JP4591729B2 - R−t−b系永久磁石の表面処理方法 - Google Patents

R−t−b系永久磁石の表面処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4591729B2
JP4591729B2 JP2000015368A JP2000015368A JP4591729B2 JP 4591729 B2 JP4591729 B2 JP 4591729B2 JP 2000015368 A JP2000015368 A JP 2000015368A JP 2000015368 A JP2000015368 A JP 2000015368A JP 4591729 B2 JP4591729 B2 JP 4591729B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plating
permanent magnet
magnet body
liter
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2000015368A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001210539A (ja
JP2001210539A5 (ja
Inventor
文丈 谷口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Metals Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2000015368A priority Critical patent/JP4591729B2/ja
Publication of JP2001210539A publication Critical patent/JP2001210539A/ja
Publication of JP2001210539A5 publication Critical patent/JP2001210539A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4591729B2 publication Critical patent/JP4591729B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
    • H01F41/02Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets
    • H01F41/0253Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets
    • H01F41/026Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets protecting methods against environmental influences, e.g. oxygen, by surface treatment

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回転機(モータ、発電機)、アクチュエータ、スピーカまたはポンプ等に用いられる耐食性の良好なR−T−B系永久磁石およびその表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類永久磁石のうち、R14B型金属間化合物を主相とするR−T−B系系希土類焼結磁石(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上であり、TはFeまたはFeとCoである)は高い磁気特性を有しており、フェライト磁石に次いでコストパフォーマンスに優れることから、近年製造量が大きく伸びている。
しかしながら、その主要成分として希土類元素および鉄を多量に含有するために腐食しやすいという欠点を有しており、耐食性を向上するための種々の表面処理が施されて実用に供されている。
表面処理膜として、樹脂コーティング、クロメート膜あるいは金属めっきなどが採用されているが、特にNiめっきに代表される金属皮膜をめっきする方法が耐食性および耐磨耗性等に優れており多用されている。
例えば、R−Fe−B系永久磁石体に金属皮膜をめっきする場合、表面の酸化物や汚れ等を除去するために前処理を行う必要がある。この前処理として塩酸または硫酸に浸漬する方法が一般的である。また、前記酸に浸漬後電解洗浄等により脱スマット処理を行うか、あるいは前処理として前記酸に浸漬する処理を行わずに電解洗浄等により脱スマット処理を行う方法も提案されている。これらの前処理はいずれも前記磁石体表面に付着しているスマットを排除し、金属被膜と前記磁石体との密着力を向上させることを目的としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、R−T−B系永久磁石体のめっき前処理として、塩酸または硫酸に浸漬する方法を採用した場合、希土類リッチ相等からなる粒界相を選択的に深く腐食してしまうという問題を発生する。深く腐食された粒界相はその後めっき液によりさらに深く腐食される。このようにして形成され、拡大化した腐食痕上では金属皮膜と前記磁石体とが十分に密着しないので、最終的に得られるめっきしたR−T−B系永久磁石においてピンホールになったりあるいは金属皮膜が局部的に前記磁石体から剥離した「ふくれ」と呼ばれるめっき欠陥を発生し、耐食性の劣化を招いてしまうという問題がある。
次に、硫酸と硝酸塩水溶液との混合酸洗液を用いてめっき前処理を行うR−Fe−B系永久磁石の表面処理方法(特開平6-57480号公報)が提案されている。しかし、この提案に記載の条件でめっき前処理を行うと、最終的に得られるめっきしたR−Fe−B系永久磁石において主相部分にもエッチングピットが形成されるが、粒界相が優先的に深く腐食される傾向が顕著になるために耐食性が大きく劣化することが本発明者らの検討から明らかになった。また、硫酸を多く含むめっき前処理液を採用すると、めっき前処理液槽からめっきに供する磁石体を取り出した時点で瞬時に表面が黒く酸化され、その酸化部分が密着不良等のめっき欠陥品を発生する要因になることがわかった。
次に、電解洗浄等により前記磁石体表面のスマットを除去する方法によれば、粒界相は深く腐食されない反面、めっきに供する磁石体表面が非常に滑らかになるため、金属皮膜の密着力が顕著に低下して耐食性を向上することが困難であるという問題がある。
【0004】
したがって、本発明の課題は、従来と同等以上の磁気特性を保持しつつ、従来に比べて金属皮膜とR−T−B系永久磁石体との密着性の均一性を高めて良好な耐食性を付与したR−T−B系永久磁石およびその表面処理方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来に比べてR−T−B系永久磁石体と金属皮膜との密着性の均一性を向上して、すなわち、従来に比べて金属皮膜とR−T−B系永久磁石体とが強固に密着するアンカーを主相および粒界相に略均一に形成するとともに腐食の起点となる粒界相のアンカーを浅く形成して、ピンホールやふくれの発生を抑えたR−T−B系永久磁石を得られるめっき前処理条件を鋭意検討した。その検討の過程で、硫酸または塩酸を含むめっき前処理液を用いると粒界相を必要以上に深くエッチングしてしまい、最終的にその深くエッチングされた部分がめっき不良部分となる傾向が顕著であることを発見した。そして、そのめっき不良(欠陥)部分の発生を抑えるには、下記のめっき前処理液を採用することが有効であることがわかった。
上記課題を解決した本発明は、R14B型金属間化合物(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上であり、TはFeまたはFeとCoである)を主相とするR−T−B系永久磁石体を硝酸塩1〜100g/リットルおよび硝酸0.05〜10vol.%からなる混合酸性液によりめっき前処理後、めっきを行うR−T−B系永久磁石の表面処理方法である。
前記めっき前処理液における硝酸塩の濃度は1〜100g/リットルが好ましい。硝酸塩の濃度が1g/リットル未満では主相に十分なエッチングピットを形成できず、最終的に得られるR−T−B系永久磁石のめっきの密着力が低くなり、耐食性の向上が困難である。硝酸塩の濃度が100g/リットルを超えるとめっき前処理後の磁石体表面に変色部分を発生する現象が顕著になり、その変色部分がめっき不良部分の発生を誘発する。
次に、前記めっき前処理液における硝酸の濃度は0.05〜10vol.%が好ましい。硝酸の濃度が0.05vol%未満では前記磁石体表面の汚れを清浄化する作用に乏しく、かつ活性化が困難である。硝酸濃度が10vol.超では金属皮膜と前記磁石体との密着力の低下が顕著になり、耐食性が大きく低下する。
【0006】
また本発明は、R14B型金属間化合物(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上であり、TはFeまたはFeとCoである)を主相とするR−T−系永久磁石体表面にめっきを被覆してなるR−T−B系永久磁石であって、
前記R−T−B系永久磁石の断面組織におけるめっき層とR−T−B系永久磁石体とが形成する境界に沿って100μmの直線を引いたとき、その直線に沿う主相部に形成されたエッチングピットの個数がその直線に沿う粒界相部に形成されたエッチングピットの個数よりも多いR−T−B系永久磁石である。
本発明の永久磁石では、腐食の起点となる粒界相を深くエッチングしたピットの形成を抑えるとともに比較的浅い主相および粒界相のエッチングピットを従来に比べて略均一な間隔で形成した。そして、その比較的浅くかつ略均一な間隔で形成されたエッチングピットにめっきが入り込んでアンカーが形成され、そのアンカー効果によって金属皮膜と前記磁石体との密着性の均一性が向上し、従来に比べて耐食性を顕著に向上したものである。
本発明に用いるめっきとして、R−T−B系永久磁石体に耐食性を付与可能な公知の金属または合金の電解および/または無電解によるめっきを採用することができる。実用上、Ni,Ni−P,Cu,Zn,Cr,Snのいずれかの単層皮膜あるいはこれらの2種以上の多層皮膜からなるめっきを用いることが好ましい。さらに必要に応じて、前記めっき層の上に電着塗装、樹脂塗装またはクロメート処理(+アルカリ処理)を施してもよく、耐食性をさらに向上することができる。
また、本発明の永久磁石の断面組織において観察されるエッチングピットは最大直径0.1〜10μm、平均深さ0.1〜5μmのものである。そして、その断面組織において磁石体とめっき層との境界に沿って100μmの直線を引いたとき、その直線に沿う主相部に形成されたエッチングピットが100μmあたり5個以上であり、その直線に沿う粒界相部に形成されたエッチングピットが100μmあたり5個未満になるようにめっき前処理条件を適宜選択することが耐食性を顕著に向上するために好ましい。
【0007】
また本発明は、R14B型金属間化合物(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上であり、TはFeまたはFeとCoである)を主相とするR−T−B系永久磁石体表面に3層Niめっきを被覆してなるR−T−B系永久磁石であって、
前記R−T−B系永久磁石の断面組織におけるNiめっき層とR−T−B系永久磁石体とが形成する境界に沿って100μmの直線を引いたとき、その直線に沿う主相部に形成されたエッチングピットの個数がその直線に沿う粒界相部に形成されたエッチングピットの個数よりも多いR−T−B系永久磁石であり、実用性に富んでいる。
【0008】
また本発明は、R14B型金属間化合物(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上であり、TはFeまたはFeとCoである)を主相とするR−T−B系永久磁石体表面にNiめっき、Cuめっき、Niめっきからなる3層めっきを被覆してなるR−T−B系永久磁石であって、
前記R−T−B系永久磁石の断面組織におけるNiめっき層とR−T−B系永久磁石体とが形成する境界に沿って100μmの直線を引いたとき、その直線に沿う主相部に形成されたエッチングピットの個数がその直線に沿う粒界相部に形成されたエッチングピットの個数よりも多いR−T−B系永久磁石であり、実用性に富んでいる。
【0009】
次に、めっき前処理条件について説明する。
めっき前処理(酸洗処理)用の混合酸性液の浴温度は特に限定しないが、経済的な面から室温から50℃程度が望ましい。めっき前処理は所定寸法に加工したR−T−B系永久磁石体をバレル等の容器に入れた後、前記混合酸性液の浴に浸漬した状態とし、前記磁石体を動かしながら酸洗処理を行うことが好ましい。あるいは網状容器に前記磁石体を入れた後、前記混合酸性液の浴に浸漬した状態とし、次に超音波あるいはエアーバブリングすることにより前記混合酸性液の浴を攪拌させるようにしてもよい。めっき前処理時間は30秒から10分程度が効率およびめっき品質の点から望ましいが、必要に応じて延長可能である。
めっき前処理後は純水またはイオン交換水などにより十分に洗浄し、その後各種めっきを行う。
【0010】
本発明に用いる硝酸塩として、例えばNaNO、KNO、Cu( NO、Ca( NO、Ba( NO、Ag NO、Ni( NO、Mg( NO、 Mn( NOのいずれかが実用性に富んでいるが、これらに限定されるものではなく公知の硝酸塩を用いることができる。
【0011】
14B型金属間化合物を主相とするR−T−B系希土類焼結磁石体に適用する場合は、主要成分のRとBとTとの総計を100重量%として、R:27〜34%、B:0.5〜2%、残部Tとすることが好ましい。以下、%と単に記しているのは重量%を示す。さらに、前記R−T−B系希土類焼結磁石体の総重量を100%として、不可避不純物成分として0.6%以下の酸素、0.2%以下の炭素、0.08%以下の窒素、0.02%以下の水素、0.2%以下のCaの含有が許容される。
Rとして(Nd,Dy)またはDyまたはPrまたは(Dy,Pr)または(Nd,Dy、Pr)が実用上選択される。R量は27〜34%が好ましい。 R量が27%未満では保磁力iHcが大きく低下し、34%を超えると残留磁束密度Brが大きく低下する。
B量は0.5〜2%が好ましく、0.8〜1.5%がより好ましい。B量が0.5%未満では十分なiHcが得られず、2%超ではBrが大きく低下する。
磁気特性を改善するために、Nb,Al,Co,Ga,Cuの1種または2種以上を適量含有することが好ましい。
Nbの含有量は0.1〜2%とされる。Nbの添加により焼結過程でNbのほう化物が生成し、結晶粒の異常粒成長を抑制する。Nb含有量が0.1%未満では添加効果が認められず、2%超ではNbのほう化物の生成量が多くなりBrが大きく低下する。
Alの含有量は0.02〜2%とされる。Al含有量が0.02%未満では添加効果が認められず、2%超ではBrが急激に低下する。
Co含有量は0.3〜5%とされる。Co含有量が0.3%未満ではキュリー点、Niめっきとの密着性の向上効果が実用上得られず、5%超ではBr、iHcが低下する。
Ga含有量は0.01〜0.5%とされる。Ga含有量が0.01%未満ではiHcの向上効果が認められず、0.5%超ではBrの低下が顕著になる。
Cu含有量は0.01〜1%とされる。Cuの微量添加はiHcおよび耐食性の向上をもたらすが、Cu含有量が1%を超えると添加効果は飽和し、0.01%未満では添加効果が認められない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
主要成分組成が30%Nd−68.9%Fe−1.1%Bで示されるR−Fe−B系焼結磁石体を加工して縦50mm×横30mm×厚み10mmの寸法を有する直方体形状の磁石体を作製した。この磁石体を硝酸2vol.%の酸性水溶液中に2分間含浸後、水洗した。この含浸処理は前記磁石体の表面に存在する酸化物、Ndリッチ相などを除去して表面を清浄化するために行う。
次に、NaNO10g/リットルおよび硝酸0.5vol.%の混合酸性水溶液中に、表面を清浄化した前記磁石体を1分間浸漬した。続いて、純水で水洗後、3層のNiめっきを被覆した。3層Niめっきの被覆条件を下記に記す。
[第1層めっき]
めっき浴組成:硫酸ニッケル:240g/リットル、塩化ニッケル:40g/リットル、ホウ酸:30g/リットル。浴温:50℃、電流密度:1A/dm2 、Niめっき時間:80分、平均めっき厚み:8μm。第1層のNiめっき処理後、水洗して第2めっき処理へ。
[第2層めっき]
めっき浴組成:硫酸ニッケル:250g/リットル、塩化ニッケル:40g/リットル、ホウ酸:30g/リットル、サッカリン(一次光沢剤):1.5g/リットル。浴温:50℃、電流密度:1A/dm2 、Niめっき時間:80分、平均めっき厚み:8μm。第2層のNiめっき処理後、水洗して第3めっき処理へ。
[第3層めっき]
めっき浴組成:硫酸ニッケル:270g/リットル、塩化ニッケル:40g/リットル、ホウ酸:30g/リットル、サッカリン(一次光沢剤):1.5g/リットル、ブチンジオール(二次光沢剤):適量。浴温:50℃、電流密度:1A/dm2 、Niめっき時間:80分、平均めっき厚み:8μm。
前記条件で3層Niめっきを被覆後水洗し、続いて乾燥して本発明のR−Fe−B系永久磁石を得た。この3層Niめっき被覆磁石を試験片として、下記の密着性試験、耐食性試験および断面組織におけるエッチングピットの発生状況の評価を行った。
めっきの密着性試験はピールテストにより評価した。すなわち、試験片を縦4mm×横50mmのサイズに切断したものを50個作製し、それら50個の各々においてめっきを長辺方向に沿って剥離するのに要する力をフォースゲージで求めた。そして求めた50個の測定値の平均を表1に示す。
耐食性試験は、P.C.T.試験(温度120℃、相対湿度100%R.H.、2.03×10Pa(2気圧)で24時間放置)後室温の大気中に戻した状態の試験片20個の外観を観察して評価した。
断面組織は、前記試験片を埋め込んだ顕微鏡観察用試料を作製後、走査型電子顕微鏡によりその断面組織を撮影して評価した。図1(a)は、前記本発明の永久磁石の断面組織における代表的なエッチングピットの発生状況を示している。図1(b)は図1(a)に対応した模式図である。図1(b)において、21が主相部表面に形成されたエッチングピット、22が粒界相部表面に形成されたエッチングピット、23が3層Niめっき層である。表1に示す100μmあたりのエッチングピットの個数は以下のようにして求めた。まず、図1(a)に例示する如くの断面組織写真を、任意の10視野分について撮影した。続いて各写真において、Niめっき層とNd−Fe−B系焼結磁石体との境界に沿って100μmの直線を引き、その直線に沿って存在する主相部表面および粒界相部表面に形成されたエッチングピットの個数を測定した。なお、図1(a)に例示する如く、各エッチングピットにはNiめっきが入り込んでアンカーが形成されている。このようにして10視野分の断面組織写真における、100μmの直線に沿う主相部および粒界相部に形成されたエッチングピットの個数を求め、それらの平均値を表1に示す。
次に、前記3相Niめっき中のS含有量を分析したところ、第1Niめっき層のS=0%、第2Niめっき層のS=0.001%および第3Niめっき層のS=0.003%であり、S含有量の増加とともにNiめっき相が平滑化する傾向が認められた。
【0013】
(比較例1)
比較のため、実施例1と同様の縦50mm×横30mm×厚み10mmの寸法を有する直方体形状の磁石体を用い、硝酸2vol.%の酸性水溶液中に浸漬して酸洗い後、水洗した。続いて、硫酸2vol.%の液でめっき前処理(エッチング)を行い、その後水洗した。次いで、実施例1と同様の3層Niめっきを被覆したものを作製し、以降は実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0014】
(比較例2)
比較のため、実施例1と同様の縦50mm×横30mm×厚み10mmの寸法を有する直方体形状の磁石体を用い、電解洗浄による前処理を行った。すなわち、Na(OH)30g/リットル,NaCO20g/リットルおよびオルソけい酸ナトリウム50g/リットルの水溶液中で、前記磁石体を陰極とし、1A/dmの電流密度で2分間通電処理を行った。その後、純水により十分に水洗した。続いて、実施例1と同様にして3層Niめっきを被覆後、このものにより実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0015】
(比較例3)
比較のため、実施例1と同様の縦50mm×横30mm×厚み10mmの寸法を有する直方体形状の磁石体を用い、NaNO20g/リットルおよび硫酸3vol.%の混合酸性水溶液中に1分間浸漬した。続いて水洗後、実施例1と同様にして3層Niめっきを被覆後、このものにより実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0016】
(実施例2)
実施例1の条件でめっき前処理を行ったR−Fe−B系磁石体を準備した。次に、下記のめっき条件に従い、前記磁石体表面に順次、電解Niめっき、電解Cuめっき、電解Niめっきを被覆した。その後は実施例1と同様にして本発明のR−T−B系永久磁石を得、評価した。結果を表1に示す。
[第1層めっき]
めっき浴組成:硫酸ニッケル:240g/リットル、塩化ニッケル:40g/リットル、ホウ酸:30g/リットル。浴温:50℃、電流密度:1A/dm2 、Niめっき時間:80分、平均めっき厚み:8μm。第1層のNiめっき処理後、水洗して第2めっき処理へ。
[第2層めっき]
ピロリン酸Cu浴による電解Cuめっき処理(平均Cuめっき厚み:8μm )後、水洗して第3めっき処理へ。
[第3層めっき]
めっき浴組成:硫酸ニッケル:270g/リットル、塩化ニッケル:40g/リットル、ホウ酸:30g/リットル、サッカリン(一次光沢剤):1.5g/リットル、ブチンジオール(二次光沢剤):適量。浴温:50℃、電流密度:1A/dm2 、Niめっき時間:80分、
平均めっき厚み:8μm。
【0017】
(実施例3)
実施例1の3層Niめっき処理後水洗したものを、引き続いてCrO10g/リットル、50℃の水溶液中に5分間浸漬した後水洗した。次いで100℃で5分間乾燥した。
このものは表面に平均膜厚7μmのクロメート被膜が形成されており、実施例1のものよりもさらに耐食性が向上していた。
【0018】
(実施例4)
実施例2のNiめっき、Cuめっき、Niめっきを被覆後水洗したものを、引き続いてCrO10g/リットル、50℃の水溶液中に5分間浸漬後水洗した。次いで100℃で5分間乾燥した。
次に、NaCr・2HO10g/リットル、50℃の水溶液中で5分間浸漬後水洗し、次いで100℃で5分間乾燥した。このものは表面に平均膜厚7μmのクロメート被膜が形成されておりかつこのクロメート被膜表面が前記アルカリ溶液により処理された結果有機物の付着がほとんどない清浄化した表面状態になっていた。このため、実施例1のものよりもさらに耐食性が向上しているとともに接着性に富んだ表面になっており、ボイスコイルモータ、リニアモータあるいはスピーカに代表される、強磁性ヨークに永久磁石を接着する磁石応用製品の用途に好適である。
【0019】
【表1】
Figure 0004591729
【0020】
表1の実施例1,2と比較例3との比較から、100μmの長さあたりで評価した、主相部に形成されたエッチングピットの個数が、粒界相部に形成されたエッチングピットの個数よりも多いときに、P.C.T.試験における良好な耐食性を実現できていることがわかる。
また、実施例1,2および比較例13のいずれにおいても主相部に形成されたエッチングピットの最大深さは1〜2μmであり優位差は認められなかった。しかし、粒界相部に形成されたエッチングピットの最大深さは、実施例1,2および比較例2の場合で1〜2μmと浅いのに対して、比較例1,3の場合は3〜6μmと深かった。このために、比較例1,3の密着力が実施例1,2に比べ大きくなっているが、P.C.T試験の耐食性が悪くなっていると判断される。また、実施例1、2のものは各比較例のものと同等以上の磁気特性を有していた。
【0021】
上記実施例ではめっきの膜厚が8μmの場合を記載したが、各めっき層の膜厚を1〜20μm、より好ましくは2〜10μmとすることが耐食性を向上するために好ましい。
【0022】
本発明はR−T−B系焼結磁石に限定されず、R14B型金属間化合物を主相とし、かつ平均結晶粒径が0.01〜0.5μmであるR−T−B系温間加工磁石体にめっきを被覆したものを包含する。あるいは、R14B型金属間化合物を主相とする組成に調整した鋳造合金に熱間加工を施して異方性を付与したR−T−B系永久磁石体にめっきを施したものを包含する。
【0023】
【発明の効果】
以上記述の通り、本発明によれば、従来と同等以上の磁気特性を保持しつつ、従来に比べて金属皮膜とR−T−B系永久磁石体との密着性の均一性を高めて良好な耐食性を付与したR−T−B系永久磁石およびその表面処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の永久磁石の断面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真の一例を示す(a)、(a)に対応する模式図(b)である。
【図2】本発明の永久磁石に形成されたエッチングピットの状況を模式的に説明する要部断面図(a)、 比較例の永久磁石に形成されたエッチングピットの状況を模式的に説明する要部断面図(b)である。
【符号の説明】
1,11,21 主相部に形成されたエッチングピット、
2,12,22 粒界相部に形成されたエッチングピット、3,13,23 めっき。

Claims (1)

  1. 14B型金属間化合物(RはYを含む希土類元素の1種または2種以上であり、TはFeまたはFeとCoである)を主相とするR−T−B系永久磁石体表面にめっきを被覆してなるR−T−B系永久磁石であって、前記R−T−B系永久磁石体を硝酸ナトリウム1〜100g/リットルおよび硝酸0.05〜10vol.%からなる混合酸性水溶液によりめっき前処理後、めっきを行なうことを特徴とするR−T−B系永久磁石の表面処理方法。
JP2000015368A 2000-01-25 2000-01-25 R−t−b系永久磁石の表面処理方法 Expired - Lifetime JP4591729B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000015368A JP4591729B2 (ja) 2000-01-25 2000-01-25 R−t−b系永久磁石の表面処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000015368A JP4591729B2 (ja) 2000-01-25 2000-01-25 R−t−b系永久磁石の表面処理方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2001210539A JP2001210539A (ja) 2001-08-03
JP2001210539A5 JP2001210539A5 (ja) 2006-12-28
JP4591729B2 true JP4591729B2 (ja) 2010-12-01

Family

ID=18542682

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000015368A Expired - Lifetime JP4591729B2 (ja) 2000-01-25 2000-01-25 R−t−b系永久磁石の表面処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4591729B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2518742B1 (en) * 2003-06-27 2016-11-30 TDK Corporation R-T-B system permanent magnet

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2840998B2 (ja) * 1992-08-05 1998-12-24 住友特殊金属株式会社 R−Fe−B系永久磁石の表面処理方法
JPH06260317A (ja) * 1993-03-05 1994-09-16 M Eng:Yugen 焼結金属の表面処理方法
JP3213157B2 (ja) * 1994-02-17 2001-10-02 住友特殊金属株式会社 Fe−B−R系磁石素材の表面処理方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001210539A (ja) 2001-08-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2520450B2 (ja) 耐食性希土類磁石の製造方法
JPH03173106A (ja) 耐食性被膜を有する希土類永久磁石およびその製造方法
JP4591729B2 (ja) R−t−b系永久磁石の表面処理方法
WO2012111353A1 (ja) めっき被膜を表面に有するR-Fe-B系焼結磁石の製造方法
JP4045530B2 (ja) R−t−b系磁石の電解銅めっき方法
CN111101173A (zh) 钕铁硼永磁材料多层镀镍及除氢工艺
JP4983619B2 (ja) 永久磁石
JP4538959B2 (ja) 希土類系永久磁石の電気Niめっき方法
JP5516092B2 (ja) 耐食性磁石およびその製造方法
JP2617118B2 (ja) 耐食性に優れた希土類永久磁石とその製造方法
JP2968605B2 (ja) 永久磁石の製造方法
JP2840998B2 (ja) R−Fe−B系永久磁石の表面処理方法
JP3796567B2 (ja) R−Fe−B系永久磁石及びその製造方法
JP4572468B2 (ja) Cuイオンと塩素イオンを含む水中での希土類系永久磁石の使用方法
JPH07230928A (ja) Fe−B−R系磁石素材の表面処理方法
JPH09270310A (ja) 希土類永久磁石
JP4770556B2 (ja) 磁石
JPH04288804A (ja) 永久磁石およびその製造方法
JP3650141B2 (ja) 永久磁石
JPH03173104A (ja) 耐食性希土類磁石の製造方法
JP2007273850A (ja) 磁石部材およびその製造方法
JPH06290935A (ja) 希土類磁石
JPH069168B2 (ja) 高耐食性希土類永久磁石
JP2004289021A (ja) 希土類磁石の製造方法
JPH01223712A (ja) 耐食性永久磁石の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20040526

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061114

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061114

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20070613

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090522

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090622

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100212

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100222

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20100519

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100819

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100901

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130924

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4591729

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

EXPY Cancellation because of completion of term