧部2gを有する従来の噴霧乾燥装置(比較例)を使用して噴霧乾燥を行った。
次いで、本発明の噴霧乾燥装置(実施例)を使用して得られたセラミック顆粒、および従来の噴霧乾燥装置(比較例)を使用して得られたセラミック顆粒について、外観検査および顆粒の良品率の測定を行った。
外観検査は、得られたセラミック顆粒について、黒色の異物が存在するか否か、および顆粒の固まりが存在するか否かを評価することにより行った。外観検査は、表1に示す検査ロット数について行った。黒色の異物、または顆粒の固まりが存在したロットを不良ロットとし、検査ロット数に対する不良ロット数の割合を不良率として求めた。不良率は低いほうが好ましい。結果を表1に示す。
顆粒の良品率の測定は、得られたセラミック顆粒について、粒度分布の測定を行い、粒径が300μm以下の範囲にあった粒子を良品とし、粒子の全重量に対する良品の重量を求め、これを良品率とした。結果を表2に示す。良品率は高いほうが好ましい。
Figure 0004595443
評価1
表1より、本発明の噴霧乾燥装置(実施例)を使用して得られたセラミック顆粒は、黒色の異物および顆粒の固まりが、全く存在せず、良好な結果となった。一方、従来の噴霧乾燥装置(比較例)を使用して得られたセラミック顆粒は、黒色の異物および顆粒の固まりが、それぞれ確認され、不良率が1.38%であった。なお、比較例にて確認された黒色の異物は、ディストリビュータおよび/または回転ディスクの上板の一部が摩耗することにより混入した摩耗物であり、また、顆粒の固まりは、ディストリビュータと回転ディスクの上板との間に堆積した付着物であった。
この結果より、本発明の噴霧乾燥装置(実施例)を使用することにより、回転ディスクの上板とディストリビュータ(保持部)との隙間への原料の付着を有効に防止することができることが確認できた。
Figure 0004595443
評価2
表2より、本発明の噴霧乾燥装置(実施例)を使用して得られたセラミック顆粒は、良品率が94%となり、良好な結果であった。一方、従来の噴霧乾燥装置(比較例)を使用して得られたセラミック顆粒は、良品率が87.6%となり、90%を下回り、良品率に劣る結果となった。
この結果より、本発明の噴霧乾燥装置(実施例)を使用することにより、粒度分布のバラツキを解消することができ、結果として、良品率を向上させることが可能であることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の全体構成図である。 図2は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図3は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の拡大断面図である。 図4は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図5は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図6は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図7は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図8は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図9は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図10は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。 図11は従来の噴霧乾燥装置の噴霧部の要部断面図である。
符号の説明
1… 噴霧乾燥装置
10… 乾燥筒体
11… スラリーポンプ
12… 送風機
13… 乾燥材料排出口
14… サイクロン
15… バグフィルター
16… 回収機用ブロアー
2… 噴霧部
3… 回転ディスク
31… 下板
32… 分散ピン
33… 上板
4… 回転軸
5… スラリーホース
5a… 吐出部
6… ディストリビュータ
7… ケーシング
7−1… 下端部
8… テーパー
8−1… テーパー開始点
8−2… テーパー終点

Claims (7)

  1. スラリーを吐出するためのスラリー吐出部と、前記スラリー吐出部を保持するための保持部と、前記吐出部から吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、を有する噴霧乾燥装置であって、
    前記回転ディスクには、上板が形成されており、
    前記保持部には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、外周に向かって前記上板との隙間が広くなるようなテーパーが形成してあり、
    前記上板には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、スリットまたは貫通孔が形成されていることを特徴とする噴霧乾燥装置。
  2. 前記保持部のテーパーは、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の全体にわたって形成してある請求項1に記載の噴霧乾燥装置。
  3. スラリーを吐出するためのスラリー吐出部と、前記スラリー吐出部を保持するための保持部と、前記吐出部から吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、を有する噴霧乾燥装置であって、
    前記回転ディスクには、上板が形成されており、
    前記上板の内周側端部上面には、内周に向かって隙間が広くなるテーパーが形成してあり、
    前記上板には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、スリットまたは貫通孔が形成されていることを特徴とする噴霧乾燥装置。
  4. 前記上板の内周側端部上面のテーパーは、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、形成してある請求項3に記載の噴霧乾燥装置。
  5. 前記上板の内周側端部上面のテーパーは、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の全体にわたって形成してある請求項4に記載の噴霧乾燥装置。
  6. スラリーを吐出するためのスラリー吐出部と、前記スラリー吐出部を保持するための保持部と、前記吐出部から吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、を有する噴霧乾燥装置であって、
    前記回転ディスクには、上板が形成されており、
    前記保持部には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、外周に向かって前記上板との隙間が広くなるようなテーパーが形成してあり、かつ、
    前記上板の内周側端部上面には、内周に向かって隙間が広くなるテーパーが形成してあり、
    前記上板には、前記回転ディスクの回転軸方向から見て、前記上板と前記保持部とが重なり合う部分の少なくとも一部に、スリットまたは貫通孔が形成されていることを特徴とする噴霧乾燥装置。
  7. 前記保持部には、ガスを吐出するためのガス吐出機構が具備してある請求項1〜6のいずれかに記載の噴霧乾燥装置。
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