JP4593712B2 - 無偏波分散型光モジュール、光アイソレータ及び光サーキュレータ - Google Patents

無偏波分散型光モジュール、光アイソレータ及び光サーキュレータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信、光計測等に使用する光アイソレータや光サーキュレータ等の光モジュール、特に偏光無依存型で無偏波分散型の光モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
偏波無依存型の光アイソレータは光信号を一方向にのみ通過させるような非相反機能をもつ光部品であり、光ファイバ増幅器の入出力部に使用されてきた。
【0003】
図6は従来の光アイソレータ30の構成を示す図である(特公昭60−51960号)。第1の複屈折結晶31、第1の磁気光学結晶34、第2の複屈折結晶32、第3の複屈折結晶33の順に配置され、その両側にレンズ35と光ファイバ36、37が配置される。
【0004】
複屈折結晶31、32、33は光の偏波方向によって光を分離、合成する機能を有する。ここで、第1の複屈折結晶31の厚みをtとすると、第2、第3の複屈折結晶32、33の厚みは等しく、t/√2の厚みで構成されている。
【0005】
また、分離、合成方向は複屈折結晶の結晶軸の方向により決定され、第1の複屈折結晶31の結晶軸に対し、第2の複屈折結晶32の結晶軸は45度の角度を持つように配置され、さらに第3の複屈折結晶33の結晶軸は第2の複屈折結晶32の結晶軸に対し90度の角度を持つように配置されている。磁気光学結晶34は、飽和磁界強度において所定の波長をもつ光の偏光面を45゜回転する厚みを持ち、リング状の磁石内に部品ホルダを介して配置される(図示せず)。
【0006】
光ファイバ36あるいは37から出射した光は、レンズ35によりほぼ等しいサイズのガウシアンビームのスポット半径Wで集光される。このときスポット半径Wと複屈折結晶31の厚みtは光アイソレータのアイソレーション特性を決定し、通常、十分なアイソレーションを得るように設計される。(1)式はWとtとアイソレーションIsの関係を示す式である。
【0007】
Is=−10×log(exp(−(t/10)2/W2)・・(1)
(1)式からわかるように、アイソレーションIsを大きくするためにはtを大きくするか、Wを小さくする方法がある。一般に複屈折結晶は厚みtが大きくなるほどコストが高くなり、また製品のサイズも大きくなり、実装コストもかかるなど、問題がある。従ってスポット半径Wを出来るだけ小さくすることにより高いアイソレーション特性を実現する方法が一般的である。
【0008】
図7、図8は従来の光アイソレータにおける光路と偏波方向について示す図である。なお、図中直線は光の偏波方向を表し、丸はビーム位置を表す。
【0009】
まず図7を用いて光ファイバ36から入射する順方向に進行する光について説明する。光ファイバ36から入射した光は第1のレンズ35により集光ビームとなり、第1の複屈折結晶31に入射する(A)。第1の複屈折結晶31により光は常光と異常光に分離される(B)。第1の磁気光学結晶34を通過することにより常光、異常光の偏波方向は反時計周りに−45度回転され第2の複屈折結晶32に入射する(C)。第2の複屈折結晶32に入射した2本の光の内、一方は複屈折結晶32で異常光となりシフトされる(D)。その後第3の複屈折結晶33に入射した光は、第2の複屈折結晶32でシフトされなかった光は異常光となりシフトされ合成される(E)。この合成された光が第2のレンズ35により集光され光ファイバ37から出射する。
【0010】
次に図8を用いて光ファイバ37から入射した逆方向に進行する光について説明する。光ファイバ37から入射した光は第2のレンズ35により集光ビームとなり、第3の複屈折結晶33に入射する(E)。第3の複屈折結晶33により光は常光と異常光に分離される(D)。第2の複屈折結晶32に入射した2本の光の内、常光は複屈折結晶32で異常光となりシフトされる(C)。次に第1の磁気光学結晶34を通過することにより常光、異常光の偏波方向は時計周りに45度回転され第1の複屈折結晶31に入射する(B)。その後第1の複屈折結晶31に入射した光の内、一方が異常光となりシフトされ(A)、この分離された光は第2のレンズ35によっても合成されず、光ファイバ36から出射しない。
【0011】
以上のようなことにより、光ファイバ36から入射した光は、その偏波状態に関係なく光ファイバ37から出射され、光ファイバ37から入射した光は、その偏波状態に関係なく光ファイバ3からは出射しないという光アイソレータの機能をもつことができる。
【0012】
さらに上記光アイソレータの偏波分散を改善した構成の光アイソレータも提案されている。偏波分散とは、光モジュールを伝搬する光の群速度が偏波方向によって変化する特性を言い、伝送される光パルスの広がり、すなわち伝送容量を決める重要な特性である。一般に高速、高密度の伝送システムに使用される光モジュールでは、偏波分散ゼロの設計が要求される。
【0013】
図6に示す光アイソレータにおいては、分離、合成された2つの光の光路長が異なるため、偏波分散が発生する。さらに詳しく説明すると、第2の複屈折結晶と第3の複屈折結晶は厚みが等しく、かつ光学軸が互いに直交しているため、これらの2つの複屈折結晶によって発生する偏波分散はゼロである。従って、第1の複屈折結晶31での常光と異常光の群速度の差が偏波分散となる。
【0014】
この分散を補償するために、分散補償用の複屈折結晶1枚を光路上に配置する。
【0015】
図9は従来の無偏波分散型光アイソレータ39の構成を示す図である。図6に示す光アイソレータに偏波分散補償用複屈折結晶38を光路上に配置した構成で、分散補償用複屈折結晶38は他の複屈折結晶とは異なり、光を分離、合成せず、光の偏波方向によって群速度が異なるように配置する。具体的には、光を分離合成する他の複屈折結晶は、光の分離角を最大にするために光学軸を光線入射方向(Z軸方向)に対し48度傾斜させて構成するのに対し、偏波分散補償用複屈折結晶38はその光学軸を光線入射方向に対し90度の角度で、かつ複屈折結晶31の光学軸に対して90度の角度で配置する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図6に示す従来の光アイソレータ30では、常光と異常光に分離、合成され光ファイバ37から出射されるが、その際常光と異常光は光路長が異なり偏波分散が発生するという課題があった。
【0017】
また図9に示す従来の無偏波偏波分散型光アイソレータ39では、一般に複屈折結晶においては異常光線の入射角度によって屈折率が異なるため、集光ビームに複屈折結晶を挿入すると異常光線が一点に集光しなくなり、収差が発生する。さらにここではビーム分離用の複屈折結晶31で発生する収差と、偏波分散補償用複屈折結晶38で発生する収差の大きさが異なるため、ビームが合成されて光ファイバ37に結合する際、偏波分散は補償されるが、収差は補償されずに光モジュールの挿入損失が増加するという課題があった。
【0018】
この収差の差異の現象は、ビーム分離用の複屈折結晶31の結晶軸が光線入射方向(Z軸方向)に対し48度に設定されているのに対し、偏波分散補償用複屈折結晶38の光学軸は光線入射方向(Z軸方向)に対し90度の角度に設定されているため、同じ入射角の異常光線に対して屈折率、屈折角が異なることによるものである。
【0019】
また集光スポット径を大きくすると、光線の入射角は小さくなるため収差は低減し挿入損失は低くなるが、十分なアイソレーション特性を得るためには、複屈折結晶の厚みを厚くする必要がありコストが増大し、さらに装置が大型化する課題があった。
【0020】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、外形を小型化し、挿入損失の低減された、偏波分散が無い光モジュールを提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明はこれらの課題を解決するためのものであり、一方から入射し、互いに直交する偏波成分を有する入射光線中の常光および異常光を異なる光路に分離する一方の複屈折結晶板と、分離された前記常光および前記異常光を同一光路に合成する他方の複屈折結晶板とを備えた光モジュールにおいて、前記一方の複屈折結晶板と前記他方の複屈折結晶板との間に、偏波分散補償手段として互いの厚さが等しくかつビームのシフト方向が逆方向になるように隣接させた2枚の複屈折結晶板を更に配置したことを特徴とする。
【0022】
また本発明の光アイソレータは、上記無偏波分散型光モジュールの前記一方の複屈折結晶板と前記他方の複屈折結晶板との間に、前記常光および前記異常光の偏波方向を回転させる磁気光学結晶が更に配置されたことを特徴とする。
【0023】
さらに本発明の光サーキュレータは、上記無偏波分散型光モジュールの前記一方の複屈折結晶板と前記他方の複屈折結晶板との間に配置された前記常光および前記異常光の偏波方向を回転させる2枚の磁気光学結晶と、該磁気光学結晶の間に配置された前記異常光をシフトさせる合成複屈折結晶とを更に備えたことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光モジュールについて説明する。
【0025】
図1は本発明の光モジュールの一例である光アイソレータ10の実施形態を示す構成図である。光ファイバ1から出射した光線はレンズ3を透過し、第1の複屈折結晶4、第1、第2の分散補償用複屈折結晶5、6、磁気光学結晶7、第3、第4の複屈折結晶8、9を透過して光ファイバ2に入射する。
【0026】
ここで、通常の屈折の法則に従う光線は常光線、従わないものは異常光線と呼び、XY平面上の結晶軸の方向に平行な偏波光線は異常光線、垂直な偏波光線は常光線として動作し、異常光線は結晶軸の方向にシフトする。
【0027】
複屈折結晶4、5、6、8、9に示される矢印は結晶軸の方向を表し、すべての複屈折結晶の結晶軸は最大のビーム分離角となるように設定されている。光線入射方向(Z軸方向)と結晶軸のなす角をθ、異常光線のビームシフト方向と結晶軸のなす角をφ、常光屈折率をno、異常光屈折率をneとすると、θとφは(2)式に示す関係にある。
【0028】
tanφ=(no2/ne2)×tanθ ・・・(2)
(2)式よりビーム分離角が最大、すなわち(θ−φ)が最大となる結晶軸方向は決定される。例えば、ルチル結晶の場合、no=2.45、ne=2.71であり、(2)式よりビーム分離角(θ−φ)が最大となる結晶軸方向θ=47.8度と計算できる。なおこの時ビーム分離角(θ−φ)=5.7度となる。
【0029】
次にXY平面上での各複屈折結晶の結晶軸方向について説明する。第1の複屈折結晶4はY軸方向に結晶軸を有し、第1の分散補償用複屈折結晶5と第2の分散補償用複屈折結晶6の結晶軸は、第1の複屈折結晶4の結晶軸に対し90度ずらして配置される。かつ、第2の分散補償用複屈折結晶6は、第1の分散補償用複屈折結晶5をX軸を中心に180度回転させた状態の結晶軸方向とする。このように結晶軸方向を配置することにより、第1の分散補償用複屈折結晶5と第2の分散補償用複屈折結晶6のビームシフト方向は逆方向となる。
【0030】
次に第2の複屈折結晶8は第1の複屈折結晶4の結晶軸に対し45度ずらして配置され、さらに第3の複屈折結晶9は第2の複屈折結晶8に対し90度ずらして配置される。このように結晶軸を配置することにより第1の複屈折結晶4で分離されたビームは、第2、第3の複屈折結晶8、9で合成される。
【0031】
次に各結晶の厚みについて説明する。第1の複屈折結晶4の厚みtとすると、第1、第2の偏波分散補償用複屈折結晶5、6の厚みは互いに等しく、t/2とする。第3、第4の複屈折結晶8、9の厚みは互いに等しく、t/√2とする。また、磁気光学結晶7の厚みは飽和磁界中において偏光が45度回転する厚みに設定されている。
【0032】
図2、図3は本発明の光アイソレータにおける光路と偏波方向について示す図である。なお、図中直線は光の偏波方向を表し、丸はビーム位置を表す。
【0033】
まず図2を用いて光ファイバ1から入射する順方向に進行する光について説明する。光ファイバ1から入射した光は第1のレンズ3により集光ビームとなり、第1の複屈折結晶4に入射する(A)。第1の複屈折結晶4により光は常光と異常光に分離される(B)。第1の偏波分散補償用複屈折結晶5では第1の複屈折結晶4での常光が異常光となりシフトする(C)。さらに第2の偏波分散補償用複屈折結晶6では異常光のままビームはシフトするが、シフト方向は第1の偏波分散補償用複屈折結晶と逆方向となり、ビームの位置、偏波方向は第1の複屈折結晶4を透過した状態(B)同じで、常光、異常光の光路長も等しくなり、複屈折結晶4で発生した偏波分散が補償される(D)。その後、第1の磁気光学結晶7を通過することにより常光、異常光の偏波方向は反時計周りに−45度回転され第2の複屈折結晶8に入射する(E)。第2の複屈折結晶8に入射した2本の光の内、一方は複屈折結晶8で異常光となりシフトされる(F)。第3の複屈折結晶9に入射した光は、第3の複屈折結晶8でシフトされなかった光が異常光となりシフトされ2本の光は合成される(G)。この合成された光が第2のレンズ3により集光され光ファイバ2から出射する。
【0034】
次に図3を用いて光ファイバ2から入射した逆方向に進行する光について説明する。光ファイバ2から入射した光は第2のレンズ3により集光ビームとなり、第3の複屈折結晶9に入射する(G)。第3の複屈折結晶9により光は常光と異常光に分離される(F)。第2の複屈折結晶8に入射した2本の光の内、常光は複屈折結晶8で異常光となりシフトされる(E)。次に第1の磁気光学結晶7を通過することにより常光、異常光の偏波方向は時計周りに45度回転され、第2の偏波分散補償用複屈折結晶6に入射する(D)。第2の偏波分散補償用複屈折結晶6では第2の複屈折結晶8での異常光が異常光となりシフトする(C)。さらに第1の偏波分散補償用複屈折結晶5では異常光のままビームはシフトするが、シフト方向は第2の偏波分散補償用複屈折結晶6と逆方向となり、ビームの位置、偏波方向は第2の偏波分散補償用複屈折結晶6に入射する状態(D)同じなり第1の複屈折結晶4に入射する(B)。その後第1の複屈折結晶4に入射した光の内、一方が異常光となりシフトされ(A)、この互いに分離された光は第1のレンズ3によっても合成されず、光ファイバ1から出射しない。
【0035】
以上のようなことにより光ファイバ1から入射した光は、その偏波状態に関係なく光ファイバ2から出射され、光ファイバ2から入射した光は、その偏波状態に関係なく光ファイバ1からは出射しないという光アイソレータの機能をもつことができる。また、分散補償用複屈折結晶5、6を光路上に挿入することにより、2本の分離合成される2本のビームの光路長は等しくなり、偏波分散が補償された無偏波分散型の光アイソレータが実現する。
【0036】
図4は複屈折結晶で発生する収差スポット形状を説明する図である。なお図中の矢印は複屈折結晶の結晶軸方向を表す。
【0037】
図4においては偏波分散補償に関係する複屈折結晶4、偏波分散補償用複屈折結晶5、6を集光ビーム11が透過した場合の、焦点位置でのスポット形状を(A)(B)(C)(D)に示す。(A)はカウシアン分布の集光ビームを表し、(B)のスポット形状はガウシアン分布の集光ビーム11に複屈折結晶4のみを挿入した場合、(C)のスポット形状は集光ビーム11に複屈折結晶4、偏波分散補償用複屈折結晶5を挿入した場合、(D)のスポット形状は集光ビーム11に複屈折結晶4、偏波分散補償用複屈折結晶5および6を挿入した場合のスポット形状を表す。なおスポット形状は、赤外線カメラで観察した。
【0038】
複屈折結晶板4に入射したガウシアンビーム(A)は常光と異常光に分離される。ここで異常光の屈折率は複屈折結晶の結晶軸と光線の進行方向によって変わるため、ビームの入射角度によって屈折方向が異なり、そのため異常光線は1点には集光せず、X、Y、Z軸方向に不均一な焦点を結ぶこととなる。つまり、角度を持って集光する集光ビームの場合は、複屈折結晶4を透過した後は、1点に集光せずに非点収差が発生し、楕円のビーム形状となる(B)。一方常光は複屈折結晶を進む方向によって屈折率は異ならないため、非点収差は発生せず真円のビーム形状のままである(B)。次に偏波分散補償用複屈折結晶5および6は、複屈折結晶4に対して常光が異常光となり、異常光が常光となるように結晶軸を90度ずらしてある。さらに、偏波分散補償用複屈折結晶5と6を足し合わせた厚みは、複屈折結晶4の厚みと等しく、その結晶軸が相対して配置されている。従って、偏波分散補償用複屈折結晶5と6を透過した光の出射位置は、入射位置と同じくなり、また異常光は複屈折結晶4で生じた異常光のビーム形状に対して90度回転した楕円形状となる(D)。
【0039】
このように複屈折結晶4、偏波分散補償用複屈折結晶5、6を透過、分離した2つのビームはそれぞれ90度ずれた方向の非点収差が発生するため、この2つのビームが合成されると互いの収差はあい消し合って補償され、非点収差のないビームなる。従って光ファイバとの結合効率も向上し、挿入損失の小さい光モジュールが実現する。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。図5は本発明の光モジュールの一例である光サーキュレータ20の実施形態を示す構成図である。
【0041】
2本の光ファイバ12、14と1本の光ファイバ13の間に集光レンズ15、16が配置されており、さらに集光レンズ15と16の間に複屈折結晶と磁気光学結晶からなる非相反部17が挿入されている。非相反部17は非相反にビームをシフトさせる機能をもっているため、光ファイバ12から出力された光は光ファイバ13に入力し、光ファイバ13から出力した光は光ファイバ12には戻ることなく光ファイバ14に入力されることから、3ポート光サーキュレータの機能を得ることができる。また光ファイバ12、14と集光レンズ15からなる光結合系と、光ファイバ13と集光レンズ16からなる光結合系はスポット直径等しく構成される。
【0042】
次に非相反部17について説明する。非相反部17は第1、第2の複屈折結晶18、19と、2枚の複屈折結晶を張り合わせた合成複屈折結晶21と、第1、第2の磁気光学結晶22、25と、第1、第2の偏波分散補償用複屈折結晶板23、24からなる。
【0043】
第1、第2の複屈折結晶18、19は入射光線を常光線と異常光線に分離、合成する機能を持ち、光線分離合成手段として機能する。合成複屈折結晶20は異常光として入射した光線をシフトさせる機能を持ち、光路決定手段として機能する。複屈折結晶18と複屈折結晶板19は結晶軸を相反する方向にして配置し、また合成複屈折結晶21は2枚の複屈折結晶の結晶軸を相反する方向でかつ張り合わせ面と結晶軸が水平になるように配置している。
【0044】
合成複屈折結晶21のZ軸方向の厚みをtとすると、複屈折結晶18、19の厚みはt/√2倍の厚みになっている。複屈折結晶18、合成複屈折結晶21、複屈折結晶19の間には複屈折結晶18及び19の間には、それぞれ偏光回転方向がZ軸に対して時計回りに45度回転する厚みの磁気光学結晶22と、偏光回転方向がZ軸に対して反時計回りに−45度回転する厚みの磁気光学結晶25を配置している。さらに、常光と異常光の光路長差を補償する機能を有する偏波分散補償用複屈折結晶23、24は、合成複屈折結晶21の後に配置する。
【0045】
ここで偏波分散補償用複屈折結晶23および24は、合成複屈折結晶21に対して常光が異常光となり、異常光が常光となるように結晶軸を90度ずらしてある。かつ、第2の偏波分散補償用複屈折結晶24は、第1の偏波分散補償用複屈折結晶23をX軸を中心に180度回転させた状態の結晶軸方向とする。このように結晶軸方向を配置することにより、第1の偏波分散補償用複屈折結晶23と第2の偏波分散補償用複屈折結晶24のビームシフト方向は逆方向となる。さらに、偏波分散補償用複屈折結晶23と24を足し合わせた厚みは、合成複屈折結晶21の厚みと等しくしてある。
【0046】
従って、偏波分散補償用複屈折結晶23と24を透過した光の出射位置は入射位置と変わりなく、また合成複屈折結晶21で生じた常光と異常光の光路長差はゼロとなり、偏波分散が補償された無偏波分散型の光サーキュレータが実現する。
【0047】
以上の光サーキュレータ20によれば、偏波分散がゼロで複屈折結晶による非点収差の発生がない、挿入損失の低減された光サーキュレータが実現する。
【0048】
なお、以上説明した偏波分散補償手段は、上記光アイソレータ、光サーキュレータの構成に限ることなく、2つの偏波を分離合成する機能を有する偏波コンバイナ/スプリッタや、光アイソレータに励起光入射ポートやモニタポートを複合化した複合モジュール等、偏波分散の発生の原因となる複屈折結晶板を有する光モジュールに適用することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0049】
【実施例】
本発明の光モジュールの実施例として図5に示した3ポート光サーキュレータの試作を行った。それぞれの部品に使用した製品、構成について説明する。
【0050】
光ファイバ12、13、14はスポット直径=10μmのシングルモード光ファイバで、125μmピッチの2芯フェルールに光ファイバ12、14を固定し光入出射端面に研磨加工を施したものを、1芯フェルールに光ファイバ13を固定し光入出射端面に研磨加工を施したものを用いた。集光レンズ15、16には倍率が2倍の非球面レンズを用い、レンズと光ファイバからなる光結合系はスポット直=20μmの集光ビームで構成した。
【0051】
非相反部17の各複屈折結晶18、19、21、23,24にはルチル結晶を、磁気光学結晶22、25にはビスマス置換ガーネット結晶を使用した。具体的な設計値としては、光ファイバ12と14の間隔=125μm、光結合系の倍率=2倍とし、非相反部17によるビームシフト量=250μmで設計した。一般にルチル結晶のビーム分離幅はその厚みtの1/10であるので、ビームシフト量=250μmを実現するために、ルチル結晶18、19の厚みは約1.8mm、合成ルチル結晶21の厚みは約2.5mm、偏波分散補償用ルチル23、24の厚みは等しく約1.25mmと設計した。
【0052】
本実施例にて光サーキュレータを試作し評価した結果、光ファイバ12から光ファイバ13への挿入損失、および光ファイバ13から光ファイバ14への挿入損失は共に0.4dB程度であり、従来の1枚構成の偏波分散補償方式に比較して0.3dB以上の挿入損失低減の効果があった。
【0053】
また、光ファイバ13から光ファイバ12へのアイソレーション、光ファイバ14から光ファイバ13へのアイソレーションは共に50dB以上と、3ポート光サーキュレータとして非常に良好な特性を得ることができた。さらに偏波分散は0.01psとなり、一般要求される偏波分散値<0.1psを十分に満足する結果となった。
【0054】
なお本実施例にて使用したレンズは非球面レンズであるが、ボールレンズ、半球レンズ、ロッドレンズ等でも同様の機能を得ることができる。また非相反部における複屈折結晶として用いられる材料としては、方解石、ルチル、LN結晶、イットリウムバナデイドなどが挙げられる。結晶の厚みは、例えばルチルを使用する場合には、所望するビーム分離幅に対して約10倍の厚みとなる。また磁気光学結晶にはビスマス置換ガーネット結晶、YIG結晶などが用いられる。磁気光学結晶の厚みは、入射光線の進行方向に飽和磁界を印可した場合に、入射光線の偏光面が45度回転するように設定する。飽和磁界を印可する手段としては通常永久磁石、たとえばSmCo磁石等を用いる(図示せず)。また、磁気光学結晶に自己バイアス型のビスマス置換ガーネット結晶などを用いた場合、磁石は不要であり、さらに小型化が実現する。
【0055】
【発明の効果】
発明によれば、少なくとも2以上の光ファイバの端面間に少なくとも1以上の複屈折結晶板が配置された光モジュールの偏波分散補償手段として、互いの厚さが等しくかつビームのシフト方向が逆方向の2枚の複屈折結晶板を備えたことによって、偏波分散を極めて小さくするとともに、挿入損失を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光アイソレータの実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の光アイソレータにおける光路と偏波方向について示す図である。
【図3】本発明の光アイソレータにおける光路と偏波方向について示す図である。
【図4】複屈折結晶で発生する収差スポット形状を説明する図である。
【図5】本発明の光サーキュレータの実施形態を示す構成図である。
【図6】従来の光アイソレータの構成を示す図である。
【図7】従来の光アイソレータにおける光路と偏波方向について示す図である。
【図8】従来の光アイソレータにおける光路と偏波方向について示す図である。
【図9】従来の無偏波分散型光アイソレータの構成を示す図である。
【符号の説明】
1、2、12、13、14、36、37:光ファイバ
3、15、16、35:レンズ
4、8、9、18、19、31、32、33:複屈折結晶
21:合成複屈折結晶
5、6、23、24、38:偏波分散補償用複屈折結晶
7、22、25、35:磁気光学結晶
11:光線
10、30、39:光アイソレータ
20:光サーキュレータ
17:非相反部

Claims (3)

  1. 一方から入射し、互いに直交する偏波成分を有する入射光線中の常光および異常光を異なる光路に分離する一方の複屈折結晶板と、分離された前記常光および前記異常光を同一光路に合成する他方の複屈折結晶板とを備えた光モジュールにおいて、前記一方の複屈折結晶板と前記他方の複屈折結晶板との間に、偏波分散補償手段として互いの厚さが等しくかつビームのシフト方向が逆方向になるように隣接させた2枚の複屈折結晶板を更に配置したことを特徴とする無偏波分散型光モジュール。
  2. 請求項1記載の無偏波分散型光モジュールの前記一方の複屈折結晶板と前記他方の複屈折結晶板との間に、前記常光および前記異常光の偏波方向を回転させる磁気光学結晶が更に配置されたことを特徴とする光アイソレータ。
  3. 請求項1記載の無偏波分散型光モジュールの前記一方の複屈折結晶板と前記他方の複屈折結晶板との間に配置された前記常光および前記異常光の偏波方向を回転させる2枚の磁気光学結晶と、該磁気光学結晶の間に配置された前記異常光をシフトさせる合成複屈折結晶とを更に備えたことを特徴とする光サーキュレータ。
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