JP4591269B2 - ハイブリッド車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
かように段差を乗り越えながらの車両発進時においては、段差乗り越えを可能にするために、段差乗り越えが可能になるような駆動力を増大させる制御が要求される。
段差乗り越え終了時に走行抵抗が低下して車速が急上昇するのを回避するためアクセルペダルを踏み戻すに際し、その戻し量が少ないと共に、戻し速度も比較的緩やかでよい。
アクセル開度APOの増大で駆動トルクTも図示のごとくに上昇する。
段差がなければ車速VSPは二点鎖線で示すように瞬時t0から立ち上がるが、段差があるため、駆動トルクTが走行抵抗R2と釣り合うトルクTbになる瞬時t1になって初めて、車速VSPは余裕駆動力(駆動トルクT−走行抵抗R)の発生により実線で示すように立ち上がり、段差乗り越えが開始される。
かかる余裕駆動力の急増および高止まりにより車速VSPが順次実線および波線で示すように急上昇して、段差乗り越え終了時に車両が突き出されるような感じを受ける傾向となる。
この突き出し感を解消するために運転者は大急ぎで、しかも大きくアクセルペダルの踏み戻しを行う必要があり、これが段差乗り越え終了時における運転操作性の悪化の原因となる。
動力源としてモータを具え、モータの動力により走行される車両において、
車速情報から加速度情報を求め、該加速度情報における加速度変化割合が設定値を超えた加速度の急増を示す時をもって車輪が段差を乗り越えたと判定する段差乗り越え終了検知手段と、
前記段差乗り越え終了検知手段により段差を乗り越えたと判定した加速度変化割合に応じて駆動トルクを低下させる第1の駆動力抑制手段と、
前記段差乗り越え終了検知手段により段差乗り越え終了判定がなされた時の前後における前記加速度変化割合が、前記段差乗り越え終了判定用の設定値よりも大きな第2の設定値を超えた加速度の急増を示すものである時にはさらに、車輪の制動によって駆動力を抑制する第2の駆動力抑制手段とを具える、ことを特徴とするものである。
伝動系にトルクコンバータを有しないハイブリッド車両故に段差乗り越え発進時にアクセルペダルを大きく踏み込んでいても、走行抵抗が小さくなる段差乗り越え終了時に駆動力と走行抵抗との間の差値である要求駆動力が大きなままに保たれることがなく、この余裕駆動力による車速の大きな上昇(車両の突き出し感)を緩和することができる。
図1は、本発明の一実施例になる段差乗り越え発進時駆動力制御装置を具えたフロントエンジン・フロントホイールドライブ式(前輪駆動式)ハイブリッド車両のパワートレーンを、その制御系とともに示す。
これがため、単純遊星歯車組4を可とする差動装置を設け、単純遊星歯車組4はサンギヤ4sと、リングギヤ4rと、これらに噛合した複数個のピニオン4pを回転自在に支持するキャリア4cとで構成する。
キャリア4cへのエンジン回転は、一方でサンギヤ4s、および、入力軸5上で回転する中空軸6を経てジェネレータ(発電機)7に伝達し、他方でリングギヤ4r、スプロケット8、チェーン9、終減速機10およびディファレンシャルギヤ装置11を経て左右前輪3に伝達するようになす。
なお車両の発進時は、エンジン1を停止し、モータ2からの動力のみがリングギヤ4rから、スプロケット8、チェーン9、終減速機10、およびディファレンシャルギヤ装置11を経て左右前輪3に伝達されて、当該発進を行うものとする。
エンジン1の要求負荷状態を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ14からの信号と、
エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ15からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ16からの信号と、
バッテリ12の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ17からの信号と、
前輪3の駆動トルク(駆動力)Tを検出する駆動トルクセンサ18からの信号とを入力する。
目標エンジントルクtTeはエンジンコントローラ19に供給され、このエンジンコントローラ19は、エンジントルクが目標エンジントルクtTeとなるようエンジン1を制御する。
そして、目標モータトルクtTmおよび発電負荷tTgはモータ/ジェネレータコントローラ20に供給される。
他方でモータ2のトルクが目標モータトルクtTmとなるよう、ジェネレータ7からの電力および/またはバッテリ12からの電力をインバータ21を介してモータ2に供給する。
図2の制御プログラムは、図3の瞬時t1におけるように駆動トルクTが走行抵抗R2と釣り合うトルクTbになって、車速VSPが余裕駆動力(駆動トルクT−走行抵抗R)の発生により実線で示すように立ち上がり、段差乗り越えが開始される瞬時t1に開始する。
ここで段差乗り越えの開始は、車速VSPの立ち上がりをもって検出することができる。
次のステップS2においては、同じく図3の段差乗り越え開始瞬時t1における駆動トルクT=Tbをトルク初期値として記憶する。
次いでステップS3において、段差乗り越え終了時t2の車速VSPをVSP1にセットし、本発明が目的とする駆動力制御を開始する瞬時t3の車速VSPをVSP2にセットする。
また駆動力制御を開始する瞬時t3は、段差乗り越え終了判定時t2から、これ以後の車両加速度α’を求めるのに必要な最短時間Δt’が経過した時とする。
α’=(VSP2−VSP1)/Δt’
= ΔV’/Δt’
の演算により求めると共に、段差乗り越え開始時t1から段差乗り越え終了判定時t2までの時間Δtを用いて、段差乗り越え終了時t2の前における車両加速度αを
α=(VSP1−0)/Δt
= ΔV/Δt
の演算により求め、
これらの演算結果を用いて段差乗り越え前後の加速度変化(α’−α)を算出する。
またステップS7においては、上記段差乗り越え前後のトルク変化(T’−Tb)に対する加速度変化(α’−α)の割合X=(α’−α)/(T’−Tb)を求め、これが設定値Yを越えたか否かを判定する。
上記した段差乗り越え前後のトルク変化に対する加速度変化割合Xは、これが設定値Yを越えた大きさであるとき、段差乗り越え前後のトルク変化(T’−Tb)に対して加速度変化(α’−α)が大きくて、段差乗り越えが終了していると共に、前記した車両の突き出し感を発生するような段差乗り越えであることを意味する。
ステップS7で段差乗り越え前後のトルク変化に対する加速度変化割合Xが設定値Yを超えたと判定するとき、前記した車両の突き出し感を発生するような段差乗り越え終了時で本発明による段差乗り越え発進時駆動力制御が必要であるから、制御をステップS8以後に進める。
従ってステップS7は、本発明における段差乗り越え終了検知手段に相当する。
統合コントローラ13はかかる駆動トルクTの低下が達成されるような目標モータトルクtTmをモータ/ジェネレータコントローラ20へ出力する。
更に、アクセル開度APOの図3に示す時系列変化から明らかなように、運転者がアクセルペダルを急速に大きく踏み戻すような特別なアクセル操作を行わなくても上記の作用効果を達成することができ、段差乗り越え終了時の運転操作性が悪くなるという従来の問題を解消することができる。
従ってステップS8は、本発明における駆動力抑制手段に相当する。
ステップS10においては、上記の加速度変化割合Xが第2の設定値Z(但し、Z>Y)よりも大きいか否かをチェックし、ステップS8での駆動トルク低下のみでは上記の問題解決を実現し得ないような段差乗り越えか否かを判定する。
従ってステップS10およびステップS11も、本発明における駆動力抑制手段に相当する。
これらの何れの条件も満足していなければ、制御をステップS3に戻して上記のループを繰り返し実行し、いずれか1つでも条件が整ったとき、上記の駆動力制御を終了させるべく制御をステップS13に進めることで、上記の駆動力制御がいつまでも行われる弊害を回避する。
統合コントローラ13はかかる駆動トルクTの増大復帰が達成されるような目標モータトルクtTmをモータ/ジェネレータコントローラ20へ出力する。
これにより、上記駆動トルクTの増大復帰をショック無しに滑らかに行わせることができる。
従ってステップS12およびステップS13も、本発明における駆動力抑制手段に相当する。
ステップS14で後続車輪が未だ同じ段差に遭遇していないと判定する間は、制御をステップS3に戻して上記のループを繰り返す。
統合コントローラ13はかかる駆動トルクTの増大が達成されるような目標モータトルクtTmをモータ/ジェネレータコントローラ20へ出力する。
これにより後続車輪が同じ段差を乗り越える時に駆動力不足になることなく、運転者によるアクセルペダルの踏み増し(アクセル開度APOの増加)なしに、この段差を確実に乗り越えることができる。
従って、ステップS14は本発明における後続車輪段差遭遇検知手段に相当し、ステップS15は本発明における駆動力増大手段に相当する。
2 モータ
3 前輪(駆動輪)
4 単純遊星歯車組
5 入力軸
6 中空軸
7 ジェネレータ
8 スプロケット
9 チェーン
10 終減速機
11 ディファレンシャルギヤ装置
12 バッテリ
13 統合コントローラ
14 アクセル開度センサ
15 エンジン回転センサ
16 車速センサ
17 バッテリ蓄電状態センサ
18 駆動トルクセンサ
19 エンジンコントローラ
20 モータ/ジェネレータコントローラ
21 インバータ
Claims (4)
- 動力源としてモータを具え、モータの動力により走行される車両において、
車速情報から加速度情報を求め、該加速度情報における加速度変化割合が設定値を超えた加速度の急増を示す時をもって車輪が段差を乗り越えたと判定する段差乗り越え終了検知手段と、
前記段差乗り越え終了検知手段により段差を乗り越えたと判定した加速度変化割合に応じて駆動トルクを低下させる第1の駆動力抑制手段と、
前記段差乗り越え終了検知手段により段差乗り越え終了判定がなされた時の前後における前記加速度変化割合が、前記段差乗り越え終了判定用の設定値よりも大きな第2の設定値を超えた加速度の急増を示すものである時にはさらに、車輪の制動によって駆動力を抑制する第2の駆動力抑制手段とを具える、車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項1に記載の車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置において、
前記第2の駆動力抑制手段は、前記段差乗り越え終了検知手段により段差乗り越え終了判定がなされた時から設定時間経過後、または、設定距離走行後、或いは、運転者による制動操作やアクセル操作があった時、前記駆動力の抑制を終了させるものであることを特徴とする、車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項1又は2に記載の車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置において、
前記第2の駆動力抑制手段は、前記駆動力の抑制を終了させるとき、駆動力をアクセル操作状態に対応した運転操作要求駆動力へ徐々に増大復帰させるものであることを特徴とする、車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置において、
車両進行方向前方の先行車輪が段差を乗り越えた時からホイールベース相当分の距離だけ走行した時をもって、車両進行方向後方の後続車輪が同じ段差に遭遇すると判定する後続車輪段差遭遇検知手段と、
この手段により後続車輪が前記段差に遭遇すると判定する時、駆動力を増大させる駆動力増大手段とを設けたことを特徴とする、車両の段差乗り越え発進時駆動力制御装置。
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