JP4594184B2 - 鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されたライフサイクルコスト評価システムは、気象環境データや地域別コンクリート配合データ、評価対象構造物データ、地図データを含むデータベースと、これらの各データ、地点および評価対象コンクリート構造物の特性データに基づいてコンクリートの劣化指標およびライフサイクルコストを算出する手段とを備えたものであって、電子化された各データをコンピュータを用いて処理することで、維持管理に係るライフサイクルコストを効率的に算出でき、コンクリート構造物の点検、補修を計画的に行うために考案されたものである。
特許文献1の他にも、港湾施設の1つである桟橋におけるコンクリート構造物の上部工を対象としたライフサイクルコスト評価システムや、水門施設を対象としたライフサイクルコスト評価システムが考案されている。
すなわち、港湾、海洋施設における鋼構造物においては、腐食によって徐々に耐力上有効な鋼構造部材の部材断面が小さく(肉厚が薄く)なり、部材断面が減少した状態での耐荷重性状を適正に評価した上で補修計画を策定し、これに基づいてライフサイクルコストを算出することが重要である。しかし、従来のライフサイクルコスト評価システムは、腐食を考慮した構造物の耐荷重性状を評価するものではないため、このシステムを港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムとして用いたとしても、適切な評価結果が得られず、的確な補修計画を策定することができない。
また、建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報を備えていることで、当該施設の建設当時から現在に至るまでの管理履歴を一括して管理することができ、将来に渡る補修計画の策定における精度を向上させることができる。つまり、従来、施設の建設記録や設計資料(計算書や図面等)は、紙の形で保管されていることが多く、補修計画を策定する上で非常に手間が掛かっていたのであるが、本ライフサイクルコスト評価システムのように、施設管理情報を電子データとして記憶手段に記憶しておくことで、情報の取り扱いが格段に容易になって補修計画の策定の手間を一層低減することができる。
このような構成によれば、過去に施された対策記録を対策履歴情報として記憶しておくことで、構成部材の診断を行う際の精度をさらに向上させることができ、より的確な補修計画を策定することができる。
このような構成によれば、施工時期や防食対策工法を任意に選択することで、将来に渡る施設の利用計画等に応じて柔軟な補修計画を策定することができ、ライフサイクルコストの低減を効率よく図ることができる。
また、このような腐食速度推定式が構成部材の部位ごとに設定可能になっていることで、各部位の条件(例えば、海中にあるか、大気中にあるかなど)を反映させて、より詳細に部位ごとの腐食速度を推定することができる。
このような構成によれば、構成部材表面に施された塗膜の健全性(塗膜の残存寿命)を、錆発生面積率および経過年数に基づいて算出することで、構成部材の非腐食期間を推定することができ、鋼構造物における腐食の進行状態をより一層正確に把握することができる。
このような構成によれば、構成部材の種類に対応した応力算定式を内蔵したことで、構成部材の応力解析を迅速かつ正確に実施することができ、構成部材ごとの診断精度および速度を向上させることができる。
このような構成によれば、防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることで、防食対策工法の選択が容易になるとともに、迅速にライフサイクルコストを算出することができる。ここで、防食対策工法情報は、新工法が開発や実用化された際に、随時追加登録可能に構成され、また前記各データのうち、特に単価に関しては、変更された時点で随時修正可能に構成されていることが望ましい。
図1は、本発明の実施形態に係る鋼構造物のライフサイクルコスト(LCC)評価システムを示すブロック図である。図2は、LCC評価システムの動作を示すフローチャートである。図3および図4は、それぞれLCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼管杭P1および鋼矢板P2を示す断面図である。
鋼構造物のLCC評価システムは、港湾施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、コンピュータ1で実現されるものである。なお、以下では港湾施設の鋼構造物に関して説明するが、本発明の施設としては、海洋施設であってもよく、この海洋施設としては、外洋の石油掘削ジャケットなどにおける鋼構造物が例示でき、その構造部材としては、鋼製梁や斜材(形鋼、パイプ)等がある。
一方、鋼矢板P2は、図4に示すように、護岸(岸壁)における土圧を支持するために海底に打ち込まれたもので、所定の板厚を有する波形断面の鋼板や、並列された鋼管で構成されている。そして、鋼矢板P2は、鋼管杭P1と同様に、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部からなる5つの部位に分けてLCC評価されるようになっている。
このコンピュータ1は、港湾施設を管理する管理者が使用するスタンドアロンのコンピュータを利用してもよいし、モデムやターミナルアダプタ、ルータ等の通信機器およびISDN、ADSL、CATV、光ファイバ等の各種電気通信回線を利用してサーバ装置に接続されたコンピュータを利用してもよい。サーバ装置に接続されたコンピュータの場合には、サーバ装置側に設けられたハードディスクやメモリ等を記憶装置(記憶手段)6として利用してもよく、さらにサーバ装置側に設けられたCPU等の処理装置(処理手段)5として利用してもよい。
また、構造物情報61には、港湾施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報テーブル611と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の部材リストを含んだ構成部材情報テーブル612と、鋼管杭P1や鋼矢板P2に対して過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報テーブル613とが記憶されている。
腐食速度推定式情報63には、実測データに基づく腐食速度推定式631と、環境因子に基づく腐食速度推定式632とが記憶されている。
ライフサイクルコストを評価するための各種処理手段としては、腐食速度推定処理手段53と、対策計画選択処理手段54と、構造物診断処理手段55と、管理基準入力処理手段56と、ライフサイクルコスト算出手段57と、が設けられている。
なお、本実施形態において、各処理手段は、コンピュータ1に組み込まれ、処理装置5で実行されるプログラムで実現されている。
処理メニュー100には、構造物入力処理手段51を作動させて構造物情報61内のデータの新規登録、更新、削除を実行するための構造物メニュー101と、帳票印刷を実行するための帳票印刷メニュー102と、防食対策工法入力処理手段52を作動させて防食対策工法情報テーブル62内のデータの新規登録、更新、削除を実行するための工法一覧メニュー103とが設けられている。
さらに、処理メニュー100には、腐食速度推定処理手段53と、対策計画選択処理手段54と、構造物診断処理手段55と、管理基準入力処理手段56を作動させるための劣化状況・構造物診断メニュー104と、ライフサイクルコスト算出手段57を作動させるためのLCC評価メニュー105,106と、塗膜健全性評価手段58を作動させるための塗膜健全性評価メニュー107とが設けられている。LCC評価メニューは、鋼構造物の構造部材(鋼管杭P1や鋼矢板P2)単位でLCC評価を実施するLCC評価(構造部材)メニュー105と、鋼構造物全体でLCC評価を実施するLCC評価(構造物)メニュー106とに分けられている。
また、処理メニュー100には、LCC評価システムを終了させるための終了メニュー108が設けられている。
まず、LCC評価システムを起動すると、処理メニュー100が表示装置2に表示される(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)。
処理メニュー100において、構造物メニュー101を選択すると(S2)、構造物入力処理手段51が起動され、その処理が実行される(S3)。
構造物入力処理手段51は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、港湾施設に関する施設管理情報および鋼構造物の構成部材である鋼管杭P1や鋼矢板P2に関する構成部材情報を入力装置3から利用者に入力させ、入力された情報を記憶装置6の構造物情報61に記憶する。
構造物一覧表111には、「施設名称(岸壁名称)」、「工場・事業所名」、「都道府県」、「市町村」、「建設年次西暦」、および「建設年次月」のそれぞれの欄に港湾施設に関するデータが表示されている。
構造物情報メニュー120には、構造物データ入力欄121と、施設平面図欄122と、施設位置図欄123と、施設断面図欄124と、施設写真欄125と、登録ボタン126と、削除ボタン127と、リセットボタン128と、構造物一覧メニュー110を表示させるための一覧へ戻るボタン129とが表示される。
構造物情報メニュー120において、構造部材一覧ボタン114を選択(クリック)すると、図8に示す構造部材一覧メニュー130が表示される。この構造部材一覧メニュー130は、港湾施設における鋼構造物の詳細情報を表示するもので、記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶された情報が表示されるようになっている。構造部材一覧メニュー130には、施設名称選択欄131と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン132と、構成部材を一覧表示する構成部材一覧表133と、新規登録ボタン134と、編集ボタン135と、防食対策履歴情報を表示させるための防食対策実績ボタン136と、構造物一覧メニュー110を表示させるための構造物一覧へ戻るボタン137とが表示される。
この処理メニュー100において、帳票印刷メニュー102を選択(クリック)すると、図15に示す帳票印刷処理メニュー200が表示される。帳票印刷処理メニュー200には、構造物名称選択欄201と、印刷対象を選択する印刷対象選択欄202と、印刷を実行するための帳票印刷ボタン203と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン204とが表示される。印刷対象選択欄202には、帳票印刷の対象である構造物情報、構造部材(鋼管杭)情報、防食対策(鋼管杭)情報、構造部材(鋼矢板・鋼管矢板)情報、および防食対策(鋼矢板・鋼管矢板)情報と、これらの印刷対象を選択するためのチェックボックスが表示されている。そして、チェックボックスをチェックして印刷対象を選択した状態で、帳票印刷ボタン203を選択(クリック)すると、処理装置5の印刷処理手段592が起動され、選択した情報が印刷装置4で印刷される。
防食対策工法入力処理手段52は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、鋼構造物の構成部材である鋼管杭P1や鋼矢板P2に対して施工可能な防食対策工法情報を入力装置3から利用者に入力させ、入力された情報を記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶する。
工法一覧表211には、「工法名」、「表示名」、および「耐用年数」のそれぞれの欄に防食対策工法に関するデータが表示されている。
工法一覧メニュー210において、工法一覧表211中の1つの対策工法を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン213を選択(クリック)すると、図17に示す工法情報メニュー220が表示される。ここで、新規登録ボタン212を選択(クリック)すると、データが未入力の工法情報メニュー220が表示されるようになっている。
そして、一覧へ戻るボタン229bを選択(クリック)して工法一覧メニュー210に戻り、工法一覧メニュー210のメニューへ戻るボタン214を選択(クリック)すると、防食対策工法入力処理手段52が終了し、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
具体的には、実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄に入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄に入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定する。
また、構成部材の部位ごとの腐食速度推定式選択欄305a〜305dでは、それぞれ実測データに基づく腐食速度推定式(上段)と、環境因子に基づく腐食速度推定式(中段)と、利用者入力による腐食速度推定式(下段)との3つのうち、いずれかの腐食速度推定式が選択できるようになっている。なお、本実施形態では、海土中の部位に関する腐食速度推定式選択欄305eでは、実測データに基づく腐食速度推定式(上段)と、利用者入力による腐食速度推定式(下段)との2つのうち、いずれかの腐食速度推定式が選択できるようになっている。
また、腐食速度推定式選択欄305a〜305dにおいて、環境因子に基づく腐食速度推定式(中段)が選択された場合には、6つの入力欄306a〜306fに入力された環境因子情報をパラメータとして、記憶装置6の腐食速度推定式情報63に格納された環境因子に基づく推定式632が読み出され、この推定式632に基づいて腐食速度が算出される。これらの環境因子情報としては、海水の水素イオン濃度(pH、ペー・ハー)、塩化物イオン濃度(Cl- )、アンモニアイオン濃度(NH3 +)、導電率、溶存酸素量(DO)、および水温を入力する。
また、腐食速度推定式選択欄305a〜305eにおいて、利用者入力による腐食速度推定式(下段)が選択された場合には、入力欄307に入力された腐食速度推定式を用いて腐食速度が算出される。
防食対策計画一覧メニュー320には、施設名称選択欄321と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン322と、防食対象構造体選択欄323と、防食対策計画の組み合わせ番号を選択する防食対策計画選択欄324と、構成部材の部位を選択する部位選択欄325と、防食対策を一覧表示する防食対策一覧表326とが表示される。さらに、防食対策計画一覧メニュー320には、計画情報複写ボタン327と、新規登録ボタン328と、編集ボタン329aと、防食対策計画一覧メニュー320を閉じて腐食速度推定メニュー300を表示させるための閉じるボタン137とが表示される。防食対策計画選択欄324で選択可能な防食対策計画の組み合わせとしては、例えば5つの組み合わせまで選択可能になっており、1から5までの番号のいずれかを選択することとなる。
そして、防食対策計画一覧メニュー320において、施設名称選択欄321、種別選択ボタン322、防食対象構造体選択欄323、防食対策計画選択欄324、および部位選択欄325の情報を選択してから、防食対策一覧表326中の1つの防食対策を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン329aを選択(クリック)すると、図20に示す防食対策計画情報メニュー330が表示される。ここで、新規登録ボタン328を選択(クリック)すると、データが未入力の防食対策計画情報メニュー330が表示されるようになっている。さらに、計画情報複写ボタン327を選択(クリック)すると、図21に示す防食対策計画情報複写処理メニュー340が表示される。
以上の対策計画選択処理手段54が終了して防食対策計画一覧メニュー320を閉じると、腐食速度推定メニュー300が再度表示される。
構造物診断処理手段55は、対策計画選択処理手段54で登録した防食対策工法および腐食速度推定処理手段53で選択した推定式に基づく腐食速度によって算出される鋼管杭P1や鋼矢板P2の各部位ごとの有効部材断面と、構成部材情報テーブル612に記憶された設計条件とに基づき、記憶装置6の応力算定式情報65に格納された鋼管杭の応力算定式や鋼矢板の応力算定式を読み出し、これらの応力算定式に基づいていて鋼管杭P1や鋼矢板P2の部位ごとに生じる応力(曲げモーメントや軸力、せん断力等)および応力度比を算出する。
また、構造物診断メニュー360において、応力図作成ボタン365を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され、図25に示すような応力図(モーメント図)375が表示装置2に表示される(S64)。この応力図375において、応力度比376に重ねて管理上限界性能377が表示されるようになっており、構成部材の余裕度(耐荷重性状)が確認できるようになっている。
以上の構造物診断処理手段55および作図処理手段591が終了し腐食速度推定メニュー300に戻り、メニューへ戻るボタン315を選択(クリック)すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
LCC評価(構造部材)メニュー105が選択された場合には、鋼構造物の構造部材(鋼管杭P1や鋼矢板P2)単位でLCC評価が実施され、図26に示すLCC評価(構造部材)選択メニュー380が表示される。
LCC評価(構造物)選択メニュー400には、構造物を選択する構造物選択欄401と、評価年次を入力する入力欄と、対策計画の出力パターンを選択するパターン選択欄402と、構造物における構成部材ごとに対策計画の出力パターンを設定するパターン設定表403と、対策計画のパターンごとの組み合わせを設定する選択テーブル404と、対策計画の評価条件(施工年次や施工面積等)を表示する評価条件表示部405とが表示される。さらに、LCC評価(構造物)選択メニュー400には、点検費用を入力する点検費用入力欄406と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させる防食対策計画確認ボタン407と、LCC評価グラフを表示させるLCC評価グラフ表示ボタン408と、リセットボタン409aと、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン409bとが表示される。
以上のライフサイクルコスト算出手段57および作図処理手段591が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
塗膜健全性評価手段58は、鋼管杭P1や鋼矢板P2の表面に施された塗膜の劣化を考慮した解析を実行して塗膜の健全性を評価する。
塗膜健全性評価算定シート420には、塗膜表面の錆発生面積率を入力するための錆発生面積率入力欄421と、塗膜が施工されてからの経過年数を入力するための経過年数入力欄422と、塗膜の耐用年数を出力するための耐用年数出力欄423と、塗膜の残存寿命を出力するための残存寿命出力欄424と、解析を実行するためのが解析実行ボタン425と表示される。そして、錆発生面積率入力欄421に錆発生面積率を入力し、経過年数入力欄422に経過年数を入力した状態で、解析実行ボタン425を選択(クリック)すると、耐用年数出力欄423に耐用年数が出力され、残存寿命出力欄424に塗膜の残存寿命が出力されるようになっている。
以上の塗膜健全性評価手段58が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。そして、処理メニュー100の終了ボタン108を選択(クリック)することで(S9)、LCC評価システムが終了する。
(1)すなわち、腐食速度推定処理手段53によって鋼構造物における鋼管杭P1や鋼矢板P2の腐食状態を推定し、この腐食により鋼管杭P1や鋼矢板P2の有効部材断面が減少した状態における応力度比を構造物診断処理手段55によって算出することで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾(海洋)施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、港湾(海洋)施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
例えば、前記実施形態においては、表示装置2に各種のメニュー画面を表示させ、これらの画面上の入力欄にデータを入力したり、選択欄からデータを選択したりする会話形式で各種処理を実行するものとしたが、このような形式に限らず、一括のバッチ処理で各処理手段53〜58を実行するような構成であってもよい。
さらに、耐用年数中に応力度比が施設管理基準を超えてしまうような場合には、設計条件(荷重条件)を変更する、すなわち施設の使用条件を見直した上で、再度LCC評価を実施するような機能を付加してもよい。
また、前記実施形態では、港湾施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムについて説明したが、施設としては、外洋の石油掘削ジャケットなどの海洋施設であってもよい。その場合には、鋼構造物であるジャケット等の耐荷重性状を適切に評価するために、トラス構造の応力解析や疲労解析等を実行するシステムを、本発明のLCC評価システムに内蔵してもよく、またLCC評価システムと連動可能に別途備えていてもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (7)
- 港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、
情報入力用の入力手段と、各種情報を記憶する記憶手段と、情報表示用の表示手段と、情報を処理する処理手段とを備え、
前記記憶手段には、当該施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報と、鋼構造物を構成する鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の部材リストを含んだ構成部材情報と、前記構成部材に施す防食対策工法を含んだ防食対策工法情報と、が少なくとも記憶され、
前記処理手段は、前記構成部材の腐食速度を推定する腐食速度推定処理手段と、前記入力手段から当該施設の管理基準を入力させる管理基準入力処理手段と、前記防食対策工法情報内の防食対策工法を表示手段に表示して前記入力手段から選択させる対策計画選択処理手段と、前記構成部材の診断を行う診断処理手段と、前記入力した管理基準、前記選択した防食対策工法、および診断処理手段の診断結果に基づいて鋼構造物のライフサイクルコストを算出するライフサイクルコスト算出手段とを備え、
前記腐食速度推定処理手段は、前記構成部材の部位ごとに少なくとも2種類の腐食速度推定式を選択させ、かつ選択された腐食速度推定式に基づいて当該構成部材の部位ごとに腐食速度を推定し、
前記対策計画選択処理手段は、前記構成部材の部位ごとに前記防食対策工法情報から任意の防食対策工法を選択させ、
前記診断処理手段は、前記選択した防食対策工法および前記推定された腐食速度によって算出される前記構成部材の部位ごとの有効部材断面と、前記施設管理情報に含まれた設計条件の作用荷重と、に基づいて当該構成部材の部位ごとに生じる応力度比を算出するとともに、前記入力された施設管理基準と前記算出された応力度比とを比較可能に前記表示手段に表示し、
前記ライフサイクルコスト算出手段は、前記対策計画選択処理手段にて選択された防食対策工法に伴うコストを前記表示手段に表示し、
前記構成部材を評価する部位は、海底面よりも下側の海土中に位置する海土中部と、この海土中部よりも上側で干潮時の海面よりも下側に位置する海中部と、この海中部よりも上側で満潮時の海面よりも下側に位置する干満部と、この干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される飛沫部と、この飛沫部よりも上側で大気中に露出した大気部と、から構成されることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。 - 請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記記憶手段には、鋼構造物において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報が記憶されていることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。 - 請求項1または請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記対策計画選択処理手段は、計画時から将来の所定期間における1以上の施工時期と、この施工時期ごとに実施する任意の防食対策工法とを選択させることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記腐食速度推定処理手段は、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択させ、
実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、
環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、
利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記処理手段は、前記構成部材表面に施された塗膜の劣化を考慮して塗膜の健全性を評価する塗膜健全性評価手段を備え、
前記塗膜健全性評価手段は、塗膜表面の錆発生面積率および塗膜の経過年数の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された錆発生面積率および経過年数に基づいて塗膜の残存寿命を算出することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記記憶手段には、前記鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の種類に対応した応力算定式を含む応力算定式情報が記憶され、
前記診断処理手段は、前記構成部材の種類に応じて前記応力算定式情報から応力算定式を選択し、選択した応力算定式に基づいて構成部材ごとに応力解析を実行して応力度比を算出することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記防食対策工法情報には、各防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
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