JP4594151B2 - 印刷用塗工紙及びその製造方法 - Google Patents
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Description
ーセル化処理した後、pH3〜12で50℃以上の温水を用いて温水処理した嵩高パルプを原紙に含有することにより、嵩高でありながら柔軟性及び表面強度などの印刷適性に優れることが開示されている(特許文献4)。しかしながら、印刷品質が不十分であり、マーセル化処理後に、更に温水で処理する後工程が必要であり、マーセル化パルプを効率よく
得られないという問題があった。
以上のように、従来の技術単独もしくは組み合わせだけでは、嵩高(低密度)でありながら柔軟性に優れ、印刷適性等の良好な印刷用塗工紙を効率良く得ることは困難であった。
本発明は、機械的処理をしたマーセル化パルプを特定量配合した原紙に、顔料と接着剤を含有する塗工層を設けた印刷用塗工紙である。
本発明のマーセル化パルプの製造方法について説明する。マーセル化パルプの原料パルプの材種は広葉樹であり、針葉樹では平滑性が悪化してしまう。広葉樹パルプとしては、亜硫酸塩パルプ化法(サルファイト法、SP法)または硫酸塩パルプ化法(クラフト法、KP法)で製造される化学パルプ、あるいはSPやKPを更に化学的精製を行い、α−セルロース含有量を高めた溶解パルプ(DP)を使用することが好ましい。
広葉樹パルプのマーセル化処理は、広葉樹パルプをアルカリ水溶液に浸漬して行うことができる他、噴霧等によりアルカリ水溶液を含浸させることによって行うこともできる。アルカリ水溶液としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物あるいは炭酸塩等のアルカリ水溶液を使用することが好ましく、強アルカリのものがより好ましい。マーセル化を進めるとパルプセルロースは著しく膨潤し、セルロースの結晶構造もセルロースIからアルカリセルロースI、そして更により安定的な結晶形であるアルカリセルロースIIへと変化する。このアルカリセルロースI及びIIは、洗浄・乾燥されることによってセルロースIIに変化する。また、セルロースIIは吸着性が増し、種々の試薬に対して反応しやすくなると言われている。本発明においては、十分な嵩高性を付与する上で、原料パルプ中のセルロースIIの含有量が50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%となるように、一連の処理を行うことが好ましい。マーセル化処理は公知の方法によって行えば良く、通常は、パルプをアルカリ水溶液中に浸漬し、室温で10分〜24時間程度処理すれば良い。
セルロースII含有量(%)=(I−II)/(III−II)×100
上記式中、IIは原料パルプ(セルロースI含有量100重量%)の2θ=19.8゜におけるバックグラウンドの強度を差引いた結晶性干渉強度、IIIは完全にマーセル化処理した試料(セルロースII含有量100%)の2θ=19.8゜におけるバックグラウンドの強度を差引いた結晶性干渉強度である。また、Iは測定しようとする試料の2θ=19.8゜における結晶性干渉強度である(北海道大学工学部研究報告No.75、p125)。水酸化ナトリウムを例に取ると、嵩高パルプ中のセルロースIIの含有量を50〜100重量%とするために必要なアルカリ水溶液の濃度は9重量%以上50重量%以下であり、好ましくは12〜25重量%である。なお、マーセル化処理がアルカリ水溶液の濃度が9重量%以上25重量%以下の場合には10〜40℃で行うことが好ましい。
パルプを処理した後のアルカリ水溶液は、必要に応じて濾過や遠心分離などによってパルプから分離し、再使用することができる。本発明においては、アルカリ水溶液によるマーセル化処理によって多量のアルカリ分が残存するので、水や酸水溶液による洗浄によってアルカリ分を除くことが好ましい。酸水溶液は、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸の鉱酸又はこれらの酸性塩、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛塩を水に溶解して調製される。
塗工層に用いる顔料として塗工紙用に従来から用いられている、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料であり、これらの顔料は必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することが出来る。
<評価方法>
(パルプ) 平均繊維長画像解析法(測定機器:ファイバーラボ、メッツオートメーション社製)で測定した重量の積算分布の50%に対する繊維長である。
(坪量) JIS P 8124:1998に従った。
(密度) JIS P 8118:1998に従った。
(裂断長) JIS P 8113:1998に従った
(柔軟性:ページのめくり易さ)白紙100枚をA5版サイズに断裁し、クリップを挟んで冊子のモデルを作成し、ページをめくった際のめくり易さを10人のモニターにより評価した。
◎非常に優れる、○優れる、△やや問題あり、×問題あり
(印刷光沢度) RI−II型印刷試験器を用い、東洋インキ株式会社製枚葉プロセスインキ(商品名TKハイエコー紅MZ)を0.3cc使用して印刷を行い、一昼夜放置後、得られた印刷物の表面をJIS P8142に基づいて測定した。
(表面強度) RI−II型印刷試験器を用い、東洋インキ株式会社製特殊インキ(商品名SMXタックグレード15)を0.4cc使用して印刷を行い、裏取りを行い、剥け状態を以下の基準で目視評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
〔マーセル化パルプIの調整〕 広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPと記述する)の未叩解品に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5固形分重量%となるように加え、回転数を100rpmに調節した二軸ニーダ(佐竹化学機械工業製)で混練しながらマーセル化処理した。処理時間は120分間であった。次に、75%メタノールで30分間2回洗浄し、硫酸及び酢酸でpH7に調整した後、乾燥してマーセル化パルプIを得た。得られたマーセル化パルプ1の平均繊維長は0.22mmであり、セルロースIIの含有率は100重量%であった。
〔マーセル化パルプIIの調整〕
二軸ニーダーの回転数を50rpmに調節して混練しながらマーセル化処理した以外はマーセル化パルプIと同様にしてマーセル化パルプIIを得た。得られたマーセル化パルプIIの平均繊維長は0.47mmであり、セルロースIIの含有率は100重量%であった。
〔マーセル化パルプIIIの調整〕
二軸ニーダ−で混練せずにマーセル化処理した以外はマーセル化パルプIと同様にしてマーセル化パルプIIIを得た。得られたマーセル化パルプIIIの平均繊維長は0.92mmであり、セルロースIIの含有率は100重量%であった。
〔マーセル化パルプIVの調整〕
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の未叩解品を原料にした以外はマーセル化パルプIと同様にしてマーセル化パルプIVを得た。得られたマーセル化パルプIVの平均繊維長は1.11mmであり、セルロースIIの含有率は100重量%であった。結果を表1に示した。
〔マーセル化パルプVの調整〕
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の未叩解品を原料とし、二軸ニーダ−で混練せずにマーセル化処理した以外はマーセル化パルプIと同様にして、マーセル化パルプVを得た。得られたマーセル化パルプVの平均繊維長は2.45mmであり、セルロースIIの含有率は100重量%であった。
[実施例1]
製紙用パルプとして上記マーセル化パルプI10部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、ろ水度410ml)90部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム15部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド0.6部、硫酸アルミニウム1.0部、歩留まり向上剤0.02部を添加した紙料を長網抄紙機で抄紙して坪量64g/m2の原紙を得た。
[実施例2]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプI20部、LBKP(ろ水度410ml)を80部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプI50部、LBKP(ろ水度410ml)を50部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例4]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプII10部、LBKP(ろ水度410ml)を90部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例5]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプII20部、LBKP(ろ水度410ml)を80部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例6]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプII50部、LBKP(ろ水度410ml)を50部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプIII10部、LBKP(ろ水度410ml)を90部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプIV10部、LBKP(ろ水度410ml)を90部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
製紙用パルプとしてマーセル化パルプV10部、LBKP(ろ水度410ml)を90部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例4]
製紙用パルプとしてLBKP(ろ水度410ml)を100部とし、填料としてホワイトカーボン(商品名:チキソレックス17、ローディア社製)12部含有した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例5]
製紙用パルプとしてLBKP(ろ水度410ml)を100部とし、嵩高剤(商品名:KB−115、花王(株)製)を1.0部含有した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例6]
製紙用パルプとしてLBKP(ろ水度410ml)を100部とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
次に実施例1から比較例6の印刷用塗工紙においてスーパーカレンダー処理しなかったものを実施例7から比較例12とした。
実施例1から比較例6の結果を表1に、実施例7から比較例12の結果を表2に示した。
Claims (2)
- 原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層を有する印刷用塗工紙において、前記原紙に、広葉樹の化学パルプを、固形分重量濃度9%以上50%以下のアルカリ水溶液中で、混練機を用いて機械的に撹拌処理することによって、平均繊維長を0.5mm以下とすると同時にマーセル化したパルプを全パルプ当たり10固形分重量%以上50固形分重量%以下で含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
- 原紙に顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工する印刷用塗工紙の製造方法において、広葉樹の化学パルプを、固形分重量濃度9%以上50%以下のアルカリ水溶液中で、混練機を用いて機械的に撹拌処理することによって、平均繊維長を0.5mm以下とすると同時にマーセル化したパルプを全パルプ当たり10固形分重量%以上50固形分重量%以下配合した原紙に、塗工液を塗工することを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。
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