JP4592609B2 - 通信ケーブル固定具 - Google Patents

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Description

本発明は、通信ケーブル固定具に係り、特に、エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを壁体に固定させる通信ケーブル固定具に関する。
オフィスビルやマンション等の建物では、建物内の各端末の利用者に対してブロードバンド通信サービスを行うため、例えば、光ケーブルなどの通信ケーブルの配線や通信機器等の設置を行うのが一般的である。この通信ケーブルの建物の水平方向の配線(横配線)は、通常、天井裏配線や電話用配管等を利用する。一方、建物の上下方向の配線(縦配線)は、通常、建物内共有部(配管、機械室等)に設けられたケーブルラックを利用するのが一般的である。
この通信ケーブルの縦配線に、建物のエレベータ昇降路内を利用することが可能である。すなわち、建物外部の電柱や地下から建物内に引き込まれた通信ケーブルは、昇降路の竪穴を利用し、その壁面に沿って敷設されて各階ごとに分配される。さらに、横配線により各利用者の端末へと配線される。特に、既設の建物に新たに通信ケーブルを敷設する場合、建物のエレベータ昇降路内は、他の配線や配管からの制約もなく比較的容易に配線できるという利点がある。この昇降路内に縦配線される通信ケーブルは、通信ケーブル固定具により、敷設方向に所定の間隔で壁体に固定される。
本来、エレベータの昇降路は、エレベータかごの走行用であることから、昇降路内での通信ケーブルの敷設には、従来の通信ケーブルの縦配線にはない制約が発生する。第一の制約は、「通信ケーブルは、エレベータかごに接触しないように敷設しなければならない」という点である。これは、従来の建物内共有部を利用した縦配線では、通信ケーブルを保護するケーブルラックを用いて配線していたため、問題とならなかった点である。通信ケーブルがエレベータかごに接触するとエレベータの走行に支障をきたす。そのため、通信ケーブルは、昇降路内の一定の範囲内に収めるべく、後述するガイドケーブルを利用して敷設されるのが一般的である。
第二の制約は、「通信ケーブル自体に脱落や損傷といった異常が発生しないように敷設しなければならない」という点である。これは、従来の建物内共有部を利用した縦配線では、通信ケーブルを保護するケーブルラックを用いて配線していたため、問題にはならなかった点である。通信ケーブル自体に脱落や損傷といった異常が発生すると、最悪の場合には、建物内の利用者の通信手段が遮断される。そのため、通信ケーブルは、後述するガイドケーブルを利用して敷設されるのが一般的である。
図6に、従来の昇降路内での通信ケーブルの敷設に用いるガイドケーブル固定具20の概略の正面図を示す。ガイドケーブル18は、通信ケーブル2の敷設される範囲を含むように壁面5に沿って配置される。このガイドケーブル18は、その上下端においてガイドケーブル固定具20に接続される(図6では、ガイドケーブル18の下端のガイドケーブル固定具20のみを示す)。ガイドケーブル固定具20は、溶接で組み合わされた形鋼21及び形鋼23から成り、ボルト22により壁面5に固定される。さらに、ガイドケーブル18にはターンバックル19等の長さ調節機構が備えられ、ガイドケーブル18に張力が導入される。通信ケーブル2の束は、所定の間隔で通信ケーブル固定具24によりガイドケーブル18と抱き合わされて、ボルト25により壁体に固定される。この従来の通信ケーブル固定具24は、例えば、通信ケーブル2とガイドケーブル18とを巻きつける簡易なプレートあるいはワイヤーから成る。
特許文献1及び特許文献2に示すように、種々の通信ケーブル固定具により床面上に固定する方法が開示されている。
特開2002−372633号公報 特開2004−133082号公報
従来の通信ケーブル固定具では、通信ケーブルが、隣接する通信ケーブル固定具の間において昇降路内にはらみ出す場合がある。その要因には、通信ケーブルの自重あるいは昇降路内でのエレベータの走行により発生する風圧力(特に、壁面に対する負圧)がある。この通信ケーブルの自重や風圧力により、固定具において通信ケーブルと固定具の間ですべりが発生し、通信ケーブルが昇降路内部に向かってはらみ出す。このはらみ出しは、いったん発生すると次第に成長していく。このはらみ出しが壁面から所定の間隔を超えると、昇降路内のエレベータかごに接触し、エレベータかごの走行に支障をきたす結果となる。
また、従来の通信ケーブル固定具では、通信ケーブル自体に脱落や損傷等の異常が発生する場合がある。その要因には、上述した風圧力がある。すなわち、通信ケーブルが風圧力(特に、壁面に対する負圧)によりあおられて、繰り返し振動する。その結果、通信ケーブル固定具において通信ケーブルを巻きつけるプレートやワイヤーの疲労破壊、あるいは破損により通信ケーブルが損傷する結果となる。また、他の要因には、地震発生時における地震動がある。すなわち、地震動により通信ケーブルが壁体と異なる周期で振動し、通信ケーブルが「暴れる」状況が発生することによる。その結果、通信ケーブル固定具において通信ケーブルを巻きつけるプレートやワイヤーの伸び変形、あるいは破損により通信ケーブルが脱落する結果となる。
また、通信ケーブルが上述した振動によりコンクリート面と擦れ合うことで、ケーブル自体が損傷を受け、その機能が阻害される場合がある。通信ケーブルの芯線は、被覆材により保護されているが、壁面は、通常、仕上げされていないコンクリート打設面でありその表面は粗面である。その粗面に通信ケーブルが繰り返し接触することで損傷が発生する。この通信ケーブルの損傷により、通信ケーブルによる通信に異常が発生し、最悪の場合には通信が遮断される結果となる。
上述した、通信ケーブルのはらみ出しによるエレベータかごとの接触、あるいは通信ケーブル自体の脱落や損傷等の異常が発生した場合には、エレベータかごの走行を停止するか減速するかして点検及び修理を行わなければならず、建物におけるエレベータ利用のサービスの低下を招く結果となる。
また、通信ケーブル自体に脱落や損傷等の異常が発生した場合には、昇降路内の通信ケーブルの取替えをしなければならず、建物内の端末利用者への通信サービスの低下を招く結果となる。
本願の目的は、かかる課題を解決し、通信ケーブルのはらみ出しによるエレベータかごとの接触を防止し、通信ケーブル自体の脱落や損傷等を防止する通信ケーブル固定具を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係る通信ケーブル固定具は、エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを、敷設方向に所定の間隔で壁体に固定する通信ケーブル固定具であって、通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込む押え材と、通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込み、その両端が、それぞれ押え材の端部近傍を貫通して固定され、張力導入可能な長さ調節機構を有する緊張材と、押え材の両端を壁体に固定する固定部と、を備え、緊張材に発生した張力が、並置された通信ケーブルの中心を結ぶ線に対して斜め方向に作用するように、押え材と緊張材とを斜め方向に交差させて通信ケーブルを締め付けることを特徴とする。
また、本発明に係る通信ケーブル固定具は、エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを、敷設方向に所定の間隔で壁体に固定する通信ケーブル固定具であって、通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、通信ケーブルの束のうち中間部の選択された通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込む押え材と、通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込み、その中間部の選択された通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、その両端が、それぞれ押え材の端部近傍を貫通して固定され、張力導入可能な長さ調節機構を有する緊張材と、押え材の両端を壁体に固定する固定部とを備え、緊張材に張力を導入することで、押え材と緊張材とが協働して通信ケーブルを締め付けることを特徴とする。
また、本発明に係る通信ケーブル固定具は、エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを、その両端を壁体に固定されたガイドケーブルと連結して敷設方向に所定の間隔で壁体に固定する通信ケーブル固定具であって、通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、ガイドケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込む押え材と、通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込み、ガイドケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、その両端が、それぞれ押え材の端部近傍を貫通して固定され、張力導入可能な長さ調節機構を有する緊張材と、押え材の両端を壁体に固定する固定部とを備え、緊張材に張力を導入することで、押え材と緊張材とが協働して通信ケーブルを締め付けることを特徴とする。
また、上記通信ケーブル固定具は、押え材と緊張材とにより締め付けられる通信ケーブルは、通信ケーブル固定具の両端の固定部を結ぶ方向に一列に並置されていることが好ましい。
また、上記通信ケーブル固定具は、通信ケーブルは、隣接する通信ケーブル固定具の間において、ガイドケーブルに対して螺旋状に巻きついて敷設されることが好ましい。
さらに、上記通信ケーブル固定具は、押え材及び緊張材の通信ケーブルと接触する表面には、高摩擦材が貼り付けられていることが好ましい。
以上のように、本発明に係る通信ケーブル固定具によれば、通信ケーブルは、押え材と緊張材により一体として包み込まれ、緊張材の張力導入により締め付けられる。この締付力により、通信ケーブル固定具において、通信ケーブルと押え材及び通信ケーブルと緊張材とのそれぞれの接触部分に摩擦力が発生する。また、この締付力により、通信ケーブル相互が接触しその接触部分にも摩擦力が発生する。これらの摩擦力により、通信ケーブルの自重およびエレベータかごの走行により発生する風圧力による通信ケーブルのはらみ出しを事前に防止することが可能となる。さらに、通信ケーブルと接触する押え材及び緊張材の表面に高摩擦材を貼り付けることで、締め付けの効果をより高めることが可能となる。
また、緊張材は、通信ケーブルの束を壁面側から昇降路側に向かって包み込む。このことで、通信ケーブルと昇降路の壁面とが、少なくとも緊張材の厚みだけ離間し、壁面と直接接触することを防ぐことが可能となる。さらに、後述するように、緊張材の張力導入により、通信ケーブルの束が壁面から浮き上がり、壁面からさらに間隔をおいて敷設され得る。これにより、通信ケーブル自体の壁面との擦れによる損傷を事前に防ぐことが可能となる。
また、通信ケーブルを押え材及び緊張材により締め付けることで、通信ケーブル固定具における締め付けの固定度を上げることができる。このことは、エレベータかごの走行による風圧力や地震動により発生する通信ケーブルの振動に対し、固定具におけるケーブルの変位(あばれ)を抑えることができ、固定具に生じる伸び変形、疲労破壊、あるいは破損を防止することが可能となる。また、通信ケーブルと接触する押え材及び緊張材の接触部分に高摩擦材を貼り付けることで、通信ケーブルの振動エネルギを吸収することができ衝撃力よる固定具の破損等を防止することが可能となる。
また、通信ケーブルの本数が少ない場合等には、通信ケーブルを、通信ケーブル固定具の両端の固定部を結ぶ方向に一列に並置できる。これにより、通信ケーブルを、昇降路の壁面により接近させて敷設することが可能となる。さらに、押え材と緊張材とを総ての通信ケーブルに接触させることができ、締め付けによる摩擦力の効果を、各通信ケーブルに対して確保することが可能となる。
通信ケーブルの本数が多い場合には、後述するように、中間部の通信ケーブルの締め付けによる摩擦力が弱まる場合がある。そこで、選択された中間部の通信ケーブルに対して、押え材と緊張材とを入れ替えることが好ましい。その結果、後述するように、選択された中間部の通信ケーブルが、押え材及び緊張材により強固に締め付けられて固定点に近くなり、通信ケーブルのはらみ出しを効果的に防止することが可能となる。
また、ガイドケーブルを利用した通信ケーブルの敷設の場合、このガイドケーブルに対し押え材と緊張材とを入れ替えることが好ましい。その結果、後述するように、ガイドケーブルが、押え材及び緊張材により強固に締め付けられて固定点に近くなり、通信ケーブルのはらみ出しを効果的に防止することが可能となる。
さらに、ガイドケーブルを利用した通信ケーブルの敷設の場合、隣接する通信ケーブル固定具の間で、通信ケーブルをガイドケーブルに対して螺旋状に巻きつけて敷設することで、固定具間において通信ケーブルのはらみ出しを防ぐことが可能となる。
以下に、図面を用いて本発明に係る通信ケーブル固定具の実施の形態につき、詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1に、本発明に係る通信ケーブル固定具の第1の実施の形態の概略の構成を示す。図1には、昇降路内部6の壁面5に沿って敷設される通信ケーブル2を、敷設方向に所定の間隔で壁面5に固定する通信ケーブル固定具1が示されている。図1(a)は、昇降路内部6から見た平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図であり、図1(c)は、図1(a)のB−B断面図である。通信ケーブル固定具1は、押え材3、緊張材4、及び固定部7から構成される。また、図2に、通信ケーブル固定具1の部分拡大概略図を示す。図2(a)は、図1(b)の部分拡大図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
本実施の形態では、通信ケーブル2は、昇降路内部6から各階に配線される通信ケーブル2の束が、通信ケーブル固定具1の両端の固定部7を結ぶ方向に一列に並置されている。この通信ケーブル2の束は、任意の配置、例えば、略円形状或いは略楕円状に束ねられていても良い。しかし、後述するように、通信ケーブル2と、押え材3及び緊張材4とが接触する部分が多いほど通信ケーブル2に発生する摩擦力が大きくなることから、本実施の形態のように固定部7を結ぶ方向に一列に並置されることが好ましい。
押え材3は、これらの通信ケーブル2の束を、昇降路内部6から壁面5に向かう方向に包み込む。また、その両端は、壁面5に沿って伸び、固定部7により壁体10に固定される。すなわち、押え材3は、通信ケーブル2が、昇降路内部6側に移動するのを防ぐ機能を有する。本実施の形態では、押え材3は、例えば、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、アルミ、プラスチック等の素材から成り、所定の幅を有する平板である。その幅は、敷設される通信ケーブル2の本数及び必要な締付け量により決定される。
緊張材4は、これらの通信ケーブル2の束を、壁面5から昇降路内部6に向かう方向に包み込む。また、その両端は、押え材3を貫通し、定着ボルト14及びナット9により押え材3に固定される。これにより、緊張材4は、押え材3により壁面5に押さえ込められる通信ケーブル2が壁面5と直接接触するのを防止する機能を有する。本実施の形態では、緊張材4は、2本のケーブル材から成るが、その本数は、敷設される通信ケーブル2の本数及び必要な締付け量により決定される。緊張材4は、ケーブル材に限らず、例えば、普通鋼、ステンレス鋼、アルミ、プラスチック等の素材から成る丸棒あるいは平板等であっても良い。
固定部7は、押え材3の両端を壁体5に固定する。図2に示すように、押え材3は、コンクリート壁体10に打ち込まれたボルト13により貫通され、ナット11及びワッシャ12により壁体10に固定される。このボルト13は、通常のアンカーボルト又は、コンクリート打設後に後打ちされるホールイン・アンカー、スタッド・アンカー、拡開式アンカー等の一般的なコンクリートへの締結材であれば良い。
緊張材4は、長さ調節機構を備える。本実施の形態では、ケーブル材である緊張材4の両端に定着ボルト14が組み込まれたソケット8が取り付けられている。緊張材4は、その端部において押え材3を貫通し、さらに、その定着ボルト14がワッシャ15を介してナット9と係合されて押え材3に固定される。このナット9を締め込むことで緊張材4の長さが短縮するが、緊張材4はその両端部が押え材3に固定されているため、押え材3を引き付けつつ緊張材4自体に張力が導入される。ソケット8は、ケーブル材で一般的に用いられるケーブル用ソケットであれば良い。本実施の形態では、長さ調節機構は、緊張材4の両端に設けられているが、緊張材4の一端だけに備えられ、他端は押え材3に、例えば、溶接等により固定されていても良い。
上述した緊張材4の張力導入により、通信ケーブル2は、押え材3と緊張材4とにより締め付けられ、2種類の摩擦力が発生する。すなわち、(1)通信ケーブル2と押え材3及び通信ケーブル2と緊張材4との接触部分に発生する摩擦力、及び(2)通信ケーブル2相互間に発生する摩擦力である。これらの2種類の摩擦力が発生するのは、最外端の通信ケーブル2a(図1(b)参照)において、緊張材4に発生した張力T(図2(a)参照)が、並置された通信ケーブル2の中心を結ぶ線に対して斜め方向に作用することによる。この張力Tは、図2(a)に図示するように分力Tx及び分力Tyという2つの成分に分解される。
分力Tyの作用により、押え材3と緊張材4の交点Pは壁面5から離れる方向に移動する。この移動により、通信ケーブル2は、押え材3と緊張材4とにより両面から締め付けられ、押え材3及び緊張材4との接触部分にそれぞれTyの締付力が発生する。通信ケーブル2がその軸方向に引張力を受けた場合、この締付力Tyに摩擦係数を乗じた摩擦力が接触部分に作用し、引張力に抵抗する。この締め付けにより、通信ケーブル2の被覆部分は変形してつぶれ、通信ケーブル2と押え材3との及び通信ケーブル2と緊張材4との接触面が拡大する。また、この交点Pの移動に加え通信ケーブル2の変形により、緊張材4は、壁面5から浮き上がる。これにより、通信ケーブル2を壁面5から一定の間隔に離して固定させることが可能となる。
一方、分力Txの作用により、押え材3と緊張材4の交点Pが通信ケーブル2の束の中央に向かって移動する。この移動により、並置された通信ケーブル2は、相互の隙間が詰められて接触し、その接触部分にTxの締付力が発生する。通信ケーブル2がその軸方向に引張力を受けた場合、この締付力Txに摩擦係数を乗じた摩擦力が接触部分に作用し、引張力に抵抗する。この通信ケーブル2相互の接触により、通信ケーブル2の被覆部分は変形してつぶれ、通信ケーブル2相互の接触面が拡大する。
隣り合う通信ケーブル固定具1の間で生じる通信ケーブル2のはらみ出しは、通信ケーブル固定具1における通信ケーブル2の位置ずれに起因する。したがって、この通信ケーブル2と押え材3及び緊張材4との接触部分、及び通信ケーブル2相互間に発生する摩擦力は、通信ケーブル2の自重やエレベータかごの走行による風圧力等、通信ケーブル2の位置ずれを発生させる力に抵抗する。
本実施の形態における通信ケーブル固定具1の施工手順を説明する。まず、所定の壁面位置にボルト13を打ち込む。次に、通信ケーブル2を束ね、通信ケーブル2の本数に合わせて製作された押え材3と緊張材4とを組合せ、そこに通信ケーブル2の束を通す。この押え材3と緊張材4とは、張力導入を行うナット9を緩めた状態で通信ケーブルに仮止めをしておく。通信ケーブル2の束をエレベータ昇降路内部6の壁面5に沿って垂らし、押え材3を所定の位置のボルト13にはめ込み、ナット11を締め込むことで壁体10に固定する。最後にナット9を締め込むことで緊張材4に張力を導入し、上述の摩擦力を発生させる。
(第2の実施の形態)
図3に、本発明に係る通信ケーブル固定具の第2の実施の形態の概略の構成を示す。例えば、通信ケーブル2の本数が多い場合には、緊張材4による張力導入によっても、並置された通信ケーブル2の束の中央付近において通信ケーブル2の摩擦力が減少する可能性がある。これは、主として、前述した分力Tyによる通信ケーブル2の締め付けが、中央付近でたるむことによる。また、前述した分力Txによる通信ケーブル2が中央に向かって押し込まれるが、中央付近まで確実に伝播しないことにもよる。この中央付近での通信ケーブル2の摩擦力の減少を補うために、中間部の選択された通信ケーブル2bにおいて、押え材3と緊張材4とを入れ替えることが好ましい。すなわち、図3に示すように、通信ケーブル2bの両側で緊張材4を押え材3に貫通させることで、通信ケーブル2bが緊張材4と押え材3とに包み込まれる。
この押え材3と緊張材4との位置が逆転した通信ケーブル2bは、その左右における押え材3と緊張材4とが交差して包み込むことで、押え材3と緊張材4との接触部分が増加する。通信ケーブル2bは、この接触面の増加により、通信ケーブル2の位置ずれに対してほぼ固定された状態になる。また、この通信ケーブル2bの左右に隣り合う通信ケーブル2cも押え材3と緊張材4との接触部分が増大する。これらの効果により、緊張材4の張力導入による分力Tx及びTyによる摩擦力の減少を補うことが可能となる。
この中間部の選択された通信ケーブル2bは、本実施の形態では、中央の1箇所のみとしているが、必要に応じて複数の通信ケーブル2が選択されても良い。また、中間部の総ての通信ケーブル2を選択しても良い。一つの選択された通信ケーブル2bに対して、2箇所で緊張材4が押え材3に貫通することから、複数の通信ケーブル2については、その数の倍の貫通箇所が設けられる。
(第3の実施の形態)
図4に、本発明に係る通信ケーブル固定具の第3の実施の形態として、ガイドケーブルを利用する場合の通信ケーブル固定具の概略の構成を示す。図4には、昇降路内部6の壁面5に沿って敷設されるガイドケーブル18及び通信ケーブル2を、敷設方向に所定の間隔で壁面5に固定する通信ケーブル固定具1が示されている。図4(a)は、昇降路内部6から見た平面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。通信ケーブル固定具1は、押え材3、緊張材4、及び固定部7から構成される。なお、上述した通信ケーブル固定具の実施の形態と同様な構成に関しては、その詳細な説明は省略する。
ここで、ガイドケーブル固定具20の概略の構成を示す図6を参照する。ガイドケーブル18は、通信ケーブル2の敷設される範囲を含むように壁面5に沿って配置される。このガイドケーブル18は、その上下端においてガイドケーブル固定具20に接続される(図6では、ガイドケーブル18の下端のガイドケーブル固定具20のみを示す)。ガイドケーブル固定具20は、溶接で組み合わされた形鋼21及び形鋼23から成り、ボルト22により壁面5に固定される。さらに、ガイドケーブル18にはターンバックル19等の長さ調節機構が備えられ、ガイドケーブル18に張力が導入される。通信ケーブル2の束は、所定の間隔で通信ケーブル固定具24によりガイドケーブル18と抱き合わされて、ボルト25により壁体10に固定される。本発明に係る通信ケーブル固定具1は、このガイドケーブル18を利用して敷設する場合でも応用することができる。
本実施の形態では、通信ケーブル2は、昇降路内部6から各階に配線される通信ケーブル2の束が、通信ケーブル固定具1の両端の固定部7を結ぶ方向に一列に並置された場合について説明する。この通信ケーブル2の束は、任意の配置、例えば、略円形状或いは略楕円状に束ねられていても良い。しかし、後述するように、通信ケーブル2と、押え材3及び緊張材4とが接触する部分が多いほど通信ケーブル2に発生する摩擦力が大きくなることから、本実施の形態のように壁面5に平行方向に並置されることが望ましい。
押え材3は、通信ケーブル2の束を、昇降路内部6から壁面5に向かう方向に包み込み、さらに、ガイドケーブル18を壁面5から昇降路内部6に向かう方向に包み込む。通信ケーブル2の両端は、壁面5に沿って伸び固定部7により壁体10に固定される。一方、緊張材4は、押え材3とは逆に、これらの通信ケーブル2の束を、壁面5から昇降路内部6に向かう方向に包み込み、さらに、ガイドケーブル18を昇降路内部6から壁面5に向かう方向に包み込む。その両端は押え材3を貫通して固定される。
これにより、ガイドケーブル18は、押え材3及び緊張材4により包み込まれる。すなわち、通信ケーブル固定具1において、張力が導入されたガイドケーブル18をほぼ固定点とみなして通信ケーブル固定具1の中央に配置し、その左右に通信ケーブル2を均等に並置する。これにより、一方に並置された通信ケーブル2の束は、一方の固定部7とガイドケーブル18とをほぼ固定点とみなせ、他方に並置された通信ケーブル2の束も、同様に、他方の固定部7とガイドケーブル18とをほぼ固定点とみなせる効果が発生する。
ここで、ガイドケーブル18を固定点とみなすには、ガイドケーブル18に対する押え材3及び緊張材4の固定度が問題となる。すなわち、これらの固定度が低く、容易にずれが発生するのでは、左右の通信ケーブル2に十分な摩擦力を発生させることができない。このガイドケーブル18に対する押え材3及び緊張材4の固定度を確保するために、左右の通信ケーブル2を包む押え材3と緊張材4とを、ガイドケーブル18においてその位置を入れ替える。これにより、ガイドケーブル18は、ほぼその断面の全周にわたって押え材3及び緊張材4と接触する。そして、ガイドケーブル18には、緊張材4の張力導入により、通信ケーブル2を保持する摩擦力が発生し、ほぼ固定点とみなせる役割を果たすことが可能である。
図5に、隣接する通信ケーブル固定具1の間において、通信ケーブル2をガイドケーブル18に巻き付けた実施の形態の概略の構成を示す。通信ケーブル2は、通信ケーブル固定具1において締め付けられ、上述したように、押え材3及び緊張材4との接触部分に摩擦力が発生し、通信ケーブル2相互間にも摩擦力が発生する。しかし、通信ケーブル2の本数が多い場合等、ガイドケーブル18に対する押え材3及び緊張材4の固定度が十分ではない場合があり得る。その場合には、隣接する通信ケーブル固定具1の間において、通信ケーブル2をガイドケーブル18に巻き付けることで、通信ケーブル2のはらみ出しをより確実に防止することが可能となる。図5では、ガイドケーブル18の左右に設置された通信ケーブル2を、通信ケーブル固定具1の間で各々1回巻きつけた場合を図示する。この巻きつける回数は、1回に限らず何回であっても良い。
本実施の形態での通信ケーブル固定具1の施工手順を説明する。ここでガイドケーブル18は、事前に壁面5の所定の範囲に取り付けられているものとする。まず、通信ケーブル2の本数に合わせて製作された押え材3と緊張材4とをガイドケーブル18の通信ケーブル固定具1が取り付く所定の位置に仮止めをしておく。そこに通信ケーブル2の束を通す。この押え材3と緊張材4とは、張力導入を行うナット9を緩めた状態にしておく。次に、押え材3を所定の位置のボルト13にはめ込み、ナット11を締め込むことで壁面5に固定する。最後にナット9を締め込むことで緊張材4に張力を導入し、上述の摩擦力を発生させる。
通信ケーブル2のずれをさらに確実に防止する手段は、押え材3と緊張材4が通信ケーブル2と接触する部分に高摩擦シートを貼り付けることである。この高摩擦シートには、例えば、卓球のラケットのラバーに用いられる特殊スポンジ等の高摩擦素材が適しているが、一般的な素材で粘着力のあるものであっても良い。通信ケーブル2と押え材3、或いは通信ケーブル2と緊張材4との接触面に位置すれを生じる引張力が発生した場合、この高摩擦材により抵抗することが可能となる。さらに、このシートが、例えば、粘弾性材のように通信ケーブル2の振動エネルギを吸収可能な素材であれば、固定具に生じる伸び変形、疲労破壊、あるいは破損を防止することが可能となる。
本発明に係る、通信ケーブル固定具の第1の実施の形態の概略構成を示す平面図及び断面図である。 通信ケーブル固定具の第1の実施の形態の部分拡大概略図及びその断面図である。 通信ケーブル固定具の第2の実施の形態の概略構成を示す断面図である。 通信ケーブル固定具の第3の実施の形態の概略構成を示す平面図及び断面図である。 隣接する通信ケーブル固定具の相互間において、通信ケーブルをガイドケーブルに巻き付けた実施の形態の概略の構成を示す平面図である。 従来の昇降路内での通信ケーブルの敷設に用いるガイドケーブル固定具の概略構成を示す正面図である。
符号の説明
1,24 通信ケーブル固定具、2 通信ケーブル、2a 最外端の通信ケーブル、2b 押え材と緊張材との位置が逆転した通信ケーブル、2c 中央の通信ケーブルに隣り合う通信ケーブル、3 押え材、4 緊張材、5 壁面、6 昇降路内部、7 固定部、8 ソケット、9,11 ナット、10 壁体、12,15 ワッシャ、13,22,25 ボルト、14 定着ボルト、18 ガイドケーブル、19 ターンバックル、20 ガイドケーブル固定具、21,23 形鋼。

Claims (6)

  1. エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを、敷設方向に所定の間隔で壁体に固定する通信ケーブル固定具であって、
    通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込む押え材と、
    通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込み、その両端が、それぞれ押え材の端部近傍を貫通して固定され、張力導入可能な長さ調節機構を有する緊張材と、
    押え材の両端を壁体に固定する固定部と、を備え、
    緊張材に発生した張力が、並置された通信ケーブルの中心を結ぶ線に対して斜め方向に作用するように、押え材と緊張材とを斜め方向に交差させて通信ケーブルを締め付けることを特徴とする通信ケーブル固定具。
  2. エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを、敷設方向に所定の間隔で壁体に固定する通信ケーブル固定具であって、
    通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、通信ケーブルの束のうち中間部の選択された通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込む押え材と、
    通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込み、その中間部の選択された通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、その両端が、それぞれ押え材の端部近傍を貫通して固定され、張力導入可能な長さ調節機構を有する緊張材と、
    押え材の両端を壁体に固定する固定部と、を備え、
    緊張材に張力を導入することで、押え材と緊張材とが協働して通信ケーブルを締め付けることを特徴とする通信ケーブル固定具。
  3. エレベータの昇降路内の壁面に沿って敷設される通信ケーブルを、その両端を壁体に固定されたガイドケーブルと連結して敷設方向に所定の間隔で壁体に固定する通信ケーブル固定具であって、
    通信ケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、ガイドケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込む押え材と、
    通信ケーブルを壁面から昇降路内部に向かう方向に包み込み、ガイドケーブルを昇降路内部から壁面に向かう方向に包み込み、その両端が、それぞれ押え材の端部近傍を貫通して固定され、張力導入可能な長さ調節機構を有する緊張材と、
    押え材の両端を壁体に固定する固定部と、を備え、
    緊張材に張力を導入することで、押え材と緊張材とが協働して通信ケーブルを締め付けることを特徴とする通信ケーブル固定具。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1に記載の通信ケーブル固定具において、押え材と緊張材とにより締め付けられる通信ケーブルは、通信ケーブル固定具の両端の固定部を結ぶ方向に一列に並置されていることを特徴とする通信ケーブル固定具。
  5. 請求項3又は4に記載の通信ケーブル固定具において、通信ケーブルは、隣接する通信ケーブル固定具の間において、ガイドケーブルに対して螺旋状に巻きついて敷設されることを特徴とする通信ケーブル固定具。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1に記載の通信ケーブル固定具において、押え材及び緊張材の通信ケーブルと接触する表面には、高摩擦材が貼り付けられていることを特徴とする通信ケーブル固定具。
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