JP5684552B2 - 劣化予測マッピング装置及び劣化予測マッピング方法 - Google Patents
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Description
従来から重回帰分析を利用した腐食速度の評価方法として特許文献1には、金属材料の腐食速度を目的変数とし、その腐食速度に影響を与える環境因子と地形因子を説明変数とする重回帰分析を行うにあたり、少なくとも説明変数の一つとして相対湿度による重み付けした仮想ぬれ時間を含め、測定した金属材料の腐食速度に基づき重回帰分析法により腐食速度推定式を求め、求めた腐食速度推定式に基づいて非測定エリアの金属材料の腐食速度を推定演算して求める腐食速度評価方法について開示されている。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、説明変数間の相互作用の加味、最適な説明変数(それらの相互作用も含む)の選択、クラスタリングによる解析領域の細分化により、鉄塔の腐食速度の予測を、効率的に、且つ精度良く実施することができる劣化予測マッピング装置、及び劣化予測マッピング方法を提供することを目的とする。
本発明により、腐食速度に影響を及ぼすと思われる事象のデータ群から必要なものを選別し、モデルを構築することが出来る。また構築したモデルから腐食速度を予測し、その結果をマップ化することが出来る。
本発明は請求項1と同様の作用効果を奏する。
一般に説明変数を多く用いるほどモデルの当てはまり度は高くなるが、必ずしも全ての説明変数候補を利用することが良いわけではない。従って重回帰分析に利用する説明変数の組み合わせを検討する必要がある。また分析結果に悪影響を及ぼす多重共線性(通称マルチコと呼ばれる)を避ける必要がある。マルチコは非常に高い相関関係にある説明変数を用いることに起因するものであり、マルチコを避ける意味でも説明変数の選別は重要である。上述の理由から、目的変数との単相関係数および説明変数同士の単相関係数から説明変数の選別を以下の手順で行う。
1.目的変数および説明変数候補の全ての組み合わせの単相関係数を算出する。
2.単相関係数の絶対値が0.9より大きい説明変数候補の取捨選択をおこなう。即ち、単相関係数の絶対値が小さい方を説明変数候補から削除する。
3.目的変数との単相関係数の絶対値の降順に説明変数を順位付ける。
4.残った説明変数候補のうち3.の順位付けの上位5つを説明変数とする。
これにより、予測精度を高めつつ、マルチコを避けることができる。
鉄塔の複数の部位において調査されたデータのうち、どのデータがより腐食速度の予測式構築に適しているか判断をする必要がある。そこで各部位のデータについて腐食速度を算出し、算出した腐食速度とその他のデータ(説明変数候補)との単相関係数を基に判断する。その判断手順は以下の通りである。
1.各部位の腐食速度を算出する。
2.各部位の腐食速度と各種データ(環境因子など)との単相関係数を求める。
3.各種データとの単相関係数の総和が最小となる部位のデータを予測に使用する。
これにより、予測式を最適な部位のデータに基づいて構築することができる。
汚損区分データとは腐食の主要因の一つであると考えられている塩分による汚損の度合いを示すものであり、想定最大塩分付着密度(mg/cm2)を複数段階で評価したものである。また、汚損区分は概ね海岸線に並行するような形で分布しており、使用可能なデータは沿岸部に海岸線に沿うように位置する鉄塔を多く含んでいる。そのため重回帰分析において鉄塔の立地位置の汚損区分の微妙な変化を反映することが出来ず、汚損区分データを十分に活用できないことが想像される。そこで、汚損区分の境界線を等高線に見立て、各区分内の汚損度(=想定最大塩分付着密度)に傾斜をつけることでより現実に近い連続値とすることを試みた。これにより、鉄塔の立地位置の汚損区分の微妙な変化を重回帰分析に反映することができる。
相乗効果を及ぼす因子の数(積算する前記説明変数の項数)についても、同様にStep−wise法を用いて決定する。具体的には、2項の積までを説明変数とした場合、3項の積までを説明変数とした場合と順次説明変数として検討する積の項の次数を上げてモデルを構築し、評価が上がらなくなる次数を求める。これにより、各説明変数間の相互作用による相乗効果も反映した予測式が構築できる。
一般に鉄塔の腐食現象は、その領域特有の環境影響(気温、湿度、ぬれ時間等)を受けるため、その予測精度向上には解析領域の細分化(地域別・線路別等)が不可欠となる。しかし、膨大な腐食量調査が必要となることから現実的ではない。そこで必要最小限のデータから最大の効果を発揮するよう、各種クラスタリングの検討による領域最適化を行う。これにより、解析領域の予測精度を向上させることができる。
分割数を決め、クラスタリングを行い、クラスタ毎に予測式を構築する。次に各クラスタの予測式をトータルで評価し、その分割数での予測式の評価とする。これを分割数を増やしながら評価し、評価が極大となる分割数を求める。これにより、最適な領域分割数を求めることができる。
これにより任意地点が前記クラスタリング結果基づいて構築した予測式の内、最適なものを選択し予測・マッピング化することができる。
さらに各因子の相互作用の考慮、領域分割および領域毎の予測式構築により、腐食現象が持つ特異性にも柔軟に対応できる。また領域分割の際には、予測式の精度評価を基準に最適な分割数も求めるため領域分割に係る事前検討も不要となる。
これらにより、ユーザは予測したい現象および影響を及ぼすと思われる因子群を入力するだけで、1)予測に有用な因子の選別、2)予測に適した領域の分割、3)領域毎の予測式の構築が行える。
また本発明は構築した予測式を用いて予測した結果のマッピング手法を備えており、これにより鉄塔の腐食速度の予測を効率的に実施できる。
また、各部位のデータについて腐食速度を算出し、算出した腐食速度とその他のデータ(説明変数候補)との単相関係数を基に判断する手順は、1)各部位の腐食速度を算出する、2)各部位の腐食速度と各種データ(環境因子など)との相関係数を求める、3)各種データとの単相関係数の総和が最小となる部位のデータを予測に使用する、である。これにより予測式を最適な部位のデータに基づいて構築することができる。
また、離散値データ(汚損区分など)は境界線を等高線に見立て、各区分内の汚損度(=想定最大塩分付着密度)に傾斜をつけることでより現実に近い連続値とするので、鉄塔の立地位置の汚損区分の微妙な変化を重回帰分析に反映することができる。
また、必要最小限のデータから最大の効果を発揮するよう、各種クラスタリングの検討による領域最適化を行うので、解析領域の予測精度を向上させることができる。これにより対象領域に応じた領域分割による最適な予測式の構築ができる。
また、本発明で求めた腐食速度予測式に基づく、腐食速度予測マップを生成するので、鉄塔の腐食速度の予測を、効率的に、且つ精度良く実施することができる。
一般に、鉄塔の腐食速度予測には、各種影響因子(ぬれ時間、硫黄酸化物濃度等)を考慮した重回帰分析が適用される。しかし、目的変数と説明変数との間で線形性を前提とする重回帰分析では、腐食現象が持つ特異性からその精度向上が図れない結果も得られている。このため、本発明では、非線形分析手法を適用し、相互作用も加味することで精度の高い予測式を構築する。
今回、鉄塔の腐食速度予測を検討するにあたり、めっき膜厚調査データを利用した。めっき膜厚調査データとは、各鉄塔につき5部位(塔体上部、腕金部a、腕金部b、塔体中間部、最下節)における残存膜厚量(部材平均最小膜厚、部位平均膜厚)および経過年をまとめたものである。使用しためっき膜厚調査データは秋田県内の鉄塔137基および新潟県内の鉄塔376基、合計513基のデータである。
前述の通り、今回初期膜厚の想定が必要となった。そこで、「鋼道路橋塗装・防食便覧(日本道路協会)」IV62ページに示されている劣化度の評価基準を参考に劣化度ごとのめっき減耗率を想定し、初期膜厚および腐食速度を算出することとした。「鋼道路橋塗装・防食便覧(日本道路協会)」IV62ページ」に示されている劣化度分類、ならびにめっき減耗率を図2に示す。
初期膜厚の想定および腐食速度の算出方法は以下の通り。
1.図2の各劣化度に対し、想定減耗率を決定(今回は図2中のα1とした)
2.めっき膜厚調査データの残存膜厚から劣化度を想定し、想定めっき減耗率を決定
3.初期膜厚を算出
4.腐食速度を算出
1.各部位の腐食速度を算出する
2.各部位の腐食速度と各種データ(環境因子など)との相関係数を求める
3.各種データとの単相関係数の総和が最小となる部位のデータを予測に使用する
各データについて求めた単相関係数の絶対値を図3に示す。図3の通り、上記手順に基づき判断した結果、腕金部aの残存膜厚部材平均最小データから算出した腐食速度を使用することとした。
今回使用するデータの中に、汚損区分データがある。汚損区分データとは腐食の主要因の一つであると考えられている塩分による汚損の度合いを示すものであり、想定最大塩分付着密度(mg/cm2)を6段階評価したものである。
汚損区分データは6段階の離散値であるが、現実の状況を考えると汚損度(=想定最大塩分付着密度)が離散的に変化するのは不自然である。そこで汚損区分の境界線を等高線に見立て、各区分内の汚損度に傾斜をつけることでより現実に近い連続値とすることを試みた。
重回帰分析とは、ある変数y(目的変数と呼ぶ)とそれに影響を及ぼす変数xi(説明変数と呼ぶ)との間の関係式(モデルと呼ぶ)を統計的手法により求めるものである。これにより、各説明変数の寄与の度合いの評価や目的変数の予測が可能となる。
決定係数の一般的な定義は以下の通りである。
そこで正規分布から大きく外れていると思われるデータをはずれ値として除去し、除去後のデータを以降の検討のインプットとした。具体的には、95%の信頼区間の外にあるものをはずれ値とみなし除去した。はずれ値除去前後の目的変数のヒストグラムを図6に示す。図6(a)は、はずれ値除去前、図6(b)は、はずれ値除去後を示す。
今回鉄塔の腐食速度の予測に際し使用できるデータ(説明変数候補)は、標高、海岸距離の地形因子2種、気温、湿度(2種)、降水量、ぬれ時間(6種)、速度比(3種)、吹上角(3種)、二酸化硫黄濃度、汚損区分の環境因子18種および経過年の合計21種である。一般に説明変数を多く用いるほどモデルの当てはまり度は高くなるが、必ずしも全ての説明変数候補を利用することが良いわけではない。従って重回帰分析に利用する説明変数の組み合わせを検討する必要がある。また分析結果に悪影響を及ぼす多重共線性(通称マルチコと呼ばれる)を避ける必要がある。マルチコは非常に高い相関関係にある説明変数を用いることに起因するものであり、マルチコを避ける意味でも説明変数の選別は重要である。
1.目的変数および説明変数候補の全ての組み合わせの単相関係数を算出する
2.単相関係数の絶対値が0.9より大きい説明変数候補の取捨選択
単相関係数の絶対値が小さい方を説明変数候補から削除する
3.目的変数との単相関係数の絶対値の降順に説明変数を順位付ける
4.残った説明変数候補のうち3.の順位付けの上位5つを説明変数とする
重回帰分析の限界を把握する上で、上記手順にて選別した5つの説明変数の組み合わせの最適性を検証する必要がある。これについては後述する。
前節で選別した説明変数を用いて重回帰分析を実施した結果を図8に示す。
目的変数である腐食速度は、上記選択された説明変数(海岸距離、気温、ぬれ時間3、速度比.南西風、経過年数)の線形和で説明されることとなり、偏回帰係数が線形和の各項の重みを表す。したがって、鉄塔の腐食速度は以下の式で説明される。
また重回帰分析時に求まるこの式の決定係数は0.565となった。
上記の結果は、上記で選択した説明変数のみでモデルを構築した結果である。目的変数との相関係数が比較的高いもの上位5つを選択することとしたが、本手法による選択が最善であることは証明できない。また今回使用可能なデータの種類が多いことからも、上記説明変数が最適なものであるかを検証する必要がある。
予測式構築に用いる説明変数の選択については、Step−Wise法により、最適な予測式の構築に用いる説明変数の選択を行う仕組みを備えている。従って、劣化に影響を及ぼすと思しき新たな因子が出てきた場合、入力に追加し実行するだけで予測に有用な因子かどうかの判断ができる。
さらに各説明変数の相互作用を考慮に入れた。これは例えば環境因子と汚損度や時間が腐食現象に対し相乗効果を及ぼす可能性を想定してのことである。重回帰分析において、相互作用は説明変数の積として表現される。また今回何項の積まで検討した方が良いかについても、同様にStep−wise法を用いて検討した。具体的には、2項の積までを説明変数とした場合、3項の積までを説明変数とした場合と順次説明変数として検討する積の項の次数を上げモデルを構築、評価が上がらなくなる次数を求めた。
除かれた説明変数:気温、ぬれ時間3
追加された説明変数:相対湿度、降水量、速度比.西風、二酸化硫黄濃度、汚損区分.傾斜あり
相互作用の有効性:以下の相互作用がモデルに含まれることより、有効性が確認できる
A)海岸距離×二酸化硫黄濃度
B)降水量×汚損区分.傾斜あり
C)相対湿度×経過年
D)二酸化硫黄濃度×経過年
モデルの決定係数の向上:0.565→0.630
本データは塩分に関するデータであり塩分は汚損の主要因でもあるため、意味するものが汚損区分データと重複する恐れがある。そこで汚損区分との相関にも配慮しつつ、重回帰分析の説明変数として扱うべきか否かの判断を行う。図12に汚損区分および腐食速度と塩分に係る因子1〜3との単相関係数を示す。
図12から分かる通り、塩分に係る因子1と2は汚損区分と比較的相関がある。しかし単相関係数は0.6程度であり、同時に説明変数として扱っても問題ないと思われる。塩分に係る因子3については、さらに相関が低いためこちらも説明変数に追加して問題ない。一方、塩分に係る因子の3データのそれぞれの相関を見ると、塩分に係る因子1と2の単相関係数が0.9を超えている。したがってマルチコを生じる恐れがあるため、腐食速度との相関がより高い塩分に係る因子1を採用することとする。
また塩分に係る因子1と腐食速度との単相関係数は約0.17であり、汚損区分と腐食速度の単相関係数(約0.02)と比較すると非常に高い。単相関係数0.17という値は一般的には無相関と判断されるが、本件については使用できる他のデータの相関はさらに低いためより良いモデルの構築への貢献が期待できる。
図13からわかる通り塩分に係る因子1〜3を追加検討することにより、決定係数が0.630から0.639に向上した。また構築されたモデルに、塩分に係る因子3の項およびそれと速度比.南西風との相互作用の項が含まれている。以上のことより、塩分に係る因子を説明変数候補に加えることはモデルの精度向上に有効であることが確認された。
1)塩分に係る因子も説明変数として用いる
2)Step−wise法を用いて最適な説明変数の組み合わせを求める
3)説明変数間の相互作用も検討する
ハードクラスタリングにより分類された各クラスタのサンプル数を以下に示す。ハードクラスタリングについても、分類クラスタの最適な数も併せて検証するため、分類クラスタ数2、3、4について検証した。
[分類クラスタ数:2]
クラスタ1:210件
クラスタ2:112件
[分類クラスタ数:3]
クラスタ1:94件
クラスタ2:59件
クラスタ3:169件
[分類クラスタ数:4]
クラスタ1:51件
クラスタ2:100件
クラスタ3:88件
クラスタ4:83件
決定係数は以下の通りであり、分類クラスタ数が3の場合の結果が一番良い。分類クラスタ数が4の時には決定係数が下がっていることから、分類クラスタ数が3の時が最適な領域分割である。
[分類クラスタ数:2]
クラスタ1:0.618
クラスタ2:0.799
決定係数の平均:0.709
[分類クラスタ数:3]
クラスタ1:0.942
クラスタ2:0.690
クラスタ3:0.687
決定係数の平均:0.773
[分類クラスタ数:4]
クラスタ1:0.628
クラスタ2:0.654
クラスタ3:0.945
クラスタ4:0.786
決定係数の平均:0.753
全クラスタの決定係数の平均値で比較すると、ハードクラスタリングによる3クラスタに領域分割する方法が最良であった(決定係数:0.773)。そこで当該手法で作成したモデルに従い、秋田県、新潟県の腐食速度予測マップを作成した。予測地点は気象データと同様の1km間隔の点とし、各予測値点の所属クラスタは重心が最も近いクラスタとした。
クラスタリングを実施しない(1クラスタ)、2クラスタに分類、3クラスタに分類…と試行していき、全体的に決定係数の向上が見られなくなったところで、試行をやめ、最適なクラスタ数を求める方法を採用した。従って、この方法に従うことで、収集したデータ(もしくは対象とする地域)に適したクラスタ数を求めることができる。
図21にマップ作成に用いた式を示す。図21(a)は鉄塔腐食予測モデル(クラスタリングなし)を示す図、(b)は鉄塔腐食予測モデル(クラスタリングあり:3分類、クラスタ1)を示す図、(c)は鉄塔腐食予測モデル(クラスタリングあり:3分類、クラスタ2)を示す図、(d)は鉄塔腐食予測モデル(クラスタリングあり:3分類、クラスタ3)を示す図である。
クラスタリングを実施しない場合(図19(a)、図20(a))、主に内陸部においてAの領域がある。BとAでは1.0μm/Y程度の差があり、また1km間隔の予測値であることを考えると、不自然な予測結果であると思われる。一方、クラスタリングを施した場合(図19(b)、図20(b))このような不自然な結果は生じない。これはクラスタリングによる領域最適化により、各領域に適した予測式が構築されたことによるものと思われる。したがって、作成されたマップからもハードクラスタリングの腐食速度予測に対する有効性が確認できた。
1.鉄塔の腐食速度予測に関する検討
a.重回帰分析の精度向上(影響因子最適化等)とその限界把握
単相関係数を参考にした説明変数の選択からStep−wise法による説明変数の最適組み合わせの探索を行った。また説明変数の積として表現される相互作用も加味した検討を行った。
検討の結果、Step−wise法および相互作用の検討が有用であることが確認された。
b.塩分に係る因子の追加による精度向上検討
新たに入手可能となった影響因子(塩分に係る因子)の追加検討による精度向上について検討した。既に使用している汚損区分データとの重複(汚損区分との高い相関)が懸念されたが、同時に説明変数として扱っても問題ない程度の相関であった。また腐食速度との相関も他の説明変数候補に比較しやや高く、精度向上に貢献できることが確認できた。
以上のことから、鉄塔の腐食速度予測手法として以下の方針が最適であると判断した。
・Step−wise法による重回帰分析を採用する
・説明変数の相互作用(積の項)も検討する
・塩分に係る因子も説明変数として考慮する
a.ハードクラスタリングによる領域最適化
ハードクラスタリングについても、最適分類数の検討まで行った。同様に2〜4まで分類数を変えモデルを構築した結果、分類数3の場合が決定係数が最大となった。したがってハードクラスタリングの場合、最適分類数は3であると判断した。また決定係数も本発明で実施した全ての手法の中で最良であった。
まず、3クラスに分類したハードクラスタリングを行う(S10)。クラスタ毎に説明変数を選別するために、目的変数との相関上位5つを選別する(S11)。そのとき、説明変数同士の相関が高いものは、目的変数との相関が一番高いもの1つを残しその他は削除する。次に、選別された説明変数によるモデルを構築する。このとき各クラス毎にモデルを構築する(S12)。次に、各モデルをStep−wise法により更新する(S13)。次に予測地点の所属クラスタを決定する。このとき、各クラスタの重心からの距離により決定する(S14)。次に所属クラスタのモデルに従って予測する(S15)。そして、その予測値をGIS(Geographic Information System:文字や数値データ等を地図と結び付けて管理・分析・表示するシステム)に載せてマッピング化する(S16)。
Claims (9)
- 重回帰分析手段により複数の鉄塔の任意の部位に係る腐食速度を夫々予測し、該予測の結果をマッピング化して表示する劣化予測マッピング装置であって、
前記重回帰分析手段は、
前記鉄塔の腐食速度である目的変数に影響を与える変数である説明変数を入力する説明変数入力手段と、
該説明変数入力手段により入力された説明変数と前記腐食速度との関係式を構築する関係式構築手段と、
前記説明変数入力手段により入力された説明変数から何れか1つの説明変数を除いて構築した関係式の中で評価が最良なものを選択する選択変数関係式選択手段と、
前記説明変数入力手段により入力されていない説明変数のうち何れか1つの説明変数を加えて構築した関係式の中で評価が最良なものを選択する非選択変数関係式選択手段と、
前記選択変数関係式選択手段で選択された関係式及び前記非選択変数関係式選択手段で選択された関係式のうち評価が高い関係式を選択する関係式選択手段と、
前記関係式選択手段により選択された関係式と前記関係式構築手段により構築された関係式のうち何れの評価が高いかを検証する関係式検証手段と、を備え、
前記関係式検証手段で、前記関係式構築手段により構築された関係式より前記関係式選択手段により選択された関係式の方が評価が高いと検証された場合は、該関係式で選択した説明変数により再試行を行うことを特徴とする劣化予測マッピング装置。 - 説明変数入力手段、関係式構築手段、選択変数関係式選択手段、非選択変数関係式選択手段、関係式選択手段、及び関係式検証手段を備え、重回帰分析手段により複数の鉄塔の任意の部位に係る腐食速度を夫々予測し、該予測の結果をマッピング化して表示する劣化予測マッピング装置の劣化予測マッピング方法であって、
前記説明変数入力手段が、前記鉄塔の腐食速度である目的変数に影響を与える変数である説明変数を入力するステップと、
前記関係式構築手段が、前記説明変数入力手段により入力された説明変数と前記腐食速度との関係式を構築するステップと、
前記選択変数関係式選択手段が、前記説明変数入力手段により入力された説明変数から何れか1つの説明変数を除いて構築した関係式の中で評価が最良なものを選択するステップと、
前記非選択変数関係式選択手段が、前記説明変数入力手段により入力されていない説明変数のうち何れか1つの説明変数を加えて構築した関係式の中で評価が最良なものを選択するステップと、
前記関係式選択手段が、前記選択変数関係式選択手段で選択された関係式及び前記非選択変数関係式選択手段で選択された関係式のうち評価が高い関係式を選択するステップと、
前記関係式検証手段が、前記関係式選択手段により選択された関係式と前記関係式構築手段により構築された関係式のうち何れの評価が高いかを検証するステップから成り、
前記関係式検証手段で、前記関係式構築手段により構築された関係式より前記関係式選択手段により選択された関係式の方が評価が高いと検証された場合は、該関係式で選択した説明変数により再試行を行うことを特徴とする劣化予測マッピング方法。 - 前記説明変数入力手段により入力する説明変数を選別する手順は、前記目的変数及び前記説明変数の候補の全ての組み合わせの単相関係数を算出し、該単相関係数の絶対値が小さい方を前記説明変数候補から削除し、前記目的変数との単相関係数の絶対値の降順に前記説明変数を順位付け、残った前記説明変数候補のうち前記順位付けにより順位付けされた上位の所定数を説明変数とすることを特徴とする請求項2に記載の劣化予測マッピング方法。
- 前記鉄塔の複数の部位を調査したデータより前記腐食速度の関係式を構築するために最適なデータを決定するための判断手順は、腐食を予測する鉄塔の複数の部位の腐食速度を算出し、前記各部位の腐食速度と環境因子との単相関係数を求め、前記環境因子との単相関係数の総和が最大となる部位のデータを前記説明変数とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の劣化予測マッピング方法。
- 前記説明変数入力手段は、腐食の主要因の1つである塩分による汚損度を段階的に示す汚損区分データを前記説明変数に含ませ、該汚損区分の境界線を等高線と見做し、各汚損区分内の各位置の汚損度を、各等高線間の汚損度の差と各等高線間の距離とに基づく各等高線間の傾斜面上の対応点の値として扱うことを特徴とする請求項2、3又は4に記載の劣化予測マッピング方法。
- 前記重回帰分析において、前記環境因子と前記汚損度及び時間が腐食現象に対して相乗効果を及ぼす相互作用は、前記説明変数の積として表現することを特徴とする請求項5に記載の劣化予測マッピング方法。
- 前記鉄塔の腐食現象が、該鉄塔が配置された領域に特有の環境影響を受けるため、該領域をいくつかの部分集合に分類するクラスタリングにより前記領域の最適化を行うことを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の劣化予測マッピング方法。
- 前記クラスタリングにおいて、クラスタ数を変えながら関係式の構築・評価を行うことで最適な領域分割数を求めることを特徴とする請求項7に記載の劣化予測マッピング方法。
- 前記予測の結果をマッピング化する手順は、前記クラスタリングにより前記領域を最適な数の部分集合に分類し、該部分集合ごとに前記説明変数を選別して該説明変数による関係式を構築し、構築した各関係式を前記重回帰分析により更新し、予測地点の部分集合を決定し、決定した部分集合の関係式に従って予測し、予測した値に基づいて表示部にマッピング化することを特徴とする請求項7又は8に記載の劣化予測マッピング方法。
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